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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20220509BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H05K13/08 B
B25J13/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018133320
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020013819
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】小峯 正道
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宜紀
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/145228(WO,A1)
【文献】特開2006-253658(JP,A)
【文献】特開2016-025131(JP,A)
【文献】特開2008-258283(JP,A)
【文献】特開2005-123487(JP,A)
【文献】特開2016-066698(JP,A)
【文献】特開2014-027227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給部が供給する部品を吸着し、基板上に運搬して搭載する部品実装装置であって、
各々部品を負圧吸着する複数のヘッドを備えたヘッドユニットと、
各ヘッドに吸着された部品の吸着安定性に関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得する情報に基づき、各ヘッドに吸着された部品に吸着安定性の悪い不安定部品が存在するか否かを判別する判別部と、
各ヘッドにより部品を吸着し、設定速度で移動しながら、定められた搭載ポイントに定められた搭載順序で各ヘッドに吸着された部品を搭載する部品実装動作を実行させるべく前記ヘッドユニットの動作を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、各ヘッドに吸着された部品のなかに不安定部品が存在する場合に、当該不安定部品をその他の部品よりも先に基板上に搭載するとともに、当該部品実装動作において前記不安定部品が搭載されるまでの間、前記設定速度よりも低い速度でかつ前記設定速度に対応する加減速度よりも小さい加減速度で前記ヘッドユニットを移動させる低速運転制御を実行し、さらに、
前記制御部は、各ヘッドによる部品の吸着後、基板上へ部品を搭載する際の前記ヘッドユニットの移動開始地点を基準として、前記不安定部品の搭載ポイントについて当該搭載ポイントよりも移動距離が短くなる代替ポイントの有無を判別し、代替ポイントがある場合には、前記低速運転制御において、前記不安定部品の最初の搭載ポイントを前記代替ポイントに変更する、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装装置において、
前記制御部は、前記不安定部品を含む全ての部品の搭載ポイントを前記ヘッドユニットが最短距離で移動し得るように、前記不安定部品の搭載順序を維持しつつその他の部品の前記搭載順序を変更し、変更後の搭載順序に従って前記低速運転制御を実行する、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部品実装装置において、
前記情報取得部は、負圧を供給するためにヘッド毎に設けられた通路に各々備えられて当該通路内の圧力を検出する圧力センサであり、
前記制御部は、各圧力センサが検出する圧力値に基づき、各ヘッドに吸着された部品が前記不安定部品か否かを判別する、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項に記載の部品実装装置において、
前記情報取得部は、前記ヘッドに吸着された部品を撮像するカメラであり、
前記制御部は、前記カメラが撮像した画像に基づき、各ヘッドに吸着された部品が前記不安定部品か否かを判別する、ことを特徴とする部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を基板上に運搬して搭載(実装)する部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動可能なヘッドにより部品を負圧吸着して運搬し、基板上に搭載する部品実装装置が知られている。この部品実装装置において、ヘッドには、部品吸着用のノズルが備えられており、部品は、負圧によってノズルの先端に吸着される。その場合、部品の吸着位置が定位置からずれていると、吸着安定性が損なわれ、運搬途中にノズルに対して部品が位置ずれを起こして基板への搭載精度が損なわれ、或いは運搬途中に部品が脱落するなどして、基板に対する部品の搭載安定性や搭載精度が損なわれる。
