(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】改装サッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
E06B1/56 A
(21)【出願番号】P 2018041297
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 大輝
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-138560(JP,A)
【文献】特開2018-031183(JP,A)
【文献】特開2011-256706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 - 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に残存する既設枠と、前記既設枠の内周側を覆うように取り付けられる新設枠と、前記既設枠と前記新設枠との間に配置されるベース材と、を備える改装サッシであって、
前記ベース材の屋内側の端部は、取付け対象面との間に間隙を有して取り付けられており、
前記間隙に、第1のシール材が配置され、
前記ベース材の屋内側部を覆うように第2のシール材が配置され、
前記第1のシール材と前記2のシール材とは、前記取付け対象面で重なっている、改装サッシ。
【請求項2】
前記ベース材の屋内側の端部に、前記取付け対象面に向けて突出する突出脚部を有し、前記突出脚部の先端と前記取付け対象面との間に、前記間隙を有する、請求項1に記載の改装サッシ。
【請求項3】
前記既設枠の屋内側に、四周に亘る額縁部材を有し、
前記既設枠の屋内側の端部に、前記額縁部材の内周面に固定されるアングル部を有し、
前記取付け対象面は、前記額縁部材の内周面及び/又は前記アングル部の表面である、請求項1
又は2に記載の改装サッシ。
【請求項4】
前記第2のシール材は、前記新設枠の屋内側部と前記ベース材の屋内側部とに亘って配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の改装サッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に設けられている既設の窓を新たな窓に改装する改装サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設の窓を改装する方法として、カバー工法が採用されている。このカバー工法によって改装された改装サッシでは、建物の開口部に取り付けられた既設枠に対して、その内周側を覆うように新設枠が取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、改装サッシとして、既設枠と新設枠との間に、新設枠の取付け面となるベース材を設けたものも知られている(例えば、特許文献2、3参照)。ベース材は、既設枠の屋内外方向に亘り、既設枠の内周側を覆うように取り付けられる。このとき、ベース材の屋内側の端部は、既設枠の屋内側(例えば、額縁部材や既設枠のアングル部)にねじ止めされて固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-94771号公報
【文献】特開2017-172315号公報
【文献】特開2015-132148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既設枠にベース材を取り付ける際、ベース材と既設枠との間の水密を確保するために、ベース材の屋内側の端部とその取付け対象面(額縁部材や既設枠のアングル部の表面)との間にシール材が設けられる場合がある。この場合、ベース材をねじ止めした際、ベース材の屋内側の端部が、シール材の厚み分だけ内周側に向けて突出する形となり、既設枠に対してベース材が傾いて取り付けられるおそれがある。ベース材は新設枠の取付け面を形成する部材であるため、ベース材が傾いてしまうと、新設枠の取り付けに影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ベース材が傾くことなく取付け対象面に対してねじ止めすることができる改装サッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る改装サッシは、建物の開口部(例えば、後述の開口部2)に残存する既設枠(例えば、後述の既設上枠110、既設下枠210、既設縦枠310、410)と、前記既設枠の内周側を覆うように取り付けられる新設枠(例えば、後述の新設上枠120、新設下枠220、新設縦枠320、420)と、前記既設枠と前記新設枠との間に配置されるベース材(例えば、上枠ベース材130、下枠ベース材230、縦枠ベース材330、430)と、を備える改装サッシ(例えば、後述の改装サッシ1)であって、前記ベース材の屋内側の端部は、取付け対象面(例えば、後述のアングル部112、214、312、412、額縁部材3の内周面3a)との間に間隙(例えば、後述の間隙D)を有して取り付けられている。
【0008】
(2) (1)に記載の改装サッシにおいて、前記ベース材の屋内側の端部に、前記取付け対象面に向けて突出する突出脚部(例えば、後述の突出脚部133a、133b、235a、235b、235c、333、433)を有し、前記突出脚部の先端と前記取付け対象面との間に、前記間隙を有することが好ましい。
【0009】
(3) (1)又は(2)記載の改装サッシにおいて、前記間隙に、シール材(例えば、後述の止水テープ150、240、340、440)が配置されることが好ましい。
【0010】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の改装サッシにおいて、前記既設枠の屋内側に、四周に亘る額縁部材(例えば、後述の額縁部材3)を有し、前記既設枠の屋内側の端部に、前記額縁部材の内周面(例えば、後述の内周面3a)に固定されるアングル部(例えば、後述のアングル部112、214、312、412)を有し、前記取付け対象面は、前記額縁部材の内周面及び/又は前記アングル部の表面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベース材が傾くことなく取付け対象面に対してねじ止めすることができる改装サッシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る改装サッシの正面図である。
【
図4】
図2に示す改装サッシの上側の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】
図2に示す改装サッシの下側の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図6】
