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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/38 20060101AFI20220509BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F02D41/38
F02D45/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018086727
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019190440
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167461
【弁理士】
【氏名又は名称】上木 亮平
(72)【発明者】
【氏名】葛山 裕史
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115722(JP,A)
【文献】特開2012-189001(JP,A)
【文献】特開2002-038990(JP,A)
【文献】特開2000-303892(JP,A)
【文献】特開2017-180366(JP,A)
【文献】特開2016-065504(JP,A)
【文献】特開2012-225174(JP,A)
【文献】特開2001-254621(JP,A)
【文献】特開2004-100566(JP,A)
【文献】特開2012-031844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/38
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関本体と、
前記機関本体の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
を備える内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置であって、
前記燃焼室内で段階的に複数回の熱発生が生じるように、少なくともプレ燃料噴射、第1メイン燃料噴射、及び第2メイン燃料噴射を順次実施して予混合圧縮着火燃焼を行う燃焼制御部を備え、
前記燃焼制御部は、
前記プレ燃料噴射、前記第1メイン燃料噴射、及び前記第2メイン燃料噴射の各目標噴射量、及び各目標噴射時期を設定する目標値設定部と、
前記機関本体の温度、又は前記機関本体の温度と相関関係にあるパラメータの温度が所定温度以下の冷間時には、温間時と比較して前記プレ燃料噴射の目標噴射量を増量させると共に前記第2メイン燃料噴射の目標噴射量を減量させる補正を実施する補正部と、
を備える、
内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記補正部は、
前記プレ燃料噴射の目標噴射量を増量させる補正を実施するときは、その増量分だけ前記第2メイン燃料噴射の目標噴射量を減量させる補正を実施する、
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記プレ燃料噴射の目標噴射量を増量させる補正を実施する場合に、その増量分だけ前記第2メイン燃料噴射の目標噴射量を減量させる補正を実施すると、前記第2メイン燃料噴射の目標噴射量に対する前記プレ燃料噴射の目標噴射量と前記第1メイン燃料噴射の目標噴射量との合計量の比率が所定比率よりも大きくなるときは、前記第2メイン燃料噴射によって噴射された燃料の燃焼に起因する明確な熱発生を生じさせるべく、前記比率が前記所定比率以下となるように、前記増量分を前記第1メイン燃料噴射の目標噴射量と前記第2メイン燃料噴射の目標噴射量とから減量させる補正を実施する、
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記目標値設定部は、
前記燃焼室内で段階的に3回の熱発生を生じさせて筒内圧力上昇率の時間的変化を示す圧力波形が三山形状となるように、かつ前記圧力波形の一山目と二山目のピーク値の間隔と、二山目と三山目のピーク値の間隔と、が異なるように、前記プレ燃料噴射、前記第1メイン燃料噴射、及び前記第2メイン燃料噴射の各目標噴射量、及び目標噴射時期を、機関運転状態に応じて予め設定する、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記圧力波形の一山目と二山目のピーク値の間隔は、二山目と三山目のピーク値の間隔よりも広い、
請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の内燃機関の制御装置として、メイン燃料噴射を2回に分けて実施して予混合圧縮着火燃焼(PCCI;Premix Charged Compressive Ignition)を行うことで、段階的に2回の熱発生を生じさせて、筒内圧力上昇率の時間的変化を示す圧力波形(筒内圧力上昇率パターン)の形状が二山形状となるように構成されたものが開示されている。特許文献1によれば、これにより燃焼騒音を低減することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-068284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の内燃機関の制御装置は、暖機完了前の冷間時のことを考慮していなかった。