(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】加炭材及び加炭材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C21C 7/00 20060101AFI20220509BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20220509BHJP
【FI】
C21C7/00 101A
B09B3/00 Z ZAB
(21)【出願番号】P 2021153811
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2021-09-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520013157
【氏名又は名称】マキウラ鋼業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230117536
【氏名又は名称】中 紀人
(74)【代理人】
【識別番号】230117547
【氏名又は名称】橋本 芳則
(74)【代理人】
【識別番号】230109737
【氏名又は名称】森本 純
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】薪浦 州平
(72)【発明者】
【氏名】加納 裕一
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-052079(JP,A)
【文献】特開2017-020093(JP,A)
【文献】実開昭58-015646(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全樹脂成分が全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%の範囲内で含有し
、不燃成分が全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%の範囲内で含有する高度選別シュレッダーダストを混合して柱状に成形することで構成され、
本加炭材の灰分は、5.0重量%~20.0重量%の範囲内であり、
前記柱の長手寸法は、200mm~600mmの範囲内であり、
前記柱の幅寸法は、100mm~200mmの範囲内である、
加炭材。
【請求項2】
全樹脂成分が全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%の範囲内で含有し
、不燃成分が全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%の範囲内で含有する高度選別シュレッダーダストを混合して柱状に成形することで構成され、
本加炭材の灰分は、5.0重量%~20.0重量%の範囲内であり、
本加炭材の固定炭素は、5.0重量%~20.0重量%の範囲内であり、
前記柱の長手寸法は、200mm~600mmの範囲内であり、
前記柱の幅寸法は、100mm~200mmの範囲内である、
加炭材。
【請求項3】
本加炭材は、前記高度選別シュレッダーダストと、コークスとを混合して柱状に成形される、
請求項1又は2に記載の加炭材。
【請求項4】
所定の選別機により、未選別のシュレッダーダストから、一部不燃成分を含有する樹脂成分を、全未選別のシュレッダーダストに対して10重量%以上除去し、鉄、ガラス、ハーネス、及び非鉄金属を含有する不燃成分を、全未選別のシュレッダーダストに対して20重量%以上除去し
、全樹脂成分が全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%の範囲内で含有し、前記不燃成分が全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%の範囲内で含有する高度選別シュレッダーダストを選別する選別工程と、
所定の圧縮固形機により、前記高度選別シュレッダーダストを所定の溶融温度に加熱して柱状に成形し、前記柱の長手寸法を200mm~600mmの範囲内とし、前記柱の幅寸法を100mm~200mmの範囲内とする成形工程と、
を備える加炭材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加炭材及び加炭材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製鉄や製鋼の溶解時に、銑鉄や鋼の炭素含有量を調整するために、加炭材を炉中に投入している。加炭材としては、コークスや黒鉛を材料に用いたもののほかに廃棄物を材料に用いることがある。
【0003】
