(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】電気抵抗溶接装置およびそれを用いた電池製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/30 20060101AFI20220509BHJP
B23K 11/00 20060101ALI20220509BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20220509BHJP
B23K 11/11 20060101ALN20220509BHJP
【FI】
B23K11/30
B23K11/00 510
H01M50/528
B23K11/11
(21)【出願番号】P 2020545258
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 KR2019014480
(87)【国際公開番号】W WO2020111533
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0148841
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ジェウン
(72)【発明者】
【氏名】ユーン、イェオ ミン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、キュンウク
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-317648(JP,A)
【文献】特開平08-047783(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2018-0061072(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/30
B23K 11/00
H01M 50/528
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、溶接ホルダ、および溶接棒を含み、前記圧縮機で圧縮された空気は前記溶接ホルダを介して前記溶接棒に流入して前記溶接棒の横面に形成された空気排出口を介して排出され
、
前記溶接棒は、中心部に空気流路を含み、
前記溶接ホルダは、空気流入部と空気排出部を含み、
前記空気流入部を介して流入した空気の一部は、前記空気流路に流入し、
前記空気流路に流入しなかった残りの空気は、前記空気排出部を介して排出される、電気抵抗溶接装置。
【請求項2】
前記空気流路は、前記空気排出口と流体的に連通されている、請求項
1に記載の電気抵抗溶接装置。
【請求項3】
前記空気排出口は、前記溶接棒の長さに応じて異なる頻度で形成された、請求項1
または2に記載の電気抵抗溶接装置。
【請求項4】
前記空気排出口は、スリット形状に形成された、請求項1から
3のいずれか一項に記載の電気抵抗溶接装置。
【請求項5】
圧縮機、溶接ホルダ、および溶接棒を含み、前記圧縮機で圧縮された空気は前記溶接ホルダを介して前記溶接棒に流入して前記溶接棒の横面に形成された空気排出口を介して排出され、
前記溶接棒は、中心部に空気流路を含み、
前記溶接ホルダは、前記溶接棒の前記空気流路に流入する空気の量を調整する弁を含む
、電気抵抗溶接装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の電気抵抗溶接装置を用いて電池を製造する方法であって、
金属缶にジェリーロール型電極組立体を収納する段階;
前記電極組立体の中心部に前記溶接棒を注入する段階;
前記空気排出口に圧縮された空気を排出して分離膜を押し出す段階;および
前記溶接棒に電流を印加して前記電極組立体の陰極タブを前記金属缶に溶接する段階;
を含む、電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月27日付韓国特許出願第10-2018-0148841号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、電気抵抗溶接装置およびそれを用いた電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、化石燃料の枯渇によるエネルギー源の価格が上昇し、環境汚染への関心が増幅し、環境にやさしい代替エネルギー源に対する要求は未来生活のための必須不可欠な要因となっている。したがって、原子力、太陽光、風力、潮力など多様な電力生産技術に対する研究が続けられており、このように生産されたエネルギーをさらに効率的に使うための電力貯蔵装置に対しても大きな関心が続けられている。
【0004】
さらに、モバイル機器と電池自動車に対する技術開発および需要増加に伴い、エネルギー源としての電池の需要が急激に増加しており、これにより多様な要求に応じる電池に対する多くの研究が行われている。特に、材料面では高いエネルギー密度、放電電圧、出力安定性などの長所を有するリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのようなリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0005】
二次電池は、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に介在する分離膜が積層された構造の電極組立体がいかなる構造で形成されているかによって分類される。代表的には、長いシート型の陽極と陰極を分離膜が介在する状態で巻き取った構造のジェリーロール型(巻き取り型)電極組立体、所定の大きさの単位で切り取った多数の陽極と陰極を分離膜を介在する状態で順次積層したスタック型(積層型)電極組立体などが挙げられ、最近では、前記ジェリーロール型電極組立体およびスタック型電極組立体が有する問題を解決するために、前記ジェリーロール型とスタック型の混合形態である一歩進んだ構造の電極組立体として、所定単位の陽極と陰極を、分離膜を介在する状態で積層した単位セルを分離フィルム上に位置させた状態で順次巻き取った構造のスタック/フォールディング型電極組立体が開発された。
