(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20220509BHJP
E06B 1/04 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
E06B7/22 Z
E06B1/04 Z
(21)【出願番号】P 2018049825
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山下 富広
(72)【発明者】
【氏名】北村 真吾
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/22
E06B 1/04
E06B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、室内側に開閉するように前記枠体の内周側に保持された障子と、を有する建具であって、
前記障子は、ガラス及び前記ガラスの周囲に配置される框を備え、
前記框は、前記框の内周側に配置されるガラス保持溝と、前記ガラス保持溝の見付方向外側に配置される中空部と、を有し、
前記中空部の見付方向外側で見込方向に延びる中空部外側面に、前記枠体及び前記障子を連結する連結金具が取り付けられ、
前記枠体の室外側見付面の室内側に取り付けられて、前記中空部の室外側見付面に、前記枠体と前記障子との隙間を封止する
中空部側気密材が当接され
、
前記枠体の室外側見付面から室内側へ延出して、前記框の室外側面の見付方向外側の端部に室外側気密材が当接される、建具。
【請求項2】
前記連結金具は、前記枠体から前記障子を室内側に開閉させる開閉アームであり、
前記開閉アームは、前記
中空部側気密材
及び前記室外側気密材よりも室内側に配置される、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記建具は、内倒し窓である請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
前記室外側気密材が取り付けられる前記枠体の前記室外側見付面と、前記框の室外側見付面とは、略面一で配置される、請求項1~3いずれか1項に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内側へ開く障子を有する建具として、障子の框を見付方向の外側で枠体に連結した建具が知られている。このような建具では、室外側から外気や雨水が入りこむことを防止するため、框と枠体との間に気密材が配置されている。
【0003】
障子が室内側へ開くように枠体に連結されている場合、障子を枠体に開閉可能に連結する連結金具が開閉移動の際に移動する。このため、気密材を連結金具の可動域を避けた位置に配置した建具が提案されている(例えば、特許文献1参照)具体的には、気密材は、連結金具の室内側と、連結金具の室外側とに配置されて、かつ室内側と室外側の気密材は見付方向にずれた位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気密材の位置を、室内外で見付方向の位置をずらすように配置することで、連結金具により障子が開閉する軌道を避けることができる。一方、気密材の位置が見付方向にずれると、框の見付寸法が大きくなるので、建具の見付方向の寸法を小さくすることが難しかった。このため、建具の見付方向の寸法に関して設計の自由度が小さくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、設計の自由度が高く、建具の見付方向の寸法を小さくすることが可能な建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、枠体(例えば、後述の枠体2)と、室内側に開閉するように前記枠体の内周側に保持された障子(例えば、後述の障子3)と、を有する建具(例えば、後述の内倒し窓1)であって、前記障子は、ガラス(例えば、後述のガラス35)及び前記ガラスの周囲に配置される框(例えば、後述の框30)を備え、前記框は、前記框の内周側に配置されるガラス保持溝(例えば、後述のガラス保持溝36)と、前記ガラス保持溝の見付方向外側に配置される中空部(例えば、後述の中空部313)と、を有し、前記中空部の見付方向外側で見込方向に延びる中空部外側面(例えば、後述の中空部外側面313a)に、前記枠体及び前記障子を連結する連結金具(例えば、後述の開閉アーム4)が取り付けられ、前記枠体の室外側見付面(例えば、後述の室外側延出片213)の室内側に取り付けられて、前記中空部の室外側見付面(例えば、後述の室外側見付面313c)に、前記枠体と前記障子との隙間を封止する気密材(例えば、後述の第4気密材64)が当接される建具に関する。
