(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/325 20060101AFI20220509BHJP
B41J 17/30 20060101ALI20220509BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20220509BHJP
B41J 25/316 20060101ALI20220509BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20220509BHJP
B65H 23/10 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J17/30 Z
B41J3/36 Z
B41J25/316
B41J15/04
B65H23/10
(21)【出願番号】P 2018057082
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲梶▼川 雅明
(72)【発明者】
【氏名】田野 好宏
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-234120(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043378(WO,A1)
【文献】特開平10-129907(JP,A)
【文献】特開平10-076725(JP,A)
【文献】特開2015-096336(JP,A)
【文献】特開2011-183608(JP,A)
【文献】特開2009-179013(JP,A)
【文献】特開2007-301869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/325
B41J 17/30
B41J 3/36
B41J 25/316
B41J 15/04
B65H 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に印字を行う
サーマルヘッドを有する印字部と、
前記サーマルヘッドに対して揺動自在に備えられ、前記印字部に供給される前記印字媒体とインクリボンとの間を仕切る仕切部材と、
を備え、
前記仕切部材は、前記印字媒体側に突出して、前記印字媒体を前記仕切部材から離間させる方向に付勢するダンパを有する、
プリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記ダンパは、前記印字媒体を押圧する押さえ部と、前記押さえ部を前記印字媒体側に付勢する付勢機構と、を備える、
プリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリンタであって、
前記ダンパは、前記印字媒体の幅方向の略中央部分を付勢する、
プリンタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のプリンタであって、
前記仕切部材は、前記印字媒体を検出するセンサを備え、
前記センサは、前記仕切部材において、前記ダンパの前記印字媒体の搬送方向下流側に並んで備えられる、
プリンタ。
【請求項5】
請求項2に記載のプリンタであって、
前記押さえ部は、前記印字媒体に接する部分が低摺動抵抗の素材で形成されている、
プリンタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のプリンタであって、
前記仕切部材は、前記印字部に前記インクリボンを供給するリボン供給軸を備える、
プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクリボンと印字媒体との間にリボンカバーを備え、サーマルヘッドに供給される被印字媒体を上側から案内するガイド板として機能するように構成されているプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような従来のプリンタでは、印字媒体の搬送を開始するときに、印字媒体の重量による慣性負荷により、印字媒体にかかる張力が急激に変化して、プラテンローラによる印字媒体の搬送が適切に行なわれずに印字不良(例えば搬送方向の印字縮み)となったり、印字媒体の緩みや曲がり、しわが発生したりする可能性があるという問題がある。