(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】定温保管輸送容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/18 20060101AFI20220509BHJP
B65D 19/18 20060101ALI20220509BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B65D81/18 B
B65D81/18 F
B65D19/18
F25D23/06 302B
(21)【出願番号】P 2018065564
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】591244878
【氏名又は名称】玉井化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 寿広
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正忠
(72)【発明者】
【氏名】関谷 由佳
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3182836(JP,U)
【文献】特表2007-523803(JP,A)
【文献】特開2010-116209(JP,A)
【文献】特開平09-315430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
B65D 19/18
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトの爪を挿入するための差込溝が形成された底板部
と、
側壁部と、
天板部と、
互いに隣接する前記側壁部および前記天板部のうち、前記側壁部が前記天板部の外側と内側との間を摺動する、あるいは互いに隣接する2つの前記側壁部のうち、一方の側壁部が他方の側壁部の外側と内側との間を摺動するように設けられた摺動嵌合部と、を備えたことを特徴とす
る定温保管輸送容器。
【請求項2】
前記差込溝は、その内壁面に設けられた第1の保護部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の定温保管輸送容器。
【請求項3】
天板部と、
少なくとも前記天板部を覆う第2の保護部材と、を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の定温保管輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定温保管輸送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、医療機器、検体、臓器及び化学物質並びに食品等の物品の中には、輸送や保管の際に品質を保持するために、所定温度範囲内で保温又は保冷を必要とするものがある。従来、このような温度管理が必要な物品(以下、「温度管理対象物品」という。)を保温又は保冷する方法として、断熱性を有する輸送容器内に、予め凝固又は融解させた蓄熱材を収納配置して前記物品を収容する方法が知られている。この方法では、蓄熱材の融解潜熱を利用して保温又は保冷している。
【0003】
このような温度管理対象物品の保温又は保冷に用いられる定温保管輸送容器は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された定温保管輸送容器は、ハンドリフトやフォークリフトによる輸送用パレットの寸法に合わせた底板で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2014/125878号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された定温保管輸送容器は、輸送または返送時における、荷役作業時にフォークリフトでの作業が必要となるため、別途輸送用パレットを用意する必要があり、作業性の面で改善の余地が残されている。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、輸送用パレットに底板を載置し、その後に、底板に対して、4つの側壁部を組み付ける。このため、フォークリフトによる荷役作業のために、輸送用パレットに底板を載置する工程が余分に増加する。また、パレットを用いて定温保管輸送容器を搬送する場合、フォークリフトに掛かる荷重は、パレットの重量分だけ大きくなる。さらに、輸送用パレットの寸法に合わせた容器設定が必要になり、定温保管輸送容器の設計自由度が低い。それゆえ、このようなことに起因して、フォークリフトによる荷役作業の作業性が悪くなる。
【0007】
本発明の一態様は、容器設計の自由度が輸送用パレットに左右されず、荷役作業の作業性が向上した定温保管輸送容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る定温保管輸送容器は、フォークリフトの爪を挿入するための差込溝が形成された底板部を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の態様2に係る定温保管輸送容器は、態様1において、前記差込溝は、その内壁面に設けられた第1の保護部材を備えていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の態様3に係る定温保管輸送容器は、態様1また2において、天板部と、少なくとも前記天板部を覆う第2の保護部材と、を備えたことが好ましい。
【0011】
