(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】信号伝達装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 C
(21)【出願番号】P 2018126606
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有村 昌彦
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-7502(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114307(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H03K 5/00
H03K 17/00
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のパルスエッジを検出して第1エッジ検出信号及び第2エッジ検出信号を生成するエッジ検出部と、
前記第1エッジ検出信号及び前記第2エッジ検出信号に応じてクロック信号を生成するクロック生成部と、
前記クロック信号を分周して分周クロック信号を生成する分周部と、
テスタからテストモード切替信号の入力を受け付けるためのテスト入力パッドと、
前記テスタに前記分周クロック信号を出力するためのテスト出力パッドと、
を有し、
前記エッジ検出部は、前記テストモード切替信号が入力されているときに、前記入力信号ではなく前記クロック信号またはその論理レベルを反転させた反転クロック信号のパルスエッジを検出して前記第1エッジ検出信号及び前記第2エッジ検出信号を生成する機能を備えており、前記エッジ検出部の信号遅延時間は、前記テスタで測定された前記分周クロック信号の周期に応じて調整可能であることを特徴とするパルス生成回路。
【請求項2】
前記第1エッジ検出信号及び前記第2検出信号に応じて第1送信パルス信号及び第2送信パルス信号を生成する送信部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のパルス生成回路。
【請求項3】
請求項2に記載のパルス生成回路と、
入出力間を絶縁しつつ前記第1送信パルス信号及び前記第2送信パルス信号をそれぞれ第1受信パルス信号及び第2受信パルス信号として後段に伝達する絶縁回路と、
前記第1受信パルス信号及び前記第2受信パルス信号に応じた受信パルス信号を生成するパルス受信回路と、
前記受信パルス信号に応じた出力信号を生成する出力駆動回路と、
を有することを特徴とする信号伝達装置。
【請求項4】
前記パルス生成回路は、第1半導体チップに集積化されており、
前記絶縁回路は、第2半導体チップに集積化されており、
前記パルス受信回路及び前記出力駆動回路は、第3半導体チップに集積化されており、
前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップ、及び、前記第3半導体チップは、単一のパッケージに集積化されていることを特徴とする請求項3に記載の信号伝達装置。
【請求項5】
前記テスト入力パッド及び前記テスト出力パッドは、いずれのリードフレームにもボンディングされることなく前記パッケージに封止されていることを特徴とする請求項4に記載の信号伝達装置。
【請求項6】
スイッチ制御部とスイッチ出力部との間を絶縁しつつ前記スイッチ制御部から前記スイッチ出力部にスイッチ駆動信号を伝達するための手段として、請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の信号伝達装置を有することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項7】
前記スイッチ出力部は、直流電源の正負両極間でフルブリッジ型に接続された4つのトランジスタを含み、
前記信号伝達装置は、前記スイッチ制御部と各トランジスタのゲートとの間に1つずつ設けられていることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源。
【請求項8】
前記4つのトランジスタは、いずれもSi-MOSFET、SiC-MOSFET、または、IGBTであることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源。
【請求項9】
前記スイッチ出力部の駆動周波数は、100kHz以上であることを特徴とする請求項8に記載のスイッチング電源。
【請求項10】
前記スイッチ出力部に接続された一次巻線とこれに磁気結合された二次巻線とを含むトランスと、
前記二次巻線に現れる誘起電圧から出力電圧を生成する整流平滑部と、