このような問題を防止するために印字媒体を付勢するように構成されたローラを適所に配置することもできるが、ローラを配置することによりプリンタの重量やサイズが増大し、コストも増大するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、サイズや重量、コストを増大させることなく、印字媒体の印字不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、印字媒体に印字を行うサーマルヘッドを有する印字部と、サーマルヘッドに対して揺動自在に備えられ、印字部に供給される印字媒体とインクリボンとの間を仕切る仕切部材と、を備え、仕切部材は、印字媒体側に突出して、印字媒体を仕切部材から離間させる方向に付勢するダンパを有するプリンタが提供される。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、仕切部材のダンパが、印字媒体を付勢して、印字媒体の張力の変化に追従することができ、プリンタのサイズや重量、コストを増大させることなく、印字媒体の慣性負荷による張力の急激な変化を抑制して、印字媒体の搬送に不足や過剰が発生することを防止し、印字媒体の印字不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図3】
図3は、仕切部材及びリボン供給軸の斜視図である。
【
図5】
図5は、カバーを開放した状態を示す図である。
【
図6】
図6は、リボン供給軸をリボン交換位置にした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係るプリンタ100について説明する。
【0010】
プリンタ100は、インクリボンRを熱してインクリボンRのインクを印字媒体Mに転写することで印字を行う熱転写方式のプリンタである。印字媒体Mは、例えば、帯状の台紙に複数のラベルが所定の間隔で連続して仮着されたラベル連続体である。
【0011】
印字媒体Mは、
図2に示すように、ロール状に巻き回されたロール体MRとして媒体供給軸12に保持される。なお、印字媒体Mとして、台紙なしラベルやファンフォールド型媒体を使用することもできる。
【0012】
プリンタ100は、
図1、
図2に示すように、筐体10と、筐体10の開口部を覆うカバー11と、を備える。
【0013】
筐体10は、プリンタ100において機能する部品を内部に収容する箱形のケースである。カバー11は、筐体10に設けられた支持軸13により一端側の端部が揺動自在に支持される。カバー11は、支持軸13を支点として揺動させられることで、筐体10の開口部を開放する開放状態(
図5参照)と、閉止する閉止状態(
図2参照)と、を切り替えることができる。
【0014】
筐体10には、カバー11を閉止状態に維持するロック機構(図示せず)が設けられる。ロック機構は、
図1に示すレバー14を操作することで解除され、ロック機構が備えるバネ等の付勢部材によりカバー11を開放状態にする。
【0015】
カバー11の他端側の端部と筐体10との間には、
図2に示す印字部15で印字された印字媒体Mがプリンタ100から排出される排出口16が形成される。
【0016】
カバー11には、排出口16に臨むカッタ17が取り付けられる。カッタ17は、排出口16から排出された印字済の印字媒体Mを短尺に切断することができる。
【0017】
排出口16と印字部15との間には、印字媒体Mの有無を検出する透過センサ18が設けられる。
【0018】
透過センサ18は、所定の光を出射する発光ユニット18aと、発光ユニット18aから出射された光を受光し、受光した光の強度に対応する電気信号を出力する受光ユニット18bと、を有する光学センサである。
【0019】
印字媒体Mが発光ユニット18aと受光ユニット18bとの間に存在すると、発光ユニット18aから出射された光が遮られ、受光ユニット18bが受光する光の強度が低下する。
【0020】
これにより、透過センサ18が印字媒体Mの有無を示す信号を出力することで、印字媒体Mの有無を検出できる。なお、発光ユニット18aと受光ユニット18bとの位置を入れ替えてもよい。
【0021】
また、カバー11には、プリンタ100を操作するための操作ユニット19が設けられる。操作ユニット19は、各種操作ボタン、ディスプレイ、近距離無線通信モジュール、LED等を有する。ディスプレイは、タッチパネルであってもよい。