また、本発明の態様4に係る定温保管輸送容器は、態様1~3において、側壁部と、天板部と、互いに隣接する前記側壁部および前記天板部のうち、前記側壁部が前記天板部の外側と内側との間を摺動する、あるいは互いに隣接する2つの前記側壁部のうち、一方の側壁部が他方の側壁部の外側と内側との間を摺動するように設けられた摺動嵌合部と、を備えたことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様1~4によれば、容器設計の自由度が輸送用パレットに左右されず、定温保管輸送容器の荷役作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の概略構成を示し、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の底板部の概略構成を示す図であり、(a)は、底板部をY方向から見た側面図であり、(b)は、底板部をX方向から見た側面図であり、(c)は、底板部を上側から見た上面図であり、(d)は、底板部を下側から見た下面図である。
【
図5】複数の方向に延びた差込溝が形成された底板部の構成例を示す図であり、(a)は、底板部をY方向から見た側面図であり、(b)は、底板部をX方向から見た側面図であり、(c)は、底板部を上側から見た上面図であり、(d)は、底板部を下側から見た下面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の変形例の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図7】
図6に示す定温保管輸送容器の概略構成を示し、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係る定温保管輸送容器の概略構成を示す側面図であり、(a)は、
図1~3に示された定温保管輸送容器に基づく実施形態を示し、(b)は、
図6および
図7に示された定温保管輸送容器に基づく実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100の概略構成を示す分解斜視図である。
図2は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100の概略構成を示し、
図2の(a)は側面図であり、
図2の(b)は上面図である。また、
図3は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100の概略構成を示す斜視図である。
【0015】
図1に示されるように、定温保管輸送容器100は、温度管理対象物品を収納する矩形箱状の容器であり、4側面のうち1側面が開口した容器本体Xと、容器本体Xの側面の開口を閉塞する閉塞側壁部41とから構成されている。容器本体Xは、天板部11と、側壁部21および22、底板部31、並びに対向側壁部42とにより構成されている。対向側壁部42は、閉塞側壁部41と対向する位置にある側壁を構成している。天板部11、側壁部21および22、底板部31、並びに、閉塞側壁部41および対向側壁部42は、断熱材からなり、平面視矩形形状である。ここで、底板部31の平面視矩形形状を構成する直交する2辺において、一方の辺が延びる方向をX方向とし、他方の辺が延びる方向をY方向とする。そして、X方向およびY方向の両方に垂直な方向をZ方向とする。なお、
図2においては、Z方向は、底板部31の厚さ方向または鉛直方向であるともいえる。
【0016】
定温保管輸送容器100では、側壁部21および22は互いにX方向に対向するように配置さる一方、閉塞側壁部41および対向側壁部42は互いにY方向に対向するように配置されている。また、天板部11および底板部31は、互いにZ方向に対向するように配置されている。
【0017】
天板部11および底板部31はそれぞれ、側壁部21、側壁部22、閉塞側壁部41および対向側壁部42と分離可能な矩形状板材により構成されている。また、側壁部21、側壁部22、閉塞側壁部41および対向側壁部42はそれぞれ、矩形状板材により構成されている。側壁部21、側壁部22、閉塞側壁部41および対向側壁部42を構成する矩形状板材は、互いに分離可能となっている。
【0018】
側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42は、鉛直方向の寸法が略同じである。一方、閉塞側壁部41は、鉛直方向の寸法が、側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42よりも大きくなっている。閉塞側壁部41の鉛直方向の寸法は、側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42の鉛直方向の寸法に天板部11の厚さを加えた寸法となっている。
【0019】
また、天板部11および底板部31と、側壁部21および22、並びに対向側壁部42との対向部分には図示しない水平凹凸嵌合部が形成されている。この水平凹凸嵌合部は、水平方向に伸びる凹溝および凸条から構成されている。この水平凹凸嵌合部により、側壁部21および22、並びに対向側壁部42において、上端部は、天板部11と嵌合し、下端部は、底板部31と嵌合する。なお、水平凹凸嵌合部を構成する凸条および水平凹溝は、天板部11および底板部31と、側壁部21および22、並びに対向側壁部42との対向部分に形成されていればよく、形成箇所は特に限定されない。
【0020】
また、側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42には、互いに隣接する側壁部の対向面同士を連結する図示しない鉛直凹凸嵌合部により連結している。この鉛直凹凸嵌合部は、各側壁部を構成する矩形状板材の鉛直方向上下全長に渡って形成された、凹溝および凸条から構成されている。なお、鉛直凹凸嵌合部を構成する凹溝および凸条は、側壁部21および22、並びに対向側壁部42との対向部分に形成されていればよく、形成箇所は特に限定されない。