をさらに有することを特徴とする請求項6~請求項9のいずれか一項に記載のスイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、信号伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入出力間を電気的に絶縁しつつパルス信号を伝達する信号伝達装置は、様々なアプリケーション(電源装置やモータ駆動装置など)に用いられている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1~特許文献4を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-007502号公報
【文献】特開2018-014549号公報
【文献】特開2014-003515号公報
【文献】特開2010-010762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の信号伝達装置には、信号遅延のばらつきについて更なる改善の余地があった。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、信号遅延のばらつきを抑制することのできる信号伝達装置、及び、これに用いられるパルス生成回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されているパルス生成回路は、入力信号のパルスエッジを検出して第1エッジ検出信号及び第2エッジ検出信号を生成するエッジ検出部と、前記第1エッジ検出信号及び前記第2エッジ検出信号に応じてクロック信号を生成するクロック生成部と、前記クロック信号を分周して分周クロック信号を生成する分周部と、テスタからテストモード切替信号の入力を受け付けるためのテスト入力パッドと、前記テスタに前記分周クロック信号を出力するためのテスト出力パッドを有し、前記エッジ検出部は、前記テストモード切替信号が入力されているときに、前記入力信号ではなく前記クロック信号またはその論理レベルを反転させた反転クロック信号のパルスエッジを検出して前記第1エッジ検出信号及び前記第2エッジ検出信号を生成する機能を備えており、前記エッジ検出部の信号遅延時間は、前記テスタで測定された前記分周クロック信号の周期に応じて調整可能である構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1の構成から成るパルス生成回路は、前記第1エッジ検出信号及び前記第2検出信号に応じて第1送信パルス信号及び第2送信パルス信号を生成する送信部をさらに有する構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、本明細書中に開示されている信号伝達装置は、上記第2の構成から成るパルス生成回路と、入出力間を絶縁しつつ前記第1送信パルス信号及び前記第2送信パルス信号をそれぞれ第1受信パルス信号及び第2受信パルス信号として後段に伝達する絶縁回路と、前記第1受信パルス信号及び前記第2受信パルス信号に応じた受信パルス信号を生成するパルス受信回路と、前記受信パルス信号に応じた出力信号を生成する出力駆動回路と、を有する構成(第3の構成)とされている。
【0010】
なお、上記した第3の構成から成る信号伝達装置において、前記パルス生成回路は、第1半導体チップに集積化されており、前記絶縁回路は、第2半導体チップに集積化されており、前記パルス受信回路及び前記出力駆動回路は、第3半導体チップに集積化されており、前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップ、及び、前記第3半導体チップは、単一のパッケージに集積化されている構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第4の構成から成る信号伝達装置において、前記テスト入力パッド及び前記テスト出力パッドは、いずれのリードフレームにもボンディングされることなく前記パッケージに封止されている構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、本明細書中に開示されているスイッチング電源は、スイッチ制御部とスイッチ出力部との間を絶縁しつつ前記スイッチ制御部から前記スイッチ出力部にスイッチ駆動信号を伝達するための手段として、上記第3~第5いずれかの構成から成る信号伝達装置を有する構成(第6の構成)とされている。
【0013】
