(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】管路切断方法
(51)【国際特許分類】
B23B 41/08 20060101AFI20220509BHJP
B23B 51/05 20060101ALI20220509BHJP
B23B 45/14 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B23B41/08
B23B51/05 A
B23B45/14
(21)【出願番号】P 2018072884
(22)【出願日】2018-04-05
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】澤田 実
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕策
(72)【発明者】
【氏名】高柳 健太郎
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-236948(JP,A)
【文献】特開2007-057078(JP,A)
【文献】特開2008-101702(JP,A)
【文献】米国特許第05025670(US,A)
【文献】国際公開第97/001723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00 - 49/06
B23B 51/00 - 51/14
F16L 41/00 - 55/48
B23D 21/00 - 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路部材を構成する複数の流体管及び該複数の流体管に架けて接続された接続部材を密封状に囲う筐体の内部で、前記管路部材を貫通するセンタードリル及び該センタードリル回りに回転するホールソーを備えた切断手段により、前記管路部材を不断流状態で切断し、前記センタードリルの外径方向に延出する係止部により、切断された前記管路部材の切片を係合し前記筐体の外部に搬出する管路切断方法であって、
前記接続部材と該接続部材に接続された少なくとも一つの前記流体管とを、固定具により管軸方向に固定した後、
前記センタードリルの前記係止部が前記複数の流体管の管端から管軸方向に離間した位置にて、前記センタードリル
が前記接続部材を貫通することを特徴とする管路切断方法。
【請求項2】
前記接続部材と該接続部材に接続された全ての前記流体管とを、前記固定具により管軸方向に固定した後、前記センタードリル
が前記接続部材を貫通することを特徴とする請求項1に記載の管路切断方法。
【請求項3】
前記流体管と前記接続部材との接続位置を検知した後、前記センタードリル
が前記接続部材を貫通することを特徴とする請求項1または2に記載の管路切断方法。
【請求項4】
前記固定具を前記流体管若しくは前記接続部材に溶接することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の管路切断方法。
【請求項5】
前記接続部材の外面に、前記係止部が係合する係合部を固定した後、前記センタードリルが前記係合部及び前記接続部材を貫通することを特徴とする請求項1ないし
4のいずれかに記載の管路切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路部材を密封状に囲う筐体の内部で、当該管路部材を切断手段により不断流状態で切断する管路切断方法及び管路切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管路切断方法には、流体管等の管路部材を密封する筐体の内部にて、センタードリルを軸方向に進出させて管路部材の管壁を貫通するとともに、このセンタードリルの周囲を回転するホールソーで切断した後、センタードリルの外周に設けられた係止部を外径方向に延出させ、この係止部により管路から分断された管路部材の切片を係止させて、当該切片を筐体の外部に搬出するものがある。
【0003】
このような管路切断方法に使用される係止部にあっては、センタードリルの軸体を貫通する貫通孔回りにヒンジ状に開閉可能に設けられ、管路部材の切断の際には、センタードリルの進行に追随して閉回動することで管路部材の穿孔を通過し、切断された管路部材の回収の際には、センタードリルの退行に追随して自重で開回動することで係止部を切片の穿孔周縁に係止させ、当該切片を筐体の外部に搬出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平3-26417号公報(第10頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、筐体内にて切断対象となる管路部材として、複数の流体管と、それらの管端部に架設された継輪や短管、レジューサ等の異形部を有する接続部材との接続箇所を切断する場合、特許文献1にあっては、ホールソーに先行するセンタードリルが、先ず接続部材を貫通するに伴い、当該接続部材とこれに接続された流体管とが、管軸方向に相対移動してしまう結果、このセンタードリルに追随するホールソーによる流体管の切断位置が位置ズレを生じて、管路部材の所期通りの正確な位置を切断できない虞が生じるという問題がある。また、振動などによりセンタードリルやホールソーが破損したり、係止部が管端に接触して破損する虞もある。
【0006】
このようにセンタードリル及びホールソーを用いて管路部材を切断する際に、これら流体管と接続部材とに生じる相対移動は、例えば耐震性を備えるべく軸方向に所定長さの相対移動を許容された状態で嵌挿された接続態様(プッシュオンタイプ等)を原因とする他、例えば流体管と接続部材とがボルト・ナット等で締結された接続態様(メカニカルタイプ等)であっても、当該締結部材の経年劣化による腐食や弛みを原因としていた。すなわち流体管と接続部材とは、これらの接続態様に関わりなく相対移動する虞を有していた。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、筐体内の切断対象となる管路部材として、複数の流体管と接続部材との接続箇所を設計通りの正確な位置にて切断することができる管路切断方法及び管路切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の管路切断方法は、