【0021】
また、
図2の(a)および(b)、並びに
図3に示されるように、閉塞側壁部41における両側端部には、鉛直凸条41aが設けられている。この鉛直凸条41aは、閉塞側壁部41の鉛直方向上下全長に渡って形成されている。側壁部21における閉塞側壁部41と対向する対向面には、鉛直凸条41aと嵌合する鉛直凹溝21aが形成されている。同様に、側壁部22における閉塞側壁部41と対向する対向面にも、鉛直凸条41aと嵌合する鉛直凹溝が形成されている。
【0022】
また、天板部11には、コの字状の切欠き部12が形成されている。この切欠き部12は、天板部11における閉塞側壁部41側の端部に設けられている。平面視において、閉塞側壁部41は、天板部11の切欠き部12に収容されている。また、切欠き部12内における閉塞側壁部41の鉛直凸条41aと対向する側面には、鉛直凸条41aが挿入される鉛直凹溝11aが設けられている。鉛直凹溝11aは、切欠き部12における側壁部21側の側面および側壁部22側の側面の両方に設けられている。そして、切欠き部12における側壁部21側の側面では、鉛直凹溝11aは、鉛直凹溝21aと連結するように形成されている。また、切欠き部12における側壁部22側の側面では、鉛直凹溝11aは、側壁部22に形成された鉛直凹溝と連結するように形成されている。
【0023】
また、閉塞側壁部41における底板部31と対向する対向面には、水平凸条41bが形成されている。水平凸条41bは、閉塞側壁部41におけるX方向の一方の端部と他方の端部との間の全長部分のうち鉛直凸条41aの部分を無視した部分に渡って形成されている。また、水平凸条41bは、側壁部21と側壁部22との間に形成されているといえる。そして、底板部31における閉塞側壁部41と対向する対向面には、水平凸条41bと嵌合する水平凹溝31aが形成されている。なお、水平凸条41bおよび水平凹溝31aは、上述した水平凹凸嵌合部を構成する凸条および凹溝と形状が異なる。水平凸条41bおよび水平凹溝31aは、互いに嵌合したとき、閉塞側壁部41と側壁部21および22とが外れにくくなるような形状となっている。それゆえ、定温保管輸送容器100を開梱するときには、閉塞側壁部41よりも前に側壁部21および22を開梱する。
【0024】
このように定温保管輸送容器100では、側壁部21および22、並びに対向側壁部42の上端部および下端部それぞれには、図示しない水平凹凸嵌合部により天板部11および底板部31が嵌合する。そして、側壁部21および22、並びに対向側壁部42における隣接する側壁部同士は、図示しない鉛直凹凸嵌合部により嵌合する。また、閉塞側壁部41は、鉛直凸条41aが鉛直凹溝11aおよび鉛直凹溝21aに挿入されることにより、天板部11および側壁部21と嵌合する。また、閉塞側壁部41は、鉛直凸条41aが鉛直凹溝11aおよび側壁部22に形成された鉛直凹溝に挿入されることにより、側壁部22と嵌合する。さらに、閉塞側壁部41は、水平凸条41bが水平凹溝31aに挿入されることにより、底板部31と嵌合する。それゆえ、定温保管輸送容器100の内部は、密閉された空間となる。
【0025】
ここで、定温保管輸送容器100の素材としては、断熱性を有するものであれば特に限定されず、発泡プラスチックや真空断熱材が好適に用いられる。発泡プラスチックとしては、具体的には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリウレタンを発泡させたものが用いられる。また、真空断熱材としては、例えば、芯材にシリカ粉やグラスウール、ガラス繊維等を用いたものが用いられる。
【0026】
さらに、定温保管輸送容器100は、発泡プラスチックと真空断熱材との組合せにより構成されていてもよい。その場合には、発泡プラスチックからなる容器本体X及び/又は閉塞側壁部41の外面又は内面を真空断熱材で覆う、あるいは、容器本体X及び閉塞側壁部41を構成する壁の内部に真空断熱材を埋設させることにより、断熱性能の高い輸送容器が得られる。
【0027】
また、定温保管輸送容器100は、側壁部21及び22に配された収納材51(第1の蓄熱材)と、底板部31に配された収納材52(第2の蓄熱材)と、を備えた構成である。側壁部21及び側壁部22の内面には、蓄熱材である収納材51のみ、または、収納材51およびドライアイスを収容可能な収容凹部23が設けられている。なお、収容凹部23の形成箇所は、側壁部21および22に限定されない。例えば、収容凹部23は、閉塞側壁部41および42に形成されていてもよい。
【0028】
また、定温保管輸送容器100では、底板部31の上面には、蓄熱材である収納材52のみ、または収納材53およびドライアイスを収容可能な収容凹部32が設けられている。
【0029】
次に、定温保管輸送容器100の組立方法について説明する。定温保管輸送容器100の組立て方法では、閉塞側壁部41を構成する矩形状板材を最後に組立てる。また、定温保管輸送容器100を開梱する時は、まず、天板部11から開梱する。次いで、側壁部21、側壁部22、および対向側壁部42を開梱し、最後に閉塞側壁部41を開梱する。
【0030】
まず、前記水平凹凸嵌合部および前記鉛直凹凸嵌合部により、天板部11を構成する矩形状板材と、側壁部21および22を構成する矩形状板材と、底板部31を構成する矩形状板材と、対向側壁部42を構成する矩形状板材と、を嵌合し、容器本体Xを組立てる。なお、容器本体Xを構成する各矩形状板材同士の嵌合の順番は、前記水平凹凸嵌合部および前記鉛直凹凸嵌合部の形成箇所等に応じて適宜設定することができる。
【0031】