なお、上記第6の構成から成るスイッチング電源において、前記スイッチ出力部は、直流電源の正負両極間でフルブリッジ型に接続された4つのトランジスタを含み、前記信号伝達装置は、前記スイッチ制御部と各トランジスタのゲートとの間に1つずつ設けられている構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第7の構成から成るスイッチング電源において、前記4つのトランジスタはいずれもSi-MOSFET、SiC-MOSFET、または、IGBTである構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第8の構成から成るスイッチング電源において、前記スイッチ出力部の駆動周波数は、100kHz以上である構成(第9の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第6~第9いずれかの構成から成るスイッチング電源は、前記スイッチ出力部に接続された一次巻線とこれに磁気結合された二次巻線とを含むトランスと、前記二次巻線に現れる誘起電圧から出力電圧を生成する整流平滑部と、をさらに有する構成(第10の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0017】
本明細書中に開示されている信号伝達装置であれば、信号遅延のばらつきを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】スイッチング動作の一例を示すタイミングチャート
【
図5】テストモードにおける自励発振動作の一例を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
<スイッチング電源>
図1は、スイッチング電源の全体構成を示す図である。本構成例のスイッチング電源1は、一次回路系1pと二次回路系1sとの間を電気的に絶縁しつつ、直流電源2からの直流入力電圧Viを降圧して所望の直流出力電圧Voを生成する降圧型の絶縁DC/DCコンバータであり、スイッチ出力部10と、トランス20と、整流平滑部30と、スイッチ駆動部40と、スイッチ制御部50と、出力帰還部60と、を有する。
【0020】
なお、スイッチング電源1をAC/DCコンバータとして用いる場合には、交流入力電圧Vacを整流及び平滑して直流入力電圧Viを生成するための前段回路(ダイオードブリッジや力率改善回路など)を別途設ければよい。
【0021】
スイッチ出力部10は、スイッチング電源1の一次回路系1pに設けられており、直流電源2の正負両極間でフルブリッジ型に接続された4つのトランジスタ11~14(本図ではいずれもNMOSFET)を含む。その接続関係について具体的に述べる。トランジスタ11及び13のドレインは、いずれも直流電源2の正極端(=直流入力電圧Viの入力端)に接続されている。トランジスタ11のソース及びバックゲートとトランジスタ12のドレインは、いずれもノードn1に接続されている。トランジスタ13のソース及びバックゲートとトランジスタ14のドレインは、いずれもノードn2に接続されている。トランジスタ12及び14のソース及びバックゲートは、いずれも直流電源2の負極端に接続されている。なお、トランジスタ11~14それぞれのドレイン・ソース間には、図示の極性でボディダイオードが付随している。
【0022】
トランジスタ11のゲートには、ゲート信号G11が入力されており、ゲート信号G11の論理レベルに応じてオン/オフされる。具体的に述べると、トランジスタ11は、ゲート信号G11がハイレベルであるときにオンし、ゲート信号G11がローレベルであるときにオフする。
【0023】
同様に、トランジスタ12~14それぞれのゲートには、ゲート信号G12~G14が入力されており、それぞれ、ゲート信号G12~G14の論理レベルに応じてオン/オフされる。より具体的に述べると、トランジスタ12~14は、それぞれ、ゲート信号G12~G14がハイレベルであるときにオンし、ゲート信号G12~G14がローレベルであるときにオフする。
【0024】
例えば、トランジスタ11及び14をオンしてトランジスタ12及び13をオフしたときには、直流電源2の正極端から、トランジスタ11、ノードn1、トランス20の一次巻線21、ノードn2、及び、トランジスタ14を介して、直流電源2の負極端に至る電流経路に一次電流が流れる。
【0025】
一方、トランジスタ11及び14をオフしてトランジスタ12及び13をオンしたときには、直流電源2の正極端から、トランジスタ13、ノードn2、トランス20の一次巻線21、ノードn1、及び、トランジスタ12を介して、直流電源2の負極端に至る電流経路に一次電流が流れる。
【0026】
なお、トランジスタ11~14としては、高速にスイッチング駆動することが可能なデバイス(例えばSi-MOSFET、SiC-MOSFET、または、IGBT)を用いることが望ましい。このようなデバイスを用いることにより、スイッチ出力部10の駆動周波数fswを100kHz以上(例えば100kHz~250kHz)に設定することが可能となる。なお、駆動周波数fswを高めるほど、スイッチ駆動部40の信号遅延やそのばらつきを抑制することが重要となる。
【0027】
