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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ヘキソース誘導体、その製剤および使用
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/04 20060101AFI20220509BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 38/44 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220509BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220509BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20220509BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220509BHJP
   C07H 9/06 20060101ALI20220509BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20220509BHJP
   C07K 14/31 20060101ALI20220509BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20220509BHJP
   C12N 9/96 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C07H15/04 F CSP
A61K9/08
A61K38/00
A61K38/17 100
A61K38/22
A61K38/28
A61K38/43
A61K38/44
A61K38/46
A61K39/395 M
A61K39/395 W
A61K47/26
A61P3/10
A61P5/00
A61P37/02
C07H9/06
C07K14/00
C07K14/31
C07K14/47
C12N9/96
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2016575290
(86)(22)【出願日】2015-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-06-22
(86)【国際出願番号】 PT2015050001
(87)【国際公開番号】W WO2015137838
(87)【国際公開日】2015-09-17
【審査請求日】2018-03-13
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】61/953,392
(32)【優先日】2014-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516275815
【氏名又は名称】ファクルダーデ・デ・シエンシャス・ダ・ユニバシダーデ・デ・リスボア
(73)【特許権者】
【識別番号】516275826
【氏名又は名称】インスティチュート・デ・テクノロジア・キミカ・エ・バイオロージカ・アントニオ・ザビエル
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・メイコック、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】メンデス・ボルダロ・ベンチュラ・センテノ・リマ、マリア・リタ
(72)【発明者】
【氏名】コレイア・ローレンコ、エバ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス・ドス・サントス、マリア・ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】ダ・チュンハ・ミゲル、アナ・ソフィア
【合議体】
【審判長】大熊 幸治
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/097652(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0143787(US,A1)
【文献】Carbohydrade Research,2008年,343,p.3025~3033
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
REGISTRY/CAPLUS STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A):式
【化1】
[式中、Rは、
【化2】
であり、
は、-OH、または-Ν(Η)C(=O)CHである]の化合物またはその塩、
(B):式
【化3】
[式中、Rは、-OC(Η)(X)(CHC(=O)OHであり、
は、-OH、または-Ν(Η)C(=O)CHであり、
Xは、-CH、-CHOH、またはCHC(=O)OHであり、
nは、0または1である]の化合物またはその塩、
(C):式
【化4】
[式中、Rは、-OC(Η)(X)(CHC(=O)OHであり、
は、-OH、または-Ν(Η)C(=O)CHであり、
Xは、-H、またはCHC(=O)OHであり、
nは、0または1であり、あるいは
は、
【化5】
である]の化合物またはその塩であって、
前記化合物が
【化6】
であり、かつRがOHであり、XがHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化7】
であり;および
前記化合物が
【化8】
であり、かつRがOHであり、XがCHOHであり、nが0であるとき、当該化合物
は、
【化9】
である化合物またはその塩。
【請求項2】
前記化合物のα/βアノマー比は、1:1から99:1までである、または99:1より大きい請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
前記(B)の式中のR
【化10】
である請求項1の化合物またはその塩。
【請求項4】
前記(B)の式中のR
【化11】
である請求項1の化合物またはその塩。
【請求項5】
前記(C)の式中のR
【化12】
である請求項1の化合物またはその塩。
【請求項6】
前記(C)の式中のR
【化13】
である請求項1の化合物またはその塩。
【請求項7】
前記化合物が
【化14-1】
【化14-2】
である請求項1の化合物またはその塩。
【請求項8】
構造
【化17】
を有する化合物またはその塩。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物またはその塩、および生物学的物質を含む組成物であって、
前記生物学的物質は、ポリペプチドである該組成物。
【請求項10】
さらにバッファーを含む請求項9の組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチドは、酵素、抗体、血漿タンパク質、ホルモン、インスリン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌性ヌクレアーゼまたはリゾチームである請求項9の組成物。
【請求項12】
生物学的物質を安定させる方法であって、
前記生物学的物質はポリペプチドであり、
(a):式
【化18】
[式中、Rは、
【化19】
であり、
は、-OH、もしくは-Ν(Η)C(=O)CHであり、または
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化20】
を形成し、
は、-CH、または-CHOHである]の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、
(b):式
【化21】
[式中、Rは、-OC(Η)(X)(CHC(=O)OHであり、
は、-OH、または-Ν(Η)C(=O)CHであり、
Xは、-CH、-CHOH、もしくはCHC(=O)OHであり、
nは、0または1である]の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、
(c):式
【化22】
[式中、Rは、-OC(Η)(X)(CH)nC(=O)OHであり、
は、-OH、または-Ν(Η)C(=O)CHであり、
Xは、-H、またはCHC(=O)OHであり、
nは、0または1であり、あるいは
は、
【化23】
である]の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、の少なくとも1種の該化合物を加えることを含み、
前記化合物が
【化24】
であり、かつRがOHであり、XがHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化25】
またはその塩であり、
前記化合物が
【化26】
であり、かつRがOHであり、XがCHOHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化27】
またはその塩であり、
前記化合物が
【化28】
であり、かつRがOHであり、XがCHOHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化29】
またはその塩である、該方法。
【請求項13】
前記化合物のα/βアノマー比は、1:1から99:1までである、または99:1より大きい請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記(b)のR
【化30】
である請求項12の方法。
【請求項15】
前記(c)のR
【化31】
である請求項12の方法。
【請求項16】
前記(a)のRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化32】
を形成している請求項12に記載の方法。
【請求項17】
が-CH、または-CHOHである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物は、
【化33-1】
【化33-2】
またはその塩である請求項12の方法。
【請求項19】
安定した溶液を乾燥する工程をさらに含む請求項12から請求項18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリペプチドは、酵素、抗体、血漿タンパク質、ホルモン、インスリン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌性ヌクレアーゼまたはリゾチームである請求項12から請求項19までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本出願は2014年3月14日に提出された米国仮出願第61/953,392号の優先権を主張し、その内容は全部で引用により本出願に取り込まれている。
【0002】
本出願の全体において、様々な文献が参照され、括弧内で参照されるものを含む。括弧内で参照される文献の完全な書誌的事項は、特許請求の範囲直前の、明細書の最後にアルファベット順に列挙され、発見され得る。全体において参照される全ての文献の開示は、この発明に関連する技術の状況をより完全に記載するために、本明細書中に全体としての参照により援用される。
【0003】
発明の背景
適合溶質と称される低分子量有機化合物は、外部媒体の浸透圧と釣り合い、正確なタンパクのフォールディングを促進し、タンパクの凝集を阻害し、熱起因の変性を防ぐ、たくさんの好温性または耐温性の微生物で確認されている(Faria 2008,Faria 2013)。適合溶質は、例えば、薬学的および表面の変性におけるタンパクを安定させるため、したがって産業的に有用である(Luley-Goedl 2011,Lentzen 2006)。
【0004】
適合溶質は、通常にアミノ酸、炭水化物、ポリオール、ベタインおよびエクトインである。トレハロース、グリセロール、グリセリン-ベタインおよびエクトインは、中温性の典型的な適合溶質である。極端な好熱性および超好熱性の微生物の発見は、マンノシルグリセラート(MG)およびジミオ-イノシトール-1,3’-リン酸(Faria,2008)のような、さらなる適合溶質の発見へと至った。
【0005】
化合物は、構造的に、MG、言い換えれば(2S)-2-(1-O-α-D-マンノピラノシル)プロピオナート(ML)、2-(1-O-α-D-マンノピラノシル)アセタート(MGlyc)、1-O-(2-グリセリル)-α-D-マンノピラノシド(MGOH)に関連し、これらは、熱応力に対するモデルタンパクを安定させることができるために合成され、試験されている(Faria 2008)。
【0006】
生物学的物質の安定のために新規化合物が必要とされる。
【0007】
発明の要旨
本発明は、式I:
【化1】
【0008】
[式中、Rは、-OC(Η)(X)(CHC(=O)OHであり、
は、-OH、-N、もしくは-Ν(Η)C(=O)CHであり、または
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化2】
【0009】
を形成し、
は、-Η、-CH、-CHC(=O)OH、または-CHOHであり、
Xは、-Η、-CH、-CHOH、またはCHC(=O)OHであり、
nは、0または1である]の化合物またはその塩であって、
前記化合物が
【化3】
【0010】
であり、かつRがOHであり、XがCHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化4】
【0011】
であり;
前記化合物が
【化5】
【0012】
であり、かつRがOHであり、XがHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化6】
【0013】
であり;
前記化合物が
【化7】
【0014】
であり、かつRがOHであり、XがCHOHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化8】
【0015】
であり;
前記化合物が
【化9】
【0016】
であり、かつRがOHであり、XがCHOHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化10】
【0017】
である、該化合物またはその塩を提供する。
【0018】
本発明は、さらに式Iの少なくとも1種の化合物またはその塩、および生物学的物質を含む組成物を提供する。
【0019】
本発明は、さらに生物学的物質を含んでいる溶液へ、式Iの少なくとも1種の化合物またはその塩を加えて、安定した溶液を形成することを含む、生物学的物質を安定させる方法を提供する。
【0020】
本発明は、さらに生物学的物質を安定させるための式Iの化合物またはその塩を提供する。
【0021】
本発明は、さらに生物学的物質を安定させるための式Iの化合物またはその塩の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】0.5Mの異なる溶質の存在下におけるリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH,灰色バー)、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ(SNase,黒色バー)およびリゾチーム(白色バー)の融点(TM)の増加量。溶質無しの融点(T)は、MDHが50℃、SNaseが52℃およびリゾチームが71℃であった。
図2】リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ(SNase)およびリゾチームの熱変性に対する異なるグルコース誘導体の安定化効果。横軸には0.5Mのいくつかの化合物によって誘導されるMDHの融点の増加量、ならびに縦軸にはSNase(黒塗り)およびリゾチーム(白抜き)の融点の増加量が図示されている。