次いで、このように組み立てられた容器本体Xに対して、閉塞側壁部41を構成する矩形状板材を嵌合により組立てることにより、定温保管輸送容器100が完成する。このとき、閉塞側壁部41の両側端部に形成された鉛直凸条41aの下端部がそれぞれ、天板部11の切欠き部12内の側壁部21側および側壁部22側の両方に形成された鉛直凹溝11aに挿入されるように、閉塞側壁部41を構成する矩形状板材を設置する。そして、この状態で、閉塞側壁部41を構成する矩形状板材を鉛直下方向に移動することにより、鉛直凸条41aが天板部11の鉛直凹溝11aを通過し、側壁部21の鉛直凹溝21aおよび側壁部22に形成された鉛直凹溝を摺動する。そして、閉塞側壁部41の水平凸条41bが底板部31の水平凹溝31aに嵌合することにより、容器本体Xに閉塞側壁部41を組立てる。
【0032】
このように定温保管輸送容器100では、互いに隣接する天板部11および閉塞側壁部41について、天板部11の外側と内側との間を閉塞側壁部41が摺動するように、天板部11と閉塞側壁部41との間に摺動嵌合部が形成されている。この摺動嵌合部は、凸条および凹溝からなり、凸条が凹溝を摺動できるように構成されている。
【0033】
より具体的には、前記摺動嵌合部における凸条は、閉塞側壁部41の両側端部に形成された鉛直凸条41aである。また前記摺動嵌合部における凹溝は、切欠き部12内の側壁部21側に形成された鉛直凹溝11aおよび側壁部21の鉛直凹溝21aと、切欠き部12内の側壁部22側に形成された鉛直凹溝11aおよび側壁部22に形成された鉛直凹溝とにより構成されている。切欠き部12内の側壁部21側に形成された鉛直凹溝11aと側壁部21の鉛直凹溝21aとは、互いに連結する。また、切欠き部12内の側壁部22側に形成された鉛直凹溝11aと側壁部22に形成された鉛直凹溝とは、互いに連結する。それゆえ、閉塞側壁部41は、前記のように構成された摺動嵌合部により、天板部11の外側と内側との間を摺動する。このように摺動嵌合部が設けられていることにより、閉塞側壁部41を摺動する動作のみで定温保管輸送容器100の開閉操作を行うことができ、利便性が向上する。
【0034】
また、定温保管輸送容器100の構成によれば、天板部により容器本体を閉塞する構成と比較して、定温保管輸送容器100の開閉動作を簡潔にすることができる。このため、低温保管が必要な温度管理対象物品を外気に触れさせる時間を短くして定温保管輸送容器100内に収納することが容易にできる。天板部により容器本体を閉塞する構成では、(a)底板部を設置した後、温度管理対象物品を配置する、(b)側壁部を3面配置し温度管理対象物品を収容する、あるいは、(c)底板部および側壁部を組立てた後天面から温度管理対象物品を収納する、の何れかの方法により温度管理対象物品が定温保管輸送容器内に収容される。(a)~(c)の何れの方法で温度管理対象物品を収容しても、温度管理対象物品が外気と触れる時間が長くなる。
【0035】
なお、上述の構成では、前記摺動嵌合部を構成する凸条(鉛直凸条41a)は、閉塞側壁部41に形成されている一方、前記摺動嵌合部を構成する凹溝(鉛直凹溝11a、鉛直凹溝21a等)は、天板部11、並びに側壁部21および22に形成されていた。しかし、凸条および凹溝の形成位置は、互いに嵌合し摺動嵌合部を構成できる位置であればよい。例えば、前記摺動嵌合部を構成する凸条は、天板部11、並びに側壁部21および22に形成され、前記摺動嵌合部を構成する凹溝は、閉塞側壁部41に形成されていてもよい。
【0036】
ここで、本実施形態に係る定温保管輸送容器100では、当該定温保管輸送容器100の構成部材の1つである底板部31に、フォークリフトの爪を挿入するための差込溝33が形成されている。なお、ここでいう「フォークリフトの爪」とは、容器を昇降することにより運搬・保管する機器に備えられた、容器を保持するフォーク状のリフトの爪を意図する。それゆえ、「フォークリフトの爪」は、ハンドリフトの爪も範囲の範疇に含む。
図4は、定温保管輸送容器100の底板部31の概略構成を示す図である。
図4の(a)は、底板部31をY方向から見た側面図である。
図4の(b)は、底板部31をX方向から見た側面図である。
図4の(c)は、底板部31を上側から見た上面図である。
図4の(d)は、底板部31を下側から見た下面図である。
【0037】
図4の(a)~(d)に示されるように、差込溝33は、底板部31の下面に2つ形成されている。そして、2つの差込溝33は、互いに平行になるように、底板部31のY方向の一端から他端へ延びている。また、差込溝33が形成されていることにより、底板部31は、底面の一部の領域で地面に接している。
図4の(d)に示されるように、底板部31における地面と接する接地面35は、底板部31の底面の一部の領域である。
【0038】
差込溝33は、例えば、定温保管輸送容器100を組立てる以前に、底板部31を構成する矩形状板材を製造するときに形成され得る。例えば、切削加工や、一体成型、矩形状板材に矩形部材を接着により貼り合せることなどにより、差込溝33が形成された底板部31を構成する矩形状板材を製造することができる。それゆえ、ここでいう、底板部31に差込溝33が形成された構成には、底板部31の製造過程で既存のフォークリフト用パレットやハンドリフト用パレットを用いた構成(例えば、既存のフォークリフト用パレットやハンドリフト用パレットと底板部31を構成する成形物とが固定手段などにより固定された構成)は含まれ得ない。
【0039】
