IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-空気調和機 図1
  • 特許-空気調和機 図2
  • 特許-空気調和機 図3A
  • 特許-空気調和機 図3B
  • 特許-空気調和機 図4
  • 特許-空気調和機 図5A
  • 特許-空気調和機 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/86 20180101AFI20220509BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F24F11/86
F25B1/00 304G
F25B1/00 361A
F25B1/00 371B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016255579
(22)【出願日】2016-12-28
(65)【公開番号】P2018105597
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 隆介
(72)【発明者】
【氏名】塚田 福治
(72)【発明者】
【氏名】津田 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 有騎
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-14268(JP,A)
【文献】特開平6-137648(JP,A)
【文献】特開平10-19398(JP,A)
【文献】特開昭63-290355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の冷凍サイクルを制御する制御部を備え、
前記制御部は、
圧縮機の吐出圧力が所定の圧力制御値以上であるか否かを判定し、
前記吐出圧力が前記所定の圧力制御値以上の時に、前記圧縮機の回転速度を低下することで凝縮器となる熱交換器に流入する冷媒の量を減らすと共に、室外膨張弁の弁開度を大きくし、前記凝縮器となる熱交換器に溜まっている冷媒を該熱交換器から排出し、
圧縮機の冷媒の吐出過熱度または吸入過熱度が所定値以下の時に、前記大きくした前記室外膨張弁の弁開度を小さくする
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
冷媒の冷凍サイクルにより空気調和を行う空気調和機であって、
圧縮機の冷媒の吐出圧力を検知する吐出圧力検知手段と、
冷媒を減圧する室外膨張弁と、
前記吐出圧力検知手段により検知した吐出圧力が所定範囲の圧力値になるように前記圧縮機の回転速度を低下すると共に前記室外膨張弁の弁開度を大きくする制御を行うことで、凝縮器となる熱交換器に流入する冷媒の量を減らすと共に前記熱交換器に溜まっている冷媒を該熱交換器から排出し、その間に、前記圧縮機への液戻りの有無を判定し、液戻りが有と判定された際に、前記圧縮機の回転速度の低下に対応して前記大きくした前記室外膨張弁の弁開度を小さくする制御部と
を備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項2に記載の空気調和機において、
前記制御部は、圧縮機の吐出冷媒の温度から冷媒の吐出圧力に対応する飽和温度を減算して冷媒の吐出過熱度を算出し、前記吐出過熱度が所定の閾値以下の時に、圧縮機への液戻りが有と判定する
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項2に記載の空気調和機において、
前記制御部は、圧縮機の吸入冷媒の温度から冷媒の吸入圧力に対応する飽和温度を減算して冷媒の吸入過熱度を算出し、前記吸入過熱度が所定の閾値以下の時に、圧縮機への液戻りが有る判定する
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和機において、
前記制御部は、蒸発器側の蒸発温度から推定される圧力を、冷媒の吸入圧力とする
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の空気調和機において、
前記吐出圧力検知手段は、凝縮器の凝縮温度から推定される圧力を吐出圧力とする
