(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】光受信モジュール、光モジュール、及び光伝送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0232 20140101AFI20220509BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20220509BHJP
G02B 6/42 20060101ALN20220509BHJP
【FI】
H01L31/02 D
H01L31/02 B
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2018067458
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家村 光貴
(72)【発明者】
【氏名】笹田 道秀
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-048072(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099685(WO,A1)
【文献】特開2008-040318(JP,A)
【文献】特開2016-015405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0259431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/20
G02B 6/42-6/43
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面に配置され、端部に沿って配置される2以上のIC端子を備えるとともにアンプ機能を有する、ICと、
前記基板の表面であって前記ICの前方に配置され、前記2以上のIC端子それぞれと2以上のワイヤを介して接続させる2以上のPD端子を備えるとともに、外部より光が入射する受光窓を有する、受光素子と、
前記基板の表面であって前記受光素子を覆うように前記ICの前方に配置され、前記基板の表面より上方へ立ち上がる2個の橋脚部と、前記2個の橋脚部により支持されるとともに前記2つの橋脚部の上部の間に位置するレンズ本体部と、を備える第1光学部品と、
を備える、光受信モジュールであって、
前記レンズ本体部は、前方に配置される立ち上がり面を有し、前記立ち上がり面に配置され入射する光を集光するレンズと、前記レンズにより集光される光を反射して前記受光素子の受光窓へ集光させるミラーと、を備え、
平面視して、前記ICの端部に対する前記レンズの位置Aと前記受光素子の受光窓の位置Bとの距離L1が、前記ICの端部に対する前記位置Bと前記第1光学部品の前記2つの橋脚部の前記IC側の端部の位置Cとの距離L2より、長い、
ことを特徴とする、光受信モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光受信モジュールであって、
前記距離L2の前記距離L1に対する比は0.07以上1.0未満である、
ことを特徴とする、光受信モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光受信モジュールと、
光送信モジュールと、
を備える、光モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の光モジュールが搭載される、光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信モジュール、光モジュール、及び光伝送装置に関し、特に、高周波特性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光受信モジュールは、受光素子とレンズを備え、光ファイバより入射する光信号をレンズが集光又は平行化し、受光素子へ入射させるのが一般的である。特許文献1に、光ファイバより入射する光信号がミラーによって進行方向が変更される構造を有する光受信モジュールが開示されている。
【0003】
また、光受信モジュールは、トランスインピーダンスアンプ(以下、TIAと記す)に代表されるアンプ機能を有するIC(集積回路)をさらに備えるのが一般的である。当該ICは受光素子と電気的に接続されている。受光素子は受光する光信号を電気信号に変換するが、当該ICが当該電気信号を増幅する。特許文献2に、TIA機能付きICが受光素子と同一基板上に配置される構造を有する光受信モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-31818号公報