管路部材を構成する複数の流体管及び該複数の流体管に架けて接続された接続部材を密封状に囲う筐体の内部で、前記管路部材を貫通するセンタードリル及び該センタードリル回りに回転するホールソーを備えた切断手段により、前記管路部材を不断流状態で切断し、前記センタードリルの外径方向に延出する係止部により、切断された前記管路部材の切片を係合し前記筐体の外部に搬出する管路切断方法であって、
前記接続部材と該接続部材に接続された少なくとも一つの前記流体管とを、固定具により管軸方向に固定した後、前記センタードリルが少なくとも前記接続部材を貫通することを特徴としている。
この特徴によれば、管路部材を密封する筐体の内部にて、切断手段のセンタードリルを接続部材に貫通しても、少なくとも一つの流体管と接続部材とが固定されていることから、これら管路部材同士の相対移動が防止されており、センタードリルにより切断位置を位置決めできるため、このセンタードリルに追随するホールソーによってこれら流体管及び接続部材を設計通りの正確な位置にて管路を切断することができる。
【0009】
前記接続部材と該接続部材に接続された全ての前記流体管とを、前記固定具により管軸方向に固定した後、前記センタードリルが少なくとも前記接続部材を貫通することを特徴としている。
この特徴によれば、接続部材と全ての流体管とが管軸方向の相対移動に移動することなく、設計通りの位置にて管路を確実に切断できる。
【0010】
前記流体管と前記接続部材との接続位置を検知した後、前記センタードリルが少なくとも前記接続部材を貫通することを特徴としている。
この特徴によれば、流体管と接続部材との接続位置を検知することで、係止部がこれら管路部材と干渉を生じる虞がある流体管の端面近傍を避けた良好な位置を調整して、センタードリルを貫通させることができる。
【0011】
前記固定具を前記流体管若しくは前記接続部材に溶接することを特徴としている。
この特徴によれば、固定具を流体管若しくは接続部材に溶接することで、当該固定具により流体管と接続部材とを容易且つ強固に固定することができる。
【0012】
前記センタードリルの外径方向に延出する前記係止部が前記複数の流体管の管端から管軸方向に離間した位置にて、前記センタードリルが前記接続部材を貫通することを特徴としている。
この特徴によれば、センタードリルの係止部が流体管の端面に干渉することが無く、管路を早期に切断し、係止部によって切片を確実に回収することができる。
【0013】
前記接続部材の外面に、前記係止部が係合する係合部を固定した後、前記センタードリルが前記係合部及び前記接続部材を貫通することを特徴としている。
この特徴によれば、予め接続部材に固定した係合部をセンタードリルが貫通することで、係止部を係合部に確実に係合させることができる。
【0014】
前記した管路切断方法に用いられる管路切断装置であって、
前記管路部材を密封状に囲う前記筐体と、前記係止部を備えた前記センタードリル及び前記ホールソーを有する前記切断手段と、前記接続部材と該接続部材に接続された少なくとも一つの前記流体管とを管軸方向に固定する前記固定具と、から構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、管路部材を密封する筐体の内部にて、切断手段のセンタードリルを接続部材に貫通しても、流体管と接続部材とが固定具によって固定されており、これら管路部材同士の相対移動が防止されているため、切断に際しセンタードリルに設けられた係止部が流体管の端面と干渉することなく、確実に管路を切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1における管路部材及び固定片を示す図であり、(a)は(b)のA-A断面図、(b)は側面断面図である。
【
図2】管路部材に組み付けられた筐体を示す正面断面図である。
【
図3】筐体内で管路部材を切断する途中のカッタを示す正面断面図である。
【
図4】筐体内で管路部材を切断完了したカッタを示す正面断面図である。
【
図5】筐体内で管路部材の切片を回収するカッタを示す正面断面図である。
【
図6】センタードリルに設けられた実施例1における係止部を示す平面断面図であり、(a)はロックピンの初期状態、(b)はロックピンの回動状態、(c)は切片を係止するロックピンの初期状態を示す図である。
【
図7】制流体を設置する設置機を示す正面断面図である。
【
図8】切断後の管路部材に設置された制流体を示す一部正面断面図である。
【
図9】(a)は固定具の変形例1を示す拡大断面図であり、(b)は固定具の変形例2を示す断面図であり、(c)は固定具の変形例3を示す断面図である。
【
図10】センタードリルに設けられた変形例における係止部を示す図であり、(a)は係止リングの自然状態及びB-B断面図、(b)は係止リングの弾性変形状態、(c)は切片を係止する係止リングの自然状態を示す図である。
【
図11】筐体内で係合部が取り付けられた管路部材を切断完了したカッタを示す正面断面図である。
【
図12】管路部材の内部を検知手段により検知する状況を示す一部正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る管路切断方法及び管路切断装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0017】
実施例に係る管路切断方法及び管路切断装置につき、
図1から
図12を参照して説明する。先ず
図1の符号1は、本発明の管路切断方法及び管路切断装置により切断される管路部材である。
【0018】
実施例においては、管路切断方法として、既設の管路部材1を構成する複数の流体管としての直管3,3及び接続部材4の所定箇所を筐体5内にて切除し、その切除箇所に制流体10を不断流状態で設置するまでの一連の流れを
図1から
図8を参照して説明する。尚、管路部材1内の流体は、本実施例では上水であるが、例えば、工業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0019】