図2に示す改装サッシの左側の要部を拡大して示す横断面図である。
【
図7】
図2に示す改装サッシの右側の要部を拡大して示す横断面図である。
【
図8】改装サッシの既設枠の内周側にベース材が取り付けられた様子を示す斜視図である。
【
図10】上枠ベース材を裏面側から見た部分斜視図である。
【
図11】取付け部材を屋内側から見た正面図である。
【
図13】上枠ベース材の屋内側の端部の取付け構造を説明する図である。
【
図15】下枠ベース材の屋内側の端部の取付け構造を説明する図である。
【
図16】高さ調整機構を正面から見た断面図である。
【
図17】高さ調整機構を側面から見た断面図である。
【
図18】縦枠ベース材の裏面側を屋外側から見た斜視図である。
【
図19】縦枠ベース材の屋内側の端部の取付け構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る改装サッシの正面図であり、
図2は、
図1に示す改装サッシの縦断面図であり、
図3は、
図1に示す改装サッシの横断面図である。
図4は、
図2に示す改装サッシの上側の要部を拡大して示す縦断面図であり、
図5は、
図2に示す改装サッシの下側の要部を拡大して示す縦断面図であり、
図6は、
図2に示す改装サッシの左側の要部を拡大して示す横断面図であり、
図7は、
図2に示す改装サッシの右側の要部を拡大して示す横断面図である。また、
図8は、改装サッシの既設枠の内周側にベース材が取り付けられた様子を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本発明に係る改装サッシ1は、建物の開口部2の屋外側に装着され、上枠100と、下枠200と、左右一対の縦枠300、400により矩形に枠組みされた窓枠10と、窓枠10に開閉可能に納められる障子20と、障子20の屋内側の窓枠10にスライド可能に納められる網戸30と、を備える。開口部2の内周側には、四周に亘って額縁部材3が設けられている。
図1は、改装サッシ1を屋外側から見た様子を示している。
【0015】
図2、
図3に示すように、本実施形態に示す障子20は、四周に亘る框21内に、屋内側及び屋外側の2枚のガラス22、22と、これらのガラス22、22で挟持されたスペーサ23と、を備える複数ガラスからなるすべり出しタイプの障子であり、優れた断熱性を有する。障子20は、屋内側に取り付けられたレバー24の操作によって回動し、屋外側に向けて開放され、屋内側に向けて閉じられるように構成される。
【0016】
網戸30は、窓枠10の四周に設けられる溝部11内に納められている。
図3に示すように、網戸30は、左右方向に折り畳み可能な網部31を有し、網部31が折り畳まれた状態で、一方の縦枠300側に収納されている。この網戸30は、網部31の端部に取り付けられた縦枠部32を縦枠400側に向けてスライドさせることにより障子20の屋内側に展張され、縦枠部32を縦枠300側に向けてスライドさせることにより折り畳まれるように構成される。
図3は、網戸30を縦枠300側に折り畳んだ状態を示し、網戸30を展張させた状態を一点鎖線で示している。
【0017】
次に、窓枠10について説明する。
<A.上枠>
先ず、上枠100について説明する。
図2、
図4に示すように、上枠100は、既設上枠110と、新設上枠120と、上枠ベース材130と、を含んで構成される。
【0018】
a1.既設上枠
既設上枠110は、金属製の枠体からなり、建物の開口部2の上側部の屋外側に取り付けられている。既設上枠110は、屋外側の端部に、下方に向かって延びる屋外側壁部111を有する。屋外側壁部111は、
図4に示すように、改装サッシ1に改装される前の既設上枠110に元々設けられていた既設側壁部111a(
図4において破線で示す。)が切断された際に切り残された既設側壁部111aの根元部分である。屋外側壁部111の下端部は、額縁部材3の内周面3aの位置よりも上方に位置している。
【0019】
また、既設上枠110は、屋内側の端部に、屋内側に向けて張り出すように延びるアングル部112を一体に有する。アングル部112は、額縁部材3の内周面3aの屋外側の端部に固定されている。
【0020】
既設上枠110は、更に、突出片113を有する。突出片113は、アングル部112の屋外側の端部から開口部2の内側(
図2、
図4の下側)に向けて突出している。この突出片113は、改装サッシ1に改装される前の既設縦枠310、410に元々設けられていた既設突出片113a(
図4において破線で示す。)が切断された際に切り残された既設突出片113aの根元部分からなる突出片残部である。突出片113は、額縁部材3の内周面3aよりも開口部2の内側に向けて突出している。本実施形態では、突出片113は、額縁部材3の内周面3aよりも5mm程度内側(下方)に向けて突出している。
【0021】
a2.新設上枠
新設上枠120は、上枠ベース材130を間に挟んで、既設上枠110の内周側に取り付けられる。新設上枠120は、主として金属製の枠体からなり、屋外側に、障子20よりも更に屋外側に張り出した張出部121を有する。張出部121は、屋外側に向けて僅かに下り傾斜し、その先端部に上方に向けて立ち上がる屋外側壁部122を有する。屋外側壁部122は、既設上枠110の屋外側壁部111と対向するように略平行に延び、その屋外側壁部111の全体を屋外側から覆い隠すように配置されている。
【0022】
屋外側壁部122には、屋内側に向けて突出する複数のリブ122a~122cを有する。リブ122aは、屋外側壁部122の上端部に配置されている。リブ122b、122cは、リブ122aよりも下方に配置され、後述する上枠ベース材130の屋外側壁部132に当接するように突出している。これらのリブ122a~122cは、新設上枠120の全長に亘って平行に延びている。
【0023】
新設上枠120は、屋内側の端部に、屋内側に向けて張り出すように延びる樹脂製のアングル部材123を有する。アングル部材123は、網戸30が納められる溝部11と一体に形成され、額縁部材3の内周面3aから間隔をおいて配置されている。このアングル部材123と額縁部材3の内周面3aとの間に樹脂製のアングルカバー124が取り付けられている。アングルカバー124と額縁部材3の内周面3aとの境目は、樹脂製のL型の見切り材125によって遮蔽されている。見切り材125は、額縁部材3の内周面3aに取付けねじ125aによって固定されている。
【0024】
新設上枠120は、上枠ベース材130との間にスペーサ部材140を介して、上枠ベース材130を貫通する複数の取付けねじ126a、126bによって固定される。取付けねじ126a、126bは、新設上枠120から上枠ベース材130を貫通している。
【0025】
a3.上枠ベース材
上枠ベース材130は、既設上枠110と新設上枠120との間に配置される。
