(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】集電電流監視装置
(51)【国際特許分類】
B60L 5/26 20060101AFI20220509BHJP
B60L 5/04 20060101ALI20220509BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220509BHJP
【FI】
B60L5/26 Z
B60L5/04
B60L3/00 B
(21)【出願番号】P 2018118835
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】角南 浩靖
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 由嗣
(72)【発明者】
【氏名】▲真▼柄 勇
(72)【発明者】
【氏名】阿彦 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】下山 拓紀
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-93022(JP,A)
【文献】特開2003-319505(JP,A)
【文献】特開2009-281790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/26
B60L 5/04
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の集電装置を流れる集電電流の電流値I1、及び第2の集電装置を流れる集電電流の電流値I2を取得する電流値取得ユニットと、
前記電流値I1の二乗平均平方根RMS1を算出する第1のRMS算出ユニットと、
前記電流値I2の二乗平均平方根RMS2を算出する第2のRMS算出ユニットと、
前記二乗平均平方根RMS1及び前記二乗平均平方根RMS2のうちの一方から他方を差し引いた値であるアンバランス電流Iuを算出するアンバランス電流算出ユニットと、
前記アンバランス電流Iuにおける単位時間当たりの変化量である変化量ΔIuを算出する変化量算出ユニットと、
前記変化量ΔIuの絶対値の、予め設定された時間Pにおける時間平均値である時間平均値aveΔIuを算出する変化量平均値算出ユニットと、
前記時間平均値aveΔIuが、予め設定された閾値より大きいか否かを判断する判断ユニットと、
前記時間平均値aveΔIuが前記閾値より大きいと前記判断ユニットが判断した場合、異常発生信号を出力する異常発生信号出力ユニットと、
を備える集電電流監視装置。
【請求項2】
第1の集電装置を流れる集電電流の電流値I1、及び第2の集電装置を流れる集電電流の電流値I2を取得する電流値取得ユニットと、
前記電流値I1の二乗平均平方根RMS1を算出する第1のRMS算出ユニットと、
前記電流値I2の二乗平均平方根RMS2を算出する第2のRMS算出ユニットと、
前記二乗平均平方根RMS1及び前記二乗平均平方根RMS2のうちの一方から他方を差し引いた値であるアンバランス電流Iuを算出するアンバランス電流算出ユニットと、
前記アンバランス電流Iuにおける単位時間当たりの変化量である変化量ΔIuを算出する変化量算出ユニットと、
前記変化量ΔIuの絶対値の、予め設定された時間Pにおける時間平均値である時間平均値aveΔIuを算出する変化量平均値算出ユニットと、
前記アンバランス電流Iuの、予め設定された時間Qにおける時間平均値である時間平均値aveIuを算出するアンバランス電流平均値算出ユニットと、
前記時間平均値aveIuと前記時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、予め設定された異常条件を充足するか否かを判断する判断ユニットと、
前記異常条件を充足すると前記判断ユニットが判断した場合、異常発生信号を出力する異常発生信号出力ユニットと、
を備え、
前記異常条件は、前記時間平均値aveIuの絶対値を表す第1の軸、及び前記時間平均値aveΔIuを表す第2の軸により規定される2次元空間において、前記時間平均値aveIuと前記時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、以下で定義される正常領域の外にあるという条件である集電電流監視装置。
正常領域:前記第1の軸における正の切片及び前記第2の軸における正の切片を通る境界線と、前記第1の軸と、前記第2の軸と、で囲まれる領域を含む領域。
【請求項3】
第1の集電装置を流れる集電電流の電流値I1、及び第2の集電装置を流れる集電電流の電流値I2を取得する電流値取得ユニットと、
前記電流値I1の二乗平均平方根RMS1を算出する第1のRMS算出ユニットと、
前記電流値I2の二乗平均平方根RMS2を算出する第2のRMS算出ユニットと、
前記二乗平均平方根RMS1及び前記二乗平均平方根RMS2のうちの一方から他方を差し引いた値であるアンバランス電流Iuを算出するアンバランス電流算出ユニットと、
前記アンバランス電流Iuにおける単位時間当たりの変化量である変化量ΔIuを算出する変化量算出ユニットと、