例えば、特開2015-211939号公報(特許文献1)には、シュレッダーダストから回収した低比重高分子ダストに、カーボン粉を混合し、この混合物を低比重高分子ダストが溶融する温度に加熱して成形し、固化させてなる加炭材が開示されている。ここで、加炭材の炭素源として、シュレッダーダスト自体が有している炭素を利用しながら、カーボン粉を用いることで、カーボン粉の混合量を微妙に調整容易であり、加炭材の炭素含有量を所望の値に高くし、その炭素含有量を一定値に調整することも容易となるとしている。又、シュレッダーダストから回収した低比重高分子ダストは、例えば、自動車内装品の発泡ウレタン等の高分子発泡体及び不織布等の多孔質材の含有率が高い。そのため、カーボン粉は低比重高分子ダストに混合されてその表面にまぶされたとき、多孔質材たる低比重高分子ダストの多数の気孔のそれぞれに平均的に分散して侵入し、加炭材の各部に配されるカーボン粉の均等分散性を自然に向上できるとしている。又、混合物を、低比重高分子ダストが溶融する温度に加熱して成形し、固化させて加炭材とし、低比重高分子ダストは、例えば180~200度の溶融温度に加熱されて軟化し、カーボン粉を当該低比重高分子ダストの各部に安定的かつ固定的に取り込み保持するものになるとしている。
【0004】
又、シュレッダーダストを再利用して製鉄用副資材を製造する技術が存在する。例えば、特開2012-219364号公報(特許文献2)には、シュレッダーダストから少なくとも1回の比重差選別を経て、軽量物側から回収した高分子粗砕ダストと、無機微粉ダストとを混合後、溶融押出成形して製造する鉄鋼用副資材の製造方法が開示されている。この製造方法では、高分子粗砕ダストを、多孔質材を含み、比重が0.8以下の低比重高分子粗砕ダストとするとともに、無機微粉ダストを鉄微粉又は鉄酸化物微粉を含むものとして、低比重高分子粗砕ダストと無機微粉ダストとを塗し(マブシ)混合後、溶融押出成形をする。これにより、強度的に従来品より優れ、且つ、磁力運搬性にも優れたものとなり、取り扱い性(保管性を含む。)が向上するとしている。
【0005】
又、特開2018-178171号公報(特許文献3)には、製鋼用助材がシュレッダーダスト(樹脂分を50質量%以上含む。)で固化された製鋼用副資材が開示されている。この製鋼用助材は、アルミ灰を含有する。これにより、製鋼用助材として製鋼炉に投入された際に、アルミ灰が酸化反応を起こし、大きな輻射熱源を発生させることができるため、発熱性に優れ、シュレッダーダストが製鋼用助材を結合して定型性を有し、取扱性に優れたものになるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-211939号公報
【文献】特開2012-219364号公報
【文献】特開2018-178171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
日本では年間約450万台の自動車が廃車になっており、自動車は、鉄やアルミニウム等の金属が使用され、バッテリー等の有用部品が多く使用されている。そのため、使用済み自動車は、有価物として電気炉会社等に流通し、自動車の重量の約80%がリサイクルされているが、残りの20%がシュレッダーダスト(Automobile Shredder Residue :ASR)として埋め立てられている。
【0008】
しかしながら、循環型社会の構築が求められる中、1990年代後半から産業廃棄物の最終処分場のひっ迫により、使用済自動車から生じるシュレッダーダストを削減する必要性が高まってきている。そこで、シュレッダーダストを電気炉のエネルギー源として活用することで、省エネ並びに二酸化炭素排出削減を実現し、地球環境へ貢献する技術が必要となっている。
【0009】
そのため、製鉄や製鋼の溶解時に必要とされる炭素量を減らすことが出来れば、省エネ並びに二酸化炭素排出削減に繋がると考えられる。ここで、製鉄や製鋼の溶解時に用いられる加炭材には、炭素源となる燃焼成分を出来るだけ含有する選別後のシュレッダーダストを利用することが好ましい。
【0010】
一方、電気炉内に投入される加炭材は、製鉄や製鋼の溶解時に、直ぐに燃えてしまうと、追加で新たな加炭材を炉内に投入する必要があり、必要とされる炭素量を減らすためには、加炭材が炉内でゆっくり燃焼することが好ましい。
【0011】
