(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】伝導性塗膜
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20220509BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20220509BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220509BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B7/025
C09D5/00 D
C09D5/24
(21)【出願番号】P 2017253932
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】10-2016-0181069
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー グローバル ケミカル カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518001689
【氏名又は名称】カンナム ジェビスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ナ ソン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム ギュ フェ
(72)【発明者】
【氏名】シン キョン ヒュ
(72)【発明者】
【氏名】ムン ジェ イル
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヨン スン
(72)【発明者】
【氏名】ファン トン ソク
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-262988(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031786(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/016617(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/046532(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031787(WO,A1)
【文献】特開2015-068996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-201/10
H01B 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の塗膜と、
前記第1の塗膜上に積層されている第2の塗膜とを含み、
前記第1の塗膜の表面抵抗は、前記第2の塗膜の表面抵抗の1/10以下であり、
前記第2の塗膜の明度が75以上であ
り、
前記第1の塗膜及び前記第2の塗膜は、それぞれ伝導性金属、伝導性高分子、伝導性酸化物、または伝導性炭素化合物の少なくとも1つを含む、伝導性塗膜。
【請求項2】
前記第2の塗膜の表面抵抗は、10
6~10
12Ω/sqである、請求項1に記載の伝導性塗膜。
【請求項3】
前記伝導性炭素化合物は、炭素繊維、グラフェン、またはカーボンナノチューブの少なくとも1つを含む、請求項
1に記載の伝導性塗膜。
【請求項4】
前記第1の塗膜及び前記第2の塗膜は、カーボンナノチューブを含む、請求項
3に記載の伝導性塗膜。
【請求項5】
前記第2の塗膜は、第2の塗膜の100重量部を基準として、前記伝導性金属、前記伝導性高分子、前記伝導性酸化物、または前記伝導性炭素化合物の少なくとも1つを0.01~0.4重量部含む、請求項
1に記載の伝導性塗膜。
【請求項6】
前記第1の塗膜の表面抵抗は、前記第2の塗膜の表面抵抗の1/100以下である、請求項1に記載の伝導性塗膜。
【請求項7】
前記第1の塗膜の厚さは3~20μmであり、前記第2の塗膜の厚さは8~50μmである、請求項1に記載の伝導性塗膜。
【請求項8】
前記伝導性塗膜の前記第2の塗膜上で測定した全表面抵抗は、10
3~10
9Ω/sqである、請求項1に記載の伝導性塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性塗膜に関し、より詳しくは、電気的性質に優れた伝導性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人間が生活している環境のほとんどで使用されている塗料(paint)は、美観的な効果のために、建築物の仕上げ材、自動車の塗装などの様々な分野に用いられている。この塗料は、前記機能に加えて、防炎・耐炎塗料、電磁波の遮蔽または吸収用の塗料、伝導性塗料、Pre-coating塗料、光触媒超微粉体塗料、難燃塗料、発熱塗料、放熱塗料、抗菌塗料、自己洗浄性塗料などの様々な特殊目的にも利用されている。