前記変化量ΔIuの絶対値の、予め設定された時間Pにおける時間平均値である時間平均値aveΔIuを算出する変化量平均値算出ユニットと、
前記アンバランス電流Iuの絶対値の、予め設定された時間Qにおける時間平均値である時間平均値ave|Iu|を算出するアンバランス電流平均値算出ユニットと、
前記時間平均値ave|Iu|と前記時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、予め設定された異常条件を充足するか否かを判断する判断ユニットと、
前記異常条件を充足すると前記判断ユニットが判断した場合、異常発生信号を出力する異常発生信号出力ユニットと、
を備え、
前記異常条件は、前記時間平均値ave|Iu|を表す第1の軸、及び前記時間平均値aveΔIuを表す第2の軸により規定される2次元空間において、前記時間平均値ave|Iu|と前記時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、以下で定義される正常領域の外にあるという条件である集電電流監視装置。
正常領域:前記第1の軸における正の切片及び前記第2の軸における正の切片を通る境界線と、前記第1の軸と、前記第2の軸と、で囲まれる領域を含む領域。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の集電電流監視装置であって、
前記境界線は、前記第1の軸における正の切片及び前記第2の軸における正の切片を通る直線である集電電流監視装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の集電電流監視装置であって、
前記変化量平均値算出ユニットは、前記時間P中に算出された前記変化量ΔIuの絶対値を積算して積算値を算出し、前記積算値を前記時間Pで除して前記時間平均値aveΔIuを算出するように構成された集電電流監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は集電電流監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両はその屋根の上に集電装置を備える。集電装置は集電舟を集電アームで支持する構造を有する。集電舟は、舟体と、その上面に取り付けられた摺り板とを備える。集電装置は、集電舟の摺り板を架線の下縁に押し付け、架線から鉄道車両に集電電流を取り入れる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の集電装置を備える鉄道車両において、ある集電装置が集電できない状態を電気離線という。架線に着氷霜があるとき、鉄道車両の進行方向における前方に設けられた集電装置において電気離線が発生することがある。ある集電装置が電気離線の状態において、何らかの原因で、もう一方の集電装置も離線するとアークが発生し、舟体が損傷する。
【0005】
そこで、アークが発生し易い状況を検出できる集電電流監視装置が求められている。アークは電気離線の状態において発生し易いから、複数の集電装置における集電電流のアンバランスに基づいてアークが発生し易い状況を検出することが考えられる。
【0006】
しかしながら、様々な状況において集電電流を実際に測定した結果、アークが発生していなくても、集電電流のアンバランスが生じることが判明した。そのため、集電電流のアンバランスのみに基づき、アークが発生し易い状況を検出することは困難である。
【0007】
本開示の一局面は、アークが発生し易い状況を高精度に検出できる集電電流監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、第1の集電装置を流れる集電電流の電流値I1、及び第2の集電装置を流れる集電電流の電流値I2を取得する電流値取得ユニットと、前記電流値I1の二乗平均平方根RMS1を算出する第1のRMS算出ユニットと、前記電流値I2の二乗平均平方根RMS2を算出する第2のRMS算出ユニットと、前記二乗平均平方根RMS1及び前記二乗平均平方根RMS2のうちの一方から他方を差し引いた値であるアンバランス電流Iuを算出するアンバランス電流算出ユニットと、前記アンバランス電流Iuにおける単位時間当たりの変化量である変化量ΔIuを算出する変化量算出ユニットと、前記変化量ΔIuの絶対値の、予め設定された時間Pにおける時間平均値である時間平均値aveΔIuを算出する変化量平均値算出ユニットと、前記時間平均値aveΔIuが、予め設定された閾値より大きいか否かを判断する判断ユニットと、前記時間平均値aveΔIuが前記閾値より大きいと前記判断ユニットが判断した場合、異常発生信号を出力する異常発生信号出力ユニットと、を備える集電電流監視装置である。
【0009】
本開示の集電電流監視装置によれば、第1の集電装置又は第2の集電装置にアークが発生し易い状況(例えば架線に着氷霜がある状況)のとき、異常発生信号を出力することが
できる。また、本開示の集電電流監視装置は、第1の集電装置及び第2の集電装置にアークが発生し難い状況のとき、異常発生信号を出力してしまうことを抑制できる。
【0010】