ここで、特許文献1-3に記載の技術では、それぞれシュレッダーダストを利用している。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、選別後の発泡プラスチックや不織布の低比重高分子ダストを加炭材に用いているものの、この低比重高分子ダストの炭素含有量は55重量%程度であり、炭素含有量が低いという課題がある。又、特許文献1に記載の技術では、加炭材の直径が30mm~100mmであり、長さが50mm~200mmであり、加炭材が全体的に小さなサイズであるため、炉内に入れた加炭材が直ぐに燃えてしまうという課題がある。特許文献2に記載の技術では、従来と比較してより強度及び磁力運搬性に優れた鉄鋼用副資材を得る目的のために無機微粉ダストを添加するため、鉄鋼用副資材の不燃成分が全体的に増加するおそれがある。特許文献3に記載の技術では、積極的にアルミ灰と酸化鉄を含有させることで、輻射熱源とするため、特許文献2に記載の技術と同様に、不燃成分が全体的に増加するおそれがある。従って、必要な炭素量を削減する加炭材の技術は、今まで存在しなかった。
【0012】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、製鉄や製鋼の溶解時に必要な炭素量を削減することが可能な加炭材及び加炭材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る加炭材は、全樹脂成分が全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%の範囲内で含有し、不燃成分が全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%の範囲内で含有する高度選別シュレッダーダストを混合して柱状に成形することで構成され、本加炭材の灰分は、5.0重量%~20.0重量%の範囲内であり、前記柱の長手寸法は、200mm~600mmの範囲内であり、前記柱の幅寸法は、100mm~200mmの範囲内である。
【0014】
本発明に係る加炭材の製造方法は、選別工程と、成形工程と、を備える。選別工程は、所定の選別機により、未選別のシュレッダーダストから、一部不燃成分を含有する樹脂成分を、全未選別のシュレッダーダストに対して10重量%以上除去し、鉄、ガラス、ハーネス、及び非鉄金属を含有する不燃成分を、全未選別のシュレッダーダストに対して20重量%以上除去し、全樹脂成分が全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%の範囲内で含有し、前記不燃成分が全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%の範囲内で含有する高度選別シュレッダーダストを選別する。成形工程は、所定の圧縮固形機により、前記高度選別シュレッダーダストを所定の溶融温度に加熱して柱状に成形し、前記柱の長手寸法を200mm~600mmの範囲内とし、前記柱の幅寸法を100mm~200mmの範囲内とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、製鉄や製鋼の溶解時に必要な炭素量を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る加炭材の概念図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る未選別シュレッダーダストと高度選別シュレッダーダストと従来選別シュレッダーダストの成分を示す表である。
【
図3】本発明の実施形態に係る加炭材の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態においてコークスを添加した場合の加炭材の概念図である。
【
図5】実施例1-6、比較例1-3における加炭材の評価結果の表である。
【
図6】実施例1-6、比較例1-2における加炭材の評価結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0018】
従来より、シュレッダーダストを加炭材として活用して製鉄や製鋼が行われてきたが、製鉄や製鋼の溶解時に必要な炭素量を削減する加炭材の開発は行われていなかった。
【0019】
本発明者は、公知の選別方法を組み合わせて、未選別のシュレッダーダストから、一部不燃成分を含有する樹脂成分と、鉄、ガラス、ハーネス、及び非鉄金属を含有する不燃成分とを高度に選別し、その選別後の高度選別シュレッダーダストを加炭材に用いると、意外にも、優れた炭素量削減効果を奏したため、後述する実施例に基づいて、本発明を完成させたのである。
【0020】
即ち、本発明に係る加炭材は、
図1に示すように
、全樹脂成分が全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%を含有し、不燃成分が全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%を含有する高度選別シュレッダーダストを混合して柱状に成形することで構成される。本発明に係る加炭材では