【0003】
特に、伝導性塗料は、帯電防止を目的とする塗料であり、化学工場、半導体の生産ライン、弾薬庫などにおいて、静電気による火災発生の危険性や製品生産の阻害要因を除去するために用いられる。伝導性塗料の最も重要な特徴は表面抵抗であり、適切な表面抵抗値を有することにより帯電防止の効果を発現できる。
【0004】
伝導性塗料は、一般的に、前記塗料内に電気的特性を示すことができる物質、すなわち伝導性物質を一部添加して塗料に伝導性を付与することで作成される。この伝導性物質としては、金属化合物、伝導性酸化物、伝導性高分子、黒鉛、カーボンブラックなどが使用されている。
【0005】
しかしながら、塗料に帯電防止機能を付与するために伝導性物質を添加するにあたり、必要な伝導性を得るために、伝導性物質を前記塗料に過量に添加する場合がある。この場合は、伝導性は優れるが、塗膜の物性低下により塗膜表面の損傷が発生するほか、製造コストの上昇及び所望の色具現が難しくなる問題点がある。
【0006】
韓国公開特許第10-2016-0117396号は、伝導性塗料組成物およびそれを用いる伝導膜の製造方法を開示しているが、前述した問題点の解決策は開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0117396号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた帯電防止機能を有しながらも、物理的、化学的な耐久性および色具現性に優れた伝導性塗膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、第1の塗膜と、該第1の塗膜上に積層されている第2の塗膜とを含み、前記第1の塗膜の表面抵抗は、前記第2の塗膜の表面抵抗の1/10以下であり、前記第2の塗膜の明度が75以上である、伝導性塗膜を提供する。
【0010】
また、前記第2の塗膜の表面抵抗は、106~1012Ω/sqであってもよい。
【0011】
また、前記第1の塗膜及び前記第2の塗膜の少なくとも1つは、伝導性金属、伝導性高分子、伝導性酸化物、または伝導性炭素化合物の少なくとも1つを含むことができる。
【0012】
また、前記伝導性炭素化合物は、炭素繊維、グラフェン、またはカーボンナノチューブの少なくとも1つを含むことができる。
【0013】
また、前記第1の塗膜及び前記第2の塗膜は、カーボンナノチューブを含むことができる。
【0014】
また、前記第2の塗膜は、第2の塗膜の100重量部を基準として、前記伝導性金属、前記伝導性高分子、前記伝導性酸化物、または前記伝導性炭素化合物の少なくとも1つを0.01~0.4重量部含むことができる。
【0015】
また、前記第1の塗膜の表面抵抗は、前記第2の塗膜の表面抵抗の1/100以下であってもよい。
【0016】
また、前記第1の塗膜の厚さは3~20μmであり、前記第2の塗膜の厚さは8~50μmであってもよい。
【0017】
また、前記伝導性塗膜の前記第2の塗膜上で測定した全表面抵抗は、103~109Ω/sqであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の伝導性塗膜は、複数層の塗膜のそれぞれの表面抵抗の差により、優れた色具現性を図ることができるとともに、帯電防止の効果の面で優れている。
【0019】
また、本発明の伝導性塗膜は、複数層の塗膜を含むことにより、物理的、化学的な耐久性に優れるため、塗膜表面の損傷の防止などの面で好ましく、放熱性の向上を図ることができる。
【0020】
これらのことから、本発明の伝導性塗膜は、帯電防止膜、放熱膜などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る伝導性塗膜を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、伝導性塗膜に関し、より詳細には、第1の塗膜と、該第1の塗膜上に積層されている第2の塗膜とを含み、前記第1の塗膜の表面抵抗は、前記第2の塗膜の表面抵抗の1/10以下であり、前記第2の塗膜の明度が75以上であることにより、複数層の塗膜のそれぞれの表面抵抗の差によって、優れた色具現性および帯電防止の効果を同時に図ることができ、また物理的、化学的な耐久性に優れており、放熱性が向上した伝導性塗膜に関する。
【0023】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。下記で本発明の理解を助けるために好適な実施形態を提示するが、これらの実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施形態に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0024】