このように定温保管輸送容器100は、フォークリフトの爪を挿入するための差込溝33が形成された底板部31を備えている。このため、フォークリフトによる荷役作業の際には、ユーザは、フォークリフトの爪を底板部31の差込溝33に挿入し、定温保管輸送容器100を運搬する。すなわち、定温保管輸送容器100の荷役作業のために、別途、フォークリフト用パレットを用意する必要がない。このため、フォークリフト用パレットの寸法に合わせて定温保管輸送容器100の寸法を設計する必要がなくなる。また、フォークリフトによる荷役作業のために、フォークリフト用パレットに底板部31を載置し、定温保管輸送容器100とフォークリフト用パレットとを固定する工程を必要とせず、底板部31にフォークリフト用パレットを固定する工程を必要とせず、荷役作業の工程を簡略化できる。さらに、フォークリフト用パレットを必要としないので、フォークリフトに掛かる荷重を低減できる。特に、底板部31が発泡プラスチックからなる場合、フォークリフトに掛かる荷重の低減効果は顕著である。さらに、底板部31におけるパレット形状部分、すなわち差込溝33形成部分が断熱材料により構成されているので、定温保管輸送容器100の断熱性能が向上する。
【0040】
以上のことから、定温保管輸送容器100を用いることにより、容器設計の自由度が輸送用パレットに左右されず、フォークリフトによる荷役作業の作業性が向上する。なお、差込溝33の数や寸法は、定温保管輸送容器100の寸法、差込溝33に挿入されるフォークリフトの爪の寸法等に応じて適宜設定可能である。
【0041】
また、定温保管輸送容器100では、差込溝33は、その内壁面に設けられた保護部材34(第1の保護部材)を備えている。保護部材34は、差込溝33を構成する壁面に設けられており、複数の保護シート34aからなる。保護シート34aは、例えば接着剤や両面テープによる接着により、差込溝33の側壁面および底壁面に一様に設けられている。保護部材34は、フォークリフトによる定温保管輸送容器100の運搬時に、フォークリフトの爪から差込溝33を保護する役割がある。このため、保護部材34が差込溝33に設けられていることにより、差込溝33の破損を防止することができ、定温保管輸送容器100および温度管理対象物品の荷重も分散されるため、フォークリフトによる差込溝33そのものの食い込み等を低減できる。特に、底板部31が発泡プラスチックからなる場合、底板部31は強度が弱いので、保護部材34による保護効果が有効である。
【0042】
保護部材34の材料は、フォークリフトの爪に対して保護できる材料であれば、特に限定されない。例えば、保護部材34の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の硬質樹脂材料、ゴム等の弾性材料、または、これら材料の組合せが挙げられる。また、定温保管輸送容器100の軽量化の観点では、前記硬質樹脂材料は、発泡樹脂または微発泡樹脂であることが好ましい。
【0043】
また、差込溝33は、フォークリフトの爪が挿入可能であれば、延びる方向は特に限定されない。より好ましくは、差込溝33は、複数の方向に延びた構成である。これにより、差込溝33の延びる方向に合わせてフォークリフトの爪を挿入できるので、定温保管輸送容器100の底板部31に対し、差込溝33に対するフォークリフトの爪の位置合わせを効率的にでき位置合わせでき荷役作業の効率が高くなる。
【0044】
図5は、複数の方向に延びた差込溝33Aが形成された底板部31Aの構成例を示す図である。
図5の(a)は、底板部31AをY方向から見た側面図である。
図5の(b)は、底板部31AをX方向から見た側面図である。
図5の(c)は、底板部31Aを上側から見た上面図である。
図5の(d)は、底板部31Aを下側から見た下面図である。
【0045】
図5の(a)~(d)に示されるように、差込溝33Aは、溝33Bと溝33Cとから構成されている。溝33Bおよび33Cはそれぞれ、底板部31Aの下面に2つ形成されている。溝33Bは、底板部31Aの下面のY方向の一端から他端へ延びている一方、溝33Cは、底板部31Aの下面のX方向の一端から他端へ延びている。また、溝33Bと溝33Cとは互いに交差している。
【0046】
また、このように溝33Bおよび33Cからなる差込溝33Aが形成されていることにより、底板部31は、底面の一部の領域で地面に接している。
図5の(d)に示されるように、底板部31における地面と接する接地面35Aは、底板部31の底面の一部の領域である。
【0047】
このような構成により、差込溝33Aは、溝33Bおよび33Cの各方向から、運搬するためのフォークリフトの爪、または搬送機器が挿入可能となる。このため、差込溝33Aは、4方向から挿入可能になる形状となるので、荷役作業が効率化される。
【0048】
(変形例)
本実施形態に係る定温保管輸送容器100の構成において、
図1~
図3に示す構成の変形例について説明する。
図6は、この変形例としての定温保管輸送容器101の概略構成を示す分解斜視図である。
図7は、変形例としての定温保管輸送容器101の概略構成を示し、
図7の(a)は側面図であり、
図7の(b)は上面図である。
【0049】
定温保管輸送容器101では、互いに対向する側壁部22および24のうち、一方の側壁部24の幅は、他方の側壁部22の幅よりも小さくなっている。側壁部22の幅は、側壁部24の幅と閉塞側壁部43の厚さとの合計と略同じになっている。また、天板部14には、
図1に示すようなコの字状の切欠き部12が形成されていない。
【0050】
また、閉塞側壁部43における底板部31および天板部14と対向する対向面には、水平凸条43aが設けられている。水平凸条43aは、閉塞側壁部43の水平方向(幅方向)の一方の側端部と他方の側端部との間の全長に渡って形成されている。天板部14における閉塞側壁部43と対向する対向面には、図示しない、水平凸条43aと嵌合する水平凹溝が形成されている。同様に、底板部31における閉塞側壁部43と対向する対向面にも、図示しない、水平凸条43aと嵌合する水平凹溝が形成されている。
【0051】
また、閉塞側壁部43における側壁部22と対向する対向面には、鉛直凸条43bが形成されている。鉛直凸条43bは、閉塞側壁部43の鉛直方向上下全長に渡って形成されている。そして、側壁部22における閉塞側壁部43と対向する対向面には、図示しない、鉛直凸条43bと嵌合する鉛直凹溝が形成されている。