【0003】
このような課題に鑑み、例えば特許文献1には、部品吸着時のノズル内の負圧値(負圧の大きさ)を検出し、その検出値に応じて部品運搬時のヘッドの移動速度を変更する部品実装装置が提案されている。つまり、部品の吸着安定性が損なわれている場合には、負圧のリークによって負圧値が低くなるため、当該検出値が通常よりも低い場合には、ヘッドの移動速度を通常の設定速度よりも低い速度に変更し、これにより、運搬中の部品の位置ずれや脱落を抑制するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-351815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されるような従来の部品実装装置の構成には次のような課題がある。例えば、複数のヘッドを具備するヘッドユニットを備え、当該ヘッドユニットを移動させることにより、複数の部品を同時に運搬するタイプの部品実装装置では、吸着状態が不安定な部品(不安定部品という)が発生しかつ当該不安定部品の搭載順番が例えば最後の場合には、不安定部品の位置ずれや脱落を抑制するために、全部品の搭載が終わるまで常に低い速度でヘッドユニットを移動させる必要がある。このことは、生産効率を著しく低下させることであり、この点に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、複数の部品を吸着して基板上に同時に運搬する部品実装装置において、基板に対する各部品の搭載安定性及び搭載精度を高度に保ちつつ、生産効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る部品実装装置は、部品供給部が供給する部品を吸着し、基板上に運搬して搭載する部品実装装置であって、各々部品を負圧吸着する複数のヘッドを備えたヘッドユニットと、各ヘッドに吸着された部品の吸着安定性に関する情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得する情報に基づき、各ヘッドに吸着された部品に吸着安定性の悪い不安定部品が存在するか否かを判別する判別部と、各ヘッドにより部品を吸着し、設定速度で移動しながら、定められた搭載ポイントに定められた搭載順序で各ヘッドに吸着された部品を搭載する部品実装動作を実行させるべく前記ヘッドユニットの動作を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、各ヘッドに吸着された部品のなかに不安定部品が存在する場合に、当該不安定部品をその他の部品よりも先に基板上に搭載するとともに、当該部品実装動作において前記不安定部品が搭載されるまでの間、前記設定速度よりも低い速度でかつ前記設定速度に対応する加減速度よりも小さい加減速度で前記ヘッドユニットを移動させる低速運転制御を実行し、さらに、前記制御部は、各ヘッドによる部品の吸着後、基板上へ部品を搭載する際の前記ヘッドユニットの移動開始地点を基準として、前記不安定部品の搭載ポイントについて当該搭載ポイントよりも移動距離が短くなる代替ポイントの有無を判別し、代替ポイントがある場合には、前記低速運転制御において、前記不安定部品の最初の搭載ポイントを前記代替ポイントに変更する。
【0008】
この部品実装装置によれば、複数のヘッドに吸着された部品のなかに吸着安定性の悪い不安定部品が含まれていると、不安定部品がその他の部品よりも先に基板上に搭載されるとともに、当該不安定部品を搭載するまでの間だけヘッドユニットが設定速度よりも低い速度でかつ前記設定速度に対応する加減速度よりも小さい加減速度で駆動される。即ち、不安定部品が基板上に搭載された後は、ヘッドユニットの移動速度が設定速度に戻されるとともに加減速度が戻されて、その他の部品が基板上に搭載される。そのため、不安定部品の位置ずれや脱落を抑制しつつ、ヘッドユニットを低速で移動させる期間(低速運転制御の期間)を必要最小限に抑えることができ、その結果、基板に対する各部品の搭載安定性及び搭載精度を高度に保ちつつ、生産効率の低下を抑制することが可能となる。
【0010】
また、前記不安定部品の搭載ポイントについて当該搭載ポイントよりも移動距離が短くなる代替ポイントがある場合には、前記低速運転制御において、前記不安定部品の最初の搭載ポイントが前記代替ポイントに変更され、これにより、低速運転制御の期間が短縮される。そのため、より一層、生産効率の低下を抑制することに寄与するものとなる。
【0011】
上記各態様の部品実装装置において、前記制御部は、前記不安定部品を含む全ての部品の搭載ポイントを前記ヘッドユニットが最短距離で移動し得るように、前記不安定部品の搭載順序を維持しつつその他の部品の前記搭載順序を変更し、変更後の搭載順序に従って前記低速運転制御を実行するものであるのが好適である。
【0012】
