(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】鋼管の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20220509BHJP
B08B 9/02 20060101ALI20220509BHJP
B21C 43/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B23Q11/00 K
B08B9/02 221
B21C43/00
(21)【出願番号】P 2017210806
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】592260572
【氏名又は名称】日鉄めっき鋼管株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】八坂 勇作
(72)【発明者】
【氏名】福田 栄一
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 旭
(72)【発明者】
【氏名】井川 茂信
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537855(JP,A)
【文献】特開2006-289568(JP,A)
【文献】特開平10-000544(JP,A)
【文献】特開平09-123019(JP,A)
【文献】特開昭53-145191(JP,A)
【文献】実開昭63-035566(JP,U)
【文献】特開昭50-103790(JP,A)
【文献】特開平11-114789(JP,A)
【文献】特開平11-244936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B08B 9/02
B21C 43/00
B23D 33/00
B23D 79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断された鋼管をアライニングロールによって管端形状矯正装置に整列搬送する際に、前記アライニングロールによって前記鋼管を回転させつつ、管端内面に付着した切断屑を
、固定された切断屑除去手段と接触させて前記切断屑を除去する、鋼管の製造方法。
【請求項2】
前記切断屑除去手段が、前記アライニングロールによって前記管端が整列する面に設けられている、請求項1に記載の鋼管の製造方法。
【請求項3】
前記切断屑除去手段が、前記管端内部に侵入可能な凸部を有する部材である、請求項1又は2に記載の鋼管の製造方法。
【請求項4】
前記凸部がノコギリ状である、請求項3に記載の鋼管の製造方法。
【請求項5】
切断装置と、管端形状矯正装置と、前記切断装置から前記管端形状矯正装置に鋼管を整列搬送するアライニングロールと、前記整列搬送時に管端内面に付着した切断屑と接触可能な
、固定された切断屑除去手段とを有する、鋼管の製造装置。
【請求項6】
前記切断屑除去手段が、前記アライニングロールによって前記管端が整列する面に設けられている、請求項5に記載の鋼管の製造装置。
【請求項7】
前記切断屑除去手段が、前記管端内部に侵入可能な凸部を有する部材である、請求項5又は6に記載の鋼管の製造装置。
【請求項8】
前記凸部がノコギリ状である、請求項7に記載の鋼管の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管は、鋼帯を造管した後、所定の長さに切断して管端の形状矯正を行うことによって一般に製造される。また、管端の形状矯正は、鋼管を固定した状態で管端から所定位置まで回転させたプラグを押し込むことによって一般に行われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のような鋼管の製造工程では、鋼管を切断する際に、米粒サイズの切断屑が管端内面に付着することがある。このような切断屑を除去しないで管端の形状矯正を行うと、切断屑に起因する押し込み疵が管端内面に発生することがある。
切断屑の発生は、切断条件、切断刃の状態、鋼管の材質などの様々な要因に依存するため、既存の切断装置の条件などを制御することによって切断屑の発生を防止することは現実的に難しい。
他方、管端内面に付着した、面取り加工に起因する切屑などを除去する方法として、エアブロー、真空吸引、水洗などを行う方法、管端内面にブラシを接触させる方法などが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/114176号
