(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
G01N27/409 100
(21)【出願番号】P 2018124516
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】大場 健弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲治
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-093141(JP,A)
【文献】特開2017-203632(JP,A)
【文献】実開平02-146364(JP,U)
【文献】特開2017-198656(JP,A)
【文献】特開平08-201338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0059374(US,A1)
【文献】特開平11-072464(JP,A)
【文献】特開2005-010143(JP,A)
【文献】特開2012-233788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406 - 27/413
G01N 27/417 - 27/419
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、
前記センサ素子が収納されたケーシングと、
前記ケーシングの内部と連通する内部空間を有する第1外筒と、
前記第1外筒の径方向外側に配置された第2外筒と、
前記第1外筒と前記第2外筒との間に配置された撥水性のフィルタと、
を備えるセンサであって、
前記第2外筒は、前記第1外筒の軸方向に離間した2つの加締め部において前記フィルタと共に前記第1外筒に加締められると共に、前記2つの加締め部の間かつ前記フィルタと前記第2外筒の径方向に重なる領域に開口した少なくとも1つの第2気孔を有し、
前記第1外筒は、
前記第2外筒の径方向から視て前記第2気孔の少なくとも一部と重なる位置に配置された壁面と、
前記2つの加締め部の間かつ前記フィルタと前記第1外筒の径方向に重なる領域に開口した少なくとも1つの第1気孔と、
を有し、
前記フィルタは、前記2つの加締め部の間において前記第2気孔に向かって凸となるように湾曲した少なくとも1つの湾曲部を有し、
前記少なくとも1つの第2気孔は、前記少なくとも1つの湾曲部の頂部と前記第2外筒の径方向に重なる位置に配置され、
前記第1気孔の中心軸は、前記少なくとも1つの湾曲部の頂部、及び前記少なくとも1つの第2気孔のうち前記第1気孔に最も近い第2気孔の中心軸に対し前記第1外筒の径方向から視てずれた位置に配置され
、
前記フィルタは、前記フィルタの外部と内部とを連通する複数の微小な通気孔を有する多孔質体であり、
前記複数の通気孔は、それぞれ互いに連通していない、センサ。
【請求項2】
前記第1気孔の中心軸は、前記湾曲部の頂部及び前記第1気孔に最も近い前記第2気孔の中心軸に対し前記第1外筒の軸方向にずれた位置に配置される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1気孔の中心軸と、前記第1気孔に最も近い前記第2気孔の中心軸とは、前記第1外筒の軸方向及び周方向にずれた位置に設けられる、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記第1外筒の軸方向の端部に接続され、
前記第1外筒の軸方向において、前記第1気孔に最も近い前記第2気孔の中心軸は、前記第1気孔の中心軸よりも前記ケーシング寄りに配置される、請求項2又は請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記ケーシングは、前記第1外筒の軸方向の端部に接続され、
前記第1外筒の軸方向において、前記第1気孔の中心軸は、前記第1気孔に最も近い前記第2気孔の中心軸よりも前記ケーシング寄りに配置される、請求項2又は請求項3に記載のセンサ。
【請求項6】
前記第1気孔と前記第1気孔に最も近い前記第2気孔とは、前記第1外筒の径方向において全く重ならない、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記第1気孔の径は、前記第1気孔に最も近い前記第2気孔の径よりも小さい、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記ケーシングは、前記第1外筒の軸方向の端部に接続され、
