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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】印刷品質検査システム
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/121 20160101AFI20220509BHJP
【FI】
G07D7/121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018087042
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019192122
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井戸田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和久
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172842(JP,A)
【文献】特開2004-121917(JP,A)
【文献】特開2006-093853(JP,A)
【文献】特開2001-216249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00- 7/207
G06F 13/38-13/42
H04L 12/00-12/66,
45/00-49/9057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の印刷品質を検査する印刷品質検査システムであって、
印刷品質を検査するためのデータを前記紙葉類から取得する複数のセンサと、
前記データの受信用の第1インタフェースから前記データをネットワークを介して送信可能な第2インタフェースに変換する、前記複数のセンサとそれぞれ対応づけられた複数の変換装置と、
前記ネットワークを介して前記変換装置に接続され、前記紙葉類に対する印刷品質を前記データに基づいて検査する、前記複数の変換装置とそれぞれ対応づけられた複数の演算装置と、
前記ネットワークを介して前記複数の変換装置に接続されるストレージ装置と、を備え、
前記複数の変換装置は、前記第1インタフェースを介して受信する前記データを前記第2インタフェースを介して前記ストレージ装置および前記対応づけられた前記演算装置に送信し、
前記ストレージ装置は、前記複数の変換装置から受信する前記データを記憶すると共に、前記複数の演算装置の演算結果を記憶する、印刷品質検査システム。
【請求項2】
前記ストレージ装置に停電時に電源を供給する無停電電源装置を備える、
請求項1に記載の印刷品質検査システム。
【請求項3】
前記ストレージ装置に記憶されているデータを外部に出力する出力装置をさらに備える、
請求項1に記載の印刷品質検査システム。
【請求項4】
前記演算装置は、前記紙葉類に対する印刷品質を検査する処理を実行するソフトウェアを記憶するソフトウェア記憶部を備え、
前記ソフトウェア記憶部に記憶されるソフトウェアは、リードオンリーに設定される、
請求項1に記載の印刷品質検査システム。
【請求項5】
前記各データの1つは、前記紙葉類に対して紫外線、赤外線、および可視光線のいずれかを照射し、その反射光から取得されるデータである、
請求項1に記載の印刷品質検査システム。
【請求項6】
前記各データの1つは、前記紙葉類に印刷された磁気印刷を読み取り取得されるデータである、
請求項1に記載の印刷品質検査システム。
【請求項7】
前記演算装置は、複数の前記変換装置と対応づけられており、
前記演算装置は、前記ネットワークを介して前記複数の前記変換装置からそれぞれ受信する複数のデータを利用して、前記紙葉類の印刷品質の検査に関する演算を行う、
請求項1に記載の印刷品質検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、印刷品質検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類処理装置においては、紙葉類、例えば紙幣の印刷品質を検査する工程を設ける場合がある。このような紙葉類処理装置は、印刷品質の検査を、例えば、次のように行っている。