【0008】
前記連結金具は、前記枠体から前記障子を室内側に開閉させる開閉アームであり、前記開閉アームは、前記気密材よりも室内側に配置されることが好ましい。
【0009】
前記建具は、内倒し窓であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設計の自由度が高く、建具の見付方向の寸法を小さくすることが可能な建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】本実施形態の気密ピースを示し、(a)図は斜視図、(b)図は、側面図、(c)図は正面図である。
【
図5】本実施形態のラッチ機構を示す模式図であり、(a)図は、施錠時の状態を示し、(b)図はラッチが解除された時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の建具としての内倒し窓1を示す正面図である。内倒し窓1は、枠体2と、障子3と、枠体2及び障子3を連結する連結金具としての開閉アーム4と、障子3を閉じた状態で枠体2に係止させるラッチ機構5と、を有する。また、内倒し窓1の内部の各所には、気密材6(
図2、
図3参照)が配置され、室外側からの雨水や風等が室内に入りこむことを防止する。
【0013】
枠体2は、建物の壁等に形成された開口部に取り付けられる。枠体2は、一対の縦枠21と、上枠22と、下枠23とを有し、四角形に枠組みされる。
【0014】
図2は、内倒し窓1の縦断面図である。
上枠22は、
図2に示すように、開口部の上部で見付方向に延びるように取り付けられる形材である。上枠22は、上部が開放された断面視略コ字状の凹部を有し、開放された凹部側が建物の開口部に面し、凹部の底面側が枠体2の内周側を形成している。上枠22の下端部からは、室内側延出片22a及び室外側延出片22bがそれぞれ下方に延びている。室内側延出片22aの下端部には第1気密材61が、室外側延出片23bには第2気密材62が取り付けられる。なお、第1気密材61~第5気密材65等の気密材6については後述する。
【0015】
下枠23は、下枠本体231と、支軸部232と、室外側垂壁部233とを有する。
下枠本体231は、開口部の下部で見付方向に延び、断面視略四角形に形成される。
支軸部232は、下枠本体231の上面から上方に向かって折れ曲がりながら延び、先端が曲面を形成するように曲げられている。この曲面の上表面が、障子3を回動可能に軸支する。支軸部232は、下枠本体231に沿って見付方向に延びる。
室外側垂壁部233は、下枠本体231の室外側の面の上端部からさらに上方に突出するとともに、下枠本体241の室外側の面の下端部を越えて下垂し、室外側へ屈曲する。室外側垂壁部233の上端には、障子3との間の隙間を封止する第5気密材65が取り付けられる。室外側垂壁部233の下端部は、上枠22の最も室外側の面から下方に延ばした仮想延長線上で上方に向かって屈曲する。室外側垂壁部233の下端部は、障子3と接触しておらず、障子3の下端部との間に隙間Sを空けて配置されている。
【0016】
図3は、内倒し窓1の横断面図である。
一対の縦枠21は、
図3に示すように、内倒し窓1の見付方向の両端部に配置される。縦枠21は、外側見込面211と、室外側見付面212と、室外側延出片213と、室内側見付部214と、を有する。
【0017】
外側見込面211は、縦枠21の見込方向一杯に延びる平坦な面である。外側見込面211は、内倒し窓1の見込方向の寸法を規定する。
【0018】
室外側見付面212は、外側見込面211の室外側の端部から室内側に向かって延びる延出面である。室外側見付面212の先端部には、障子3との間を封止する第3気密材63が取り付けられている。
【0019】
室外側延出片213は、外側見込面211から見付方向内側に向かって延び、かつ、室外側見付面212と略平行に配置される室内側見付面である。室外側延出片213の先端部には、障子3との間を封止する第4気密材64が取り付けられている。
【0020】
室内側見付部214は、外側見込面211の室内側の端部から見付方向室内側に向かって延び、見付方向内側の端部から室外側に屈曲することで形成される断面視L字型の部分である。室内側見付部214の見付方向内側の端部は、障子3の見付方向外側の端部と所定の隙間を開けた位置に位置している。
【0021】