【0006】
このような電極組立体を使用目的に応じて、パウチケース、円筒形缶、および角形ケースなどに収納して電池を製造する。
【0007】
その中で、円筒形電池は製造が容易でかつ重量当たりエネルギー密度が高いという長所を有しており、携帯用コンピュータから電池自動車に至るまで多様な機器のエネルギー源として使われている。
【0008】
図1は従来の電気抵抗溶接装置を用いて円筒形電池の陰極タブを金属缶に溶接する場合を示す模式図である。
【0009】
図1を参照すると、円筒形電池20はジェリーロール型電極組立体24が金属缶22に収納されている構造である。説明の便宜上電極組立体24と金属缶22の一部のみを図示した。電気抵抗溶接装置10は溶接棒12が溶接ホルダ11に連結されており、溶接ホルダ11を介して溶接棒12に電流が印加される構造である。
【0010】
電極組立体24の陰極タブ21を金属缶22に溶接するために、電気抵抗溶接装置10の溶接棒12は分離膜23の間を通り溶接棒12の一側端部が陰極タブ21に接触することができる。このような状態で溶接棒に電流を印加して陰極タブ21を金属缶22に溶接する。この時、電流が流れる溶接棒12に多くの熱が発生し、これにより陰極タブ21と金属缶22との間の溶接強度が低下するという問題がある。
【0011】
また、分離膜23の間の狭い空間に溶接棒12が位置しているので、溶接時の分離膜23が溶接棒12に付いて溶融するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記のような従来技術の問題と過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0013】
本出願の発明者らは、深い研究と多様な実験を繰り返した結果、以下で説明するように、溶接棒に空気排出口を形成して圧縮空気を排出することによって、溶接棒で発生した熱を逃がして分離膜を溶接棒から離隔させ得ることを確認して本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するための本発明による電気抵抗溶接装置は、圧縮機、溶接ホルダ、および溶接棒を含み、前記圧縮機で圧縮された空気は前記溶接ホルダを介して前記溶接棒に流入して前記溶接棒に形成された空気排出口を介して排出され得る。
【0015】
前記溶接棒は、中心部に空気流路を含み得る。
【0016】
前記空気流路は、前記空気排出口と流体的に連通され得る。
【0017】
前記溶接ホルダは、空気流入部と空気排出部を含み得る。
【0018】
前記空気流入部を介して流入した空気の一部は、前記空気流路に流入し得る。
【0019】
前記空気流路に流入しなかった残りの空気は、前記空気排出部を介して排出され得る。
【0020】
前記空気排出口は、前記溶接棒の長さに応じて異なる頻度で形成され得る。
【0021】
前記空気排出口は、スリット形状に形成され得る。
【0022】
前記溶接ホルダは、前記溶接棒の前記空気流路に流入する空気の量を調整する弁を含み得る。
【0023】
本発明による電気抵抗溶接装置を用いて電池を製造する方法は、金属缶にジェリーロール型電極組立体を収納する段階;前記電極組立体の中心部に前記溶接棒を注入する段階;前記空気排出口に圧縮された空気を排出して分離膜を押し出す段階;および前記溶接棒に電流を印加して前記電極組立体の陰極タブを前記金属缶に溶接する段階;を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来の電気抵抗溶接装置を用いて円筒形電池の陰極タブを金属缶に溶接する場合を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による電気抵抗溶接装置の模式図である。
【
図3】
図2の点線Aに沿って切断した断面図である。
【
図4】本発明の他の一実施形態による電気抵抗溶接装置を示す模式図である。
【
図5】本発明の他の一実施形態による電気抵抗溶接装置を示す模式図である。
【
図6】本発明の他の一実施形態による電気抵抗溶接装置を示す模式図である。
【
図7】本発明の他の一実施形態による電気抵抗溶接装置を用いて円筒形電池を製造する方法を示す模式図である。
【
図8】本発明の他の一実施形態による電気抵抗溶接装置を用いて円筒形電池を製造する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付する図面を参照して本発明の様々な実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0026】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0027】
また、明細書全体において、「断面図」という時、これは対象の部分を垂直に切った断面を横から見た時を意味する。
【0028】
図2は本発明の一実施形態による電気抵抗溶接装置の模式図である。
図3は
図2の点線Aに沿って切断した断面図である。
【0029】
図2および
図3を参照すると、電気抵抗溶接装置100は、圧縮機101、溶接ホルダ102、および溶接棒103を含み得る。圧縮機101で圧縮された空気は溶接ホルダ102を介して溶接棒103に流入して空気排出口104を介して排出される構造で形成することができる。
【0030】