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の空気調和機において、
前記吐出圧力検知手段は、前記所定範囲の圧力値で作動する圧力遮断装置である
ことを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の冷凍サイクルの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機においては、施工する配管長に合わせて所定量の冷媒を封入することが望ましいが、施工時の作業時間を短縮するために、余剰冷媒を貯留するタンクを備えて、所定の配管長に相当する冷媒量を封入して出荷することがある。
施工配管長が短い場合には、空気調和機が必要以上の冷媒を保有する状態となり、吐出圧力の上昇および圧縮機への液戻りが懸念されるが、余剰冷媒をタンクに貯留するようにして冷媒量を調整している。
【0003】
近年、施工配管長は長大化の傾向にあり、余剰冷媒を貯留するタンクを大型化する必要がある。このタンクは容積が大きいほど余剰冷媒を貯留することが可能となるが、容積が大きいタンクは高額となってしまい、空気調和機のコスト上昇につながる。そのため、タンクは必要最小限の容積として安価なタンクを用い、空気調和機の冷凍サイクルを制御して冷媒過多により生じる異常発生を抑制している。
例えば、特許文献1には、接続配管が短配管であることを判定した際に、吐出圧力値および吐出圧力上昇時間を用いて圧縮機の回転速度を低下させて、冷媒過多による吐出圧力の上昇を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-17729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の先行技術によれば、吐出圧力が上昇した場合は圧縮機回転速度を低下させて吐出圧力上昇を抑制している。しかし、圧縮機の回転速度を急低下した場合、凝縮器に溜まった余剰冷媒が蒸発器に流れ、ついには、2相冷媒(ガス・液混合冷媒)が圧縮機の吸入側に流れこむことがある。これにより、圧縮機が液圧縮して圧縮機故障に至る恐れがある。また、著しい吐出圧力上昇により圧縮機保護装置が作動して緊急停止を引き起こす恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、冷媒過多による吐出圧力の上昇を抑制すると共に、圧縮機への冷媒の液戻りを抑制することが可能な空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の空気調和機は、空気調和機の冷凍サイクルを制御する制御部を備え、前記制御部は、圧縮機の吐出圧力が所定の圧力制御値以上であるか否かを判定し、前記吐出圧力が前記所定の圧力制御値以上の時に、前記圧縮機の回転速度を低下することで凝縮器となる熱交換器に流入する冷媒の量を減らすと共に、室外膨張弁の弁開度を大きくし、前記凝縮器となる熱交換器に溜まっている冷媒を該熱交換器から排出し、圧縮機の冷媒の吐出過熱度または吸入過熱度が所定値以下の時に、前記大きくした前記室外膨張弁の弁開度を小さくするようにした。
課題を解決するためのその他の手段は、発明を実施するための形態中で説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、余剰冷媒が発生した場合においても圧縮機が液冷媒を吸入することなく吐出圧力の上昇を抑制可能な空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の空気調和機の構成図である。
図2】吐出過熱度による制御フロー図である。
図3A図2の制御フローによる吐出圧力の時間変化の概要を示す図である。
図3B図2の制御フローによる吐出過熱度の時間変化の概要を示す図である。
図4】吸入過熱度による制御フロー図である。
図5A図4の制御フローによる吐出圧力の時間変化の概要を示す図である。
図5B図4の制御フローによる吸入過熱度の時間変化の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態の冷房・暖房の冷凍サイクル運転により空調を行う空気調和機100の構成図である。
図1において、暖房運転時の冷媒の流れる向きを実線で示し、冷房運転時の冷媒の流れる向きを破線で示している。