まず、紙葉類処理装置内で搬送される紙幣を複数種類のセンサ(例えば、ラインカメラ)で撮像し、その撮像した複数のセンサデータ(例えば、画像データ)それぞれをインタフェース(例えば、カメラリンク)を介して画像集約装置に集約する。画像集約装置はセンサから画像データを取込んだインタフェースと同じインタフェースを介してセンサデータを演算装置に出力する。演算装置では、受信したセンサデータに基づいて所定の印刷品質に関する演算を行う。例えば、センサデータがRGB(3原色)画像データであれば、紙幣の印刷画像が所定の品質を保持しているか否かが演算される。このように各演算装置で実行される演算結果に基づいて、紙幣に対する印刷品質の検査が行われる。また、各演算装置は、当該演算装置内に設けられたストレージ装置に演算結果を記憶する。なお、複数種類のセンサのデータを画像集約装置に集約するのは、複数種類のデータを利用して検査を行う場合があるためである。このように構成することにより、演算装置の追加による演算並列度をアップさせることが可能になる。
なお、検知装置として、複数のセンサユニットとこれらのセンサユニットと低速のシリアル伝送路により接続される制御部とを備え、データ収集用の余分な経路や装置を不要にする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-121917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像集約装置は、カメラで撮影した画像データを入力可能なポート数に制限がある。例えば、画像集約装置に4ポートがある場合は、センサを最大4つしか接続することができないため、4つを超えるセンサのセンサデータを画像集約装置に集約することが物理的に不可能だった。このため、例えば紙葉類処理装置で処理する紙葉類の種類が増加し、印刷品質を検査するために新たなセンサを追加する必要が生じても既に規定数のセンサが画像集約装置に接続されている場合、新たなセンサを画像集約装置に接続し、センサデータを取得することができなかった。このように、画像集約装置を利用した印刷品質検査システムにおいては、センサの増設に限界があり、紙葉類に対する検査対象を増大させるスケーラブルに限界があった。したがって、検査対象を増大させる場合、画像集約装置を含めた設計・開発を再度行う必要があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、スケーラブルに対応した印刷品質管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る、紙葉類の印刷品質を検査する印刷品質検査システムは、複数のセンサと、複数の変換装置と、複数の演算装置と、ストレージ装置と、を備える。複数のセンサは、印刷品質を検査するためのデータを前記紙葉類から取得する。複数の変換装置は、前記データの受信用の第1インタフェースから前記データをネットワークを介して送信可能な第2インタフェースに変換するものであり、前記複数のセンサとそれぞれ対応づけられている。複数の演算装置は、前記ネットワークを介して前記変換装置に接続され、前記紙葉類に対する印刷品質を前記データに基づいて検査するものであり、前記複数の変換装置とそれぞれ対応づけられている。ストレージ装置は、前記ネットワークを介して前記複数の変換装置に接続される。また、前記複数の変換装置は、前記第1インタフェースを介して受信する前記データを前記第2インタフェースを介して前記ストレージ装置および前記対応づけられた前記演算装置に送信し、前記ストレージ装置は、前記複数の変換装置から受信する前記データを記憶すると共に、前記複数の演算装置の演算結果を記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る紙葉類処理装置の構成の一例を概略的に示す斜視図。
図2】同実施形態に係る鑑査部の構成の一例を模式的に示す図。
図3】同実施形態に係る変換装置の構成の一例を示す図。
図4】同実施形態に係るデータ取得のタイミングの一例を示すタイミングチャート。
図5】同実施形態に係る演算装置の構成の一例を示す図。
図6】同実施形態に係る制御パラメータの一例を示すイメージ図。
図7】同実施形態に係る印刷品質を検査するときのデータの流れの一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る紙葉類処理装置11の構成の一例を概略的に示すものである。この紙葉類処理装置11は、紙葉類としての紙幣Pを取込み処理するための紙葉類処理部12、および、この紙葉類処理部12を操作するための操作表示部13を有して構成される。
【0009】