【文献】特開2012-58409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光受信モジュールは、2枚のレンズ面を有する複雑な構造となっている。ここでは、光ファイバからの光を第1のレンズ面が平行化し、ミラーが光を反射させて進行方向を変更し、第2のレンズ面が光を集光して、受光素子へ光を到達させている。このような複雑な構造では、光受信モジュールの小型化を実現するのは困難である。
【0006】
レンズ及びミラーを含む光学部品の小型化が実現できないと、アンプ機能付きICと受光素子とを接続する配線の長さを短くできず、インダクタンス増大となり、高周波特性に影響が出てしまう。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、高周波特性向上と小型化とが両立される、光受信モジュール、光モジュール、及び光伝送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る光受信モジュールは、基板と、前記基板の表面に配置され、端部に沿って配置される2以上のIC端子を備えるとともにアンプ機能を有する、ICと、前記基板の表面であって前記ICの前方に配置され、前記2以上のIC端子それぞれと2以上のワイヤを介して接続させる2以上のPD端子を備えるとともに、外部より光が入射する受光窓を有する、受光素子と、前記基板の表面であって前記受光素子を覆うように前記ICの前方に配置され、前記基板の表面より上方へ立ち上がる2個の橋脚部と、前記2個の橋脚部により支持されるとともに前記2つの橋脚部の上部の間に位置するレンズ本体部と、を備える第1光学部品と、を備える、光受信モジュールであって、前記レンズ本体部は、前方に配置される立ち上がり面を有し、前記立ち上がり面に配置され入射する光を集光するレンズと、前記レンズにより集光される光を反射して前記受光素子の受光窓へ集光させるミラーと、を備え、平面視して、前記ICの端部に対する前記レンズの位置Aと前記受光素子の受光窓の位置Bとの距離L1が、前記ICの端部に対する前記位置Bと前記第1光学部品の前記2つの橋脚部の前記IC側の端部の位置Cとの距離L2より、長い、ことを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)に記載の光受信モジュールであって、前記距離L2の前記距離L1に対する比は0.07以上1.0未満であってもよい。
【0010】
(3)本発明に係る光モジュールは、上記(1)又は(2)に記載の光受信モジュールと、光送信モジュールと、を備えていてもよい。
【0011】
(4)本発明に係る光伝送装置は、上記(3)に記載の光モジュールが搭載されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高周波特性向上と小型化とが両立される、光受信モジュール、光モジュール、及び光伝送装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置及び光モジュールの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光受信モジュールの構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るマイクロレンズアレイの前面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る光受信モジュールの主要部の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る光受信モジュールの主要部の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る光受信モジュールの主要部の構成を示す断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る光受信モジュールの主要部の構成を示す断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る光受信モジュールの主要部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置1及び光モジュール2の構成を示す模式図である。光伝送装置1は、プリント回路基板11とIC12を備えている。光伝送装置1は、例えば、大容量のルータやスイッチである。光伝送装置1は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。光伝送装置1に、複数の光モジュール2が搭載されており、光モジュール2より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、IC12などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、プリント回路基板11を介して、該当する光モジュール2へそのデータを伝達する。
【0016】
