(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】地盤改良装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2021164357
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2021-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152642
【氏名又は名称】株式会社日東テクノ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】島野 嵐
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】森田 俊平
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-234526(JP,A)
【文献】特開2008-095442(JP,A)
【文献】特開2011-241538(JP,A)
【文献】特許第6754914(JP,B1)
【文献】特開2021-147987(JP,A)
【文献】特開2005-180112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エアーを伴った硬化材スラリーを地盤中に噴射し、混和材が添加された硬化材スラリーと切削地盤を混合撹拌して地盤改良体を造成する
二重管式高圧噴射撹拌工法で用いる地盤改良装置であって、
硬化材スラリーを噴射する第1の噴射口と、
圧縮エアーと混和材を同時にまたは別々に噴射する
噴射口であって、前記第1の噴射口を包囲するように設けられた第2の噴射口と、
前記第1の噴射口に通ずる、硬化材スラリー用の第1の流路と、
前記第2の噴射口に通ずる、圧縮エアーおよび混和材用の第2の流路と、を有
し、
前記圧縮エアーと前記混和材が前記第2の噴射口と前記第2の流路を共用するように構成されている、ことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
さらに、
硬化材スラリーを圧送する硬化材用ポンプと、
混和材を圧送する混和材用ポンプおよびこれに通ずる混和材流路と、
圧縮エアーを圧送するエアーコンプレッサおよびこれに通ずるエアー流路と、
前記混和材流路を前記第2の流路に連通させる混和材噴射位置と、前記エアー流路を前記第2の流路に連通させる圧縮エアー噴射位置と、の間で切り替え可能な流路切替装置と、を有することを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項3】
前記第2の噴射口には、混和材を霧状に噴射するための多孔部材が設けられており、
前記第2の噴射口から、圧縮エアーと混和材を同時に噴射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項4】
複数方向噴射できるように、第1の噴射口と第2の噴射口の組合せが少なくとも2組設けられ、
一方の第2の噴射口には、混和材を遮って圧縮エアーのみ噴射するための混和材遮断手段が設けられ、
他方の第2の噴射口からは、混和材と圧縮エアーを同時に噴射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管式高圧噴射攪拌工法で用いる地盤改良装置とこれを用いた地盤改良方法に関するものであり、特に、当該地盤改良装置の先端噴射装置とこれを用いた地盤改良方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二重管式高圧噴射攪拌工法では、硬化材スラリーを圧縮エアーとともに地盤中に高圧で噴射することにより、地盤を切削し硬化材スラリーと混合攪拌することで円柱状の地盤改良体を造成する。圧縮エアーは硬化材スラリーを包み込む形で噴射され土中内での流体動圧の距離減衰を緩和する効果がある。
【0003】