【0011】
空気調和機100は、室外機Hoと室内機Hiとが、ガス接続配管40と液接続配管41とで接続されて構成されている。
ガス接続配管40の室外機Ho側にはガス側阻止弁V1が設けられ、液接続配管41の室外機Ho側には液側阻止弁V2が設けられている。このガス側阻止弁V1と液側阻止弁V2は、空気調和機100の据付作業後に開弁されることで、出荷時に室外機Hoに封入されていた冷媒が室内機Hiとガス接続配管40と液接続配管41とに充填される。
【0012】
実施形態の空気調和機100の冷凍回路は、圧縮機10と、四方弁11と、室内熱交換器12と、室外膨張弁13と、室外熱交換器14と、冷媒の気液分離を行うアキュムレータ15と、運転時に発生した余剰冷媒を貯留するためのタンク16とから構成される。
より詳しくは、アキュムレータ15は、圧縮機10の吸入側に設けられ、圧縮機10が液冷媒を吸入し圧縮機故障に至らないように気液分離するために設置されると共に、凝縮された液冷媒を貯留し適正な冷媒量に調整する冷媒量調節器にもなっている。
このため、冷媒貯留用のタンク16がない冷凍回路でもよい。
【0013】
圧縮機10は、ガス冷媒を圧縮する機器である。圧縮機10の種類は特に限定されず、スクロール式、ロータリー式、スクリュー式等の圧縮機を用いることができる。
四方弁11は、冷房運転と暖房運転で冷媒の流れる向きを切り替える弁である。
【0014】
つぎに冷房運転時の冷凍サイクルを説明する。
冷房運転時には、圧縮機10で冷媒が圧縮され、圧縮されたガス冷媒が室外熱交換器14のガス側のGoに流入する。圧縮されたガス冷媒は、室外熱交換器14で室外ファンFoにより外気と冷媒との間で熱交換されて凝縮して液冷媒となり、室外熱交換器14の液側のLoから流出し、室内熱交換器12の液側のLiへ流入する。
室内熱交換器12では、室内ファンFiにより室内の空気(空調対象空間の空気)と冷媒との間で熱交換されて液冷媒が蒸発してガス冷媒となり、室内熱交換器12のガス側のGiから吐出し、圧縮機10の吸入側に吸入される。
【0015】
つぎに暖房運転時の冷凍サイクルを説明する。
暖房運転時には、四方弁11が冷房運転時とは逆方向に切り替えられて(実線)、圧縮機10で圧縮されたガス冷媒が室内熱交換器12のガス側のGiに流入する。圧縮されたガス冷媒は、室内ファンFiにより室内の空気(空調対象空間の空気)と冷媒との間で熱交換されて凝縮して液冷媒となり、室内熱交換器12の液側のLiから流出し、室外熱交換器14の液側のLoへ流入する。
室外熱交換器14では、室外ファンFoにより外気と冷媒との間で熱交換されて液冷媒が蒸発してガス冷媒となり、室外熱交換器14のガス側のGoから吐出し、圧縮機10の吸入側に吸入される。
【0016】
このように、四方弁11を切り替えることにより、冷房運転時は圧縮機10の吐出側が室外熱交換器14に接続され、吸入側が室内熱交換器12に接続される。暖房運転時は、逆に、圧縮機10の吐出側が室内熱交換器12に接続され、吸入側が室外熱交換器14に接続される。
室外膨張弁13は、液冷媒を減圧したり、室内熱交換器12あるいは室外熱交換器14に流れる冷媒の流量を調整したりするための弁である。以下の説明における室外膨張弁の弁開度に関して(図面を含め)、「開」は弁開度を「大きく」することを意味し、「閉」は弁開度を「小さく」することを意味するものとする。
【0017】
本実施形態の空気調和機100は、余剰冷媒が発生した場合においても圧縮機が液冷媒を吸入することなく吐出圧力の上昇を抑制するために、後述する温度センサTまたは圧力センサPの検出結果に基づいて、圧縮機10の回転速度や室外膨張弁13の弁開度の制御を行う室外機制御装置30を備える。
室内機制御装置31は、室外機制御装置30から受信する情報に基づいて、室内ファンFiを制御する。
【0018】
詳細には、室外機制御装置30の制御部30aは、記憶部30bに格納されている圧縮機10の吐出側における冷媒の圧力制御値や冷媒過熱度の目標値と、温度センサT(吸入温度センサT20もしくは吐出温度センサT22)または圧力センサP(吸入圧力センサP21もしくは吐出圧力センサP23)の検出結果に基づいて、圧縮機10の回転速度や室外膨張弁13の弁開度を制御する。