なお、本発明の実施形態を説明するにあたり、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明確にする虞があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る伝導性塗膜を概略的に示す図である。
【0026】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る伝導性塗膜は、第1の塗膜10と第2の塗膜20とを含む。
【0027】
例示的な実施形態に係る伝導性塗膜は、第1の塗膜10と、該第1の塗膜10上に積層されている第2の塗膜20とを含み、少なくとも2層以上の構造で構成される。第2の塗膜20は、第1の塗膜10上に積層され、後述するように帯電防止層の役割を果たすことができる第1の塗膜10を外部からの衝撃や傷などから保護できる。そのため、前記伝導性塗膜は、優れた物理的、化学的な耐久性を有するとともに、帯電防止効果および放熱効果を図ることができる。
【0028】
第1の塗膜10の表面抵抗は、第2の塗膜20の表面抵抗の1/10以下である。例えば、第2の塗膜20は、第1の塗膜10と電気的に接続できる程度の比較的低い伝導性及び高い表面抵抗を有するのに対し、第1の塗膜10は、優れた帯電防止を行うことができる高い伝導性及び低い表面抵抗を有する。例えば、第1の塗膜10は帯電防止層に、第2の塗膜20は色具現層に具現できる。
【0029】
これにより、外部からの静電気などが前記伝導性塗膜に伝導すると、静電気は第2の塗膜20を通過して第1の塗膜10に伝導し、第1の塗膜に沿って流れ、保護しようとする基材30の帯電防止機能を効果的に行うことができる。一方、第2の塗膜20は、第1の塗膜10よりも高い表面抵抗を有する。そのために、例えば、第2の塗膜20は、少量の伝導性物質を含むことにより、第2の塗膜20の色具現性または透過性を低下させず、帯電防止塗料または伝導性塗膜の色を優れたものにすることができる。したがって、本発明の伝導性塗膜は、優れた色具現機能および帯電防止機能を同時に効果的に図ることが可能となる。
【0030】
第1の塗膜10の表面抵抗が第2の塗膜20の表面抵抗の1/10を超えると、帯電防止が第1の塗膜10及び/又は第2の塗膜20で同時に行われることがある。例えば、第2の塗膜20が伝導性物質を多少過量に含むことにより、前記第2の塗膜20の色が暗くなり、色具現性及び透過率を低下させるため好ましくない。
【0031】
一実施形態において、第1の塗膜10の表面抵抗は、第2の塗膜20の表面抵抗の1/100以下であってもよい。この場合は、第1の塗膜10の帯電防止機能及び第2の塗膜20の色具現性および透過性をさらに好ましく具現できる。透過率を過度に高めずに、向上した帯電防止性および色具現性を同時に具現する観点から、第1の塗膜10の表面抵抗は、第2の塗膜20の表面抵抗の1/109~1/103であることがより好ましい。
【0032】
第2の塗膜20の明度(luminosity)は75以上である。本明細書で明度とは、例えば色差計を用いて測定した色座標L*a*b*における明度L*を意味し、0~100の間の値で表すことができる。第2の塗膜20の明度は75以上であるので、色具現性に優れた伝導性塗膜の具現が可能である。第2の塗膜20の明度が75未満であると、前記伝導性塗膜の色が暗くなることがあり、可視光線透過率も減少するため好ましくない。好ましくは、伝導性塗膜または帯電防止塗料の色をより好ましく具現する観点から、第2の塗膜20の明度は80以上であってもよく、より好ましくは85以上であってもよい。
【0033】
一実施形態において、第2の塗膜20の表面抵抗は、106~1012Ω/sqであってもよい。第2の塗膜20の表面抵抗は、例えば、基材30上に形成された第2の塗膜20自体の表面抵抗として定義できる。第2の塗膜20は、前記範囲の表面抵抗を備えることにより、外部からの静電気などが第2の塗膜20を通過し、第1の塗膜10で帯電防止機能を行うことができる。第2の塗膜20の表面抵抗が106Ω/sq未満であると、第2の塗膜20でも帯電防止が行われることがあり、伝導性物質が過量に添加され、第2の塗膜の色が暗くなることがあるため、色具現の観点から好ましくない。第2の塗膜20の表面抵抗が1012Ω/sqを超えると、第2の塗膜20が絶縁したり、第1の塗膜10に外部の静電気を伝導できないため、前記伝導性塗膜の帯電防止効果が低下または削減することがある。一実施形態において、色具現機能および帯電防止機能をさらに向上する観点から、第2の塗膜20の表面抵抗は108~1011Ω/sqであってもよい。
