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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】バニシング加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 39/06 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B24B39/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018127318
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2020006451
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神村 大地
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正英
(72)【発明者】
【氏名】二村 優
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-137455(JP,U)
【文献】実開昭59-124047(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0343597(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B39/00-39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バニシング加工装置であって、
被加工面を押圧して加工する丸棒形状のチップと、
前記チップを前記被加工面に対して加圧させる加圧手段であって、
前記チップと直交する往復方向に移動するピストンと、
前記ピストンを前記往復方向に移動可能に収容するシリンダ部と、
前記ピストンを前記往復方向に沿って移動させ、前記チップを前記被加工面の奥側面に押し付ける押し加工時と前記チップを前記被加工面の手前側面に引き寄せる引き加工時の両方において前記チップを前記被加工面に付勢する加圧機構と、を有する加圧手段と、
を備え、
前記加圧機構は、
前記ピストンに、前記往復方向に直交する軸を中心として回転可能に設けられた転動体と、
前記往復方向および前記転動体の軸方向に互いに直交する方向に進退可能に設けられたプッシャと、
前記プッシャを前記転動体に向けて付勢する弾性部材と、
前記プッシャの先端部に形成され、前記転動体と当接し、前記ピストンが基準位置にあるときに前記転動体に対する高さが最高点に達し、前記ピストンの往復動に伴って前記転動体に対する高さが徐々に低くなるカム面と、
を有する、バニシング加工装置。
【請求項2】
バニシング加工装置であって、
被加工面を押圧して加工する丸棒形状のチップと、
前記チップを前記被加工面に対して加圧させる加圧手段であって、
前記チップと直交する往復方向に移動するピストンと、
前記ピストンを前記往復方向に移動可能に収容するシリンダ部と、
前記ピストンを前記往復方向に沿って移動させ、前記チップを前記被加工面の奥側面に押し付ける押し加工時と前記チップを前記被加工面の手前側面に引き寄せる引き加工時の両方において前記チップを前記被加工面に付勢する加圧機構と、を有する加圧手段と、
を備え、
前記加圧機構は、
前記往復方向に直交する方向に進退可能に設けられたプッシャと、
前記プッシャの先端部に、前記往復方向に直交する軸を中心として回転可能に設けられた転動体と、
前記プッシャを前記転動体に向けて付勢する弾性部材と、
前記ピストンの外周部に形成され、前記転動体と当接し、前記ピストンが基準位置にあるときに前記転動体に対する相対高さが最低点に達し、前記ピストンの往復動に伴って前記転動体に対する相対高さが徐々に高くなるカム面と、
を有する、バニシング加工装置。
【請求項3】
前記加圧機構は、弾性部材を有し、前記弾性部材の弾性力によって前記ピストンの基準位置からの変位量に応じて前記ピストンを前記往復方向に加圧する、
請求項1または請求項2のバニシング加工装置。
【請求項4】
前記チップは、
先端部に形成され前記被加工面と平行になる平行部と、
前記平行部より基端側に形成され基端側に向かうに連れて縮径するテーパ部と、
を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項のバニシング加工装置。
【請求項5】
前記加圧機構は、前記弾性部材の一端を支持する台座を軸方向に移動させる荷重調節部材をさらに備えている、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項のバニシング加工装置。
【請求項6】
バニシング加工装置であって、
被加工面を押圧して加工する丸棒形状のチップと、
前記チップを前記被加工面に対して加圧させる加圧手段であって、
前記チップと直交する往復方向に移動するピストンと、
前記ピストンを前記往復方向に移動可能に収容するシリンダ部と、