本実施例の管路部材1は、ダクタイル鋳鉄管であって、
図1,2に示されるように、管軸方向の端部3aの端面3b(管端)同士が対向し、且つ所定間隔に離間した配置位置にて管路方向に延びる一対の直管3,3と、これら直管3,3の端部3a,3aに跨って密封状に接続され管路方向に延びる筒状の継輪20を備える接続部材4と、から構成されている。本実施例では、管路部材1の管路方向は略水平方向に延びており、継輪20は略直線状で断面視略円形状に形成されている。尚、本発明に係る管路部材は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により管路部材の内周面に被覆してもよい。
【0020】
ここで本発明の管路部材を構成する接続部材は、本実施例のように直管状の継輪20を備えるものに限られず、流体管の端部に接続された部材であればよく、例えば接続部材は、曲管部や、分岐部、T字部、十字部、異径部、レジューサ、短管部、排水部等の様々な異形部を有する異形管を総称するものである。また接続部材に接続される流体管は、本実施例のように継輪20の両端に接続される2本の流体管に限られず、例えば接続部材がT字部を有している場合、当該T字部に接続される3本の流体管でもよいし、また例えば接続部材が十字部を有している場合、当該十字部に接続される4本の流体管であっても構わない。
【0021】
本実施例の直管3,3と接続部材4とは、直管3,3の挿口部である端部3aが継輪20に密封状に挿入されて接続されるものであり、以下に接続の態様について詳述する。なお、接続部材4とその各端部にそれぞれ接続される直管3,3との接続態様は同様であるため、接続部材4と一方の直管3との接続についてのみ説明し、他方の説明は省略する。
【0022】
接続部材4は、直管3,3の両端部に架けて外嵌される継輪20と、この継輪20の管軸方向の各端に接続される押輪21と、継輪20の内周と直管3,3の外周との間に介設されるシール部材22とから主として構成される。継輪20の受口部の内周面には環状の凹部20bが形成されており、この凹部20b内には、直管3の外周面に当接若しくは近接するロックリング23が配設されている。また継輪20の凹部20bよりも外方の内周面は、軸方向の端面に向けて漸次拡径するテーパ面に形成されており、このテーパ面と直管3の外周面との間に、密封部材としてのシール部材22が配設されている。またロックリング23とシール部材22との管軸方向の間には、バックアップリングが介設されている。
【0023】
また継輪20の軸方向の端面に隣接して、押輪21(周方向に分割構造でもよい)を直管3の外周面に外嵌する。更に、この押輪21の周方向に沿って複数形成された貫通孔に締結部材24の雄ネジ部を貫通して、継輪20の端面に形成された雌ネジ部に螺挿するとともに、締結部材24の雄ネジ部にナットを螺挿し締結する。この締結によってシール部材22は、押輪21により管軸方向に押圧され、継輪20のテーパ面と直管3の外周面との間で挟圧されることで高い密封性能を発揮する。なお、この実施例の継輪20はいわゆるS形であり、押輪21と継輪20との間には割輪が介在している。
【0024】
また直管3の先端には、外周面よりも大径の鍔部3cが形成されていることから、地震や不平均力等の外力を原因として、直管3と接続部材4とが離脱方向に相対移動した場合、この鍔部3cと継輪20の凹部20bの内側壁との間にロックリング23が挟持されることで、これら直管3と接続部材4との離脱が防止されている。換言すれば、直管3と接続部材4とは、管軸方向に一定程度の相対移動が許容された耐震機能を有する接続状態で離脱防止されている。
【0025】
また、本発明の管路部材を構成する流体管と接続部材との接続の態様は、本実施例のように継輪20と押輪21とにより構成されるものに限られず、後述するように種々の態様によって接続されるものであってもよい。
【0026】
以下に本発明に係る管路切断方法について工程順に説明する。先ず、固定具の取付け工程について説明すると、
図1(a)に示されるように、管路部材1を構成する直管3,3と接続部材4との管軸方向の相対移動を固定する固定具としての固定片30を取付ける。本実施例の固定片30は、略矩形状の金属材からなる板状部材から構成されており、その一側面30bが押輪21の外端面に当接若しくは近接する管軸方向の位置にて、その底面30cの周縁を溶接部30aとして直管3の外周面に溶接される。よって、当該固定片30が溶接された直管3は、接続部材4に対し管軸方向に過挿入される方向の相対移動が防止される。
【0027】
また
図1(b)に示されるように、本実施例の固定片30は、接続部材4の管軸方向の両端部において固定され、且つ各端部につき直管3の周方向に複数個所(本実施例では略90度の等配で4箇所)で固定されている。
【0028】
このように、固定片30を直管3,3に溶接することで、この固定片30により直管3,3と接続部材4とを容易且つ強固に固定することができる。なお、固定片30を直管3,3に溶接するものに限られず、接続部材4を構成する例えば継輪20や押輪21に溶接してもよい。
【0029】
なお、固定具の固定箇所は本実施例に限らず、接続部材の少なくとも一つの管軸方向の端部において固定されてもよいし、周方向に少なくとも1箇所のみ若しくは2箇所以上の複数個所で等配又は非等配に固定されてもよい。また固定具の固定方法は、本実施例の溶接に限られず、例えば直管3の外周を巻回する締結バンドを用いて固定具を固定してもよい。
【0030】
また上述した固定具の固定工程は、少なくとも後述の切断工程よりも前段であればよく、例えば固定工程は、後述する筐体の組付け工程よりも前段であってもよいし、後段であっても構わない。
【0031】
次に、筐体の組付け工程について説明する。
図2に示されるように、上記したように固定片30が固定された直管3,3の端部及び接続部材4を含む管路部材1に対して、管路切断装置を構成する筐体5を密封状に外嵌する。筐体5は、複数分割構造であり、本実施例では、上部側を構成する第1分割体51と、下部側を構成する第2分割体52とから構成される筐体本体50と、移動防止用の一対の押輪54,54と、から主に構成されている。尚、筐体5の分割構造は、本実施例に限らず例えば、水平方向に分割されてもよいし、また、分割数も3分割以上の所定数に分割されてもよい。また、分割筐体同士の接合は、本実施例では、溶接接合であるが、これに限らず例えば、パッキンを介しボルト・ナット等の締結部材により接合されても構わない。