障子3は、室内側に開閉するように枠体2の内周側に保持され、室内側へ向かって開閉可能に取り付けられる。障子3は、ガラス35及びガラス35の周囲に配置される框30を有し、内部に気密材6及び気密ピース60が取付けられる。
【0022】
ガラス35は、正面視同形の室外側ガラス35a及び室内側ガラス35bが、見込方向に間隔を空けて配置される複層ガラスである。室外側ガラス35a及び室内側ガラス35bの間には、スペーサー35cが配置されている。
【0023】
框30は、一対の縦框31と、上框32と、下框33と、ガラス保持溝36を有する。一対の縦框31、上框32及び下框33は、枠体2の内周側に配置され、四角形に枠組みされる。
【0024】
ガラス保持溝36は、一対の縦框31、上框32、下框33で構成される框30の枠の内周側に形成される。ガラス保持溝36は、以下に説明するように縦框31、上框32、下框33の一部が内周方向に開口した凹部により形成され、内部にガラス35を保持する。
【0025】
図1及び
図2に示すように、上框32は、内倒し窓1の上部で水平方向に延び、上枠22の下部に配置される。上框32は、室内側上縁部321及び室外側上縁部322を有する。
【0026】
室内側上縁部321は、上框32の室内側に配置される部分である。室内側上縁部321は、見付方向に長く延び、断面視略四角形で内部が中空に形成される。室内側上縁部321の室内側面は平坦である。
【0027】
室外側上縁部322は、上框32の室外側に配置される部分である。室外側上縁部322は、下方に向かって開放された凹部で形成されるガラス保持溝36を有する。室外側上縁部322の上部には、上方に向かって延びる突起部322aが設けられており、上枠22の室内側延出片22aの下端部に取り付けられた第1気密材61が当接する。また、室外側上縁部322の最も室外側の端部には、上枠22の室外側延出片22bの下端部に取り付けられた第2気密材62が当接する。
【0028】
下框33は、内倒し窓1の下部で水平方向に延び、下枠23の上部に配置される。下框33は、下押縁部331、室外側下縁部332、下框中空部333及びヒンジ部334を有する。
【0029】
下押縁部331は、見付方向に長く延び、上框32の室内側上縁部321に対応する見付方向の長さ及び見込方向の奥行を有する。下押縁部331は、その室外側面が、ガラス保持溝36に対面するように配置される。
【0030】
室外側下縁部332は、下框33の室外側に配置される部分である。室外側下縁部332は、上方に開放された凹部で形成されるガラス保持溝36を有する。室外側下縁部332の室外側面は、平坦な面が下垂するように形成され、その下端部が下枠23の室外側垂壁部233の下端部との間に隙間Sを有するように配置されている。この隙間からは、内倒し窓1内に進入した水等が排水される。
【0031】
下框中空部333は、下押縁部331及び室外側下縁部332の下方で、下押縁部331及び室外側下縁部332の境界部に跨って配置される中空の部分である。下框中空部333の室外側の端部は、下枠23の室外側垂壁部233の上端部と対向し、室外側垂壁部233に取り付けられた第5気密材65が当接する。
【0032】
ヒンジ部334は、下框中空部333の室内側の端部に設けられる断面視半円形の凹部334aと、凹部の室内側の端部から室外側に向かって平坦に延びる爪部343bとを有する。ヒンジ部334は、見付方向に延び、下枠23から上方に延び凹部334a内に嵌め込まれる支軸部232に係合して、障子3が室内外に回動する際の回動支点となる。
【0033】
図3に示すように、一対の縦框31は、框30の見付方向の両側で上下方向に延びる部分である。縦框31は、縦押縁部311と、室外側側縁部312と、中空部313と、を有する。
【0034】
縦押縁部311は、上下方向に長く延び、上框32の室内側上縁部321及び下框33の下押縁部331に対応する見込方向の奥行を有する。
【0035】
室外側側縁部312は、縦押縁部311の室外側に形成され、見付方向の内側に開放された凹部で形成されるガラス保持溝36を有する。
図3に示すように、室外側側縁部312の室外側面の見付方向外側の端部には、縦枠21の室外側見付面212の見付方向の内側の端部に取り付けられた第3気密材63が当接している。
【0036】
中空部313は、縦枠21におけるガラス保持溝36の見付方向外側、詳細には、縦押縁部311及び室外側側縁部312の見付方向の外側面に配置される。中空部313は、縦押縁部311及び室外側側縁部312の境界部に跨って配置される中空の部分である。中空部313は、横断面視で見込方向に長い長方形に形成され、中空部外側面313aと、突起部313bと、室外側見付面313cと、を有する。