【0022】
プリンタ100の内部には、
図2に示すように、印字媒体Mに印字を行うための印字ユニット30、プリンタ100の動作を制御するコントローラ40等が収容される。
【0023】
印字ユニット30は、一端側が支持軸13に揺動自在に支持される本体部31と、本体部31に取り付けられるサーマルヘッド32と、を備える。
【0024】
サーマルヘッド32は、筐体10側に設けられたプラテンローラ20と共に、印字媒体Mに印字を行う印字部15を構成する。
【0025】
印字ユニット30は、サーマルヘッド32とプラテンローラ20との間に印字媒体Mが挟持される印字位置(
図2参照)と、サーマルヘッド32がプラテンローラ20から離間する非印字位置(
図5、
図6参照)と、の間で揺動自在とされる。
【0026】
また、印字ユニット30は、印字部15に供給されるインクリボンRをロール状に保持するリボン供給軸33と、使用済のインクリボンRを巻き取るリボン巻取軸34と、インクリボンRと印字媒体Mとの間を仕切る仕切部材35と、リボン供給軸33から印字部15へのインクリボンRの搬送路を規定するガイド軸36と、印字部15からリボン巻取軸34へのインクリボンRの搬送路を規定するガイド軸37と、を備える。リボン供給軸33は、仕切部材35に着脱可能に取り付けられている。
【0027】
印字媒体Mは、媒体供給軸12から印字部15に供給され、サーマルヘッド32とプラテンローラ20との間にインクリボンRと共に挟持される。
【0028】
印字媒体M及びインクリボンRがサーマルヘッド32とプラテンローラ20との間に挟持された状態、すなわち、印字ユニット30が印字位置にある状態でサーマルヘッド32の発熱素子への通電が行われると、発熱素子の熱によってインクリボンRのインクが印字媒体Mに転写され、印字媒体Mへの印字が行われる。
【0029】
また、プラテン駆動モータ(図示せず)によってプラテンローラ20を正回転させると、印字媒体M及びインクリボンRが搬送方向下流側へと搬送されて印字媒体Mが排出口16からプリンタ100の外部に排出される。
【0030】
また、リボン巻取軸34は、駆動モータ(図示せず)に接続された連結ギヤ群を介して回転駆動され、インクリボンRをリボン供給軸33からリボン巻取軸34へと送る。
【0031】
仕切部材35は、
図3に示すように、ベース部35aと、ベース部35aの一端側に設けられた軸部35bと、リボン供給軸33を軸部35bと平行且つ回動自在に支持する支持部35c、35dと、軸部35bの中央部に形成された係合部35eと、を有する。
【0032】
仕切部材35は、軸部35bにより本体部31に揺動自在に支持される。
【0033】
係合部35eは、
図2に示すように、カバー11に設けられた被係合部11aと係合するように構成される。仕切部材35を係合部35eが被係合部11aと係合する位置(閉止位置)にすると、リボン供給軸33が本体部31内に収容される。これにより、リボン供給軸33が、印字部15にインクリボンRを供給するリボン供給位置になる。
【0034】
このように、係合部35eと被係合部11aとが係合することで、リボン供給軸33がリボン供給位置になる閉止位置に仕切部材35が維持される。また、印字ユニット30とカバー11とが結合された状態となる。
【0035】
仕切部材35は、
図2に示す閉止状態において、媒体供給軸12からプラテンローラ20に向けての媒体搬送路と、リボン供給軸33からリボン巻取軸34に向けてのリボン搬送路の間で、これらを分け隔てる位置に配置される。この仕切部材35によって、印字媒体Mが印字部15に到達する前、すなわち印字部15の搬送方向上流側でインクリボンRと印字媒体Mとが接触しないように構成されている。特に、インクリボンRは薄いフィルムで構成されており、静電気等の影響によりインクリボンRが印字部15の搬送方向上流側で印字媒体Mが張り付くことを防止する。
【0036】
プリンタ100による印字を行う際は、カバー11は閉止状態とされ、且つ、仕切部材35の係合部35eとカバー11の被係合部11aとが係合した状態とされる。
【0037】
よって、カバー11を閉止状態から開放状態にすると、印字ユニット30がカバー11と一体となって揺動し、
図5に示すように、筐体10の開口部が開放される。
【0038】