紙葉類処理部12は、集積状態の複数枚の紙幣Pをセットする供給部14を有する。供給部14の供給側には、当該供給部14にセットされた紙幣Pをその集積方向前端のものから1枚ずつ取込む取込部15が設けられている。
取込部15の下流側には、取込部15により取込まれた紙幣Pを1枚ずつ搬送する搬送路16が延設されている。搬送路16上には、図示しない搬送ベルトや駆動プーリが配設され、図示しない搬送モータによって搬送ベルトを走行させることにより紙幣Pを一定速度で搬送するようになっている。
【0010】
取込部15の下流側の搬送路16上には、搬送されている紙幣Pの印刷品質を検出する鑑査部17が設けられている。鑑査部17には、本発明の実施の形態に係る印刷品質検査システムが適用されている。鑑査部17は、紙幣Pの特徴を検出して紙幣Pの種類、汚棄損、表裏、真偽などを鑑査する。鑑査部17の詳細な構成の一例は、図2を参照して後述する。
【0011】
鑑査部17の下流側の搬送路16上には、たとえば、4つのゲート21~24が順次配設されている。各ゲート21~24は、鑑査部17における鑑査結果(検査結果)に基づいて図示しない制御部による制御にしたがって切換えられ、紙幣Pを所定の集積部へ案内する。
【0012】
鑑査部17の直後に配設されたゲート21は、鑑査部17を介して正規の紙幣Pではないことが判定された偽券、鑑査部17において鑑査できなかった鑑査不能券、および、重ね取りした鑑査不能券などの排除券をリジェクト部25へ案内するように切換えられる。
【0013】
また、ゲート21の下流側の搬送路16に沿って設けられたゲート22~24によって分岐された位置には、それぞれ集積部26~29が配設されている。集積部26~29には、ゲート21を介して導かれた排除券以外の正規の紙幣Pだけが集積される。
【0014】
次に、鑑査部17について説明する。
図2は、鑑査部17の構成の一例を模式的に示す図である。図2に示すように、鑑査部17は、タイミングセンサ31,41,51,61、センサ32,42,52,62、変換装置33,43,53,63、ハブ70、演算装置34,44,54,64、ストレージ装置71、ゲートウェイ装置(出力装置)72、および、UPS(無停電電源措置)73を備えて構成される。
【0015】
センサ32,42,52,62は、それぞれ搬送路16上を搬送される紙幣Pを撮影可能な所定位置に設けられている。また、本実施形態では、図示に示すように、タイミングセンサ31、センサ32、タイミングンセンサ41、センサ42、タイミングセンサ51、センサ52、タイミングセンサ61、および、センサ62の順に搬送路16の上流側から搬送路16に沿って設けられている。センサ32,42,52,62は、例えば、ラインセンサであり、その並び方向は図示の矢印で示す紙幣Pの搬送方向に直交するように配置される。なお、各センサ32,42,52,62は、紙幣Pを撮影し、その撮影データを取得する検出装置であるため、紙幣Pの表面側(搬送路の上側)、及び紙幣Pの裏面側(搬送路の下側)を撮影するように配置されていてもよい。
【0016】
タイミングセンサ31,41,51,61と、変換装置33,43,53,63とはそれぞれI/Oポートを介して接続され、センサ32,42,52,62と、変換装置33,43,53,63とはそれぞれカメラリンクN1で接続されている。また、変換装置33,43,53,63、演算装置34,44,54,64、およびストレージ装置71は、ハブ70を介してそれぞれネットワークN2により接続されている。さらに、ストレージ装置71は、ゲートウェイ装置72、およびUPS73と接続されている。なお、ネットワークN2は、本実施形態では、ローカルエリアネットワーク(LAN)とする。
【0017】
タイミングセンサ31は、搬送路16を搬送される紙幣Pを検出する。そして、タイミングセンサ31は、紙幣Pを検出している間は、紙幣Pを検出している状態を示すON信号を変換装置33に出力する。また、センサ32は、搬送路16の所定位置に所定の波長(本実施形態では、可視光線とする。)を照射する照射部(図示省略)と、その所定の波長の光を照射した搬送路16から反射される反射光を受光する受光部(図示省略)とを備え、当該受光部から受光した光量に基づいて取得する画像データを変換装置33に出力する。受光部には、例えば、RGB(3原色)のカラーフィルタが設けられており、センサ32は、画像データとしてRGB画像データを変換装置33に出力できるようになっている。さらに、変換装置33は、タイミングセンサ31から受信するON信号に基づいて、センサ32から受信する画像データをネットワークN2へ出力する。これにより、変換装置33は、タイミングセンサ31で紙幣Pを検出している間、センサ32から取得する画像データを紙幣Pの画像データD1としてネットワークN2へ出力する。なお、画像データD1を出力する出力範囲の詳細な説明については図4を参照して後述する。