【0037】
中空部外側面313aは、中空部313の見付方向外側で、見込方向に延びる。この中空部外側面313aには、後述する開閉アーム4が取り付けられる。
【0038】
突起部313bは、中空部313の見付方向内側の側面、すなわち中空部外側面313aに対向する内側の側面に、室内側と室外側に形成される。各突起部313bは、見付方向内側に向かって突出した後、見込方向室外側、室内側それぞれに向かって屈曲する。突起部313bは、縦押縁部311の端部が係合することで、縦押縁部311が中空部313及び室外側側縁部312と連結される。
【0039】
室外側見付面313cは、中空部313の見込方向室外側に延びる短手方向の側縁である。室外側見付面313cに対して、縦枠21の室外側延出片213の室内側に取り付けられる第4気密材64が当接している。室外側見付面313cは、
図3に示すように、ガラス35の室外側ガラス35aと室内側ガラス35bの間の位置から見付方向外側に離間した位置に配置されている。
【0040】
気密材6は、上述の通り、第1気密材61、第2気密材62、第3気密材63、第4気密材64及び第5気密材65を含む。これら各気密材61~65は、
図2及び
図3に示すように、それぞれガラス保持溝36の室内側の端部よりも室外側に位置し、縦枠21の見付方向の両側に配置される気密材6(第3気密材63同士、第4気密材64同士)を結んで形成される気密ラインを形成している。気密材6は、上述の通り、枠体2及び障子3の間に配置され、枠体2と障子3との隙間を封止するゴム等の可撓性部材により形成される。
【0041】
第1気密材61は、
図2に示すように、上枠22の室内側延出片22aの下端部に係止される係止部61aと、上框32の室外側上縁部322の突起部322aに当接する当接部61bとを有する。
第5気密材65は、下枠23の室外側垂壁部233の上端部に係止される係止部65aと、下框33の下框中空部333の室外側の端部に当接する当接部65bとを有する。第1気密材61及び第5気密材65は、水滴とともに内倒し窓1内を室内外方向に流通する空気を封止する気密材である。
【0042】
第2気密材62は、上枠22の室外側延出片22bの下端部に係止される係止部62aと、係止部62aから上框32の室外側上縁部322の最も室外側に位置する端部まで延びるヒレ部62bを有する。
第3気密材63は、
図3に示すように、縦枠21の室外側見付面212の室内側面に係止される係止部63aと、係止部63aから縦框31の室外側側縁部312の最も室外側に位置する端部まで延びるヒレ部63bを有する。第2気密材62及び第3気密材63は、室外からの水の侵入を防止する水切材である。
【0043】
第4気密材64は、縦枠21の室外側延出片213の室内側面に係止される係止部64aと、係止部64aから縦框31の中空部313の室外側見付面313cに当接する当接部64bとを有する。第3気密材63及び第4気密材64は、見込方向に重なる位置に位置しており、ともに開閉アーム4の移動軌跡に干渉せず開閉アーム4よりも室外側に位置している。
【0044】
図4(a)は気密ピース60の斜視図であり、
図4(b)は、気密ピース60の側面図であり、
図4(c)は、気密ピース60の正面図である。気密ピース60はゴム等の弾性部材で形成され、下押縁部331と室外側下縁部332内のガラス保持溝36との間に配置される。
【0045】
気密ピース60は、
図4(a)~
図4(c)に示すように、正面視で略長方形で、背面602が平坦な面で、表面601に傾斜及び段差が形成された部品である。
詳細には、
図4(b)に示すように、気密ピース60の短手方向の一方の端部から中央部側に向かって傾斜面601aが形成され、傾斜面601aの他方の端部から背面602と平行な平坦面601bが延出し、気密ピース60の短手方向の他方の端部側は四角く切り欠かれた切欠き部601cが形成されている。
【0046】
図3に示すように、気密ピース60の切欠き部601cは、中空部313から突出する突起部313bが屈曲することで形成される突起部313bの端部と中空部313の見込面との間に嵌り込んで設置される。このとき、平坦面601bは、突起部313bの見付方向内側の面と面一となり、縦押縁部311の室外側端部が配置される位置まで延びる。気密ピース60は、縦押縁部311と、室外側側縁部312及び中空部313との間の隙間に圧入される。
【0047】