前記ピストンを前記往復方向に沿って移動させ、前記チップを前記被加工面の奥側面に押し付ける押し加工時と前記チップを前記被加工面の手前側面に引き寄せる引き加工時の両方において前記チップを前記被加工面に付勢する加圧機構と、を有する加圧手段と、
を備え、
前記加圧機構は、前記ピストンの軸方向に沿って設けられた弾性部材にて構成されており、
前記シリンダ部は、前記弾性部材の一端部に第一受部材を介して当接する第一支持面と、前記弾性部材の他端部に第二受部材を介して当接する第二支持面とを有し、
前記ピストンは、前記弾性部材の一端部に前記第一受部材を介して当接する第一押圧面と、前記弾性部材の他端部に前記第二受部材を介して当接する第二押圧面と、
を有している、バニシング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バニシング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、Oリング等のシール部材を嵌めるための溝は、円筒形状のワークをOリング溝加工バイトチップで切削加工して形成されている。切削加工で形成されたOリング溝の表面は、切削仕上げされる。近年、Oリングの寿命向上やシール性向上が要求されているが、切削仕上げで仕上げる表面粗さは、チップの摩耗による影響を受けるため、安定し難いという問題点がある。
【0003】
このような切削加工された加工面の表面粗さを良好にするための手法として、バニシング加工が知られている。切削加工された溝の表面粗さを良好に仕上げてシール性を向上させるものとしては、切削加工された溝内の側面をバニシング加工するバニシング加工用工具がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のバニシング加工用工具は、超硬バニシング工具を保持した後部ホルダを備えたバニッシャと、当該バニッシャが取り付けられたピストンとを備えている。ピストンは、ホルダに出没可能に設けられており、ホルダ内に設けられたばねによって突出付勢されている。超硬バニシング工具はバニッシャとともに付勢され、回転するワークの円筒外周溝の側面に押し付けられて、バニシング加工が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭59-124047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているようなバニシング加工用工具では、ホルダに対して押しの方向のみに超硬バニシング工具が付勢されるため、円筒外周溝の両方の側面の加工を行うには、ピストンの動作方向を変えなければならなかった。あるいは、ホルダに対して引きの方向に付勢可能なピストンを別途準備する必要があった。
【0007】
本発明は、溝の両側面を、一つのツールでピストンの動作方向を変えることなく加工可能なバニシング加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るバニシング加工装置は、被加工面を押圧して加工する丸棒形状のチップと、前記チップを前記被加工面に対して加圧させる加圧手段であって、前記チップと直交する往復方向に移動するピストンと、前記ピストンを前記往復方向に移動可能に収容するシリンダ部と、前記ピストンを前記往復方向に沿って移動させ、前記チップを前記被加工面の奥側面に押し付ける押し加工時と前記チップを前記被加工面の手前側面に引き寄せる引き加工時の両方において前記チップを前記被加工面に付勢する加圧機構と、を有する加圧手段と、を備え、前記加圧機構は、前記ピストンに、前記往復方向に直交する軸を中心として回転可能に設けられた転動体と、前記往復方向および前記転動体の軸方向に互いに直交する方向に進退可能に設けられたプッシャと、前記プッシャを前記転動体に向けて付勢する弾性部材と、前記プッシャの先端部に形成され、前記転動体と当接し、前記ピストンが基準位置にあるときに前記転動体に対する高さが最高点に達し、前記ピストンの往復動に伴って前記転動体に対する高さが徐々に低くなるカム面と、を有する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加圧機構が、押し加工時と引き加工時の両方においてチップを被加工面に付勢するので、溝の両側面を、一つのツールでピストンの動作方向を変えることなくバニシング加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1のバニシング加工装置の断面図。
図2図1のA-A線断面図。
図3】実施形態1のチップの拡大側面図。
図4】押し加工時に実施形態1のピストンが移動した状態を示した断面図。
図5】引き加工時に実施形態1のピストンが移動した状態を示した断面図。
図6】実施形態1のバニシング加工装置の比較例の断面図。
図7】実施形態1の変形例のバニシング加工装置の斜視図。
図8】実施形態1の変形例のバニシング加工装置の要部断面図。
図9】実施形態2のバニシング加工装置の断面図。
図10】実施形態2のバニシング加工装置のバネ荷重を調整した状態を示した断面図。