溶接棒103の形状は特に限定されないが、ジェリーロール型電極組立体の中心部が円形に近い形状であるため、直径に比べて長さが長い円筒形に形成することができる。溶接棒103の一側は溶接ホルダ102に連結されることができる。溶接棒103の中心部Cには空気流路105が形成され得、空気流路105は溶接ホルダ102と流体的に連通することができる。
【0031】
溶接棒103の横面109には多数の空気排出口104が形成され得、空気排出口104は空気流路105と連通することができる。多数の空気排出口104は、横面109に沿って形成されて溶接棒103の中心部Cで放射方向に形成することができる。
【0032】
溶接ホルダ102は、空気流入部106と空気排出部107を含み得る。圧縮機101で圧縮された空気は空気流入部106を介して溶接ホルダ102に流入し、流入した空気の一部は溶接棒103の空気流路105に流入する。溶接棒103の空気流路105に流入しなかった残りの空気は空気排出部107を介して排出されることができる。
【0033】
このような構造により、溶接時の空気排出口104で排出される圧縮空気は、所定の圧力を有するため、分離膜(図示せず)が溶接棒103に付かないように分離膜(図示せず)を溶接棒103で離隔させることができる。
【0034】
また、溶接棒103の空気流路105に流入した空気は、空気排出口104で排出されながら溶接時溶接棒103で発生する熱を逃がすことができる。
【0035】
図4は本発明の他の一実施形態による電気抵抗溶接装置を示す模式図である。
【0036】
図4を参照すると、電気抵抗溶接装置200の溶接棒103には空気排出口104が溶接ホルダ102から距離に応じて異なる頻度で形成することができる。空気排出口104が異なる頻度で形成された場合を除いては
図4の電気抵抗溶接装置200は
図2の電気抵抗溶接装置100と同じ構成を含み得る。
【0037】
上述したように、溶接棒103は直径に比べて長さが長い形状に形成することができる。この時、空気排出口104が溶接棒103の長さに応じて同じ頻度で形成する場合、溶接ホルダ102から近いところに形成された空気排出口104で排出される空気と溶接ホルダ102から遠いところに形成された空気排出口104で排出される空気の量は異なる。したがって、溶接棒103が電極タブ(図示せず)と接触するB部分では排出される空気の量が減少して分離膜(図示せず)を溶接棒103で離隔させることと溶接棒103の冷却が難しい。そこで、電気抵抗溶接装置200の溶接棒103には空気排出口104が溶接ホルダ102から距離に応じた異なる頻度で形成してB部分でも十分な量の空気が排出されるようにして前記問題を解決することができる。
図4の溶接棒103には溶接ホルダ102で近い部位に形成された空気排出口104より多くの空気排出口104がB部分に形成されている。
【0038】
図5は本発明の他の一実施形態による電気抵抗溶接装置を示す模式図である。
【0039】
図5を参照すると、電気抵抗溶接装置300の溶接棒103に形成された空気排出口104は多様な形状に形成される。例えば、空気排出口104がスリット形状に形成され得る。スリット形状の空気排出口104は溶接棒103の長さ方向に形成される。このような構造により、溶接棒103の長さに応じた各位置で空気排出口104を介して排出される空気の量を一定に維持することができる。空気排出口104がスリット形状に形成されたことを除いては
図5の電気抵抗溶接装置300は
図2の電気抵抗溶接装置100と同じ構成を含み得る。
【0040】
図6は本発明の他の一実施形態による電気抵抗溶接装置を示す模式図である。
【0041】
図6を参照すると、電気抵抗溶接装置400は溶接ホルダ102に弁108を含んで溶接棒103の空気流路105に流入する空気の量を調整することができる。溶接ホルダ102に弁108が形成されたことを除いては
図6の電気抵抗溶接装置400は
図2の電気抵抗溶接装置100と同じ構成を含み得る。
【0042】
本発明の他の一実施形態として、
図6の弁108は
図2、
図4、および
図5実施形態にも適用することができる。
【0043】
図7および
図8は本発明による電気抵抗溶接装置を用いて円筒形電池を製造する方法(以下「製造方法」という)を示す模式図である。
【0044】
図2、
図7および
図8を参照すると、本実施形態による電池製造方法は、電気抵抗溶接装置100の溶接棒103をジェリーロール型電極組立体24の中心部に位置させ、溶接棒103の端部を陰極タブ21に接触させる段階を含み得る。
【0045】
本実施形態において、圧縮機101を作動して圧縮された空気が溶接ホルダ102を介して溶接棒103の空気流路105に流入し、流入した空気は空気排出口104を介して排出する段階を含み得る。
図8で空気排出口104を介して排出される空気は矢印で示した。空気排出口104を介して排出される空気は分離膜23を溶接棒103で離隔させることができる。
【0046】
本実施形態において、溶接棒103に電流を印加して陰極タブ21と金属缶22を溶接する段階を含み得る。溶接時の空気排出口104を介して排出される空気は分離膜23が溶接棒103で離隔した状態を継続して維持するようにすることができる。また、溶接時の空気排出口104を介して排出される空気は溶接棒103を冷却させることができる。
【0047】
本発明が属する分野における通常の知識を有する者は、上記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用および変形を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上で説明した通り、本発明の実施形態による電気抵抗溶接装置は、溶接棒に空気排出口を形成して溶接時溶接棒で発生した熱を逃がして分離膜が溶接棒に接触することを防止することができる。