この構成によれば、基板上へ部品が搭載される際、不安定部品を含む全ての部品の搭載ポイントをヘッドユニットが最短距離で移動することとなる。そのため、不安定部品をその他の部品よりも先に基板上に搭載するようにすることや、不安定部品の搭載ポイントを代替ポイントに変更することによる弊害、即ち、ヘッドユニットのトータル移動量が増加することが抑制される。
【0013】
上記各態様の部品実装装置において、前記情報取得部は、負圧を供給するためにヘッド毎に設けられた通路に各々備えられて当該通路内の圧力を検出する圧力センサであり、前記制御部は、各圧力センサが検出する圧力値に基づき、各ヘッドに吸着された部品が前記不安定部品か否かを判別するものであるのが好適である。
【0014】
ヘッドの吸着位置ずれにより負圧がリークしている場合には、部品の吸着安定性が悪くなる。そのため、圧力センサにより通路内の圧力を検出して吸着部品が不安定部品か否かを判別する上記構成によれば、不安定部品の有無を的確に判別することが可能となる。
【0015】
また、上記各態様の部品実装装置において、前記情報取得部は、前記ヘッドに吸着された部品を撮像するカメラであり、前記制御部は、前記カメラが撮像した画像に基づき、各ヘッドに吸着された部品が前記不安定部品か否かを判別するものであってもよい。
【0016】
負圧のリークが発生していない場合でも、部品の吸着位置が定位置、例えば重心位置からずれているような場合には吸着安定性が悪くなる。そのため、カメラにより吸着部品を撮像し、その画像に基づき吸着部品が不安定部品か否かを判別する上記構成によれば、そのような不安定部品の有無を的確に判別することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上記の各態様に係る部品実装装置によれば、複数の部品を吸着して基板上に同時に運搬する部品実装装置において、基板に対する各部品の搭載安定性及び搭載精度を高度に保ちつつ、生産効率の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る部品実装装置の平面図である。
図2】部品実装装置の正面図である。
図3】ヘッド(ノズル)に対する負圧及び正圧の供給系統を示す回路図である。
図4】部品実装装置の制御系を示すブロック図である。
図5】部品実装動作の制御を説明するためのフローチャート(第1実施形態)である。
図6】(a)は、ヘッドユニットの移動速度と負圧値との関係を示す図であり、(b)は、ヘッドユニットの移動速度と吸着位置のずれ量との関係を示す図であり、(c)は、ヘッドユニットの動作パターンの一例を示す図である。
図7】部品搭載動作の制御を説明するためのフローチャート(第2実施形態)である。
図8】最適化処理を説明するためのフローチャートである。
図9】最適化処理を説明する概念図であり、(a)は搭載ポイントをしない場合、(b)は、搭載ポイントを変更した場合、(c)は、搭載順序を変更した場合の各々吸着部品の搭載ポイントと搭載順序を示している。
図10】(a)~(c)は、各々第1データを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
[部品実装装置の全体構成]
図1及び図2は、第1実施形態に係る部品実装装置1を示しており、図1は平面図で、図2は正面図で、それぞれ部品実装装置1を示している。
【0021】
部品実装装置1は、基台を有する装置本体2と、装置本体2上においてプリント配線板等の基板PBを搬送する基板搬送部3と、部品供給部5と、装置本体2に移動可能に支持されるヘッドユニット6と、一対の部品認識カメラ7とを備えている。
【0022】
基板搬送部3は、基板PBをX軸方向に搬送する一対のコンベア4を備えている。コンベア4は、いわゆるベルトコンベアであり、図1及び図2の右側(X1方向の側)から基板PBを受け入れて所定の実装作業位置(同図に示す位置)に搬送し、実装作業後、この基板PBを同図の左側(X2方向の側)に搬出する。
【0023】
部品供給部5は、基板搬送部3の前後両側(Y方向の両側)に配置されている。各部品供給部5には、複数のテープフィーダ5aがコンベア4に沿って配置されている。各テープフィーダ5aは、テープを担体(キャリア)として、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の電子部品を供給するものである。なお、部品供給部5には、トレイフィーダやスティックフィーダ等、テープフィーダ以外のフィーダが配置される場合もある。
【0024】
ヘッドユニット6は、各部品供給部5から部品を取り出し、基板PB上に運搬して搭載(実装)するものであり、装置本体2に設けられたヘッドユニット駆動機構によって駆動され、一定の領域内でX方向およびY方向に移動する。
【0025】