【0034】
一実施形態において、第1の塗膜10及び/又は第2の塗膜20は、それぞれ、前述した表面抵抗または明度を備える伝導性塗膜を具現するために、伝導性物質を含むことができる。前記伝導性物質は、特に制限されないが、例えば、伝導性金属、伝導性高分子、伝導性酸化物、伝導性炭素化合物、またはこれらの2以上の組み合わせを含むことができる。
【0035】
前記伝導性炭素化合物の種類は、特に制限されないが、例えば、炭素繊維(carbon fiber)、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube,CNT)、又はこれらの2以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
前記カーボンナノチューブの種類は、特に制限されないが、例えば、単一壁(Single-walled)、二重壁(Double-walled)、薄い多重壁(Thin multi-walled)、多重壁(multi-walled)、束状(roped)、又はこれらの2以上の組み合わせであってもよい。中でも、製造コストを低減する観点から、多重壁のカーボンナノチューブが好ましい。
【0037】
前記伝導性金属の種類は、特に制限されないが、例えば、インジウム、スズ、ベリリウム、ストロンチウム、ランタン、ニオブ、タンタル、クロム、ニッケル、鉄、銀、金、コバルト、銅、亜鉛、アンチモン、イリジウム、セリウム、これらの2以上の組み合わせ、又はこれらの2以上の合金であってもよい。
【0038】
前記伝導性酸化物の種類は、特に制限されないが、例えば、スズ酸化物、インジウム-スズ酸化物、亜鉛酸化物、アルミニウム-亜鉛酸化物、チタン酸化物、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、鉄酸化物、又はこれらの2以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
前記伝導性高分子の種類は、特に制限されないが、例えば、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)、これらの誘導体、又はこれらの2以上の組み合わせであってもよい。
【0040】
前述した伝導性物質の中でも、光学的性質の維持及び優れた伝導性の具現の観点から、第1の塗膜10及び/又は第2の塗膜20は、カーボンナノチューブを含むことが好ましい。また、伝導性物質の伝導性などの物性の差異による帯電防止効果の低下を最小限に抑える観点から、第1の塗膜10及び第2の塗膜20は、カーボンナノチューブを含むことがより好ましい。
【0041】
一部の実施形態において、第2の塗膜20は、第2の塗膜20の100重量部を基準として、前記伝導性物質を0.01~0.4重量部含み、好ましくは0.01~0.09重量部含むことができる。具体的には、第2の塗膜20は、第2の塗膜20の100重量部を基準として、前記伝導性金属、前記伝導性高分子、前記伝導性酸化物、前記伝導性炭素化合物の少なくとも1つを0.01~0.4重量部含み、好ましくは0.01~0.09重量部含むことができる。前記範囲であると、第2の塗膜20の第1の塗膜10への静電気の伝導性が優れたものとなりながらも、第2の塗膜20における帯電防止機能が低下または消失する。これとともに、伝導性物質の含有量が最適に定義され、色が暗くならず、色具現性および透過率が改善された伝導性塗膜の具現が可能である。前記伝導性物質が0.01重量部未満であると、第2の塗膜20の表面抵抗が高くなって絶縁層になることがあり、前記伝導性物質が0.4重量部を超えると、第2の塗膜20の明度が減少し、色具現性および可視光線透過率の向上の観点から好ましくない場合がある。
【0042】
また、第1の塗膜10に含まれる前記伝導性物質の含有量は、特に制限されないが、帯電防止機能を向上する観点から、第1の塗膜10は、第1の塗膜10の100重量部を基準として0.3重量部以上、好ましくは0.5重量部以上の前記伝導性物質を含むことが好ましい。
【0043】
第2の塗膜20の厚さは、特に限定されないが、例えば、第1の塗膜10を外部の物理的、化学的な損傷から保護すると共に、第1の塗膜10の帯電防止効果を発現する観点から、8~50μmであってもよく、好ましくは15~25μmであってもよい。第2の塗膜20の厚さが8μm未満であると、第1の塗膜10の保護が十分でないことがあり、また第1の塗膜10の色が外部に映ることにより明度の低下が予想され、色具現の観点から好ましくない。第1の塗膜10の厚さが50μmを超えると、第1の塗膜10への静電気の伝導が容易ではないことがあり、第1の塗膜10の帯電防止効果が僅かである。
【0044】