トランス20は、スイッチング電源1の一次回路系1pに設けられた一次巻線21と、スイッチング電源1の二次回路系1sに設けられて一次巻線21と磁気結合された二次巻線22(=直列に接続された二次巻線22a及び22bとして理解される)と、を含む。
【0028】
一次巻線21の第1タップ(=巻始端)は、ノードn1に接続されている。一次巻線21の第2タップ(=巻終端)は、ノードn2に接続されている。
【0029】
二次巻線22の第1タップ(=二次巻線22aの巻始端)は、ノードn3に接続されている。二次巻線22の第2タップ(=二次巻線22bの巻終端)は、ノードn4に接続されている。
【0030】
整流平滑部30は、スイッチング電源1の二次回路系1sに設けられており、トランジスタ31及び32(本図ではいずれもNMOSFET)と、キャパシタ33を含む。その接続関係について具体的に述べる。トランジスタ31のソース及びバックゲートは、いずれもノードn3に接続されている。トランジスタ32のソース及びバックゲートは、いずれもノードn4に接続されている。トランジスタ31及び32それぞれのドレインとキャパシタ33の第1端は、いずれも直流出力電圧Voの出力端に接続されている。キャパシタ33の第2端は、二次巻線22の中点タップ(=二次巻線22aの巻終端と二次巻線22bの巻始端との接続ノード)に接続されている。なお、トランジスタ31、32それぞれのドレイン・ソース間には、図示の極性でボディダイオードが付随している。なお、トランジスタ31及び32についても、先出のトランジスタ11~14と同じく、高速にスイッチング駆動することが可能なデバイス(例えばSi-MOSFET、SiC-MOSFET、または、IGBT)を用いることが望ましい。
【0031】
上記構成から成る整流平滑部30は、二次巻線22に現れる誘起電圧を全波整流して平滑化することにより、直流出力電圧Voを生成する。なお、トランジスタ31及び32に代えて、整流ダイオード(例えば順方向降下電圧の低いショットキーバリアダイオード)を用いることも可能である。
【0032】
スイッチ駆動部40は、スイッチング電源1の制御回路系1cに設けられたスイッチ制御部50と、スイッチング電源1の一次回路系1pに設けられたスイッチ出力部10との間を絶縁しつつ、スイッチ制御部50からスイッチ出力部10にスイッチ駆動信号(=制御信号S1及びS2に応じたゲート信号G11~G14)を伝達するための手段として、絶縁ゲートドライバ41~44(=絶縁型の信号伝達装置に相当)を含む。
【0033】
絶縁ゲートドライバ41は、スイッチ制御部50からの制御信号S1をゲート信号G11としてトランジスタ11のゲートに伝達する。絶縁ゲートドライバ42は、スイッチ制御部50からの制御信号S2をゲート信号G12としてトランジスタ12のゲートに伝達する。絶縁ゲートドライバ43は、スイッチ制御部50からの制御信号S2をゲート信号G13としてトランジスタ13のゲートに伝達する。絶縁ゲートドライバ44は、スイッチ制御部50からの制御信号S1をゲート信号G14としてトランジスタ14のゲートに伝達する。このように、絶縁ゲートドライバ41~44は、スイッチ制御部50とトランジスタ11~14それぞれのゲートとの間に1つずつ設けられている。
【0034】
なお、本図では明示していないが、スイッチ制御部50を用いて整流平滑部30のトランジスタ31及び32のスイッチング駆動を行う場合には、スイッチ制御部50とトランジスタ31及び32それぞれのゲートとの間にも、絶縁ゲートドライバを設ければよい。
【0035】
スイッチ制御部50は、スイッチング電源1の制御回路系1cに設けられており、出力帰還部60からの帰還信号Sfbに応じて、直流出力電圧Voが所望の目標値となるように制御信号S1及びS2を生成する。なお、スイッチ制御部50による出力帰還制御については、既存の周知技術(電圧モード制御方式、電流モード制御方式、または、ヒステリシス制御方式など)を適用すればよいので、詳細な説明は割愛する。
【0036】
出力帰還部60は、スイッチング電源1の二次回路系1sと制御回路系1cとの間を絶縁しつつ、直流出力電圧Voに応じた帰還信号Sfbを生成してスイッチ制御部50に出力する。なお、出力帰還部60の回路構成については任意であるが、シャントレギュレータとフォトカプラを用いる構成、或いは、トランス20の補助巻線を用いる構成などが一般的である。
【0037】
図2は、スイッチング電源1におけるスイッチング動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、制御信号S1及びS2、並びに、ゲート信号G11~G14が描写されている。
【0038】
本図において、制御信号S1は、時刻t2でハイレベルに立ち上げられ、時刻t5でローレベルに立ち下げられ、時刻t13で再びハイレベルに立ち上げられている。一方、制御信号S2は、時刻t7でハイレベルに立ち上げられ、時刻t11でローレベルに立ち下げられている。