図3】リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ(SNase)およびリゾチームの熱変性に対する異なるガラクトース誘導体の安定化効果。横軸には0.5Mのいくつかの化合物によって誘導されるMDHの融点の増加量、ならびに縦軸にはSNase(黒塗り)およびリゾチーム(白抜き)の融点の増加量が図示されている。
図4】リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ(SNase)およびリゾチームの熱変性に対する異なるラクタート誘導体の安定化効果。横軸には0.5Mのいくつかの化合物によって誘導されるMDHの融点の増加量、ならびに縦軸にはSNase(黒塗り)およびリゾチーム(白抜き)の融点の増加量が図示されている。
図5】リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ(SNase)およびリゾチームの熱変性に対する異なるマラート誘導体の安定化効果。横軸には0.5Mのいくつかの化合物によって誘導されるMDHの融点の増加量、ならびに縦軸にはSNase(黒塗り)およびリゾチーム(白抜き)の融点の増加量が図示されている。
図6】単独および異なるハイパーソリュート(hypersolute)(0.5M)と合わせたAcOKの濃度に対する安定化効果の依存性。
図7】リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ(SNase)およびリゾチームの熱変性に対する異なるガラクトシルグリセラート誘導体の安定化効果。横軸には0.5Mのいくつかの化合物によって誘導されるMDHの融点の増加、ならびに縦軸にはSNase(黒塗り)およびリゾチーム(白抜き)の融点の増加量が図示されている。
図8】溶質の濃度に対するSNaseの融点の依存性。
図9】溶質の濃度に対するMDHの融点の依存性。
図10】溶質の濃度に対するリゾチームの融点の依存性。
図11】0.1および0.25Mの異なる溶質で得られたブタのインスリンの融点の増加量。各溶質の左のバーは0.25Mにおける結果を示し、右のバーは0.1Mにおける結果を示している。
【0023】
発明の詳細な説明
以下の略語は、本明細書を通じて使用される。
【0024】
Ac アセタート
BnBr 臭化ベンジル
DIP ジ-ミオ-イノシトールリン酸
DGP ジ-グレセロールリン酸
DMAP 4-ジメチルアミノピリジン
DMF ジメチルホルムアミド
DSF 示差走査型蛍光定量法(Differential Scanning Fluorimetry)
Et エチル
EtO ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
GG α-D-グルコシル-D-グリセラート
GGG α-D-グルコピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシル-(1→2)-D-グリセラート
GL α-D-グルコシル-S-ラクタート
Hex ヘキサン
MDH リンゴ酸デヒドロゲナーゼ
Me メチル
MeOH メタノール
MG α-D-マンノシル-D-グリセラート
MGA α-D-マンノシル-D-グリセルアミド
MGG α-D-マンノピラノシル-(1→2)-α-D-グルコピラノシル-(1→2)-D-グリセラート
MGly α-D-マンノシル-グリコラート
MMGly (2R)-2-(1-O-α-D-マンノピラノシル)-3-(1-O-α-D-グルコピラノシル)-グリセラート
ML α-D-マンノシル-S-ラクタート
NaOMe ナトリムメトキシド
NIS N-ヨードスクシンイミド
NMR 核磁気共鳴
Ph フェニル
TLC 薄層クロマトグラフィー
SNase ブドウ球菌性ヌクレアーゼ
TBAF テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド
TBDPSCl tert-ブチルクロロジフェニルシラン
TBDMS tert-ブチルジメチルシラン
TfOH トリフルオロメタンスルホン酸
THF テトラヒドロフラン
本発明は、式I:
【化11】
【0025】
[式中、Rは、-OC(Η)(X)(CHC(=O)OHであり、
は、-OH、-N、もしくは-Ν(Η)C(=O)CHであり、または
およびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化12】
【0026】
を形成し、
は、-Η、-CH、-CHC(=O)OH、または-CHOHであり、
Xは、-Η、-CH、-CHOH、またはCHC(=O)OHであり、
nは、0または1である]の化合物またはその塩であって、
前記化合物が
【化13】
【0027】
であり、かつRがOHであり、XがCHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化14】
【0028】
であり;
前記化合物が
【化15】
【0029】
であり、かつRがOHであり、XがHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化16】
【0030】
であり;
前記化合物が
【化17】
【0031】
であり、かつRがOHであり、XがCHOHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化18】
【0032】
であり;
前記化合物が
【化19】
【0033】
であり、かつRがOHであり、XがCHOHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化20】
【0034】
である、該化合物またはその塩を提供する。
1つの実施形態において、前記化合物は、
【化21】
【0035】
またはその塩ではない。
1つの実施形態において、式Iの化合物は、天然由来の化合物ではない。
【0036】
1つの実施形態において、前記化合物は、
【化22】
【0037】
またはその塩である。
1つの実施形態において、前記化合物は、
【化23】
【0038】
またはその塩である。
1つの実施形態において、前記化合物は、
【化24】
【0039】
またはその塩である。
1つの実施形態において、前記化合物は、
【化25】
【0040】
またはその塩である。
1つの実施形態において、前記化合物またはその塩のα/βアノマー比は、1:1から99:1までである。1つの実施形態において、前記化合物またはその塩のα/βアノマー比は、1:1から10:1までである。1つの実施形態において、前記化合物またはその塩のα/βアノマー比は、1:1から5:1までである。別の実施形態において、前記化合物またはその塩のα/βアノマー比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または10:1である。1つの実施形態において、前記化合物またはその塩のα/βアノマー比は、10:1より大きい。1つの実施形態において、前記化合物またはその塩のα/βアノマー比は、99:1より大きい。1つの実施形態において、前記化合物またはその塩は、αアノマーである。
【0041】
1つの実施形態において、R
【化26】
【0042】
である。
1つの実施形態において、R
【化27】
【0043】
である。
1つの実施形態において、R
【化28】
【0044】
である。
1つの実施形態において、R
【化29】
【0045】
である。
1つの実施形態において、R
【化30】
【0046】
である。
1つの実施形態において、R
【化31】
【0047】
である。
1つの実施形態において、R
【化32】
【0048】
である。
1つの実施形態において、R
【化33】
【0049】
である。
1つの実施形態において、R
【化34】
【0050】
である。
1つの実施形態において、R
【化35】
【0051】
である。
1つの実施形態において、R
【化36】
【0052】
である。
1つの実施形態において、R
【化37】
【0053】
である。
1つの実施形態において、R
【化38】
【0054】
である。
1つの実施形態において、R
【化39】
【0055】
である。
1つの実施形態において、R
【化40】
【0056】
である。
1つの実施形態において、不斉中心がRに存在しているとき、前記化合物は、2つの鏡像異性体の混合物である。
【0057】
1つの実施形態において、不斉中心がRに存在しているとき、前記化合物は、S鏡像異性体である。
【0058】
1つの実施形態において、不斉中心がRに存在しているとき、前記化合物は、R鏡像異性体である。
【0059】
1つの実施形態において、Rは-OHである。
【0060】
1つの実施形態において、RはNである。
【0061】
1つの実施形態において、Rは-Ν(Η)C(=O)CHである。
【0062】
1つの実施形態において、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化41】
【0063】
を形成している。
1つの実施形態において、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化42】
【0064】
を形成している。
1つの実施形態において、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化43】
【0065】
を形成している。
1つの実施形態において、Rは-Hである。
【0066】
1つの実施形態において、Rは-CHである。
【0067】
1つの実施形態において、Rは-CHC(=O)OHである。
【0068】
1つの実施形態において、Rは-CHOHである。
【0069】
1つの実施形態において、前記化合物は、
【化44-1】
【0070】
【化44-2】
【0071】
【化44-3】
【0072】
またはその塩である。
1つの実施形態において、前記化合物は、前の実施形態のいずれか1種の化合物、またはその塩である。
【0073】
1つの実施形態において、前記化合物は、塩の形態である。
【0074】
1つの実施形態において、前記化合物は、薬学的に許容され得る塩の形態である。
【0075】
1つの実施形態において、前記化合物は、カリウム塩の形態である。
【0076】
1つの実施形態において、前記化合物は、ナトリウム塩の形態である。
【0077】
本発明はまた、本発明の少なくとも1種の化合物またはその塩、および生物学的物質を含む組成物を提供する。
【0078】
1つの実施形態において、前記組成物は液体である。1つの実施形態において、前記組成物は固体である。1つの実施形態において、前記組成物は、凍結乾燥されている。1つの実施形態において、前記組成物は、フリーズドライされている。
【0079】
1つの実施形態において、前記組成物は液体であり、本発明の少なくとも1種の化合物は0.01から1Mまでの濃度の組成物中に存在している。1つの実施形態において、本発明の少なくとも1種の化合物は0.1から0.5Mまでの濃度で存在している。1つの実施形態において、本発明の少なくとも1種の化合物は0.01から1Mまでの濃度で存在している。1つの実施形態において、本発明の少なくとも1種の化合物は0.1M、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、または0.5Mの濃度の組成物中に存在している。
【0080】
1つの実施形態において、前記組成物は、本発明の液体の組成物を乾燥することによって調製された固体である。
【0081】
1つの実施形態において、前記組成物は、本発明の少なくとも1種の化合物に加えて、少なくとも1種の他の適合溶質を含む。前記少なくとも1種の他の適合溶質は、例えば、当技術分野で周知の少なくとも1種の他の適合溶質であり得る。少なくとも1種の他の適合溶質および/または本発明の2種以上の化合物を有している組成物において、生物学的物質を安定させるために必要な、他の適合溶質の量および/または本発明の各化合物の量は、単独で生物学的物質を安定させるために必要な各試薬の量未満であり得る。
【0082】
1つの実施形態において、前記組成物は、本発明の少なくとも1種の化合物に加えて、1種またはそれ以上の塩をさらに含む。1つの実施形態において、1種またはそれ以上の追加の塩は、薬学的に許容され得る塩である。1つの実施形態において、前記1種またはそれ以上の塩は、酢酸カリウムを含む。
【0083】
1つの実施形態において、前記組成物は、医薬組成物、化粧品、または食品である。
【0084】
1つの実施形態において、前記生物学的物質は、核酸、ポリペプチド、ホールセル(whole cell)、ウイルス、粒子のようなウイルス、細胞膜、細胞成分、リポソーム、組織、または上述のいずれかの混合物である。1つの実施形態において、前記生物学的物質は、1種、2種、3種またはそれ以上の種の生物学的物質を含む。
【0085】
1つの実施形態において、生物学的物質は、1種またはそれ以上の種の核酸である。1つの実施形態において、前記核酸は、RNA、DNA、またはRNAおよびDNAの混合物である。1つの実施形態において、前記RNAは一本鎖RNAである。1つの実施形態において、前記RNAは二本鎖である。1つの実施形態において、前記RNAはmRNAである。1つの実施形態において、前記RNAは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。1つの実施形態において、前記DNAは二本鎖である。1つの実施形態において、前記DNAは一本鎖である。
【0086】
1つの実施形態において、前記生物学的物質は、1種またはそれ以上の種のホールセルである。
【0087】
1つの実施形態において、前記生物学的物質は、ポリペプチドである。
【0088】
1つの実施形態において、前記ポリペプチドは、酵素、抗体、血漿タンパク質、またはホルモンである。
【0089】
1つの実施形態において、前記ポリペプチドは、インスリン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌性ヌクレアーゼまたはリゾチームである。1つの実施形態において、前記ポリペプチドは、インスリンである。
【0090】
1つの実施形態において、前記ポリペプチドは、組換えポリペプチドである。1つの実施形態において、前記ポリペプチドは、酵母または哺乳類の細胞培養から単離される。
【0091】
1つの実施形態において、ポリペプチドは、組換えポリペプチドではない。1つの実施形態において、前記ポリペプチドは、植物、動物、真菌、または細菌から単離される。1つの実施形態において、前記ポリペプチドは、動物またはヒトの血清ポリペプチドである。
【0092】
1つの実施形態において、前記組成物はさらにバッファーを含む。
【0093】
本発明はまた、生物学的物質を含んでいる溶液へ、本発明の少なくとも1種の化合物またはその塩を加えて、安定した溶液を形成することを含む、生物学的物質を安定させる方法を提供する。
【0094】
1つの実施形態において、前記方法は前記安定した溶液を乾燥する工程をさらに含む。
【0095】
1つの実施形態において、前記乾燥は、噴霧乾燥または凍結乾燥である。
【0096】
1つの実施形態において、本発明の少なくとも1種の化合物またはその塩は、安定させるために前記生物学的物質の特性に基づいて選択される。例えば、前記生物学的物質がタンパク質である場合には、本発明の化合物、または本発明の化合物の組合せは、タンパク質の表面の疎水性および/または親水性に基づいて選択され得る。
【0097】
本発明はまた、生物学的物質を安定させるための本発明の化合物またはその塩を提供する。
【0098】
本発明はまた、生物学的物質を安定させるための本発明の化合物またはその塩の使用を提供する。
【0099】