第1の塗膜10の厚さは、特に限定されないが、例えば、安定した塗膜の形成及び帯電防止の実現の観点から3~20μmであってもよく、好ましくは5~10μmであってもよい。第1の塗膜10の厚さが3μm未満であると、塗膜を安定的に形成できず、表面抵抗の上昇をもたらすことがあり、第1の塗膜10の厚さが20μmを超えると、例えば、帯電防止の効果を具現するための伝導性物質の添加量が多くなり、製造コストを低減する観点から好ましくない場合がある。
【0045】
第1の塗膜10及び第2の塗膜20の厚さの比率は、特に限定されることなく、用途に応じて多様に具現できる。例えば、前記伝導性塗膜をPCM(Pre-coated metal)用の伝導性塗膜に使用すると、耐久性および色具現性を図る観点から、第2の塗膜20の厚さを第1の塗膜10の厚さよりも厚く形成することが好ましい。具体的には、第1の塗膜10の厚さに対する第2の塗膜20の厚さの割合は、1.5~4であってもよく、好ましくは2~3.5であってもよい。
【0046】
一部の実施形態において、前記伝導性塗膜の第2の塗膜20上で測定した全表面抵抗は、103~109Ω/sqであってもよい。つまり、一部の実施形態に係る少なくとも2層以上の伝導性塗膜は、帯電防止を適切に行うことができる103~109Ω/sqの表面抵抗を有するので、前記伝導性塗膜の帯電防止効果が優れたものとなる。また、第2の塗膜20は、明度が75以上であり、かつ表面抵抗が第1の塗膜10の表面抵抗よりも10倍以上高いので、色具現性および可視光線透過率に優れている。これらのことから、本発明の伝導性塗膜は、帯電防止用の伝導性塗膜に好適に用いることができる。
【0047】
実施形態に係る前記伝導性塗膜の製造方法は、特に限定されない。例えば、前記伝導性塗膜は、第1の塗料を基材30上に塗布し、乾燥、或いは熱又は光による硬化により第1の塗膜10を形成した後、第2の塗料を第1の塗膜10上に塗布し、乾燥、或いは熱又は光による硬化により第2の塗膜20を形成することによって製造できる。
【0048】
前記基材30の種類は、特に制限されず、帯電防止素材、静電分散素材、伝導性素材、電磁波遮蔽材、電磁波吸収材、太陽電池用材料、燃料感応電池(DSSC)用電極材料、電気素子、二次電池用正極活物質、負極活物質及びそれを用いた電気化学素子、二次電池、燃料電池、太陽電池、メモリ素子、ハイブリッドキャパシタ(P-EDLC)、またはキャパシタである電気化学素子、電子素子、半導体素子、光電素子、ノートパソコン部品材料、コンピュータ部品材料、携帯電話部品材料、PDA部品材料、PSP部品材料、ゲーム機用部品材料、ハウジング材料、透明電極材料、不透明電極材料、電界放出ディスプレイ(FED;field emission display)材料、BLU(back light unit)材料、液晶表示装置(LCD;liquid crystal display)材料、プラズマ表示パネル(PDP;plasma display panel)材料、発光ダイオード(LED;luminescent diode)材料、タッチパネル材料、電光掲示板材料、広告看板材料、ディスプレイ材料、発熱体、放熱体、メッキ材料、触媒、助触媒、酸化剤、還元剤、自動車部品材料、船舶部品材料、航空機器部品材料、保護テープ材料、接着剤材料、トレイ材料、クリーンルーム材料、輸送機器部品材料、難燃素材、抗菌素材、金属複合材料、非鉄金属複合材料、医療機器用材料、建材、床材料、壁紙材料、光源部品材料、ランプ材料、光学機器部品材料、繊維製造用材料、衣類製造用材料、電気製品製造用材料、および電子製品製造用材料から選択される基材上に、前記第1の塗料及び/又は前記第2の塗料を塗布して塗膜を形成した後、形状加工を行い、最終産物を製造することができる。
【0049】
例えば、基材30は、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホネート、ポリアセタール、ポリアクリル、ポリビニル、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリールスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、フッ素系、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリピリジン、ポリトリアゾール、ポリピロリジン、ポリジベンゾフラン、ポリスルホン、ポリ尿素、ポリホスファゼン及び液晶重合体高分子、ガラス、水晶、石英、ガラスウエハ、シリコンウエハ、二次電池用正極活物質、負極活物質、金属板、酸化金属板、ITO蒸着ガラス、PCB、エポキシ、半導体チップ、半導体パッケージ、又はこれらの2以上の組み合わせ、これらの2以上の積層体であってもよく、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート又はポリオレフィンであることが好ましい。