【0018】
他のタイミングセンサ41,51,61は、それぞれタイミングセンサ31と同様に、紙幣Pを検出している間、変換装置43,53,63に紙幣Pを検出している状態を示すON信号を出力する。また、他のセンサ42,52,62は、センサ42と同様に、搬送路16の所定位置に所定の波長の光を照射する照射部(図示省略)と、搬送路16から反射される反射光を受光する受光部(図示省略)とを備え、当該受光部から受光した光量に基づいて取得する画像データを変換装置43,53,63に出力する。なお、センサ42,52,62が照射する波長の光は、例えば、赤外線、紫外線等であり、本実施形態では、4つのセンサ32,42,52,62はそれぞれ異なる波長を照射し、その反射光を受光する。さらに、変換装置43,53,63は、タイミングセンサ41,51,61から受信するON信号に基づいて、センサ42,52,62から受信する画像データをネットワークN2へ出力する。これにより、変換装置43,53,63は、タイミングセンサ41,51,61で紙幣Pを検出している間、センサ42,52,62取得する画像データを紙幣Pの画像データD2,D3,D4としてそれぞれネットワークN2へ出力する。
【0019】
変換装置33は、センサ32からカメラリンクN1経由で取得する画像データD1をネットワークN2を介してデータ送信するためにインタフェースを変換する装置である。また、変換装置33は、紙幣Pに対する画像データD1をネットワークN2を介して演算装置34,44,54,64に出力すると共に、ストレージ装置71に出力する。変換装置33の構成の一例については、図3を参照して後述する。
【0020】
同様に、変換装置43,53,63は、それぞれ、センサ42,52,62からカメラリンクN1を介して取得する画像データD2,D3,D4をネットワークN2を介してデータ送信するためにインタフェースを変換する装置である。変換装置43は、既述の紙幣P対する画像データD2をネットワークN2を介して演算装置34,44,54,64に出力すると共に、ストレージ装置71に出力する。変換装置54は、既述の紙幣P対する画像データD3をネットワークN2を介して演算装置34,44,54,64に出力すると共に、ストレージ装置71に出力する。変換装置63は、既述の紙幣P対する画像データD4をネットワークN2を介して演算装置34,44,54,64に出力すると共に、ストレージ装置71へ出力する。
【0021】
以上のように、鑑査部17において、紙幣Pが搬送路16を搬送されると、異なる画像データD1~D4が順次、例えば、演算装置34に送信されると共にストレージ装置71に送信される。また、次に搬送される紙幣Pに対しては、その画像データD1~D4が、例えば、演算装置44に送信されると共に、ストレージ装置17に送信される。このように順次搬送される紙幣Pに対して、演算装置34,44,54,64のうちの1つの演算装置が決定され、その決定された演算装置により、紙幣Pに対する検査が実行される。
演算装置34,44,54,64は、画像データD1~D4がそれぞれ紙幣Pの画像データとして正しいか否かを判定するOS上で動作するアプリケーションを記憶している。演算装置34,44,54,64でそれぞれ動作するアプリケーションは、同一のアプリケーションであり、例えば、紙幣Pの印刷画像、色合い、汚れ等を検査するためのアプリケーションである。演算装置34は、画像データD1~D4に対する処理をメモリ上で実行すると、その検査結果やログをネットワークN2を介してストレージ装置71に出力する。また、演算装置44,54,64は、演算装置34の場合と同様に、画像データD1~D4に対する処理をメモリ上で実行し、その検査結果やログをネットワークN2を介してストレージ装置71に出力する。なお、演算装置34の構成の一例は、図5を参照して後述する。
【0022】
ストレージ装置71は、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)からなる記憶装置であり、紙幣Pの印刷品質の検査結果等を含む各種データを記憶する。例えば、ストレージ装置71は、変換装置33,43,53,63から受信する画像データD1,D2,D3,D4を記憶すると共に、演算装置34,44,54,64から受信する検査結果やログを記憶する。