1つの実施形態において、安定化は、生物学的物質を変性から保護することである。1つの実施形態において、安定化は、生物学的物質の融点を増加することである。1つの実施形態において、安定化は、生物学的物質を乾燥から保護することである。1つの実施形態において、安定化は、生物学的物質を凝集から保護することである。1つの実施形態において、安定化は、生物学的物質を熱から保護することである。1つの実施形態において、安定化は、生物学的物質を凍結から保護することである。1つの実施形態において、安定化は、乾燥中に生物学的物質を保護することである。1つの実施形態において、安定化は、生物学的物質の貯蔵寿命を向上することである。
【0100】
本発明はまた、本発明の化合物またはその塩を含む診断キットを提供する。
【0101】
1つの実施形態において、前記診断キットは、マイクロアレイ、バイオセンサー、または酵素製剤である。1つの実施形態において、前記マイクロアレイ、バイオセンサー、または酵素製剤は、固定化生物学的物質を含む。本発明の適合溶質は、固定化生物学的物質を用いる技術の実施を改善するために、適合溶質を当技術分野で周知の方法に用いられ得る。例えば、PCT国際出願公開WO/2007/097653号を参照。
【0102】
本発明はまた、本発明の化合物、もしくはその塩を含む化粧品または他の皮膚科学的組成物、およびヒトまたは動物への局所投与に適した賦形剤を提供する。
【0103】
1つの実施形態において、前記化粧品または皮膚科学的組成物は、1種またはそれ以上の生物学的物質を含む。
【0104】
本発明はまた、上記のような化合物、組成物、方法、および使用を提供し、該化合物は、表6または7に記載したいずれかの化合物またはその塩である。例えば、本発明は、表6と7に記載した1種またはそれ以上の化合物および生物学的物質を含む生物学的物質を安定させるための組成物を提供する。他の例として、本発明は、生物学的物質を含んでいる溶液へ、表6と7に記載した少なくとも1種の化合物またはその塩を加えて、安定した溶液を形成することを含む、生物学的物質を安定させる方法を提供する。
【0105】
本明細書に記載した具体的な実施形態および例は例示であり、多くの変形は、開示の意志から、または添付された請求項の範囲から外れることなしに、これらの実施形態および例から導出され得る。異なる例示した実施形態および/または例の、要素および/または特性は、この開示および添付された請求項の範囲内で、互いに組み合わされおよび/または互いに置き換えられ得る。
【0106】
本発明の化合物を含み、または適用可能であるとして本明細書に記載された各実施形態は、化合物の塩にも等しく適用できる。
【0107】
上述の実施形態において、本明細書に開示された各実施形態は、それぞれの他の開示された実施形態に適用可能であると予想される。
【0108】
本明細書に開示された任意の範囲で、範囲内の全ての10分の1および整数の単位量は、発明の一部として明確に開示されるということを意味する。このように、例えば0.1Mから0.5Mまでは、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、および0.5Mが、発明の範囲内の実施形態であることを意味する。
【0109】
本発明は、後の例を参照することによってより理解されるであろうし、それらは主題の理解を援用するように記載され、後に続く特許請求の範囲のいずれを限定するように解釈されるべきではないし、意図されるものではない。
【0110】
例1: 新規適合溶質の合成
糖誘導体に基づく化学ライブラリが、増加したタンパク質の安定化特性を有する新規有機化合物を決定するために調製された。類似体構造の多様性は、例えばグルコース、ガラクトース、マンノースおよびグルコサミンのような異なるヘキソースを用いること、ならびにグリコシル化反応中に異なるグリコシルアクセプターを用いることによって導入された。
【0111】
ガラクトースおよびグルコサミン類似体は、安定化効果に対する糖構造の寄与を評価するために、マンノシドおよびグルコシドに加えて合成された。我々の知る限りにおいて、適合溶質を含む唯一のガラクトースは、超好熱菌である、サーモコッカスリトラリス(Thermococcus litoralis)からのβ-ガラクトピラノシル-5-ヒドロキシリシン(GalHI):
【化45】
【0112】
から単離されている。
グルタマート、プロリン、およびグルタミンのようないくつかのアミノ酸は、多くの中温性の有機体における適合溶質として機能することができ、α-およびβ-アミノ酸の両方は、オスモアダプテーション(osmoadaptation)に用いられる(Costa 1998)。アミノ基または追加の電荷が、安定化効果を高めるかどうか決定するために、グルコサミン誘導体が合成された。我々の知る限りにおいて、適合溶質を含む唯一のグルコサミンは、超好熱菌である、ルブロバクターキシラノフィラス(Rubrobacter xylanophilus)からのジ-N-アセチル-グルコサミンホスファート(DAGAP):
【化46】
【0113】
から単離されている(Empadinhas 2007)。
【0114】
DAGAPは、DIPまたはDGPのような、超好熱菌で発見されたホスホジエステル適合溶質に構造的に類似しているが、濃度が低すぎると細胞の浸透圧のバランスに貢献できないことに起因し、適合溶質としての役割は異議が唱えられている。
【0115】
本研究で選択されたグリコシルアクセプターの全ては、荷電され、例えば多少の炭素原子、水酸基の欠如、追加のカルボン酸基および不斉中心における立体配置のような変更点で、グリセラートに構造的に関連し、
【化47】
【0116】
に提示する。
グルコースおよびガラクトース誘導体の合成のために、チオグリコシドドナー1および19が合成された。ジクロロメタン中、NIS/TfOHシステム(Lourenco 2009)を用いる、上記のグリコシルアクセプターによるドナー1および19のグリコシル化反応で得られた結果が、表1に記載されている。全てのアクセプターは、グリセリン酸メチル誘導体9および135を除いて市販され、それらはD-セリンについて報告された実験手法に従って合成された(Lourenco 2009;Lok 1976)。
【化48】
【0117】
反応は、グリコシルアクセプターの大部分についてアノマーの混合物を与えた。これは、安定化効果に対するアノマー位の立体化学の重要性を決定するために、αおよびβアノマーを分けて試験する機会が提供された。これは、D/L-グリセラートおよびマラートガラクトシル誘導体の場合であった。
【表1-1】
【0118】
【表1-2】
【0119】
例えばアセタートのメタノリシス、グリセラート類似体(化合物35、140および141)の場合におけるシリルエーテルのフルオロリシス(fluorolysis)、およびエステル基の加水分解(スキーム2)のような、一般的な有機反応を用いる保護基の連続的な除去の後に、目的の生成物が得られた(表2)。
【化49】
【0120】
【表2-1】
【0121】
【表2-2】
【0122】
全体的に、生成物は良い収率でうまく得られ、αアノマーが主生成物であった。いくつかのケースでαおよびβアノマーの混合物が得られたが(αに富む)、それらは予備スクリーニングに用いられ、最も有望な化合物がその後に別々に試験されることになる。最も低い収率は、アセタートの除去およびメチルエステルの加水分解における塩基の使用が、マラート部分の脱離による、アノマー位の加水分解を促進したことに起因し、(S)-リンゴ酸ジメチルの誘導体(150、151および152、表2)で得られた。この問題は、バシリチオール(bacillithiol)(BSH)の合成についての文献に報告されている(Sharma 2011)。マラート部分の脱離を最小限にするために、慎重なエステル加水分解が、最終生成物中にモノエステルの形跡を残した。
【0123】
1,2-トランスマンノシドの合成について、C-2アシル隣接基の合成戦略は、保護基としてのアセタート、およびグリコシルドナーとしてのトリクロロアセトアミダートを用いて応用され、それらは比較的早く調製でき、安価である。反応促進剤としてBFOEtを用いる、マンノーストリクロロアセトイミダートドナー103とグリコシルアクセプターとの間のグリコシル化反応は、予想通り独占的にα-生成物として与えた。マンノースドナー103によるグリコシル化反応で得られた結果が、表3に提示されている。
【化50】
【0124】
【表3】
【0125】
一般的な有機反応を用いる保護基の連続的な除去(スキーム4)は、良い全収率で目的の生成物を与えた(表4)。
【化51】
【0126】
【表4】
【0127】
アセタート基およびマンノシルジメチル(S)-マラート誘導体のメチルエステルの加水分解には、グルコースおよびガラクトース誘導体について上記記載した同様の問題が存在した。
【0128】
1,2-シスグルコサミン誘導体は、2-アジド-2-デオキシチオグルコシドドナー90、ならびに-10℃でCHCl/EtO(4:1)の混合物中で実施されたグリコシルアクセプターによるグリコシル化反応、反応促進剤としてのNIS/TfOHを用いることから合成された。結果は表5に提示されている。
【化52】
【0129】
【表5】
【0130】
αアノマーが、用いた全てのアクセプターにおいて主生成物であった。アセタート基のメタノリシス、およびシリルエーテルのグリセラート誘導体のフルオロリシスのケースの後に、アジドの同時還元によるベンジル基の接触水素化が、不必要の環状アミドの形成を促進した(スキーム6)。この効果は、αアノマーでのみ観察された。
【化53】
【0131】
電荷が安定化効果に対して重要であるため、この問題を克服するために、シュタウディンガー(Staudinger)反応を用いるアジドの事前の還元、続いて生じたアセタートを有するアミン基の保護(スキーム7)は、アミンをブロックし、環化を回避した。保護基の除去およびメチルエステルの加水分解の後に、最終のN-アセチルグルコサミン誘導体が得られた。
【化54】
【0132】
実験の詳細
実験1. エチル6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-1-チオ-α/β-D-グルコピラノシド(1)の合成
化合物1の合成は、文献(Lourenco 2009)に記載した手法に従って行った。
【0133】
実験2. 一般的なグリコシル化法
指摘した溶媒/溶媒混合物(1mL)中のチオグリコシドドナー(0.15mmol)、アクセプター(0.15mmol)および4ÅMSの懸濁液を、室温で1h撹拌した後に、0℃に冷却した。N-ヨードスクシンイミド(0.19mmol)およびTfOH(0.9μL)を0℃で加え、反応完結時(TLC)に、10%Na水溶液(2mL)および飽和NaHCO水溶液(1mL)を加え、その混合物をCHCl(3×5mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、ろ過し、溶媒を減圧除去した。粗生成物を、分取TLC(3:7,EtOAc/Hex)によって精製した。単離した生成物のα/β比を、H NMR(400MHz,CDCl)スペクトルによって測定した。
【0134】
実験3. (2S)-2-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-グルコピラノシル)プロパン酸メチル(10)の合成
アクセプター4によるドナー1のグリコシル化反応を、実験2に記載した手法に従って実施した。
【0135】
実験4. 2-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-グルコピラノシル)酢酸メチル(13)の合成
アクセプター7によるドナー1のグリコシル化反応を、実験2に記載した手法に従って実施した。
【0136】
実験5. エチル6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-1-チオ-α/β-D-ガラクトピラノシド(19)の合成
DMF(20mL)中のメチルα-D-ガラクトピラノシド(2.0g,10.3mmol)の撹拌した溶液へ、臭化ベンジル(6.3mL,51.5mmol)を加えた。その混合物を0℃に冷却し、水素化ナトリウム(1.48g,61.8mmol)を少量ずつ加えた。その反応を室温(r.t.)で一晩維持し、出発物質の変換完了後にMeOHを0℃で加えた。その混合物をEtOで抽出し、合わせた有機相を乾燥し、ろ過し、濃縮した。シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(10:90,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のフォームとして生成物を得た(5.14g,90%)。
【0137】
濃硫酸(1.0mL)を0℃で、酢酸/無水酢酸(1:1,50mL)中のメチルテトラ-O-ベンジルガラクトピラノシド(5.72g,10.7mmol)の撹拌した溶液へ滴下した。出発物質の変換完了後に、反応混合物を、pH7まで飽和NaHCO水溶液および氷冷の蒸留水でクエンチした。その混合物をEtOAc(3×70mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残分を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(20:80,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のフォームとしてジアセタートを得た(4.29g,75%,α:β=3.7:1)。
【0138】
エタンチオール(1.56mL,20.7mmol)を、DCM(30mL)中のジアセタート(3.69g,6.9mmol)の撹拌した溶液へ加えた。反応混合物を0℃に冷却し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(1.31mL,10.35mmol)を滴下した。出発物質の変換完了後に、反応混合物をC Cl(2×40mL)で希釈し、pH7まで飽和NaHCO水溶液でクエンチした。水相をCHCl(2×40mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残分を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(20:80,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のフォームとしてチオガラクトシド19を得た(3.39g,91%,α/β=2.4:1)。
【0139】
実験6. (2S)-2-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-ガラクトピラノシル)プロパン酸メチル(32)の合成
アクセプター4によるドナー19のグリコシル化反応を、実験2に記載した手法に従って実施した。
【0140】
実験7. 2-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-ガラクトピラノシル)酢酸メチル(34)の合成
アクセプター7によるドナー19のグリコシル化反応を、実験2に記載した手法に従って実施した。
【0141】
実験8. 3-O-tert-ブチルジメチルシリル-(2R)-2-O-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-ガラクトピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸メチル(35)の合成
アクセプター9によるドナー19のグリコシル化反応を、実験2に記載した手法に従って実施した。
【0142】
実験9. フェニル3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-1-チオ-α/β-D-グルコピラノシド(85)の合成