【0032】
直管3,3の端部及び接続部材4を含む管路部材1に対する筐体5の管軸方向の組付け位置は、継輪20の中央部20c、すなわち継輪20内部で管軸方向に離間する直管3,3同士の離間部分の中央部が、筐体5の略中央に配置される位置が好ましい。
【0033】
図2に示されるように、筐体本体50は、直管3,3の端部及び接続部材4に沿って囲繞するように管路方向に延設されるとともに、上下方向に延び上方に開口する開口部50cが形成されている。筐体本体50の管路方向の両端部には、上下2分割され離脱防止を図る一対の押輪54,54が密封状に取付けられる。尚、押輪54の分割方向及び分割数は、本実施例に限らない。
【0034】
次いで、管路部材の切断工程について説明する。
図3に示されるように、筐体本体50の開口部50cの上端に設けられた取付フランジ50fに、開口部50cを閉塞可能な弁体6aを備える作業弁6を取付けるとともに、該作業弁6の上方に切断手段としての切断機7を設置する。なお本発明の管路切断装置は、筐体5と、切断機7と、固定片30とから主として構成される。
【0035】
切断機7は、取付フランジ筒71と、管路部材1を切断するためのカッタ72と、取付フランジ筒71内においてカッタ72を回転させ、かつカッタ72を上下方向に進行・退避させるための駆動機構78と、から主に構成されている。カッタ72は、先端に周方向に沿って切断刃を備えたホールソー73と、該ホールソー73の回転軸と同軸に配設され切断刃よりも先方に突出したセンタードリル74とから構成されている。尚、カッタ72のホールソー73は、センタードリル74及び筐体5の開口部50cと同心の円形状に構成され、開口部50cから筐体5内に挿入され、筐体本体50の底部近傍の位置まで進行可能となっている。
【0036】
更にセンタードリル74は、略円柱状の軸体75と、この軸体75の先端側に固定され、先端ドリル77を有したドリル部76と、から構成されている。これら軸体75及びドリル部76は、略同径の周壁を有し、先端ドリル77により、この周壁と略同径若しくは僅かに大径の穿孔Cが、穿設対象となる継輪20に形成される。なお、センタードリル74の軸体75とドリル部76とは、一体でも良いし、別部材として構成されても構わない。
【0037】
またセンタードリル74の軸体75及びドリル部76には、係止部としてのロックピン40が設けられている。ロックピン40は、センタードリル74の軸方向に複数設けられ、且つそれぞれが回動可能に設けられている。本実施例ではロックピン40は、軸体75の軸方向に離間して9か所、及びドリル部76に1カ所設けられるが、ロックピン40が設けられる箇所は本実施例に限られず、センタードリル74に少なくとも1カ所若しくは2箇所以上の複数個所に設けられていれば良い。
【0038】
またこれら複数のロックピン40は、それぞれ同様の態様で軸体75又はドリル部76に設けられているため、以下に軸体75に設けられた一つのロックピン40についてのみ説明する。
【0039】
図6(a)~(c)に示されるように、軸体75には、略円柱状の周壁の一部が径方向に対抗して平坦状に切り欠かれた形状の切欠部75a,75aが設けられ、この切欠部75aと周壁とにより上方に面する段部75bが形成されている。また、この切欠部75aにおける下部を径方向に貫通する貫通孔75cが形成されている。
【0040】
ロックピン40は、この貫通孔75cを遊嵌状に貫通した中央部41と、貫通孔75cから突出した中央部41の両端にて折曲形成された側部42,42とからなる略コ字状に形成されており、すなわちロックピン40の側部42,42は、貫通孔75cを貫通した中央部41回りに、上方と外側方とにかけて回動可能に設けられている。
【0041】
より詳しくは
図6(a)に示されるように、ロックピン40の初期位置は、その自重及びセンタードリル74の回転で生じる遠心力により、側部42,42が段部75b上に横方向に載置されることで、平面視で略コ字状に配置された位置である。このロックピン40の初期位置では、側部42の先端部43が軸体75の周壁よりも外径方向に突出しており、後述する継輪20に形成された穿孔Cの周縁に係止可能となっている(
図6(c)参照)。
【0042】
また
図6(b)に示されるように、ロックピン40の回動位置は、側部42の先端部43が後述する継輪20に形成された穿孔Cの周縁と接触することにより、ロックピン40がその初期位置から中央部41の軸回りに略90度回動した位置であり、側部42,42が段部75b上に縦方向に載置されることで、側面視で略コ字状に配置された位置である。このロックピン40の回動位置では、側部42の先端部43を含め全部が、軸体75の周壁よりも外径方向に突出することなく、すなわちロックピン40は軸体75の周壁から切り欠かれた切欠部75a内に納まっている。
【0043】
次に、切断機7による具体的な管路部材1の切断工程としては、先ず、作業弁6内部の弁体6aを退避させて筐体5の開口部50cを開放した後、
図3及び
図4に示されるように、切断機7のカッタ72、すなわちセンタードリル74及びホールソー73を回転させながら下方に進行させ管路部材1を不断流状態で切断する。
【0044】
本実施例1の切断工程について、詳述すると、
図3に示されるように、まずホールソー73の進行方向に先行するセンタードリル74の先端ドリル77が、回転しながら接続部材4の継輪20の中央部20cの壁体を貫通して穿孔Cを穿設し、次いでセンタードリル74のドリル部76基端側及び軸体75がこの穿孔Cを順次通過する。この通過の際にそれぞれのロックピン40は、穿孔Cの周縁に接することで一時的に初期位置から回動位置に回動し、穿孔Cを通過した後に再び初期位置に戻るように挙動する。
【0045】