、本加炭材の灰分は、5.0重量%~20.0重量%の範囲内であり、柱の長手寸法Lは、200mm~600mmの範囲内であり、柱の幅寸法Dは、100mm~200mmの範囲内である。
又、本加炭材の固定炭素は、5.0重量%~20.0重量%の範囲内である。
【0021】
これにより、製鉄や製鋼の溶解時に必要な炭素量を削減することが可能となる。即ち、高度選別シュレッダーダストは、樹脂成分と不燃成分とを除去し、樹脂成分と不燃成分以外の燃焼成分を増やすように構成している。そのため、高度選別シュレッダーダストは、燃焼成分を豊富に含有するため、加炭材として用いることで効率よく炭素源として供給することが出来る。
【0022】
又、本発明に係る加炭材では、柱の長手寸法Lを、200mm~600mmの範囲内とし、柱の幅寸法Dを、100mm~200mmの範囲内としている。つまり、本発明に係る加炭材では、一般的な加炭材の寸法と比較して全体的に大きな寸法としている。これにより、電気炉内に添加した加炭材が炉内で直ぐに燃え尽きることなく、ゆっくり燃焼することになり、加炭材の燃焼時期を遅らせることが可能となる。又、炉内に添加された加炭材は、炉に設けられた集塵機等に吸引されずに済むため、加炭材を無駄なく利用することが可能となる。その結果、優れた必要炭素量削減効果を発揮するのである。
【0023】
ここで、未選別シュレッダーダストは、廃自動車(エンジン等の取り外し後のプレス品)を破砕施設で破砕することで得られる。未選別シュレッダーダストとは、廃棄物の破砕物から金属類を除いた残留物である。未選別シュレッダーダストとして、例えば、ASR(Automobile Shredder Residue)等を使用することができる。ASRとは、使用済みの自動車の破砕物から金属類を除いた残留物である。ASRの成分は、主に、樹脂、ウレタン系の発泡材、繊維、ゴム、木材、紙、鉄、ガラス、ハーネス、非鉄金属等である。ここで、樹脂は、タルクやシリカを含有する一部不燃成分を含有している。
【0024】
又、未選別シュレッダーダストの成分に特に限定は無いが、例えば、
図2に示すように、未選別シュレッダーダストのうち、樹脂成分、発泡材成分、繊維成分、ゴム成分、木材成分、紙成分を含む燃焼成分は、全未選別のシュレッダーダストに対して60重量%~90重量%の範囲内であると好ましく、70重量%~85重量%の範囲内であると更に好ましい。一方、未選別シュレッダーダストのうち、鉄、ガラス、ハーネス、非鉄金属を含む不燃成分は、全未選別のシュレッダーダストに対して10重量%~30重量%の範囲内であると好ましく、10重量%~20重量%の範囲内であると更に好ましい。
【0025】
又、未選別シュレッダーダストの平均粒子径に特に限定は無いが、例えば、20mm~200mmの範囲内であると好ましく、20mm~60mmの範囲内、又は、60mm~200mmの範囲内であると更に好ましい。
【0026】
又、未選別のシュレッダーダストから、樹脂成分と不燃成分を除去する方法に特に限定は無いが、例えば、樹脂成分の除去には、風力選別方法が好ましく、不燃成分には、磁力選別方法、渦電流選別方法、金属センサー式選別方法、手選別方法のいずれか又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0027】
又、未選別のシュレッダーダストから除去される、一部不燃成分を含有する樹脂成分は、全未選別のシュレッダーダストに対して10重量%以上であれば、特に限定は無いが、例えば、10重量%以上、30重量%以下の範囲内であると好ましく、10重量%以上、20重量%以下の範囲内であると更に好ましい。
【0028】
又、未選別のシュレッダーダストから除去される不燃成分は、全未選別のシュレッダーダストに対して20重量%以上であれば、特に限定は無いが、例えば、20重量%以上、30重量%以下の範囲内であると好ましく、20重量%以上、25重量%以下の範囲内であると更に好ましい。
【0029】
ここで、高度選別シュレッダーダストの樹脂成分は、
図2に示すように、全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%の範囲内であれば、特に限定は無いが、例えば、25重量%~35重量%の範囲内であると更に好ましい。更に、高度選別シュレッダーダストの不燃成分は、全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%の範囲内であれば、特に限定は無いが、例えば、0重量%~2重量%の範囲内であると更に好ましい。
【0030】