【0023】
ゲートウェイ装置72は、例えば、ストレージ装置71に記憶しているデータを外部へ出力する。ここで、外部とは、例えば、鑑査部17外である。なお、操作表示部13を介したオペレータの指示により、紙葉類処理装置11外へストレージ装置71に記憶しているデータを出力するようにしてもよい。これにより、鑑査部17で紙幣Pの検査に用いられたデータをオペレータの指示に基づいて全て外部へ出力することが可能になる。ところで、複数の演算装置それぞれがストレージ装置を備える構成の場合、紙幣Pの検査に用いられたデータは各演算装置に記憶されるため、ゲートウェイ装置は全ての演算装置から紙幣Pの検査に用いられたデータを集めて外部へ出力する処理が生じる。しかし、本実施形態では、ゲートウェイ装置72は、ストレージ装置71から紙幣Pの検査に用いられたデータを外部へ出力することができる。このため、上記構成の場合と比較して、本実施形態の鑑査部17は、ゲートウェイ装置72の開発工程を減らすことができる。
【0024】
UPS73は、紙葉類処理装置11に供給される電源が遮断(例えば、停電)されたときに、ストレージ装置71に電源を供給する。本実施形態では、後述する図5に示すように、各演算装置34,44,54,64が画像データを記憶するストレージ装置を備える構成ではなく、各演算装置34,44,54,64と1つのストレージ装置71がネットワークN2を介して接続されている構成であるため、UPS73はストレージ装置71と接続されている。ところで、複数の演算装置それぞれがストレージ装置を備える場合は、紙葉類処理装置11に供給される電源が遮断されることを想定して各ストレージ装置に対してもそれぞれUPSを設置する必要が生じる。ここで、産業用途のUPS(例えば、電圧は200V)は、サイズが大きい。このため、各ストレージ装置に対して設置する場合、UPSを格納するためのスペースを考慮して設計する必要がある。しかし、本実施形態では、演算装置34,44,54,64は、それぞれ紙幣Pの検査に用いられたデータを記憶するストレージ装置を備えていないため、ストレージ装置71にUPS17を設置すればよい。これにより、紙葉類処理装置11のサイズをコンパクトにすることが可能になる。
【0025】
図3は、変換装置33の構成の一例を示す図である。なお、他の変換装置43,53,63は、変換装置33と同様な構成をしているため、本実施形態では変換装置33の構成について説明する。
図3に示すように、変換装置33は、タイミングセンサインタフェース(I/F)81、第1インタフェースであるセンサインタフェース(I/F)82、データ取得部83、メモリ84、LAN出力部85、および第2インタフェースであるLANインタフェース(I/F)86を備えている。
【0026】
タイミングセンサI/F81は、タイミングセンサ31からON/OFF信号を受信し、そのON/OFF信号をデータ取得部83に出力する。ここで、既述のようにON信号は紙幣Pを検出している場合にタイミングセンサ31が出力する信号であり、また、OFF信号は紙幣Pを検出していない場合にタイミングセンサ31が出力する信号である。センサI/F82は、センサ32から画像データを受信し、当該画像データをデータ取得部83に出力する。データ取得部83は、タイミングセンサ31から受信するON/OFF信号に基づいて、紙幣Pを撮影した画像データを取得する。ここで、図4は、データ取得のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0027】
図4においては、上側はタイミングセンサ31のON/OFF信号を示しており、下側はセンサ32が出力する画像データを示している。なお、いずれも横軸は時間Tである。タイミングンセンサ31は、時刻t1のときにONになり、その後ON状態が継続し、時刻t2でOFFになる。ここで、時刻t1は搬送路16を搬送される紙幣Pの先端をセンサ32が検出するタイミングである。時刻t2は紙幣Pの後端をセンサ32が検出するタイミング、言い換えると、紙幣Pを検出しなくなるタイミングである。このようにタイミングセンサ31の信号がONの間においては、データ取得部83は、センサ32の画像データを画像データD1としてメモリ84に出力する。つまり、時刻t1から時刻t2までが画像データD1の出力範囲の時間になる。
【0028】