図11】(a)は、押し加工時に実施形態2のピストンが移動した状態を示した断面図、(b)は、引き加工時に実施形態2のピストンが移動した状態を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。バニシング加工装置は、被加工面が、ワークの外面、内面、端面であってもバニシング加工することができるが、本実施形態では、図4に示すように、バニシング加工装置1がワーク2の外周面にOリング装着溝3を加工する場合を例に挙げて説明する。また、本実施形態のバニシング加工装置1では、ワーク2を加工する際に、センタ押し台5を用いてワーク2を回転させる場合がある。
【0012】
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1に係るバニシング加工装置1は、チップ10とチップホルダ20と加圧手段30とを備えている。
【0013】
チップ10は、ワーク2の被加工面、たとえばOリング装着溝3の両側面4,4を押圧して加工する部材である。チップ10は、細い丸棒形状を呈しており、先端部がOリング装着溝3内に挿入可能な大きさである。図3にも示すように、チップ10の外周面には、先端部に形成され被加工面(側面4)と平行になる平行部11と、当該平行部11より基端側に形成され基端側に向かうに連れて縮径するテーパ部12とが形成されている。平行部11は、チップ10の軸方向の距離が短く形成されており、チップ10とワーク2の接触面積を小さくしている。これによって、比較的小さいチップ10の押圧荷重で、ワーク2を加工することができる。テーパ部12は、ワーク2に作用する荷重を逃がす部分である。テーパ部12を設けたことで、チップ10に送りを掛けて加工する際に、徐々に圧力が軽減されつつ周速による擦りが生じることで良好な仕上げ面が得られる。なお、チップ10の形状は、前記構成に限定されるものではなく、外周面がテーパ部を有さない平行部のみからなる形状であってもよい。
【0014】
チップ10は、たとえばダイヤモンドや超硬合金等の超高硬度材料にて構成されている。なお、チップ10の材質は、ワーク2の材質や加工部分の状態に応じて設定されるものであって、超高硬度材料に限定されるものではなく、一般鋼材にて形成されてもよい。チップ10は、表面処理や表面加工を行って、チップ10とワーク2の摩擦抵抗を変化させたり、チップ10の耐久性を向上させることができる。
【0015】
図1に示すように、チップホルダ20は、チップ10を支持する部材である。チップホルダ20は、チップ10を支持している。チップホルダ20の胴部21は、上端部よりも細くなっている。チップホルダ20の下端部(チップ10側とは逆側の端部)の外周面には、ねじ部22が形成されている。なお、チップホルダは、チップを回転可能に支持するものであってもよい。
【0016】
加圧手段30は、チップ10をワーク2のOリング装着溝3の両側面4,4(被加工面)に対して加圧させるものである。加圧手段30は、ピストン31とシリンダ部32と加圧機構33とを有している。
【0017】
ピストン31は、チップホルダ20を保持する部材であって、チップ10の軸方向に直交する方向を軸方向とする。チップ10の軸方向は、図1の上下方向に延在している。ピストンの軸方向は、図1の左右方向に延在している。ピストン31は、断面矩形形状を呈している(図2参照)。ピストン31は、図1の左右方向に揺動(往復移動)する。ピストン31の先端部(チップ側端部)には、チップホルダ20を挿通させる支持孔34が上下方向に貫通している。支持孔34には、チップホルダ20の胴部21が挿通される。胴部21のねじ部22にナット23を螺合させることで、チップホルダ20がピストン31に固定される。ピストン31の基端部(チップ側とは逆側の端部)には、鍔部35が着脱可能にボルト止めされている。鍔部35は、ピストン31が、シリンダ部32の貫通孔36から抜け落ちるのを防止するストッパの役目を果たす。
【0018】
図2にも示すように、ピストン31の中間部には、上下に貫通する空洞部37が形成されている。空洞部37には、円筒状の転動体38が設けられている。転動体38は、ピストン31の軸方向に直交する(図1の紙面表裏方向および図2の左右方向に延在する)軸を中心として回転可能に設けられている。本実施形態では、転動体38の軸は、空洞部37の側壁間に架け渡された円柱体39からなる。転動体38は、空洞部37の軸方向中間部に位置し、転動体38の下端が、ピストン31の下端と同じ高さになるように配置されている。
【0019】
本実施形態では、ピストン31のローリング、ヨーイングを抑制するために、ピストン31に与圧を付与する与圧付与機構が設けられている。与圧付与機構を設けたことで、ピストン31が軸方向に沿って摺動するため、チップ10が傾斜しないので、精度の高いバニシング加工を行うことができる。本実施形態の与圧付与機構は、転動体38の周辺に設けられた複数の補助転動体40にて構成されている。補助転動体40は、円筒状を呈しており、転動体38と平行に配置されている。補助転動体40は、空洞部37の側壁間に架け渡された円柱体41を中心として回転可能に設けられている。補助転動体40は、転動体38の左右の斜め上部両側に配置される上部転動体40a,40aと、転動体38の左右の側方両側に配置される下部転動体40b,40bとからなる。上部転動体40aの斜め下部は、転動体38の斜め上部と接触している。上部転動体40aの上端部は、ピストン31の上端よりも上方に若干突出しており、ピストン31を貫通孔36に挿入した際に、上部転動体40aの上端部がシリンダ部32の貫通孔36の上面に付勢する。