二重管式高圧噴射攪拌工法の施工手順の一例を
図1に示す。図示する施工例では、二重管ロッドの先端に先端噴射装置を装着した噴射管を用いる。なお、
図1(a)~(d)は、以下説明する工程a~工程dに対応している。
【0004】
<工程a>
はじめに、地盤改良体の造成位置の中心に施工機械を据え付け、二重管ロッドの先端に噴射装置を装着した噴射管をクレーンにより吊って、施工機械に建て付ける。そして、先端噴射装置から削孔水を吐出させつつ、施工機械によって噴射管を回転させながら地盤中の計画深度まで挿入する。
【0005】
<工程b>
先端噴射装置を装着した噴射管を計画深度まで挿入したら、噴射管の回転数(rpm)と引き上げ時間(s/m)を設定し、圧縮エアーを伴った硬化材スラリーの噴射を開始する。
図2に示すように、硬化材スラリーはミキサーで作液され、硬化材用ポンプによって圧送される。また、圧縮エアーはエアーコンプレッサによって圧送される。先端噴射装置の横向き噴射ノズルから硬化材スラリーが圧縮エアーとともに高圧噴射されることで、その噴流の強力なエネルギーによって原地盤が切削される。
【0006】
<工程c>
設定した回転数で噴射管を回転させることで、高圧噴射された硬化材スラリーの噴射流によって地盤が切削されるとともに、原土と硬化材スラリーが強制的に撹拌混合される。そして、最初のステージにおける地盤改良体の部分的造成が完了したら、施工機械を作動させて噴射管を第二ステージ、第三ステージ、・・・と段階的にステップアップさせる。例えばステップ長(1ステップ当たりの長さ)は25mmに設定され、1m当たりステップ数は40ステップに設定される。このように、各ステージにおいて噴射管を設定速度で回転させながら、噴射ノズルから硬化材スラリーを高圧噴射し、設定した引き上げ時間に従って噴射管を段階的にステップアップさせることで、略円柱状の地盤改良体を造成することができる。
【0007】
<工程d>
所定の改良範囲で地盤改良体を造成した後、噴射管を地上まで引き抜いて、管内を清水により洗浄する。
【0008】
高圧噴射攪拌工法において、地盤を切削する能力は、硬化材スラリーの噴射圧力(MPa)、単位噴射量(L/min)、圧縮エアーの単位噴射量(L/min)などで決まり、硬化材スラリーの単位噴射量を大きくすることで地盤を切削する能力を高めることができる。このため、二重管工法では一般的に、期待する地盤改良体径に合わせて使用ツールスを決定し噴射圧力と単位噴射量、および圧縮エアーの単位噴射量などを定めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-106265
【文献】特開2014-62365
【文献】特開2015-117540
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高圧噴射攪拌工法で使用する硬化材は通常、セメント系固化材を使用しているが、使用用途により減粘材・減水材・遅延材・早強材・分散材・補強材などの混和材を添加する場合がある。この場合、混和材とセメント系固化材は作液プラントで事前に混錬し送液するが、混和材の種類によってはセメント系固化材と反応して効果が薄れる場合があり事前配合できず施工後に別の施工機械を用い混和材を添加したり、二重管ではなく三重管や多孔管の噴射装置を用いたりして添加している。この場合、前者では特開2017-106265で提案しているように地盤改良体造成後に再度噴射装置を挿入する二工程での施工となり施工時間が延び作業も煩雑となる。後者では、特開2014-62365や特開2015-117540で提案しているように噴射設備に混和材等を通す送液ラインを増設する必要が有り、施工ツールスや施工機械の大型化が必要となる。
【0011】
そこで、上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、高圧噴射撹拌工法において硬化材スラリーに混和材を添加する場合に、従来の施工機械や使用ツールスの大きさや形状を変えることなく、尚且つ、煩雑な複数の工程・材料作液をすることなく単一工程で施工することを可能にする、地盤改良装置および地盤改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、