【0039】
すなわち、スイッチ制御部50は、制御信号S1をローレベルに立ち下げてから制御信号S2をハイレベルに立ち上げるまでの間に、所定のデッドタイムT1(=時刻t5~t7)を設けている。また、スイッチ制御部50は、制御信号S2をローレベルに立ち下げらてから制御信号S1をハイレベルに立ち上げるまでの間にも、上記と同様のデッドタイムT1(=時刻t11~t13)を設けている。
【0040】
このようなデッドタイムT1は、トランジスタ11及び12の同時オン、ないしは、トランジスタ13及び14の同時オンに伴う過大な貫通電流の発生(延いてはトランジスタ11~14の破壊)を防止するために設けられている。
【0041】
なお、デッドタイムT1を設定する際には、絶縁ゲートドライバ41~44それぞれにおける信号遅延のばらつきを考慮する必要がある。以下では、その理由について、図面を参照しながら詳述する。
【0042】
本図において、ゲート信号G11は、時刻t3でハイレベルに立ち上げられ、時刻t6でローレベルに立ち下げられ、時刻t14で再びハイレベルに立ち上げられている。すなわち、ゲート信号G11の立上りタイミングは、制御信号S1の立上りタイミングから遅延時間d1だけ遅れている(例えば時刻t2~t3を参照)。また、ゲート信号G11の立下りタイミングも、制御信号S1の立下りタイミングから遅延時間d1だけ遅れている(例えば時刻t5~t6を参照)。
【0043】
一方、ゲート信号G12は、時刻t2でローレベルに立ち下げられ、時刻t9でハイレベルに立ち上げられ、時刻t13で再びローレベルに立ち下げられている。すなわち、ゲート信号G12の立上りタイミングは、制御信号S2の立上りタイミングから遅延時間d2だけ遅れている(例えば時刻t7~t9を参照)。また、ゲート信号G12の立下りタイミングも、制御信号S2の立下りタイミングから遅延時間d2だけ遅れている(例えば時刻t11~t13を参照)。
【0044】
ここで、絶縁ゲートドライバ41及び42における信号遅延がばらつくと、上記の遅延時間d1及びd2にもばらつきが生じる。例えば、本図で示したように、d1<d2である場合を考える。この場合、ゲート信号G12がローレベルに立ち下げられてからゲート信号G11がハイレベルに立ち上げられるまでのデッドタイムT2(例えば時刻t13~t14を参照)は、制御信号S2がローレベルに立ち下げられてから制御信号S1がハイレベルに立ち上げられるまでのデッドタイムT1よりも短くなる。従って、トランジスタ11及び12が同時オンしやすくなる。
【0045】
なお、本図とは逆に、d1>d2である場合には、ゲート信号G11がローレベルに立ち下げられてからゲート信号G12がハイレベルに立ち上げられるまでのデッドタイムが短くなるので、やはりトランジスタ11及び12が同時オンしやすくなる。
【0046】
また、ゲート信号G13及びG14にも、上記と同様のことが言える。本図において、ゲート信号G13は、時刻t1でローレベルに立ち下げられ、時刻t8でハイレベルに立ち上げられ、時刻t12で再びローレベルに立ち下げられている。すなわち、ゲート信号G13の立上りタイミングは、制御信号S2の立上りタイミングから遅延時間d3だけ遅れている(例えば時刻t7~t8を参照)。また、ゲート信号G13の立下りタイミングも、制御信号S2の立下りタイミングから遅延時間d3だけ遅れている(例えば時刻t11~t12を参照)。
【0047】
一方、ゲート信号G14は、時刻t4でハイレベルに立ち上げられ、時刻t7でローレベルに立ち下げられ、時刻t15で再びハイレベルに立ち上げられている。すなわち、ゲート信号G14の立上りタイミングは、制御信号S1の立上りタイミングから遅延時間d4だけ遅れている(例えば時刻t2~t4を参照)。また、ゲート信号G14の立下りタイミングも、制御信号S1の立下りタイミングから遅延時間d4だけ遅れている(例えば時刻t5~t7を参照)。
【0048】
ここで、絶縁ゲートドライバ43及び44における信号遅延がばらつくと、上記の遅延時間d3及びd4にもばらつきが生じる。例えば、本図で示したように、d3<d4である場合を考える。この場合、ゲート信号G14がローレベルに立ち下げられてからゲート信号G13がハイレベルに立ち上げられるまでのデッドタイムT3(例えば時刻t7~t8を参照)は、制御信号S1がローレベルに立ち下げられてから制御信号S2がハイレベルに立ち上げられるまでのデッドタイムT1よりも短くなる。従って、トランジスタ13及び14が同時オンしやすくなる。
【0049】
なお、本図とは逆に、d3>d4である場合には、ゲート信号G13がローレベルに立ち下げられてからゲート信号G14がハイレベルに立ち上げられるまでのデッドタイムが短くなるので、やはりトランジスタ13及び14が同時オンしやすくなる。