冷間時は燃料の着火性が悪化するため、暖機完了後の温間時と比較して燃料の着火遅れ時間が長くなりやすい。そのため冷間時には、メイン燃料噴射を2回に分割しても、各燃料噴射によって噴射された燃料が段階的に燃焼せずに同時期に燃焼してしまう場合がある。その結果、冷間時においては、筒内圧力上昇率の時間的変化を示す圧力波形(筒内圧力上昇率パターン)の形状が二山形状とならずに一山形状となってしまい、燃焼騒音が増大する場合がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、冷間時における燃焼騒音の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、機関本体と、機関本体の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備える内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置が、燃焼室内で段階的に複数回の熱発生が生じるように、少なくともプレ燃料噴射、第1メイン燃料噴射、及び第2メイン燃料噴射を順次実施して予混合圧縮着火燃焼を行う燃焼制御部を備える。燃焼制御部は、プレ燃料噴射、第1メイン燃料噴射、及び第2メイン燃料噴射の各目標噴射量、及び各目標噴射時期を設定する目標値設定部と、機関本体の温度、又は機関本体の温度と相関関係にあるパラメータの温度が所定温度以下のときに、プレ燃料噴射の目標噴射量を増量させると共に第2メイン燃料噴射の目標噴射量を減量させる補正を実施する補正部と、を備えるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のこの態様によれば、冷間時における燃焼騒音の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態による内燃機関及び内燃機関を制御する電子制御ユニットの概略構成図である。
図2図2は、内燃機関の機関本体の断面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態によるクランク角と熱発生率との関係を示した図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態によるクランク角と筒内圧力上昇率との関係を示した図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態の変形例によるクランク角と熱発生率との関係を示した図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態の変形例によるクランク角と筒内圧力上昇率との関係を示した図である。
図7図7は、本発明とは異なる比較例の冷間時におけるクランク角と熱発生率との関係を示した図である。
図8図8は、本発明の第1実施形態による燃焼制御について説明するフローチャートである。
図9図9は、冷却水の温度に基づいて補正量Cpを算出するためのテーブルを示す図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態による燃焼制御について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による内燃機関100、及び内燃機関100を制御する電子制御ユニット200の概略構成図である。図2は、内燃機関100の機関本体1の断面図である。
【0011】
図1に示すように、内燃機関100は、複数の気筒10を備える機関本体1と、燃料供給装置2と、吸気装置3と、排気装置4と、吸気動弁装置5と、排気動弁装置6と、を備える。
【0012】
機関本体1は、各気筒10に形成される燃焼室11内(図2参照)で燃料を燃焼させて、例えば車両などを駆動するための動力を発生させる。機関本体1には、気筒毎に一対の吸気弁50と一対の排気弁60とが設けられる。
【0013】
燃料供給装置2は、電子制御式の燃料噴射弁20と、デリバリパイプ21と、サプライポンプ22と、燃料タンク23と、圧送パイプ24と、燃圧センサ211と、を備える。
【0014】
燃料噴射弁20は、燃焼室11内に直接燃料を噴射することができるように、各気筒10の燃焼室11に臨むように各気筒10に1つ設けられる。燃料噴射弁20の開弁時間(噴射量)及び開弁時期(噴射時期)は電子制御ユニット200からの制御信号によって変更され、燃料噴射弁20が開弁されると燃料噴射弁20から燃焼室11内に直接燃料が噴射される。
【0015】
デリバリパイプ21は、圧送パイプ24を介して燃料タンク23に接続される。圧送パイプ24の途中には、燃料タンク23に貯蔵された燃料を加圧してデリバリパイプ21に供給するためのサプライポンプ22が設けられる。デリバリパイプ21は、サプライポンプ22から圧送されてきた高圧燃料を一時的に貯蔵する。燃料噴射弁20が開弁されると、デリバリパイプ21に貯蔵された高圧燃料が燃料噴射弁20から燃焼室11内に直接噴射される。
【0016】
サプライポンプ22は、吐出量を変更することができるように構成されており、サプライポンプ22の吐出量は、電子制御ユニット200からの制御信号によって変更される。サプライポンプ22の吐出量を制御することで、デリバリパイプ21内の燃料圧力、すなわち燃料噴射弁20の噴射圧が制御される。
【0017】