CHCl(60mL)中の1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノース(Goddard-Borger 2007)(6.42g,17.2mmol)およびチオフェノール(3.55mL,34.4mmol)の溶液へ、0℃でBFOEt(9.81mL,77.4mmol)を加えた。その反応混合物をr.t.で48時間撹拌した後に、CHClで希釈し、NaHCOで洗浄した。水相をCHClで抽出し、合わせた有機相をMgSOで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。粗製物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtoAC/ヘキサン)によって精製し、無色の粘性のフォームとして85(5.40g,74%,α/β=2.5:1)を得て、最初のテトラアセタートを回収した(1.30g,20%)。
【0143】
実験10. p-トリル3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-1-チオ-α/β-D-グルコピラノシド(86)の合成
CHCl(60mL)中の1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノース(Goddard-Borger 2007)(3.87g,10.4mmol)およびp-トルエンチオール(2.57g,20.7mmol)の溶液へ、0℃でBFOEt(6.57mL,51.8mmol)を加えた。その反応混合物をr.t.で60時間撹拌した後に、CHClで希釈し、NaHCOで洗浄した。水相をCHClで抽出し、合わせた有機相をMgSOで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。粗製物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAC/ヘキサン)によって精製し、無色の粘性のフォームとして85(2.26g,50%,α/β=1.8:1)を得て、最初のテトラアセタートを回収した(1.69g,44%)。
【0144】
実験11. フェニル2-アジド-6-O-tert-ブチルジフェニルシリル-2-デオキシ-1-チオ-α/β-D-グルコピラノシド(87)の合成
MeOH中のNaOMe 1N(6.73mL,6.73mmol)の溶液を0℃で、MeOH(20mL)中の85(4.75g,11.21mmol)の撹拌した溶液へ加えた。3時間後、出発物質を消費した。反応混合物を、MeOHで希釈し、Dowex-H樹脂を中性pHまで加えた。ろ過および溶媒の蒸発で、粘性のガムとしてトリオールを得た(3.23g,97%)。ピリジン(20mL)中のトリオール(2.46g,8.27mmol)の溶液へ、r.t.でTBDPSCl(2.36mL,9.10mmol)、続いて触媒量のDMAPを加えた。その混合物を一晩撹拌した後に、HO(20mL)でクエンチし、CHCl(3×20mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,AcOEt/ヘキサン)による精製で、白色の固体として生成物87を得た(4.12g,93%,α/β=1.8:1)。
【0145】
実験12. p-トリル2-アジド-6-O-tert-ブチルジフェニルシリル-2-デオキシ-1-チオ-α/β-D-グルコピラノシド(88)の合成
実験11の手法を化合物86へ応用し、2つの工程を通して98%の収率(α/β=1.8:1)で、無色の粘性のガムとして化合物88を得た。
【0146】
実験13. フェニル6-O-アセチル-2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-1-チオ-α/β-D-グルコピラノシド(89)の合成
DMF(15mL)中の87(3.91g,7.30mmol)および臭化ベンジル(1.97mL,22.6mmol)の撹拌した溶液へ、0℃で水素化ナトリウム(0.45g,18.6mmol)を少量ずつ加えた。2時間後、MeOHを0℃で加え、その反応混合物を飽和水溶液でクエンチし、EtOで抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、ろ過し、減圧蒸発した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(10:90,AcOEt/ヘキサン)による精製で、白色の固体としてジベンジル化された生成物(4.45g,85%)、および粘性のガムとしてトリベンジル化された生成物92(0.31g,7%)を得た。
【0147】
THF(10mL)中のジベンジル化された生成物(2.42g,3.38mmol)の溶液へ、r.t.でTBAF(1.15g,4.39mmol)を加えた。その反応混合物を3時間撹拌した後に、水を加えた。その混合物をAcOEtで抽出し(3×20mL)、乾燥し(MgSO)、濃縮して黄色の粘性の残分を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,AcOEt/ヘキサン)による精製で、粘性のガムとしてアルコールを得た(1.43g,88%)。
【0148】
ピリジン(5mL)中の前記アルコール(1.396g,2.92mmol)の撹拌した溶液へ、0℃で無水酢酸(0.55mL,5.85mmol)および触媒量のDMAPを加えた。出発物質の変換完了後に、水を加えた。その混合物をEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO)、濃縮して粘性の残分を得た。EtOAc/ヘキサン(10/90)の混合物によるセライトを通すろ過で、粘性の無色のガムとして生成物89を得た(1.38g,91%,α:β=1.4:1)。
【0149】
実験14. フェニル2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-6-O-クロロアセチル-2-デオキシ-1-チオ-α/β-D-グルコピラノシド(90)の合成
実験13の手法を化合物87へ応用し、無水クロロ酢酸を用いて、3つの工程を通して66%(α/β=1.6:1)の収率で、無色の粘性のガムとして化合物90を得た。化合物90のキャラクタリゼーションデータは、文献(Csiki 2010)と同一であった。
【0150】
実験15. p-トリル2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-6-O-クロロアセチル-2-デオキシ-1-チオ-α/β-D-グルコピラノシド(91)の合成
実験13の手法を化合物88へ応用し、無水クロロ酢酸を用いて、3つの工程を通して82%の収率(α/β=1:1)で、無色の粘性のガムとして化合物91を得た。
【0151】
実験16. (2S)-2-(2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-6-O-クロロアセチル-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノシル)プロパン酸メチル(95)の合成
アクセプター4によるドナー90および91のグリコシル化反応を、実験2に記載した手法に従って実施した。
【0152】
実験17. 2-(2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-6-O-クロロアセチル-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノシル)酢酸メチル(96)の合成
アクセプター7によるドナー91のグリコシル化反応を、実験2に記載した手法に従って実施した。
【0153】
実験18. (2R)-tert-ブチルジメチルシリル-3-(2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-6-O-クロロアセチル-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸メチル(97)の合成
アクセプター9によるドナー91のグリコシル化反応を、実験2に記載した手法に従って実施した。
【0154】
実験19. 2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-マンノピラノシルトリクロロアセトイミダート103の合成
化合物103の合成は、文献(Hanessian 1997)に記載した手法に従って行った。
【0155】
実験20. 3-O-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-グルコピラノシル)-3-ヒドロキシ酪酸エチル(136)の合成
CHCl(6mL)中のチオグルコシドドナー1(0.815g,1.52mmol)、3-ヒドロキシ酪酸エチル133(0.197mL,1.52mmol)および4ÅMSの懸濁液を、室温で1h撹拌した後に0℃に冷却した。N-ヨードスクシンイミド(0.434g,1.93mmol)およびTfOH(0.112mL)を0℃で加え、反応完結時に、10%Na水溶液(6mL)および飽和NaHCO水溶液(3mL)を加えた。その混合物をCHCl(3×6mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、ろ過し、溶媒を減圧除去した。粗生成物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(20:80,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のフォームとして生成物136を得た(0.771g,84%)。
【0156】
実験21. 3-O-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-ガラクトピラノシル)-3-ヒドロキシ酪酸エチル(137)の合成
チオガラクトシドドナー19(0.638g,1.19mmol)および3-ヒドロキシ酪酸エチル133(0.170mL,1.31mmol)のグリコシル化反応を、実験20に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(20:80,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして生成物137を得た(0.685g,95%)。
【0157】
実験22. (2S)-2-O-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-グルコピラノシル)-2-ヒドロキシコハク酸ジメチル(138)の合成
チオガラクトシドドナー1(0.850g,1.58mmol)および(S)-リンゴ酸ジメチル134(0.208mL,1.58mmol)のグリコシル化反応を、実験20に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして生成物138を得た(0.949g,94%,α/β=7:1)。
【0158】
実験23. (2S)-2-O-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-ガラクトピラノシル)-2-ヒドロキシコハク酸ジメチル(139)の合成
チオガラクトシドドナー19(1.20g,2.23mmol)および(S)-リンゴ酸ジメチル134(0.294mL,2.23mmol)のグリコシル化反応を、実験20に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして生成物139を得た(1.235g,87%,α/β=5:1)。
【0159】
実験24. 3-O-tert-ブチルジメチルシリル-(2S)-2-O-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-グルコピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸メチル(140)の合成
チオガラクトシドドナー1(0.300g,0.56mmol)およびアクセプター135(0.200g,0.56mmol)のグリコシル化反応を、実験20に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(10:90,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして生成物140を得た(0.463g,98%,α/β>10:1)。
【0160】
実験25. 3-O-tert-ブチルジメチルシリル-(2S)-2-O-(6-O-アセチル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-α/β-D-ガラクトピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸メチル(141)の合成
チオガラクトシドドナー1(0.300g,0.56mmol)およびアクセプター135(0.200g,0.56mmol)のグリコシル化反応を、実験20に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(10:90,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして生成物140を得た(0.463g,98%,α/β>10:1)。
【0161】
実験26. (2S)-2-(α-D-グルコピラノシル)プロパン酸カリウム(142)の合成
MeOH中のNaOMe 1N(0.443mL,0.443mmol)の溶液を0℃で、MeOH(4mL)中の10(0.427g,0.74mmol)の撹拌した溶液へ加えた。1h後、その反応混合物を飽和NHCl水溶液で中和した。水相をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物を乾燥し(MgSO)、ろ過し、溶媒を除去した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてα(0.310g,78%)およびβ-アルコール(0.027g,7%)を得た。
【0162】
EtOAc中のα-アルコール(0.300g,0.56mmol)の溶液を、Pd/C 10%(0.25equiv)の存在下、50psiで水素化した。5時間後、反応混合物をろ過し、溶媒を蒸発して、非常に粘性の無色のフォームとしてエステルを得た(0.149g,定量的(quantitative))。2M KOH(0.28mL)の溶液を、HO(2mL)中の前記エステル(0.149g,0.56mmol)の撹拌した溶液へ加えた。全ての出発物質を消費した後に、10%HClを用いてpHを7に調節し、溶媒を蒸発して、粘性の無色のフォームとして142を得た(0.162g,定量的)。[α]20 D = +107.2 (c = 0.60, H2O). 1H NMR (D2O): δ 4.93 (d, J = 3.9 Hz, 1H, H-1), 3.96 (q, J = 6.8 Hz, 1H, CHCH3), 3.75-3.68 (m, 5H), 3.44 (dd, J = 9.9 Hz, J = 4.0 Hz, 1H, H-2), 3.35 (t, J = 9.3 Hz, 1H, H-4), 1.28 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CHCH 3) ppm. 13C NMR (CDCl3): δ 181.0 (CHCO2 -), 97.3 (C-1), 75.5 (CHCH3), 73.1 (C-3), 71.9 (C-5), 71.5 (C-2), 69.4 (C-4), 60.1 (C-6), 17.5 (CHCH3) ppm.