この穿孔C形成の際に、回転するセンタードリル74により接続部材4に対して外力や振動が与えられるが、接続部材4と直管3,3とが固定片30により固定されていることで、接続部材4は直管3,3に対し相対移動することが防止される。したがって、センタードリル74に追随するホールソー73が、位置ズレを生じることなく所期の管軸方向の位置にて直管3,3の管壁を切断することができる。
【0046】
尚、本実施例においては、カッタ72を構成するセンタードリル74により、接続部材4の継輪20に穿孔Cが穿設されるとともに、ホールソー73により接続部材4の両端よりも外方の直管3,3の管壁が、このホールソー73の進行によって一度に切断される。この際、センタードリル74の位置は、直管3,3の管端部やシール部材22等の直管3,3と接続部材4との介設部材を避けた位置が好適で、更には初期位置におけるロックピン40の側部42の先端部43が、直管3,3の管端から離間した位置が最適である。
【0047】
また、筐体本体50内の底部には、流体を外部に排出可能なドレン(図示略)が開閉可能な弁とともに取付けられているため、カッタ72により管路部材1を切断する際に発生する切り粉を流体とともに外部へ排出できる。このドレンは、制流体操作時の充水のためのバイパスとしても用いることができる。
【0048】
カッタ72により管路部材1が切断されると、管路部材1から分断された接続部材4及びこの接続部材4に接続された直管3,3の管端部からなる切片2が、ホールソー73内にてセンタードリル74により貫通されて保持された状態となる。そして、
図5に示されるように、カッタ72を取付フランジ筒71の内部に引き上げると、継輪20に形成された穿孔Cの下部周縁が初期位置のロックピン40の側部42の先端部43に係止されることで(
図6(c)参照)、このホールソー73内の切片2がセンタードリル74に追随して引き上げられ、筐体5の外部に搬出される。
【0049】
このように、センタードリル74の外径方向に延出するロックピン40が複数の直管3,3の管端から管軸方向に離間した位置にて、センタードリル74が接続部材4を貫通することで、センタードリル74のロックピン40が直管3,3の端面3b、3bに干渉することが無く、管路を早期に切断し、ロックピン40によって切片2を確実に回収することができる。
【0050】
作業弁6内部の弁体6aにより筐体5の開口部50cを閉塞することで、管路部材1の切除作業が完了する。また、カッタ72による管路部材1の切除後に筐体5内に残される直管3,3は、互いに分断されるものの、筐体5により囲繞された状態で一体状に保持される。尚、特に図示しないが、作業弁6内部の弁体6aにより筐体5の開口部50cを閉塞した状態で、切断機7の撤去作業を行う。
【0051】
次いで、
図7に示されるように、筐体5の筐体本体50の開口部50cを閉塞した作業弁6の上方に設置機8を設置する。当該設置機8は、制流体10を吊支するための弁吊金具82と、この弁吊金具を上下方向に進行・退避させるための駆動機構83と、から主に構成されている。
図8に示されるように、本実施例の制流体10は、開口部を有する仕切壁11と、この開口部を開閉する弁体13と、上蓋部12と、この弁体13を開閉駆動する駆動部18と、から主に構成されるいわゆるバタフライ弁であり、仕切壁11には、下端部から両側部に亘って第1シール部材S1が取付けられ、上蓋部12には、外周部に亘って環状の第2シール部材S2が取付けられている。尚、第1シール部材S1及び第2シール部材S2は、NBR、SBR、CRを含むゴム、エラストマー、樹脂等の弾性部材から構成されている。
【0052】
設置機8による制流体10の設置工程としては、先ず、作業弁6内部の弁体6aを退避させて筐体5の開口部50cを開放した後、設置機8の弁吊金具82により吊支される制流体10を下方に進行させ、筐体5内の所定位置に制流体10を挿入する。
【0053】
筐体本体50の内壁面には、他の部位よりも筐体本体50の内側に突出する上面視略コ字状の側壁段部50g,50gが互いに対向するように形成されている。そのため、制流体10が筐体5内に挿入される際には、制流体10の仕切壁11の両側部が側壁段部50g,50gによりガイドされることにより、制流体10の挿入位置のずれが防止される。
【0054】
また、筐体5の底部内壁面には、側壁段部50g,50gと連続する底壁段部50hが形成されている。更に筐体5の開口部50c側における側部内壁面には、側壁段部50g,50gと連続する環状段部50jが形成されている。そのため、制流体10が筐体5内に所定の深度挿入されることにより、制流体10の仕切壁11の下端部から両側部に亘って取付けられる第1シール部材S1が底壁段部50h及び側壁段部50g,50gに密封状に圧入されるとともに、制流体10の上蓋部12の外周部に亘って取付けられる環状の第2シール部材S2は、筐体5の環状段部50jに圧接される。
【0055】
このように制流体10が、筐体5内に、分断された直管3,3の間を仕切るように設置されることにより、制流体10の周縁と筐体5との間の流体の漏洩が防止され、制流体10の弁体13の開閉によって筐体5内の流路が開放若しくは遮断される。
【0056】
次に、
図8に示されるように、筐体5の開口部50cの周方向に複数設けられた径方向に進退自在な押えネジNを開口部50cの内径方向に進行させる。これにより、押えネジNが制流体10の上蓋部12を上方から押さえるように係止して、制流体10が筐体5の開口部50cから抜け出すことが防止される。
【0057】
このように、押えネジNが制流体10の上蓋部12を上方から押さえることにより、設置機8及び作業弁6を筐体5から取外すことができるようになる。
【0058】
次いで、筐体5の筐体本体50の取付フランジ50fに対して、上面視環状の蓋部材57を固定する。蓋部材57は、押えネジNとともに制流体10が筐体5の開口部50cから抜け出すことを防止する。これにより、制流体10の筐体5内への設置が完了する。また、不断流状態での切断や弁設置などの際に全ての窓部や貫通部、作業孔などには蓋を密封状に取付けるのは言うまでもない。
【0059】
以上説明したように、本発明の管路切断方法によれば、管路部材1を密封する筐体5の内部にて、カッタ72のセンタードリル74を、接続部材4を構成する継輪20に貫通しても、少なくとも一つの直管3と継輪20とが固定されていることから、これら管路部材1同士の相対移動が防止されており、センタードリル74により切断位置を位置決めできるため、このセンタードリル74に追随するホールソー73によってこれら直管3及び接続部材4を設計通りの正確な位置にて管路を切断することができる。