燃圧センサ211は、デリバリパイプ21に設けられる。燃圧センサ211は、デリバリパイプ21内の燃料圧力、すなわち各燃料噴射弁20から各気筒10内に噴射される燃料の圧力(噴射圧)を検出する。
【0018】
吸気装置3は、燃焼室11内に空気を導くための装置であって、燃焼室11内に吸入される空気の状態(吸気圧力(過給圧)、吸気温度、EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス量)を変更することができるように構成されている。すなわち吸気装置3は、燃焼室11内の酸素密度を変更することができるように構成されている。吸気装置3は、エアクリーナ30と、吸気管31と、ターボチャージャ32のコンプレッサ32aと、インタクーラ33と、吸気マニホールド34と、電子制御式のスロットル弁35と、エアフローメータ212と、EGR通路36と、EGRクーラ37と、EGR弁38と、を備える。
【0019】
エアクリーナ30は、空気中に含まれる砂などの異物を除去する。
【0020】
吸気管31は、一端がエアクリーナ30に連結され、他端が吸気マニホールド34のサージタンク34aに連結される。
【0021】
ターボチャージャ32は過給機の一種であり、排気のエネルギを利用して空気を強制的に圧縮し、その圧縮した空気を各燃焼室11に供給する。これにより充填効率が高められるので、機関出力が増大する。コンプレッサ32aは、ターボチャージャ32の一部を構成する部品であり、吸気管31に設けられる。コンプレッサ32aは、同軸上に設けられた後述するターボチャージャ32のタービン32bによって回されて、空気を強制的に圧縮する。なおターボチャージャ32に替えて、クランクシャフト(図示せず)の回転力を利用して機械的に駆動される過給機(スーパチャージャ)を用いても良い。
【0022】
インタクーラ33は、コンプレッサ32aよりも下流の吸気管31に設けられ、コンプレッサ32aによって圧縮されて高温となった空気を冷却する。
【0023】
吸気マニホールド34は、サージタンク34aと、サージタンク34aから分岐して機関本体1の内部に形成されている各吸気ポート14(図2参照)の開口に連結される複数の吸気枝管34bと、を備える。サージタンク34aに導かれた空気は、吸気枝管34b、及び吸気ポート14を介して各燃焼室11内に均等に分配される。このように、吸気管31、吸気マニホールド34及び各吸気ポート14が、各燃焼室11内に空気を導くための吸気通路を形成する。サージタンク34aには、サージタンク34a内の圧力(吸気圧力)を検出するための圧力センサ213と、サージタンク34a内の温度(吸気温度)を検出するための温度センサ214と、が取り付けられている。
【0024】
スロットル弁35は、インタクーラ33とサージタンク34aとの間の吸気管31内に設けられる。スロットル弁35は、スロットルアクチュエータ35aによって駆動され、吸気管31の通路断面積を連続的又は段階的に変化させる。スロットルアクチュエータ35aによってスロットル弁35の開度を調整することで、各燃焼室11内に吸入される空気の流量を調整することができる。
【0025】
エアフローメータ212は、コンプレッサ32aよりも上流側の吸気管31内に設けられる。エアフローメータ212は、吸気通路内を流れて最終的に各燃焼室11内に吸入される空気の流量(以下「吸入空気量」という。)を検出する。
【0026】
EGR通路36は、後述する排気マニホールド40と吸気マニホールド34のサージタンク34aとを連通し、各燃焼室11から排出された排気の一部を圧力差によってサージタンク34aに戻すための通路である。以下、EGR通路36に流入した排気のことを「EGRガス」といい、筒内ガス量に占めるEGRガス量の割合、すなわち排気の還流率のことを「EGR率」という。EGRガスをサージタンク34a、ひいては各燃焼室11に還流させることで、燃焼温度を低減させて窒素酸化物(NOx)の排出を抑えることができる。
【0027】
EGRクーラ37は、EGR通路36に設けられる。EGRクーラ37は、EGRガスを、例えば走行風や冷却水などによって冷却するための熱交換器である。
【0028】
EGR弁38は、EGRクーラ37よりもEGRガスの流れ方向下流側のEGR通路36に設けられる。EGR弁38は、連続的又は段階的に開度を調整することができる電磁弁であり、その開度は電子制御ユニット200によって制御される。EGR弁38の開度を制御することで、サージタンク34aに還流させるEGRガスの流量が調節される。すなわち、吸入空気量や吸気圧力(過給圧)等に応じてEGR弁38の開度を適切な開度に制御することで、EGR率を任意の値に制御することができる。
【0029】
排気装置4は、各燃焼室内で生じた排気を浄化して外気に排出するための装置であって、排気マニホールド40と、排気管41と、ターボチャージャ32のタービン32bと、排気後処理装置42と、を備える。
【0030】
排気マニホールド40は、機関本体1の内部に形成されている各排気ポート15(図2参照)の開口と連結される複数の排気枝管と、排気枝管を集合させて1本にまとめた集合管と、を備える。
【0031】
排気管41は、一端が排気マニホールド40の集合管に連結され、他端が開口端となっている。各燃焼室11から排気ポートを介して排気マニホールド40に排出された排気は、排気管41を流れて外気に排出される。
【0032】
タービン32bは、ターボチャージャ32の一部を構成する部品であり、排気管41に設けられる。タービン32bは、排気のエネルギによって回されて、同軸上に設けられたコンプレッサ32aを駆動する。