【0020】
下部転動体40bは、転動体38の側方で、転動体38と隙間をあけて接触しない状態で配置されている。下部転動体40bの斜め上部は、上部転動体40aの斜め下部と接触している。下部転動体40bの下端部は、ピストン31の下端よりも下方に若干突出しており、ピストン31を貫通孔36に挿入した際に、下部転動体40bの下端部がシリンダ部32の貫通孔36の下面に付勢する。
【0021】
以上のように、上部転動体40aと下部転動体40bがそれぞれ貫通孔36に与圧を付与しながら、貫通孔36の表面を転動するため、ピストン31は、貫通孔36の軸方向に沿って摺動することができる。
なお、ピストンとシリンダ部の形状は、前記形状に限定されるものではない。ピストンを矩形断面とし、シリンダ部の貫通孔の内面に複数の転動体を設け、転動体でピストンを囲むように支持してもよい。このような構成にすれば、ピストンは複数の転動体によって与圧を付与される。
【0022】
シリンダ部32は、ピストン31を当該ピストン31の軸方向に移動可能に収容する。シリンダ部32は、ピストン31の周囲を囲む筒状部分にて構成されており、貫通孔36を有する。貫通孔36は、ピストン31の外形よりも一回り大きい断面矩形形状を呈しており、ピストン31を軸方向に移動可能にするためのクリアランスが形成されている。貫通孔36の下面に一対の下部転動体40b,40bが接するとともに、貫通孔36の上面に一対の上部転動体40a,40aが接しているので、ピストン31の軸と貫通孔36の軸が傾くことなく、ピストン31が移動できる。シリンダ部32の下側は下方に延在しており、後記する加圧機構33のプッシャ46およびバネ部材47が収容される第二貫通孔43が形成されている。第二貫通孔43は、貫通孔36の軸方向中間部の下面から、シリンダ部32の下端部まで貫通している。第二貫通孔43は、断面円形を呈している。第二貫通孔43の内周面には、段差部44が形成されており、第二貫通孔43の下部は、第二貫通孔43の上部よりも大径となっている。段差部44の上側が小径部43aとなり、下側が大径部43bとなる。大径部43bの下端部の内周面には、雌ねじ部45が形成されている。
【0023】
加圧機構33は、チップ10を被加工面(側面4)の奥側面(図1の左側)に押し付ける押し加工時と、チップ10を被加工面の手前側面(図1の右側)に引き寄せる引き加工時の両方においてチップ10を被加工面に付勢するように構成されている。具体的には、加圧機構33は、転動体38とプッシャ46とバネ部材(弾性部材)47とを備えている。転動体38は、前記したピストン31内に設けられたものである。
【0024】
プッシャ46は、転動体38を下側から上方に向けて押さえる部材である。プッシャ46は、円柱形状を呈しており、ピストン31の軸方向に直交するとともに転動体38の軸方向に直交する方向(図1の上下方向)に移動可能に設けられている。プッシャ46は、シリンダ部32の下部に設けられた第二貫通孔43の小径部43aに昇降可能に挿入されている。プッシャ46は、転動体38の外周面に係合するカム面48を有しており、直動カムの機能を備える。ピストン31が原節となり、プッシャ46が従節となる。そして、転動体38は、カムフォロアの役目を果たす。カム面48は、プッシャ46の上端部に形成されており、中央が低く、ピストン31の往復方向両端部に向かうに連れて高くなる。カム面48は、転動体38と当接し、ピストン31が基準位置にあるときに転動体38に対する高さが最高点に達し、ピストン31の往復動に伴って転動体31に対する高さが徐々に低くなる。なお、カム面4の中央部分には、平坦部が設けられていてもよい。
【0025】
プッシャ46には、軸方向に長い長孔49が形成されている。長孔49内には、円柱状のガイドロッド50が挿通されている。ガイドロッド50は、第二貫通孔43の壁面に固定されている。長孔49は、プッシャ46の移動方向をガイドする。ガイドロッド50は、プッシャ46の軸回りの回転を防止する。プッシャ46の上端部は、第二貫通孔43の上端より上方に突出しており、カム面48が転動体38の下端部に当接している。プッシャ46の下端部は、第二貫通孔43の段差部44よりも下方に突出した状態で配置されている。
【0026】
バネ部材47は、プッシャ46を転動体38に向けて付勢する部材である。バネ部材47は、スプリング式のバネであって、第二貫通孔43の大径部43bに収容されている。バネ部材47の上端部には、リング状のバネ受部材51が当接している。バネ受部材51の外径は、大径部43bの内径より僅かに小さい。バネ受部材51は、段差部44の近傍に配置されている。バネ受部材51上には、プッシャ46が載置されている。バネ部材47の下端部には、リング状の台座52が当接している。台座52は、スラスト玉軸受にて構成されており、バネ部材47の捩れを吸収可能になっている。
【0027】