【0060】
特に、接続部材4と全ての直管3,3とが管軸方向の相対移動に移動することなく、設計通りの位置にて管路を確実に切断できる。なお、接続部材4とこの接続部材4に接続された少なくとも一つの直管3(流体管)とを固定してもよい。
【0061】
以上説明した本実施例の管路切断方法では、直管3,3(流体管)と接続部材4とを固定する固定具として、直管3,3の外周面に、固定片30,30を溶接し、これら固定片30,30の側面30b,30bの間に接続部材4を管軸方向に挟持することで、直管3,3(流体管)と接続部材4とを固定しているが、これに限らず例えば、以下の方法によって管路部材を固定してもよい。
【0062】
例えば、
図9(a)に示されるように、変形例1における固定片31は、内側の側面31bと、この側面31bに連なり管軸方向に延出された鉤部31dとを備えた形状の金属材からなる板状部材から構成されており、この側面31bが押輪21の外端面に当接若しくは近接するとともに、鉤部31dが継輪20の端部に外径方向に膨出形成された鍔部20dに係合する管軸方向の位置にて、その底面の周縁を溶接部31aとして直管3の外周面に溶接されることで、当該固定片31が溶接された直管3が接続部材4に対し管軸方向に過挿入される方向及び離脱方向の相対移動がいずれも防止される。
【0063】
また例えば、
図9(b)に示されるように、変形例2における固定具32は、周方向に分割構造であって直管3’,3’に環状に外嵌される本体部32aと、この本体部32aの内周側に形成された凹部32bに収容され直管3’,3’の外周面に係止する爪部材32cと、本体部32aに螺合され爪部材32cを内径方向に押圧する押圧ボルト32dと、この本体部32aを、接続部材である継輪25及び押輪26に締結する締結部材32fとから構成されている。締結部材32fは、継輪25の挿通孔25e、押輪26の挿通孔26e、及び本体部32aの挿通孔32eに挿通されるボルトと、該ボルトに螺挿されるナットとから成る。
【0064】
なお、この変形例2では、流体管と接続部材との接続態様として、直管3’(流体管)の挿口部が接続部材を構成する継輪25の内方に挿入されるとともに、この直管3’に外嵌され接続部材を構成する押輪26がシール部材22を介して継輪25に接続される態様(いわゆるK形)が示されており、継輪25の内方に、直管3’の端面3b’が当接する奥端面25cを有していることから、直管3’が継輪25に対し管軸方向に過挿入する方向の相対移動が防止されていてもよい。
【0065】
このような構成の固定具32によれば、直管3’が継輪25(接続部材)に対し管軸方向に離脱する方向に外力が作用した場合、直管3’の外周面を係止した爪部材32cが、直管3’の管軸方向の動作に伴い、締結部材32fによって継輪25に支持された本体部32aの凹部32b内にて傾動し、この爪部材32cが直管3’の外周面に更に食い込むことで、直管3’が継輪25に対し管軸方向に離脱する方向の相対移動が防止される。このような構成の固定具32を継輪25の両端に設けることで、継輪25の直管3’に対する相対移動が防止される。
【0066】
更に例えば、
図9(c)に示されるように、変形例3における固定具33は、周方向に分割構造であって直管3’,3’に環状に外嵌される本体部33aと、この本体部33aの内周側に形成された凹部33bに収容され直管3’,3’の外周面に係止する爪部材33cと、本体部33aに螺合され爪部材33cを内径方向に押圧する押圧ボルト33dと、周方向に分割構造であって継輪25の端部に外嵌され、当該継輪25の端部に形成された鍔部25bに係合する鉤部を備えた鉤部材33fと、この鉤部材33fと本体部33aとを締結する締結部材33eとから構成されている。
【0067】
なお、この変形例3では、継輪25と押輪26とが締結部材27で締結されているほか、流体管と接続部材との接続態様が上記した変形例2と同様であることから、直管3’が継輪25に対し管軸方向に過挿入する方向の相対移動が防止されている。
【0068】
このような構成の固定具33によれば、直管3’が継輪25(接続部材)に対し管軸方向に離脱する方向に外力が作用した場合、鉤部材33fの鉤部が継輪25の鍔部25bに係合するとともに、直管3’の外周面を係止した爪部材33cが、直管3’の管軸方向の動作に伴い、鉤部材33f及び締結部材33eを介し継輪25に支持された本体部33aの凹部33b内にて傾動し、この爪部材33cが直管3’の外周面に更に食い込むことで、直管3’が継輪25に対し管軸方向に離脱する方向の相対移動が防止される。このような構成の固定具33を継輪25の両端に設けることで、継輪25の直管3’に対する相対移動が防止される。
【0069】
次に、本発明に係るセンタードリル74に設けられた係止部の変形例について説明する。
図10に示されるように、センタードリル74には、その軸方向に係止部としての係止リング45が縮径可能に設けられている。この変形例では係止リング45は、軸体75及びドリル部76の軸方向に離間して複数箇所に同様に設けられるが、以下にドリル部76に設けられた係止リング45についてのみ図示及び説明する。
【0070】
図10(a)に示されるように、ドリル部76には、略円柱状の周壁の一部が径方向に縮径された形状の縮径部76cが設けられ、この縮径部76cと周壁とにより上方に面する段部76dが形成されている。
【0071】
係止リング45は、この縮径部76cに遊嵌状に嵌合され、平面視で略C字状のリング状に形成されており、径方向に拡縮可能な弾性を有している。また係止リング45の外周面45aは、その下端から上端に向けて漸次拡径されるテーパ状に形成されている。
【0072】
より詳しくは
図10(a)に示されるように、係止リング45の自然状態すなわち非弾性変形状態では、その外周面45aの下端がドリル部76の周壁と略同径若しくは僅かに小径に形成されるとともに、外周面45aの上端がドリル部76の周壁よりも大径に突出形成されている。よって係止リング45の自然状態では、外周面45aの上端に連なる上面45bが継輪20に形成された穿孔Cの周縁と係止可能となっている(