【0033】
タービン32bの外側には、可変ノズル32cが設けられている。可変ノズル32cは絞り弁として機能し、可変ノズル32cのノズル開度(弁開度)は電子制御ユニット200によって制御される。可変ノズル32cのノズル開度を変化させることでタービン32bを駆動する排気の流速を変化させることができる。すなわち、可変ノズル32cのノズル開度を変化させることで、タービン32bの回転速度を変化させて過給圧を変化させることができる。具体的には、可変ノズル32cのノズル開度を小さくする(可変ノズル32cを絞る)と、排気の流速が上がってタービン32bの回転速度が増大し、過給圧が増大する。
【0034】
排気後処理装置42は、タービン32bよりも下流側の排気管41に設けられる。排気後処理装置42は、排気を浄化した上で外気に排出するための装置であって、有害物質を浄化する各種の触媒(例えば三元触媒)を担体に担持させたものである。
【0035】
吸気動弁装置5は、各気筒10の吸気弁50を開閉駆動するための装置であって、機関本体1に設けられる。本実施形態による吸気動弁装置5は、吸気弁50の開閉時期を制御できるように、例えば電磁アクチュエータによって吸気弁50を開閉駆動するように構成される。
【0036】
排気動弁装置6は、各気筒10の排気弁60を開閉駆動するための装置であって、機関本体1に設けられる。本実施形態による排気動弁装置6は、排気弁60の開閉時期を制御できるように、例えば電磁アクチュエータによって排気弁60を開閉駆動するように構成される。
【0037】
なお、吸気動弁装置5及び排気動弁装置6としては、電磁アクチュエータに限らず、例えばカムシャフトによって吸気弁50又は排気弁60を開閉駆動するように構成し、当該カムシャフトの一端部に油圧制御によってクランクシャフトに対するカムシャフトの相対位相角を変更する可変動弁機構を設けることによって、吸気弁50又は排気弁60の開閉時期を制御できるようにしてもよい。
【0038】
電子制御ユニット200は、デジタルコンピュータから構成され、双方性バス201によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)202、RAM(ランダムアクセスメモリ)203、CPU(マイクロプロセッサ)204、入力ポート205及び出力ポート206を備える。
【0039】
入力ポート205には、前述した燃圧センサ211などの出力信号の他にも、機関本体1を冷却する冷却水の温度を検出するための水温センサ215の出力信号が、対応する各AD変換器207を介して入力される。また入力ポート205には、機関負荷を検出するための信号として、アクセルペダル220の踏み込み量(以下「アクセル踏込量」という。)に比例した出力電圧を発生する負荷センサ221の出力電圧が、対応するAD変換器207を介して入力される。また入力ポート205には、機関回転速度などを算出するための信号として、機関本体1のクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ222の出力信号が入力される。このように入力ポート205には、内燃機関100を制御するために必要な各種センサの出力信号が入力される。
【0040】
出力ポート206は、対応する駆動回路208を介して、燃料噴射弁20などの各制御部品に接続される。
【0041】
電子制御ユニット200は、入力ポート205に入力された各種センサの出力信号に基づいて、各制御部品を制御するための制御信号を出力ポート206から出力して内燃機関100を制御する。以下、電子制御ユニット200が実施する内燃機関100の制御について説明する。
【0042】
電子制御ユニット200は、間隔を空けて複数回の燃料噴射を行う分割噴射を実施して機関本体1の運転を行う。
【0043】
図3は、機関運転状態(機関回転速度、及び機関負荷)が一定の定常運転時において、本実施形態による分割噴射を実施して燃料を燃焼させた場合のクランク角と熱発生率との関係を示した図である。また図4は、この場合のクランク角と筒内圧力上昇率との関係を示した図である。
【0044】
なお熱発生率(dQ/dθ)[J/deg.CA]とは、燃料を燃焼させたときに生じる単位クランク角あたりの熱量、すなわち単位クランク角あたりの熱発生量Qのことである。以下の説明では、このクランク角と熱発生率との関係を示した燃焼波形、すなわち熱発生率の時間的変化を示す燃焼波形のことを、必要に応じて「熱発生率パターン」という。また筒内圧力上昇率(dP/dθ)[kPa/deg.CA]とは、筒内圧力P[kPa]のクランク角微分値のことである。以下の説明では、このクランク角と筒内圧力上昇率との関係を示した圧力波形、すなわち筒内圧力上昇率の時間的変化を示す圧力波形のことを、必要に応じて「筒内圧力上昇率パターン」という。
【0045】
図3に示すように電子制御ユニット200は、プレ燃料噴射Gp、第1メイン燃料噴射G1、及び第2メイン燃料噴射G2を順次実施して機関本体1の運転を行う。なおプレ燃料噴射Gpは、基本的にプレ燃料を第1メイン燃料よりも進角側で自着火させ、これにより筒内温度を上昇させて第1メイン燃料の自着火を誘発させるために行われる噴射である。一方で第1メイン燃料噴射G1、及び第2メイン燃料噴射G2は、基本的に機関負荷に応じた要求トルクを出力するために行われる噴射である。
【0046】