台座52の下側には、バネ部材47のバネ荷重を調整するための荷重調節ねじ(バネ荷重調節部材)53が設けられている。荷重調節ねじ53は、第二貫通孔43の下端部の雌ねじ部45に螺合しており、回転することで上下動する。荷重調節ねじ53を上昇させると、台座52が上昇し、バネ部材47の高さ寸法が小さくなる。これによって、プッシャ46に掛かるバネ荷重が大きくなる。荷重調節ねじ53を下降させると、台座52が下降し、バネ部材47の高さ寸法が大きくなる。これによって、プッシャ46に掛かるバネ荷重が小さくなる。バネ荷重は、ワーク2およびチップ10の材質や形状、要求される被加工面の表面粗さ等に応じて適宜設定される。荷重調節ねじ53の側部には、荷重調節ねじ53を所定位置で固定するための固定ねじ54とねじ孔55が設けられている。
【0028】
以上のような構成の加圧手段30では、ピストン31が往復方向に移動すると、転動体38がプッシャ46のカム面48の傾斜面に押し付けられる。すると、プッシャ46は下方に移動しバネ部材47が圧縮される。このとき、バネ部材47の復元力が反力となり、プッシャ46を押し戻そうとする。プッシャ46から上方に加わる力のカム面48に対する分力が、ピストン31の往復方向に加わる。プッシャ46の転動体38への付勢力(バネ部材47の反力)は、圧縮寸法に比例する。つまり、ピストン31の基準位置からの変動量が大きいほど、プッシャ46の転動体38への付勢力が大きくなる。
カム面48が平面状であれば、プッシャ46の転動体38への付勢力は、ピストン31の基準位置からの変動量に比例する。カム面48が曲面状であっても、カム面48の断面関数に従ってピストン31の往復方向における力を与える。したがって、ピストン31の位置に応じた力がチップ10に作用する。つまり、ピストン31の基準位置からの変動量に応じてチップ10が被加工面に与える応力を制御できる。
【0029】
次に、前記構成のバニシング加工装置1を用いてバニシング加工を行う場合の各部の動作を説明しながら実施形態1の作用効果を説明する。
【0030】
(押し加工時)
押し加工時には、図4に示すように、ワーク2を回転させながら、チップ10を被加工面の奥側面(図4のOリング装着溝3の左側の側面4)に押し付ける。このとき、チップ10は反力を受けて、チップ10およびチップホルダ20とともにピストン31がシリンダ部32に対して右側に相対移動する。すると、転動体38がプッシャ46に対して右側に移動することになるので、転動体38がカム面48の右側斜面を押して、プッシャ46が下方に押し下げられる。これによって、バネ部材47が縮んで、バネ力(復元力)が発生する。このバネ力がプッシャ46、転動体38、ピストン31、チップホルダ20を介して、チップ10に伝達される。チップ10が被加工面に与える応力は、ストン31の基準位置からの変動量に応じて変化する。これによって、ワーク2の被加工面に好適な圧力が作用して、所望の表面粗さにバニシング加工を行うことができる。
【0031】
(引き加工時)
引き加工時には、図5に示すように、ワーク2を回転させながら、チップ10を被加工面の手前側面(図5のOリング装着溝3の右側の側面4)に引き付ける。このとき、チップ10は反力を受けて、チップ10およびチップホルダ20とともにピストン31がシリンダ部32に対して左側に相対移動する。すると、転動体38がプッシャ46に対して左側に移動することになるので、転動体38がカム面48の左側斜面を押して、プッシャ46が下方に押し下げられる。これによって、バネ部材47が縮んで、バネ力が発生する。このバネ力がプッシャ46、転動体38、ピストン31、チップホルダ20を介して、チップ10に伝達される。これによって、ワーク2の被加工面(側面4)に好適な圧力が作用して、所望の表面粗さにバニシング加工を行うことができる。
【0032】
以上のように、実施形態1に係るバニシング加工装置1によれば、ピストン31が、シリンダ部32の軸方向両方向に移動可能であるとともに、加圧機構33が、ピストン31の両方向にバネ部材47のバネ力を伝達することができる。したがって、押し加工時と引き加工時の両方においてチップ10を被加工面に付勢することができる。よって、チップ10の押圧方向に関わらず、Oリング装着溝3の両側面4,4を、一つのツールでピストン31の動作方向を変えることなくバニシング加工を行うことができる。
【0033】
また、実施形態1では、チップ10の外周面に、軸方向長さが短い平行部11が形成されているので、比較的小さいチップ10の押圧荷重で、ワーク2を加工することができる。さらに、チップ10にテーパ部12が形成されているので、チップ10に送りを掛けて加工する際に、徐々に圧力が軽減されつつ周速による擦りが生じることで良好な仕上げ面が得られる。
【0034】
また、実施形態1では、加圧機構33は、転動体38とプッシャ46とバネ部材47とを備えており、プッシャ46とバネ部材47が、ピストン31の下方に延在して配置されている。つまり、ピストン31の軸線方向に対して垂直方向に加圧機構33が与圧している。したがって、ピストン31の軸方向長さを小さくできるので、ピストン31の後方のスペースが広くなる。これによって、ワーク2を回転させるセンタ押し台5の設置スペースを確保することができる。
【0035】
さらに、実施形態1では、加圧機構33は、バネ荷重調節部材である荷重調節ねじ53を備えているので、バネ部材47のバネ荷重を所望の数値に設定できる。これによって、チップ10で被加工面を押圧する力を適宜安定した数値に調整できるので、均一な仕上がり面を得ることができる。