【0050】
前記金属板は、特に制限されないが、例えば、亜鉛メッキ鋼板または亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板であってもよい。
【0051】
基材30は、当分野で公知の塗料や、前記第1の塗料または前記第2の塗料を塗布して形成した追加の塗膜であってもよい。例えば、第1の塗膜10及び第2の塗膜20は、前記の当分野で公知の塗料を塗布して形成した追加の塗膜上に形成できる。
【0052】
前記第1の塗料または前記第2の塗料の塗布方法は、当分野で公知の塗布方法を制限なく用いることができる。例えば、バー(Bar)コート、グラビアコート、マイクログラビアコート、フレキソコート、ナイフコート、スプレーコート、スロットダイコート、ロールコート、スクリーンコート、インクジェットプリンティング、キャスティング、ディップ(Dip)コート、フローコート、カーテンコート、コンマコート、キスコート、パッドプリンティング、及びスピンコート、又はこれらの組み合わせにより、前記第1の塗料または前記第2の塗料を塗布することにより、前記伝導性塗膜を形成できる。
【0053】
前記第1の塗料または前記第2の塗料は、前述したように、伝導性塗膜又は放熱塗料、帯電防止塗料の分野で通常使用される、ペイント、ニス、エナメルなどであってもよい。
【0054】
例えば、前記第1の塗料または前記第2の塗料は、分散剤、高分子バインダー、溶剤および前述の伝導性物質を含むことができる。
【0055】
前記第1の塗料または前記第2の塗料に含まれる前記伝導性物質の含有量は、前述した第1の塗膜10及び第2の塗膜20に含まれる前記伝導性物質の含有量によって調節できる。
【0056】
前記分散剤は、前記伝導性物質の過剰な凝集を抑制して粘度の上昇を防止できるとともに、当分野で通常使用されるものであれば特に制限なく使用できる。例えば、前記分散剤は、アミノ基、カルボキシル基などの置換基やフェニル基、ピレン、ポルフィリンの誘導体などのπ共役系を含む置換基を有する高分子化合物、或いはリン酸塩、アミン塩、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミンであってもよく、これらの2以上の組み合わせであってもよい。
【0057】
前記高分子バインダーとしては、第1の塗料又は第2の塗料の塗布時に形成される膜の強度を調節し、組成物の粘度を制御し、また熱又は光によって固化又は硬化する樹脂であり、当分野で通常使用される熱又は光硬化型の高分子バインダーであれば制限なく使用できる。例えば、前記高分子バインダーは、ウレタン、エポキシ、メラミン、アセタール、アクリル、アクリル-スチレンを含むエマルジョン、ビニールアクリル系エマルジョン、カーボネート、スチレン、エステル、ビニル、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリシロキサン、ポリエステル、フッ素系高分子またはこれらの共重合体であってもよく、これらの2以上の組み合わせであってもよい。好ましくは、第1の塗料は、ポリエステル及び/又はエポキシを含むことができ、第2の塗料は、ポリエステル、ウレタン、アクリル、及び/又はフッ素系高分子を含むことができる。
【0058】
前記溶媒は、水、アルコール、ケトン、アミン、エステル、アミン、エステル、アミド、アルキルハロゲン、エーテル、フラン、硫黄含有溶媒、炭化水素系溶媒、又はこれらの2以上の混合物であってもよい。より具体的には、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、オクタデシルアミン、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド、ダイオキシン、ニトロメタン、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、メチルナフタレン、テトラヒドロフラン、ピリジン、アクリロニトリル、アニリン、ソルビトール、カルビトール、カルビトールアセテート、メチルセロソルブ、又はエチルセロソルブであってもよく、これらの2以上の組み合わせであってもよい。
【0059】
前記第1の塗料または前記第2の塗料は、必要に応じて、レベリング剤、湿潤剤、界面活性剤、分散安定剤、沈降防止剤、pH調整剤、増粘剤、スリップ剤、消泡剤、粘着剤、接着剤、チキソトロープ剤(thixothropic agent)、酸化防止剤、架橋剤、皮膜防止剤、クレータリング防止剤(anti-cratering agent)、可塑剤、乾燥剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、防腐剤、カップリング剤、浮遊剤(floating agent)、および染料から選択される1つ以上の添加剤をさらに含有できる。