一方、市場に出回っている従来選別シュレッダーダストの樹脂成分は、全従来選別シュレッダーダストに対して35重量%~45重量%の範囲内であり、従来選別シュレッダーダストの不燃成分は、全従来選別シュレッダーダストに対して5重量%~20重量%の範囲内である。このように、高度選別シュレッダーダストの樹脂成分及び不燃成分は、従来選別シュレッダーダストの樹脂成分及び不燃成分と比較して非常に少ないことが分かる。これは、高度選別シュレッダーダストの燃焼成分が多く、炭素源が多いことを意味する。
【0031】
又、高度選別シュレッダーダストの灰分に特に限定は無いが、例えば、5.0重量%~20.0重量%の範囲内であると好ましく、8.0重量%~16.0重量%の範囲内であると更に好ましい。灰分は、樹脂成分に含まれるタルク等の不燃成分と、鉄等の不燃成分との合計量に相当するため、高度選別シュレッダーダストの灰分が少ないことは、高度選別シュレッダーダストの燃焼成分が多いことを意味する。又、灰分は、例えば、JIS Z 7302-4に準拠して測定される。
【0032】
さて、本加炭材の柱の長手寸法Lは、200mm~600mmの範囲内であれば、特に限定は無い。尚、柱の長手寸法Lが、200mm未満の場合は、電気炉内に加炭材を添加すると、加炭材が炉内で直ぐに燃え尽きてしまうため、好ましくない。
【0033】
又、本加炭材の柱の幅寸法は、100mm~200mmの範囲内であれば、特に限定は無い。尚、柱の幅寸法Dが、100mm未満の場合は、電気炉内に加炭材を添加すると、加炭材が炉内で直ぐに燃え尽きてしまうため、好ましくない。
【0034】
又、加炭材の形状の柱状に特に限定は無く、例えば、
図1に示すように、円柱状でも良いし、他の柱状として、三角柱状、四角柱状、多角柱状でも構わない。
【0035】
又、加炭材の成形方法に特に限定は無いが、例えば、圧縮固形機により、シュレッダーダストを所定の溶融温度まで加熱して柱状に圧縮する方法を挙げることが出来る。
【0036】
又、加炭材の灰分に特に限定は無いが、例えば、5.0重量%~20.0重量%の範囲内であると好ましく、8.0重量%~16.0重量%の範囲内であると更に好ましい。又、上述と同様に、加炭材の灰分が少ないことは、加炭材の燃焼成分が多いことを意味する。
【0037】
又、加炭材の高位発熱量に特に限定は無いが、例えば、6000kcal/kg~8000kcal/kgの範囲内であると好ましい。加炭材の高位発熱量は、例えば、JIS Z 7302-2に準拠して測定される。加炭材の低位発熱量に特に限定は無いが、例えば、4000kcal/kg~6000kcal/kgの範囲内であると好ましい。加炭材の低位発熱量は、例えば、JIS Z 7302-2に準拠して測定される。
【0038】
又、加炭材の固定炭素に特に限定は無いが、例えば、5.0重量%~20.0重量%の範囲内であると好ましい。加炭材の炭素に特に限定は無いが、例えば、50.0重量%~70.0重量%の範囲内であると好ましい。
【0039】
又、加炭材の水分に特に限定は無いが、例えば、0.1重量%~2.0重量%の範囲内であると好ましい。加炭材の水分は、例えば、JIS Z 7302-3に準拠して測定される。
【0040】
又、加炭材の塩素に特に限定は無いが、例えば、0.1重量%~2.0重量%の範囲内であると好ましい。加炭材の塩素は、例えば、JIS Z 7302-6に準拠して測定される。又、加炭材の銅(金属)に特に限定は無いが、例えば、0.10重量%~2.00重量%の範囲内であると好ましい。加炭材の銅は、例えば、JIS Z 7302-5に準拠して測定される。
【0041】
ここで、本発明に係る加炭材の製造方法について、
図3を参照しながら説明する。先ず、加炭材に用いるシュレッダーダストについて、使用済みの自動車の未選別のシュレッダーダスト(ASR)が、所定の選別機に投入されると(
図3:S101)、この選別機は、シュレッダーダスト(ASR)を所定の篩にかけて、大きいサイズのシュレッダーダストと小さいサイズのシュレッダーダストに選別する(篩選別)(
図3:S102)。大きいサイズのシュレッダーダストは、スポンジ等の燃えやすい燃焼成分に該当し、小さいサイズのシュレッダーダストは、土砂・ガラス等の燃えにくい不燃成分に該当する。ここでの大きなサイズのシュレッダーダストの平均粒子径は、例えば、20mm~200mmの範囲内である。
【0042】
次に、選別機は、大きいシュレッダーダストに風を当てて、概ね、軽いシュレッダーダストと重たいシュレッダーダストに選別する(風力選別)(