本開示の別の一態様は、第1の集電装置を流れる集電電流の電流値I1、及び第2の集電装置を流れる集電電流の電流値I2を取得する電流値取得ユニットと、前記電流値I1の二乗平均平方根RMS1を算出する第1のRMS算出ユニットと、前記電流値I2の二乗平均平方根RMS2を算出する第2のRMS算出ユニットと、前記二乗平均平方根RMS1及び前記二乗平均平方根RMS2のうちの一方から他方を差し引いた値であるアンバランス電流Iuを算出するアンバランス電流算出ユニットと、前記アンバランス電流Iuにおける単位時間当たりの変化量である変化量ΔIuを算出する変化量算出ユニットと、前記変化量ΔIuの絶対値の、予め設定された時間Pにおける時間平均値である時間平均値aveΔIuを算出する変化量平均値算出ユニットと、前記アンバランス電流Iuの、予め設定された時間Qにおける時間平均値である時間平均値aveIuを算出するアンバランス電流平均値算出ユニットと、前記時間平均値aveIuと前記時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、予め設定された異常条件を充足するか否かを判断する判断ユニットと、前記異常条件を充足すると前記判断ユニットが判断した場合、異常発生信号を出力する異常発生信号出力ユニットと、を備え、前記異常条件は、前記時間平均値aveIuの絶対値を表す第1の軸、及び前記時間平均値aveΔIuを表す第2の軸により規定される2次元空間において、前記時間平均値aveIuと前記時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、以下で定義される正常領域の外にあるという条件である集電電流監視装置である。
【0011】
正常領域:前記第1の軸における正の切片及び前記第2の軸における正の切片を通る境界線と、前記第1の軸と、前記第2の軸と、で囲まれる領域を含む領域。
本開示の集電電流監視装置によれば、第1の集電装置又は第2の集電装置にアークが発生し易い状況(例えば架線に着氷霜がある状況)のとき、異常発生信号を出力することが
できる。また、本開示の集電電流監視装置は、第1の集電装置及び第2の集電装置にアークが発生し難い状況のとき、異常発生信号を出力してしまうことを抑制できる。
【0012】
本開示の別の一態様は、第1の集電装置を流れる集電電流の電流値I1、及び第2の集電装置を流れる集電電流の電流値I2を取得する電流値取得ユニットと、前記電流値I1の二乗平均平方根RMS1を算出する第1のRMS算出ユニットと、前記電流値I2の二乗平均平方根RMS2を算出する第2のRMS算出ユニットと、前記二乗平均平方根RMS1及び前記二乗平均平方根RMS2のうちの一方から他方を差し引いた値であるアンバランス電流Iuを算出するアンバランス電流算出ユニットと、前記アンバランス電流Iuにおける単位時間当たりの変化量である変化量ΔIuを算出する変化量算出ユニットと、前記変化量ΔIuの絶対値の、予め設定された時間Pにおける時間平均値である時間平均値aveΔIuを算出する変化量平均値算出ユニットと、前記アンバランス電流Iuの絶対値の、予め設定された時間Qにおける時間平均値である時間平均値ave|Iu|を算出するアンバランス電流平均値算出ユニットと、前記時間平均値ave|Iu|と前記時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、予め設定された異常条件を充足するか否かを判断する判断ユニットと、前記異常条件を充足すると前記判断ユニットが判断した場合、異常発生信号を出力する異常発生信号出力ユニットと、を備え、前記異常条件は、前記時間平均値ave|Iu|を表す第1の軸、及び前記時間平均値aveΔIuを表す第2の軸により規定される2次元空間において、前記時間平均値ave|Iu|と前記時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、以下で定義される正常領域の外にあるという条件である集電電流監視装置である。
【0013】
正常領域:前記第1の軸における正の切片及び前記第2の軸における正の切片を通る境界線と、前記第1の軸と、前記第2の軸と、で囲まれる領域を含む領域。
本開示の集電電流監視装置によれば、第1の集電装置又は第2の集電装置にアークが発生し易い状況(例えば架線に着氷霜がある状況)のとき、異常発生信号を出力することが
できる。また、本開示の集電電流監視装置は、第1の集電装置及び第2の集電装置にアークが発生し難い状況のとき、異常発生信号を出力してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】集電電流監視装置1及びその他の装置の構成を表すブロック図である。
【
図2】集電電流監視装置1の機能的構成を表すブロック図である。
【
図3】集電電流監視装置1が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図4】
図4Aは、著大アーク状況における第1の電流I1を表すグラフであり、
図4Bは、著大アーク状況における第2の電流I2を表すグラフであり、
図4Cは、著大アーク状況における二乗平均平方根RMS1を表すグラフであり、
図4Dは、著大アーク状況における二乗平均平方根RMS2を表すグラフであり、
図4Eは、著大アーク状況におけるアンバランス電流Iuを表すグラフであり、
図4Fは、著大アーク状況における時間平均値aveΔIuを表すグラフである。