【0036】
また、実施形態1では、転動体38の周囲に、複数の補助転動体40を設けたことによって、ピストン31が傾くのを抑制できる。補助転動体40を設けないと、図6に示すように、プッシャ46が転動体38を上方に押圧するので、ピストン31もシリンダ部32の貫通孔36とのクリアランス分持ち上げられて、傾斜してしまう。しかし、実施形態1では、図4および図5に示すように、上部転動体40a,40aが貫通孔36の上面に当接して、下部転動体40b,40bが貫通孔36の下面に当接しているので、ピストン31が傾斜するのを防ぐことができる。さらに、補助転動体40が貫通孔36の内周面に対して転がり接触しているので、ピストン31がシリンダ部32に対して滑らかに移動できる。
【0037】
(実施形態1の変形例)
次に、実施形態1の変形例に係るバニシング加工装置について説明する。図7および図8に示すように、変形例に係るバニシング加工装置は、加圧手段130の構成が実施形態1と異なる。加圧手段130は、ピストン131とシリンダ部132と加圧機構133とを有しており、ピストン131は、与圧付与機構となるボールスプライン134を介してシリンダ部132に移動可能に支持されている。具体的には、シリンダ部132は、ピストン131が挿通する貫通孔136を有している。シリンダ部132には、複数のボールからなるボール列135が循環可能に配列されている。ボール列135は、ピストン131の軸方向に沿って配置されており、その一部が貫通孔136の内側に突出している。ボール列135は、ピストン131を挟むように、貫通孔136の両側に設けられている。ピストン131の外周面には、軸方向に沿ってガイド溝137が形成されている。ガイド溝137は、円弧状の断面形状を呈しており、ピストン131の往復移動の範囲で形成されている。ガイド溝137には、ボール列135の断面の一部が挿入される。ボール列135は、ガイド溝137をピストン131の半径方向に押圧しながら転動し、シリンダ部132内を循環する。なお、ボール列135は、摺動性やピストンの傾き抑制のために、さらに別途に設けてもよい。
ピストン131の外周面には、後記する転動体138の外周面に係合するカム面139が形成されている。カム面139は、凹溝形状を呈しており、ピストンの軸方向に直交する方向に延在している。カム面139は、中央部分に水平部を有し、両端部にピストン131の往復方向外側に向かうに連れて低くなる傾斜部を有している。カム面139は、転動体138と当接し、ピストン131が基準位置にあるときに転動体138に対する高さが最低点に達し、ピストン131の往復動に伴って転動体138に対する高さが徐々に高くなる(プッシャ146と転動体138が下がる)。
【0038】
加圧機構133は、プッシャ146と弾性部材であるバネ部材(図示せず)と転動体138と備えている。プッシャ146は、ピストン131を下側から上方に向けて押さえる部材である。プッシャ146は、円柱形状を呈しており、ピストン131の軸方向に直交する(図7,8の上下方向)に移動可能に設けられている。プッシャ146は、シリンダ部132の下部に設けられた第二貫通孔43の小径部43aに昇降可能に挿入されている。プッシャ46の上端部には、転動体138が回転可能に支持されている。
【0039】
転動体138は、円筒形状を呈しており、ピストン131の軸方向に直交するとともにプッシャ146の軸方向に直交する軸140を中心として回転可能にプッシャ146の先端部に設けられている。転動体138の上端部は、ピストン131のカム面139に入り込んでおり、ピストン131に下側から当接する。
【0040】
バネ部材は、プッシャ146をピストン131側に向けて付勢するものである。バネ部材は、前記した実施形態1と同じ構成であるので、図示および説明を省略する。なお、その他の構成についても、前記した実施形態1と同じ構成であるので、図示した部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
前記構成のバニシング加工装置を用いて押し加工を行う際には、チップ10およびチップホルダ20とともにピストン131がシリンダ部132に対して右側に相対移動する。すると、カム面139が転動体138に対して右側に移動することになるので、カム面139の左側斜面が転動体138を押して、転動体138およびプッシャ146が下方に押し下げられる。これによって、バネ部材が縮んで、バネ力が発生する。このバネ力がプッシャ146、転動体138、ピストン131、チップホルダ20を介して、チップ10に伝達される。
【0042】
一方、引き加工を行う際には、チップ10およびチップホルダ20とともにピストン131がシリンダ部132に対して左側に相対移動する。すると、カム面139が転動体138に対して左側に移動することになるので、カム面139の右側斜面が転動体138を押して、転動体138およびプッシャ146が下方に押し下げられる。これによって、バネ部材が縮んで、バネ力が発生する。このバネ力がプッシャ146、転動体138、ピストン131、チップホルダ20を介して、チップ10に伝達される。