これにより、プリンタ100への印字媒体Mのセットや筐体10内の各部のメンテナンスを行うことができる。
【0039】
さらに、
図5に示す状態から係合部35eと被係合部11aとの係合を解除して仕切部材35を筐体10側に向けて揺動させると、仕切部材35が
図6に示す開放位置になる。
【0040】
仕切部材35が開放位置になるのに伴い、リボン供給軸33及びリボン供給軸33に保持されたロール状のインクリボンRがリボン巻取軸34に対して相対的に移動し、印字媒体Mの排出口16側に露出する。
【0041】
これにより、本体部31が、筐体10の支持軸13を介して、カバー11から離反する方向に揺動し、リボン供給軸33がプリンタ100から着脱可能なリボン交換位置となり、インクリボンRの交換作業を行うことができる。このとき本体部31は、図示しない位置保持機構によって、
図6に示すように筐体10とカバー11とのそれぞれから離間したリボン交換位置で停止可能となっている。
【0042】
係合部35eと被係合部11aとの係合は、仕切部材35を所定トルク以上のトルクで筐体10側に揺動させると、係合部35e及び被係合部11aが弾性変形して解除される。
【0043】
なお、係合部35eと被係合部11aとの係合が解除されることで、印字ユニット30自体も、筐体10側に向けて所定の位置まで揺動する。所定の位置は、筐体10における支持軸13の近傍に設けられた揺動規制部(図示せず)と本体部31とが当接する位置である。
【0044】
揺動規制部による印字ユニット30の位置決めは、印字ユニット30を所定トルク以上のトルクで筐体10側に揺動させると、揺動規制部が弾性変形して本体部31が揺動規制部を乗り越えて解除される。
【0045】
また、
図2、
図3に示すように、仕切部材35におけるベース部35aの他端側には、搬送ガイド部35fが設けられる。搬送ガイド部35fは、
図2に示すように、印字ユニット30が印字位置にある場合に、反射センサ21と対向して反射センサ21との間に印字媒体Mの搬送路を形成する。
【0046】
反射センサ21は、所定の光を出射する発光部と、発光部から出射された光の印字媒体Mからの反射光を受光し、受光した光の強度に対応する電気信号を出力する受光部と、を有する光学センサである。
【0047】
反射センサ21は、印字媒体Mの印字が施される面とは反対側の面に所定の間隔で予め印刷されているアイマークを検出する。
【0048】
これにより、反射センサ21は、搬送方向における印字媒体Mの位置を検出することができる。
【0049】
なお、プリンタ100を印字可能な状態、つまり、
図2に示す状態にすると、自動的に仕切部材35が印字媒体Mの表面をガイドする状態となる。
【0050】
このように、仕切部材35によって印字媒体Mがガイドされるので、反射センサ21から一定の距離内で印字媒体Mが搬送されるようにするためのガイド部材を別途設ける必要がなく、ガイド部材に印字媒体Mを挿通する作業も不要となる。
【0051】
また、プリンタ100は、搬送方向における印字媒体Mの位置を検出する透過センサ22を備える。
【0052】
透過センサ22は、所定の光を出射する発光部としての発光ユニット22aと、発光ユニット22aから出射された光を受光し、受光した光の強度に対応する電気信号を出力する受光部としての受光ユニット22bと、を有するセンサである。
【0053】
例えば、印字媒体Mが、帯状の台紙に複数のラベルが所定の間隔で連続して仮着されたラベル連続体である場合は、隣り合う2つのラベルの間には、台紙のみの部分が存在する。
【0054】
ラベルが存在する部分と台紙のみの部分とでは、発光ユニット22aから出射された光の透過量が異なるので、受光ユニット22bが受光する光の強度が変化する。これにより、透過センサ22は、搬送方向における印字媒体Mの位置を検出することができる。
【0055】
本実施形態では、
図2、
図3に示すように、発光ユニット22aは、ベース部35aにおける印字媒体Mの搬送路とは反対側、つまり、ベース部35aの上面側に設けられる。また、ベース部35aには、発光ユニット22aから出射された光を通す貫通孔35gが形成されている。一方、受光ユニット22bは、
図2に示すように、搬送路を挟んで筐体10側に設けられる。
【0056】
ここで、印字媒体Mは、ロール状に巻回されたロール体MRとして媒体供給軸12に保持されている。ロール体MRはある程度の大きな質量を有する。