この冷媒過熱度とは、冷媒の圧力に対応する飽和温度と冷媒の温度差を示す数値である。以下では、圧縮機10の吸入側における冷媒過熱度を「吸入過熱度」、圧縮機10の吐出側における冷媒過熱度を「吐出過熱度」という。
【0019】
制御部30aが参照する温度センサまたは圧力センサは、つぎのセンサを適宜選択する。
吸入温度センサT20は、圧縮機10に吸入される冷媒の温度(吸入温度)を検出するセンサであり、圧縮機10の吸入口付近に設置されている。
吸入圧力センサP21は、圧縮機10に吸入される冷媒の圧力(吸入圧力)を検出するセンサであり、圧縮機10の吸入口付近に設置されている。
吐出温度センサT22は、圧縮機10から吐出される冷媒の温度(吐出温度)を検出するセンサであり、圧縮機10の吐出口付近に設置されている。
吐出圧力センサP23は、圧縮機10から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)を検出するセンサであり、圧縮機10の吐出口付近に設置されている。
【0020】
また、空気調和機100は、室内温度を検出する室内吸込温度センサ(図示せず)や室内機から吹出される温度を検出する室内吹出温度センサ(図示せず)、室外温度を検出する室外温度センサ(図示せず)や室外熱交換器の液配管の温度を検出する室外液管温度センサ(図示せず)も備えている。
【0021】
室外機制御装置30が、図示しないリモコンから室内機Hiを介して受信した信号に基づいて、圧縮機10、四方弁11、室外膨張弁13、および室外ファンFoを制御するようにしてもよい。
【0022】
つぎに、図2により、圧縮機10の回転速度や室外膨張弁13の弁開度を制御する制御部30aの「吐出過熱度」の冷媒過熱度による制御フローを説明する。
空気調和機100において、冷媒の凝縮器(暖房運転時の室内熱交換器12あるいは冷房運転時の室外熱交換器14)に液冷媒が貯留してくると、有効な熱交換面積が減少するため熱交換する熱量が減少する。これを補うため、冷媒の流入量が増えるように、圧縮機10の回転速度が増加するので、圧縮機10の吐出圧力が上昇する。
【0023】
実施形態の室外機制御装置30の制御部30aは、ステップS21で、吐出圧力検知手段である吐出圧力センサP23により、圧縮機10から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)を検出し、この吐出圧力が、記憶部30bの圧力制御値であるP1以上であるか否かを判定する。
ここで、P1は、実施形態の空気調和機100が想定する配管長より短配管の施工状態の際に、余剰冷媒が生じ、余剰冷媒が凝縮器に想定量以上貯留しているか否かを判定する吐出圧力値である。
【0024】
吐出圧力がP1より小さい場合(S21のNo)には、余剰冷媒が生じていない判定し、処理を終了する。
吐出圧力がP1以上の場合(S21のYes)には、吐出圧力が下がるように圧縮機10の回転速度を所定量低下させる制御を行う(S22)。
そして、凝縮器の貯留した余剰冷媒が凝縮器から排出されるように、室外膨張弁13の弁開度を開とする(大きくする)制御を行う(S23)。
【0025】
つぎに、制御部30aは、吐出温度センサT22により検出した圧縮機10の吐出冷媒の温度から、吐出圧力センサP23により検出した冷媒の吐出圧力に対応する飽和温度を減算して冷媒の吐出過熱度を算出する。そして、算出した吐出過熱度が、第1の設定閾値T1の値以下であるか否かを判定する(S24)。
【0026】
制御部30aは、この第1の設定閾値T1により、圧縮機10が吸い込む冷媒に過剰な液冷媒が含まれていないか判定する。これは、圧縮機10が、微量の液冷媒を含む冷媒を吸入して圧縮運転を行った場合には、液冷媒の気化熱のために、過熱度が低下することによる。つまり、吐出過熱度が小さい場合には、過剰な液冷媒を含む冷媒を吸入したと考えられるため、算出した吐出過熱度と第1の設定閾値T1とを比較することにより、圧縮機10への液戻りを判定できる。
【0027】
ステップS24において、吐出過熱度≦T1の場合(S24のYes)は、圧縮機10への液戻りが発生していると判定し、ステップS25に進む。
吐出過熱度>T1の場合(S24のNo)は、ステップS22に戻り、吐出圧力の低下(S22)と余剰冷媒の排出(S23)を続ける。
【0028】