【0052】
定温保管輸送容器101では、側壁部22および23、並びに対向側壁部42の上端部および下端部それぞれには、図示しない水平凹凸嵌合部により天板部14および底板部31が嵌合する。そして、側壁部22および23、並びに対向側壁部42における隣接する側壁部同士は、図示しない鉛直凹凸嵌合部により嵌合する。また、閉塞側壁部43は、水平凸条43aが天板部14および底板部31に形成された水平凹溝に挿入されることにより、天板部14および底板部31と嵌合する。また、閉塞側壁部43は、側壁部22に形成された図示しない鉛直凹溝に鉛直凸条43bが水平凹溝31aに挿入されることにより、側壁部22と嵌合する。それゆえ、定温保管輸送容器100の内部は、密閉された空間となる。
【0053】
定温保管輸送容器101は、上述した摺動嵌合部の構成が
図1~
図3に示す構成と異なる。上述した摺動嵌合部は、互いに隣接する2つの側壁部のうち、一方の側壁部が他方の側壁部の外側と内側との間を摺動するように構成されていてもよい。定温保管輸送容器101では、互いに隣接する側壁部24および閉塞側壁部43のうち、側壁部24の外側と内側との間を閉塞側壁部43が摺動するように、天板部14と底板部31との間に摺動嵌合部が形成されている。この摺動嵌合部は、凸条および凹溝からなり、凸条が凹溝を摺動できるように構成されている。また、側壁部24のY方向の長さは、側壁部21のY方向の長さに比べて、閉塞側壁部43の厚さ分だけ短くなっている。
【0054】
より具体的には、前記摺動嵌合部における凸条は、閉塞側壁部43における天板部14および底板部31との対向面に形成された水平凸条43aである。また前記摺動嵌合部における凹溝は、図示しない、天板部14および底板部31における閉塞側壁部43と対向する面に形成された、水平凹溝である。閉塞側壁部43は、前記のように構成された摺動嵌合部により、側壁部24の外側と内側との間を摺動する。このように摺動嵌合部が設けられていることにより、閉塞側壁部43を摺動する動作のみで定温保管輸送容器101の開閉操作を行うことができ、利便性が向上する。特に、定温保管輸送容器100の寸法が極めて大きい場合、例えば高さが人の身長よりも大きい場合、天板部により容器本体を閉塞する構成よりも定温保管輸送容器100の開閉動作が簡潔になる。
【0055】
(蓄熱材である収納材51および52について)
収納材51および52における蓄熱材(蓄冷材ともいう)とは、蓄熱成分(蓄冷成分ともいう)をプラスチック製容器やフィルム製の袋等に封入したものである。
【0056】
蓄熱成分を充填する容器又は袋の素材としては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン又はポリエステル等が挙げられ、これらの素材のうち1種類を単独で使用してもよく、耐熱性やバリアー性を高めるため、これらの素材のうち2種類以上を組み合わせて多層構造としたものを使用することもできる。また、この容器又は袋の形状としては、特に限定されないが、熱交換率を高める観点から、表面積を大きく確保できる形状が好ましい。
【0057】
また、収納材51および52は、潜熱性の蓄熱材であることが好ましい。潜熱型の蓄熱材とは、蓄熱成分の相転移に伴う熱エネルギーを利用するものであって、蓄熱成分の相状態が、凝固状態(固体)から溶融状態(液体)に相転移する際に吸収する熱エネルギー、又は溶融状態(液体)から凝固状態(固体)に相転移する際に放出する熱エネルギーを利用するものである。
【0058】
蓄熱成分の凝固・融解温度とは、その相状態が凝固状態(固体)から溶融状態(液体)に、もしくは溶融状態(液体)から凝固状態(固体)に変化する温度である。本実施形態では示差走査熱量計(例えば セイコーインスツル(株)製:SII EXSTAR6000 DSC)を用い、2℃/minの昇温速度で測定し、得られたチャートのピーク温度の値(但し、複数のピークが存在する場合には最大のピーク温度の値)を凝固・融解温度と定義する。
【0059】
相状態とは、一般的に物質の固体、液体、気体の3つの相状態を表すが、本実施形態では、このうち固体と液体の相状態を利用する。蓄熱成分の相状態とは、50重量%以上の相状態を指し、例えば、蓄熱成分の80重量%が固体状態で20重量%が液体状態である相状態は固体(凝固状態)である。
【0060】
本実施形態に使用される潜熱型の蓄熱成分を構成する組成物としては、特に限定はないが、例えば、硫酸ナトリウム・10水和物、酢酸ナトリウム・3水和物、塩化カリウム・6水和物、4級アンモニウム塩・水和物等の無機水和物塩類、ノルマルテトラデカン、ノルマルヘキサデカン、ノルマルヘプタデカン、ノルマルドデカン、ノルマルドコサン等の炭素数が9~30の直鎖及び分岐構造のパラフィン群から選ばれる少なくとも1種以上の高級アルカン、オクタン酸、デカン酸、ラウリル酸、ドデカン酸、ステアリン酸等の炭素鎖数が6~18の飽和脂肪酸、ラウリル酸メチル、ミリスチン酸メチル、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル化合物、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、炭素鎖数が6~18の不飽和脂肪酸及びそのエステル化合物、1-デカノール、2-デカノール、ウンデカノール、ラウリルアルコール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、ノナデカノール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、エライジルアルコール、l-メントール等の炭素数が6以上の1価アルコールである高級アルコール(直鎖アルコール、分岐アルコール、一級アルコール、2級アルコール、3級アルコールのいずれも含む)、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等の2価アルコールであるポリアルキレングリコール等の有機化合物蓄熱材組成物が挙げられ、1種又は2種以上の混合物も用いることができる。