【
図5】
図5Aは、通常状況における第1の電流I1を表すグラフであり、
図5Bは、通常状況における第2の電流I2を表すグラフであり、
図5Cは、通常状況における二乗平均平方根RMS1を表すグラフであり、
図5Dは、通常状況における二乗平均平方根RMS2を表すグラフであり、
図5Eは、通常状況におけるアンバランス電流Iuを表すグラフであり、
図5Fは、通常状況における時間平均値aveΔIuを表すグラフである。
【
図6】集電電流監視装置1の機能的構成を表すブロック図である。
【
図7】集電電流監視装置1が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図8】第1の軸51及び第2の軸53により規定される2次元空間を表す説明図である。
【
図9】著大アーク状況における時間平均値aveIuと時間平均値aveΔIuとの組み合わせを2次元空間にプロットした結果を表すグラフである。
【
図10】通常状況における時間平均値aveIuと時間平均値aveΔIuとの組み合わせを2次元空間にプロットした結果を表すグラフである。
【
図11】境界線55及び正常領域57の別形態を表す説明図である。
【
図12】正常領域57の別形態を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1実施形態>
1.集電電流監視装置1の構成
集電電流監視装置1の構成を
図1及び
図2に基づき説明する。集電電流監視装置1は鉄道車両に搭載される装置である。集電電流監視装置1は、
図1に示すように、CPU3とメモリ5とを有する周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。メモリ5としては、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ等が挙げられる。集電電流監視装置1の各種機能は、CPU3がメモリ5に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0016】
集電電流監視装置1が有する機能の一部又は全部は、一つ又は複数のIC等を用いてハードウェア的に実現されてもよい。また、集電電流監視装置1は、マイクロコンピュータに代えて、又は、マイクロコンピュータに加えて、電子回路等のハードウェアを有していてもよい。電子回路は、デジタル回路及びアナログ回路のうち少なくとも一方を含み得る。
【0017】
集電電流監視装置1は、CPU3がプログラムを実行することで実現される機能の構成
として、
図2に示すように、鉄道車両情報取得ユニット7と、ウインドウ幅W設定ユニット9と、異常条件設定ユニット11と、電流値取得ユニット13と、第1のRMS算出ユニット15と、第2のRMS算出ユニット17と、アンバランス電流算出ユニット19と、変化量算出ユニット21と、変化量平均値算出ユニット23と、判断ユニット25と、異常発生信号出力ユニット27と、を備える。
【0018】
鉄道車両は、集電電流監視装置1に加えて、速度センサ29、地上トランスポンダ31、ATC(自動列車停止装置)33、第1の集電装置35、第2の集電装置37、第1の電流センサ39、第2の電流センサ41、制御伝送装置43、モニタ装置45、及び主変換装置47を備える。
【0019】
速度センサ29は鉄道車両の速度Vを検出し、検出した速度VをATC33に送る。ATC33は、速度Vを時間で積分し、鉄道車両の位置POを常時推定する。地上トランスポンダ31は位置補正情報をATC33に送る。位置補正情報は、正確な位置情報である。ATC33は、位置補正情報を用いて、上記のように推定した位置POを適宜補正する。ATC33は、モニタ装置45を介して、速度V及び位置POを集電電流監視装置1に送る。モニタ装置45は、速度V及び位置POを表示する。
【0020】
第1の電流センサ39は、第1の集電装置35を流れる集電電流の電流値I1を検出し、検出した電流値I1を集電電流監視装置1に送る。第2の電流センサ41は、第2の集電装置37を流れる集電電流の電流値I2を検出し、検出した電流値I2を集電電流監視装置1に送る。第1の集電装置35は、鉄道車両のうち、m号車に備えられ、第2の集電装置37はn号車に備えられる。m、mは1~16の範囲内の自然数であり、mはnより小さい。
【0021】
モニタ装置45と制御伝送装置43とは、集電電流監視装置1が出力する、後述する異常発生信号を受ける。制御伝送装置43は、異常発生信号を受けたとき、その異常発生信号を主変換装置47に伝達する。モニタ装置45は運転席に備えられている。鉄道車両の運転士はモニタ装置45の表示画像を見ることができる。モニタ装置45は、異常発生信号を受けたとき、異常報知画像を表示する。異常報知画像は、異常発生信号を受けたときに特有の画像である。主変換装置47は、異常発生信号が伝達されたとき、ノッチ制限を行う。ノッチ制限とは鉄道車両の速度又は加速を制限する制御である。
【0022】
2.集電電流監視装置1が実行する処理
集電電流監視装置1が一定の周期Δtごとに繰り返し実行する処理を
図3に基づき説明する。Δtは正の数であって、例えば2msecである。
【0023】
図3のステップ1では、鉄道車両情報取得ユニット7がATC33から位置PO及び速度Vを取得する。