圧縮エアーを伴った硬化材スラリーを地盤中に噴射し、混和材が添加された硬化材スラリーと切削地盤を混合撹拌して地盤改良体を造成する高圧噴射撹拌工法で用いる地盤改良装置であって、
硬化材スラリーを噴射する第1の噴射口と、
圧縮エアーと混和材を同時にまたは別々に噴射する第2の噴射口と、
前記第1の噴射口に通ずる、硬化材スラリー用の第1の流路と、
前記第2の噴射口に通ずる、圧縮エアーおよび混和材用の第2の流路と、
を具備する先端噴射装置を有する地盤改良装置によって達成される。
【0013】
上記地盤改良装置は、具体的実施形態の一例として、例えば、
硬化材スラリーを圧送する硬化材用ポンプと、
混和材を圧送する混和材用ポンプおよびこれに通ずる混和材流路と、
圧縮エアーを圧送するエアーコンプレッサおよびこれに通ずるエアー流路と、
前記混和材流路を前記第2の流路に連通させる混和材噴射位置と、前記エアー流路を前記第2の流路に連通させる圧縮エアー噴射位置と、の間で切り替え可能な切替装置と、
を有している。
【0014】
また、上記地盤改良装置では、具体的実施形態の別の例として、例えば、前記第2の噴射口に、混和材を霧状に噴射するための多孔部材が設けられている。そして、前記第2の噴射口から前記多孔部材を介して圧縮エアーと混和材を同時に噴射する。
【0015】
また、上記地盤改良装置では、具体的実施形態の別の例として、例えば、複数方向噴射できるように、第1の噴射口と第2の噴射口の組合せが少なくとも2組設けられている。そして、一方の組合せの第2の噴射口には、混和材を遮って圧縮エアーのみ噴射するための混和材遮断手段が設けられ、他方の組合せの第2の噴射口からは、混和材と圧縮エアーを同時に噴射する。
【0016】
また、前述した目的は、
圧縮エアーを伴った硬化材スラリーを地盤中に噴射する先端噴射装置を用いた高圧噴射撹拌工法による地盤改良方法であって、
柱状の地盤改良体を造成する過程で、硬化材スラリーを噴射するとともに、先端噴射装置の同じ流路と同じ噴射口を介して圧縮エアーと混和材を同時にまたは別々に噴射し、
混和材が添加された硬化材スラリーと切削地盤を混合撹拌して柱状の地盤改良体を造成する、こと地盤改良方法によって達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、圧縮エアーを伴った硬化材スラリーを地盤中に噴射するにあたって、先端噴射装置の第1の噴射口から硬化材スラリーを噴射するとともに、第2の噴射口から圧縮エアーと混和材を同時にまたは別々に(すなわち異なるタイミングで)噴射する。硬化材スラリー、圧縮エアー、混和材の噴射は、いずれも地盤改良体の造成過程で行う。
これにより、地盤改良体造成後に混和材添加目的で再度噴射装置を挿入する二工程での施工が不要となるので、二工程による従来技術と比較して施工時間が短縮され、作業が簡単になる。
また、本発明では、先端噴射装置の同じ流路(第2の流路)と同じ噴射口(第2の噴射口)を介して圧縮エアーと混和材を同時にまたは別々に噴射するので、二重管ではなく三重管や多孔管の噴射装置を用いる従来技術のように、混和材等を通すための送液ラインを増設する必要が無く、施工ツールスや施工機械の大型化が不要である。
【0018】
また、本発明によれば、従来技術のように施工機械や使用ツールスの大きさや形状を変えることなく、尚且つ、煩雑な複数の工程・材料作液をすることなく単一工程で施工することができる。
また、プラントで事前配合する場合は改良全長に渡り混和材を使用する必要や複数のプラントを用い流路の切換えを行う必要が有るが、本発明では必要な改良区間のみ混和材の添加が可能であり経済的な施工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】高圧噴射攪拌工法の一例を示す工程図である。