図8に示すように、上枠ベース材130は、既設上枠110の内周側に1つだけ取り付けられ、既設上枠110の長さ方向の略全長に亘って延びている。上枠ベース材130は、新設上枠120の長さ方向の全長と同じか、又は、新設上枠120の長さ方向の全長よりも長く形成される。
【0026】
上枠ベース材130の詳細を
図9に示す。
図9は上枠ベース材130の斜視図である。上枠ベース材130は金属製であり、ベース材本体131と、屋外側壁部132と、複数の突出脚部133a~133dと、を一体に有する。
【0027】
ベース材本体131は、上枠100の延び方向に沿って延びる長尺な板状部材からなり、既設上枠110の内周側を長さ方向の略全長に亘り、且つ屋内外方向に亘って覆うことにより、新設上枠120のための略平坦な取付け面を形成する。ベース材本体131の屋内側の端部は、既設上枠110のアングル部112を覆うように、額縁部材3の内周面3a上に配置されている。本実施形態では、この既設上枠110のアングル部112の表面及び額縁部材3の内周面3aが、上枠ベース材130の屋内側の端部の取付け対象面とされる。
【0028】
屋外側壁部132は、ベース材本体131の屋外側の端部から上方に向けて延びている。屋外側壁部132は、既設上枠110の屋外側壁部111と略平行に延び、新設上枠120の屋外側壁部122と既設上枠110の屋外側壁部111との間において、既設上枠110の屋外側壁部111の略下側半分を覆い隠すように配置されている。屋外側壁部132は、新設上枠120の屋外側壁部122に設けられたリブ122b、122cと当接するように配置されるが、屋外側壁部132の上端部132aは、リブ122aよりも下方に配置されている。
【0029】
突出脚部133a~133dは、ベース材本体131の裏面(既設上枠110側の面)に、既設上枠110に向けて、ベース材本体131の長さ方向(上枠100の延び方向)に沿って平行に延びるように突設されている。
図4に示すように、突出脚部133a~133dのうちの屋内側の一対の突出脚部133a、133bは、取付け対象面である既設上枠110のアングル部112の表面及び額縁部材3の内周面3aに対向して配置され、この取付け対象面に向けて突出している。
【0030】
最も屋内側の突出脚部133aは、ベース材本体131の最も屋内側の端部に配置されている。この突出脚部133aの屋内側の側面は、上枠ベース材130の屋内側面130aを形成している。
図4に示すように、この屋内側面130aは、新設上枠120のアングルカバー124を除く屋内側面120aと同一面上に配置されている。アングルカバー124は、上枠ベース材130の屋内側面130aと新設上枠120の屋内側面120aとに亘って、これら屋内側面120a、130aを覆うように装着されている。
【0031】
また、突出脚部133a~133dは、既設上枠110の屋外側壁部111と上枠ベース材130の屋外側壁部132との間から雨水が浸入してきた場合に、その雨水を堰き止め、それ以上屋内側に浸入することを防止する機能をも有している。特に、最も屋外側の突出脚部133dは、屋外側から浸入する雨水を最初に堰き止める第1堰として機能する。
【0032】
a4.上枠ベース材の取り付け構造
図4に示すように、上枠ベース材130の屋外側は、取付け部材40によって、既設上枠110の屋外側壁部111に固定されている。この取付け部材40の詳細について、更に
図10~
図12を参照して説明する。
図10は、上枠ベース材130を裏面側から見た部分斜視図であり、
図11は、取付け部材40を屋内側から見た正面図であり、
図12は、取付け部材40の縦断面図である。なお、
図10では、構成の理解を容易にするため、既設上枠110の図示を省略した。
【0033】
取付け部材40は、ベース材本体131の裏面に取り付けられる基部41と、既設上枠110の屋外側壁部111に取り付けられる取付け片42と、基部41に回転可能に保持される皿ねじからなる高さ調整ねじ43と、を備える。この取付け部材40は、上枠ベース材130の長さに応じて、1又は複数設けられる。
【0034】
基部41は、平板状の金属板からなり、表面(既設上枠110側の面)に一対の支持板部41a、41aが立設されている。各支持板部41a、41aは、屋内外方向に沿って平行に配置され、上枠ベース材130の長さ方向に所定の間隔をおいて立設されている。一対の支持板部41a、41aの間隔は、後述する取付け片42の長さ(上枠ベース材130の長さ方向に沿う長さ)と同程度に設定されている。
【0035】
ベース材本体131には、
図9に示すように、屋内外方向に沿って延びる複数のねじ挿入用の長穴136が形成されている。長穴136は、最も屋外側の突出脚部133dよりも屋外側に配置されている。
図9は、2つの取付け部材40が取り付けられる上枠ベース材130を示しており、1組の取付け部材40に対して2つずつの長穴136が設けられている。基部41は、この長穴136を貫通する取付けねじ44により、ベース材本体131に固定される。長穴136は屋内外方向に長いため、基部41の屋内外方向の固定位置を微調整することができる。
【0036】
取付け片42は、ベース材本体131と略平行に延びる金属板からなる。取付け片42の上面(既設上枠110側の面)には、一対の挟持片42a、42aが立設されている。挟持片42a、42aは、上枠ベース材130の長さ方向に沿って延びている。挟持片42a、42aは、
図12に示すように、既設上枠110の屋外側壁部111の下方側から、屋外側壁部111を間に挟むように収容している。取付け片42は、挟持片42a、42aの間に挟まれる屋外側壁部111の下方から屋内側に向けて張り出すように延び、基部41上の一対の支持板部41a、41aの間に挟まれるように配置されている。
【0037】
一対の挟持片42a、42aの間に、屋外側壁部111を挟んだ状態で、下方側から取付け片42を貫通する取付けねじ45がねじ込まれている。ここで、挟持片42a、42aの間隔は、屋外側壁部111の厚みと取付けねじ45のねじ山部分の外径とを足した寸法よりも僅かに狭く設定されている。従って、挟持片42a、42aの間の屋外側壁部111は、一方の挟持片42a(本実施形態では屋外側の挟持片42a)と取付けねじ45との間で挟持される。このとき、取付けねじ45のねじ山は、屋外側壁部111と挟持片42aとにそれぞれ食い込むので、取付けねじ45が容易に抜け落ちることはなく、取付け片42を屋外側壁部111にしっかりと固定することができる。
【0038】
図12に示すように、屋外側の挟持片42aと屋外側壁部111との間には、両面テープ46が介在され、挟持片42aと屋外側壁部111とを接着している。両面テープ46は、挟持片42aと屋外側壁部111との相対的な動きを制限し、取付けねじ45の回転に連動して取付け片42が横方向にスライドしてしまうことを防止する。これにより、取付け片42を屋外側壁部111に固定する際の作業性が向上する。
【0039】
