(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/021 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
F01N3/021
(21)【出願番号】P 2018057197
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰吾
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-159539(JP,A)
【文献】特開平10-159540(JP,A)
【文献】実開平03-047412(JP,U)
【文献】実開平04-047119(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0127637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00~ 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排気された排気ガスが通過する排気管内に設けられ、前記排気ガスに含まれる粒子状物質を捕捉するフィルタと、
前記フィルタの上流側に設けられ、前記フィルタに捕捉された粒子状物質が落下する落下部と、
前記フィルタの真下から退避させた位置に設けられ、前記排気管に接触し、前記落下部から導入された前記粒子状物質を貯留する貯留部と、
前記落下部と前記貯留部とを連通する連通管と、
前記フィルタおよび前記貯留部に酸素を供給する再生処理実行部と、
を備える排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記連通管の流路断面積は、前記排気管より小さい請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記落下部には、1または複数の溝部が形成される請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記フィルタを振動させる振動付与部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排気された排気ガスに含まれる煤等の粒子状物質を捕捉して取り除く車両用のフィルタとして、DPF(Diesel Particulate Filter)やGPF(Gasoline Particulate Filter)が知られている。このようなフィルタは、使用を継続するに従って粒子状物質によって目詰まりしてしまう。そこで、フィルタを昇温させることで捕捉された煤を燃焼させてフィルタから除去する再生処理が行われる。
【0003】
また、フィルタを上流側から下流側に向けて上方に傾斜させることで、フィルタに捕捉された粒子状物質を自重で落下させる技術も開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術では、フィルタの上流開口の鉛直下方(真下)に収容部が設けられており、フィルタから落下した粒子状物質は収容部に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、収容部の真上にフィルタが配されているため、再生処理の際に、収容部に収容された煤が燃焼して、フィルタに熱損傷を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、フィルタの熱損傷を低減することが可能な排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の排気ガス浄化装置は、エンジンから排気された排気ガスが通過する排気管内に設けられ、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕捉するフィルタと、フィルタの上流側に設けられ、フィルタに捕捉された粒子状物質が落下する落下部と、フィルタの真下から退避させた位置に設けられ、排気管に接触し、落下部から導入された粒子状物質を貯留する貯留部と、落下部と貯留部とを連通する連通管と、フィルタおよび貯留部に酸素を供給する再生処理実行部と、を備える。
【0008】
また、連通管の流路断面積は、排気管より小さくてもよい。
【0009】
また、落下部には、1または複数の溝部が形成されてもよい。
【0010】
また、フィルタを振動させる振動付与部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィルタの熱損傷を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】エンジンシステムの構成を示す概略図である。
【
図2】排気ガス浄化装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、エンジンシステム100の構成を示す概略図である。なお、
図1中、信号の流れを破線の矢印で示す。