ステップ2では、ウインドウ幅W設定ユニット9が、前記ステップ1で取得した位置PO及び速度Vに応じて、ウインドウ幅Wを設定する。ウインドウ幅Wとは、後述するステップ5で二乗平均平方根RMS1及び二乗平均平方根RMS2を算出するときにおける積分区間の長さを意味する。ウインドウ幅Wの単位はmsecである。ウインドウ幅W設定ユニット9は、予め、位置PO及び速度Vと、ウインドウ幅Wとを対応付けたテーブルを備えており、そのテーブルを用いてウインドウ幅Wを設定する。
【0024】
テーブルにおけるウインドウ幅Wの範囲は、例えば、10~1000msecの範囲内である。テーブルは、例えば、ベースとなるテーブルを作成した後、テーブルの使用と、使用結果の検証と、検証結果に基づくテーブルの修正とのサイクルを繰り返すことで作成できる。このサイクルにおける修正は、後述する著大アーク状況においては異常発生信号
を出力し易く、後述する通常状況においては異常発生信号を出力し難くなるように行われる。
【0025】
ステップ3では、異常条件設定ユニット11が、前記ステップ1で取得した位置PO及び速度Vに応じて、閾値THを設定する。閾値THは正の値である。この閾値THは、後述するステップ9で使用される。異常条件設定ユニット11は、予め、位置PO及び速度Vと、閾値THとを対応付けたテーブルを備えており、そのテーブルを用いて閾値THを設定する。
【0026】
前記テーブルは、例えば、ベースとなるテーブルを作成した後、テーブルの使用と、使用結果の検証と、検証結果に基づくテーブルの修正とのサイクルを繰り返すことで作成できる。このサイクルにおける修正は、後述する著大アーク状況においては異常発生信号を出力し易く、後述する通常状況においては異常発生信号を出力し難くなるように行われる。
【0027】
ステップ4では、電流値取得ユニット13が、第1の電流センサ39を用いて第1の電流値I1を取得するとともに、第2の電流センサ41を用いて第2の電流値I2を取得する。
【0028】
ステップ5では、第1のRMS算出ユニット15が、前記ステップ4で取得した第1の電流値I1のウインドウ幅Wにおける二乗平均平方根RMS1を算出する。ここで用いるウインドウ幅Wは、前記ステップ2で設定したものである。
【0029】
また、本ステップでは、第2のRMS算出ユニット17が、前記ステップ4で取得した第2の電流値I2のウインドウ幅Wにおける二乗平均平方根RMS2を算出する。ここで用いるウインドウ幅Wは、前記ステップ2で設定したものである。
【0030】
ステップ6では、アンバランス電流算出ユニット19が、前記ステップ5で算出した二乗平均平方根RMS1及び二乗平均平方根RMS2を用いて、アンバランス電流Iuを算出する。アンバランス電流Iuは、二乗平均平方根RMS1から二乗平均平方根RMS2を差し引いた値である。
【0031】
ステップ7では、変化量算出ユニット21が、前記ステップ6で算出したアンバランス電流Iuを用いて、変化量ΔIuを算出する。変化量ΔIuは、以下の式1で表される値である。
【0032】
【数1】
式1において、Iu(t)は、直前の前記ステップ6で算出したアンバランス電流Iuである。Iu(t-Δt)は、Iu(t)を算出したときよりも1周期前の前記ステップ6で算出したアンバランス電流Iuである。Δtは、上述したように、
図3に示す処理を実行する周期であって、前記ステップ6の処理を実行する周期である。変化量ΔIuは、アンバランス電流Iuにおける単位時間当たりの変化量である。
【0033】
ステップ8では、変化量平均値算出ユニット23が、前記ステップ7で算出した変化量ΔIuを用いて、時間平均値aveΔIuを算出する。時間平均値aveΔIuは、以下の式2で表される量である。
【0034】
【数2】
式2における右辺の分子は、積算区間において算出された全ての変化量ΔIuの絶対値を積算した積算値である。積算区間とは、本ステップ8を実行する時点から時間Pだけ遡った時点を始点とし、本ステップ8を実行する時点を終点とする区間である。積算区間の長さは時間Pである。時間Pは正の値であって、例えば、2秒間である。時間PはΔtより長い時間である。そのため、積算区間において、前記ステップ7の処理は複数回実行され、複数の変化量ΔIuが算出される。時間平均値aveΔIuは、変化量ΔIuの絶対値の、時間Pにおける時間平均値である。
【0035】
ステップ9では、判断ユニット25が、前記ステップ8で算出した時間平均値aveΔIuと、前記ステップ3で設定した閾値THとを対比する。時間平均値aveΔIuが閾値THより大きいと判断ユニット25が判断した場合、ステップ10に進む。一方、時間平均値aveΔIuが閾値TH以下であると判断ユニット25が判断した場合、本処理を終了する。
【0036】
ステップ10では、異常発生信号出力ユニット27が異常発生信号を出力する。
3.集電電流監視装置1が奏する効果
(1A)集電電流監視装置1は、第1の集電装置35又は第2の集電装置37に著大アークが発生し易い状況(以下では著大アーク状況とする)のとき、異常発生信号を出力することができる。また、集電電流監視装置1は、第1の集電装置35及び第2の集電装置37に著大アークが発生し難い状況(以下では通常状況とする)のとき、異常発生信号を出力してしまうことを抑制できる。