高さ調整ねじ43は、取付け片42を基部41に対して高さ調整可能に固定する。具体的には、一対の支持板部41a、41aの間の基部41の表面に、高さ調整ねじ43の頭部43aを保持するための一対の保持爪部41b、41bが設けられている。保持爪部41b、41bは、高さ調整ねじ43の頭部43aを回転可能に保持する。高さ調整ねじ43は、保持爪部41b、41bによって頭部43aが回転可能に保持された状態で、一対の挟持片42a、42aよりも屋内側の取付け片42に対して螺合することにより、取付け片42を基部41に固定する。これにより、上枠ベース材130の屋外側の端部が既設上枠110に対して固定される。
【0040】
保持爪部41b、41bの間には、高さ調整ねじ43の頭部43aの外径よりも小径な操作穴41cが形成されている。高さ調整ねじ43の頭部43aの上面(ドライバー溝を有する面)は、操作穴41c内に臨んでいる。また、
図9~
図11に示すように、上枠ベース材130のベース材本体131には、隣り合う長穴136の間に、操作穴41cよりも大きな穴部137を有する。操作穴41cは、このベース材本体131の穴部137内に配置されている。このため、ベース材本体131の下方側から穴部137を通して、操作穴41c内に臨む高さ調整ねじ43の頭部43aをドライバー等によって回転操作することができるようになっている。
【0041】
高さ調整ねじ43と螺合する取付け片42は、一対の支持板部41a、41aの間に挟まれることにより回転不能であるため、高さ調整ねじ43が回転すると、取付け片42は支持板部41a、41aに挟まれた状態で、高さ調整ねじ43の軸線方向に沿って上下方向に移動する。これにより、上枠ベース材130の屋外側の高さ調整が可能となり、上枠ベース材130の水平度を容易に微調整することができる。
【0042】
次に、上枠ベース材130の屋内側は、ベース材本体131及び既設上枠110のアングル部112を貫通する取付けねじ134により、額縁部材3に対して固定されている。ベース材本体131に立設される複数の突出脚部133a~133dのうち、屋内側に配置される一対の突出脚部133a、133bが、取付け対象面であるアングル部112の表面及び額縁部材3の内周面3aに対向している。取付けねじ134は、この一対の突出脚部133a、133bの間に配置され、ベース材本体131を貫通して額縁部材3にねじ込まれている。
【0043】
ここで、上枠ベース材130の屋内側の端部は、
図13に示すように、取付け対象面であるアングル部112の表面及び額縁部材3の内周面3aとの間に間隙Dを有して、取付けねじ134により取り付けされる。即ち、上枠ベース材130が取付けねじ134にねじ止めされた状態で、上枠ベース材130の突出脚部133a、133bの先端とアングル部112の表面及び額縁部材3の内周面3aとの間には、間隙Dが形成される。この間隙Dは、上枠ベース材130のベース材本体131とアングル部112の表面及び額縁部材3の内周面3aとの間の設計上の距離をD1、後述する止水テープ150の厚みをD2としたとき、突出脚部133a、133bの突出高さをD1-D2の高さにすることによって形成される。
【0044】
これにより、上枠ベース材130とアングル部112及び額縁部材3との間に止水テープ150が配置された状態で取付けねじ134がねじ込まれても、上枠ベース材130の屋内側の端部が内側(
図4、
図13における下側)に突出して傾くおそれはなく、新設上枠120のための取付け面を適正位置に形成することが可能となる。
【0045】
なお、上枠ベース材130は、突出脚部133a、133bが額縁部材3に対向して配置されることにより、
図4に示すように、ベース材本体131と額縁部材3の内周面3aとの間に所定の空間部S1を有して、既設上枠110の内周側に取り付けられる。本実施形態では、この空間部S1は、上枠ベース材130のベース材本体131と額縁部材3の内周面3aとの間隔が、既設上枠110の突出片113の突出高さ(5mm程度)と同じか、それよりもやや大きくなるように設定される。これにより、既設上枠110の突出片113は、空間部S1内に完全に収容されるため、上枠ベース材130と干渉することはない。
【0046】
a5.上枠の止水構造
図4に示すように、上枠ベース材130の屋内側の2つの突出脚部133a、133bと既設上枠110のアングル部112の表面及び額縁部材3の内周面3aとの間には、シール材である止水テープ150が介在されている。止水テープ150は、既設上枠110の突出片113を被覆すると共に、新設上枠120の見切り材125の近傍に亘って貼着されている。上枠ベース材130の屋内側を固定する取付けねじ134は、この止水テープ150を貫通している。このため、取付けねじ134の外周面の止水がなされている。
【0047】
また、新設上枠120の屋内側面120aと上枠ベース材130の屋内側面130aとに亘って、止水テープ151が貼着されている。止水テープ151は、上枠ベース材130の屋内側面130aから、止水テープ150の額縁部材3の内周面3aに貼着される部位に重なるように延びている。本実施形態では、上枠ベース材130の屋内側面130aと新設上枠120の屋内側面120aとは同一面上に配置されている。これにより、止水テープ151を平面的に貼着することができるため、貼着作業性が良いと共に、貼着状態も良好となり、止水機能を向上させることができる。なお、本実施形態では、スペーサ部材140の屋内側面140aも、屋内側面120a、130aと同一面上に配置されているが、スペーサ部材140の屋内側面140aの位置は特に限定されない。
【0048】
更に、
図4、
図10に示すように、既設上枠110と新設上枠120と間には、発泡ゴム等からなる複数の止水材160~162が介在されている。これら止水材160~162は、新設上枠120の長さ方向に沿って長尺に延びている。
【0049】
止水材160は、既設上枠110の屋外側壁部111と新設上枠120の屋外側壁部122との間に挟着されていると共に、上枠ベース材130の屋外側壁部132の上端部132aに当接している。また、止水材161は、新設上枠120の屋外側壁部122と上枠ベース材130の屋外側壁部132との間で挟持されている。更に、止水材162は、ベース材本体131に形成される長穴136及び穴部137よりも屋内側、且つ取付けねじ126bよりも屋外側に配置され、新設上枠120とベース材本体131との間で挟持されている。
【0050】
<B.下枠>
次に、下枠200について説明する。
図2、
図5に示すように、下枠200は、既設下枠210と、新設下枠220と、下枠ベース材230と、を含んで構成される。
【0051】
b1.既設下枠