図3に戻り説明を続ける。メモリ84に出力された画像データD1は、メモリ84からLAN出力部85に出力される。本実施形態では、LAN出力部85の画像データD1の出力先としてネットワークN2上のアドレスが設定されている。演算装置34,44,54,64のアドレス、及びストレージ装置71のアドレスである。したがって、画像データD1は、LAN出力部85からLANI/F86、ネットワークN2を介して演算装置34,44,54,64のうちの1つの演算装置、およびストレージ装置71にそれぞれ出力される。LAN出力部85のアドレスの設定は、任意に設定可能であり、画像データD1の出力先は2つではなく3つ以上でも設定可能である。また、変換装置43のLAN出力部、変換装置53のLAN出力部、変換装置63のLAN出力部も同様に、演算装置34,44,54,64のアドレス、及びストレージ装置71のアドレスが設定される。1つの紙幣Pについては、変換装置33,43,53,63から演算装置34,44,54,64のうちの1つの演算装置に画像データD1~D4がそれぞれ出力されるようにアドレスが切り替えられると共に、画像データD1~D4がストレージ装置71に出力される。
【0029】
図5は、演算装置34の構成の一例を示す図である。なお、他の演算装置44,54,64は、演算装置34と同様な構成をしているため、本実施形態では演算装置34の構成について説明する。
演算装置34は、LANインタフェース(I/F)91、LAN入出力部92、制御部93、およびストレージ部(ソフトウェア記憶部)95を備えている。また、制御部93は制御パラメータ部93a、およびメモリ94を備える。制御部パラメータ部93aは、紙幣Pの印刷品質を検査する制御パラメータの設定を記憶する。メモリ94は、各種処理の作業用として用いるワークメモリ96の領域と、作業のログを記憶するログ部97の領域を含んでいる。さらに、ストレージ部95は、演算装置34を動作させるオペレーションシステムを記憶するOS部98と、アプリケーションを記憶するアプリケーション部99を含んでいる。
【0030】
LANI/F91は、変換装置33から画像データD1を受信すると、受信した画像データD1をLAN入出力部92を介してワークメモリ96へ出力する。また、LAN入出力部92には、ストレージ装置71のアドレスがデータの出力先として設定されており、制御部93から受信したデータ(検査結果やログ)をLANI/F91、ネットワークN2を介してストレージ装置71へ出力する。
【0031】
制御部93は、OS部98に記憶されたオペレーションシステム及びアプリケーション部99に記憶されたアプリケーションをワークエリアに読み出し、当該アプリケーションを動作させる。ここで、当該アプリケーションは、紙幣Pの印刷品質を検査するためのアプリケーションである。本実施形態では、画像データD1はRGB画像データであるため、当該アプリケーションは、例えば、紙幣Pに汚れが付着しているか否かを検査するアプリケーションが想定される。ログ部97は、アプリケーションの動作結果、日時等のログを記憶する。
【0032】
ストレージ部95は、例えば、HDDやSSDからなる記憶装置である。ストレージ部95は、OS部98に記憶されるオペレーションシステム、およびアプリケーション部99に記憶されるアプリケーション、言い換えればこれらのソフトウェアはリードオンリーに構成されており、書き換えができないようになっている。このため、演算装置34はストレージ部95にデータを書き込む動作を行う必要がないので、停電時の故障発生等を防止できる。さらに、演算装置34で紙幣Pの検査に用いられた検査結果を含むデータは全てストレージ装置71に出力可能に構成されている。したがって、本実施形態では、図2に示すように、UPS73がストレージ装置71に接続されている。なお、既述のソフトウェアをリードオンリーにする構成は、例えば、所定のオペレーションシステムを使用することにより可能になる。
【0033】
図6は、制御パラメータ部93aに記憶される制御パラメータの一例を示すイメージ図である。
図6に示すように、制御パラメータ部93aに記憶される制御パラメータは、操作表示部13を用いてユーザが設定できるようになっている。なお、本実施形態では、ユーザが操作表示部13を用いて制御パラメータの設定を行う場合で説明するが、ネットワークN2に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)等の端末装置からユーザが設定するように構成してもよい。