前記第1外筒の軸方向において、前記湾曲部の前記ケーシング側の端部は、前記第1気孔の前記ケーシング側の端部よりも前記ケーシングに近い位置に存在する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記センサ素子と電気的に接続される複数の端子金具と、
前記第1外筒の内部に配置されると共に、前記複数の端子金具を互いに絶縁されるように収納するセパレータと、
をさらに備え、
前記セパレータは、前記第1外筒の径方向から視て前記複数の端子金具が前記セパレータの外部に露出する空隙を有する、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項10】
排気ガス中の窒素酸化物を測定するNOxセンサである、請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等に搭載されるガスセンサでは、被測定ガスを取り入れる機構とは別に、大気をセンサのケーシング内部に取り入れる通気機構が設けられる。この通気機構は、内側に設けた第1外筒の第1気孔と、外側に設けた第2外筒の第2気孔とから構成される。また、水分の進入を防ぐため、第1気孔と第2気孔との間には樹脂製のフィルタが配置される。
【0003】
このフィルタにおいて、第2気孔に向かってフィルタを凸状に変形させたセンサが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
凸状に変形したフィルタでは、フィルタの細孔がつぶれるため、水のフィルタ内側への通過が抑制される。しかし、例えば高圧洗浄等によって第2気孔から高圧が加わった際には、水がフィルタを通過し、第1気孔の内側まで水が進入するおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、外筒の内側への水の侵入を抑制できるセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、センサ素子と、センサ素子が収納されたケーシングと、ケーシングの内部と連通する内部空間を有する第1外筒と、第1外筒の径方向外側に配置された第2外筒と、第1外筒と第2外筒との間に配置された撥水性のフィルタと、を備えるセンサである。第2外筒は、第1外筒の軸方向に離間した2つの加締め部においてフィルタと共に第1外筒に加締められると共に、2つの加締め部の間かつフィルタと第2外筒の径方向に重なる領域に開口した少なくとも1つの第2気孔を有する。第1外筒は、第2外筒の径方向から視て第2気孔の少なくとも一部と重なる位置に配置された壁面と、2つの加締め部の間かつフィルタと第1外筒の径方向に重なる領域に開口した少なくとも1つの第1気孔と、を有する。
【0008】
また、フィルタは、2つの加締め部の間において第2気孔に向かって凸となるように湾曲した少なくとも1つの湾曲部を有する。少なくとも1つの第2気孔は、少なくとも1つの湾曲部の頂部と第2外筒の径方向に重なる位置に配置される。第1気孔の中心軸は、少なくとも1つの湾曲部の頂部、及び少なくとも1つの第2気孔のうち第1気孔に最も近い第2気孔の中心軸に対し第1外筒の径方向から視てずれた位置に配置される。
【0009】
このような構成によれば、フィルタが第2気孔に向かって凸となる湾曲部を有することに加えて、第1気孔の中心軸が、湾曲部の頂部と、第1気孔に最も近い第2気孔の中心軸とに対してずれた位置に設けられ、かつ、第2気孔が第1外筒の壁面と重なることで、第1外筒の内側への水の侵入を効果的に抑制できる。
【0010】
すなわち、従来のセンサでは、第1気孔と第2気孔とが第1外筒の径方向に重なって(例えば、第1気孔の中心軸と第2気孔の中心軸とが一致するように)設けられているため、第2気孔及びフィルタを通過してフィルタの内側に溜った水が、第1気孔から第1外筒の内側に侵入しやすい。一方、本開示の構成によれば、フィルタの内側に溜まった水は、第1外筒の壁面に接触するため、第1外筒の内側への水の侵入が抑制される。
【0011】
また、フィルタの湾曲部の外面に衝突した水は、湾曲部の頂部からその周囲に向かって流れやすい。そのため、湾曲部の頂部と第1気孔の中心軸とがずれていることで、第2気孔を通過した水を第1気孔から離間する位置に誘導することができる。その結果、第1外筒の内側への水の侵入が抑制される。
【0012】