実験27. (2S)-2-(α/β-D-ガラクトピラノシル)プロパン酸カリウム(143)の合成
ガラクトシド32(1.720g,2.63mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(40:60,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてアルコールを得た(1.350g,96%,α/β=3:1)。ベンジルエーテル(1.323g,2.46mmol)の接触水素化、および実験23に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物143を粘性の無色のフォームとして得た(0.715g,定量的,α/β=3:1)。FTIR (フィルム) vmax: 1635 (C=O), 3332 (O-H) cm-1. 1H NMR (D2O): δ 4.97 (d, J = 3.9 Hz, H-1 (α)), 4.58 (q, J = 7.0 Hz, CHCH3 (β)), 4.37 (d, J = 7.7 Hz, H-1 (β)), 4.25 (q, J = 6.9 Hz, CHCH3 (α)), 3.93-3.88 (m), 3.84-3.79 (m), 3.76-3.64 (m), 3.63-3.52 (m), 3.47 (dd, J = 9.9, 7.7 Hz, ), 1.38 (d, J = 7.0 Hz, CHCH 3 (β)), 1.35 (d, J = 6.8 Hz, CHCH 3 (α)) ppm. 13C NMR (CDCl3): δ 187.3 (CHCO2 -), 101.8 (C-1 (β)), 98.9 (C-1 (α)), 75.2, 73.7, 73.1, 72.6, 71.4, 70.7, 69.21, 69.07, 68.5, 68.0, 60.84, 60.80, 52.68, 52.62, 17.1 (CHCH3) ppm.
実験28. 2-(α/β-D-グルコピラノシル)酢酸カリウム(144)の合成
グルコシド13(0.940g,1.66mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(40:60,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてアルコールを得た(0.765g,88%,α/β=11:1)。ベンジルエーテル(0.715g,1.37mmol)の接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物144を粘性の無色のフォームとして得た(0.378g,定量的,α/β=10:1)。1H NMR (D2O): δ 4.88 (d, J = 3.8 Hz, H-1 (α)), 4.41 (d, J = 7.9 Hz, H-1 (β)), 4.22 (d, J = 15.6 Hz, CHH’CO2 -(β)), 4.06 (d, J = 15.5 Hz, CHH’CO2 - (α)), 4.03 (d, J = 15.8 Hz, CHH’CO2 - (α)), 3.88 (d, J = 15.5 Hz, CHH’CO2 - (β)), 3.79-3.61 (m), 3.46 (dd, J = 9.8, 3.8 Hz), 3.34 (t, J = 9.5 Hz) ppm. 13C NMR (CDCl3): δ 177.4, 102.3 (C-1 (β)), 98.3 (C-1 (α)), 75.9 (β), 75.5 (β), 73.1, 71.9, 71.5, 69.5, 68.5 (CH2CO2 - (β)), 66.8 (CH2CO2 - (α)), 60.61 (C-6 (β)), 60.43 (C-6 (α)) ppm.
実験29. 2-(α/β-D-ガラクトピラノシル)酢酸カリウム(145)の合成
ガラクトシド34(1.079g,1.91mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(40:60,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてアルコールを得た(0.800g,81%,α/β=2:1)。ベンジルエーテル(0.787g,1.50mmol)の接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物145を粘性の無色のフォームとして得た(0.416g,定量的,α/β=2:1)。1H NMR (D2O): δ 4.91 (d, J = 3.9 Hz, H-1 (α)), 4.34 (d, J = 7.7 Hz, H-1 (β)), 4.24 (d, J = 15.6 Hz, CHH’CO2 - (β)), 4.06 (d, J = 15.6 Hz, CHH’CO2 - (α)), 4.03 (d, J = 15.6 Hz, CHH’CO2 - (β)), 3.92-3.84 (m), (d, J = 15.6 Hz, CHH’CO2 - (α)), 3.75-3.71 (m), 3.69-3.58 (m), 3.52 (dd, J = 10.0 Hz, J = 7.6 Hz, H-2 (β)) ppm. 13C NMR (CDCl3): δ 177.5, 102.9 (C-1 (β)), 98.3 (C-1 (α)), 75.2 (β), 72.6 (β), 71.1 (α), 70.8 (β), 69.5 (α), 69.2 (α), 68.6 (β), 68.5 (CH2CO2 - (β)), 68.4 (α), 66.8 (CH2CO2 - (α)), 61.15 (C-6 (α)), 60.95 (C-6 (β)) ppm.
実験30. (2R)-2-O-(α/β-D-ガラクトピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸カリウム(146,147)の合成
ガラクトシド35(1.078g,1.29mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(20:80,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてα(0.671g,66%)およびβ-アルコール(0.286g,28%)を得た。
【0163】
TBAF(THF中1M;0.83mL,0.83mmol)を、r.t.でTHF(4mL)中のα-ガラクトシド(0.655g,0.83mmol)の溶液へ加えた。その反応混合物を4時間撹拌した後に、水を加えた。混合物をEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO)、濃縮して黄色の粘性の残分を得た。シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(80:20,EtOAc/ヘキサン)による精製で、粘性の無色のガムとしてα-ジオールを得た(0.457g,92%)。α-ジオール(0.140g,1.50mmol)からベンジルエーテルの接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物146を粘性の無色のフォームとして得た(0.416g,定量的)。アルファ生成物146:[α]20 D = +127.6 (c = 0.62, H2O). 1H NMR (D2O): δ 4.97 (d, J = 3.9 Hz, 1H, H-1), 4.13 (dt, J = 4.7 Hz, J = 2.3 Hz, 1H, CHCH2OH), 3.99 (t, J = 6.2 Hz, 1H,), 3.93-3.87 (m, 2H), 3.81 (dd, J = 12.1, 3.2 Hz, 1H), 3.77-3.70 (m, 2H), 3.69-3.64 (m, 2H, H-6, H’-6) ppm. 13C NMR (D2O): δ 177.1 (CHCO2 -), 97.6 (C-1), 79.2 (CHCH2OH), 71.3, 69.6, 69.3, 68.5, 63.1 (CHCH2OH), 61.2 (C-6) ppm.
同じ手法をβ-ガラクトシド(0.266g,0.34mmol)の脱保護に応用した。フルオロリシス(0.140g,76%)、β-ジオール(0.340g,0.615mmol)からベンジルエーテルの接触水素化、およびメチルエステルの加水分解の後に、化合物147を粘性の無色のフォームとして得た(0.188g,定量的)。ベータ生成物147:1H NMR (D2O): δ 4.42 (d, J = 7.5 Hz, 1H , H-1), 4.11 (dd, J = 6.5 Hz, J = 3.2 Hz, 1H, CHCH2OH), 3.83-3.77 (m, 2H), 3.73-3.67 (m, 2H), 3.64-3.53 (m, 4H) ppm. 13C NMR (D2O): δ 177.9 (CHCO2 -), 102.6 (C-1), 81.3 (CHCH2OH), 75.1, 72.6, 70.9, 68.7, 62.6 (CHCH2OH), 60.9 (C-6) ppm.