【0057】
このため、印字を行うためにプラテンローラ20を回転させて印字媒体Mの搬送を開始するとき、静止しているロール体MRの質量による慣性負荷により、印字媒体Mにかかる張力が急激に上昇する。印字媒体Mの搬送を停止(又は逆転)するとき、回転しているロール体MRの質量による慣性負荷により、印字媒体Mにかかる張力が急激に減少する。
【0058】
このように、慣性負荷による印字媒体Mの張力の急激な変化によって、印字媒体Mの搬送に不足や過剰が発生し、プラテンローラ20で印字媒体Mの滑りが発生して印字縮み等の印字不良が発生したり、印字媒体Mに緩みや曲がり、しわが発生したりする可能性があるという問題があった。
【0059】
特に、印字媒体Mはプラテンローラ20のみにより搬送が行われるので、ロール体MRとプラテンローラ20との間で印字媒体Mの張力の変化を抑制するような機構を持たない場合には、慣性負荷による印字媒体Mの搬送に不足や過剰が発生しやすい。
【0060】
ここで、例えば、ロール体MRとプラテンローラ20との間の適所にローラを備え、バネ等により印字媒体Mを付勢して、印字媒体Mの張力の変化を抑制するような仕組みを付与することもできる。しかしながら、新たにローラを追加することにより、プリンタ100の重量やサイズが増大し、部品点数、加工工数の増加によるコストが増大するという問題が新たに生じる。
【0061】
そこで、本発明の実施形態では、以下に説明するような特徴的な構成を備えることで、サイズや重量、コストを増大することなく、プラテンローラ20での印字媒体Mの滑りや、印字媒体Mの緩みや曲がり、しわの発生を防止するように構成した。
【0062】
図2及び
図4を参照して、印字ユニット30の仕切部材35には、仕切部材35の印字媒体M側に、印字媒体Mへと向かって突出する印字媒体ダンパ50が備えられる。
【0063】
印字媒体ダンパ50は、押さえ部51と付勢機構52とから構成される。押さえ部51は、湾曲して形成されている仕切部材35の湾曲部の頂点から外側に突出するよう備えられる。付勢機構52は、押さえ部51を印字媒体M側に付勢する。
【0064】
これらにより構成される印字媒体ダンパ50は、仕切部材35に形成されたダンパ取付部55に取り付けられる。ダンパ取付部55は、仕切部材35の湾曲部分から先端にかけて肉厚に形成され、印字媒体ダンパ50及び透過センサ22の発光ユニット22aが固定される。ダンパ取付部55は、その肉圧がインクリボンRの動きを妨げないような形状に形成される。
【0065】
印字媒体ダンパ50は、ダンパ取付部55において、印字媒体Mの幅方向の略中央となる位置に配置される。
【0066】
押さえ部51は、略円筒形状を有し、その先端部、すなわち印字媒体Mに接触する部分は、摺動抵抗が小さくなるように、平面かつ面取された形状とされる。押さえ部51は、その表面を摺動して通過する印字媒体Mに対する摺動抵抗が小さい材質、例えばABS樹脂やPOM樹脂により構成される。
【0067】
付勢機構52は、押さえ部51を印字媒体M側に突出する方向に付勢する。付勢機構52は、例えばコイルバネによって構成される。付勢機構52による押さえ部51の付勢力は、押さえ部51を摺動する印字媒体Mの搬送を妨げない程度の付勢力とする。また、付勢機構52による押さえ部51の付勢力は、印字媒体Mの張力の変化に追従して、押さえ部51の突出長さが変化するように構成される。
【0068】
このような構成により、印字媒体ダンパ50が印字媒体Mを仕切部材35から離間させる方向に付勢することで、印字媒体Mの張力の急激な変化に追従して押さえ部51の突出長さが変化する。これにより、印字媒体Mの張力の急激な変化を抑制することができる。
【0069】
より具体的には、印字媒体Mは、湾曲する仕切部材35の表面に沿って印字ユニット30へと搬送される。すなわち、この湾曲部分では、印字媒体Mの張力は、湾曲する印字媒体Mの接線に対して垂直方向の力として仕切部材35に作用する。印字媒体ダンパ50は、この垂直方向の力に対して付勢力を働かせる。
【0070】
例えば、印字媒体Mの張力が大きくなる場合には、印字媒体Mが印字媒体ダンパ50の付勢力に抗して押さえ部51を縮退させることで、張力の上昇が緩和される。
【0071】