【0050】
上記の考察から、デッドタイムT1は、絶縁ゲートドライバ41~44における信号遅延(及びそのばらつき)を考慮して本来よりも長めに設定しておく必要がある。ただし、デッドタイムT1を長く設定するほど、スイッチ出力部10の有効デューティが小さくなるので、スイッチング電源1の性能低下を招く。
【0051】
逆に言えば、絶縁ゲートドライバ41~44における信号遅延(及びそのばらつき)を抑えれば、デッドタイムT1を短縮することが可能となり、延いては、有効デューティを増大してスイッチング電源1の性能向上を図ることが可能となる。
【0052】
<信号伝達装置>
図3は、絶縁ゲートドライバ41~44として用いられる信号伝達装置の一構成例を示す図である。本構成例の信号伝達装置100は、パルス生成回路110と、絶縁回路120と、パルス受信回路130と、出力駆動回路140と、を含む。
【0053】
パルス生成回路110は、入力信号Siに応じた送信パルス信号S11及びS12を生成する。より具体的に述べると、パルス生成回路110は、入力信号Siがハイレベルである旨を通知するときには、送信パルス信号S11のパルス駆動(単発または複数発の送信パルス出力)を行い、入力信号Siがローレベルである旨を通知するときには、送信パルス信号S12のパルス駆動を行う。すなわち、パルス生成回路110は、入力信号Siの論理レベルに応じて、送信パルス信号S11及びS12の一方をパルス駆動する。
【0054】
なお、信号伝達装置100を絶縁ゲートドライバ41及び44として用いる場合には、入力信号Siとして制御信号S1が入力されることになる。一方、信号伝達装置100を絶縁ゲートドライバ42及び43として用いる場合には、入力信号Siとして制御信号S2が入力されることになる。
【0055】
絶縁回路120は、トランスなどの絶縁素子121及び122を用いて入出力間を絶縁しつつ、送信パルス信号S11及びS12をそれぞれ受信パルス信号S21及びS22としてパルス受信回路130に伝達する。
【0056】
パルス受信回路130は、受信パルス信号S21及びS22に応じた受信パルス信号S30を生成する。より具体的に述べると、パルス受信回路130は、受信パルス信号S21のパルス駆動を受けて受信パルス信号S30をハイレベルに立ち上げる一方、受信パルス信号S22のパルス駆動を受けて受信パルス信号S30をローレベルに立ち下げる。すなわち、パルス受信回路130は、入力信号Siの論理レベルに応じて受信パルス信号S30の論理レベルを切り替える。
【0057】
出力駆動回路140は、パルス受信回路130から入力される受信パルス信号S30に応じて出力信号Soを生成する。より具体的に述べると、出力駆動回路140は、受信パルス信号S30がハイレベルであるときに出力信号Soをハイレベルとし、受信パルス信号S30がローレベルであるとき出力信号Soをローレベルとする。
【0058】
なお、信号伝達装置100を絶縁ゲートドライバ41として用いる場合には、出力信号Soとしてゲート信号G11が出力されることになる。同様に、信号伝達装置100を絶縁ゲートドライバ42~44として用いる場合には、出力信号Soとしてゲート信号G12~G14が出力されることになる。
【0059】
上記構成から成る信号伝達装置100では、その入出力間に設けられた各ブロック110~140それぞれの信号遅延ばらつきが累計されて、信号伝達装置100全体の信号遅延ばらつきとなる。特に、パルス生成回路110の信号遅延ばらつきは、信号伝達装置100全体の信号遅延ばらつきに大きな影響を及ぼす。
【0060】
<パルス生成回路>
図4は、パルス生成回路110の一構成例を示す図である。本構成例のパルス生成回路110は、エッジ検出部111と、送信部112と、クロック生成部113と、分周部114と、インバータ115と、テスト入力パッドTESTIと、テスト出力パッドTESTOと、を含む。
【0061】
エッジ検出部111は、通常モード(例えばMODE=L)において、入力信号Siのパルスエッジを検出してエッジ検出信号Hdet及びLdetを生成する。より具体的に述べると、エッジ検出部111は、入力信号Siの立上りエッジを検出したときにエッジ検出信号Hdetのパルスを生成し、入力信号Siの立下りエッジを検出したときにエッジ検出信号Ldetのパルスを生成する。
【0062】
また、エッジ検出部111は、テストモード(例えばMODE=H)において、入力信号Siではなく、クロック信号CLK(本図ではその論理レベルを反転させた反転クロック信号CLKB)のパルスエッジを検出して、エッジ検出信号Hdet及びLdetを生成する機能(=自励発振機能)も備えている。
【0063】
さらに、エッジ検出部111は、自身の信号遅延時間を調整するための遅延調整手段111aを備えている。なお、遅延調整手段111aでは、既存の手法(レーザトリミングなど)を用いて、エッジ検出部111の信号遅延時間を調整することが可能である。