光モジュール2は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバである。光モジュール2は、プリント回路基板21と、光ファイバ3Aを介して受信する光信号を電気信号に変換する光受信モジュール23Aと、電気信号を光信号に変換して光ファイバ3Bへ送信する光送信モジュール23Bと、を含んでいる。プリント回路基板21と、光受信モジュール23A及び光送信モジュール23Bとは、それぞれフレキシブル基板22A,22B(FPC)を介して接続されている。光受信モジュール23Aより電気信号がフレキシブル基板22Aを介してプリント回路基板21へ伝送され、プリント回路基板21より電気信号がフレキシブル基板22Bを介して光送信モジュール23Bへ伝送される。光モジュール2と光伝送装置1とは電気コネクタ5を介して接続される。光受信モジュール23Aや光送信モジュール23Bは、プリント回路基板21に電気的に接続され、光信号/電気信号を電気信号/光信号にそれぞれ変換する。プリント回路基板21は、光受信モジュール23Aより伝送される電気信号を制御する制御回路(例えばIC)や、光送信モジュール23Bへ伝送する電気信号を制御する制御回路(例えばIC)を備えている。
【0017】
当該実施形態に係る伝送システムは、2個以上の光伝送装置1と2個以上の光モジュール2と、1個以上の光ファイバ3(図示せず:例えば光ファイバ3A,3B)を含む。各光伝送装置1に、1個以上の光モジュール2が接続される。2個の光伝送装置1にそれぞれ接続される光モジュール2の間を、光ファイバ3が接続している。一方の光伝送装置1が生成した送信用のデータが接続される光モジュール2によって光信号に変換され、かかる光信号を光ファイバ3へ送信される。光ファイバ3上を伝送する光信号は、他方の光伝送装置1に接続される光モジュール2によって受信され、光モジュール2が光信号を電気信号へ変換し、受信用のデータとして当該他方の光伝送装置1へ伝送する。
【0018】
図2は、当該実施形態に係る光受信モジュール100の構造を示す模式図である。当該実施形態に係る光受信モジュール100は、
図1に示す光受信モジュール23Aである。光受信モジュール100は、100Gbit/s級であり4チャンネル(各チャンネルは25bit/s級)のROSA(Receiver Optical SubAssembly)である。光受信モジュール100は、金属基板101(支持基板)と、アンプ機能付きIC102と、PD素子103(Photo Detector)と、マイクロレンズアレイ104と、光分波回路105と、箱型筺体106と、コリメートレンズ107Aを含む接続部107と、を備える。金属基板101は箱型筺体106の内側底面に配置される。金属基板101の表面に、IC102と、PD素子103と、マイクロレンズアレイ104と、光分波回路105とが配置される。接続部107は箱型筺体106の側面に配置される。当該実施形態に係る光受信モジュール100において、基板(支持基板)は金属基板101に限定されることはなく、他の材質により形成される基板であってもよい。なお、
図2は光受信モジュール100のxz平面による断面を示している。ここで、x軸方向は接続部107より入射する光の向き(-x軸方向)と平行であり、z軸方向は金属基板101の表面に垂直な方向である。
【0019】
IC102は、端部に沿って配置される2以上のIC端子(ここでは、8個のIC端子)を備えるとともに、アンプ機能を有している(
図4参照)。なお、ここで、IC102はTIA機能を有しているが、これに限定されることはない。PD素子103は、IC102の前方(+x軸方向)に配置される。PD素子103は、2以上のIC端子(ここでは、8個のIC端子)それぞれと2以上のワイヤ110(ここでは8本のワイヤ110)を介して接続される2以上のPD端子(ここでは、8個のPD端子)を備える受光素子である。PD素子103は、IC102の端部に沿って並ぶ4個のフォトダイオード103A(Photo Diode)とサブマウント103Bとを含む。各フォトダイオード103Aは、(光吸収層を含む)半導体多層を含んで作製される。各フォトダイオード103Aは外部より光が入射する受光窓111を有する。各フォトダイオード103Aの上部に受光窓111が配置され、フォトダイオード103Aは受光窓111に入射する光信号を電気信号に変換する。サブマウント103は表面に電極パターンと2以上のPD端子(ここでは、8個のPD端子)が配置されるセラミック基板(例えば、AlN基板)によって形成されている。4個のフォトダイオード103Aはサブマウント103Bの上面に配置される。サブマウント103Bの電極パターンが4個のフォトダイオード103Aと2以上とのPD端子(ここでは、8個のPD端子)とを電気的に接続する。
【0020】
図3は、当該実施形態に係るマイクロレンズアレイ104の前面図である。