【
図2】従来の高圧噴射攪拌工法における材料流路の概要を示す図である。
【
図3】第1実施形態における材料流路の概要を示す図である。
【
図4】第2実施形態・第3実施形態における材料流路の概要を示す図である。
【
図5】変形例における材料流路の概要を示す図である。
【
図6】第1実施形態の地盤改良装置が具備する先端噴射装置を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態の先端噴射装置が具備する噴射ノズルを示す正面図である。
【
図8】第2実施形態の先端噴射装置が具備する噴射ノズルを示す正面図である。
【
図9】第3実施形態の先端噴射装置が具備する噴射ノズルを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(地盤改良装置)
はじめに、
図3、
図6、
図7に基づいて、第1実施形態に係る地盤改良装置の構成について説明する。本実施形態の地盤改良装置は、二重管式高圧噴射撹拌工法で用いる装置である。高圧噴射撹拌工法では、圧縮エアーを伴った硬化材スラリーを地盤中に噴射し、混和材が添加された硬化材スラリーと切削地盤を混合撹拌して柱状の地盤改良体を造成する。
【0021】
地盤改良装置1は噴射管3を具備している。噴射管3は、二重管ロッド5と、その先端に装着された先端噴射装置7を含んで構成されている。
【0022】
先端噴射装置7は、
図6に示すように、
・硬化材スラリーを噴射する第1の噴射ノズルN1と、
・圧縮エアーと混和材を別々に噴射する第2の噴射ノズルN2と、
・第1の噴射ノズルに通ずる、硬化材用の第1の流路R1と、
・第2の噴射ノズルに通ずる、圧縮エアーおよび混和材用の第2の流路R2を
有している。
【0023】
なお、従来技術では、流路R2に相当する流路で圧縮エアーだけを導き、噴射ノズルN2に相当するノズルから圧縮エアーだけを噴射しているが、本発明では、流路R2と噴射ノズルN2を利用して(圧縮空気を噴射するだけでなく)混和材を添加する。このように、本発明では、圧縮空気と混和材が流路R2と噴射ノズルN2を共用するように構成されており、この点で本発明は従来技術と大きく異なる。
【0024】
図6、
図7に示すように、噴射ノズルN1は、硬化材スラリーを噴射するための第1の噴射口F1を有している。噴射ノズルN2は、圧縮エアーと混和材を別々に噴射する第2の噴射口F2を有している。本実施形態では、圧縮エアーと混和材を同じ噴射口(噴射口F2)から異なるタイミングで別々に噴射する。噴射ノズルN2から、圧縮エアーと混和材のどちらが噴射されるかは、後述する流路切替装置61の切換位置によって決定される。
【0025】
噴射ノズルN2は、
図6、
図7に示すように、硬化材スラリー用の噴射ノズルN1を包囲するように設けられている。これにより、噴射ノズルN2からの噴流が、噴射ノズルN1からの硬化材噴流を包み込む形で同時噴射される。
【0026】
なお、本実施形態の先端噴射装置7では、施工時に2方向噴射できるように、噴射ノズルN1と噴射ノズルN2の組合せが2組設けられているが、噴射ノズルN1と噴射ノズルN2の数は特に限定されるものではなく、1組でもよくあるいは3組以上でもよい。
【0027】
二重管ロッド5は、図示を省略するが、
・先端噴射装置7の流路R1につながる硬化材流路と、
・先端噴射装置7の流路R2につながる、圧縮エアーおよび混和材用の共用流路を
有している。
本実施形態では、二重管ロッド5の硬化材流路は二重管の内管によって形成され、共用流路は二重管の外管によって形成されている。
【0028】
また
図3に示すように、本実施形態において、地盤改良装置1は、
・硬化材用ポンプ31およびこれに接続された硬化材流路33(耐圧ホース)と、
・混和材用ポンプ41およびこれに接続された混和材流路43(耐圧ホース)と、
・エアーコンプレッサ51およびこれに接続されたエアー流路53(エアーホース)と、