このとき本実施形態では、プレ燃料、第1メイン燃料、及び第2メイン燃料が、基本的に燃料噴射後に空気との予混合期間をある程度置いた上で燃焼する予混合圧縮自着火燃焼を起こすように、各燃料噴射Gp、G1、G2の噴射量と噴射時期とをそれぞれ制御して、段階的に複数回の熱発生が生じるようにしている。
【0047】
具体的には本実施形態では、図3に示すように、プレ燃料が燃焼したときの熱発生によって熱発生率パターンの一山目の燃焼波形X1が形成され、次に第1メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって熱発生率パターンの二山目の燃焼波形X2が形成され、最後に第2メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって熱発生率パターンの三山目の燃焼波形X3が形成されるように各燃料噴射Gp、G1、G2の噴射量と噴射時期とを制御して、熱発生率パターンが三山形状となるようにしている。
【0048】
そしてこれにより、図4に示すように、プレ燃料が燃焼したときの熱発生によって筒内圧力上昇率パターンの一山目の圧力波形Y1が形成され、次に第1メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって筒内圧力上昇率パターンの二山目の圧力波形Y2が形成され、最後に第2メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって筒内圧力上昇率パターンの三山目の圧力波形Y3が形成されるようにして、熱発生率パターンと共に筒内圧力上昇率パターンも三山形状となるようにしている。
【0049】
なお図5に示す本実施形態の変形例のように、プレ燃料、及び第1メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって熱発生率パターンの一山目の燃焼波形X1が形成され、その後、第2メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって熱発生率パターンの二山目の燃焼波形X2が形成されるように各燃料噴射Gp、G1、G2の噴射量と噴射時期とを制御して、熱発生率パターンが二山形状となるようにしてもよい。
【0050】
そしてこれにより、図6に示すように、プレ燃料、及び第1メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって筒内圧力上昇率パターンの一山目の圧力波形Y1が形成され、その後、第2メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって筒内圧力上昇率パターンの二山目の圧力波形Y2が形成されるようにして、熱発生率パターンと共に筒内圧力上昇率パターンが二山形状となるようにしてもよい。
【0051】
このように、適切な間隔を空けて段階的に複数回の熱発生を生じさせることで、各熱発生によって生じる各圧力波のうち、隣り合う熱発生によって生じる2つの圧力波(図4に示す例では、プレ燃料と第1メイン燃料の燃焼時にそれぞれ生じる圧力波、及び第1メイン燃料と第2メイン燃料の燃焼時にそれぞれ生じる圧力波。図6に示す例では、第1メイン燃料と第2メイン燃料の燃焼時にそれぞれ生じる圧力波。)の位相を特定の周波数帯域でずらすことができる。
【0052】
そのため、例えば一方の圧力波の位相に対して、他方の位相を逆位相にするなど、2つの圧力波の位相を適切にずらすことで、これら2つの圧力波を重ね合わせた特定の周波数帯域における実際の圧力波の振幅を小さくすることができる。これにより、特定の周波数帯域における燃焼騒音[dB]を低減させることができ、結果として全体的な燃焼騒音を低減させることができる。
【0053】
なお、燃焼騒音を低減させることが可能な周波数帯域は、2つの圧力波の間隔によって変化し、基本的に2つの圧力波の間隔が狭くなるほど、高周波側の燃焼騒音を低減させることができる。2つの圧力波の間隔とは、例えば図4で言えば、圧力波形Y1のピーク値P1と圧力波形Y2のピーク値P2との間隔や、圧力波形Y2のピーク値P2と圧力波形Y3のピーク値P3との間隔のことである。
【0054】
したがって本実施形態のように、筒内圧力上昇率パターンが三山形状となるように各燃料噴射Gp、G1、G2を実施して、ピーク値P1からピーク値P2までの間隔と、ピーク値P2とピーク値P3までの間隔と、を異ならせることで、低周波数側と高周波数側の2つの周波数帯域における燃焼騒音[dB]を低減させることができる。そのため、筒内圧力上昇率パターンが三山形状となるように各燃料噴射Gp、G1、G2を実施することで、筒内圧力上昇率パターンが二山形状となるように各燃料噴射Gp、G1、G2を実施した場合よりも、全体的な燃焼騒音を低減させることができる。
【0055】
ところで本実施形態では、このように適切な間隔を空けて段階的に複数回の熱発生を生じさせることで燃焼騒音の低減を図っているが、暖機完了前の冷間時には、暖機完了後の温間時と比較して圧縮開始時における筒内温度が低くなる傾向にある。そのため、冷間時には燃料の着火性が悪化して、燃料の着火遅れ時間が長くなりやすい。特に本実施形態のような分割噴射を実施している場合には、最初に実施されるプレ燃料噴射Gpによって噴射される燃料(プレ燃料)の着火遅れ時間が長くなりやすい。
【0056】