【0061】
また、炭酸水素カリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、塩化ナトリム水溶液、塩化カルシウム水溶液、臭化カルシウム水溶液等の水を主成分とするもの、水および高吸水性ポリマーを含有するもの等が挙げられる。
【0062】
本本実施形態に係る定温保管輸送容器100には、1種からなる蓄熱材を収納配置することができる。冬場のような外気温度が所望する温度管理対象物品より低い場合、収納配置する蓄熱材の凝固・融解温度より高い温度にて調温し、融解状態にあるものを配置する。この場合、外気温度により蓄熱材が冷却されて温度低下し、融解状態(液体)から凝固状態(固体)へと相転移するために熱エネルギーを放出することで、温度管理対象物品が外気に曝されることを抑制でき、所定の温度範囲内に維持できる。
【0063】
一方、夏場のような外気温度が所望する温度管理対象物品より高い場合、収納配置する蓄熱材の凝固・融解温度より低い温度にて調温し、凝固状態にあるものを配置する。この場合、外気温度により、蓄熱材が加熱されて温度上昇し、凝固状態(固体)から融解状態(液体)へと相転移するために熱エネルギーを吸収することで、温度管理対象物品が外気に曝されることを抑制でき、所定の温度範囲内に維持できる。
【0064】
これら1種からなる蓄熱材を用いた場合、定温保管輸送容器100を構成する断熱材を介し、外気との温度差に起因する温度上昇及び低下による影響を単一の蓄熱材成分が有する潜熱エネルギーの放出/吸収作用にて抑制でき、所定の温度範囲内にある程度の時間維持することができる。しかしながら、外部環境温度に対し蓄熱材を事前に指定の温度に調整する必要があって煩雑さを伴い、長時間の温度保持のためには使用する蓄熱材の数量/重量が増加する傾向にある。
【0065】
本実施形態に係る定温保管輸送容器100には、凝固・融解状態の異なる2種以上の蓄熱材を収納配置することができる。第1の蓄熱材(a)と、第2の蓄熱材(b)とを用い、冬場のような外気温度が所望する温度管理対象物品より低い場合には、温度管理対象物品に隣接して、凝固・融解温度が0℃以上で、かつ凝固状態にある第1の蓄熱材(a)を配置し、その第1の蓄熱材(a)の外周部に、融解状態にある第2の蓄熱材(b)を配置してなるものが例示される。
【0066】
一方で、第1の蓄熱材(a)と、第2の蓄熱材(b)とを用い、第1の蓄熱材(a)を温度管理対象物品より高い温度にて融解状態となるよう調温し、温度管理対象物品に隣接するよう配置する。一方で、第2の蓄熱材(b)を-15℃以下の条件で凝固凍結させ、第1の蓄熱材(a)の外側に配置する。この場合、第1の蓄熱材(a)の外側に配置された第2の蓄熱材(b)は、温度管理対象物品の温度を所望の温度範囲に維持するための外気温に対する熱緩衝材として機能するものも例示される。
【0067】
これら凝固・融解状態の異なる2種以上の蓄熱材を用いた場合、容器を構成する断熱材を介し、外気との温度差に起因する温度上昇及び低下による影響を温度管理対象物品に隣接配置した第1の蓄熱材(a)の外側に配置した第2の蓄熱材(b)を用い熱緩衝材として作用させることで抑制できる。そして、第1の蓄熱材(a)と第2の蓄熱材(b)との温度相互作用により、融解状態にある第1の蓄熱材(a)が冷却されて温度低下し、融解状態(液体)から凝固状態(固体)へ相転移するために熱エネルギーを放出することで、温度管理対象物品をその温度より高い温度とより低い温度の両方から保護することができる。その結果、蓄熱材の使用量を低減でき、より長い時間温度管理対象物品を所定の温度範囲内に維持できる。
【0068】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0069】
図8は、本実施形態に係る定温保管輸送容器100Aおよび100Bの概略構成を示す側面図であり、
図8の(a)は、
図1~3に示された定温保管輸送容器100に基づく実施形態を示し、
図8の(b)は、
図6および
図7に示された定温保管輸送容器101に基づく実施形態を示す。
【0070】
図8の(a)に示されるように、本実施形態に係る定温保管輸送容器100Aは、少なくとも天板部11を覆う蓋状保護部材61(第2の保護部材)を備えた点で実施形態1と異なる。より具体的には、蓋状保護部材61は、少なくとも天板部11の側面部および上面の両方を覆うように構成されている。また、
図8の(b)に示される定温保管輸送容器100Bは、定温保管輸送容器100Aと同様に、少なくとも天板部14を覆う蓋状保護部材61を備えた構成となっている。
【0071】
このように蓋状保護部材61が設けられていることにより、例えば、定温保管輸送容器100Aまたは100Bを鉛直方向に複数積載したとき、定温保管輸送容器100Aまたは100Bの上部を保護することができる。また、例えばセキュリティベルトを用いて定温保管輸送容器100Aまたは100Bを運搬するとき、蓋状保護部材61により定温保管輸送容器100Aまたは100Bの上部を保護できる。それゆえ、定温保管輸送容器100Aおよび100Bの上部の破損を防止することができる。特に、天板部11または14が発泡プラスチックからなる場合、天板部11または14は強度が弱いので、蓋状保護部材61による保護効果が有効である。
【0072】
また、
図1~3に示されるような閉塞側壁部41は鉛直方向に摺動し嵌合する構成では、閉塞側壁部41の鉛直方向の移動を係止するため、結束バンド等の結束材62が用いられる。結束材62は、