図1に示すように、エンジンシステム100には、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータでなるECU(Engine Control Unit)110が設けられ、ECU110によりエンジン120全体が統括制御される。ただし、以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。また、ここでは、エンジン120として、ガソリンエンジンを例に挙げて説明する。
【0015】
エンジン120は、複数の気筒122aを有する多気筒エンジンであり、シリンダブロック122に形成された各気筒122aの吸気ポート124に、吸気マニホールド126が連通される。吸気マニホールド126の集合部には、エアチャンバ128を介して吸気管130が連通される。吸気管130の上流側には、エアクリーナ132が設けられる。吸気管130におけるエアクリーナ132の下流側には、スロットル弁134が設けられる。
【0016】
また、エンジン120のシリンダブロック122に形成された各気筒122aの排気ポート136には、排気マニホールド138が連通される。排気マニホールド138の集合部には、排気管140を介してマフラー142が連通される。排気管140には、後述する排気ガス浄化装置200が設けられる。以下、排気マニホールド138の集合部と、排気ガス浄化装置200を構成するフィルタユニット220(後述)とを連通する排気管140を上流排気管140aと呼び、フィルタユニット220とマフラー142とを連通する排気管140を下流排気管140bと呼ぶ場合がある。なお、上流排気管140aおよび下流排気管140bは、実質的に内径が等しい。
【0017】
エンジン120には、点火プラグ148が、その先端が燃焼室146内に位置するように各気筒122aそれぞれに対して設けられる。また、各気筒122aの燃焼室146には、インジェクタ150が設けられる。
【0018】
エンジンシステム100には、吸気管130におけるエアクリーナ132とスロットル弁134との間に、エンジン120に流入する吸入空気量を検出する吸入空気量センサ160、および、エンジン120に流入する空気(外気)の温度を検出する吸気温センサ162が設けられる。また、エンジンシステム100には、スロットル弁134の開度を検出するスロットル開度センサ164が設けられる。また、エンジンシステム100には、クランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ166、アクセル(図示せず)の開度を検出するアクセル開度センサ168が設けられる。
【0019】
これら各センサ160~168は、ECU110に接続されており、検出値を示す信号をECU110に出力する。
【0020】
ECU110は、各センサ160~168から出力された信号を取得してエンジン120を制御する。ECU110は、エンジン120を制御する際、信号取得部180、目標値導出部182、空気量決定部184、噴射量決定部186、スロットル開度決定部188、点火時期決定部190、駆動制御部192として機能する。
【0021】
信号取得部180は、各センサ160~168が検出した値を示す信号を取得する。目標値導出部182は、クランク角センサ166から取得したクランク角を示す信号に基づいて現時点のエンジン回転数を導出する。また、目標値導出部182は、導出したエンジン回転数、および、アクセル開度センサ168から取得したアクセル開度を示す信号に基づき、予め記憶されたマップを参照して目標トルクおよび目標エンジン回転数を導出する。
【0022】
空気量決定部184は、目標値導出部182により導出された目標エンジン回転数および目標トルクなどに基づいて、各気筒122aに供給する目標空気量を決定する。スロットル開度決定部188は、空気量決定部184により決定された各気筒122aの目標空気量の合計量を導出し、合計量の空気を外部から吸気するための目標スロットル開度を決定する。
【0023】
噴射量決定部186は、目標値導出部182により導出された目標エンジン回転数および目標トルク、空気量決定部184により決定された各気筒122aの目標空気量などに基づいて、各気筒122aに供給する燃料の目標噴射量を決定する。また、噴射量決定部186は、決定した目標噴射量の燃料をエンジン120の吸気行程あるいは圧縮行程でインジェクタ150から噴射させるために、クランク角センサ166により検出されるクランク角を示す信号に基づいて、各インジェクタ150の目標噴射時期および目標噴射期間を決定する。
【0024】
点火時期決定部190は、目標値導出部182により導出された目標エンジン回転数や目標トルク、クランク角センサ166により検出されるクランク角を示す信号などに基づいて、各気筒122aでの点火プラグ148の目標点火時期を決定する。
【0025】