【0064】
送信部112は、エッジ検出信号Hdet及びLdetに応じて送信パルス信号S11及びS12のパルス駆動を行う。具体的に述べると、送信部112は、エッジ検出信号Hdetにパルスが生成されたときに送信パルス信号S11のパルス駆動を行い、エッジ検出信号Ldetにパルスが生成されたときに送信パルス信号S12のパルス駆動を行う。
【0065】
クロック生成部113は、エッジ検出信号Hdet及びLdetに応じてクロック信号CLKを生成する。なお、クロック生成部113としては、本図で示したように、RSフリップフロップを好適に用いることができる。例えば、エッジ検出信号Hdetをセット端(S)に入力し、エッジ検出信号Ldetをリセット端(R)に入力した場合、出力端(Q)から出力されるクロック信号CLKは、エッジ検出信号Hdetの立上りタイミングでハイレベルにセットされ、エッジ検出信号Ldetの立上りタイミングでローレベルにリセットされる。
【0066】
分周部114は、nsオーダの周期を持つクロック信号CLKを所定の分周比で分周することにより、例えば、数十μsの周期を持つ分周クロック信号DCLKを生成する。
【0067】
インバータ115は、クロック信号CLKの論理レベルを反転させることにより、反転クロック信号CLKBを生成し、これをエッジ検出部111に出力する。
【0068】
テスト入力パッドTESTIは、テスタ200からテストモード切替信号MODEの入力を受け付けてエッジ検出部111に伝達するための外部パッドである。なお、テストモード切替信号MODEは、例えば、パルス生成回路110を通常モードとするときにローレベルとされ、パルス生成回路110をテストモードとするときにハイレベルとされる。
【0069】
テスト出力パッドTESTOは、分周部114からテスタ200に分周クロック信号DCLKを出力するための外部パッドである。
【0070】
上記したように、パルス生成回路110は、テストモード切替信号MODEに応じて、自身の信号遅延ばらつきをテスタ200で精度良く測定してその微調整を行うための自己診断機能(いわゆるBIST[built-in self test]機能)を備えている。
【0071】
なお、上記の自己診断機能は、通常モード(MODE=L)では一切動作しないので、パルス生成回路110の通常動作に影響を及ぼすことはない。
【0072】
図5は、パルス生成回路110のテストモードにおける自励発振動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、テストモード切替信号MODE、エッジ検出信号Hdet及びLdet、クロック信号CLK、並びに、反転クロック信号CLKBが描写されている。
【0073】
時刻t21において、テストモード切替信号MODEがハイレベル(=テストモード切替時の論理レベル)に立ち上げられたとき、エッジ検出部111は、先に述べたように、入力信号Siではなく、反転クロック信号CLKBのパルスエッジを検出してエッジ検出信号Hdet及びLdetを生成し始める。具体的に述べると、エッジ検出部111は、MODE=Hとなった時点で、反転クロック信号CLKBがハイレベルであることから、これを立上りエッジと看做してエッジ検出信号Hdetをローレベルに立ち下げる。
【0074】
その後、所定の待機時間THが経過すると、時刻t22において、エッジ検出信号Hdetが再びハイレベルに立ち上げられる。その結果、クロック信号CLKがハイレベルにセットされるので、反転クロック信号CLKBがローレベルに立ち下がる。
【0075】
このとき、エッジ検出部111では、反転クロック信号CLKBの立下りエッジが検出される。従って、エッジ検出部111における信号遅延がなければ、エッジ検出信号Ldetが遅滞なくローレベルに立ち下げられるはずである。しかしながら、実際には、エッジ検出部111には、信号遅延が存在する。従って、時刻t22において、エッジ検出信号Ldetがローレベルに立ち下げられることはなく、そこから信号遅延時間dLが経過した時刻t23において、エッジ検出信号Ldetがローレベルに立ち下げられる。
【0076】
その後、所定の待機時間TLが経過すると、時刻t24において、エッジ検出信号Ldetが再びハイレベルに立ち上げられる。その結果、クロック信号CLKがローレベルにリセットされるので、反転クロック信号CLKBがハイレベルに立ち上がる。
【0077】
このとき、エッジ検出部111では、反転クロック信号CLKBの立上りエッジが検出される。従って、エッジ検出部111における信号遅延がなければ、エッジ検出信号Hdetが遅滞なくローレベルに立ち下げられるはずである。しかしながら、実際には、エッジ検出部111には、信号遅延が存在する。従って、時刻t24において、エッジ検出信号Hdetがローレベルに立ち下げられることはなく、そこから信号遅延時間dHが経過した時刻t25において、エッジ検出信号Hdetがローレベルに立ち下げられる。