開閉アーム4は、気密材6よりも室内側に配置されて、枠体2から障子3を室内側方向に傾斜させながら開閉させる金具である。開閉アーム4は、障子側連結部410と、アーム本体400と、枠体側取付部420と、を有する。
障子側連結部410は、中空部313の中空部外側面313aに取り付けられる。
アーム本体400は、一端が障子側連結部410と回動可能に連結され、見込方向室内側に移動可能な細長い部材である。
枠体側取付部420は、枠体2の外側見込面211における内面側で、見込方向の中央部に取り付けられる。枠体側取付部420は、見付け方向に延びる軸部421を有し、軸部421が回動可能にアーム本体400の他端に接続される。
アーム本体400は、障子3を閉じている間は、長手方向が縦枠21の長手方向に沿うように位置している。開閉アーム4は、障子3を開くにしたがって一端が枠体側取付部420から遠ざかるように見込方向室内側へ傾斜する。
【0048】
図1に戻って、ラッチ機構5は、内倒し窓1の上部における見付方向の中央部に配置され、上框32を枠体2に係止させる。ラッチ機構5は、係合受け部51と、ラッチ部50とにより構成される。以下の説明では、ラッチ機構5を構成する部品を、ラッチ機構5が上枠22内に配置された状態の位置関係によって説明する。
【0049】
図5(a)はラッチ機構5の施錠時を示す模式図であり、
図5(b)はラッチ機構5が解除された状態を示す図である。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、係合受け部51は、上枠22の下端面に取り付けられる。係合受け部51は、取付部511と、係合部512と、係合孔513とを有する。
【0050】
取付部511は、平坦な面にねじ孔が設けられた面状の部分である。取付部511は、上枠22の下端面に当接してねじにより固定される。
【0051】
係合部512は、取付部511から下方に突出して、内部に中空の空間を形成する部分である。係合部512は、障子3を閉じたときに、以下に説明するラッチ部50の爪部551が係合部512内部に係止できるように上枠22の下端面から離間している。
【0052】
係合孔513は、係合部512の下端面に形成される孔であり、ラッチ部50の爪部551が挿通して係止する。
【0053】
ラッチ部50は、上框32の見込方向の室内側で、上框32の内部に配置される。ラッチ部50は、ハウジング52と、操作部53と、リンク部54と、突出部55と、を有する。ラッチ部50は、枠体2に対して障子3を係合させるとともに、この係合を解除する操作を行う部分である。
【0054】
ハウジング52は、上枠22の内部に配置される略六面体の箱形状を有し、内部に部品を収納可能な中空部が形成されている。ハウジング52は、互いに連結される上部ハウジング521及び下部ハウジング522を有する。
【0055】
上部ハウジング521は、ハウジング52の蓋のように上部に配置される。上部ハウジング521は、上面開口部521aと、上部係合壁部523aと、上部ハウジング係合部524aと、を有する。
【0056】
上面開口部521aは、上部ハウジング521の上面に形成される開口部である。上面開口部521aは、以下に説明する突出部55が上部ハウジング521の上面から突出可能に形成された貫通孔である。
【0057】
上部係合壁部523aは、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、上部ハウジング521の見付方向の両端側の側面における室外側が下方に延出した部分である。
【0058】
上部ハウジング係合部524aは、上部係合壁部523aから下方に突出し、室外側に屈曲する突起である。
【0059】
下部ハウジング522は、ハウジング52の下部に配置される。下部ハウジング522は、下面開口部525と、周縁リブ526と、円弧内壁部527と、軸挿通孔528と、下部係合壁部523bと、下部ハウジング係合孔524bと、を有する。
【0060】
下面開口部525は、下部ハウジング522の下方の面に形成された開口部である。下面開口部525は、使用者の指が挿通可能な程度の大きさを有する。
【0061】
周縁リブ526は、下面開口部525の周縁に形成され、下面開口部525から内側に向かって延出する幅の狭い突出部である。
【0062】
円弧内壁部527は、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、側面視で円弧状に形成され、下部ハウジング522内における室内側の側壁の下端部から上方に向かって湾曲する。