実験31. 3-O-(α-D-グルコピラノシル)-3-ヒドロキシ酪酸カリウム(148)の合成
グルコシド136(0.823g,1.36mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(40:60,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてα(0.594g,82%)およびβ-アルコール(0.066g,9%)を得た。α-アルコール(0.516g,0.94mmol)のベンジルエーテルの接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物148を粘性の無色のフォームとして得た(0.285g,定量的)。1H NMR (D2O): δ 4.98 (d, J = 4.0 Hz, H-1), 4.97 (d, J = 4.2 Hz, H-1), 4.14-4.04 (m, CHCH3), 3.80-3.59 (m), 3.45-3.39 (m, H-2), 3.34-3.28 (m, H-4), 2.47 (dd, J = 14.2 Hz, J = 6.9 Hz, CHCH 2CO2 -), 2.40-2.22 (m, CHCH 2CO2 -), 1.21 (d, J = 6.1 Hz, CHCH 3), 1.14 (d, J = 5.9 Hz, CHCH 3) ppm. 13C NMR (D2O): δ 180.19, 180.16, 97.6 (C-1), 94.9 (C-1), 73.4 (CHCH3), 73.15 (CHCH3), 73.06, 71.9, 71.51, 71.48, 71.32, 70.5, 69.62, 69.56, 60.6 (C-6), 60.3 (C-6), 45.6 (CHCH2CO2 -), 44.5 (CHCH2CO2 -), 20.6 (CHCH3), 18.0 (CHCH3) ppm.
実験32. 3-O-(α/β-D-ガラクトピラノシル)-3-ヒドロキシ酪酸カリウム(149)の合成
ガラクトシド137(0.709g,1.17mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(40:60,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてアルコールを得た(0.584g,88%,α/β=3:1)。ベンジルエーテル(0.573g,1.01mmol)の接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物145を粘性の無色のフォームとして得た(0.309g,定量的,α/β=3:1)。1H NMR (D2O): δ 5.01 (d, J = 3.9 Hz, H-1 (α)), 4.99 (d, J = 3.8 Hz, H-1 (α)), 4.42 (d, J = 8.4 Hz, H-1 (β)), 4.40 (d, J = 8.1 Hz, H-1 (β)), 4.23-4.04 (m), 3.97-3.89 (m), 3.84 (t, J = 3.9 Hz), 3.78-3.54 (m), 3.40 (dd, J = 9.6, 8.2 Hz), 2.54-2.44 (m), 2.40-2.22 (m), 1.22-1.13 (m) ppm. 13C NMR (D2O): δ 180.3, 179.9, 101.9 (C-1 (β)), 101.1 (C-1(β)), 97.9 (C-1 (α)), 95.1 (C-1 (α)), 75.14, 75.10, 74.99, 74.0, 73.4, 72.79, 72.65, 71.02, 71.01, 70.8, 70.52, 70.44, 69.58, 69.46, 69.30, 69.1, 68.72, 68.56, 68.46, 68.2, 68.72, 68.56, 68.46, 68.2, 61.23, 61.09, 60.9, 45.75 (CHCH2CO2 -), 45.57 (CHCH2CO2 -), 44.5 (CHCH2CO2 -), 20.6 (CHCH3), 19.3 (CHCH3), 18.0 (CHCH3) ppm.
実験33. (2S)-2-O-(α/β-D-グルコピラノシル)-2-ヒドロキシコハク酸カリウム(150)の合成
グルコシド138(0.263g,0.41mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物を分取TLC(50:50,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして目的のアルコール(0.117g,48%)、ならびに最初の138の回収物(0.068g,26%)およびアノマー位における加水分解の生成物(0.046g,25%)を得た。ベンジルエーテル(0.565g,0.95mmol)の接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物145を粘性の無色のフォームとして得た(0.290g,94%)。1H NMR (D2O): δ 4.94 (d, J = 3.9 Hz, H-1 (α)), 4.39 (d, J = 7.9 Hz, H-1 (β)), 4.19 (dd, J = 10.4, J = 3.1 Hz, 1H, CO2 -CHCH2CO2 -), 3.80-3.63 (m), 3.45-3.28 (m), 3.21-3.15 (m), 2.59 (dd, J = 15.1 Hz, J = 2.9 Hz, CHCH 2CO2 - (β)), 2.52 (dd, J = 15.2 Hz, J = 3.2 Hz, CHCH 2CO2 - (α)), 2.42 (dd, J = 15.2 Hz, J = 10.4 Hz, CHCH 2CO2 - (α)) ppm. 13C NMR (D2O): δ 179.5, 179.1, 135.3 (C-1 (β)), 99.7 (C-1 (α)), 95.9, 79.0, 75.92, 75.72, 74.1, 73.1, 72.2, 71.8, 71.4, 69.6, 69.2, 60.7, 60.0, 41.5 ppm.
実験34. (2S)-2-O-(α/β-D-ガラクトピラノシル)-2-ヒドロキシコハク酸カリウム(151,152)の合成
ガラクトシド139(1.215g,1.91mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(50:50,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてα(0.642g,57%)およびβ-アルコール(0.176g,16%)と、出発物質139の回収物(0.020g,16%)と、アノマー位における加水分解の生成物(0.067g,8%)とを得た。α(0.640g,1.07mmol)とβ-アルコール(0.159g,0.27mmol)とからベンジルエーテルの接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物151(0.401g,定量的)および152(0.100g,定量的)を、粘性の無色のフォームとして得た。アルファ生成物151:FTIR (フィルム) vmax: 1634 (C=O), 3332 (O-H) cm-1. 1H NMR (D2O): δ 4.96 (d, J = 4.0 Hz, 1H, H-1) 4.20 (dd, J = 10.3, 3.1 Hz, CO2 -CHCH2CO2 -), 4.05-4.02 (m), 3.94 (d, J = 2.8 Hz), 3.86 (dd, J = 10.4 Hz, J = 3.3 Hz), 3.70-3.54 (m), 2.54 (dd, J = 15.2 Hz, 3.2 Hz, 1H , CHCH 2CO2 -), 2.43 2.42 (dd, J = 15.2 Hz, J = 10.3 Hz, 1H,CHCH 2CO2 -) ppm.ベータ生成物152:FTIR (フィルム) vmax: 1736 (C=O), 3410 (O- H) cm-1. 1H NMR (D2O): δ 4.52 (dd, J = 10.0 Hz, J = 3.1 Hz, 1H, CO2 - CHCH2CO2 -), 4.33 (d, J = 7.5 Hz, 1H, H-1), 3.83-3.82 (m, 1H), 3.77-3.50 (m, 5H), 2.62 (dd, J = 15.2, 3.1 Hz, 1H, CHCH 2CO2 -), 2.44 (dd, J = 15.2, 10.0 Hz, 1H, CHCH 2CO2 -). 13C NMR (D2O): δ 179.4 (CO2 -), 179.0 (CO2 -), 102.0 (C-1), 77.6 (CHCH2CO2 -), 75.4, 72.8, 70.9, 68.8, 61.3 (C-6), 41.9 (CHCH2CO2 -) ppm.
実験35. (2S)-2-O-(α-D-グルコピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸カリウム(153)の合成
グルコシド140(0.450g,0.54mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(20:80,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとしてα(0.299g,70%)およびβ-アルコール(0.030g,7%)を得た。
【0164】
TBAF(THF中1M;0.37mL,0.37mmol)を、r.t.でTHF(2mL)中のα-グルコシド(0.290g,0.37mmol)の溶液へ加えた。その反応混合物を4時間撹拌した後に、水を加えた。混合物をEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO)、濃縮して黄色の粘性の残分を得た。シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(80:20,EtOAc/ヘキサン)による精製で、粘性の無色のガムとしてα-ジオールを得た(0.162g,80%)。α-ジオール(0.150g,0.27mmol)からベンジルエーテルの接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物153を粘性の無色のフォームとして得た(0.077g,定量的)。1H NMR (D2O): δ 4.96 (d, J = 3.9 Hz, 1H, H-1), 3.96 (dd, J = 3.3 Hz, J = 6.5 Hz, 1H, CHCH2OH), 3.79- 3.75 (m, 3H), 3.72-3.63 (m, 3H), 3.48 (dd, J = 3.9 Hz, J = 9.9 Hz, 1H, H-2), 3.37 (t, J = 9.6 Hz, 1H, H-4) ppm. 13C NMR (D2O): δ 177.4 (CO2 -), 99.2 (C-1), 81.4 (CHCH2OH), 72.9, 72.2, 71.7 (C-2), 69.3 (C-4), 62.6 (CHCH2OH), 60.0 (C-6) ppm.
実験36. (2S)-2-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸カリウム(154)の合成
α-ガラクトシド141(0.640g,0.77mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色の残分としてアルコール(0.572g,94%)を得た。
【0165】
TBAF(THF中1M;0.83mL,0.88mmol)を、r.t.でTHF(5mL)中のα-ガラクトシド(0.695g,0.88mmol)の溶液へ加えた。その反応混合物を4時間撹拌した後に、水を加えた。混合物をEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO)、濃縮して黄色の粘性の残分を得た。シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(80:20,EtOAc/ヘキサン)による精製で、粘性の無色のガムとしてジオールを得た(0.343g,71%)。ジオール(0.310g,0.56mmol)からベンジルエーテルの接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物154を粘性の無色のフォームとして得た(0.172g,定量的)。1H NMR (D2O): δ 5.01 (d, J = 3.9 Hz, 1H, H-1), 4.28 (t, J = 4.2 Hz, 1H, CHCH2OH), 4.18-3.92 (m, 4H), 3.85-3.58 (m, 4H) ppm.
実験37. (2S)-2-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸カリウム(155)の合成
β-ガラクトシド141(0.275g,0.33mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験26に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(40:60,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色の残分としてアルコール(0.243g,93%)を得た。
【0166】
TBAF(THF中1M;0.83mL,0.44mmol)を、r.t.でTHF(3mL)中のβ-ガラクトシド(0.350g,0.44mmol)の溶液へ加えた。その反応混合物を4時間撹拌した後に、水を加えた。混合物をEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO)、濃縮して黄色の粘性の残分を得た。シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(80:20,EtOAc/ヘキサン)による精製で、粘性の無色のガムとしてジオールを得た(0.151g,62%)。ジオール(0.140g,0.25mmol)からベンジルエーテルの接触水素化、および実験26に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物155を粘性の無色のフォームとして得た(0.078g,定量的)。1H NMR (D2O): δ 4.38 (d, J = 7.4 Hz, 1H, H-1), 4.28 (dd, J = 6.2 Hz, J = 2.9 Hz, 1H, CHCH2OH), 3.84 (dt, J = 7.2, 3.8 Hz, 2H), 3.76-3.68 (m, 3H), 3.66-3.53 (m, 4H) ppm. 13C NMR (D2O): δ 177.1 (CO2 -), 102.5 (C-1), 81.4 (CHCH2OH), 75.3, 72.8, 71.0, 68.6, 63.2 (CHCH2OH), 61.0 (C-6) ppm.