図3:S103)。軽いシュレッダーダストには、樹脂、発泡材、繊維、ゴム、木材、紙等の燃焼成分が含まれ、重たいシュレッダーダストには、タルクやシリカを含有する一部不燃成分を含有する樹脂や金属等の不燃成分が含まれている。尚、樹脂は、タルク等の不燃成分を含む樹脂と、このような不燃成分を含まない樹脂との混合物であるため、風力選別では、概ね、軽いシュレッダーダストに不燃成分を含まない樹脂が選別され、重たいシュレッダーダストに不燃成分を含む樹脂が選別される。又、風力選別は、燃焼成分の素材と、不燃成分を含む樹脂や金属とを正確に選別するものではなく、軽いシュレッダーダストの中に、不燃成分を含む樹脂や金属が含まれる場合もあれば、重いシュレッダーダストの中に、燃焼成分の素材が含まれる場合もある。風力選別では、シュレッダーダストから、不燃成分を含有する樹脂成分が、全未選別のシュレッダーダストに対して10重量%以上除去される。
【0043】
そして、選別機は、更に、重たいシュレッダーダストに磁石の磁力を作用させて、磁力に吸着する鉄を選別し、回収し(磁力選別)(
図3:S104)、磁力に作用されなかった破砕物に渦電流を流して、アルミ等の通電性の高い金属を選別し、回収する(渦電流選別)(
図3:S105)。
【0044】
更に、選別機は、渦電流に作用しなかったシュレッダーダストに金属センサーを当てて、渦電流により選別されなかった金属を選別する(金属センサー式選別)(
図3:S106)。そして、最後に、人の手によって、渦電流選別と金属センサー式選別で回収しきれなかった金属を選別する(手選別)(
図3:S107)。
【0045】
このように選別されたシュレッダーダストでは、鉄、ガラス、ハーネス、及び非鉄金属を含有する不燃成分が、全未選別のシュレッダーダストに対して20重量%以上除去される。その結果、樹脂成分が全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%の範囲内で含有し、不燃成分が全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%の範囲内で含有する高度選別シュレッダーダストとなる。このような高度選別シュレッダーダストでは、不燃成分を含有する樹脂成分や金属成分が殆ど含有されておらず、燃えやすい炭素成分で基本的に構成された高度選別シュレッダーダストとなる。
【0046】
次に、製造者は、高度選別シュレッダーダストを圧縮固形機に投入し、所定の溶融温度に加熱して柱状に成形する(
図3:S201)。圧縮固形機に、柱状に対応する所定の型が予め組み込まれており、その型に高度選別シュレッダーダストを投入することで、型に対応して柱状の加炭材が成形される。これにより、本発明に係る加炭材を製造することが出来る。
【0047】
ところで、本発明に係る加炭材は、高度選別シュレッダーダストにコークスを混合して柱状に成形することで構成されると好ましい。これにより、炭素源が豊富な高度選別シュレッダーダストに炭素源のコークスを混合して加炭材を構成することで、更に、加炭材の炭素濃度を高めて、製鉄や製鋼の溶解時に必要な炭素量を削減することが可能となる。
【0048】
ここで、コークスとは、所定の材料を乾留して炭素部分だけを残した材料を意味する。コークスの種類に特に限定は無いが、例えば、電極屑、黒鉛屑、ヤシ殻系炭粉、モミ殻系炭粉、木炭粉、竹炭粉、無煙炭、れき青炭、サンドブラック(黒砂)、カーボンブラックのうち、1種または2種以上を挙げることが出来る。又、コークスは、廃棄物由来であると、加炭材全体として廃棄物で製造することが可能となるため、経済性の点から好ましい。
【0049】
又、コークスの固定炭素に特に限定は無いが、例えば、コークスの固定炭素が50.0重量%~99.9重量%の範囲内であると好ましい。コークスの固定炭素は、例えば、JIS M 8812-8に準拠して測定される。尚、加炭材に混合されるコークスの固定炭素が高ければ高い程、加炭効率に優れ、二酸化炭素排出削減効果に優れる。
【0050】
又、コークスの灰分に特に限定は無いが、例えば、コークスの灰分が0.1重量%~15.0重量%の範囲内であると好ましい。コークスの灰分は、例えば、JIS Z 7302-4に準拠して測定される。
【0051】
又、コークスの平均粒子径に特に限定は無いが、例えば、3mm~20mmの範囲内であると好ましい。
【0052】
又、シュレッダーダストとコークスとの混合方法に特に限定は無いが、例えば、通常の重機を用いてシュレッダーダストにコークスを混合する方法を挙げることが出来る。
【0053】
又、コークスの濃度に特に限定は無いが、例えば、本加炭材に対して5重量%~50重量%の範囲内であると好ましい。これにより、加炭効率に優れ、二酸化炭素排出削減効果に優れる。
【0054】
次に、高度選別シュレッダーダストにコークスを混合した加炭材の製造方法について、
図3を参照しながら簡単に説明する。先ず、高度選別シュレッダーダストを製造する方法は、S101からS107までの通りである。次に、製造者は、高度選別シュレッダーダストとコークスを所定の重機に投入して、シュレッダーダストとコークスとを混合する(
図3:S202)。そして、製造者は、その混合物を圧縮固形機に投入し、所定の溶融温度に加熱して柱状に成形する(