既設下枠210は、建物の開口部2の下側部の屋外側に取り付けられている。既設下枠210は、見込み壁部210aから、上方に配置される新設下枠220に向けて立設される立壁部211を有する。立壁部211は、既設下枠210の長さ方向に沿って連続して配置されている。見込み壁部210aは、屋外側に向けてやや下り傾斜しており、立壁部211は、その見込み壁部210aの屋外側の端部に配置されている。本実施形態に示す立壁部211は、額縁部材3の内周面3aと同程度の高さで突出するように設けられるが、これに限定されない。
【0052】
既設下枠210は、立壁部211よりも屋外側に、立壁部211の下部から屋外側に向けてやや下り傾斜するように張り出した張出部212を有する。張出部212は、立壁部211と見込み壁部210aとの接続部位210bよりも下方の位置において立壁部211から屋外側に向けて張り出している。張出部212の屋外側の端部には、下方に向けて延びる屋外側壁部213を有する。また、既設下枠210は、屋内側の端部に、屋内側に向けて張り出すように延びるアングル部214を一体に有する。アングル部214は、額縁部材3の内周面3aの屋外側の端部に固定されている。
【0053】
b2.新設下枠
新設下枠220は、下枠ベース材230を間に挟んで、既設下枠210の内周側に取り付けられる。新設下枠220は、主として金属製の枠体からなり、屋外側の端部に、下方に向けて延びる屋外側壁部221を有する。屋外側壁部221は、既設下枠210の屋外側壁部213と略平行に延び、その屋外側壁部213の全体を覆い隠すように配置されている。
【0054】
新設下枠220は、屋内側の端部に、屋内側に向けて張り出すように延びる樹脂製のアングル部材222を有する。アングル部材222は、網戸30が納められる溝部11と一体に形成され、額縁部材3の内周面3aから間隔をおいて配置されている。このアングル部材222と額縁部材3の内周面3aとの間に樹脂製のアングルカバー223が取り付けられている。アングルカバー223と額縁部材3の内周面3aとの境目は、樹脂製のL型の見切り材224によって遮蔽されている。見切り材224は、額縁部材3の内周面3aに取付けねじ224aによって固定されている。
【0055】
新設下枠220は、下枠ベース材230を貫通する取付けねじ225によって固定される。この取付けねじ225は、下枠ベース材230を貫通するが、既設下枠210を貫通していない。取付けねじ225は、既設下枠210の立壁部211よりも屋内側に配置される。
【0056】
b3.下枠ベース材
下枠ベース材230は、既設下枠210と新設下枠220との間に配置される。
図8に示すように、下枠ベース材230は、既設下枠210の長さ方向に沿って間隔をおいて複数設けられる。
【0057】
下枠ベース材230の詳細を
図14に示す。
図14は下枠ベース材230の斜視図である。下枠ベース材230は金属製であり、ベース材本体231と、屋外側壁部232と、突出段部233と、連結部234と、複数の突出脚部235a~235cと、を一体に有する。
【0058】
ベース材本体231は、下枠200の延び方向に沿う長さに対して十分に短尺な板状部材からなり、既設下枠210の内周側を屋内外方向に亘って覆うことにより、新設下枠220のための略平坦な取付け面を形成する。ベース材本体231の屋内側の端部は、既設下枠210のアングル部214を覆うように、額縁部材3の内周面3a上に配置されている。本実施形態では、この既設下枠210のアングル部214の表面及び額縁部材3の内周面3aが、下枠ベース材230の屋内側の端部の取付け対象面とされる。
【0059】
屋外側壁部232は、ベース材本体231の屋外側の端部から下方に向けて延びている。屋外側壁部232は、既設下枠210の屋外側壁部213と略平行に延び、新設下枠220の屋外側壁部221と既設下枠210の屋外側壁部213との間において、新設下枠220の屋外側壁部221と同程度の長さで配置されている。
【0060】
突出段部233は、ベース材本体231と屋外側壁部232との接続部位に配置され、屋外側壁部232よりも屋外側に向けて部分的に屈曲して張り出すように、ベース材本体231から屋外側壁部232にかけて一体に形成されている。
【0061】
図5に示すように、新設下枠220の屋外側壁部221は、屋外側から突出段部233に当接している。このため、新設下枠220の屋外側壁部221は、下枠ベース材230の屋外側壁部232よりも、突出段部233の突出分だけ屋外側に位置している。この突出段部233の屋外側への突出分は、
図4に示すように、新設上枠120の屋外側壁部122が、新設上枠120の屋外側壁部122に設けられたリブ122b、122c、上枠ベース材130の屋外側壁部132、及び、取付け部材40における取付け片42の挟持片42aの存在によって、屋外側へ張り出すように配置される分に相当する。このため、新設下枠220の屋外側壁部221を突出段部233に当接させることで、新設上枠120の屋外側壁部122と新設下枠220の屋外側壁部221とを同一面に揃えることができる。
【0062】
なお、新設下枠220の屋外側壁部221は、後述する新設縦枠320、420の第1屋外側壁部321a、421aに対しても同一面となるように揃えられている。これにより、改装サッシ1の見付け面(屋外側壁部122、221、321a、421aの表面)は、四周に亘って同一面に揃えられるため、改装サッシ1の屋外側からの見栄えが良好となっている。
【0063】
連結部234は、ベース材本体231において屋外側に配置される屋外側上面部231Aと、屋内側に配置される屋内側上面部231Bとを連結する部位であり、ベース材本体231において、新設下枠220の取付けねじ225よりも屋内側の位置に、ベース材本体231の長さ方向に沿って設けられる。
【0064】
屋外側上面部231Aと屋内側上面部231Bは、下枠ベース材230の上面を構成する。屋外側上面部231Aと屋内側上面部231Bとは、連結部234を境にして、上枠100側に向けた高さが異なっている。即ち、ベース材本体231は、連結部234を境にして、屋内側上面部231Bの方が屋外側上面部231Aに比べて上枠100側に向けて高くなっており、下枠ベース材230の上面は、連結部234において段差形状となっている。このため、屋外側から新設下枠220と下枠ベース材230との間に雨水浸入しても、連結部234よりも屋内側に浸入することない。従って、この下枠ベース材230によれば、浸入した雨水をベース材本体231の屋外側上面部231A内に堰き止めることができ、屋内側上面部231Bへの雨水の浸入を防止することができる。
【0065】
本実施形態の連結部234は、屋内側上面部231Bから屋外側上面部231Aに向けて下り傾斜する傾斜面で構成されるが、連結部234は傾斜面に限定されず、略垂直な壁面であってもよい。
【0066】
突出脚部235a~235cは、ベース材本体231の屋内側上面部231Bの裏面(既設下枠210側の面)に、既設下枠210に向けて突設され、ベース材本体231の長さ方向に沿って平行に延びている。