図3は、マイクロレンズアレイ104の前方(+x軸方向)より見る前面(yz平面)を示している。ここで、y軸方向は金属基板101の表面のうち、x軸方向に垂直な方向である。マイクロレンズアレイ104は、レンズ本体部121と2個の橋脚部122A,122Bとを備える第1光学部品である。2個の橋脚部122A,122Bは、金属基板101の表面より上方(+z軸方向)へ立ち上がっており、2個の橋脚部122A,122Bはレンズ本体部121を支持するとともに、レンズ本体部121を金属基板101の表面より上方の位置に固定する。レンズ本体部121はその両側に配置される2個の橋脚部122A,122Bにより支持されるとともに、レンズ本体部121は2個の橋脚部122A,122Bの上部の間に位置している。マイクロレンズアレイ104は、PD素子103を覆うように金属基板101の表面であってIC102の前方に配置される。PD素子103はレンズ本体部121の下方に配置され、平面視すると、レンズ本体部121とPD素子103は重畳している。
【0021】
当該実施形態に係るマイクロレンズアレイ104のレンズ本体部121は、前方に配置される立ち上がり面123Aとレンズ本体部121の上方に配置される上面123Bとを有する(
図5参照)。レンズ本体部121の立ち上がり面123Aには、
図3の横方向に並ぶ4個のレンズ124が配置される。各レンズ124は、前方よりレンズ124へ入射する光を集光させる凸レンズである。4個のレンズ124を覆って反射防止膜125は配置されており、反射防止膜125が立ち上がり面123Aに配置される領域が
図3には反射防止膜形成領域ARとして
図3に示されている。
【0022】
図2に示す通り、レンズ本体部121の上面にミラー126が配置されており、ミラー126はレンズ124により集光される光それぞれを反射して対応するフォトダイオード103Aの受光窓111へ集光させる。各レンズ124により集光される光の焦点は、対応するフォトダイオード103Aの受光窓111又はフォトダイオード103A内部の吸収層に位置しているのが望ましいが、焦点位置は必要に応じて選択されればよい。マイクロレンズアレイ104は、ガラスのプレス成形やプラスティック樹脂などを用いる射出成形によって形成される。マイクロレンズアレイ104を成形によって形成する場合、ミラー126はレンズ本体部121の上面に形成されるが、ミラー126の反射面を他の部材で埋没させるなど、必ずしも上面に形成されていなくともよい。
【0023】
接続部107はコリメートレンズ107Aを含むとともに、接続部107に光ファイバ130が接続されている。なお接続部107は外部の光ファイバが挿入されるようなレセプタクル形状であっても構わない。光ファイバ130より光受信モジュール100の箱型筺体106の内部へ入射する光は、コリメートレンズ107Aによって平行光に変換され、光分波回路105へ入射する。光ファイバ130より入射する光(光信号)は、波長多重伝送信号である。光分波回路105は、デマルチプレクサー(Demultiplexer)とミラーと光フィルタなどの光学部品を含んでいる。光分波回路105に入射する光(波長多重伝送信号)は4チャンネルの光(単波長信号)に分波され、各光(平行光)がマイクロレンズアレイ104の対応するレンズ124へ入射する。
【0024】
図4は、当該実施形態に係る光受信モジュール100の主要部の構成を示す断面図である。
図4は、
図2に示すIV-IV線による断面を示している。
図4に示す断面は、金属基板101の表面と平行であり、xy平面である。
図5は、当該実施形態に係る光受信モジュール100の主要部の構成を示す断面図である。
図5は、
図4に示すV-V線による断面を示しており、xz平面である。
図4に示す通り、アンプ機能を有するIC102は、矩形状を有しており、IC102のPD素子103側の端部135(PD素子103側の外縁)は、矩形状のうちy軸方向に延伸する辺(右辺)である。IC102は端部135に沿って配置される8個のIC端子136(パッド電極)を含む。
【0025】
PD素子103は、IC102の前方(+x軸方向)に配置される。PD素子103のサブマウント103Bは、
図4に示す通り、矩形状を有しており、サブマウント103BのIC102側の端部137(IC102側の外縁)は、矩形状のうちy軸方向に延伸する辺(左辺)である。サブマウント103Bの上面には、8個のPD端子138(パッド電極)と電極パターン139が配置されている。IC102の各IC端子136は、PD素子103の対応するPD端子138とワイヤ110を介して電気的に接続される。IC102は他にも複数の端子141を備える。複数の端子141は例えばフレキシブル基板などの配線基板(図示せず)とワイヤを介して電気的に接続され、IC102を駆動する電源や制御のための信号が複数の端子141それぞれに入力される。
【0026】