その結果、冷間時にはプレ燃料、ひいては第1メイン燃料の着火時期が遅角してしまい、図7に示すように各燃料噴射Gp、G1、G2によって噴射された燃料が段階的に燃焼せずに同時期に燃焼してしまって熱発生率パターンが一山形状になってしまうおそれがある。そうすると、筒内圧力上昇率パターンも一山形状になってしまうので、燃焼騒音を低減することができなくなってしまう。
【0057】
そこで本実施形態では、冷間時には、温間時と比較してプレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpを増量させることとした。これにより、プレ燃料の着火性の悪化を抑制して、適切な間隔を空けて段階的に複数回の熱発生を生じさせることができる。
【0058】
また本実施形態では、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpを増量させるにあたって、その増量分を基本的に第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2から減量することとした。これは、以下の理由によるものである。
【0059】
すなわち本実施形態では、プレ燃料、第1メイン燃料、及び第2メイン燃料が、予混合圧縮自着火燃焼を起こすように各燃料噴射Gp、G1、G2を順次実施しているため、最後に実施される第2メイン燃料噴射G2によって噴射される燃料(第2メイン燃料)は、プレ燃料や第1メイン燃料と比較して着火するまでの空気との予混合期間が短くなる傾向にある。予混合期間が短いと、予混合期間が長い場合と比較して燃料濃度の高い混合気魂が燃焼することになる。そのため、酸素不足によってスモークの原因となる煤が生成されやすくなる。
【0060】
したがって、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpを増量させるにあたって、その増量分を第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2から減量することで、予混合期間が短い予混合気が燃焼する割合を減らすことができる。そのため、スモークの原因となる煤の発生量を抑制することができる。以下、図8を参照してこの本実施形態による燃焼制御について説明する。
【0061】
図8は、この本実施形態による燃焼制御について説明するためのフローチャートである。
【0062】
ステップS1において、電子制御ユニット200は、クランク角センサ222の出力信号に基づいて算出された機関回転速度と、負荷センサ221によって検出された機関負荷と、を読み込み、機関運転状態を検出する。
【0063】
ステップS2において、電子制御ユニット200は、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qp、第1メイン燃料噴射G1の目標噴射量Q1、及び第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2をそれぞれ設定する。本実施形態では電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成されたテーブルを参照し、機関負荷に基づいて、目標噴射量Qp、目標噴射量Q1、及び目標噴射量Q2を設定する。
【0064】
ステップS3において、電子制御ユニット200は、プレ燃料噴射Gpの目標噴射時期Ap、第1メイン燃料噴射G1の目標噴射時期A1、及び第2メイン燃料噴射G2の目標噴射時期A2をそれぞれ設定する。本実施形態では電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成されたテーブルを参照し、機関運転状態に基づいて、目標噴射時期Ap、目標噴射時期A1、及び目標噴射時期A2を設定する。
【0065】
ステップS4において、電子制御ユニット200は、機関本体1の温度、又は機関本体1の温度と相関関係にあるパラメータの温度に基づいて、冷間時であるか否かを判断する。機関本体1の温度と相関関係にあるパラメータとしては、例えば機関本体1を冷却するための冷却水の温度や、機関本体1の摺動部潤滑用の潤滑油の温度などが挙げられる。本実施形態では電子制御ユニット200は、水温センサ215によって検出した冷却水の温度が所定温度以上であれば、温間時であると判断してステップS5の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、冷却水の温度が所定温度未満であれば、冷間時であると判断してステップS6の処理に進む。
【0066】
ステップS5において、電子制御ユニット200は、各燃料噴射Gp、G1、G2の噴射量、及び噴射時期が、それぞれ設定された目標噴射量Qp、Q1、Q2、及び目標噴射時期Ap、A1、A2となるように、各燃料噴射Gp、G1、G2を実施する。
【0067】
ステップS6において、電子制御ユニット200は、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpに対する補正量Cpを算出する。本実施形態では電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成された図9に示すテーブルを参照し、冷却水の温度に基づいて補正量Cpを算出する。図9に示すように、補正量Cpは、基本的に冷却水の温度が低いときの方が、高いときよりも大きくなる。
【0068】