ヘッドユニット駆動機構は、高架フレーム上に各々固定されてY方向に延在する一対のレール10と、これらレール10に移動自在に支持されてX方向に延在するユニット支持部材11と、このユニット支持部材11に螺合挿入されてY軸サーボモータ13により駆動されるボールねじ軸12とを含む。また、ヘッドユニット駆動機構は、ユニット支持部材11に固定され、ヘッドユニット6をX方向に移動可能に支持するレール14と、ヘッドユニット6に螺合挿入されてX軸サーボモータ16を駆動源として駆動されるボールねじ軸15とを含む。この構成により、ヘッドユニット駆動機構は、X軸サーボモータ16によりボールねじ軸15を介してヘッドユニット6をX方向に移動させ、また、Y軸サーボモータ13によりボールねじ軸12を介してユニット支持部材11をY方向に移動させる。その結果、ヘッドユニット6が、一定の領域内でX方向およびY方向に移動する。
【0026】
ヘッドユニット6は、複数本の軸状のヘッド20と、これらヘッド20を駆動するヘッド駆動機構とを備えている。当例では、ヘッドユニット6は、X方向に一列に並ぶ、合計4本のヘッド20を備えている。ヘッド駆動機構は、各ヘッド20にそれぞれ対応するZ軸サーボモータ44(図4参照)を具備して各ヘッド20を個別に昇降(Z方向に移動)させる昇降駆動機構と、R軸サーボモータ45(図4参照)を具備して各ヘッド20を同時にヘッド中心軸回り(R方向)に回転させる回転駆動機構とを含む。
【0027】
各ヘッド20は、その先端に部品吸着用のノズル21を備えている。各ヘッド20のノズル21は、図3に示すように、ヘッド20毎に設けられた通路22、バルブ24、25(負圧バルブ24、正圧バルブ25)及び図外のフィルタ等を介して負圧発生部26及び正圧(エア)発生部27に接続されており、バルブ24,25の開閉切換えに応じて負圧又はエアが供給されるようになっている。具体的には、部品吸着時には、負圧バルブ24が開放、正圧バルブ25が閉止されることにより、負圧発生部26から負圧バルブ24を介してノズル21に負圧が供給される。この負圧によりノズル21の先端に部品(C1~C4)が吸着される。一方、基板PBへの部品搭載時には、負圧バルブ24が閉止、正圧バルブ25が開放されることにより、正圧発生部27から正圧バルブ25を介してノズル21の先端にエアが供給される。これにより、ノズル先端の負圧解除が促進されるとともに、このエア圧が背圧となってノズル21からの部品の離脱が促進される。
【0028】
負圧発生部26は、例えば真空ポンプであり一定の圧力値で負圧(例えば-80kPa~-90kPa)を発生させる。正圧発生部27は、エアコンプレッサであり、一定の圧力で正圧(エア)を発生させる。なお、図3では、4つのヘッド20のうち、1つのヘッド20の負圧、正圧の供給系統を示しているが、他のヘッド20の負圧、正圧の供給系統も同様であり、ヘッド毎に負圧、正圧の供給切り替えが可能となっている。
【0029】
各ヘッド20に対応する前記通路22には、各々圧力センサ28(本発明の情報取得部に相当する)が設けられている。圧力センサ28は、ノズル21近傍の通路22内における負圧の大きさを電圧値として検出し後記制御装置30に出力するものである。
【0030】
図1に戻って、前記一対の部品認識カメラ7(本発明の情報取得部に相当する)は、部品供給部5からヘッド20によって取り出された部品の吸着状態を認識するために、当該部品を撮像するものである。部品認識カメラ7は、部品を照明する照明部とCCDラインセンサ等からなるカメラ本体とで構成されており、装置本体2上の部品供給部5の近傍、当例では前後の部品供給部5と基板搬送部3との間に各々上向きに配置されている。即ち、部品実装動作時には、図1中に矢印で示すように、X1方向の側からX2方向の側に、又はX2方向の側からX1方向の側に、ヘッドユニット6がX方向に沿って部品認識カメラ7の上方を移動することで、部品認識カメラ7により各ヘッド20の吸着部品が下方から撮像される。
【0031】
[部品実装装置の制御系の説明]
次に、部品実装装置1の制御系について説明する。図3は、部品実装装置1の制御系を示すブロック図である。同図に示すように、部品実装装置1は制御装置30を有する。
【0032】
制御装置30は、部品実装装置1の動作を統括的に制御する演算処理部32と、この演算処理部32に各々接続される、記憶部34、モータ制御部36、画像処理部38、吸着制御部40及び外部入出力部42とを含む。
【0033】
演算処理部32は、CPU等により構成され、部品を基板PBに実装するために必要な実装プログラムを実行するとともに、その際に必要な各種演算処理を実行するものである。前記実装プログラムの実行により、演算処理部32は、部品供給部5から部品を取り出して基板PB上に搭載する一連の部品実装動作制御を実行するとともに、ヘッド20の吸着部品に後記不安定部品が発生した場合には、後述するような低速運転制御を実行する。この点については後に詳述する。なお、当例では、演算処理部32が本発明の制御部及び判別部に相当する。
【0034】