当該実施形態に係る光受信モジュール100の主な特徴は、平面視して、IC102の端部135に対するレンズ124の位置AとPD素子103の受光窓111の位置Bとの距離L1が、IC102の端部135に対する位置Bとマイクロレンズアレイ104の2つの橋脚部122A,122BのIC102側の端部140の位置Cとの距離L2より、長いことにある。ここで、IC102の端部135に対する位置とは、端部135を原点とし、端部135に対して+x軸方向の座標を意味する。ここで、+x軸方向は、端部135に対して垂直にIC102から離れる向きと一致している。
【0027】
レンズ124の位置Aとは、
図5に示す通り、レンズ124の光軸141(中心)を貫く表面(レンズ面)の位置であり、レンズ本体部121の立ち上がり面123Aの平面からレンズ124が盛り上がるように形成される場合は、立ち上がり面123Aの位置よりIC102の端部135よりさらに外側(+x軸方向)にあるが、レンズ124の表面の盛り上がりは微小なので、レンズ124の位置は立ち上がり面123Aの平面の位置と実質的に一致している。ここでは、4個のレンズ124がIC102の端部135の延伸方向(y軸方向)に沿って並んでおり、4個のレンズ124の位置Aは互いに一致している。
【0028】
受光窓111の位置Bとは、PD素子103の受光窓111の中心の位置である。当該実施形態にかかる受光窓111は円形状を有しており、中心とは円形状の中心を意味する。受光窓111の位置Bの定義は受光窓111の形状によるが、受光窓111をx軸に投影する場合に受光窓111のIC102側の端とそれとは反対側の端との中点と定義される。ここでは、4個の受光窓111がIC102の端部135の延伸方向(y軸方向)に沿って並んでおり、4個の受光窓111の位置Aは互いに一致している。
【0029】
2つの橋脚部122A,122Bの端部140の位置Cとは、2つの橋脚部122A,122BそれぞれのIC102側の端のうち、IC102の端部135に近い方の位置である。一般に、アンプ機能を有するIC102のサイズは他の部品(PD素子103、光分波回路105等)より横幅(y軸方向)が大きく、光受信モジュール100の横幅(y軸方向)を決定する主要因となっている。マイクロレンズアレイ104をIC102ごと覆うような形状とした場合、つまり橋脚部122A、122BがIC102の両端(y方向に沿う両端)を挟むように配置した場合は、IC102とPD素子103を近づけることが可能となる。しかし、結果として光受信モジュール100の横幅の増大を招くこととなり、光モジュール2の小型化の障害となる。それゆえ、マイクロレンズアレイ104はIC102の前方(
図4に示す右側)に配置されており、マイクロレンズアレイ104の2つの橋脚部122A,122BはともにIC102の端部135より前方にあり、2つの橋脚部122A,122Bの端部140の位置Cは、IC102の端部135より前方(+x軸方向)にある。ここでは、2つの橋脚部122A,122Bの端の位置(x軸方向の座標)はともに一致している。この配置とすることで光受信モジュールの横幅の拡大を抑えつつマイクロレンズアレイ104を設けることが可能となるが、IC102とPD素子103との間を広げてしまうこととなる。そのため本発明ではL2をL1より大きくするようにすることで、この問題を解決している。
【0030】
図5に示す通り、レンズ本体部121のxz平面による断面は、立ち上がり面123Aと上面123B(ミラー126の反射面)と底面とで、略直角二等辺三角形を構成するが、正確には上面123Bの後方で後面により切断された台形となっている。上面123Bはxy平面と45°の角度で交差している。これにより、-x軸方向に入射する光がレンズ124により集光されつつ、上面123Bのミラー126によって反射され、-z方向へ進行方向が変更され、-z軸方向にPD素子103の受光窓111に入射する。上面123Bがxy平面と交差する角度は45°に限定されることはなく、45°±5°の範囲内にあるのが望ましい。また、レンズ本体部121の断面がかかる形状をしていることにより、レンズ124を覆って配置される反射防止膜125の反射防止膜形成領域ARを十分に確保しつつ、距離L2が距離L1より短くなるよう、PD素子103を配置することが出来ている。これにより、PD素子103のPD端子138を、IC102のIC端子136に近づけて配置することができ、PD端子138とIC端子136とを接続するワイヤ110の配線長を短くすることが出来ている。ワイヤ110の配線長を短くすることにより、インダクタンス増大を抑制することができ、ワイヤ110の配線長に起因する高周波特性への影響を抑制することが出来ている。
【0031】