図5に示すように、突出脚部235a~235cは、取付け対象面である既設下枠210のアングル部214の表面及び額縁部材3の内周面3aに対向して配置され、この取付け対象面に向けて突出している。
【0067】
最も屋内側の突出脚部235aは、ベース材本体231の屋内側の端部に配置されている。この突出脚部235aの屋内側の側面は、下枠ベース材230の屋内側面230aを形成する。
図5に示すように、この屋内側面230aは、新設下枠220のアングルカバー223を除く屋内側面220aと同一面上に配置されている。アングルカバー223は、下枠ベース材230の屋内側面230aと新設下枠220の屋内側面220aとに亘って、これら屋内側面220a、230aを覆うように装着されている。
【0068】
b4.下枠ベース材の取り付け構造
図2、
図5に示すように、下枠ベース材230の屋外側は、高さ調整機構50を介して、既設下枠210の張出部212上に載置されている。この高さ調整機構50の詳細について、更に
図14、
図15を参照して説明する。
図14は、高さ調整機構50を正面から見た断面図であり、
図15は、高さ調整機構50を側面から見た断面図である。
【0069】
高さ調整機構50は、ベース材本体231の裏面に取り付けられる基部51と、基部51に回転可能に保持される皿ねじからなる高さ調整ねじ52と、高さ調整ねじ52に螺合する支持脚部53と、を備える。
【0070】
基部51は、ベース材本体231の裏面に当接する当接部51aと、当接部51aの屋内側及び屋外側の両端部から下方に向けて垂下する一対の側壁部51b、51bと、を有する。当接部51a及び側壁部51b、51bは、下枠ベース材230の長さ方向に沿って延びている。
【0071】
側壁部51b、51bの間には、高さ調整ねじ52が収容されている。具体的には、側壁部51b、51bの内面に、高さ調整ねじ52の頭部52aの断面形状に沿う保持段部51c、51cがそれぞれ形成されている。高さ調整ねじ52の頭部52aは、基部51の側方から当接部51aと一対の保持段部51c、51cとの間に挿入されることにより、当接部51aと保持段部51c、51cとの間に回転可能に保持されている。
【0072】
図13に示すように、下枠ベース材230のベース材本体231には、屋内外方向に沿って延びる2つのねじ挿入用の長穴237が形成されている。
図14に示すように、基部51は、この長穴237をそれぞれ貫通する2つの取付けねじ54により、ベース材本体231に固定される。長穴237は屋内外方向に長いため、基部51の屋内外方向の固定位置を微調整することができる。
【0073】
当接部51aには、高さ調整ねじ52の頭部52aの外径よりも小径な貫通穴51dが形成されている。高さ調整ねじ52の頭部52aの上面(ドライバー溝を有する面)は、貫通穴51d内に臨んでいる。また、
図13~
図15に示すように、下枠ベース材230のベース材本体231には、隣り合う長穴237の間に、長穴237と同様に形成された長穴238を有する。貫通穴51dは、この長穴238の内側に臨むように配置されている。
【0074】
支持脚部53は、高さ調整ねじ52に螺合する螺合部53aと、螺合部53aから高さ調整ねじ52を挟んで下方に向けて延びる一対のL型の脚部53b、53bと、を有する。脚部53b、53bは、既設下枠210の張出部212上に載置される。支持脚部53の屋内外方向の厚みは、基部51の一対の側壁部51b、52bの間隔とほぼ同じである。このため、
図15に示すように、螺合部53aを高さ調整ねじ52に螺合させた状態の支持脚部53は、一対の側壁部51b、51bと面接触して屋内外方向から支持される。
【0075】
高さ調整機構50による高さ調整は、下枠ベース材230の上方側から長穴238を通して、貫通穴51d内に臨む高さ調整ねじ52の頭部52aがドライバー等によって回転操作されることによって行われる。支持脚部53は、一対の側壁部51b、51bの間に挟まれて回転不能であるため、高さ調整ねじ52の頭部52aが回転操作されると、支持脚部53は側壁部51b、51bの間を高さ調整ねじ52の軸線方向に沿って上下方向に移動する。これにより、下枠ベース材230の屋外側の高さが調整されるので、下枠ベース材230の水平度を容易に微調整することができる。
【0076】
このとき、高さ調整機構50の支持脚部53は、下り傾斜する張出部212上に当接するが、一対の側壁部51b、51bによって支持されているため、傾くおそれはない。このため、高さ調整機構50は、下枠ベース材230の屋外側を高さ調整可能に安定して支持することができる。
【0077】
また、支持脚部53の一対の脚部53b、53bはL型に形成され、下枠ベース材230の長さ方向(
図14の左右方向)に沿って左右に張り出す形状を有するため、既設下枠210の張出部212に対する接触面積を大きく確保することができる。このため、高さ調整機構50は、下枠ベース材230に掛かる荷重を安定して受け止めることができる。
【0078】
次に、下枠ベース材230の屋内側は、ベース材本体231を貫通する取付けねじ236により、額縁部材3に対して固定されている。これら突出脚部235a~235cは、額縁部材3の内周面3aに対向している。取付けねじ236は、このうちの一対の突出脚部235b、235cの間に配置され、ベース材本体231を貫通して額縁部材3にねじ込まれている。
【0079】
次に、上枠ベース材130の屋内側は、ベース材本体131及び既設上枠110のアングル部112を貫通する取付けねじ134により、額縁部材3に対して固定されている。ベース材本体131に立設される複数の突出脚部133a~133dのうち、屋内側に配置される一対の突出脚部133a、133bが、取付け対象面であるアングル部112の表面及び額縁部材3の内周面3aに対向している。取付けねじ134は、この一対の突出脚部133a、133bの間に配置され、ベース材本体131を貫通して額縁部材3にねじ込まれている。
【0080】
ここで、下枠ベース材230の屋内側の端部は、
図15に示すように、取付け対象面であるアングル部214の表面及び額縁部材3の内周面3aとの間に間隙Dを有して、取付けねじ236により取り付けされる。即ち、下枠ベース材230が取付けねじ236にねじ止めされた状態で、下枠ベース材230の突出脚部235a、235b、235cの先端とアングル部214の表面及び額縁部材3の内周面3aとの間には、間隙Dが形成される。この間隙Dは、下枠ベース材230のベース材本体231とアングル部214の表面及び額縁部材3の内周面3aとの間の設計上の距離をD1、後述する止水テープ240の厚みをD2としたとき、突出脚部235a、235b、235cの突出高さをD1-D2の高さにすることによって形成される。
【0081】
これにより、下枠ベース材230とアングル部214及び額縁部材3との間に止水テープ240が配置された状態で取付けねじ236がねじ込まれても、下枠ベース材230の屋内側の端部が内側(
図5、