記憶部34は、演算処理部32が実行する実装プログラムや、実装プログラムを実行するために必要な各種データを記憶するものである。実装プログラムには、部品実装動作制御を実行するために必要な情報、即ち、実装対象となる基板PBに搭載される部品(電子部品)の種類や個数などの部品情報、基板PB上の部品の搭載位置(座標)や搭載順序などの実装情報、及びヘッドユニット6やヘッド20の移動速度などの駆動情報が含まれている。各種データには、後述する不安定部品の判別処理で用いられる各種閾値や、不安定部品を含む場合のヘッドユニット6の移動速度など、低速運転制御を実行するために必要なデータ等が含まれている。なお、実装プログラムには、部品の搭載位置や搭載順序等の実装情報として、基板PBに対する部品実装動作が最も効率良く実行され得るように、所定の最適化アルゴリズムに基づいて設定された情報が含まれている。
【0035】
モータ制御部36は、各モータ13、16、24、25に内蔵された図外のエンコーダから出力される位置情報と、演算処理部32から与えられる情報とに基づいて、各モータ13、17、24、25の作動を制御するものである。即ち、演算処理部32は、モータ制御部36を介してヘッドユニット6や各ヘッド20の作動を制御する。
【0036】
画像処理部38は、部品認識カメラ7からの画像信号を取込み、所定の画像処理を施すものであり、演算処理部32は、画像処理が施された画像データに基づき部品画像の解析処理、例えば後述する不安定部品の判別などの処理を実行する。
【0037】
吸着制御部40は、演算処理部32から与えられる情報に基づいて、負圧発生部26及び正圧発生部27の作動を制御するとともにバルブ24、25の開閉切り替えを制御する。
【0038】
外部入出力部42は、いわゆるインターフェースであって、前記圧力センサ28等、部品実装装置1に設けられる各種センサ類から出力される信号が取り込まれるように構成されている。また、外部入出力部42には、部品実装装置1の作動状態などを表示するための液晶表示装置等から構成される図外の表示部や、部品実装装置1に対して各種情報を入力するためのキーボード等から構成される図外の入力部が接続されている。
【0039】
[部品実装動作の制御について]
次に、演算処理部32(制御装置30)による部品の実装動作制御について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。図5は、演算処理部32による部品実装動作の制御を説明するためのフローチャートである。
【0040】
まず、演算処理部32は、ヘッドユニット6を部品供給部5の上方に移動させ、ヘッド20(ノズル21)に部品を吸着させることにより、部品供給部5から部品を取り出させる(ステップS1、S3)。次いで、演算処理部32は、全部品を吸着したか否か、すなわち全てのヘッド20によって部品を吸着したか否かを判断し、吸着していない場合には、次の部品を吸着すべく、ステップS1に処理をリターンする。
【0041】
全てのヘッド20によって部品が吸着されると(ステップS5でYes)、演算処理部32は、部品認識カメラ7に向かってヘッドユニット6を移動させながら、その間に、圧力センサ28からの出力に基づき、各ヘッド20に対応する通路22内の負圧の圧力値P(以下、負圧値Pという)を検出する(ステップS7)。さらに、演算処理部32は、部品認識カメラ7に対してヘッドユニット6を移動させることにより、各ヘッド20の吸着部品を部品認識カメラ7に撮像させる(ステップS9)。なお、ヘッドユニット6が部品認識カメラ7上方を通過する最中に前記負圧値Pの検出を行うようにしてもよい。
【0042】
続いて、演算処理部32は、ステップS7で取得した各通路22内の負圧値Pのデータと、ステップS8で取得した各吸着部品の画像データとに基づき、各ヘッド20が吸着した部品のなかに、吸着状態が不安定な部品(以下、不安定部品という)が存在するか否かを判別する(ステップS11)。不安定部品か否かの判別は、対象となる部品を吸着しているヘッド20に対応する通路22内の負圧値Pが予め設定されている閾値Pt未満か否かという第1条件と、ヘッド20による部品吸着位置のずれ量、即ち予め定められた吸着位置に対するノズル21のずれ量が閾値Dt以上かという第2条件とに基づき行われ、演算処理部32は、第1、第2条件の少なくとも一方の条件を充足している場合には、対象となる部品は不安定部品であると判別する。
【0043】
不安定部品が存在しない場合(ステップS11でNo)には、演算処理部32は、ヘッドユニット6を実装作業位置の基板PBの上方に移動させ、各ヘッド20の吸着部品のうち、最初に搭載すべき部品を基板PB上に搭載する(ステップS17~19)。ヘッド20に各々吸着された部品の基板PB上の搭載位置や搭載順序、及びその場合のヘッドユニット6の移動速度等は、上記の通り、実装情報及び駆動情報として実装プログラムに含まれており、演算処理部32は、これら実装情報及び駆動情報に従って部品を搭載すべくヘッドユニット6を制御する。
【0044】
一方、不安定部品が存在する場合(ステップS11でYes)には、演算処理部32は、当該不安定部品を基板PBに搭載する際にヘッドユニット6を設定速度よりも低い速度で移動させる低速運転制御を実行すべく、ステップS13、15の処理を実行する。
【0045】