駆動制御部192は、スロットル開度決定部188により決定された目標スロットル開度でスロットル弁134が開口するように、スロットル弁用アクチュエータ(図示せず)を駆動する。また、駆動制御部192は、噴射量決定部186により決定された目標噴射時期および目標噴射期間でインジェクタ150を駆動することで、インジェクタ150から目標噴射量の燃料を噴射させる。また、駆動制御部192は、点火時期決定部190により決定された目標点火時期で点火プラグ148を点火させる。
【0026】
このようにして、燃焼室146で燃料が燃焼されたことにより生じた排気ガスは、排気管140を通じて外部に排出される。排気ガスには、炭化水素(HC:Hydro Carbon)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)や、煤等の粒子状物質が含まれるため、これらを除去する必要がある。そこで、排気管140に排気ガス浄化装置200を設けておき、排気ガス浄化装置200において、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、粒子状物質を除去する。
【0027】
(排気ガス浄化装置200)
図2は、排気ガス浄化装置200の構成を示す概略図である。なお、
図2中、エンジン120が搭載される車両の車体を一点鎖線で示す。
図2に示すように、排気ガス浄化装置200は、三元触媒(Three-Way Catalyst)210と、フィルタユニット220と、振動付与部250とを含む。本実施形態において、排気ガス浄化装置200は、車体の下方に設けられる。
【0028】
三元触媒210は、上流排気管140a内に設けられる。三元触媒210は、例えば、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒成分を含む。三元触媒210は、排気ポート136から排出された排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を除去する。
【0029】
フィルタユニット220は、フィルタ収容部222(排気管)と、GPF(フィルタ)224と、連通管226と、貯留部228とを含む。フィルタ収容部222は、上流排気管140aと下流排気管140bとを接続する。上流排気管140aおよびフィルタ収容部222は、これらの連通箇所222aがフィルタ収容部222の流路断面の中央より車体から離隔した位置となるように接続される。また、フィルタ収容部222および下流排気管140bは、これらの連通箇所222bがフィルタ収容部222の流路断面の中央より車体側となるように接続される。なお、上流排気管140a、フィルタユニット220、下流排気管140bは、車体の底面(水平方向)に沿って配されており、流路断面は、鉛直方向(上流排気管140aの延在方向と直交する方向)の断面である。
【0030】
GPF224は、フィルタ収容部222内に設けられる。つまり、GPF224は、排気管140内における三元触媒210の下流側に設けられる。GPF224は、排気ポート136から排気された排気ガス中の粒子状物質(煤)を捕捉する。なお、GPF224は、不図示のストッパに支持される。
【0031】
図3は、GPF224を説明する図である。
図3(a)は、GPF224の斜視図である。
図3(b)はGPF224の正面図である。
図3(c)は、GPF224のXZ断面図である。なお、
図3(a)中、排気ガスの流れを白抜き矢印で示し、
図3(c)中、排気ガスの流れを実線の矢印で示す。また、本実施形態の
図3では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸(排気ガスの流れ方向)を図示の通り定義している。さらに、
図3(a)~
図3(c)において、理解を容易にするために、外筒312に対してセル316を大きく示す。
【0032】
図3(a)~
図3(c)に示すように、GPF224は、ウォールフロー型のフィルタである。GPF224は、フィルタ部310と、上流プラグ部320と、下流プラグ部330とを含む。
【0033】
フィルタ部310は、円筒形状の外筒312と、排気ガスを通過させるフィルタ壁314とを含む。外筒312は、例えば、セラミックで構成される。
【0034】
フィルタ壁314は、例えば、セラミックで構成される。フィルタ壁314には、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕捉しつつ排気ガスを通過させる孔が複数形成されている。フィルタ壁314は、
図3中、XZ面と平行な面上に設けられるとともに、Z軸方向に延在する第1壁314aと、YZ面と平行な面上に設けられるとともに、Z軸方向に延在する第2壁314bとを含む。そして、
図3(b)に示すように、2つの第1壁314aと、2つの第2壁314bに囲繞された空間、もしくは、第1壁314a、第2壁314b、外筒312に囲繞された空間がセル316として形成される。
【0035】
したがって、複数のセル316は、外筒312(フィルタ部310)内において、外筒312の軸方向(
図3中、Z軸方向)に延在するとともに、軸方向と直交する方向(