【0043】
このような構成によれば、転動体138が一つであっても、シリンダ131がシリンダ部132に対して傾斜することなく、貫通孔136内を移動することができる。なお、与圧付与機構は、ボールスプライン134に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。たとえば、直線状のガイド溝に凸部が挿入されたリニアガイドを用いてもよい。
【0044】
(実施形態2)
次に実施形態2に係るバニシング加工装置1aについて説明する。図9に示すように、実施形態2に係るバニシング加工装置1aは、チップ10とチップホルダ20と加圧手段60とを備えている。バニシング加工装置1aは、実施形態1のバニシング加工装置1と比較して加圧手段60の構成が異なるので、加圧手段60を中心に説明する。なお、チップ10とチップホルダ20の構成は実施形態1と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
加圧手段60は、ピストン61とシリンダ部62と加圧機構63とを有している。ピストン61は、チップホルダ20を保持する部材であって、チップ10の軸方向に直交する方向を軸方向とする。ピストン61は、断面円形形状を呈しており、先端側(チップ側端側)が、基端側(チップ側とは逆側)よりも大径となる段付き円柱形状となっている。ピストン61の軸方向中間部に段差部が形成されている。段差部より先端側(図9の左側)が大径部65aとなり、基端側(図9の右側)が小径部65bとなる。この段差部は、後記する弾性部材85の一端部(先端部)に第一受部材86を介して当接する第一押圧面64を構成する
【0046】
ピストン61の先端部には、チップホルダ20を挿通させる支持孔66が上下方向に貫通している。支持孔66に挿通されたチップホルダ20はナット23によってピストン61に固定されている。大径部65aには、軸方向に長い長孔67が形成されている。長孔67内には、円柱状のガイドロッド68が挿通されている。ガイドロッド68は、後記する貫通孔75の壁面に固定されている。長孔67は、ピストン61の移動方向をガイドする。ガイドロッド68は、ピストン61の軸回りの回転を防止する。
【0047】
ピストン61の基端部の外周面には、雄ねじ部69が形成されている。雄ねじ部69には、鍔部70を備えたナット部材71が螺合している。ナット部材71は、回転させることでピストン61の軸方向に移動する。ナット部材71の先端面は、後記する弾性部材85の他端部(基端面)に第二受部材87を介して当接する第二押圧面72を構成する。
【0048】
シリンダ部62は、ピストン61を当該ピストン61の軸方向に移動可能に収容する。シリンダ部62は、ピストン61の周囲を囲む筒形状を呈しており、貫通孔75を有する。貫通孔75の先端側は、ピストン61を軸方向に移動可能に収容するピストン収容部76aが形成されている。ピストン収容部76aは、ピストン61の外径より僅かに大きい内径を備えている。ピストン収容部76aよりも基端側には、第一段差部77aを介して拡径した第一大径部76bが形成されている。第一段差部77aは、後記する弾性部材85の一端部(先端部)に第一受部材86を介して当接する第一支持面78を構成する。ピストン61がシリンダ部62に対して基準位置にあるときは、第一支持面78は、第一押圧面64と面一になっている。第一大径部76bよりも基端側には、第二段差部77bを介してさらに拡径した第二大径部76cが形成されている。第二大径部76cの内周面には雌ねじ部79が形成されている。
【0049】
雌ねじ部79には、貫通孔80を備えたねじ部材81が螺合している。ねじ部材81は、回転させることでシリンダ部62の軸方向に移動する。貫通孔80の内径は、第一大径部76bの内径と同等である。貫通孔80の基端周縁部には、中心側に突出する張出部82が形成されている。張出部82は、リング形状を呈しており、その内径は内部にナット部材71が挿入可能な寸法となっている。張出部82の先端側表面は、後記する弾性部材85の他端部(基端面)に第二受部材87を介して当接する第二支持面83を構成する。ピストン61がシリンダ部62に対して基準位置にあるときは、第二支持面83は、第二押圧面72と面一になっている。
【0050】
加圧機構63は、押し加工時と引き加工時の両方において、チップ10を被加工面(側面4,4)にそれぞれ付勢するように構成されている。加圧機構33は、ピストン61の軸方向に沿って設けられた弾性部材85にて構成されている。
【0051】
弾性部材85は、圧縮つるまばねであって、ピストン61の小径部65bを囲うように配置されている。弾性部材85の一端部(先端部)には、第一受部材86が取り付けられており、他端部(基端部)には、第二受部材87が取り付けられている。弾性部材85と第一受部材86と第二受部材87は、ピストン61の小径部65bと、シリンダ部62の第一大径部76bとねじ部材81の貫通孔80とで囲まれた空間に収容されている。
【0052】
第一受部材86は、リング状の部材である。第一受部材86の先端側端面の内周側は第一押圧面64と当接し、外周側は第一支持面78と当接している。第二受部材87は、リング状のスラスト玉軸受にて構成されており、弾性部材85の捩れを吸収可能になっている。第二受部材87の基端側端面の内周側は第二押圧面72に当接し、外周側は第二支持面83と当接している。