まず、演算処理部32は、不安定部品から優先的に基板PB上に搭載されるように部品の搭載順序を変更する。すなわち、各ヘッド20が現在吸着している4つの部品について、不安定部品がその他の部品よりも先に基板PB上に搭載されるように、部品の搭載順序を、実装情報として設定されている搭載順序から変更する(ステップS13)。
【0046】
なお、不安定部品が複数個存在する場合には、演算処理部32は、各不安定部品の不安定さの度合いを比較し、その度合いが高い不安定部品ほど順番が上位(先)になるように部品の搭載順序を変更する。例えば2つの不安定部品が存在する場合、演算処理部32は、当該部品を吸着しているヘッド20に対応する各通路22内の負圧値Pを比較し、負圧値Pが低い方の通路22に対応する部品の方が不安定さの度合いが高いと判別する。また、演算処理部32は、各不安定部品の吸着位置のずれ量Dを比較し、そのずれ量Dが大きい部品の方が不安定さの度合いが高いと認定する。この場合、例えば演算処理部32は、負圧値Pの比較に基づき不安定さの度合を判別し、負圧値Pの差が一定レベル以内である場合にのみ、吸着位置のずれ量Dに基づき不安定さの度合を判別するようにしてもよい。
【0047】
演算処理部32は、さらにヘッドユニット6の移動速度を、駆動情報として設定されているヘッドユニット6の移動速度(設定速度という)から変更する。具体的には、記憶部34に格納されている速度変更用データに基づき設定速度を、それよりも低い速度に変更する(ステップS15)。
【0048】
記憶部34には、速度変更用データとして、図6(a)に示すような、通路22の負圧値Pとヘッドユニット6の移動速度Vとの関係を規定した第1データと、図6(b)に示すような、部品吸着位置のずれ量Dとヘッドユニット6の移動速度Vとの関係を規定した第2データとが格納されている。
【0049】
図6(a)、(b)の縦軸は速度Vであり、上側に行くほど速度が速いものとされる。図6(a)の横軸は負圧値P、即ち圧力センサ28から電圧値として出力される負圧の大きさを示しており、右側にいくほど負圧が大きい(通路22内の真空度が高い)。図6(b)の横軸はずれ量D、即ち理想的な吸着位置として予め定められている吸着位置(定位置)と実際のノズル21による部品吸着位置との直線距離を示しており、右側にいくほどずれ量Dが大きい。第1データでは、負圧値Pが閾値Pt以上の場合の速度はVとされ、負圧値Pが閾値Pt未満の場合の速度はV(V<V)と規定されている。第2データでは、ずれ量Dが閾値Dt以下の場合の速度はV、ずれ量Dが閾値Dtを越える場合の速度はVと規定されている。速度Vは、駆動情報として予め実装プログラムに含まれているヘッドユニット6の設定速度であり、速度Vは、例えば速度Vの二分の一の速度とされている。
【0050】
つまり、演算処理部32は、ステップS11でYesと判断した場合には、ステップS15の処理において、ヘッドユニット6の移動速度を設定速度Vから速度Vに変更し、この変更後の速度Vに基づきステップS17、S19の処理を実行する。即ち、演算処理部32は、不安定部品を基板PBに搭載する際にヘッドユニット6を設定速度Vよりも低い速度Vで移動させる低速運転制御を実行する。これにより、各ヘッド20の吸着部品のうち、最初に搭載すべき部品、即ち不安定部品が基板PB上に搭載される際には、変更後の速度Vでヘッドユニット6が制御されることとなる。
【0051】
なお、図6(c)は、演算処理部32の制御に基づくヘッドユニット移動時の動作パターンを示しており、実線は、設定速度Vの場合の動作パターンを、破線は、変更後の速度Vの場合の動作パターンを各々示している。図6(c)の縦軸は速度Vであり、横軸は移動距離Lである。各動作パターンは、各々、加速区間As、定速区間Cs及び減速区間Dsを含んでおり、各動作パターンの定速区間Csの距離は同じとされている。よって、ヘッドユニット6の移動速度が設定速度Vから速度Vに変更されるときには、これに伴い、ヘッドユニット6の加速度及び減速度も小さくなる。
【0052】
続いて、演算処理部32は、ステップS11の処理の判別結果がYesであったか否か、すなわち、不安定部品が含まれていたか否かを判別し(ステップS21)、含まれていなかった場合には、さらに、全ての吸着部品が基板PBに搭載されたか否かを判別し(ステップS27)、搭載されていない場合には、ステップS17に処理をリターンする。こうしてステップS17、19、21の処理を繰り返し実行することにより、残りの吸着部品を基板PBに搭載させる。
【0053】
一方、ステップS21の処理でYesの場合には、演算処理部32は、不安定部品の搭載が終了したか否かを判別し(ステップS23)、終了している場合には、演算処理部32は、ステップS15で変更されたヘッドユニット6の移動速度Vを、駆動情報として予め実装プログラムに含まれている設置速度Vにリセットした後、ステップS27に移行する。なお、不安定部品の搭載が終了していない場合(ステップS23でNo)には、演算処理部32は、ステップS15の処理をスキップして処理をステップS27に移行する。即ち、演算処理部32は、ステップS17、19、21の処理を繰り返し実行することにより、残りの吸着部品を基板PBに搭載するのであるが、この際、不安定部品の搭載が終了するまでは、ステップ15での変更後の速度Vでヘッドユニット6を制御し、不安定部品の搭載が終了すると、元の設定速度Vでヘッドユニット6を制御する。