図3中、X軸方向およびY軸方向)に並列して配される。また、GPF224では、第1セル群に分類されるセル316Aと、第2セル群に分類されるセル316Bとが交互に配置される。つまり、セル316Aとセル316Bとは隣接して交互に配される。
【0036】
上流プラグ部320は、
図3(c)に示すように、セル316のうち、第1セル群に分類されるセル316Aの上流側の上流開口318aを封止する。上流プラグ部320は、例えば、セラミックで構成される。
【0037】
下流プラグ部330は、
図3(c)に示すように、セル316A以外の(第2セル群に分類される)セル316Bの下流側の下流開口318bを封止する。下流プラグ部330は、例えば、セラミックで構成される。
【0038】
また、本実施形態においてGPF224は、粒子状物質を捕捉する機能を有するとともに、排気ガスを浄化する三元触媒としての機能とOSC(Oxygen Storage capacity)としての機能を有する。具体的に説明すると、GPF224を構成するフィルタ壁314には三元触媒を構成する触媒成分およびOSC材が担持されている。
【0039】
このように、排気ガス浄化装置200は、排気管140にGPF224を備える構成により、GPF224に粒子状物質を捕捉(堆積)させて、排気ガスから除去することができる。ただし、GPF224に粒子状物質が堆積するに従って、GPF224が目詰まりを起こし、圧力損失が大きくなってしまう。
【0040】
そこで、排気ガス浄化装置200は、GPF224に捕捉された粒子状物質を、GPF224の上流側に落下させる。具体的に説明すると、
図2に示すように、GPF224は、フィルタ収容部222内を上部空間Uと下部空間Dとに仕切る。ここで、上部空間Uは、フィルタ収容部222内における下流排気管140bと連通する空間であり、車体側に設けられる。下部空間Dは、フィルタ収容部222内における上流排気管140aと連通する空間であり、車体と離隔する位置に設けられる。また、GPF224は、上部空間Uにセル316の下流開口318bが臨み、下部空間Dにセル316の上流開口318aが臨むように、フィルタ収容部222内に設けられる。したがって、排気ガスは、GPF224の上流開口318aから下流開口318bに向かって、つまり、下方から上方へ向かって上昇流となって流れることになる。
【0041】
さらに、本実施形態において、GPF224は、上流排気管140aおよび下流排気管140bの軸方向と、外筒312の軸方向とが交差するようにフィルタ収容部222内に設けられる。例えば、GPF224は、外筒312の軸方向が鉛直方向となるように、または、外筒312の軸方向が鉛直方向から下流側に0度を上回り45度未満傾斜するように、フィルタ収容部222内に設けられる。つまり、上流開口318aは、フィルタ収容部222の底面(落下部)230に臨んで設けられる。したがって、エンジン120が停止しており、排気ガスがGPF224を通過しないとき、GPF224に捕捉された粒子状物質は、自重で底面230に落下することとなる。
図2に示すように、底面230は、上流排気管140aから連通管226に向かうに従って鉛直下方に傾斜している。
【0042】
図4は、フィルタ収容部222の底面230を説明する図であり、
図4(a)は、底面230の上面視図を示し、
図4(b)は、
図4(a)のIVb線断面図である。なお、
図4中、理解を容易にするためにGPF224を破線で示す。
【0043】
図4(a)、
図4(b)に示すように、底面230には、下方に陥没した溝部240が形成されている。溝部240は、第1溝部240aおよび第2溝部240bを含む。第1溝部240aは、上流排気管140aから連通管226に向かって延在している。本実施形態において、第1溝部240aは、複数(3つ)設けられている。第2溝部240bは、第1溝部240aに接続される。第2溝部240bの底面は、連通管226の底面に連続する。
【0044】
また、
図4(b)に示すように、底面230は、フィルタ収容部222の側面230aから第1溝部240aに向かって下方に傾斜している。さらに、隣り合う第1溝部240a間には頂部240abが形成されており、底面230は、頂部240abから第1溝部240aに向かって鉛直下方に傾斜している。
【0045】
したがって、
図4(b)中、実線の矢印で示すように、GPF224から脱落し底面230に落下した粒子状物質は、第1溝部240aに導かれることになる。したがって、排気ガスの流速が大きい箇所(
図4(b)中、一点鎖線で囲った領域)における粒子状物質の滞留を抑制することができる。これにより、排気ガスによって舞い上げられる粒子状物質の量を低減でき、GPF224へ再導入される粒子状物質の量を削減することが可能となる。
【0046】
また、上記したように、底面230は、上流排気管140aから連通管226に向かうに従って鉛直下方に傾斜している。つまり、第1溝部240aは、排気管140から連通管226に向かうに従って鉛直下方に傾斜している。したがって、第1溝部240aに導かれた粒子状物質は、自重で第2溝部240bに導かれ、第2溝部240b、連通管226を介して、貯留部228に到達することになる。また、粒子状物質は、フィルタ収容部222から連通管226(貯留部228)に向かう排気ガスの流れに随伴されて、貯留部228に到達する。