【0078】
その後、先述の待機時間THが経過すると、時刻t26において、エッジ検出信号Ldetが再びハイレベルに立ち上げられる。その結果、クロック信号CLKがローレベルにリセットされるので、反転クロック信号CLKBがハイレベルに立ち上がる。
【0079】
時刻t26以降においても、上記と同様の動作が繰り返されて、クロック信号CLKの自励発振動作が継続される。
【0080】
ここで、本図で示すように、クロック信号CLKの周期Tには、エッジ検出部111の信号遅延時間dH及びdLが含まれている。すなわち、信号遅延時間dH及びdLが長いほど周期Tも長くなり、逆に、信号遅延時間dH及びdLが短いほど周期Tも短くなる。
【0081】
従って、テスタ200を用いてクロック信号CLKの周期Tを測定し、その測定値に基づいてエッジ検出部111の信号遅延時間dH及びdLを微調整することにより、パルス生成回路110における信号遅延ばらつき(延いては信号伝達装置100の信号遅延ばらつき)を抑制することが可能となる。
【0082】
なお、エッジ検出部111の遅延調整手段111aでは、例えば、周期Tの測定値が許容ばらつき範囲の中央値と一致するように、信号遅延時間dH及びdLの微調整を行うことが望ましい。
【0083】
また、パルス生成回路110は、nsオーダの周期Tを持つクロック信号CLKをそのままテスタ200に出力するのではなく、数十μsの周期m×Tを持つ分周クロック信号DCLKに分周してからテスタ200に出力する。従って、テスタ200では、分周クロック信号DCLKの周期m×T(延いてはクロック信号CLKの周期T)を正確に測定することができるので、信号遅延時間dH及びdLを精度良く調整することが可能となる。
【0084】
特に、トランジスタ11~14の高速スイッチングが必要なスイッチング電源1では、信号伝達回路100における信号遅延のばらつきを抑制することにより、先述のデッドタイムT1を必要最小限に設定することができるようになる。従って、スイッチ出力部10の有効デューティが大きくなるので、スイッチング電源1の性能が向上する。
【0085】
<パッケージ>
図6は、信号伝達装置100に用いられるパッケージの一例を示す図である。本図のパッケージ300は、マルチチップ搭載型であり、本図の例では、パルス生成回路110を集積化した半導体チップ310と、絶縁回路120を集積化した半導体チップ320と、パルス受信回路130及び出力駆動回路140を集積化した半導体チップ230が単一のパッケージ300に封止されている。
【0086】
なお、半導体チップ310に設けられるテスト入力パッドTESTI及びテスト出力パッドTESTOは、先にも説明したように、パルス生成回路110のテストモードでのみ使用されるテスト用パッドであり、パッケージ300の外部に導出しておく必要がない。従って、これらのテスト用パッドについては、いずれのリードフレームにもボンディングすることなくパッケージ300に封止しておくとよい。
【0087】
<その他の変形例>
なお、上記実施形態では、スイッチング電源に用いられる絶縁ゲートドライバへの適用例を挙げたが、本明細書中に開示されている信号伝達装置の適用対象は、これに限定されるものではなく、入出力間を電気的に絶縁しながら信号伝達を行う必要のあるアプリケーション全般(高電圧を取り扱うモータドライバ、アイソレータ、若しくは、その他ICなど)に広く適用することが可能である。
【0088】
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、スイッチング電源に用いられる絶縁型ゲートドライバに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 スイッチング電源
1p 一次回路系
1s 二次回路系
1c 制御回路系
2 直流電源
10 スイッチ出力部
11~14 トランジスタ
20 トランス
21 一次巻線
22(22a、22b) 二次巻線
30 整流平滑部
31、32 トランジスタ
33 キャパシタ
40 スイッチ駆動部
41~44 絶縁ゲートドライバ
50 スイッチ制御部
60 出力帰還部
100 信号伝達装置
110 パルス生成回路
111 エッジ検出部
111a 遅延調整手段
112 送信部
113 クロック生成部(RSフリップフロップ)
114 分周部
115 インバータ
120 絶縁回路
121、122 絶縁素子
130 パルス受信回路
140 出力駆動回路
200 テスタ
300 パッケージ
310、320、330 半導体チップ
n1、n2、n3、n4 ノード
TESTI テスト入力パッド
TESTO テスト出力パッド