イメージ93bは、紙幣Pの制御パラメータの一例を示している。イメージ93bには、制御パラメータ(検査項目)として、文字「千円」,「1000」の位置、透かしの幅、肖像画の面積等が設定可能になっている。このように、本実施形態では、ユーザが制御パラメータ(検査項目)を自由に設定することができるようになっている。したがって、演算装置34,44、54,64の演算処理時間が制御パラメータの変更により大きく変動する。このため、紙幣Pに対する演算処理時間の見積もり(予測)が困難である。よって、鑑査部17にスケーラビリティ性を持たせることが非常に重要になる。
【0034】
次に、紙幣Pの印刷品質を検査するときのデータの流れの一例について説明する。
図7は、鑑査部17で紙幣P1から紙幣P4の4枚の紙幣を検査する場合のデータの流れを説明するための図である。
紙幣P1が搬送路16を搬送され鑑査部17内に入ると、タイミングセンサ31と、センサ32と、変換装置33とにより画像データP1-D1が読み取られ、変換装置33は、画像データP1-D1をネットワークN2を介して演算装置34、およびストレージ装置71へ出力する。演算装置34は、画像データP1-D1を利用してアプリケーションを実行することにより紙幣P1の印刷品質の検査を行い検査結果(演算結果)P1-ch1を得る。演算装置34は、当該検査結果P1-ch1をストレージ装置71へ出力する。これにより、ストレージ装置71は、変換装置33から出力される画像データP1-D1および画像データP1-D1の検査結果P1-ch1等を記憶する。
【0035】
さらに、紙幣P1が搬送路16を搬送されると、順次、タイミングセンサ41と、センサ42と、変換装置43とにより画像データP1-D2が読み取られ、タイミングセンサ51と、センサ52と、変換装置53とにより画像データP1-D3が読み取られ、タイミングセンサ61と、センサ62と、変換装置63とにより画像データP1-D4が読み取られる。このように画像データを読み取ると、変換装置43,53,63は、画像データP1-D2,P1-D3,P1-D4をそれぞれネットワークN2を介して演算装置34と、ストレージ装置71に出力する。演算装置34は、画像データP1-D2,P1-D3,P1-D4を利用してそれぞれアプリケーションを実行することにより紙幣P1の印刷品質の検査を行い検査結果P1-ch2,P1-ch3,P1-ch4を得る。演算装置34は、当該検査結果P1-ch2,P1-ch3,P1-ch4をそれぞれストレージ装置71へ出力する。これにより、ストレージ装置71は、変換装置34から出力される画像データP1-D2,P1-D3,P1-D4および検査結果P1-ch2,P1-ch3,P1-ch4を記憶する。
【0036】
このように、紙幣P1の印刷品質の検査が実行され、その検査に使用された画像データ画像データP1-D1,P1-D2,P1-D3,P1-D4および検査結果P1-ch1,P1-ch2,P1-ch3,P1-ch4がストレージ装置71に記憶される。
【0037】
次に、紙幣P2が鑑査部17内の搬送路16を搬送されると、紙幣P1の場合と同様の処理が実行されるが、印刷品質の検査を演算する演算装置が演算装置44に変更される。したがって、変換装置33,43,53,63は、紙幣P2から読み取った画像データP2-D1,P2-D2,P2-D3,P2-D4をネットワークN2を介して演算装置44およびストレージ装置71に出力する。そして、演算装置44はそれぞれ検査結果P2-ch1,P2-ch2,P2-ch3,P2-ch4を得て、検査結果P2-ch1,P2-ch2,P2-ch3,P2-ch4をそれぞれストレージ装置71に出力する。紙幣P3,P4に対しても、演算装置54,演算装置64により同様の処理が実行される。なお、さらに続いて搬送される紙幣P5に対しては、演算装置34により同様の処理が実行され、その次の紙幣P6に対しては、演算装置44により同様の処理が実行されるという処理が繰り返されていく。
【0038】
これにより、ストレージ装置71には、画像データP1-D1からP1-D4,P2-D1からP2-D4,P3-D1からP3-D4,P4-D1からP4-D4、および検査結果P1-ch1からP1-ch4,P2-ch1からP2-ch4,P3-ch1からP3-ch4,P4-ch1からP4-ch1からP4-ch4が記憶される。
【0039】