【0047】
そして、GPF224における粒子状物質の堆積量が所定の閾値以上になると、ECU110は、GPF224に酸素を供給し、かつ、GPF224を所定の再生温度(例えば、300℃以上400℃以下)まで上昇させて、粒子状物質(煤)を燃焼させる再生処理を実行する。この際、酸素は、貯留部228にも導入され、貯留部228に貯留された粒子状物質も燃焼する。
【0048】
具体的に説明すると、
図2に示すように、貯留部228は、下流排気管140bに接触している。このため、貯留部228と下流排気管140bとで熱交換がなされ、貯留部228は、再生温度まで上昇する。また、貯留部228内の酸素濃度と、フィルタ収容部222(上流排気管140a)内の酸素濃度との差(酸素分圧の差)により、フィルタ収容部222から貯留部228に酸素が拡散する。つまり、貯留部228内の酸素濃度は、フィルタ収容部222内より低い。このため、酸素は、フィルタ収容部222から貯留部228に拡散される。これにより、貯留部228に貯留された粒子状物質が燃焼することになる。
【0049】
このように、GPF224の鉛直下方(真下)から退避させた位置に貯留部228を設けることにより、貯留部228において粒子状物質が燃焼することによって生じる熱(炎)がGPF224に直接伝達してしまう事態を回避することができる。したがって、GPF224の熱損傷を低減することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態において、連通管226の流路断面積は、上流排気管140aおよびフィルタ収容部222より小さい。これにより、連通管226を通じて貯留部228に導かれる酸素の量を抑制することができる。したがって、貯留部228において粒子状物質が急激に燃焼してしまう事態を回避することが可能となる。このため、GPF224の熱損傷を低減することができる。
【0051】
振動付与部250は、GPF224を振動させる。
図5は、振動付与部250を説明する図である。
図5(a)は、本実施形態の振動付与部250を説明する図であり、
図5(b)および
図5(c)は、変形例の振動付与部260、270を説明する図である。
なお、
図5中、車体を一点鎖線で示す。
【0052】
図5(a)に示すように、振動付与部250は、車体と下流排気管140bとを接続する。振動付与部250は、本体部252と、弾性部254と、移動部256とを含む。本体部252は、円筒形状であり、一端(上端)が車体に接続される。本体部252の他端(下端)には、開口252aが形成される。本体部252は、内部空間を上下方向に二分割する仕切板252bが設けられる。弾性部254は、バネで構成される。弾性部254は、本体部252の内部空間における開口252aと仕切板252bとの間に設けられる。
【0053】
移動部256は、棒部256aと、係止部256bと、接続部256cとを含む。棒部256aは、棒部材である。係止部256bは、棒部256aの一端(上端)に設けられる。係止部256bは、本体部252の開口252aより大径である。係止部256bは、本体部252の内部空間のうち、開口252aと弾性部254との間に設けられる。係止部256bは、弾性部254によって鉛直下方に付勢される。接続部256cは、棒部256aの他端(下端)に設けられ、下流排気管140bに接続される。
【0054】
したがって、車体の振動等によって、車両が走行している際に車体が下流排気管140bに近接する方向に移動すると、仕切板252bによって弾性部254が縮小する。この状態から下流排気管140bが車体から離隔する方向に移動すると、仕切板252bによって弾性部254が伸長し、係止部256bが本体部252の下端に衝突する。つまり、接続部256cの下方向の移動が規制される。これにより、振動が生じ、振動は、下流排気管140b、フィルタ収容部222を通じてGPF224に付与される。
【0055】
したがって、GPF224に排気ガスが通過しないとき、例えば、車両の走行中であってエンジンが停止しているときや、ハイブリッド車においてモータのみで走行しているときに、GPF224に振動が付与され、GPF224から効率よく粒子状物質を落下させることができる。
【0056】
また、変形例の振動付与部260は、本体部262と、弾性部264と、移動部256とを含む。本体部262は、円筒形状であり、一端(上端)が車体に接続される。本体部262の他端(下端)には、開口262aが形成される。弾性部264は、ゴムやエラストマで構成される。弾性部264は、本体部262の内部空間に設けられる。弾性部264の一端(上端)は、接続棒262bによって車体に接続される。弾性部264の他端(下端)は、移動部256の係止部256bに接続される。
【0057】
このように、変形例の振動付与部260においても、GPF224に振動を付与することができる。
【0058】