本開示の一態様では、第1気孔の中心軸は、湾曲部の頂部及び第1気孔に最も近い第2気孔の中心軸に対し第1外筒の軸方向にずれた位置に配置されてもよい。このような構成によれば、第1気孔と第2気孔との軸方向の位置決めが容易になるため、第1外筒と第2外筒との組み付けが容易に行なえる。
【0013】
本開示の一態様では、第1気孔の中心軸と、第1気孔に最も近い第2気孔の中心軸とは、第1外筒の軸方向及び周方向にずれた位置に設けられてもよい。このような構成によれば、第1外筒の内側への水の侵入をより確実に抑制できる。
【0014】
本開示の一態様では、ケーシングは、第1外筒の軸方向の端部に接続されてもよい。第1外筒の軸方向において、第1気孔に最も近い第2気孔の中心軸は、第1気孔の中心軸よりもケーシング寄りに配置されてもよい。このような構成によれば、センサ素子を収納したケーシングを第1外筒及び第2外筒よりも下方に配置した際に、第1気孔が第2気孔よりも上方に位置するため、第1外筒における水の侵入抑制効果が高まる。
【0015】
本開示の一態様では、ケーシングは、第1外筒の軸方向の端部に接続されてもよい。第1外筒の軸方向において、第1気孔の中心軸は、第1気孔に最も近い第2気孔の中心軸よりもケーシング寄りに配置されてもよい。このような構成によれば、第1気孔がケーシングに近づくため、ケーシング内の換気効率を高めることができる。
【0016】
本開示の一態様では、第1気孔と第1気孔に最も近い第2気孔とは、第1外筒の径方向において全く重ならなくてもよい。このような構成によれば、第1外筒の内側への水の侵入をより確実に抑制できる。
【0017】
本開示の一態様では、第1気孔の径は、第1気孔に最も近い第2気孔の径よりも小さくてもよい。このような構成によれば、第2気孔の目詰まりを抑制しつつ、第1気孔と第2気孔との位置調整を容易にすることができる。
【0018】
本開示の一態様では、ケーシングは、第1外筒の軸方向の端部に接続されてもよい。第1外筒の軸方向において、湾曲部のケーシング側の端部は、第1気孔のケーシング側の端部よりもケーシングに近い位置に存在してもよい。このような構成によれば、湾曲部内に保持された水が振動等によって湾曲部の端部に凝集し、さらに湾曲部の端部からフィルタの内側に通過しても、この水が第1気孔へ侵入することを抑制できる。
【0019】
本開示の一態様では、フィルタは、フィルタの外部と内部とを連通する複数の微小な通気孔を有する多孔質体であってもよい。複数の通気孔は、それぞれ互いに連通していなくてもよい。このような構成によれば、高圧洗浄等によってフィルタ内に侵入した水がフィルタの径方向(つまり厚み方向)に浸透するため、上述した本開示の構成による第1外筒への水の侵入抑制効果が顕著に発揮される。
【0020】
本開示の一態様は、センサ素子と電気的に接続される複数の端子金具と、第1外筒の内部に配置されると共に、複数の端子金具を互いに絶縁されるように収納するセパレータと、をさらに備えてもよい。セパレータは、第1外筒の径方向から視て複数の端子金具がセパレータの外部に露出する空隙を有してもよい。このような構成によれば、上述した本開示の構成によってセパレータの空隙への浸水を抑制しつつ、セパレータの内部に端子金具を確実に保持させて電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0021】
本開示の一態様は、排気ガス中の窒素酸化物を測定するNOxセンサであってもよい。センサ素子の出力が小さく絶縁不良による影響が大きくなるNOxセンサでは、上述した本開示の構成による第1外筒への水の侵入抑制効果が特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態のセンサを示す模式的な中央縦断面図である。
【
図2】
図1のセンサの通気機構を示す模式的な部分拡大断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線での模式的な断面図である。
【
図4】
図4Aは、
図1のセンサの通気機構において水がフィルタを通過した状態を示す模式的な断面図であり、
図4Bは、
図1のセンサの通気機構において水がフィルタの内側に凝集した状態を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図1のセンサとは異なる実施形態のセンサにおける通気機構を示す模式的な部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示すセンサ1は、例えば自動車等の内燃機関の排気管に装着され、排気ガス中の窒素酸化物を測定するNOxセンサである。