図15における上側)に突出して傾くおそれはなく、新設下枠220のための取付け面を適正位置に形成することが可能となる。
【0082】
b5.下枠の止水構造
図5に示すように、下枠ベース材230の突出脚部235a~235cと額縁部材3の内周面3a(既設下枠210のアングル部214の表面)との間には、シール材である止水テープ240が介在されている。止水テープ240は、突出脚部235a~235cと額縁部材3の内周面3aとの間において、新設下枠220の見切り材224の近傍に亘って貼着されている。下枠ベース材230の屋内側を固定する取付けねじ236は、この止水テープ240を貫通している。このため、取付けねじ236の外周面の止水がなされている。
【0083】
また、新設下枠220の屋内側面220aと下枠ベース材230の屋内側面230aとに亘って、止水テープ241が貼着されている。止水テープ241は、下枠ベース材230の屋内側面230aから、止水テープ240の額縁部材3の内周面3aに貼着される部位に亘って延びている。本実施形態では、下枠ベース材230の屋内側面230aと新設下枠220の屋内側面220aとは同一面上に配置されている。これにより、止水テープ241を平面的に貼着することができるため、貼着作業性が良いと共に、貼着状態も良好となり、止水機能を向上させることができる。
【0084】
<C.縦枠>
次に、縦枠300、400について説明する。
図3、
図6、
図7に示すように、縦枠300、400は、既設縦枠310、410と、新設縦枠320、420と、縦枠ベース材330、430と、を含んで構成される。
【0085】
c1.既設縦枠
既設縦枠310、410は、建物の開口部2の屋外側の左右縦側部にそれぞれ取り付けられている。既設縦枠310、410は、屋外側の端部に、左右の外側方に向けて延びる屋外側壁部311、411を有し、屋内側の端部に、屋内側に向けて張り出すように延びるアングル部312、412を一体に有する。アングル部312、412は、額縁部材3の内周面3aの屋外側の端部に固定されている。
【0086】
既設縦枠310、410の内周面310a、410aは、左右の額縁部材3の内周面3aとそれぞれ面一状に配置されている。
【0087】
既設縦枠310、410は、内周面310a、410aから開口部2の内側(
図3の中央側、
図6の右側、
図7の左側)に向けて突出する複数(本実施形態では3つ)の突出片313、413を有する。突出片313、413は、既設縦枠310、410の長さ方向に沿って平行に延びている。
【0088】
突出片313、413は、改装サッシ1に改装される前の既設縦枠310、410に元々設けられていたフィンやリブ等の既設突出片313a、413a(
図6、
図7において破線で示す。)が切断された際に切り残された既設突出片313a、413aの根元部分からなる突出片残部である。各突出片313、413は、ほぼ同一高さであり、額縁部材3の内周面3aよりも更に開口部2の内側に向けて突出している。本実施形態では、突出片313、413は、額縁部材3の内周面3aよりも5mm程度突出している。
【0089】
c2.新設縦枠
新設縦枠320、420は、縦枠ベース材330、430を間に挟んで、既設縦枠310、410の内周側に取り付けられる。新設縦枠320、420は、主として金属製の枠体からなり、屋外側の端部に、左右の外側方に向けて延びる第1屋外側壁部321a、421aを一体に有し、更に第1屋外側壁部321a、421aの端部に、屋内側に向けて延びる第2屋外側壁部321b、421bを一体に有する。
【0090】
第1屋外側壁部321a、421aは、既設縦枠310、410の屋外側壁部311、411と略平行に延び、その屋外側壁部311、411の全体を覆い隠すように配置されている。また、第2屋外側壁部321b、421bは、既設縦枠310、410の屋外側壁部311、411を、左右の外側方から覆い隠すように配置されている。
【0091】
新設縦枠320、420は、屋内側の端部に、屋内側に向けて張り出すように延びる樹脂製のアングル部材322、422を有する。アングル部材322、422は、網戸30が納められる溝部11と一体に形成され、額縁部材3の内周面3aから間隔をおいて配置されている。このアングル部材322、422と額縁部材3の内周面3aとの間に樹脂製のアングルカバー323、423が取り付けられている。アングルカバー323、423と額縁部材3の内周面3aとの境目は、樹脂製のL型の見切り材324、424によって遮蔽されている。見切り材324、424は、額縁部材3の内周面3aに取付けねじ324a、424aによって固定されている。
【0092】
新設縦枠320、420は、縦枠ベース材330、430との間にスペーサ部材325、425を介して、取付けねじ326a、326b、426a、426bによって固定される。取付けねじ326a、426aは、縦枠ベース材330、430の中央部を貫通し、既設縦枠310、410にねじ込まれている。また、取付けねじ326b、426bは、溝部11の底部から縦枠ベース材330、430の屋内側の端部付近を貫通している。
【0093】
c3.縦枠ベース材
縦枠ベース材330、430は、既設縦枠310、410と新設縦枠320、420との間に配置される。
図8に示すように、縦枠ベース材330、430は、既設縦枠310、410の長さ方向に沿って間隔をおいて複数設けられる。縦枠ベース材330と縦枠ベース材430とは同一構成である。
【0094】
縦枠ベース材330、430の詳細を
図16に示す。
図16は、縦枠ベース材330、430の裏面側を屋外側から見た斜視図である。縦枠ベース材330、430は、金属製であり、ベース材本体331、431と、屋外側壁部332、432と、突出脚部333、433と、を一体に有する。
【0095】
ベース材本体331、431は、既設縦枠310、410の長さ方向の長さに対して十分に短尺な板状部材からなり、既設縦枠310、410の内周側を屋内外方向に亘って覆うことにより、新設縦枠320、420のための略平坦な取付け面を形成する。
【0096】
図8に示すように、縦枠ベース材330、430は、既設縦枠310、410の長さ方向に沿って間隔をおいて複数設けられる。ベース材本体331、431の屋内側の端部は、既設縦枠310、410のアングル部312、412を覆うように額縁部材3の内周面3a上に配置されている。本実施形態では、この既設縦枠310、410のアングル部312、412の表面及び額縁部材3の内周面3aが、縦枠ベース材330、430の屋内側の端部の取付け対象面とされる。
【0097】
図6、
図7に示すように、屋外側壁部332、432は、ベース材本体331、431の屋外側の端部から外側方に向けて延びている。屋外側壁部332、432は、既設縦枠310、410の屋外側壁部311、411と略平行に延び、新設縦枠320、420の第1屋外側壁部321a、421aと既設縦枠310、410の屋外側壁部311、411との間において、屋外側壁部311、411に当接して配置されている。