・混和材流路33とエアー流路43の一方を、流路73を介して二重管ロッド5の共用流路(外管の流路)につなげる流路切替装置61を有している。
【0029】
硬化材用ポンプ31は、ミキサー30で作液された硬化材スラリーを、硬化材流路33を介して圧送する役割を担う。
混和材用ポンプ41は、タンク40に貯留してある混和材を、混和材流路43を介して圧送する役割を担う。
エアーコンプレッサ51は、エアー流路53を介して圧縮エアーを圧送する役割を担う。
【0030】
なお、本実施形態では、一例として、作液した混和材をタンク40に予め貯留しておき、混和材用ポンプ41により圧送することを挙げているが、混和材に係る態様はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示す変形例のように、混和材を構成する所定の材料(例えば水や複数の材料)をミキサー45で混合し、このミキサー45で作液した混和材を混和材用ポンプ41により圧送してもよい。後述する第2実施形態・第3実施形態でも同様である。
【0031】
流路切替装置61は、
図3に示すように、混和材用ポンプ41につながる混和材流路43と、エアーコンプレッサ51につながるエアー流路53との合流地点に設けられている。この流路切替装置61は、電子制御式の切替弁を含んで構成されており、
・混和材流路43を二重管ロッド5の共用流路に連通させる「混和材噴射位置」と、
・前記エアー流路を二重管ロッド5の共用流路に連通させる「圧縮エアー噴射位置」と、
の間で切り替え可能に構成されている。
【0032】
流路切替装置61が「混和材噴射位置」にセットされているときには、混和材用ポンプ41につながる混和材流路43が、流路73を介して二重管ロッド5の共用流路(外管の流路)に接続される。その結果、混和材用ポンプ41から圧送された混和材が、流路43,73と第二重管ロッド5の共用流路を介して、先端噴射装置7の噴射口F2から噴射される。
【0033】
一方、流路切替装置が「圧縮エアー噴射位置」にセットされているときには、エアーコンプレッサ51につながるエアー流路53が、流路73を介して二重管ロッド5の共用流路(外管の流路)に接続される。その結果、エアーコンプレッサ51から圧送された圧縮エアーが、流路53,73と二重管ロッド5の共用流路を介して、先端噴射装置7の噴射口F2から噴射される。
【0034】
なお、流路切替装置61の切り替えは、自動でも手動でもよい。本実施形態では、あらかじめ設定した所定のタイミングで流路の切り替えを自動的に行うように流路切替装置61を構成している。流路切替装置61により流路の切り替えを行うことにより、地盤改良体の造成と混和材の充填を断続的に行うことができ、単一工程で作業できることから従来の施工時間と同等の時間で施工することが可能である。
【0035】
また、流路切替装置61の切り替えタイミングは特に限定されるものではなく、例えば、地盤改良体の造成の速度に連動して切り替えを行うようにしてもよい。
【0036】
本実施形態で利用可能な混和材は特に限定されず、一般的に知られた混和材のなかから、使用用途に応じて適宜選択することができる。混和材の具体例としては、例えば、減粘材・減水材・遅延材・早強材・分散材・補強材などが混和材として一般的に知られている。
減粘材は、硬化材の粘性を下げて流動性を向上させ、排泥排出を容易にしたり、地盤と硬化材を攪拌しやすくしたりする。
減水材は、硬化材に含まれるセメント粒子を分散させ硬化材の流動性を向上させる。
遅延材は、硬化材の初期水和反応を遅らせ、意図的に初期硬化の遅延をさせ次工程の作業を容易にさせる。例えば同じ地盤を二回攪拌する場合や改良地盤に鉄筋やH鋼などの補強材を挿入する場合などに利用することができる。
早強材は、硬化材の加水分解を促進し、早期強度を増進させるもので硬化までの養生期間を短縮させる。改良後から地盤が固化するまでの時間を短縮し、この間の地盤の変状・変形等を抑制する。
分散材は、セメントなどの細かい微粒子を硬化材の中に均一に分散させ硬化材の改良効果を地盤内で均一にする。