【文献】実開昭63-27239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鋼管の切断によって管端内面に付着した切断屑を除去するために、エアブローなどを用いる上記の方法を採用した場合、当該方法を行うための工程を新たに追加する必要があるため、鋼管の生産性が低下してしまうという問題がある。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、生産性を低下させることなく管端内面に付着した切断屑を除去し、管端内面の押し込み疵の発生を抑制することが可能な鋼管の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、切断された鋼管をアライニングロールによって管端形状矯正装置に整列搬送する際に、アライニングロールによって鋼管を回転させながら、管端内面に付着した切断屑を切断屑除去手段と接触させることにより、切断屑を効率的に除去し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、切断した鋼管をアライニングロールによって管端形状矯正装置に整列搬送する際に、前記アライニングロールによって前記鋼管を回転させつつ、管端内面に付着した切断屑を、固定された切断屑除去手段と接触させて前記切断屑を除去する、鋼管の製造方法である。
【0008】
また、本発明は、切断装置と、管端形状矯正装置と、前記切断装置から前記管端形状矯正装置に鋼管を整列搬送するアライニングロールと、前記整列搬送時に管端内面に付着した切断屑と接触可能な、固定された切断屑除去手段とを有する、鋼管の製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産性を低下させることなく管端内面に付着した切断屑を除去し、管端内面の押し込み疵の発生を抑制することが可能な鋼管の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】切断装置で切断された鋼管をアライニングロールによって管端形状矯正装置に整列搬送している状態を示す上面図である。
【
図2】管端内面に付着した切断屑と切断屑除去手段とが接触したときの状態を示す断面図である。
【
図3】管端が整列する面に切断屑除去手段を設けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の鋼管の製造方法は、切断された鋼管をアライニングロールによって管端形状矯正装置に整列搬送する際に、アライニングロールによって鋼管を回転させつつ、管端内面に付着した切断屑を切断屑除去手段と接触させて切断屑を除去する。
また、本発明の鋼管の製造装置は、切断装置と、管端形状矯正装置と、切断装置から管端形状矯正装置に鋼管を整列搬送するアライニングロールと、整列搬送時に管端内面に付着した切断屑と接触可能な切断屑除去手段とを有する。
【0012】
以下、本発明の鋼管の製造方法及び製造装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
図1は、切断装置で切断された鋼管をアライニングロールによって管端形状矯正装置に整列搬送している状態を示す上面図である。
切断装置で切断された鋼管1は、アライニングロール2によって管端形状矯正装置まで整列搬送される。
アライニングロール2は、その回転により、鋼管1の端部(「管端」ともいう)を揃えつつ、鋼管1を管端形状矯正装置まで搬送する機能を有する。アライニングロール2の径及び数は、切断装置から管端形状矯正装置までの距離などの各種条件に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
【0013】
アライニングロール2によって整列搬送される鋼管1は、アライニングロール2によって回転する。このとき、管端内面に付着した切断屑を切断屑除去手段3と接触させることにより、切断屑除去手段3と接触した切断屑が鋼管1の回転によって擦り取られる。
ここで、管端内面に付着した切断屑と切断屑除去手段3とが接触したときの状態を示す断面図を
図2に示す。
管端内面に付着した切断屑4は、切断屑除去手段3と接触させただけでは除去され難いが、アライニングロール2による鋼管1の回転を利用することにより、管端内面に付着した切断屑4を剥がし易くすることができる。また、アライニングロール2による鋼管1の回転を利用するため、切断屑除去手段3に駆動機構などが要求されず、切断屑除去手段3の導入コストも抑えることができる。
【0014】
切断屑除去手段3の設置箇所としては、特に限定されないが、
図1に示すような、アライニングロール2によって管端(鋼管1の切断面)が整列する面に設けることが好ましい。ここで、一例として、管端が整列する面5に切断屑除去手段3を設けた状態を示す斜視図を
図3に示す。このような位置に切断屑除去手段3を設けることにより、単純な構造を有する切断屑除去手段3を用いることができるため、既存の製造装置を大幅に改良する必要がない。
【0015】