【0024】
センサ1は、センサ素子2と、ケーシング3と、第1外筒4と、第2外筒5と、フィルタ6と、複数の通気機構7と、端子部8と、2つのリード線10A,10Bとを備える。
センサ1は、軸方向に延伸する棒状の外形を有する。なお、以下では、センサ素子2の検知部が配置される側を「先端側」、リード線10A,10Bが接続される側を「後端側」と呼称する。
【0025】
<センサ素子>
センサ素子2は、被測定ガス中の特定ガス(本実施形態ではNOx)の濃度を検出する素子である。センサ素子2は、例えば、固体電解質体と2つの電極とを有するセンサ素子である。なお、NOxセンサでは、センサ素子2の出力が小さく、ヒータ電圧が高めに設定される。そのため、絶縁不良による影響が大きくなる。
【0026】
センサ素子2は、センサ1の軸方向に沿って延伸している。センサ素子2の先端部は、センサ1の先端部に設けられた検出空間21に配置され、検知部を構成している。センサ素子2の検知部は、アルミナ等の多孔質保護層2Aで覆われている。センサ素子2の後端部は、端子部8によって2つのリード線10A,10Bに電気的に接続されている。
【0027】
<ケーシング>
ケーシング3は、センサ素子2の少なくとも一部を収納する金属製の筒体である。ケーシング3は、第1外筒4の先端部に接続されている。ケーシング3は、胴部3Aと、突出部3Bと、先端カバー3Cとを有する。
【0028】
胴部3Aは、センサ素子2のセンサ1の軸方向における中央部分を保持し、検出空間21のうち、センサ素子2が配置される部分を構成している。突出部3Bは、検出空間21のうち、センサ素子2よりも先端側の部分を形成する有底筒状の部材である。
【0029】
先端カバー3Cは、突出部3Bを外側から囲う有底筒状の部材である。突出部3B及び先端カバー3Cは、それぞれ、側面又は底面に開口を有する。被測定ガスは、これらの開口を通過して検知空間に取り込まれ、センサ素子2と接触する。
【0030】
<第1外筒>
第1外筒4は、ケーシング3の内部(つまりセンサ素子2が収納された空間)と連通する内部空間22を有する金属製の筒状の部材である。第1外筒4の材質は、例えばステンレスである。
【0031】
第1外筒4は、センサ素子2の後端部と、端子部8とを囲う筒状の部材である。第1外筒4の先端部は、ケーシング3に固定されている。第1外筒4の後端部は、封止材(つまりグロメット)9によって封止されている。
【0032】
第1外筒4の一部は、第2外筒5の内側に配置されている。また、第1外筒4は、壁面41と、複数の第1気孔42とを有する(
図2参照)。これらの位置や形状については、後述する。
【0033】
<第2外筒>
第2外筒5は、第1外筒4の径方向外側に配置された金属製の筒状の部材である。第2外筒5の材質は、例えばステンレスである。第2外筒5は、第1外筒4のうち、少なくとも複数の第1気孔42が形成された領域を被覆している。
【0034】
第2外筒5は、第1外筒4の軸方向に離間した2つの加締め部51A,51Bにおいて、後述するフィルタ6と共に第1外筒4に第1外筒4の径方向に加締められている。また、第2外筒5は、複数の第2気孔52を有する(
図2参照)。第2気孔52の位置や形状については、後述する。
【0035】
<フィルタ>
フィルタ6は、第1外筒4と第2外筒5との間に配置された筒状の撥水性フィルタである。
【0036】
フィルタ6は、空気を通過させる一方で、水分を実質的に通過させない。フィルタ6は、樹脂製の多孔質体で構成されている。フィルタ6の具体的な材質としては、例えば、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0037】
フィルタ6は、フィルタ6の外部と内部とを連通する複数の微小な通気孔を有する多孔質体である。フィルタ6の複数の通気孔は、それぞれ互いに連通していない。そのため、高圧洗浄等によってフィルタ6内に侵入した水は、フィルタ6の径方向(つまり厚み方向)に浸透する。なお、フィルタ6は、想定される圧力下で水分の透過を防止できればよく、過大な圧力が加わった場合まで水分の透過を完全に防止する必要はない。
【0038】
フィルタ6は、第2外筒5の2つの加締め部51A,51Bによって、第1外筒4に固定されている。フィルタ6は、複数の湾曲部61を有する(
図2参照)。湾曲部61の位置や形状については、後述する。
【0039】
<通気機構>
センサ1は、例えば、基準ガスの導入、結露の防止等を目的として、内部に大気を取り込むための複数の通気機構7を備える。
【0040】