以上のように構成された鑑査部17によると、各変換装置33,43,53,64は、カメラリンクN1を介して受信する紙幣Pの画像データD1,D2,D3,D4をネットワークN2を介してストレージ装置71および演算装置34,44,54,64に送信し、ストレージ装置71は、変換装置33,43,53,63から受信する画像データD1,D2,D3,D4を記憶すると共に、演算装置34,44,54,64の検査結果P1-ch1からP1-ch4,P2-ch1からP2-ch4,P3-ch1からP3-ch4,P4-ch1からP1-ch4を記憶する。このように、変換装置33,43,53,64により、カメラリンクN1から取得するデータをネットワークN2に出力できるようにインタフェースを変換することができるため、センサの増設に限界がなく、紙葉類に対する検査対象を増大させるスケーラブルに対応することが可能になる。これにより、上記実施形態では、従来のように再度、設計・開発を行う負担を軽減することができる。
【0040】
より詳細には、本実施形態では、図7を参照して既述したように、鑑査部17においては、演算装置34,44,54,64,34,44,…,という順序により、次々と搬送される紙幣Pに対して印刷品質の検査を実行する。このため、図6を参照して既述したように制御パラメータの設定がユーザにより変更された場合、1つの演算装置で処理する演算処理時間が長くなると、4つの演算装置34,44,54,64では、処理が追いつかなくことも想定される。このような場合に、本実施形態では、ネットワークN2に演算装置を容易に追加することができ、演算処理が追いつかずに紙幣Pの搬送が停止されるという事態を回避することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、センサ32,42,52,62は、紙幣Pに対して波長の異なる光を照射し、その反射光を受光する場合で説明したが、センサの種類はこれらに限るものではなく、紙幣Pの印刷品質を検査するためのデータを取得するセンサであればよい。例えば、搬送路16を搬送される紙幣Pのサイズを検査するためのセンサ、及びそのセンサで取得したセンサデータをネットワークN2に出力できるように変換する変換装置等を設けるようにしてもよい。さらに、例えば、紙幣Pに磁気印刷が施されている場合には、磁気センサを追加して搬送路16を搬送される紙幣Pから磁気印刷された内容を読み取り、その読み取ったセンサデータをネットワークN2に出力できるように変換する変換装置等を設けるようにしてもよい。このようにセンサを鑑査部17に追加する場合、読み取ったセンサデータに対して処理を行う演算装置のアプリケーションも併せて鑑査部17に追加する。これにより、紙葉類処理装置11は、追加したセンサが取得するセンサデータに基づいて紙幣Pの品質を管理できるようになる。また、鑑査部17には、紙幣Pの画像、サイズ、磁気印刷を読み取るセンサに限らず紙幣Pから情報を読み取るための種々のセンサ、変換装置、および演算装置を追加することが可能である。
【0042】
さらに、上記実施形態では、1つの変換装置は、1つの演算装置に対して画像データを出力する場合を説明しているが、これに限るものではない。例えば、演算装置に2つのセンサデータを用いて紙幣Pに対する検査を行うアプリケーションが記憶されている場合は、演算装置は、2つの変換装置から画像データを受信し、当該検査を行うようにしてもよい。このように、変換装置と、演算装置とは、図2に示すように一対一で対応する構成でなくてもよい。
【0043】
なお、従来のシステムでは、センサおよび画像集約装置、並びに画像集約装置と演算装置とをそれぞれカメラリンクで接続している。カメラリンクは通信距離の制限が例えば5m程度と短い。これに対して、上記実施形態では、変換装置33,43,53,63と、演算装置34,44,54,64とは、それぞれネットワークN2により通信可能に接続されている。ネットワークN2は、例えば、LANであり、カメラリンクと比較して通信距離が非常に長い。このため、上記実施形態では、紙葉類処理装置11内での設計自由度を高めることも可能になる。
【0044】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
11…紙葉類処理装置、12…紙葉類処理部、13…操作表示部、17…鑑査部、31,41,51,61…タイミングセンサ、32,42,52,62…センサ、33,43,53,63…変換装置、34,44,54,64…演算装置、70…ハブ、71…ストレージ装置、72…ゲートウェイ装置、73…UPS(無停電電源装置)、82…センサインタフェース、86…LANインタフェース、D1~D4…画像データ、N1…カメラリンク、N2…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7