【0063】
軸挿通孔538は、下部ハウジング522の室外側の側面の下端部近傍に形成される貫通孔である。軸挿通孔528は、見付方向の一方及び他方に対向して配置されている。
【0064】
下部係合壁部523bは、上部係合壁部523aと互い違いに位置するように、下部ハウジング522の下方から上部係合壁部523aの室内側で、上方に延出する部分である。下部係合壁部523bの室外側の端部は、円弧内壁部527の円弧の室内側の端部から室外側に下り傾斜する。
【0065】
下部ハウジング係合孔524bは、上部ハウジング係合部524aが嵌合可能な孔である。下部ハウジング係合孔524bは、下部ハウジング522の見付方向両端部側の側壁における室外側の上部に配置される。
【0066】
操作部53は、下部ハウジング522内に配置され、下部ハウジング522内で回動可能に取り付けられる板ばねである。操作部53は、框30の室内側の見込面(上框32の下面)に配置される。操作部53は、軸部531と、リンク突起532と、板状部533とを有する。
【0067】
軸部531は、下部ハウジング522に連結される円筒状の部分であり、両端部が下部ハウジング522の軸挿通孔538に挿通されて、操作部53を回動可能に支持する。
【0068】
リンク突起532は、軸部531から下部ハウジング522内部に向かって離間した位置で、軸部531と平行する方向に突出する略円筒状の小さな突起である。リンク突起532は、以下に説明するリンク部54に係合する。
【0069】
板状部533は、軸部531から室内側に向かって延びる板状の部分である。板状部533の見込方向の寸法は、下部ハウジング522における円弧内壁部527の半径の寸法に対応する。すなわち、板状部533は、軸部531を支点として円弧内壁部527の内周面を摺動する。
図5(a)に示すように、板状部533は、ロックされた状態では、下部ハウジング522の下面開口部525を塞ぎ、板状部533の周囲が周縁リブ526に支持されることで、下面開口部525より下方に落ちないようになっている。
【0070】
リンク部54は、側面視で略L字型に屈曲し、長辺部54aと、短辺部54bと、長孔541と、ラッチ切欠部542a、542bと、を有する。
長辺部54aは、
図5(a)に示すように、操作部53のリンク突起532が係合し、ハウジング52の上下方向に延びるように配置される。
長孔541は、長辺部54aに形成され、内部をリンク突起532が移動する。
短辺部54bは、長辺部54aの上端が屈曲して室内側に延出する部分である。短辺部54bは長辺部54aに対して鋭角を形成しながら屈曲している。
ラッチ切欠部542a、542bは、短辺部54bの室内側(ラッチ切欠部542a)と室外側(ラッチ切欠部542b)の周縁が内側に切り込まれて形成される。ラッチ切欠部542a、542bは、以下に説明するラッチ係合突起552a、552bの外径が嵌合可能な幅を有する。
【0071】
突出部55は、側面視略三角形に形成され、係合受け部51の係合孔513に係合可能な部品である。突出部55は、爪部551と、ラッチ係合突起552a、552bと、を有する。
爪部551は、突出部55の三角形の一つの角部であり、施錠時には上部ハウジング521の上面開口部521aから突出して係合受け部51に係合する。爪部551は、突出する角の部分が室内側に寄っており、頂部から室外側が緩い傾斜で延び、頂部から室内側が急斜面で下方に延びている。
ラッチ係合突起552a、552bは、突出部55の三角形の他の2つの角の近傍に配置され、見付方向に突出する略円筒状の突起である。室内側のラッチ係合突起552aと、室外側のラッチ係合突起552bとは、突出部55の下方側で略水平方向に並んで配置されている。ラッチ係合突起552a、552bは、それぞれラッチ切欠部542a、542bに係合する。
【0072】
ラッチ部50の動きについて説明する。
図5(a)に示すように、施錠時には、操作部53が下部ハウジング522の下面開口部525を塞いでいる。操作部53のリンク突起532は、リンク部54の長孔541の下端に位置している。リンク突起532は、ハウジング52内の見込方向における略中央部に配置され、リンク部54の長辺部54aは、室外側にやや傾斜するようにして上方に延びる。
【0073】
リンク部54のラッチ切欠部542a、542bが突出部55のラッチ係合突起552a、552bに係合した状態で、突出部55の爪部551は、上部ハウジング521の上面開口部521aから上方に突出し、係合受け部51の係合孔513に係合する。この状態で障子3が枠体2に対して係止され、ロックされるので、障子3が内側に倒れてくることはない。