図2に示すように、センサ1の各通気機構7は、それぞれ、第1外筒4の壁面41及び1つの第1気孔42と、第2外筒5の1つの第2気孔52と、フィルタ6の1つの湾曲部61とによって構成されている。
【0041】
第2気孔52は、2つの加締め部51A,51Bの間かつフィルタ6と第2外筒5の径方向に重なる領域に開口している。第2気孔52は、センサ1の外部から、第2外筒5の内側に大気を導入する。
【0042】
壁面41は、第1気孔42が設けられていない部分における第1外筒4の外周面である。壁面41は、第2外筒5の径方向から視て第2気孔52の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。本実施形態では、壁面41は、第2気孔52の全体と重なっている。
【0043】
第1気孔42は、2つの加締め部51A,51Bの間かつフィルタ6と第1外筒4の径方向に重なる領域に開口している。第1気孔42は、第1外筒4の外側の大気を第1外筒4の内側に導入する。第1気孔42の径D1は、第1気孔42に最も近い第2気孔52の径D2よりも小さい。
【0044】
湾曲部61は、フィルタ6のうち、2つの加締め部51A,51Bの間において、第2気孔52に向かって凸となるように湾曲している部位である。湾曲部61は、
図2のように第2外筒5から離間していてもよいし、第2外筒5の内周面に当接していてもよい。
【0045】
ここで、「湾曲する」とは、第1外筒4の軸方向における同一位置の外周面及び内周面が共に、他の部分よりも第1外筒4の径方向の同じ側に変位していることを意味する。つまり、フィルタ6の厚みが他の部分より増大することで外周面のみ又は内周面のみが突出している部分は「湾曲部」には含まれない。
【0046】
第2気孔52は、湾曲部61の頂部61Aと第2外筒5の径方向に重なる位置に配置されている。具体的には、第2気孔52の中心軸P2は、湾曲部61の頂部61Aを通っている。なお、「湾曲部の頂部」とは、湾曲部61のうち、第2外筒5の径方向において最も外側に位置する部分である。
【0047】
第1気孔42の中心軸P1は、湾曲部61の頂部61A及び第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2に対し、第1外筒4の径方向から視てずれた位置に配置されている。具体的には、第1気孔42の中心軸P1は、湾曲部61の頂部61A及び第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2に対し、第1外筒4の軸方向にずれた位置に配置されている。
【0048】
第1外筒4の軸方向において、第1気孔42の中心軸P1は、第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2よりもケーシング3寄り(つまりセンサ1の先端側)に配置されている。また、第1気孔42と第1気孔42に最も近い第2気孔52とは、第1外筒4の径方向において全く重なっていない。
【0049】
また、第1外筒4の軸方向において、湾曲部61の先端部(つまりケーシング3側の端部)61Bは、第1気孔42の先端部42Aよりもケーシング3に近い位置に存在している。したがって、第1気孔42は、第1外筒4の径方向において湾曲部61と全体が重なっている。
【0050】
図3に示すように、複数の通気機構7のうち、一部の通気機構7において、第1気孔42の中心軸P1は、第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2に対し、第1外筒4の軸方向から視てずれた位置に配置されている。つまり、一部の通気機構7では、第1気孔42の中心軸P1と、第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2とは、第1外筒4の第1外筒4の軸方向及び周方向にずれた位置に設けられている。なお、
図3では、第1外筒4の内側の構造については図示を省略している。
【0051】
<端子部>
端子部8は、
図1に示すように、複数の端子金具81A,81Bと、セパレータ82とを有する。
【0052】
複数の端子金具81A,81Bは、センサ素子2と2つのリード線10A,10Bとに電気的に接続されている。複数の端子金具81A,81Bは、それぞれ、複数の金具を組み合わせて構成されている。
【0053】
セパレータ82は、第1外筒4の内部に配置されると共に、複数の端子金具81A,81Bを互いに絶縁されるように収納している。セパレータ82は、アルミナ等のセラミックに代表される絶縁性材料で形成されている。