【0054】
こうして全ての吸着部品が基板PBに搭載されると(ステップS27でYes)、部品実装動作の1サイクルが終了し、演算処理部32は、処理をステップS1にリターンする。
【0055】
上述した演算処理部32の制御に基づく部品実装装置1の部品実装動作を概略的に説明すると次の通りである。まず、ヘッドユニット6が部品供給部5上に移動して各ヘッド20により部品を吸着する。次いで、ヘッドユニット6が部品認識カメラ7の上方を経由することにより各ヘッド20の吸着部品が撮像された後、基板PB上にヘッドユニット6が移動し、各吸着部品を搭載する。この部品実装動作の一サイクルにおいて、各ヘッド20が吸着した部品のなかに不安定部品が含まれている場合いは、当該不安定部品がその他の部品よりも先に基板PB上に搭載されるとともに、当該不安定部品が搭載されるまで、設定速度Vよりも低い速度Vでヘッドユニット6が移動する。そして、不安定部品の搭載後、未実装の部品が残っている場合には、ヘッドユニット6の移動速度が速度Vから元の設定速度Vにリセットされ、元の設定速度Vでヘッドユニット6が移動しながら残りの部品を基板PBに搭載することとなる。
【0056】
[作用効果]
上述の通り、この部品実装装置1では、各ヘッド20の吸着部品のなかに不安定部品が存在すると、不安定部品がその他の部品よりも先に基板PBに搭載されるとともに、当該不安定部品を搭載するまでの間だけヘッドユニット6が設定速度Vよりも低い速度Vで駆動される。即ち、不安定部品が基板PB上に搭載された後は、ヘッドユニット6の移動速度が設定速度Vに戻されて、その他の部品が基板PB上に搭載される。そのため、不安定部品の位置ずれや脱落を抑制しながら、ヘッドユニット6を低速で移動させる期間(低速運転制御の期間)を必要最小限に抑えることができる。従って、この部品実装装置1によれば、基板PBに対する各部品の搭載安定性及び搭載精度を高度に保ちつつ、生産効率の低下を抑制することが可能となる。
【0057】
しかも、不安定部品か否かの判別は、各ヘッド20に対応する通路22内の負圧値Pに基づくだけではなく、各吸着部品の画像データから認識される吸着位置のずれ量Dに基づいても行われる。従って、不安定部品か否かの判別の信頼性が高く、この点でも部品の搭載安定性及び搭載精度を高度に保ち得ると言える。即ち、負圧値Pが適正(例えば閾値Pt以上)であっても、ノズル21による部品の吸着位置が定位置(重心位置など)から極端に離れている場合には、ヘッドユニット6の移動速度が速いと部品のバランスが崩れてノズル21から部品が脱落する場合があり、そのような吸着部品は吸着状態が不安定と言える。上記部品実装装置1によれば、負圧値Pが適正であっても部品の吸着位置が定位置から極端に離れているような場合(即ち、ずれ量Dが閾値Dt以上の場合)には、当該吸着部品は不安定部品と判別されるため、そのような吸着部品の運搬中の脱落等が効果的に抑制される。従って、部品の搭載安定性及び搭載精度がより高度に保たれる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態の演算処理部32による部品実装動作の制御を説明するフローチャートである。
【0059】
第2実施形態に係る演算処理部32の制御は、ステップS13とステップS15との間にステップS14の処理が追加されている点で第1実施形態と異なる。それ以外の制御内容は第1実施形態と共通するため、以下の説明では、第1実施形態との相違点(ステップS14の処理)について詳細に説明する。
【0060】
第2実施形態では、ステップS11の処理で不安定部品が存在すると判断すると、演算処理部32は、不安定部品がその他の部品よりも先に基板PB上に搭載されるように、搭載順序を変更し(ステップS13)、その後、さらに所定の最適化処理を実行する(ステップS14)。
【0061】
図8は、ステップS14の最適化処理を説明するフローチャート(サブルーチン)である。この最適化処理では、演算処理部32は、まず不安定部品の搭載ポイント(XY座標で特定される部品の搭載位置)について、ヘッドユニット6の移動距離がより短くなる別の搭載ポイントであって当該不安定部品を搭載可能な搭載ポイント(代替ポイントという)が存在するか否かを判別する(ステップS31)。この場合、演算処理部32は、ヘッドユニット6が部品認識カメラ上方を通過した地点であって、部品搭載のためにヘッドユニット6が移動を開始する地点Sp(移動開始地点Spという/図1参照)を基準として、この移動開始地点Spからのヘッドユニット6の移動距離がより短くなる代替ポイントを探索する。
【0062】