【0037】
このことを、以下の実験データに基づき説明する。架線に着氷霜がある著大アーク状況において、
図4Aに示すように、第1の電流I1を取得し、
図4Bに示すように、第2の電流I2を取得した。次に、
図4Cに示すように、第1の電流I1から二乗平均平方根RMS1を算出し、
図4Dに示すように、第2の電流I2から二乗平均平方根RMS2を算出した。
【0038】
次に、
図4Eに示すように、アンバランス電流Iuを算出した。次に、
図4Fに示すように、時間平均値aveΔIuを算出した。
図4Fに示すように、著大アーク状況において、閾値THより大きい時間平均値aveΔIuが生じた。よって、著大アーク状況の場合、前記ステップ9において、判断ユニット25は肯定判断し、前記ステップ10において、異常発生信号出力ユニット27が異常発生信号を出力した。
【0039】
なお、著大アーク状況において、時間平均値aveΔIuが大きくなり易い理由は、
図4Eに示すように、アンバランス電流Iuが短い周期で変動するためであると推測される。
【0040】
また、架線に着氷霜がない通常状況において、
図5Aに示すように、第1の電流I1を取得し、
図5Bに示すように、第2の電流I2を取得した。次に、
図5Cに示すように、第1の電流I1から二乗平均平方根RMS1を算出し、
図5Dに示すように、第2の電流I2から二乗平均平方根RMS2を算出した。
【0041】
次に、
図5Eに示すように、アンバランス電流Iuを算出した。次に、
図5Fに示すよ
うに、時間平均値aveΔIuを算出した。
図5Fに示すように、通常状況において、時間平均値aveΔIuの値は小さく、常に閾値TH以下であった。よって、通常状況の場合、前記ステップ9において、判断ユニット25は常に否定判断し、異常発生信号を出力することなく、処理を終了した。
【0042】
なお、
図4A~
図4F、
図5A~
図5Fにおける「電流割合」とは、著大アーク状況時の最大電流値を1として規格化した電流値である。
(1B)変化量平均値算出ユニット23は、積算区間中に算出された変化量ΔIuの絶対値を積算して積算値を算出し、積算値を時間Pで除して時間平均値aveΔIuを算出する。そのことにより、時間平均値aveΔIuを容易且つ正確に算出できる。
<第2実施形態>
1.第1実施形態との相違点
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
図6に示すように、集電電流監視装置1は、アンバランス電流平均値算出ユニット49をさらに備える。また、集電電流監視装置1は、異常条件設定ユニット11に替えて異常条件設定ユニット111を備え、判断ユニット25に替えて、判断ユニット125を備える。
【0043】
2.集電電流監視装置1が実行する処理
集電電流監視装置1が一定の周期Δtごとに繰り返し実行する処理を
図7、
図8に基づき説明する。
図7のステップ11、12の処理は、第1実施形態における前記ステップ1、2の処理と同様である。
【0044】
ステップ13では、異常条件設定ユニット111が、前記ステップ11で取得した位置PO及び速度Vに応じて、異常条件を設定する。この異常条件は後述するステップ20で使用される。異常条件とは、時間平均値aveIuと時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、以下で定義する正常領域の外にあるという条件である。時間平均値aveIuについては後述する。
【0045】
異常条件及び正常領域を
図8に基づき説明する。
図8は、時間平均値aveIuの絶対値を表す第1の軸51、及び時間平均値aveΔIuを表す第2の軸53により規定される2次元空間を表す。X
0は、第1の軸51における正の切片であり、Y
0は、第2の軸53における正の切片である。55は、切片X
0及び切片Y
0を通る境界線である。境界線55は、例えば直線である。正常領域57は、境界線55と、第1の軸51と、第2の軸53と、で囲まれる領域である。
【0046】
図8に示す2次元空間において、時間平均値aveIuと時間平均値aveΔIuとの組み合わせをプロットした点が、正常領域57の外にあれば、異常条件を充足する。一方、時間平均値aveIuと時間平均値aveΔIuとの組み合わせをプロットした点が、正常領域57の中にあれば、異常条件を充足しない。異常条件設定ユニット111は、予め、位置PO及び速度Vと、異常条件とを対応付けたテーブルを備えており、そのテーブルを用いて異常条件を設定する。
【0047】
前記テーブルは、例えば、ベースとなるテーブルを作成した後、テーブルの使用と、使用結果の検証と、検証結果に基づくテーブルの修正とのサイクルを繰り返すことで作成できる。このサイクルにおける修正は、著大アーク状況においては異常条件を充足し易く、通常状況においては異常条件を充足し難くなるように行われる。
【0048】
図7におけるステップ14~18の処理は、第1実施形態における前記ステップ4~8
の処理と同様である。
ステップ19では、アンバランス電流平均値算出ユニット49が、前記ステップ16で算出したアンバランス電流Iuを用いて、時間平均値aveIuを算出する。時間平均値aveIuは、以下の式3で表される量である。