また、変形例の振動付与部270は、本体部272と、第1弾性部274と、第2弾性部276と、移動部256とを含む。本体部272は、平板形状であり、2つの穴272a、272bが形成されている。穴272a、272bは、上下方向に離隔しており、穴272bは、穴272aの下方に位置する。
【0059】
第1弾性部274、第2弾性部276は、ゴムやエラストマで構成される。第1弾性部274は、第2弾性部276よりも、弾性率が低い(柔らかい)。第1弾性部274は、穴272a、272bの上部に設けられる。穴272aに設けられた第1弾性部274は、接続棒272cによって車体に接続される。第2弾性部276は、穴272a、272bの下部に設けられる。穴272bに設けられた第2弾性部276は、移動部256の一端(上端)に接続される。
【0060】
このように、変形例の振動付与部270は、上方向の力を減衰させるとともに、下方向に力を伝えることができ、GPF224に振動を付与することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態にかかる排気ガス浄化装置200は、粒子状物質を貯留する貯留部228を、GPF224の鉛直下方(真下)から退避させた位置に設けることにより、GPF224の熱損傷を低減することが可能となる。
【0062】
(溝部の変形例)
図6は、溝部440の変形例を説明する図であり、
図6(a)は、底面230の上面視図を示し、
図6(b)は、
図6(a)のVIb線断面図である。なお、
図6中、理解を容易にするためにGPF224を破線で示す。
【0063】
図6(b)に示すように、底面230には、上流排気管140aから連通管226に向かって延在した頂部440abが形成されている。底面230は、フィルタ収容部222の側面230aから頂部440abに向かって鉛直上方に傾斜している。したがって、底面230の両端に、上流排気管140aから連通管226に向かって延在した第1溝部440aが形成されることになる。つまり、第1溝部440aは、フィルタ収容部222の側面230aに沿って形成される。
【0064】
これにより、
図6(b)中、実線の矢印で示すように、GPF224から脱落し底面230に落下した粒子状物質は、第1溝部440aに導かれることになる。したがって、変形例の溝部440においても、排気ガスの流速が大きい箇所(
図6(b)中、一点鎖線で囲った領域)における粒子状物質の滞留を抑制することができる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
なお、上記実施形態において、GPF224としてウォールフロー型のフィルタを例に挙げて説明した。しかし、GPF224は、粒子状物質を捕捉できれば構成に限定はない。
【0067】
また、上記実施形態において、GPF224が触媒を含む構成を例に挙げて説明したが、GPF224は粒子状物質を捕捉できればよく、触媒を含まずともよい。
【0068】
また、上記実施形態において、連通管226の流路断面積が、排気管140より小さい構成を例に挙げて説明した。しかし、連通管226の流路断面積に限定はない。連通管226の流路断面積は、排気管140やフィルタ収容部222の流路断面積と等しくてもよいし、大きくてもよい。
【0069】
また、上記実施形態および変形例において、溝部240、440が複数形成される構成を例に挙げて説明した。しかし、溝部240、440の数に限定はなく、1つであってもよい。
【0070】
また、上記実施形態および変形例において、排気ガス浄化装置200が、振動付与部250、260、270を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、振動付与部250、260、270は必須の構成ではない。
【0071】
また、上記実施形態において、フィルタ収容部222と下流排気管140bとの連通箇所222bは、車体側に位置し、上流排気管140aとフィルタ収容部222との連通箇所222aは、連通箇所222bよりも車体から離隔している場合を例に挙げて説明した。しかし、連通箇所222bは、連通箇所222aよりも車体から離隔していてもよい。また、連通箇所222aと連通箇所222bとは同じ位置(車体からの距離が同じ)、つまり、上流排気管140aと下流排気管140bとが同軸であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、エンジン120としてガソリンエンジンを例に挙げて説明した。しかし、排気ガス浄化装置200は、エンジンの種類に限らず(例えば、ディーゼルエンジン)、エンジンから排気された排気ガスに含まれる粒子状物質を取り除くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、排気ガス浄化装置に利用できる。
【符号の説明】
【0074】
140a 上流排気管
140b 下流排気管
200 排気ガス浄化装置
222 フィルタ収容部(排気管)
230 底面(落下部)
224 GPF(フィルタ)
226 連通管
228 貯留部
240、440 溝部
250、260、270 振動付与部