切断屑除去手段3としては、管端内面に付着した切断屑4と接触し得る構造を有するものであれば特に限定されない。具体的には、切断屑除去手段は、管端内部に侵入可能な凸部を有する部材であることが好ましい。このような部材の例としては、ノコギリ状の凸部を有する部材、ブラシなどが挙げられるが、その中でも、耐久性の観点から、ノコギリ状の凸部を有する部材であることが好ましい。また、ノコギリ状の凸部を有する部材は、耐久性の観点から、鉄、ステンレス鋼、合金などの各種金属から形成されていることが好ましい。
【0016】
ノコギリ状の凸部を有する部材における個々の凸部の形状としては、特に限定されず、
図1~3に示すような三角板状以外にも、三角錐状、半円板状、半円錐状などの各種形状とすることができる。これらの中でも、個々の凸部の形状は、加工容易性の観点から、三角板状であることが好ましい。個々の凸部が三角板状であれば、剥がれた切断屑4を鋼管1の外部に除去し易くすることができる。
【0017】
個々の凸部の大きさは、個々の凸部の形状、鋼管1の内径などに応じて適宜調整すればよく特に限定されない。例えば、個々の凸部が三角板状である場合、個々の凸部の幅が、鋼管1の内径よりも小さいことが好ましく、鋼管1の内径の半分程度であることがより好ましい。また、個々の凸部の高さは、個々の凸部の幅の半分程度、個々の凸部の厚みは1~10mm程度であればよい。このようなノコギリ状の凸部を有する切断屑除去手段3を用いることにより、管端内面に付着した切断屑4を安定して除去することができる。
【0018】
凸部が形成された領域の長さは、アライニングロールによって整列搬送する領域の長さなどに依存するため特に限定されないが、一般的に100mm~1000mm、より好ましくは200mm~500mmである。
【0019】
なお、本発明の鋼管1の製造方法及び製造装置は、切断装置と管端形状矯正装置との間の鋼管1を整列搬送する領域に主な特徴があるため、その他の領域(例えば、切断装置及び管端形状矯正装置など)については、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0020】
本発明の鋼管1の製造方法及び製造装置は、切断装置で切断された鋼管1をアライニングロール2によって管端形状矯正装置に整列搬送する際に、アライニングロール2によって鋼管1を回転させながら、管端内面に付着した切断屑4を切断屑除去手段3と接触させることにより、切断屑4を機械的に除去することができる。そのため、管端内面に付着した切断屑4を除去するための新たな工程を追加する必要がなく、鋼管1の生産性を低下させずに管端内面の押し込み疵の発生を抑制することが可能となる。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明の内容を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0022】
(実施例1)
鋼帯を造管した後、切断装置で所定の長さに切断し、アライニングロールによって管端形状矯正装置に整列搬送させて管端の形状矯正を行い、内径が38.1~57.2mmの鋼管(52,151本)を製造した。ここで、整列搬送は、
図3に示すようなノコギリ状の凸部を有する切断屑除去手段3を管端が整列する面に設けて行った。切断屑除去手段の詳細な形状は下記の通りである。
凸部の形状:三角板状
凸部の高さ:25mm
凸部の幅:12.5mm
凸部の厚み:3mm
凸部が形成された領域の長さ:320mm
【0023】
(実施例2)
切断屑除去手段の形状を下記の通りに変更すると共に、内径が60.5~76.3mmの鋼管(11,812本)の製造したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
凸部の形状:三角板状
凸部の高さ:40mm
凸部の幅:20mm
凸部の厚み:3mm
凸部が形成された領域の長さ:320mm
【0024】
(比較例1)
切断屑除去手段を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして内径が38.1~57.2mmの鋼管(34,883本)の製造を行った。
(比較例2)
切断屑除去手段を設けなかったこと以外は実施例2と同様にして内径が60.5~76.3mmの鋼管(10,966本)の製造を行った。
【0025】
上記の実施例及び比較例で製造した鋼管について、管端内面における押し込み疵の発生の有無を目視観察し、管端内面に押し込み疵が発生した鋼管の数を求めた。その結果を表1に示す。
【0026】
【0027】
表1に示されるように、実施例1及び2では、鋼管内面に押し込み疵が全く発生しなかったのに対し、比較例1及び2では、鋼管内面に押し込み疵が発生した。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、生産性を低下させることなく管端内面に付着した切断屑を除去し、管端内面の押し込み疵の発生を抑制することが可能な鋼管の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 鋼管
2 アライニングロール
3 切断屑除去手段
4 切断屑
5 管端が整列する面