以上述べたように、本実施形態によれば、印字媒体Mに印字を行う印字ユニット30と、印字ユニット30に供給される印字媒体MとインクリボンRとの間を仕切る仕切部材35と、を備え、仕切部材35は、印字媒体M側に突出して、印字媒体Mが仕切部材35から離間する方向に付勢する印字媒体ダンパ50を有する。
【0072】
これによれば、印字媒体ダンパ50が、印字媒体Mを付勢して、印字媒体Mの張力の急激な変化に追従させることで、プリンタ100のサイズや重量、コストを増大させることなく、印字媒体Mの慣性負荷による張力の急激な変化を抑制する。これにより、プラテンローラ20で印字媒体Mの滑りが発生して印字不良となったり、印字媒体Mに緩みや曲がり、しわが発生したりすることを防止することができる。
【0073】
また、印字媒体ダンパ50は、印字媒体Mを押圧する押さえ部51と、押さえ部51を印字媒体M側に付勢する付勢機構52と、を備える。
【0074】
これにより、簡易な構成によって、印字媒体Mの慣性負荷による張力の急激な変化を抑制することができるので、印字媒体ダンパ50を追加することによるプリンタ100のコストの増大を最小限に抑えることができる。
【0075】
また、印字媒体ダンパ50は、仕切部材35において、印字媒体Mの幅方向の略中央部分を付勢する。
【0076】
これにより、最小限の構成によって、印字媒体Mの慣性負荷による張力の急激な変化を抑制することができるので、印字媒体ダンパ50を追加することによるプリンタ100のコストの増大を最小限に抑えることができる。
【0077】
さらに、ロール状に巻回されている印字媒体Mは、ロール形状に従って巻き癖が付いていることが多い。このため、特に印字媒体Mを逆転方向に搬送するとき、ロール体MRの手前で印字媒体Mが搬送方向に山折りに曲がる可能性がある。
【0078】
これに対して、印字媒体ダンパ50は、印字媒体Mの幅方向の中心付近に存在するので、結果として印字媒体Mの幅方向略中心が谷折りとなる方向に付勢される。これにより、印字媒体Mの巻き癖が修正され、印字媒体Mが搬送方向に折れ曲がることを防止できるという効果も有する。
【0079】
また、仕切部材35は、印字媒体Mを検出する透過センサ22を備え、印字媒体ダンパ50は、仕切部材35において、透過センサ22が備えられている箇所近辺に備えられる。
【0080】
これにより、仕切部材35の既存の構成である透過センサ22付近で、仕切部材35の厚さ方向が大きくなる箇所付近に、印字媒体ダンパ50を備えたので、仕切部材35の構造を大きく変更することなく、また、仕切部材35により仕切られるインクリボンRの動作に影響を与えることなく、印字媒体ダンパ50を備えることができ、プリンタ100の重量やサイズが増大することがない。
【0081】
また、印字媒体ダンパ50の押さえ部51は、印字媒体Mに接する部分が低摺動抵抗の素材で形成されている。例えば、押さえ部51の印字媒体Mに接する部分の摺動抵抗は、印字媒体Mを搬送する目的で設けられるプラテンローラ20の表面の摺動抵抗よりも小さく構成される。
【0082】
これにより、印字媒体Mの搬送を妨げることなく、印字媒体Mの慣性負荷による張力の急激な変化を抑制することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0084】
例えば、上記実施形態のプリンタ100は、ただ一つの印字媒体ダンパ50を備えたが、複数の印字媒体ダンパ50を備えてもよい。また、付勢機構52は、コイルバネではなく、板バネであったり、ゴム等の弾性部材で構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
100 プリンタ
10 筐体
11 カバー
11a 被係合部
12 媒体供給軸
13 支持軸
14 レバー
15 印字部
16 排出口
17 カッタ
18 透過センサ
18a 発光ユニット
18b 受光ユニット
19 操作ユニット
20 プラテンローラ
21 反射センサ
22 透過センサ
22a 発光ユニット(発光部)
22b 受光ユニット(受光部)
30 印字ユニット
31 本体部
32 サーマルヘッド
33 リボン供給軸
34 リボン巻取軸
35 仕切部材
35a ベース部
35b 軸部
35c 支持部
35d 支持部
35e 係合部
35f 搬送ガイド部
35g 貫通孔
36 ガイド軸
37 ガイド軸
40 コントローラ
50 印字媒体ダンパ
51 押さえ部
52 付勢機構
55 ダンパ取付部
M 印字媒体
R インクリボン
MR ロール体