実験38. 3-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-マンノピラノシル)-3-ヒドロキシ酪酸エチル(156)の合成
3-ジヒドロキシ酪酸エチル(0.348mL,2.68mmol)を、乾燥CHCl(6mL)中のトリクロロアセトアミダート103(1.100g,2.23mmol)の溶液へ加えた。その溶液を0℃に冷却し、BFOEt(0.0.282mL,2.23mmol)を徐々に加えた。反応完結時に、NaHCOの飽和水溶液を加え、その後にC Cl(3×15mL)を用いて抽出した。合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、濃縮した。残分を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(40:60,EtOAc/ヘキサン)によって精製し、粘性の無色の残分として156を得た(0.943g,91%)。
【0167】
実験39. (2S)-2-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-マンノピラノシル)-2-ヒドロキシコハク酸ジメチル(157)の合成
トリクロロアセトアミダートドナー103(1.540g,3.12mmol)と(S)リンゴ酸エチルジメチルジメチル134(0.494mL,3.75mmol)とのグリコシル化反応を、実験38に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして生成物157を得た(1.359g,88%)。
【0168】
実験40. 3-O-tert-ブチルジメチルシリル-(2S)-2-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-マンノピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸メチル(158)の合成
トリクロロアセトアミダートドナー103(1.30g,2.64mmol)とアクセプター135(0.946g,2.64mmol)とのグリコシル化反応を、実験38に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして生成物158を得た(1.33g,73%)。
【0169】
実験41. 3-O-(α-D-マンノピラノシル)-3-ヒドロキシ酪酸カリウム(159)の合成
MeOH中のNaOMe 1N(0.36mL,0.36mmol)の溶液を0℃で、MeOH(3mL)中の156(0.276g,0.60mmol)の撹拌した溶液へ加えた。出発物質の変換完了後に、事前に活性化したDowex-H樹脂を中性pHまで加えた。MeOHと水とを用いてのろ過の後に、溶媒を減圧除去し、粘性の無色のガムとして脱保護したマンノシドを得た(0.157g,90%)。
【0170】
2M KOH(0.78mL)の溶液を、HO(4mL)中の上記のマンノシド(0.431g,1.56mmol)の撹拌した溶液へ加えた。全ての出発物質を消費した後に、10%HClを用いてpHを7に調節し、溶媒を蒸発して、粘性の無色のフォームとして159を得た(0.446g,定量的)。1H NMR (D2O): δ 4.91 (d, J = 7.5 Hz), 4.18-4.09 (m,(CHCH3), 3.84-3.77 (m), 3.74-3.63 (m), 3.57 (t, J = 8.9 Hz), 2.43-2.21 (m,(CHCH 2CO2 -)), 1.20 (d, J = 6.1 Hz, CHCH 2CO2 -), 1.14 (d, J = 5.6 Hz, CHCH 2CO2 -) ppm. 13C NMR (CDCl3): δ 179.9 (CH2 CO2 -), 179.8 (CH2 CO2 -), 99.7 (C-1), 96.5 (C-1), 73.4, 72.9, 72.5, 70.57, 70.52, 70.41, 70.29, 70.24, 66.84, 66.72, 61.0 (C-6), 60.7 (C-6), 45.5 (CHCH2CO2 -), 44.8 (CHCH2CO2 -), 20.8 (CHCH3) ppm.
実験42. (2S)-2-O-(α-D-マンノピラノシル)-2-ヒドロキシコハク酸カリウム(160)の合成
マンノシド157(1.343g,2.72mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験41に記載した手法に従って実施した。粗製物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(20:80,MeOH/CHCl)によって精製し、粘性の無色のガムとして目的の脱保護したマンノシド(0.685g,78%)と、アノマー位における加水分解の生成物と、D-マンノピラノシド(0.100g,20%)とを得た。実験38に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解の後に、化合物160を粘性の無色のフォームとして得た(0.0.786g,定量的)。1H NMR (D2O): δ 4.85 (t, J = 15.6 Hz, 1H), 4.85 (s, 1H, H-1), 4.24 (dd, J = 8.2 Hz, J = 4.7 Hz, 1H), 3.90-3.58 (m, 5 H), 2.79-2.64 (m, 2H) ppm.
実験43. (2S)-2-O-(D-マンノピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸カリウム(161)の合成
TBAF(THF中1M;0.38mL,0.38mmol)を、r.t.でTHF(3mL)中の158(0.220g,0.32mmol)の溶液へ加えた。その反応混合物を4時間撹拌した後に、水を加えた。混合物をEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO)、濃縮して黄色の粘性の残分を得た。分取TLC(60:40,EtOAc/ヘキサン)による精製で、粘性の無色のガムとしてアルコールを得た(0.103g,72%)。アルコール(0.518g,1.15mmol)のアセタート基のメタノリシスを、実験41に記載した手法に従って実施した。出発物質の変換完了後に、事前に活性化したDowex-H樹脂を中性pHまで加えた。MeOHと水とを用いてのろ過の後に、溶媒を減圧除去し、粘性の無色のガムとして脱保護したマンノシドを得た(0.312g,96%)。実験41に記載した手法に従うメチルエステルの加水分解、化合物161を粘性の無色のフォームとして得た(0.300g,定量的)。1H NMR (D2O): δ 4.89 (d, J = 1.4 Hz, 1H, H-1), 4.02(dd, J = 7.1, 3.2 Hz, 1H, CHCO2 -), 3.99 (dd, J = 3.4, 1.6 Hz, 1H, H-), 3.89 (dd, J = 9.5, 3.4 Hz, 1H), 3.79 (dd, J = 12.2, 3.1 Hz, 1H, H-), 3.74-3.61 (m, 5H) ppm. 13C NMR (CDCl3): δ 100.8, 80.6 (C-1), 73.2, 70.5, 70.1, 66.5, 62.5, 60.5 ppm.
実験44. (2S)-2-O-(2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-6-O-クロロアセチル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル)-2-ヒドロキシコハク酸ジメチル(162)の合成
CHCl:EtO(1:4,20mL)中のチオグルコシドドナー91(0.750g,1.32mmol)、(S)-リンゴ酸メチル134(0.197mL,1.52mmol)および4ÅMSの懸濁液を、室温で1h撹拌した後に0℃に冷却した。C Cl:EtO(1:1,20mL)中のN-ヨードスクシンイミド(0.0.594g,2.64mmol)およびTfOH(0.027mL)の溶液を0℃で加えた。出発物質の変換完了後に、10%Na水溶液(20mL)および飽和NaHCO水溶液(10mL)を加えた。混合物をCHCl(3×20mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、ろ過し、溶媒を減圧除去した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のフォームとして生成物162を得た(0.672g,84%)。
【0171】
実験45. (2S)-2-(2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル)プロパン酸メチル(163)の合成
MeOH中のNaOMe 1N(0.46mL,0.46mmol)の溶液を0℃で、MeOH(5mL)中の95(0.470g,0.77mmol)の撹拌した溶液へ加えた。1時間後、その反応混合物を飽和NHCl水溶液で中和した。水相をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物を乾燥し(MgSO)、ろ過し、溶媒を除去した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(30:70,EtOAc/Hex)によって精製し、粘性の無色のガムとして163を得た(0.355g,98%)。
【0172】
実験46. 2-(2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル)酢酸メチル(164)の合成
実験45の手法を化合物96(0.500g,0.94mmol)へ応用し、無色の粘性のガムとして化合物164を得た(0.393g,92%)。
【0173】
実験47. (2R)-tert-ブチルジメチルシリル-3-(2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル)-2,3-ジヒドロキシプロパン酸メチル(165)の合成
TBAF(THF中1M,1.14mL,1.14mmol)を、r.t.でTHF(7mL)中の97(0.830g,1.03mmol)の溶液へ加えた。その反応混合物を4時間撹拌した後に、水を加えた。混合物をEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO)、濃縮して黄色の粘性の残分を得た。シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(50:50,EtOAc/ヘキサン)による精製で、粘性の無色のガムとしてアルコールを得た(0.401g,72%)。実験45の手法をアルコール(0.296g,0.55mmol)へ応用し、粘性の無色のガムとして165を得た(0.261g,92%)。
【0174】
実験48. (2S)-2-O-(2-アジド-3,4,ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル)-2-ヒドロキシコハク酸ジメチル(166)の合成
実験45の手法を化合物162(0.670g,1.10mmol)へ応用し、粘性の無色のガムとして化合物166を得た(0.429g,73%)。
【0175】
例2:3つのモデルタンパク質における例1の適合溶質のタンパク質の安定化効果
熱ストレスに対する3つのモデルタンパク質を安定させるための新規合成類似体の能力は、示差走査型蛍光定量法(DSF)を用いて評価された。本研究において、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ(SNase)およびリゾチームが、モデルタンパク質として用いられ、合成化合物の安定化効果は、塩化カリウムと同様のMGおよびGGのような天然の溶質、ならびにMGlycおよびMLのような事前に合成された非天然の溶質の効果と比較した。
【0176】
試験された化合物が、表6および7に示されている。
【表6】
【0177】
【表7】
【0178】
安定アッセイに基づいたDSFは、各タンパク質の機能するpH、溶質無し(コントロール実験)および有りで決定された融点(T)、ならびに異なる溶質濃度で実施された。各アッセイの変性曲線が分析され、第1の導関数の計算によって決定された融点はタンパク質-変性推移の中間の温度に対応する。溶質無しの場合、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ(SNase)およびリゾチームは、それぞれ50、52および71℃の融点(T)を有する。変性温度シフト(△T)は、溶質有りで得られたT値と、コントロール実験(溶質無し)のT値とを比較することによって算出された。Tの増加に対応する正の△T値は、タンパク質がより安定で、それを変性するためにより多くのエネルギー(熱)が必要とされることを意味する。Tの減少に対応する負の△T値は、タンパク質が安定ではないことを意味する。
【0179】
合成および天然の溶質の存在によって誘導される3つの酵素の融点(△T)の増加量が、図1に示されている。
【0180】
異なるグルコース誘導体(図2)およびガラクトース(図3)の分析は、ヘキソースに結合している非グリコシド基の重要性を示した。
【0181】
糖の構造の重要性について、異なるラクタート(図4)およびマラート誘導体(図5)が分析された。
【0182】
MDHの融点の増加量に対する、SNaseおよびリゾチームの融点の増加量を図示するとき(図2-5)、結果の概観が現れる。
【0183】
試験したタンパク質についての一般的な結論は、
-荷電された化合物は、より良い安定剤であり、
-マラート(最も良い)およびラクタート誘導体は、より高い安定化を与え、
-無糖の部分は、ヘキソース構造より安定化効果においてより大きな影響を有し、および
-グルコースおよびガラクトース誘導体は、より良い安定剤である。
【0184】
リゾチームに対する酢酸カリウム塩(AcOK)の安定化効果は、ハイパーソリュートとともに研究された(図6)。その結果は、AcOK単独が、高い塩濃度でのみ安定させ、良い安定剤ではないということを示した。しかしながら、ハイパーソリュートとともに安定化特性を高めることができる。
【0185】
安定化効果に対する糖のグリコシド結合の重要性を決定するために、DおよびL-ガラクトシルグリセラートの異なるαおよびβアノマーが研究された(図7)。3つの酵素で得られた結果は、L-グリセラートが天然のD-グリセラート誘導体よりも良い安定剤であり、β-アノマーはβ配置を有するものより良い安定剤であるということを示した。