補強材は、硬化材に合成繊維などの材料を添加し改良地盤の強度や剛性を付与させる。
【0037】
(地盤改良方法)
次に、
図3、
図6、
図7を参照しつつ
図1に基づいて、上述した地盤改良装置を用いた地盤改良方法について説明する。なお、
図1(a)~(d)は、以下説明する工程a~工程dに対応している。符号は、
図3、
図6、
図7に記載のものを引用する。
【0038】
<工程a>
はじめに、地盤改良体の造成位置の中心に施工機械を据え付け、二重管ロッド5の先端に噴射装置7を装着した噴射管3をクレーンにより吊って、施工機械に建て付ける。そして、先端噴射装置7から削孔水を吐出させつつ、施工機械によって噴射管3を回転させながら地盤中の計画深度まで挿入する。
【0039】
<工程b>
噴射管3を計画深度まで挿入したら、噴射管3の回転数(rpm)と引き上げ時間(s/m)を設定し、圧縮エアーとともに硬化材スラリーの噴射を開始する。このとき、流路切替装置61(
図3参照)は「圧縮エアー噴射位置」にセットされている。したがって、先端噴射装置7の噴射ノズルN1,N2から硬化材スラリーが圧縮エアーとともに高圧噴射されるので、その噴流の強力なエネルギーによって原地盤が切削される。
【0040】
<工程c>
設定した回転数で噴射管3を回転させることで、高圧噴射された硬化材スラリーの噴射流によって地盤が切削されるとともに、原土と硬化材スラリーが強制的に撹拌混合される。地盤改良体の造成過程では、従来技術と同様に、施工機械を作動させて噴射管3を第二ステージ、第三ステージ、・・・と段階的にステップアップさせる。例えばステップ長(1ステップ当たりの長さ)は25mmに設定され、1m当たりステップ数は40ステップに設定される。
このように、各ステージにおいて噴射管3を設定速度で回転させながら、噴射ノズルN1から硬化材スラリーを高圧噴射するとともに、噴射ノズルN2から圧縮エアーを噴射し、設定した引き上げ時間に従って噴射管3を段階的にステップアップさせることで、略円柱状の地盤改良体を造成する。
また、地盤改良体を造成する各ステージでは、流路切替装置61による流路の切り替えを実施する。例えば各ステージの初期においては、流路切替装置61を「圧縮エアー噴射位置」にセットする。これにより、エアーコンプレッサ51につながるエアー流路53が、流路73を介して二重管ロッド5の共用流路(外管の流路)に接続され、エアーコンプレッサ51から圧送された圧縮エアーが、流路43,73と二重管ロッドを介して、先端噴射装置7の噴射口F2から噴射される。その結果、各ステージの初期においては、圧縮エアーを伴った硬化材スラリーの強力な噴流エネルギーによる原地盤の切削が優先される。
そして、各ステージにおいて噴射管3が予め定めた回数回転した段階で(例えば噴射管3が一回転あるいは数回転した段階で)、流路切替装置61を「混和材噴射位置」に自動的に切り替える。これにより、混和材用ポンプ41につながる混和材流路43が、流路73を介して二重管ロッド5の共用流路(外管の流路)に接続され、混和材用ポンプ41から圧送された混和材が、流路43,73と二重管ロッドを介して、先端噴射装置7の噴射口F2から噴射される。地盤中で噴射された混和材は、硬化材噴流に乗って改良径の範囲内で周囲に拡がるとともに、地盤中で噴射済みの硬化材スラリーに添加される。
そして、噴射管3をステップアップさせるタイミングが到来したときに、流路切替装置61を再び「圧縮エアー噴射位置」にセットして、次段における地盤改良体の造成に移行する。
このように、本実施形態では、地盤改良体を造成する過程で(地盤改良体を造成する各ステージで)、硬化材スラリーを地盤中で噴射するとともに、圧縮エアーと混和材を同じ流路・噴射口(流路R2、噴射口F2)を介して異なるタイミングで別々に噴射する。
なお、流路切替装置61の流路切り替えタイミングは上述したものに限定されるものではなく、施工仕様に応じて任意のタイミングに設定することができる。
【0041】
<工程d>
そして、所定の改良範囲で地盤改良体を造成した後、噴射管3を地上まで引き抜いて、管内を清水により洗浄する。