図3:S202)。これにより、高度選別シュレッダーダストにコークスを混合した加炭材を製造することが出来る。
【実施例】
【0055】
以下、実施例、比較例等によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
図3に示す方法で高度選別シュレッダーダストを製造した。この高度選別シュレッダーダストの成分は、
図2に示すように、樹脂成分は全高度選別シュレッダーダストに対して30重量%、発泡材成分は25重量%、繊維成分は24重量%、ゴム成分は11重量%、木材成分は5重量%、紙成分は3重量%、鉄成分は1重量%、非鉄金属成分は1重量%であった。つまり、高度選別シュレッダーダストの不燃成分は全高度選別シュレッダーダストに対して2重量%であり、燃焼成分は、98重量%であった。
【0057】
この高度選別シュレッダーダストの高位発熱量は6500kcal/kg(JIS Z 7302-2準拠)であり、低位発熱量は5900kcal/kg(JIS Z 7302-2準拠)であり、灰分は18.9重量%(JIS Z 7302-4準拠)であり、水分は1.3重量%(JIS Z 7302-3準拠)であり、銅は0.9重量%(JIS Z 7302-5準拠)であり、固定炭素は9.1重量%(JIS Z 7302-3準拠)であり、炭素は58.9重量%(JIS Z 7302-3準拠)であり、塩素は1.6重量%(JIS Z 7302-6準拠)であった。
【0058】
製造した高度選別シュレッダーダストを所定の圧縮固形機に投入し、所定の溶融温度に加熱して、円柱状に成形して、加炭材を製造した。加炭材の円柱の直径は150mmであり、円柱の長手寸法は500mmである。この加炭材を実施例1とした。
【0059】
<実施例2>
実施例1において、高度選別シュレッダーダストに所定の重機に投入し、コークスとしてヤシ殻系炭粉を全体に対して5重量%投入し、重機で混合した。その混合物を圧縮固形機に投入して円柱状の加炭材を製造した。この加炭材を実施例2とした。
【0060】
尚、このヤシ殻系炭粉の高位発熱量は6800kcal/kg(JIS Z 7302-2準拠)であり、低位発熱量は4600kcal/kg(JIS Z 7302-2準拠)であり、固定炭素は55.2重量%(JIS Z 7302-3準拠)であり、炭素は78.5重量%(JIS Z 7302-3準拠)であり、水分は28.1重量%(JIS Z 7302-3準拠)であり、灰分は12.6重量%(JIS Z 7302-4準拠)であり、塩素は0.21重量%(JIS Z 7302-6準拠)であった。
【0061】
<実施例3>
実施例2において、コークスのヤシ殻系炭粉の濃度を10重量%にしたこと以外は実施例2と同様にして加炭材を製造し、この加炭材を実施例3とした。
【0062】
<実施例4>
実施例2において、コークスのヤシ殻系炭粉の濃度を25重量%にしたこと以外は実施例2と同様にして加炭材を製造し、この加炭材を実施例4とした。
【0063】
<実施例5>
実施例2において、コークスのヤシ殻系炭粉を無煙炭(焼成無煙炭)にして、無煙炭の濃度を10重量%にしたこと以外は実施例2と同様にして加炭材を製造し、この加炭材を実施例5とした。
【0064】
この無煙炭の固定炭素は90.42重量%(JIS Z 7302-3準拠)であり、灰分は9.02重量%(JIS Z 7302-4準拠)であった。
【0065】
<実施例6>
実施例5において、コークスの無煙炭の濃度を50重量%にしたこと以外は実施例5と同様にして加炭材を製造し、この加炭材を実施例6とした。
【0066】
<比較例1>
実施例1において、高度選別シュレッダーダストを従来選別シュレッダーダストにしたこと以外は実施例1と同様にして加炭材を製造し、この加炭材を比較例1とした。
【0067】
尚、従来選別シュレッダーダストの成分は、
図2に示すように、樹脂成分は全従来選別シュレッダーダストに対して38重量%、発泡材成分は18重量%、繊維成分は17重量%、ゴム成分は8重量%、木材成分は3重量%、紙成分は2重量%、鉄成分は5重量%、ガラス成分は5重量%、ハーネス成分は3重量%、非鉄金属成分は2重量%であった。つまり、従来選別シュレッダーダストの不燃成分は全従来選別シュレッダーダストに対して14重量%であり、燃焼成分は、86重量%であった。
【0068】
<比較例2>
比較例1において、比較例1の製造日と異なる日で製造したこと以外は比較例1と同様にして加炭材を製造し、この加炭材を比較例2とした。
【0069】
<比較例3>
実施例1において、加炭材の円柱の直径を150mmから10mmとし、円柱の長手寸法を500mmから50mmにしたこと以外は実施例1と同様にして加炭材を製造し、この加炭材を比較例3とした。