【0186】
溶質の濃度に対する融点の増加量の依存性を研究するために、前記タンパク質は異なる溶質濃度(0.1、0.25および0.5M)で試験された(図8図9、および図10)。3つのタンパク質において、結果は、安定化の度合いに無関係で、安定化効果が溶質の濃度に直接に比例した、ということを示した。得られた結果は、一般的な傾向に従うように見えるが、SNase(図8)およびリゾチーム(図10)の場合には、より近い見た目をとり、α-ガラクトシルマラートは明確に最も良い安定剤である。MDHの場合、結果はグルコシルマラートがこの酵素のための最も良い安定剤であったことを示す。
【0187】
材料
マンノシルグリセラート(MG)、グルコシルグリセラート(GG)、グルコシルグルコシルグリセラート(GGG)、マンノシルグリコラート(MGly)およびマンノシルラクタート(ML)は、文献に記載されたような化学合成によって得られた(Costa 1998)。新規合成化合物は、例1に記載したような化学合成によって得られた。目的の化合物は、水を用いて希釈したSephadex G-10カラム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって精製された。純粋な化合物を含む分画が貯められ、凍結乾燥された。化合物の純度および濃度は、DO中、500MHz分光計で得られたHNMRスペクトルによって評価された。定量化目的のために、スペクトルは、標準濃度としてのギ酸塩を用いて、60sの繰り返し時間によって取得された。98%より高い純度のサンプルのみが用いられた。ブタの心臓からのミトコンドリアのリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDII)は、Rocheから購入し、ニワトリ卵白リゾチームは、Sigma-Aldrichから購入した。これらの酵素は、さらなる精製なしに用いられた。組換えブドウ球菌性ヌクレアーゼA(SNase)は、Faria 2008によって記載されたような大腸菌の細胞から産生され、精製された。タンパク質の濃度は、MDHの吸光係数については0.28(mg/mL)-1cm-1、リゾチームについては2.58(mg/mL)-1cm-1、およびSNaseについては0.93(mg/mL)-1cm-1を用いて、280nmのUV吸収から決定された。
【0188】
DSFアッセイ
タンパク質の融点(T)決定は、水溶性環境で完全にクエンチされているにも関わらず、タンパク質の疎水性パッチと結合して蛍光を発する、蛍光プローブSYPRO Orange色素(分子プローブ)を用いるタンパク質の変性をモニターすることによって実施された。そのような蛍光の増加は、示差走査型蛍光定量法を用いて融点の関数として測定できる。20μLの総容積を有する典型的なアッセイにおいて、0.14から0.21mg/mLまでのタンパク質の濃度、および5倍の色素濃度が、ノイズ比に対して最も良い信号を保証するために用いられた。SNaseまたはMDHのタンパク質の貯蔵液は、リン酸緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム,pH7.6)で調製され、リゾチームは、クエン酸緩衝液(40mM クエン酸ナトリウム,110mM NaCl,pH6.0)で調製された。これらの貯蔵液は、アッセイ前に同じバッファーに対して広範に透析された。タンパク質の濃度は、MDHが約1.9μM、SNaseが12.4μM、リゾチームが13μMで用いられた。溶質溶液は、それぞれの濃度に水で調製された。アッセイは、8μLの色素緩衝溶液、および10μLの溶質溶液へ2μLのタンパク質を加えることによって調製し、溶質溶液を除いて、全てがタンパク質の精製緩衝液に調製された。温度に対する蛍光強度は、正確な推移変曲点を抽出するために、第1の導関数(d(Rfu)/dT)を決定することによって、タンパク質の融点(T)を計算するために用いられる。
【0189】
例3: ブタのインスリンに対する例1の6つの適合溶質の安定化効果。
【0190】
ブタのインスリンを安定させるガラクトシルラクタート143、ガラクトシルブチラート149、ガラクトシルグリセラート146、グルコシルブチラート148、グルコシルグリコラート144、およびグルコシルマラート150の能力は、例2に記載したDSFアッセイを用いて研究された。
【0191】
アッセイのために、129μMの濃度のブタのインスリン、ならびに0.1および0.25Mの濃度の適合溶質を含む溶液が作製された。0.1Mおよび0.25Mの各溶質で観察される融点の増加が、図11に示されている。
【0192】
6つ全ての溶質は、試験された両方の濃度のブタのインスリンを安定させ、グルコシルグルコラートおよびグルコシルマラートという条件で融点の最も高い増加となった。
【0193】
考察
熱誘導による不活性化に対するモデルタンパク質の保護における新規化合物の効果は、DSFを用いて評価され、塩化カリウムと同様なMGおよびGGのような天然の溶質と、MGlycおよびMLのような他の事前に合成された非天然の溶質の効果とが比較された。DSFは、分子の安定化特性について迅速な情報を得るための優れた高スループット法であることを証明した。
【0194】
得られた結果の分析は、安定化効果が一般的ではなく、特定のタンパク質-溶質相互作用に強く依存するということを示した。いくつかの溶質は優れた熱安定化特性を示したにも関わらず、安定化の度合いは各タンパク質で異なる。
【0195】
電荷の存在が、安定化効果のための最も重要な特性の一つである。グルコサミン環状誘導体のような無電荷の溶質は、最も低い安定化を与え、2つの電荷を有するマラート誘導体は、最も良い安定剤であった。
【0196】
異なるヘキソースの使用に関して、グルコースおよびガラクトース誘導体が、それぞれのマンノースおよびN-アセチルグルコサミン誘導体より良い安定剤であった。しかしながら結果は、糖に結合しているグループが天然の糖より安定化効果により多くの影響を与えるということを示した。
【0197】
ガラクトシルグリセラートのαおよびβアノマーを用いて得られた結果は、α誘導体がより良い安定剤であることを示した。
【0198】
本発明に記載された新規化合物は、他の生物学的物質と同様な追加のタンパク質を安定させるであろうということが予期される。上述のように、本発明の新規化合物は、例えば抗体およびホルモンのような生物製剤、化粧品、食品など、薬学的に用いられる生物学的物質の安定のために有用である。本発明の化合物は、熱ストレス、凝集、および高塩分濃度に対して生物学的物質を保護するために使用できる。例えば、本発明の化合物は、精製、合成および/または乾燥、輸送、および保管のようなプロセス中の生物製剤を安定させるために使用できる。
【0199】
参考文献
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2007年8月30日に公開されたPCT国際出願公開WO/2007/097653号(Pereira de Oliveira da Silva Santos et al.).
Sharma, S. V. et al., “Chemical and chemoenzymatic syntheses of Bacillithiol: A unique low-molecular-weight thiol amongst low G+C gram-positive bacteria,” Angewandte Chemie-International Edition 2011, 50, 7101-7104.
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]式I:
【化55】
[式中、R は、-OC(Η)(X)(CH C(=O)OHであり、
は、-OH、-N 、もしくは-Ν(Η)C(=O)CH であり、または
およびR は、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化56】
を形成し、
は、-Η、-CH 、-CH C(=O)OH、または-CH OHであり、
Xは、-Η、-CH 、-CH OH、またはCH C(=O)OHであり、
nは、0または1である]の化合物またはその塩であって、
前記化合物が
【化57】
であり、かつR がOHであり、XがCH であり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化58】
であり;
前記化合物が
【化59】
であり、かつR がOHであり、XがHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化60】
であり;
前記化合物が
【化61】
であり、かつR がOHであり、XがCH OHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化62】
であり;
前記化合物が
【化63】
であり、かつR がOHであり、XがCH OHであり、nが0であるとき、当該化合物は、
【化64】
である化合物またはその塩。
[2]前記化合物は、
【化65】
である[1]から[2]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[3]前記化合物は、
【化66】
である[1]から[2]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[4]前記化合物は、
【化67】
である[1]から[2]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[5]前記化合物は、
【化68】
である[1]から[2]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[6]前記化合物のα/βアノマー比は、1:1から99:1までである[1]から[5]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[7]前記化合物のα/βアノマー比は、99:1より大きい[1]から[5]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[8]R
【化69】
である、[1]から[7]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[9]R
【化70】
である[8]の化合物またはその塩。
[10]R
【化71】
である[8]の化合物またはその塩。
[11]R
【化72】
である[8]の化合物またはその塩。
[12]R が-OHである[1]から[11]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[13]R が-Ν(Η)C(=O)CH である[1]から[11]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[14]R およびR は、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化73】
を形成している[1]から[7]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[15]R およびR は、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化74】
を形成している[14]の化合物またはその塩。
[16]R およびR は、それらが結合している炭素原子と一緒になって
【化75】
を形成している[14]の化合物またはその塩。
[17]R が-CH である[14]から[16]までのいずれか一つに記載の化合物。
[18]R が-CH OHである[14]から[16]までのいずれか一つに記載の化合物。
[19]前記化合物は、
【化76-1】
【化76-2】
【化76-3】
である[1]の化合物またはその塩。
[20][1]から[19]までのいずれか一つに記載の少なくとも1種の化合物またはその塩、および生物学的物質を含む組成物。
[21]さらにバッファーを含む[20]の組成物。
[22]前記生物学的物質は、ポリペプチドである[20]から[21]までのいずれか一つに記載の組成物。
[23]前記ポリペプチドは、酵素、抗体、血漿タンパク質、またはホルモンである[22]の組成物。
[24]前記ポリペプチドは、インスリン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌性ヌクレアーゼまたはリゾチームである[22]から[23]までのいずれか一つに記載の組成物。
[25]前記ポリペプチドは、組換えポリペプチドである[22]から[24]までのいずれか一つに記載の組成物。
[26]前記ポリペプチドは、組換えポリペプチドではない[22]から[24]までのいずれか一つに記載の組成物。
[27]生物学的物質を含んでいる溶液へ、[1]から[19]までのいずれか一つに記載の少なくとも1種の化合物またはその塩を加えて、安定した溶液を形成することを含む、生物学的物質を安定させる方法。
[28]前記安定した溶液を乾燥する工程をさらに含む[27]の方法。
[29]前記生物学的物質は、ポリペプチドである[27]から[28]までのいずれか一つに記載の方法。
[30]前記ポリペプチドは、酵素、抗体、血漿タンパク質、またはホルモンである[29]の方法。
[31]前記ポリペプチドは、インスリン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌性ヌクレアーゼまたはリゾチームである[29]から[30]までのいずれか一つに記載の方法。
[32]前記ポリペプチドは、組換えポリペプチドである[29]から[31]までのいずれか一つに記載の方法。
[33]前記ポリペプチドは、組換えポリペプチドではない[29]から[31]までのいずれか一つに記載の方法。
[34]生物学的物質を安定させるための[1]から[19]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩。
[35]生物学的物質を安定させるための[1]から[19]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩の使用。
[36][1]から[19]までのいずれか一つに記載の化合物またはその塩を含む診断キット
[37]マイクロアレイ、バイオセンサー、または酵素製剤を含む[36]の診断キット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11