【0074】
内倒し窓1の使用者が、内倒し窓1を開けるときは、ラッチ部50を上框32の外側から押し込み操作により操作する。具体的には、使用者は、指で操作部53を下側から上方に向かって押す。すると、操作部53は、軸部531を軸として回転し、下部ハウジング522の円弧内壁部527を摺動しながら上方に移動する。この移動と同時に、使用者の指が下部ハウジング522内に入っていく。操作部53は、円弧内壁部527を回動して、上部ハウジング521の上部係合壁部523aに向かい合うところで停止する。
【0075】
操作部53の板状部533が上方に回動するにしたがって、操作部53のリンク突起532がリンク部54の長孔541内を上方に移動する。すると、リンク部54は、リンク突起532の移動に伴って上下方向に真直ぐな(略鉛直方向を向く)姿勢をとるようになり、ハウジング52の室外側の側面に沿うように起立する。リンク部54が上下方向に直立するような姿勢をとると、短辺部54bは、長辺部54aに対して鋭角で屈曲しているので、室内側のラッチ切欠部542aはやや下方に下がり、ラッチ切欠部542a、542bは、室外側から室内側に向かって下方に傾く。この動作により、突出部55における爪部551が、リンク部54の動きに伴って下方に下がり、係合孔513から外れる。このように、操作部53を上框32の外側から押し込み操作により操作することで、枠体2に対する障子3の係合が解除される。
【0076】
図5(b)に示すように、操作部53が上框32内に押し込み操作された状態で、ラッチ部50の下部ハウジング522の内部には、凹部56が形成される。凹部56は、上框32の室外側面に対向する見付面を有し、この見付面は円弧内壁部527により形成される。使用者は、凹部56に指を入れて円弧内壁部527に手指を掛け、室内側へ向けて円弧内壁部527を押すと、障子3を内側に倒すことができる。
【0077】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、枠体2と、室内側に開閉するように枠体2の内周側に保持された障子3と、を有する内倒し窓1において、障子3を、ガラス35及びガラス35の周囲に配置される框30を含んで構成し、框30を、框30の内周側に配置されるガラス保持溝36と、ガラス保持溝36の見付方向外側に配置される中空部313と、を含んで格子柄した。また、中空部313の見付方向外側で見込方向に延びる中空部外側面313aに、枠体2及び障子3を連結する開閉アーム4を取り付け、枠体2の室外側延出片213の室内側に取り付けられて、中空部313の室外側見付面313cに、枠体2と障子3との隙間を封止する第4気密材64を当接させた。
障子3と枠体2との連結部となる開閉アーム4よりも見込方向室外側に第4気密材64が配置されるので、開閉移動する開閉アーム4の移動軌跡を避けて気密材を見付方向外側に配置する必要がなくなる。これにより、内倒し窓1の見付方向の寸法を小さくすることができ、見付寸法に関して設計の自由度が上がり、意匠性を向上させることができる。さらに、この構成によれば、室外側から入りこむ雨水や風等が開閉アーム4まで至りにくい。その結果、開閉アーム4の耐久性が向上する。
【0078】
また、本実施形態によれば、連結金具を枠体2から障子3を室内側に開閉させる開閉アーム4により構成し、開閉アーム4を第4気密材よりも室内側に配置させた。これにより、開閉アーム4の移動軌跡を阻害することなく気密材64を配置することができ、上記と同様の効果を奏する。
【0079】
また、本実施形態によれば、建具を、内倒し窓1により構成した。これにより、特に見付寸法の小さな内倒し窓1を提供することができるとともに、内倒し窓1の耐久性を向上させることができる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、建具を内倒し窓として説明したが、これに限られない。建具は、内開き窓であってもよく、排煙内倒し窓であってもよい。また、連結金具は、開閉アームに限られず、丁番やダンパであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 内倒し窓(建具)
2 枠体
3 障子
4 開閉アーム(連結金具)
64 第4気密材(気密材)
30 框
35 ガラス
36 ガラス保持溝
213 室外側延出片(枠体の室外側見付面)
313 中空部
313a 中空部外側面
313c 中空部の室外側見付面