図8の(a)に示されるように、差込溝33の壁面から天板部11の上面に接触するように鉛直方向に巻き付けて、定温保管輸送容器100Aを結束するように構成される。このため、天板部11の上面および差込溝33の壁面は、結束材62との接触により、破損するおそれがある。本実施形態に係る定温保管輸送容器100Aでは、天板部11の上面を保護する蓋状保護部材61が設けられているので、結束材62による天板部11の上面の破損を防止することができる。また、本実施形態に係る定温保管輸送容器100Aでは、差込溝33を保護する保護部材34が設けられているので、結束材62による差込溝33の壁面の破損を防止することができる。特に、底板部31および天板部11が発泡プラスチックからなる場合、底板部31および天板部11は強度が弱いので、保護部材34による保護効果が有効である。
【0073】
また、蓋状保護部材61は、天板部と側壁部との境界部分を覆うように構成されていることが好ましい。これにより、天板部を構成する矩形状板材および側壁部を構成する矩形状板材の水平方向の移動が蓋状保護部材61により係止される。それゆえ、定温保管輸送容器の気密性を確保し、かつゴミなどの混入を防止することができる。
【0074】
蓋状保護部材61が天板部と側壁部との境界部分を覆う構成は、
図6および7に示される定温保管輸送容器101に適用されることが好ましい。
図8の(b)に示す定温保管輸送容器100Bでは、蓋状保護部材61は、天板部14と側壁部22および閉塞側壁部43との境界部分を覆うように構成されている。定温保管輸送容器100Bでは、閉塞側壁部43が天板部14および底板部31に対し水平方向に摺動し嵌合する。それゆえ、閉塞側壁部43の水平方向の移動は、蓋状保護部材61によって係止される。
【0075】
蓋状保護部材61の材料は、結束材62等に対して保護できる材料であれば、特に限定されない。例えば、蓋状保護部材61の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の硬質樹脂材料、ゴム等の弾性材料、または、これら材料の組合せが挙げられる。また、定温保管輸送容器100Aまたは100Bの軽量化の観点では、前記硬質樹脂材料は、発泡樹脂または微発泡樹脂であることが好ましい。
【0076】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0077】
〔まとめ〕
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100は、フォークリフトの爪を挿入するための差込溝33が形成された天板部11を備えた構成である。
【0078】
上記の構成によれば、フォークリフトによる荷役作業の際には、ユーザは、フォークリフトの爪を底板部31の差込溝33に挿入し、定温保管輸送容器100を運搬する。すなわち、定温保管輸送容器100の荷役作業のために、別途、フォークリフト用パレットを用意する必要がない。このため、フォークリフト用パレットの寸法に合わせて容器の寸法を設計する必要がなくなる。また、フォークリフト用パレットに底板部31を載置し、定温保管輸送容器100とフォークリフト用パレットとを固定する工程を必要とせず、荷役作業の工程を簡略化できる。さらに、フォークリフト用パレットを必要としないので、フォークリフトに掛かる荷重を低減できる。
【0079】
以上のことから、上記の構成によれば、容器設計の自由度が輸送用パレットに左右されず、フォークリフトによる荷役作業の作業性が向上する。
【0080】
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100において、前記差込溝33は、その内壁面に設けられた第1の保護部材34を備えた構成であることが好ましい。
【0081】
上記の構成によれば、保護部材34により、フォークリフトによる差込溝33の破損を防止することができ、定温保管輸送容器100および温度管理対象物品の荷重も分散されるため、フォークリフトによる差込溝33そのものの食い込み等を低減できる。
【0082】
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100Aは、天板部11と、少なくとも前記天板部11を覆う第2の保護部材(蓋状保護部材61)と、を備えた構成であることが好ましい。
【0083】
上記の構成によれば、例えば、定温保管輸送容器100Aを鉛直方向に複数積載したときやセキュリティベルトを用いて定温保管輸送容器100Aを運搬するとき、定温保管輸送容器100Aの上部を保護することができる。
【0084】
本発明の実施形態に係る定温保管輸送容器100または101は、側壁部(側壁部21および22、閉塞側壁部41、並びに対向側壁部42の組合せ、または側壁部22および24、閉塞側壁部43、並びに対向側壁部42の組合せ)と、天板部11または14と、互いに隣接する前記側壁部(閉塞側壁部41)および前記天板部11のうち、前記側壁部が前記天板部11の外側と内側との間を摺動する、あるいは互いに隣接する2つの前記側壁部(閉塞側壁部43、側壁部24)のうち、一方の側壁部(閉塞側壁部43)が他方の側壁部(側壁部24)の外側と内側との間を摺動するように設けられた摺動嵌合部と、を備えたことが好ましい。
【0085】
上記の構成によれば、前記摺動嵌合部が設けられることにより、前記側壁部(閉塞側壁部41)または前記一方の側壁部(閉塞側壁部43)を摺動する動作のみで定温保管輸送容器の開閉操作を行うことができ、利便性が向上する。
【符号の説明】
【0086】
11、14 天板部
11a、21a 鉛直凹溝
21、22、24 側壁部
31、31A 底板部
33、33A 差込溝
34 保護部材(第1の保護部材)
41、43 閉塞側壁部
41a 鉛直凸条(摺動嵌合部)
43a 水平凸条(摺動嵌合部)
42 対向側壁部
61 蓋状保護部材(第2の保護部材)
100、100A、100B、101 定温保管輸送容器