【0054】
セパレータ82は、後端部82Aと、後端部82Aよりも先端側に配置された先端部82Bと、後端部82A及び先端部82Bの間に設けられた空隙82Cとを有する。後端部82A及び先端部82Bは、それぞれ、上下方向に貫通する複数の貫通孔を有する。
【0055】
複数の端子金具81A,81Bは、後端部82A及び先端部82Bの複数の貫通孔内に保持されている。つまり、複数の端子金具81A,81Bは、後端部82Aと先端部82Bとに跨って配置されている。また、先端部82Bの複数の貫通孔のうち少なくとも1つの貫通孔には、センサ素子2が挿通されている。
【0056】
後端部82Aと先端部82Bとは、センサ1の軸方向に沿って離間して配置されている。そのため、後端部82Aと先端部82Bとの間に設けられた空隙82Cにおいて、第1外筒4の径方向から視て複数の端子金具81A,81Bがセパレータ82の外部に露出している。換言すれば、複数の端子金具81A,81Bは、空隙82Cによって第1外筒4の内部空間22に露出している。したがって、絶縁不良を回避する観点から、セパレータ82の空隙82Cに対する防水が求められる。
【0057】
なお、セパレータ82が後端部82Aと先端部82Bとを有するのは、セパレータ82の内部に端子金具81A,81Bを確実に保持させ、電気的接続の信頼性を高めるためである。
【0058】
<リード線>
2つのリード線10A,10Bは、それぞれ、端子部8を介して、センサ素子2の端子に電気的に接続されている。2つのリード線10A,10Bは、第1外筒4の後端側の端部を封止する封止材9を貫通して、第1外筒4の内部に挿通されている。
【0059】
2つのリード線10A,10Bは、外部回路(例えば電子制御装置(ECU)等)に接続される。センサ素子2は、2つのリード線10A,10Bを介して、外部からの電力の供給を受けると共に、外部に信号を出力する。
【0060】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)フィルタ6が第2気孔52に向かって凸となる湾曲部61を有することに加えて、第1気孔42の中心軸P1が、湾曲部61の頂部61Aと、第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2とに対してずれた位置に設けられ、かつ、第2気孔52が第1外筒4の壁面41と重なることによって、第1外筒4の内側への水の侵入を効果的に抑制できる。
【0061】
すなわち、
図4Aに示すように水圧Pによりフィルタ6の内側に水Wが侵入し、さらに、
図4Bに示すようにフィルタ6の内側で水Wが凝集しても、凝集した水Wが第1外筒4の壁面41に接触するため、第1外筒4の内側への水Wの侵入が抑制される。
【0062】
また、フィルタ6の湾曲部61の外面に衝突した水は、湾曲部61の頂部61Aからその周囲に向かって流れやすい。そのため、湾曲部61の頂部61Aと第1気孔42の中心軸P1とがずれていることで、第2気孔52を通過した水を第1気孔42から離間する位置に誘導することができる。その結果、第1外筒4の内側への水の侵入が抑制される。
【0063】
(1b)第1気孔42の中心軸P1が湾曲部61の頂部61A及び第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P1に対し第1外筒4の軸方向にずれた位置に配置されることで、第1気孔42と第1気孔42に最も近い第2気孔52との軸方向の位置決めが容易になる。その結果、第1外筒4と第2外筒5との組み付けが容易に行なえる。
【0064】
(1c)第1気孔42の中心軸P1と第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2とが第1外筒4の軸方向及び周方向にずれた位置に設けられることで、第1外筒4の内側への水の侵入をより確実に抑制できる。
【0065】
(1d)第1気孔42の中心軸P1が第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2よりもケーシング3寄りに配置されることで、第1気孔42がケーシング3に近づくため、ケーシング3内の換気効率を高めることができる。
【0066】
(1e)第1気孔42と第1気孔42に最も近い第2気孔52とが第1外筒4の径方向において全く重ならないことによって、第1外筒4の内側への水の侵入をより確実に抑制できる。