【0098】
突出脚部333、433は、ベース材本体331、431の屋内側の端部に一体に形成されている。
図6、
図7に示すように、突出脚部333、433は、アングル部312、412を覆って、額縁部材3の内周面3aに対向して配置されており、ベース材本体331、431の裏面(既設縦枠310、410の側の面)から額縁部材3の内周面3aに向けて突出している。
【0099】
突出脚部333、433は、縦枠ベース材330、430の最も屋内側の端部に配置されている。この突出脚部333、433の屋内側の側面は、縦枠ベース材330、430の屋内側面330a、430aを形成している。
図6、
図7に示すように、この屋内側面330a、430aは、新設縦枠320、420のアングルカバー323、423を除く屋内側面320a、420aと同一面上に配置されている。アングルカバー323、423は、縦枠ベース材330、430の屋内側面330a、430aと新設縦枠320、420の屋内側面320a、420aとに亘って、これら屋内側面320a、330a、420a、430aを覆うように装着されている。
【0100】
c4.縦枠ベース材の取り付け構造
縦枠ベース材330、430は、ベース材本体331の裏面の一対の取付けステー334、434によって既設縦枠310、410に取り付けられる。各取付けステー334、434は、縦枠ベース材330、430の長さ方向に沿って延びる帯状に形成されており、ベース材本体331、431に形成された屋内外方向に長い長穴335、435、336、436に取付けねじ337、437によって取り付けられている。取付けステー334、434は、長穴335、435、336、436を利用して取り付けられるため、取付けステー334、434の屋内外方向の取付け位置を微調整することができる。
【0101】
各取付けステー334、434は、取付けねじ337、437との固定部位よりも両端側に、それぞれ既設縦枠310、410側に向けて屈曲する屈曲部334b、434bを有する。これにより、取付けステー334、434の両端部334a、434aは、ベース材本体331、431よりも既設縦枠310、410側に向けて突出する。取付けステー334、434は、両端部334a、434aにおいて、それぞれ取付けねじ338、438によって突出片313、413を避けた既設縦枠310、410の内周面310a、410aに固定されている。これにより、縦枠ベース材330、430は、既設縦枠310、410の内周側に取り付けられる。
【0102】
ここで、縦枠ベース材330、430の屋内側の端部の取付け構造を
図19に示す。
図19は、一方の縦枠ベース材330を示すが、他方の縦枠ベース材430も同一構成であるため、他方の縦枠ベース材430については、
図19を参照する説明中において括弧書きで符号を付すものとする。
縦枠ベース材330、430の屋内側の端部は、取付け対象面である額縁部材3の内周面3aとの間に間隙Dを有して取り付けされる。即ち、縦枠ベース材330(430)は、取付けステー334、434によって取り付けられた状態で、縦枠ベース材330(430)の突出脚部333(433)の先端と額縁部材3の内周面3aとの間には、間隙Dが形成される。この間隙Dは、縦枠ベース材330(430)のベース材本体331(431)と額縁部材3の内周面3aとの間の設計上の距離をD1、後述する止水テープ340(440)の厚みをD2としたとき、突出脚部333(433)の突出高さをD1-D2の高さにすることによって形成される。
【0103】
これにより、縦枠ベース材330、430と額縁部材3との間に止水テープ340、440が配置された状態で縦枠ベース材330、430が取り付けられても、縦枠ベース材330、430の屋内側の端部が内側(
図6、
図19における右側、
図7における左側)に突出して傾くおそれはなく、新設縦枠320、420のための取付け面を適正位置に形成することが可能となる。
【0104】
c5.縦枠の止水構造
図6、
図7に示すように、縦枠ベース材330、430の突出脚部333、433と額縁部材3の内周面3a(既設縦枠310、410のアングル部312、412の表面)との間には、シール材である止水テープ340、440が介在されている。止水テープ340、440は、既設縦枠310、410の突出片313、413から見切り材324、424の近傍に亘って貼着されている。
【0105】
また、新設縦枠320、420の屋内側面320a、420aと縦枠ベース材330、430の屋内側面330a、430aとに亘って、止水テープ341、441が貼着されている。止水テープ341、441は、縦枠ベース材330、430の屋内側面330a、430aから、止水テープ340、440の額縁部材3の内周面3aに貼着される部位に亘って延びている。本実施形態では、縦枠ベース材330、430の屋内側面330a、430aと新設縦枠320、420の屋内側面320a、420aとは同一面上に配置されている。これにより、止水テープ341、441を平面的に貼着することができるため、貼着作業性が良いと共に、貼着状態も良好となり、止水機能を向上させることができる。なお、本実施形態では、スペーサ部材325、425の屋内側面325a、425aも、屋内側面320a、420a、330a、430aと同一面上に配置されているが、スペーサ部材325、425の屋内側面325a、425aの位置は特に限定されない。
【0106】
更に、既設縦枠310、410と新設縦枠320、420との間には、発泡ゴム等からなる止水材350、450が介在されている。止水材350、450は、既設縦枠310、410の屋外側壁部311、411と新設縦枠320、420の第1屋外側壁部321a、421aとの間に挟持され、新設縦枠320、420の長さ方向に沿って長尺に延びている。
【0107】
以上の構成を備える窓枠10は、上枠100、下枠200及び左右の縦枠300、400により矩形に枠組みされる。これにより、改装サッシ1の新設枠(新設上枠120、新設下枠220及び新設縦枠320、420)は、各ベース材130、230、330、430を介して、既設枠(既設上枠110、既設下枠210及び既設縦枠310、410)の内周側を覆うように取り付けられる。
【符号の説明】
【0108】
1 改装サッシ
2 開口部
3 額縁部材
3a 内周面
110 既設上枠(既設枠)
120 新設縦枠(新設枠)
130 上枠ベース材
210 既設下枠(既設枠)
220 新設下枠(新設枠)
230 下枠ベース材
310、410 既設縦枠(既設枠)
320、420 新設縦枠(新設枠)
330、430 縦枠ベース材
112、214、312、412 アングル部
133a、133b、235b、235c、333、433 突出脚部
150、240、340、440 止水テープ(シール材)
D 間隙