図10(c)参照)。
【0073】
また
図10(b)に示されるように、係止リング45の弾性変形状態では、その外周面45aの上端がドリル部76の周壁と略同径に縮径される。つまり係止リング45の弾性変形状態では、係止リング45の全体がドリル部76の周壁よりも外径方向に突出することなく、この周壁よりも縮径された縮径部76c内に納まっている。
【0074】
本変形例に係る係止リング45を備えたセンタードリル74及びホールソー73を回転させながら下方に進行させ管路部材1を不断流状態で切断する切断工程について説明する。なお、上記した実施例1と同様の内容については説明を省略する。
【0075】
まずホールソー73に先行するセンタードリル74の先端ドリル77が、回転しながら継輪20の中央部20cの壁体を貫通して穿孔Cを穿設し、次いでセンタードリル74のドリル部76基端側及び軸体75がこの穿孔Cを順次通過する。この通過の際に係止リング45は、
図10(b)に示されるように、その外周面45aが穿孔Cの内周面に接することで、自然状態から漸次縮径され弾性変形状態に移行し、
図10(c)に示されるように、穿孔Cを通過した後に再び自然状態に戻るように挙動する。
【0076】
カッタ72により管路部材1が切断されると、管路部材1から分断された接続部材4及びこの接続部材4に接続された直管3,3の管端部からなる切片2が、ホールソー73内にてセンタードリル74により貫通されて保持された状態となる。そして、カッタ72を取付フランジ筒71の内部に引き上げると、継輪20に形成された穿孔Cの下部周縁が自然状態の係止リング45の上面45bに係止されることで、このホールソー73内の切片2がセンタードリル74に追随して引き上げられ、筐体5の外部に搬出される。
【0077】
また本実施例の管路切断方法について、後述する係合部の取付工程を付加することで、上述した切断工程により管路部材1から分断された切片2を確実に回収することができる。
【0078】
係合部の取付工程について説明すると、上述したカッタ72による切断工程よりも前に、直管3,3(流体管)と接続部材4とを固定する固定片30(固定具)を取付けるとともに、切断工程後に管路部材1から分断される切片2を回収するための係合部60を、継輪20の外周におけるセンタードリル74が貫通する位置に予め固定する。係合部60は、略筒状の筒胴部60cの上端壁60bに上下方向に貫通した挿通孔60aを有するとともに、筒胴部60cの下端部が開放されており、センタードリル74の軸線と挿通孔60aの軸線とを一致させた継輪20の上端位置にて、筒胴部60c下端の周縁を溶接部60dとして溶接することで固定する。なお、係合部60の固定は溶接に限らず、例えば継輪20の外周を巻回する締結バンドを用いてもよいし、分割式のクランプをボルト・ナットで組み付けてもよい。また係合部は、必ずしも予め挿通孔60aを有するものに限られず、センタードリル74によって挿通孔60aを穿設するようにしてもよい。
【0079】
係合部60の挿通孔60aは、センタードリル74よりも僅かに大径であって、且つ、上記した初期位置におけるロックピン40の側部42の先端部43よりも小径に形成されているのが好ましいが、挿通孔60aをセンタードリル74よりも小径に形成して、ドリルのパイロットとして穿設するようにしてもよい。
【0080】
係合部の取付工程後の切断工程について、詳述すると、
図11に示されるように、まずホールソー73に先行するセンタードリル74の先端ドリル77が、回転しながら継輪20の予め固定した係合部60の挿通孔60aに挿通された後、継輪20の中央部20cの壁体を貫通して穿孔Cを穿設し、次いでセンタードリル74のドリル部76基端側及び軸体75がこの穿孔Cを順次通過する。この通過の際にそれぞれのロックピン40は、係合部60の挿通孔60aの周縁に接することで初期位置から回動位置に回動し、挿通孔60aを通過した後に再び初期位置に戻るように挙動する。
【0081】
またロックピン40は、上記した実施例1と同様に、穿孔Cの周縁に接することで初期位置から回動位置に回動し、穿孔Cを通過した後に再び初期位置に戻るように挙動する。なお上記したように、センタードリル74の軸線と係合部60の挿通孔60aの軸線とが一致しており、また挿通孔60aはセンタードリル74よりも大径であることから、センタードリル74のドリル部76及び軸体75の周壁は挿通孔60aの周縁に接することなく、挿通孔60a内を通過する。
【0082】
カッタ72により管路部材1が切断されると、管路部材1から分断された接続部材4及びこの接続部材4に接続された直管3,3の管端部からなる切片2が、ホールソー73内にてセンタードリル74により貫通されて保持された状態となる。そして、カッタ72を取付フランジ筒71の内部に引き上げると、継輪25に固定された係合部60の挿通孔60aの下部周縁、及び/又は、継輪20に形成された穿孔Cの下部周縁が初期位置のロックピン40の側部42の先端部43に係止されることで、このホールソー73内の切片2がセンタードリル74に追随して引き上げられ、筐体5の外部に搬出される。
【0083】
特に本実施例2では、
図11に示されるように、例えばセンタードリル74が、その軸体75の周壁と直管3の端面3bとが接触する干渉位置に設置される等により、複数のロックピン40のうち下側のロックピン40が直管3の端面3bと干渉し破損する不具合を生じる虞がある場合にも、切断工程よりも前に予め継輪20に係合部60を固定しているため、この係合部60の挿通孔60aの下部周縁が上側のロックピン40に係止されることで、切片2が確実にセンタードリル74に追随して引き上げられ、筐体5の外部に搬出される。
【0084】
なお、上述した係合部の取付工程は、少なくとも切断工程よりも前段であればよく、例えば係合部の取付工程は、固定具の固定工程よりも前段であってもよいし、後段であっても構わない。また係合部の取付工程は、筐体の取付け工程よりも前段であってもよいし、後段であっても構わない。
【0085】