(1f)第1気孔42の径D1が第1気孔42に最も近い第2気孔52の径D2よりも小さいことで、第2気孔52の目詰まりを抑制しつつ、第1気孔42と第2気孔52との位置調整を容易にすることができる。
【0067】
(1g)フィルタ6の湾曲部61の先端部61Bが第1気孔42の先端部42Aよりもケーシング3に近い位置に存在するので、湾曲部61内に保持された水が振動等によって湾曲部61の端部に凝集し、さらに湾曲部61の端部からフィルタ6の内側に通過しても、この水が第1気孔42へ侵入することを抑制できる。
【0068】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
本開示の第2実施形態のセンサは、
図1のセンサ1において、通気機構7を
図5に示す通気機構7Aに置き換えたものである。
【0069】
第2実施形態のセンサの構成要素は、第1気孔42の第1外筒4の軸方向の位置を除いて、
図1のセンサ1と同じである。本実施形態では、第1気孔42は、湾曲部61の頂部61Aよりも後端側(つまり、ケーシング3から離間した側)に配置されている。したがって、第1外筒4の軸方向において、第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2は、第1気孔42の中心軸P1よりも先端側(つまりケーシング3寄り)に配置されている。
【0070】
また、第1気孔42は、第1気孔42に最も近い第2気孔52と第1外筒4の径方向において部分的に重なっている。つまり、第1気孔42に最も近い第2気孔52は、第2外筒5の径方向から視て、壁面41と第1気孔42とに重なっている。
【0071】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)第1気孔42に最も近い第2気孔52の中心軸P2が第1気孔42の中心軸P1よりもケーシング3寄りに配置されることで、センサ1の先端部を下方に配置した際に、第1気孔42が第1気孔42に最も近い第2気孔52よりも上方に位置するため、第1外筒4における水の侵入抑制効果が高まる。
【0072】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0073】
(3a)上記実施形態のセンサにおける通気機構7,7Aにおいて、第1気孔42の中心軸P1は、湾曲部61の頂部61A及び第2気孔52の中心軸P2に対し、第1外筒4の周方向にずれていれば、必ずしも第1外筒4の軸方向にずれている必要はない。
【0074】
(3b)上記実施形態のセンサにおける通気機構7,7Aにおいて、第1気孔42の径D1は、第2気孔52の径D2と同じであってもよいし、第2気孔52の径D2よりも大きくてもよい。
【0075】
(3c)上記実施形態のセンサにおける通気機構7,7Aにおいて、湾曲部61の先端部61Bは、必ずしも第1気孔42の先端部42Aよりもケーシング3に近い位置に存在しなくてもよい。
【0076】
(3d)上記実施形態のセンサにおける通気機構7,7Aにおいて、第1気孔42は、必ずしも、その全体が2つの加締め部51A,51Bの間に配置される必要はない。つまり、第1気孔42の中心軸P1は、2つの加締め部51A,51Bの一方と重なっていてもよい。
【0077】
(3e)上記実施形態のセンサにおいて、セパレータ82は、必ずしも空隙82Cを有さなくてもよい。つまり、セパレータ82は、センサ1の軸方向に離間した複数の部材に分割されていなくてもよい。
【0078】
(3f)上記実施形態のセンサは、例えば、排気ガスの酸素濃度又は空燃比を検出する用途に用いるガスセンサにも適用できる。また、本開示は、温度センサや圧力センサ等の流体の状態を測定する各種センサに適用することができる。また、本開示のセンサは、棒形状以外であってもよい。つまり、センサの通気機構以外の部分は必ずしも筒状又は柱状である必要はない。
【0079】
(3g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0080】
1…センサ、2…センサ素子、2A…多孔質保護層、3…ケーシング、3A…胴部、
3B…突出部、3C…先端カバー、4…第1外筒、5…第2外筒、6…フィルタ、
7,7A…通気機構、8…端子部、9…封止材、10A,10B…リード線、
21…検出空間、22…内部空間、41…壁面、42…第1気孔、42A…先端部、
51A,51B…加締め部、52…第2気孔、61…湾曲部、61A…頂部、
61B…先端部、81A,81B…端子金具、82…セパレータ、82A…後端部、
82B…先端部、82C…空隙。