【0070】
<評価方法>
粗鋼を電気炉で溶融させて出鋼する際に必要となる酸素量と、粗鋼の脱酸・昇熱のために投入した炭素量とを算出することで、加炭材の性能を評価した。電気炉に粗鋼とともに加炭材や補助熱料を投入し、通電してアーク放電により粗鋼を昇温して溶融させる。粗鋼の溶融状態に応じて炭素を粗鋼に吹き込み、スラグフォーミングを促進させる。その後、出鋼となる。
【0071】
ここで、加炭材の評価として、先ず、出鋼Cアルミ補正酸素原単位(Nm3/t)を算出した。先ず、出鋼酸素原単位(Nm3/t)は、電気炉内の粗鋼と加炭材との反応では、(1/2)O2+C→COの反応の際に熱が発生して、その熱で粗鋼が溶融されるため、1t当たりの出鋼に対して必要となった酸素量を意味する。一方、電気炉には、補助熱料としてアルミを投入するが、アルミは酸素と結びつくため、このアルミと結び付いた酸素量を出鋼酸素原単位から差し引くこと、また、出鋼Cに関しては、出鋼前成分値の変動分を同じとなるように(ここでは、C=13×10-2%)、出鋼Cアルミ補正酸素原単位(Nm3/t)を算出する。アルミと結び付いた酸素量は、投入したアルミ量から算出する。
【0072】
次に、加炭材の評価として、InputC(kg/t)を算出した。InputCは、1t当たりの粗鋼を溶融状態にするために投入した炭素(C)の量を意味し、加炭材に含まれる炭素やスラグフォーミングの促進のために吹き込まれる炭素も含まれる。所定の出鋼Cアルミ補正酸素原単位(Nm3/t)に対してInputC(kg/t)が低い場合、所定の酸素量に対して少ない炭素量で粗鋼を溶融状態にすることが出来るため、InputC(kg/t)が低い程、加炭効率が良く、排出される二酸化炭素の削減効果があると判断する。
【0073】
<評価結果>
図5は、実施例1-6、比較例1-3における加炭材の評価結果の表を示す。
図5に示すように、実施例1-6でのInputC(kg/t)は、比較例1-2のInputC(kg/t)と比較すると、高い出鋼Cアルミ補正酸素原単位(Nm
3/t)に対して全体的に低い値を示していることが理解される。ここで、比較例3では、加炭材が炉内で直ぐに燃え尽きてしまうとともに、その炎が大きくなって、炉内が危険状態となったため、評価を中断した。そのため、比較例3では、InputC(kg/t)も出鋼Cアルミ補正酸素原単位(Nm
3/t)も算出することが出来なかった。
【0074】
図6は、実施例1-6、比較例1-2における加炭材の評価結果のグラフを示す。
図6のグラフでは、横軸を出鋼Cアルミ補正酸素原単位(Nm
3/t)とし、縦軸をInputC(kg/t)とし、出鋼Cアルミ補正酸素原単位(Nm
3/t)とInputC(kg/t)の組み合わせによって規定される加炭効率も併せて示している。加炭効率は、出鋼Cアルミ補正酸素原単位(Nm
3/t)が高く、且つ、InputC(kg/t)が低くなる程、加炭効率は高くなる。そして、
図6のグラフに、実施例1-6、比較例1-2における加炭材の評価結果をプロットしている。
図6に示すように、比較例1-2では、加炭効率が60%の領域に存在しているものの、実施例1-6では、高度選別シュレッダーダストだけの加炭材やコークスが添加された加炭材、コークスの種類と濃度が異なる加炭材など、多様であるものの、すべての加炭材の評価結果が、加炭効率が70%から100%を超える領域に存在しており、全体的に加炭効率が高いことが理解される。そのため、高度選別シュレッダーダストを利用した加炭材では、加炭効率が高く、その結果、製鉄や製鋼の溶解時に必要な炭素量を削減することが可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明に係る加炭材及び加炭材の製造方法は、出鋼における省エネ及び二酸化炭素排出削減と地球環境への負荷低減に貢献する技術として有用であり、製鉄や製鋼の溶解時に必要な炭素量を削減することが可能な加炭材及び加炭材の製造方法として有効である。
【要約】
【解決手段】本発明に係る加炭材は、未選別のシュレッダーダストから、一部不燃成分を含有する樹脂成分を、全未選別のシュレッダーダストに対して10重量%以上除去し、鉄、ガラス、ハーネス、及び非鉄金属を含有する不燃成分を、全未選別のシュレッダーダストに対して20重量%以上除去した高度選別シュレッダーダストであって、前記樹脂成分が全高度選別シュレッダーダストに対して20重量%~40重量%の範囲内で含有し、前記不燃成分が全高度選別シュレッダーダストに対して0重量%~3重量%の範囲内で含有する高度選別シュレッダーダストを混合して柱状に成形することで構成され、前記柱の長手寸法は、200mm~600mmの範囲内であり、前記柱の幅寸法は、100mm~200mmの範囲内である。
【選択図】
図1