当該実施形態に係る光受信モジュール100は、距離L2が距離L1より少しでも短ければ、PD素子103をより後方に配置することができるので、本発明の効果を奏する。また100Gbit/s超のデータセンター向け光送受信モジュールのサイズに鑑みると、距離L1と距離L2の合計L1+L2(=L)は1.0mm以内に収めることが望ましい。さらに、高速動作させるためには、距離L2の下限は以下となるのが望ましい。フォトダイオード103Aの受光窓111に入射した集束光がフォトダイオード103Aの光吸収層にて小さな焦点サイズとなっているのが望ましく、その観点では、受光窓111に入射する集束光の断面は十分に小さくなるようレンズ124によって集光されているのが望ましく、受光窓111(受光部)のサイズはより小さい方が望ましい。しかしながら、受光窓111と光吸収層との距離に加え、光束の断面が有限サイズであるや光軸調整誤差などに鑑みて、受光窓111の半径は0.015mm以上を確保するのが望ましい。。また、平面視して、サブマウント103Bの端部137からフォトダイオード103Aの受光窓111の端(受光窓111の縁の中で端部137に最も近い部分:
図4に示す左端)までの距離もより短い方が望ましい。しかしながら、サブマウント103Bの上面にPD端子138やフォトダイオード103Aを配置する領域を確保する観点より、かかる距離は0.05mm以上を確保するのが望ましい。よって、距離L2の下限は、サブマウント103Bの端部137が2つの橋脚部122A,122Bの端部140の位置Cと一致する場合であり、0.065mmとなる。このとき、距離L1は1-0.065=0.935mmとなり、L2/L1の下限は0.070である。従って、高速動作かつ小型化を実現するためのL2/L1の範囲は0.07以上1未満となる。
【0032】
同様に、高速動作させるためには、距離L2の上限は以下となるのがさらに望ましい。IC102の端部135と2つの橋脚部122A,122Bの端部140(位置C)との間隔は製造精度に鑑ると0.1mm以上確保されるのが望ましい。距離L2を大きくすると、ワイヤ110が長くなり、高周波特性が劣化してしまう。高周波特性に鑑みると、IC102の端部135とサブマウント103Bの端部137との距離は0.45mm以下が望ましい。サブマウント103Bの端部137が2つの橋脚部122A,122Bの端部140の位置Cと一致する場合に、2つの橋脚部122A,122Bの端部140からサブマウント103Bの端部137との距離は、0.45-0.1=0.35mm以下となるのが望ましく、また、サブマウント103Bの端部137からフォトダイオード103Aの受光窓111の中心(位置B)までの距離は、前述の通り、0.015+0.05=0.165mmであるのが望ましい。このとき、距離L2は0.35+0.065=0.415mmとなり、距離L1は1-0.415=0.585mmとなる。よって、L2/L1は0.71以下がさらに望ましい。
【0033】
さらなる高周波特性向上に鑑みると、IC102の端部135とサブマウント103Bの端部137との距離は0.35mm以下がさらに望ましい。このとき、距離L2は(0.35-0.1)+0.065=0.315mmとなり、距離L1は1-0.315=0.685mmとなる。よって、L2/L1は0.46以下がさらに望ましい。
【0034】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る光受信モジュール100の主要部の構成を示す断面図である。
図6は
図5に示す第1の実施形態に係る光受信モジュール100の主要部の断面に対応しており、レンズ本体部121の構造が異なること以外は、当該実施形態に係る光受信モジュール100の構成は第1の実施形態と同じである。
【0035】
図6に示す通り、当該実施形態に係るレンズ本体部121は、
図5に示す第1の実施形態に係るレンズ本体部121から、レンズ124の上方に配置する部分の一部を切断した形状を有している。ここで、レンズ本体部121の上面123Bは切断により発生した平坦面とミラー126の斜面とを有する。反射防止膜125の反射防止膜形成領域ARが確保でき、レンズ124の形成するための成形の工程上問題なければ、第1の実施形態と同様の効果を奏しつつ、第1の実施形態と比べてさらなる小型化が実現されている。
【0036】
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態に係る光受信モジュール100の主要部の構成を示す断面図である。
図7は
図5に示す第1の実施形態に係る光受信モジュール100の主要部の断面に対応しており、レンズ本体部121の構造が異なること以外は、当該実施形態に係る光受信モジュール100の構成は第1及び第2の実施形態と同じである。
【0037】
図7に示す通り、当該実施形態に係るレンズ本体部121は、
図5に示す第1の実施形態に係るレンズ本体部121から、レンズ124の下方に配置する部分の一部を切断した形状を有しており、断面形状はレンズ本体部121の断面は直角二等辺三角形となっている。反射防止膜125の反射防止膜形成領域ARが確保でき、レンズ124の形成するための成形の工程上問題なければ、第1の実施形態と同様の効果を奏しつつ、第1の実施形態と比べてさらなる小型化が実現されている。