ステップS25では、圧縮機10への液戻りを抑止するために、室外膨張弁13の弁開度を閉とする(小さくする)制御を行う。これにより、冷媒流量が低下するので、アキュムレータ15と圧縮機10への液冷媒の流れ込みが無くなり、液戻りが停止する。
【0029】
つぎに、ステップS26で。制御部30aは、吐出圧力センサP23により、圧縮機10から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)を検出し、この吐出圧力が、記憶部30bの圧力制御値であるP2以下であるか否かを判定する。
吐出圧力が、P2より大であれば(S26のNo)、ステップS22に戻り、吐出圧力の低下(S22)と余剰冷媒の排出(S23)を続ける。
【0030】
吐出圧力が、記憶部30bの圧力制御値であるP2以下であれば(S26のYes)、制御フローの処理を終了する。ここで、圧力制御値であるP2は、運転時の圧縮機10における圧力範囲の下限値とする。
【0031】
前記の説明では、吐出圧力センサP23により圧縮機10の吐出圧力を検知する例を示したが、凝縮器の凝縮温度から推定される圧力を圧縮機10の吐出圧力としてもよい。
また、吐出圧力値の判定を、圧力制御値P1または圧力制御値P2で作動する圧力遮断装置により行ってもよい。
【0032】
図2の制御フローによる吐出圧力の時間変化の概要を図3Aに示し、吐出過熱度の時間変化の概要を図3Bに示す。
図3Aは、横軸を運転時間に、縦軸を圧力にして、圧縮機10の吐出圧力の時間変化を示した図である。
【0033】
実施形態の短配管施工された空気調和機100の暖房運転中に、余剰冷媒が発生し、貯留できない液冷媒が室内熱交換器12に溜まり始めると、図3Aに示すように、運転時間の経過と共に圧縮機10の吐出圧力が上昇する。
吐出圧力がP1に到達すると、制御部30aは、図2のステップS21により、圧縮機10の回転速度を低下させるので、吐出圧力がP1より小さな値に減少変化する。
【0034】
吐出圧力がP2まで低下すると、制御部30aは、図2のステップS26により、処理を終了するので、圧縮機10の回転速度の低下行われなくなり、吐出圧力の低下が止まる。
その後は、圧縮機10は、吐出圧力がP1より小さく、P2以上の範囲に調整されて運転される。
【0035】
図3Bは、横軸を運転時間に、縦軸を過熱度にして、圧縮機10の吐出過熱度の時間変化を示す図である。
図3Aの説明と同様に、運転時間の経過と共に圧縮機10の吐出圧力に連動して吐出過熱度が上昇する。
【0036】
図3Aで説明したように、吐出圧力がP1に到達すると、制御部30aは、図2のステップS21により、圧縮機10の回転速度を低下させる。このとき、制御部30aが図2のステップS23で室外膨張弁の弁開度を開としているので、図3Aの圧力低下に同期して、図3Bに示すように、冷媒流量が増加して吐出過熱度が低下する。
【0037】
吐出過熱度がT1まで低下すると、制御部30aは、図2のステップS25により、室外膨張弁の弁開度を閉としているので、冷媒流量が減少し、吐出過熱度が増加に転ずる。
その後は、圧縮機10は、吐出過熱度がT1より大きい液戻りがない状態で、運転が行われる。
【0038】
前記では、圧縮機10の回転速度を低下すると共に、室外膨張弁の弁開度を開にして、吐出圧力を低下させる際に、吐出過熱度を検出して圧縮機の液戻りを検知する制御を説明した。つぎに、圧縮機10の吐出過熱度に替えて、圧縮機10の吸入過熱度により圧縮機10の回転速度や室外膨張弁13の弁開度を制御する方法を、図4の吸入過熱度による制御フロー図により説明する。
【0039】
図4の制御フローは、ステップS44のみが、図2の制御フローと異なる。このため、ステップS44以外の説明は、ここでは、省略する。
ステップS44で、制御部30aは、吸入温度センサT20により検出した圧縮機10の冷媒の吸入温度から、吸入圧力センサP21により検出した冷媒の吸入圧力に対応する飽和温度を減算して冷媒の吸入過熱度を算出する。そして、算出した吸入過熱度が、第2の設定閾値T2の値以下であるか否かを判定する。
【0040】
前記では、吸入圧力センサP21により検出した冷媒の吸入圧力により吸入過熱度を算出しているが、蒸発器側の蒸発温度から推定される圧力により吸入過熱度を算出してもよい。
【0041】