【0049】
【数3】
式3における右辺の分子は、積算区間において算出された全てのアンバランス電流Iuを積算した積算値である。積算区間とは、本ステップ19を実行する時点から時間Qだけ遡った時点を始点とし、本ステップ19を実行する時点を終点とする区間である。積算区間の長さは時間Qである。時間Qは正の値であって、例えば、2秒間である。時間QはΔtより長い時間である。そのため、積算区間において、前記ステップ16の処理は複数回実行され、複数のアンバランス電流Iuが算出される。時間平均値aveIuは、アンバランス電流Iuの、時間Qにおける時間平均値である。
【0050】
ステップ20では、判断ユニット125が、前記ステップ18で算出した時間平均値aveΔIuと、前記ステップ19で算出した時間平均値aveIuとの組み合わせが、前記ステップ13で設定した異常条件を充足するか否かを判断する。異常条件を充足すると判断ユニット125が判断した場合、ステップ21に進む。一方、異常条件を充足しないと判断ユニット125が判断した場合、本処理を終了する。
【0051】
ステップ21では、異常発生信号出力ユニット27が異常発生信号を出力する。
3.集電電流監視装置1が奏する効果
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1B)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0052】
(2A)集電電流監視装置1は、著大アーク状況のとき、異常発生信号を出力することができる。また、集電電流監視装置1は、通常状況のとき、異常発生信号を出力してしまうことを抑制できる。
【0053】
このことを、以下の実験データに基づき説明する。架線に着氷霜がある著大アーク状況において、
図4Aに示すように、第1の電流I1を取得し、
図4Bに示すように、第2の電流I2を取得した。それらを用いて、第1実施形態と同様に、アンバランス電流Iu、及び時間平均値aveΔIuを算出した。さらに、アンバランス電流Iuを用いて、時間平均値aveIuを算出した。
【0054】
図9に示すように、算出した時間平均値aveIuと時間平均値aveΔIuとの組み合わせを、第1の軸51、及び第2の軸53により規定される2次元空間にプロットした。著大アーク状況において、プロットした点の一部は、正常領域57の外に位置した。よって、著大アーク状況の場合、前記ステップ20において、判断ユニット125は肯定判断し、前記ステップ21において、異常発生信号出力ユニット27が異常発生信号を出力した。
【0055】
また、架線に着氷霜がない通常状況において、
図5Aに示すように、第1の電流I1を取得し、
図5Bに示すように、第2の電流I2を取得した。それらを用いて、第1実施形態と同様に、アンバランス電流Iu、及び時間平均値aveΔIuを算出した。さらに、アンバランス電流Iuを用いて、時間平均値aveIuを算出した。
【0056】
図10に示すように、算出した時間平均値aveIuと時間平均値aveΔIuとの組み合わせを、第1の軸51、及び第2の軸53により規定される2次元空間にプロットした。通常状況において、プロットした点は全て正常領域57の中に位置した。よって、通常状況の場合、前記ステップ20において、判断ユニット125は常に否定判断し、異常発生信号を出力することなく、処理を終了した。
【0057】
なお、
図9、
図10における第1の軸51の単位は、著大アーク状況時の最大電流値を1として規格化した電流値である。また、
図9、
図10における第2の軸53の単位は、著大アーク状況時の最大電流値を1として規格化した電流値である。
【0058】
(2B)境界線55は、切片X0及び切片Y0を通る直線である。そのため、異常条件の設定が容易である。また、異常条件を充足するか否かの判断が容易である。
<第3実施形態>
1.第2実施形態との相違点
第3実施形態は、基本的な構成は第2実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0059】
第3実施形態では、前記ステップ13において、異常条件設定ユニット111が、前記ステップ11で取得した位置PO及び速度Vに応じて、異常条件を設定する。異常条件は、時間平均値ave|Iu|を表す第1の軸、及び時間平均値aveΔIuを表す第2の軸により規定される2次元空間において、時間平均値ave|Iu|と時間平均値aveΔIuとの組み合わせが、以下で定義される正常領域の外にあるという条件である。時間平均値ave|Iu|については後述する。
【0060】
正常領域:第1の軸における正の切片及び第2の軸における正の切片を通る境界線と、第1の軸と、前記第2の軸と、で囲まれる領域。
第3実施形態では、前記ステップ19において、時間平均値ave|Iu|を算出する。時間平均値ave|Iu|は、以下の式4で表される量である。
【0061】
【数4】
式4における右辺の分子は、積算区間において算出された全てのアンバランス電流Iuの絶対値を積算した積算値である。積算区間とは、前記ステップ19を実行する時点から時間Qだけ遡った時点を始点とし、前記ステップ19を実行する時点を終点とする区間である。積算区間の長さは時間Qである。時間Qは正の値であって、例えば、2秒間である。時間QはΔtより長い時間である。そのため、積算区間において、前記ステップ16の処理は複数回実行され、複数のアンバランス電流Iuが算出される。時間平均値ave|Iu|は、アンバランス電流Iuの絶対値の、時間Qにおける時間平均値である。