【0053】
ねじ部材81は、弾性部材85の基端側に取り付けられた第二受部材87を軸方向に移動させる荷重調節部材の機能を備えている。図10に示すように、ねじ部材81を回転させて、先端側に移動させると、第二受部材87が先端側に移動し、弾性部材85の軸方向長さが小さくなる。これによって、ピストン61に掛かるバネ荷重が大きくなる。このとき、ナット部材71も回転させて、第二押圧面72が第二受部材87に当接する位置まで先端側に移動させておく。一方、ねじ部材81を、基端側に移動させると、弾性部材85の軸方向長さが大きくなるので、ピストン61に掛かるバネ荷重が小さくなる。
【0054】
次に、前記構成のバニシング加工装置1aを用いてバニシング加工を行う場合の各部の動作を説明しながら実施形態1の作用効果を説明する。
【0055】
(押し加工時)
押し加工時には、図11の(a)に示すように、ワーク2を回転させながら、チップ10を被加工面の奥側面(図11のOリング装着溝3の左側の側面4)に押し付ける。このとき、チップ10は反力を受けて、チップ10およびチップホルダ20とともにピストン61がシリンダ部62に対して右側に相対移動する。すると、ピストン61の第一押圧面64が、弾性部材85の先端側の第一受部材86を右側に押す。このときシリンダ部62は、移動しないので、第一受部材86は第一支持面78から離間する。一方、弾性部材85の基端側の第二受部材87は、第二支持面83にて押えられているので、弾性部材85が縮んで、バネ力が発生する。なお、ナット部材71は、ピストン61とともに右側に移動するので、第二押圧面72は第二受部材87から離間する。発生したバネ力は、第一受部材86を介して第一押圧面64からピストン61に入力され、チップホルダ20を介してチップ10に伝達される。これによって、ワーク2の被加工面に好適な圧力が作用して、所望の表面粗さにバニシング加工を行うことができる。
【0056】
(引き加工時)
引き加工時には、図11の(b)に示すように、ワーク2を回転させながら、チップ10を被加工面の手前側面(図11のOリング装着溝3の右側の側面4)に押し付ける。このとき、チップ10は反力を受けて、チップ10およびチップホルダ20とともにピストン61がシリンダ部62に対して左側に相対移動する。すると、ピストン61の基端部側の第二押圧面72が、弾性部材85の基端側の第二受部材87を左側に押す。このときシリンダ部62は、移動しないので、第二受部材87は第二支持面83から離間する。一方、弾性部材85の先端側の第一受部材86は、第一支持面78にて押えられているので、弾性部材85が縮んで、バネ力が発生する。なお、第一押圧面64は、ピストン61とともに左側に移動するので、第一受部材86から離間する。発生したバネ力は、第二受部材87を介して第二押圧面72からナット部材71に入力され、ピストン61、チップホルダ20を介してチップ10に伝達される。これによって、ワーク2の被加工面に好適な圧力が作用して、所望の表面粗さにバニシング加工を行うことができる。
【0057】
実施形態2に係るバニシング加工装置1aによれば、ピストン61が、シリンダ部62の軸方向両方向に移動可能であるとともに、加圧機構63が、ピストン61の両方向に弾性部材85のバネ力を伝達することができる。したがって、押し加工時と引き加工時の両方においてチップ10を被加工面に付勢することができる。よって、チップ10の押圧方向に関わらず、Oリング装着溝3の両側面4,4を、一つのツールでピストン31の動作方向を変えることなくバニシング加工を行うことができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態1,2について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。たとえば、実施形態1では、転動体38および補助転動体40は、ピストン31の内部に設けられているが、これに限定されるものではなく、ピストンの外部に突出するように設けてもよい。この場合、バネ力をバランスよく伝達するためにピストンの幅方向両側に、転動体を対称形状に設けるのが好ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 バニシング加工装置
1a バニシング加工装置
2 ワーク
4 側面(被加工面)
10 チップ
20 チップホルダ
30 加圧手段
31 ピストン
32 シリンダ部
33 加圧機構
38 転動体
46 プッシャ
47 バネ部材(弾性部材)
51 バネ受部材
52 台座
53 荷重調節ねじ(荷重調節部材)
60 加圧手段
61 ピストン
62 シリンダ部
63 加圧機構
64 第一押圧面
72 第二押圧面
78 第一支持面
83 第二支持面
85 弾性部材
86 第一受部材
87 第二受部材
130 加圧手段
131 ピストン
132 シリンダ部
133 加圧機構
138 転動体
146 プッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11