制御部30aは、この第2の設定閾値T2により、圧縮機10が吸い込む冷媒に過剰な液冷媒が含まれていないか判定する。
これは、ステップS23で室外膨張弁の弁開度を開にする(大きくする)ことで凝縮器から流出した液冷媒は、余剰冷媒がタンク16の貯留量を超えて蒸発器に流入することがある。蒸発器では、過剰な液冷媒が流入することで過熱度が低い状態で、圧縮機10に蒸発器からの冷媒が吸入されることになる。また、アキュムレータ15の液冷媒の貯留量が超過して、冷媒の気液分離が充分行われないことにより、圧縮機10に吸入される冷媒に液冷媒が混入することになる
算出した吸入過熱度と第2の設定閾値T2とを比較することにより、圧縮機10への液戻りを判定できる。
【0042】
制御部30aは、ステップS44において、吸入過熱度≦T2の場合(S44のYes)は、圧縮機10への液戻りが発生していると判定し、ステップ25に進む。
吸入過熱度>T2の場合(S44のNo)は、ステップS22に戻り、吐出圧力の低下(S22)と余剰冷媒の排出(S23)を続ける。
【0043】
図4の制御フローによる吐出圧力の時間変化の概要を図5Aに示し、吸入過熱度の時間変化の概要を図5Bに示す。
図5Aは、横軸を運転時間に、縦軸を圧力にして、圧縮機10の吐出圧力の時間変化を示す図である。
【0044】
実施形態の短配管施工された空気調和機100の暖房運転中に、余剰冷媒が発生し、貯留できない冷媒が室内熱交換器12に溜まり始めると、図5Aに示すように、運転時間の経過と共に圧縮機10の吐出圧力が上昇する。
吐出圧力がP1に到達すると、制御部30aは、図4のステップS21により、圧縮機10の回転速度を低下させるので、吐出圧力がP1より小さな値に減少変化する。
【0045】
吐出圧力がP2まで低下すると、制御部30aは、図4のステップS26により、処理を終了するので、圧縮機10の回転速度の低下行われなくなり、吐出圧力の低下が止まる。
その後は、圧縮機10は、吐出圧力がP1より小さく、P2以上の範囲に調整されて運転される。
【0046】
図5Bは、横軸を運転時間に、縦軸を過熱度にして、圧縮機10の吸入過熱度の時間変化を示す図である。
図5Aの説明と同様に、運転時間の経過と共に圧縮機10の吐出圧力に連動して吸入過熱度が上昇する。
【0047】
図5Aで説明したように、吐出圧力がP1に到達すると、制御部30aは、図4のステップS21により、圧縮機10の回転速度を低下させる。このとき、制御部30aが図4のステップS23で室外膨張弁の弁開度を開としているので、図5Aの圧力低下に同期して、図5Bに示すように、冷媒流量が増加して吸入過熱度が低下する。
【0048】
吸入過熱度がT2まで低下すると、制御部30aは、図4のステップS25により、室外膨張弁の弁開度を閉としているので、冷媒流量が減少し、吸入過熱度が増加に転ずる。
その後は、圧縮機10は、吸入過熱度がT2より大きい液戻りがない状態で、運転が行われる。
【0049】
本実施形態の圧縮機10は、吐出圧力が所定の圧力範囲になるように圧縮機10の回転速度を低下中に、圧縮機10の吐出過熱度または吸込過熱度が所定値以下であるかに否かにより圧縮機10への液戻りの有無を判定し、液戻りが有と判定した時に、室外膨張弁13の弁開度を閉じるようにしたので、圧縮機10の液圧縮を抑止できる。
【0050】
また、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。前記の実施例は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 圧縮機
11 四方弁
12 室内熱交換器
13 室外膨張弁
14 室外熱交換器
15 アキュムレータ
16 タンク
20 吸入温度センサT
21 吸入圧力センサP
22 吐出温度センサT
23 吐出圧力センサP
30 室外機制御装置
30a 制御部
30b 記憶部
31 室内機制御装置
40 ガス接続配管
41 液接続配管
100 空気調和機
Fi 室内ファン
Fo 室外ファン
Gi 室内熱交換器12のガス側
Li 室内熱交換器12の液側
Go 室外熱交換器14のガス側
Lo 室外熱交換器14の液側
Hi 室内機
Ho 室外機
V1 ガス側阻止弁
V2 液側阻止弁
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B