ステップS7において、電子制御ユニット200は、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qp、及び第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2を補正する。具体的には電子制御ユニット200は、目標噴射量Qpに補正量Cpを加算すると共に、目標噴射量Q2から補正量Cpを減算する補正を実施する。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、機関本体1と、機関本体1の燃焼室11内に燃料を噴射する燃料噴射弁20と、を備える内燃機関100を制御する電子制御ユニット200(制御装置)が、燃焼室11内で段階的に複数回の熱発生が生じるように、少なくともプレ燃料噴射Gp、第1メイン燃料噴射G1、及び第2メイン燃料噴射G2を順次実施して予混合圧縮着火燃焼を行う燃焼制御部を備える。
【0070】
そして燃焼制御部は、プレ燃料噴射Gp、第1メイン燃料噴射G1、及び第2メイン燃料噴射G2の各目標噴射量Qp、Q1、Q2、及び目標噴射時期Ap、A1、A2を設定する目標値設定部と、機関本体1の温度、又は機関本体1の温度と相関関係にあるパラメータの温度が所定温度以下のときに、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpを増量させると共に第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量を減量させる補正を実施する補正部と、を備えるように構成されている。具体的には補正部は、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpを増量させる補正を実施するときは、その増量分だけ第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2を減量させる補正を実施するように構成されている。
【0071】
これにより、機関本体1の温度、又は機関本体1の温度と相関関係にあるパラメータの温度が所定温度以下の冷間時には、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpが増量させられるので、各噴射燃料の着火性の悪化を抑制することができる。
【0072】
そのため、冷間時において、プレ燃料、ひいては第1メイン燃料の着火時期が遅角してしまって、各燃料噴射Gp、G1、G2によって噴射された燃料が段階的に燃焼せずに同時期に燃焼してしまうのを抑制することができる。すなわち、冷間時においても、各燃料噴射Gp、G1、G2によって噴射された燃料を段階的に燃焼させて、複数回の熱発生を生じさせることができ、各熱発生によって生じる圧力波の位相をずらすことができる。そのため、冷間時における燃焼騒音の増大を抑制することができる。
【0073】
また、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpを増量させるにあたって、予混合期間が短くなる傾向にある第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2を減量させることで、スモークの原因となる煤の発生量を抑制することができる。
【0074】
また目標値設定部は、燃焼室11内で段階的に3回の熱発生を生じさせて筒内圧力上昇率の時間的変化を示す圧力波形(筒内圧力上昇率パターン)が三山形状となるように、かつ当該圧力波形の一山目と二山目のピーク値P1、P2の間隔と、二山目と三山目のピーク値P2、P3の間隔と、が異なるように、プレ燃料噴射Gp、第1メイン燃料噴射G1、及び第2メイン燃料噴射G2の各目標噴射量Qp、Q1、Q2、及び目標噴射時期Ap、A1、A2を設定するように構成されている。本実施形態では、圧力波形の一山目と二山目のピーク値P1、P2の間隔を、二山目と三山目のピーク値P2、P3の間隔よりも広くしている。
【0075】
これにより、異なる2つの周波数帯域における燃焼騒音を低減させることができるので、筒内圧力上昇率パターンを二山形状として1つの周波数帯域における燃焼騒音を低減させる場合よりも燃焼騒音を低減させることができる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、冷間時に目標噴射量Qpを増量するにあたって、必要に応じてその増量分を目標噴射量Q1と目標噴射量Q2とから減量する点で、第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0077】
前述した第1実施形態では、冷間時にプレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpを増量させるときは、その増量分を全て第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2から減量させていた。
【0078】
しかしながら、第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2を減量し過ぎると、第2メイン燃料が燃焼したときの熱発生量が少なくなって、第2メイン燃料の燃焼に起因する明確な熱発生が生じなくなるおそれがある。
【0079】
そのため、例えば図3、及び図4を参照して前述したように、熱発生率パターン、及び筒内圧力上昇率パターンを三山形状にしている場合には、第2メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって熱発生率パターンの三山目の燃焼波形X3を形成することができなくなり、その結果、筒内圧力上昇率パターンの三山目の圧力波形Y3も形成することができなくなるおそれがある。