【0062】
第3実施形態では、前記ステップ20において、判断ユニット125が、前記ステップ18で算出した時間平均値aveΔIuと、前記ステップ19で算出した時間平均値ave|Iu|との組み合わせが、前記ステップ13で設定した異常条件を充足するか否かを判断する。異常条件を充足すると判断ユニット125が判断した場合、ステップ21に進む。一方、異常条件を充足しないと判断ユニット125が判断した場合、本処理を終了する。
【0063】
2.集電電流監視装置1が奏する効果
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第2実施形態の効果を奏する。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0064】
(1)第1実施形態において、閾値THは固定値であってもよい。また、第2、第3実施形態において、異常条件は固定された条件であってもよい。
(2)時間P、時間Qの長さは適宜設定できる。例えば、時間P、時間Qの長さを、0.1~100秒間とすることができ、好ましくは1~10秒間とすることができる。時間P、時間Qの長さがこれらの範囲内である場合、通常状況のときに異常発生信号を出力してしまうことを一層抑制できる。時間Pと時間Qとは同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0065】
(3)境界線55の形状は、直線以外の形状であってもよい。例えば、
図11に示すように、境界線55の形状は曲線であってもよい。
(4)二乗平均平方根RMS2から二乗平均平方根RMS1を差し引いた値をアンバランス電流Iuとしてもよい。
【0066】
(5)前記ステップ9での判断方法は他の判断方法であってもよい。例えば、複数の時間平均値aveΔIuのうち、閾値THより大きいものの数又は比率が所定の基準値以上の場合に肯定判断し、それ以外の場合に否定判断してもよい。
【0067】
(6)第2実施形態における前記ステップ20での判断方法は他の判断方法であってもよい。例えば、複数の、時間平均値aveΔIuと時間平均値aveIuとの組み合わせのうち、異常条件を充足するものの数又は比率が所定の基準値以上の場合に肯定判断し、それ以外の場合に否定判断してもよい。
【0068】
また、第3実施形態における前記ステップ20での判断方法は他の判断方法であってもよい。例えば、複数の、時間平均値aveΔIuと時間平均値ave|Iu|との組み合わせのうち、異常条件を充足するものの数又は比率が所定の基準値以上の場合に肯定判断し、それ以外の場合に否定判断してもよい。
【0069】
(7)Δtの長さは適宜設定できる。例えば、Δtの長さを、0.01~100msecとすることができ、好ましくは0.1~10msecとすることができる。Δtの長さがこれらの範囲内である場合、著大アーク状況のときに異常発生信号を一層確実に出力することができる。
【0070】
(8)正常領域57は、他の形態であってもよい。例えば、
図12に示すように、正常領域57は、第1の領域59、第2の領域61、及び第3の領域63を併せた領域であってもよい。第1の領域59は、境界線55と、第1の軸51と、第2の軸53と、で囲まれる領域である。第2の領域61は、第1の軸51と、それに平行な境界線65とに挟まれた領域であって、第1の領域59を除く領域である。第3の領域63は、第2の軸53と、それに平行な境界線67とに挟まれた領域であって、第1の領域59を除く領域である。
【0071】
(9)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なく
とも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0072】
(10)上述した集電電流監視装置の他、当該集電電流監視装置を構成要素とするシステム、当該集電電流監視装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、集電電流監視装置方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1…集電電流監視装置、3…CPU、5…メモリ、7…鉄道車両情報取得ユニット、9…ウインドウ幅W設定ユニット、11、111…異常条件設定ユニット、13…電流値取得ユニット、15…第1のRMS算出ユニット、17…第2のRMS算出ユニット、19…アンバランス電流算出ユニット、21…変化量算出ユニット、23…変化量平均値算出ユニット、25、125…判断ユニット、27…異常発生信号出力ユニット、29…速度センサ、31…地上トランスポンダ、33…ATC、35…第1の集電装置、37…第2の集電装置、39…第1の電流センサ、41…第2の電流センサ、43…制御伝送装置、45…モニタ装置、47…主変換装置、49…アンバランス電流平均値算出ユニット、51…第1の軸、53…第2の軸、55…境界線、57…正常領域