【0060】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0061】
実施例1:伝導性塗膜の製造
1.第1の塗料及び第2の塗料の製造
(1)第1の塗料の製造
PCM(Pre-coated metal)用の塗料であるKCP760 PRIMER YK PRIMER(YELLOW-1)(K131-Y4075)(KANGNAM JEVISCO社製)100gにカーボンナノチューブを0.6g添加し、3500rpmで30分間分散することにより、第1の塗料を製造した。
【0062】
(2)第2の塗料の製造
PCM用の塗料であるKCP175 TOP P-7E90-2D WHITE(K101-W4148)(KANGNAM JEVISCO社製)100gにカーボンナノチューブを0.06g添加し、3500rpmで30分間分散することにより、第2の塗料を製造した。
【0063】
2.第1の塗膜及び第2の塗膜の表面抵抗の測定
(1)第1の塗膜の表面抵抗の測定
A4サイズ(297mm×210mm)の亜鉛メッキ鋼板の基材上に前記第1の塗料をバーコータ(#9)で塗布、コートし、180℃のオーブンで10分間乾燥した。その後、25℃、相対湿度50%の条件で24時間エージング(aging)し、厚さ7μmの塗膜を形成した。
【0064】
その後、前記形成された塗膜の表面抵抗を、DC電圧がautoに設定された表面抵抗測定器(Metriso2000、WOLFGANG社製)を用いて、25℃、相対湿度50%、2分後の定常状態(steady-state)の条件で測定した。その結果を下記表1に示す。
【0065】
(2)第2の塗膜の表面抵抗の測定
A4サイズ(297mm×210mm)の亜鉛メッキ鋼板の基材上に前記第2の塗料をバーコータ(#24)で塗布、コートし、180℃のオーブンで10分間乾燥した。その後、25℃、相対湿度50%の条件で24時間エージング(aging)し、厚さ20μmの塗膜を形成した。
【0066】
その後、前記形成された塗膜の表面抵抗を、DC電圧がautoに設定された表面抵抗測定器を用いて、25℃、相対湿度50%、2分後の定常状態の条件で測定した。その結果を下記表1に示す。
【0067】
3.明度の測定
第2の塗膜の明度を測定するために、色差計測定器CR-400(MINOLTA社製)を用いて、第2の塗膜のL*値を測定した。下記表1にその結果を示す。
【0068】
4.伝導性塗膜の製造
A4サイズ(297mm×210mm)の亜鉛メッキ鋼板の基材に、前記第1の塗料をバーコータ(#9)で塗布、コートし、180℃のオーブンで10分間乾燥した。その後、25℃、相対湿度50%の条件で24時間エージング(aging)し、厚さ7μmの第1の塗膜を形成した。
【0069】
その後、前記第1の塗膜上に第2の塗料をバーコータ(#24)で塗布、コートし、180℃のオーブンで10分間乾燥した。その後、25℃、相対湿度50%の条件で24時間エージング(aging)し、厚さ20μmの第2の塗膜を形成することにより、実施例1の伝導性塗膜を形成した。
【0070】
実施例2~9及び比較例1~3
実施例1と同様の方法により、下記表1に示すように、各塗膜のカーボンナノチューブの含有量と、第1の塗膜及び第2の塗膜の厚さを調節し、実施例2~9及び比較例1~3の伝導性塗膜を製造した。
【0071】
【0072】
実験例1:伝導性塗膜の表面抵抗の測定
実施例1~9及び比較例1~3の伝導性塗膜のそれぞれの表面抵抗を、DC電圧がautoに設定された表面抵抗測定器を用いて、25℃、相対湿度50%、2分後の定常状態の条件で測定した。その結果を下記表2に示す。
【0073】
実験例2:色具現性の評価
実施例1~9及び比較例1~3の伝導性塗膜のそれぞれのL*値を、色差計測定器を用いて測定した。その結果を下記表2に示す。
【0074】
【0075】
上記表2から、実施例は比較例と比較し、帯電防止塗料に適した表面抵抗を有するとともに、著しく優れた色具現性を備えていることが分かった。
【0076】
実施例1~3の伝導性塗膜は、好ましいCNT含有量および塗膜の厚さを備えていることから、優れた表面抵抗および色具現性を有していることが確認できる。
【0077】
実施例4及び5の伝導性塗膜は、CNTが多少多く添加され、帯電防止の効果および色具現性が実施例1~3よりは多少低下しているが、比較例よりは顕著に優れていることが確認できる。
【0078】
実施例8及び9の伝導性塗膜は、厚さが多少薄いか厚いことにより、実施例6及び7の場合よりも明度値が多少低下することを確認できたが、比較例よりは優れた性能を示した。
【0079】
これに対し、比較例は、表面抵抗が低すぎるため、帯電防止塗料に適していないほか、明度値が低下し過ぎて色具現性が良くなかった。
【符号の説明】
【0080】
10:第1の塗膜
20:第2の塗膜
30:基材