【0080】
また図5、及び図6に示すように、熱発生率パターン、及び筒内圧力上昇率パターンを二山形状にしている場合には、第2メイン燃料が燃焼したときの熱発生によって熱発生率パターンの二山目の燃焼波形X2を形成することができなくなり、その結果、筒内圧力上昇率パターンの二山目の圧力波形Y2も形成することができなくなるおそれがある。
【0081】
そこで本実施形態では、目標噴射量Q2が少なくなり過ぎるのを防止するために、目標噴射量Q2に対する目標噴射量Qpと目標噴射量Q1との合計量の比率α(=(Qp+Q1)/Q2)が所定比率αthr以下となるようにした。
【0082】
すなわち、冷間時に目標噴射量Qpを増量させるにあたって、その増量分を全て目標噴射量Q2から減量したときに、比率αが所定比率αthr以下となっているかを判断することとした。
【0083】
そして、比率αが所定比率αthrよりも大きくなっている場合には、目標噴射量Qpと目標噴射量Q1との合計量に対して目標噴射量Q2が少なく、冷間時に目標噴射量Qpを増量させるにあたって、その増量分を全て目標噴射量Q2から減量すると、第2メイン燃料の燃焼に起因する明確な熱発生が生じなくなるおそれがあると判断し、比率αが所定比率αthr以下となるように、増量分を目標噴射量Q1と目標噴射量Q2とから減量することとした。
【0084】
一方で、比率αが所定比率αthr以下の場合は、冷間時に目標噴射量Qpを増量させるにあたって、その増量分を全て目標噴射量Q2から減量しても、第2メイン燃料の燃焼に起因する明確な熱発生が生じると判断し、第1実施形態と同様に、増量分を全て目標噴射量Q2から減量することとした。
【0085】
図10は、この本実施形態による燃焼制御について説明するためのフローチャートである。なおステップS1からステップS7までは、第1実施形態と同様の処理を実施しているので、ここでは説明を省略する。
【0086】
ステップS11において、電子制御ユニット200は、目標噴射量Qpに補正量Cpを加算して目標噴射量Q2から補正量Cpを減算した場合に、比率αが所定比率αthr以下になるか否かを判断する。電子制御ユニット200は、比率αが所定比率αthr以下であれば、ステップS7の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、比率αが所定比率αthrよりも大きければ、ステップS12の処理に進む。
【0087】
ステップS12において、電子制御ユニット200は、目標噴射量Qpに補正量Cpを加算したときに、比率αが所定比率αthrとなるように、その増量分となる補正量Cpを目標噴射量Q1と目標噴射量Q2とから減量する。本実施形態では電子制御ユニット200は、目標噴射量Q1に対する補正量をC1、目標噴射量Q2に対する補正量をC2とすると、下記の(1)式、及び(2)式を満たす補正量C1と補正量C2とを算出する。
Cp=C1+C2 …(1)
{(Qp+Cp)+(Q1-C1)}/(Q2-C2)=αthr …(2)
【0088】
ステップS13において、電子制御ユニット200は、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qp、第1メイン燃料噴射G1の目標噴射量Q1、及び第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2を補正する。具体的には電子制御ユニット200は、目標噴射量Qpに補正量Cpを加算すると共に、目標噴射量Q1、及び目標噴射量Q2からそれぞれ補正量C1、及び補正量C2を減算する補正を実施する。
【0089】
以上説明した本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様に、燃焼制御部が目標値設定部と補正部とを備えている。
【0090】
そして補正部は、プレ燃料噴射Gpの目標噴射量Qpを増量させる補正を実施する場合に、その増量分だけ第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2を減量させる補正を実施すると、第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2に対するプレ燃料噴射Gpの目標噴射量Q1と第1メイン燃料噴射G1の目標噴射量Q1との合計量の比率αが所定比率αthrよりも大きくなるときは、比率αが所定比率αthr以下となるように、増量分を第1メイン燃料噴射G1の目標噴射量Q1と第2メイン燃料噴射G2の目標噴射量Q2とから減量させる補正を実施するように構成されている。
【0091】
これにより、第2メイン燃料が燃焼したときの熱発生量が少なくなり過ぎて、第2メイン燃料の燃焼に起因する明確な熱発生が生じなくなるのを抑制できる。そのため、複数回の熱発生を生じさせることができ、各熱発生によって生じる圧力波の位相をずらすことができるので、燃焼騒音の増大を抑制することができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0093】
1 機関本体
11 燃焼室
20 燃料噴射弁
3 吸気装置
100 内燃機関
200 電子制御ユニット(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10