【0042】
(地盤改良装置の第2実施形態)
次に、
図4、
図8に基づいて、地盤改良装置の第2実施形態について説明する。
【0043】
図4に示す地盤改良装置の第2実施形態では、
図3に示す様な流路切替装置を設置せず、合流地点63において流路43,53が単に合流して流路73につながっている。そして、圧縮エアーと混和材を、先端噴射装置の流路R2を介して噴射ノズルN2から同時に噴射する。
【0044】
なお、噴射ノズルN2の噴射口は従来技術では空洞となっているが、本実施形態では、
図8に示すように、当該噴射口(圧縮エアーと混和材の出口)に、混和材を霧状に噴射するための多孔部材71を設けている。この多孔部材71は、多数の噴射孔を有するリング部材からなり、噴射口F2を塞ぐように設けられている。
【0045】
このような多孔部材71を噴射口F2に設けることで、混和材を(霧状にし)効率よく噴射するこができ、従来の圧縮エアーの効果を維持しながら地盤改良体造成と同時に添加することができる。そして、これらより従来の施工機械と比較し工程の延長や施工機械の大型化の必要が無く同等の地盤改良体を造成することが可能となる。
【0046】
(地盤改良装置の第3実施形態)
次に、
図4、
図9に基づいて、地盤改良装置の第3実施形態について説明する。
【0047】
前述したとおり、先端噴射装置7には、施工時に2方向噴射できるように、噴射ノズルN1と噴射ノズルN2の組合せが2組設けられているが、本実施形態では、当該組合せの一方と他方とで構成が異なる。
【0048】
すなわち、本実施形態では、
図9に示すように、一方の噴射ノズルN2の噴射口F2には、混和材を遮って圧縮エアーのみ噴射するための混和材遮断部材73(圧縮エアーは通すが混和材は通さない部材)が設けられている。他方の第2の噴射口には、混和材遮断部材は設けないで空洞のままとし、混和材と圧縮エアーを同時に噴射する。片側の噴射口F2に設ける混和材遮断部材73の具体例としては、例えば、極細繊維やシリコンゴム等が挙げられる。
【0049】
したがって、第3実施形態の地盤改良装置を用いた高圧噴射撹拌工法では、柱状の地盤改良体を造成する過程で、先端噴射装置7が具備する片側の噴射口F2からは、圧縮エアーのみを噴射し、もう一方の噴射口F2からは、混和材と圧縮エアーを同時に噴射する構造としている。これにより、従来の圧縮エアーの効果を維持しながら地盤改良体造成と同時に添加することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 地盤改良装置
3 噴射管
5 二重管ロッド
7 先端噴射装置
30 ミキサー
31 硬化材用ポンプ
33 硬化材流路
40 タンク
41 混和材用ポンプ
43 混和材流路
45 ミキサー
51 エアーコンプレッサ
53 エアー流路
61 流路切替装置
63 合流地点
71 多孔部材
73 混和材遮断部材(圧縮エアーは通すが混和材は通さない部材)
N1 第1の噴射ノズル
N2 第2の噴射ノズル
R1 第1の流路
R2 第2の流路
F1 第1の噴射口
F2 第2の噴射口
【要約】
【課題】高圧噴射撹拌工法において硬化材スラリーに混和材を添加する場合に、従来の施工機械や使用ツールスの大きさや形状を変えることなく、尚且つ、煩雑な複数の工程・材料作液をすることなく単一工程で施工できるようにする。
【解決手段】地盤改良装置1は、圧縮エアーを伴った硬化材スラリーを地盤中に噴射し、混和材が添加された硬化材スラリーと切削地盤を混合撹拌して地盤改良体を造成する高圧噴射撹拌工法で用いる装置である。この地盤改良装置1が具備する先端噴射装置7は、硬化材スラリーを噴射する第1の噴射口と、圧縮エアーと混和材を同時にまたは別々に噴射する第2の噴射口と、前記第1の噴射口に通ずる硬化材用の第1の流路と、前記第2の噴射口に通ずる圧縮エアーおよび混和材用の第2の流路を有する。また、地盤改良装置1は、混和材噴射位置と圧縮エアー噴射位置との間で切り替え可能な流路切替装置を有する。
【選択図】
図3