また本実施例の管路切断方法について、後述する検知手段による検知工程を付加することで、直管3,3(流体管)と接続部材4との接続位置を検知した後、上述した切断工程を行うことができる。
【0086】
検知工程について説明すると、先ず直管3,3及び接続部材4の近傍に位置する管路部材1の所定箇所に分岐部92が設けられている。分岐部92の上部には、この分岐部92を開閉する補修弁93が連結され、この補修弁93を閉塞状態として、管路部材1の内部を後述のように撮像するカメラ94aを不断流状態で管路部材1の内部に挿入可能な検知手段としての管内検知装置94を取り付ける。尚、管路部材1に分岐部92が一体的に設けられる場合に限らず、管路部材1の所定箇所に図示しない筐体を密封状に設け、該筐体の分岐部に弁を連結する構成とし、不断流状態でカメラ94aの挿入口を穿孔するものであってもよい。
【0087】
次に補修弁93を開放状態として、分岐部92に沿うようにして管路部材1の内部に挿入ロッド98を挿入機95により挿入する。挿入ロッド98の先端には、分岐部92を介して管路部材1の内部に挿入されるカメラ94aが所定の管軸方向に円滑に向かうようにガイドする挿入ガイド97が配設されている。
【0088】
管内検知装置94は、管路部材1の内部に挿入されるカメラ94aと、一端側が該カメラ94aに接続され、他端側が管路部材1の外部まで延びる線状体であるカメラケーブル94bと、カメラの映像を表示するモニタ94dと、を更に備える。尚、カメラケーブル94bは、樹脂などでコーティングされており、可撓性を持ちつつ剛性及び摺動性を備えたものが好ましい。
【0089】
カメラ94aはカメラヘッドを備え、カメラケーブル94bを外部から挿入することで管路部材1の内部を移動し、接続部材4を構成する継輪20に外嵌された直管3,3の端面3bの管軸方向の位置を視認するほか、管内壁に夾雑物として滞留したものを視認して、カメラケーブル94bを介して、カメラ94aが視認した映像がモニタ94dに表示されるようになっている。挿入機95の上端には、カメラケーブル94bの送り寸法を測定する測定器96が設けられている。
【0090】
上記した管内検知装置94は、管路部材1の内部における継輪20と直管3,3との管軸方向の相対位置、または直管3,3同士の端面3b、3bの離間距離、あるいは継輪20と直管3,3との周面間の離間寸法や介在物等の管内状況を、管路部材1の外部から確認できるようになっている。
【0091】
このように、直管3,3と接続部材4との接続位置を検知することで、ロックピン40がこれら管路部材1と干渉を生じる虞がある直管3の端面3b近傍を避けた良好な位置を調整して、センタードリル74を貫通させることができる。
【0092】
また上述した検知工程により、例えば継輪20と直管3,3との実際の接続位置が、設計上の接続位置と異なり、管軸方向に位置ズレしていることを検知した場合、この位置ズレを解消する管軸方向の位置の直管3,3に筐体5を取付けることで、継輪20と直管3,3との実際の接続位置に則してセンタードリル74を配置することができるし、あるいは、筐体5に対する切断手段の取付位置が可変であれば、当該切断手段を筐体5の最適な位置に取り付けることで、継輪20と直管3,3との実際の接続位置に則してセンタードリル74を配置することができる。
【0093】
また上述した検知工程は、少なくとも切断工程よりも前段であればよく、例えば検知工程は、固定具の固定工程よりも前段であってもよいし、後段であっても構わない。また検知工程は、筐体の取付け工程よりも前段であってもよいし、後段であっても構わない。
【0094】
なお、検知工程に用いられる検知手段として、必ずしも管路部材1の内部に挿入され撮像するカメラ94aを備えた管内検知装置94を使用するものに限られない。例えば検知手段は、管厚計測器や、ソナーなど超音波等を用いる機器、あるいはX線などの非破壊検査機器等を備えてもよく、管路部材1の内部に進入することなく管路部材1の外面に接触若しくは非接触で、接続部材4を構成する継輪20と直管3,3との管軸方向の相対位置や、直管3,3同士の端面3b、3bの離間距離、あるいは継輪20と直管3,3との周面間の離間寸法や介在物等の管内状況を、管路部材1の外部から検知するものであってもよい。
【0095】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0096】
例えば、前記実施例では、センタードリル74が接続部材4を構成する継輪20のみ、すなわち継輪20に外嵌された直管3,3(流体管)の端面3b、3b同士の離間部分を貫通しているが、本発明はこれに限られず、例えば、センタードリル74は、接続部材及び流体管が管軸方向に重なる部分を貫通してもよい。このとき、センタードリル74は、その径方向の少なくとも半分が流体管を貫通するように配置されることが好ましく、このようにすることで、センタードリル74の係止部が該流体管の端面と干渉することを抑制できる。
【0097】
例えば、前記実施例では、制流体10としてバタフライ弁を用いる形態を例示したが、管路部材1の流体を制御するものであれば、本発明はこれに限られず、例えば、制流体は、仕切弁、バタフライ弁、切換弁若しくはプラグ等であってもよい。
【0098】
また例えば、前記実施例では、カッタ72により切断される流体管はいずれも直管3,3であるが、これに限らず、流体管として例えば、接続部材に接続される複数の流体管の一部若しくは全部が、T字管、曲り管、レジューサ、十字管等の他の異形管であってもよい。また、上記した異形管は、いわゆるNS形、A形、T形、SII形、GX形などの接続構造を有していてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 管路部材
2 切片
3 直管(流体管)
3b 端面(管端)
4 接続部材
5 筐体
7 切断機(切断手段)
8 設置機
10 制流体
20 継輪
21 押輪
22 シール部材
25 継輪
26 押輪
30 固定片(固定具)
31 固定片(固定具)
32 固定具
33 固定具
40 ロックピン(係止部)
45 係止リング(係止部)
60 係合部
60a 挿通孔
72 カッタ
73 ホールソー
74 センタードリル
75 軸体
76 ドリル部
77 先端ドリル
94a カメラ
94 管内検知装置