【0038】
[第4の実施形態]
図8は、本発明の第4の実施形態に係る光受信モジュール100の主要部の構成を示す断面図である。
図8は
図5に示す第1の実施形態に係る光受信モジュール100の主要部の断面に対応しており、レンズ本体部121の構造が異なること以外は、当該実施形態に係る光受信モジュール100の構成は第1乃至第3の実施形態と同じである。
【0039】
図8に示す通り、当該実施形態に係るレンズ本体部121の断面は、
図5に示す第1の実施形態に係るレンズ本体部121の断面に、後方(
図8の左側)に延伸する矩形状を追加した形状となっている。ここで、レンズ本体部121の上面123Bはミラー126の斜面と追加された矩形状の上辺(上面)の平坦面とを有する。PD素子103の形状などにより入射する光の光軸よりもさらに後方にスペースを確保する必要がある場合に、当該実施形態は最適である。
【0040】
以上、本発明の実施形態に係る光受信モジュール、光モジュール、光伝送装置、及び光伝送システムについて説明した。本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能であり、本発明を広く適用することができる。上記実施形態で説明した構成を、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【0041】
プラスティック樹脂を用いる射出成形によってレンズを製造する場合、金型に材料を注入する速度によっては気泡や斑が生じる危険がある。かかる危険を抑制するために、形状変化はより穏やかであるのが望ましく、橋脚部122A,122Bの幅(x軸方向の長さ)はより確保されるのが望ましい。一般に、橋脚部122A,122Bの幅を確保する場合、IC端子136とPD端子138との距離が広がってしまって、ワイヤ110の配線長も長くなってしまう。これを回避するために、レンズ本体部121のy軸方向の長さをIC102の端部135の長さ(y軸方向の長さ)より長くし、橋脚部122A,122Bの間にIC102を挟む構造としても解決することが出来る。しかしながら、この場合、マイクロレンズアレイ104のサイズが増大となり、小型化を阻害する要因となってしまう。また、レンズ本体部121の幅(x軸方向の長さ)を橋脚部122A,122Bの幅(x軸方向の長さ)より長くして、レンズ本体部121が橋脚部122A,122Bより後方にひさしのように突出する構造も考えられる。しかしながら、橋脚部122A,122Bの幅を十分に確保する観点からは、橋脚部122A,122Bの幅がレンズ本体部121の幅と一致しているのが望ましい。
【0042】
当該実施形態では、光分波回路105よりレンズ124に入射する光は平行光としているが、これに限定されることはない。光分波回路105がさらに集光レンズを備え、レンズ124に入射する光が集束光であっても、レンズ124によってさらに集束され適切にPD素子103へ集束光が入射してもよい。
【0043】
上記実施形態では、IC102は矩形状を有するものとしているが、これに限定されることはない。すなわち、IC102の端部135は直線形状であってPD素子103のサブマウント103Bの端部137と対向しているのが望ましいが、これに限定されることはない。端部135が直線形状でない場合であっても、x軸方向に沿ってマイクロレンズアレイ104の橋脚部122A,122Bに近接する箇所を端部135とすればよい。
【0044】
上記実施形態では、4チャンネルのマイクロレンズアレイ104の場合について説明したが、これに限定されることはなく、他の数のチャンネルの場合であってもよいし、単チャンネルであってもよい。また、4個の受光窓111のうち、少なくともいずれかにおいて、距離L2が距離L1より短くあれば、かかる部分についてはワイヤ110の配線長を短くすることによるインダクタンス増大を抑制する効果を奏する。
【符号の説明】
【0045】
1 光伝送装置、2 光モジュール、3,3A,3B 光ファイバ、11,21、103 プリント回路基板、12 IC,22A,22B フレキシブル基板、23A,100 光受信モジュール、23B,光送信モジュール、101 金属基板、102 IC、103 PD素子、103A フォトダイオード、103B サブマウント、104 マイクロレンズアレイ、105 光分波回路、106 箱型筺体、107 接続部、110 ワイヤ、111 受光窓、121 レンズ本体部、122A,122B 橋脚部、123A 立ち上がり面、123B 上面、124 レンズ、125 反射防止膜、126 ミラー、130 光ファイバ、135,137,140 端部、136 IC端子、138 PD端子、139 電極パターン、A,B,C 位置、AR 反射防止膜形成領域、L1,L2 距離。