代替ポイントが存在する場合(ステップS31でYes)、演算処理部32は、不安定部品の搭載ポイントを、実装情報として設定されている搭載ポイントから代替ポイントに変更する(ステップS33)。なお、この変更に伴い、元々代替ポイントに搭載される予定であった部品についてもその搭載ポイントが変更される。
【0063】
続いて、演算処理部32は、ステップS13で変更された搭載順序に従った場合のヘッドユニット6の移動距離が最短である否かを判別する(ステップS35)。即ち、第1番目の吸着部品(不安定部品)を搭載してから第4番目の吸着部品を搭載し終えるまでのヘッドユニット6のトータル移動距離が最短であるか否かを判別する。移動距離が最短ではない場合には、演算処理部32は、不安定部品の搭載順序を維持しつつ、ヘッドユニット6のトータル移動距離が最短となるようにその他の吸着部品の搭載順序を変更し(ステップS37)、その後、図7のステップS17に移行する。
【0064】
なお、代替ポイントが存在しないと判断した場合(ステップS31でNo)には、演算処理部32は、ステップS33の処理をスキップして処理をステップS35に移行する。また、移動距離が最短であると判断した場合(ステップS35でYes)には、演算処理部32は、ステップS37の処理をスキップして図7のステップS17に処理を移行する。
【0065】
ここで、上述した最適化処理についてさらに概念図を用いて具体的には説明する。図9(a)~(c)は、上述した最適化処理を説明する概念図である。
【0066】
図9(a)は、吸着部品C1~C4の搭載ポイントP1~P4を示している。この場合の吸着部品C1~C4の搭載順序(ステップ13の並び変え処理後の搭載順序)は図中の矢印に示す通りC1→C2→C3→C4とする。図9(a)では、吸着部品C1が不安定部品である。
【0067】
吸着部品C1(適宜、不安定部品C1という)の搭載ポイントP1について、例えば同図中の符号Pcで示すように、移動開始地点Spを基準としてヘッドユニット6の移動距離が短くなるような代替ポイントが存在する場合、演算処理部32は、図9(b)に示すように、不安定部品C1の搭載ポイントP1を代替ポイントPcに変更する(ステップS33)。
【0068】
この場合、ステップS13で設定された搭載順序(C1→C2→C3→C4)のままで吸着部品C1~C4を搭載するとすれば、図9(b)中の矢印に示すように、ヘッドユニット6は、不安定部品C1の搭載後、一旦、吸着部品C3の搭載ポイントP3を通り過ぎて吸着部品C2を搭載した後、逆方向に戻って吸着部品C3を搭載する必要があり、よって、ヘッドユニット6のトータル移動距離が最短とは言えない。
【0069】
この場合、演算処理部32は、不安定部品C1の搭載順序を維持しつつ、ヘッドユニット6のトータル移動距離が最短となるようにその他の吸着部品C2~C4の搭載順序を変更する(ステップS37)。例えば、演算処理部32は、図9(c)に示すように、C1→C3→C2→C4の順番で吸着部品C1~C4が搭載されるように、吸着部品C2~C4の搭載順序を変更する。
【0070】
このように、第2実施形態では、図5のステップS14の最適化処理により、不安定部品C1の搭載ポイントの変更と、ヘッドユニット6のトータル移動距離が最短となるような搭載順序の変更が行われ、当該変更後の搭載ポイントと搭載順序とに従って吸着部品C1~C4が基板PB上に搭載されるように、ヘッドユニット6の作動が制御される。
【0071】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態によれば、上述の通り、不安定部品(C1)の搭載ポイントP1が代替ポイントPcに変更されることで、不安定部品(C1)を搭載する際の移動開始地点Spから搭載ポイントまでのヘッドユニット6の移動距離がより短くなる。そのため、ヘッドユニット6を低速Vで移動させる期間が短縮される。
【0072】
しかも、第2実施形態によれば、上述の通り、ヘッドユニット6のトータル移動距離が最短となるように吸着部品の搭載順序が変更される。即ち、基板PB上への部品の搭載の際には、不安定部品を含む全ての部品の搭載ポイントをヘッドユニット6が最短距離で移動することとなる。そのため、不安定部品の搭載ポイントP1が代替ポイントPcに変更されることにより、ヘッドユニット6のトータル移動量が増加することが抑制される。
【0073】
従って、第2実施形態によれば、第1実施形態と同等の作用効果を享受しつつ、不安定部品が生じることにより生産効率が低下することを、より高度に抑制することができるという利点がある。
【0074】
[変形例]
以上説明した第1、第2実施形態に係る部品実装装置1は、本発明の部品実装装置の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば以下のような態様を採用することもできる。
【0075】
(1)上記実施形態では、ヘッドユニット6の移動速度を変更する際の前記第1データは、通路22の負圧値Pが閾値Pt未満の場合に、ヘッドユニット6の移動速度を、設定速度Vから一定の速度Vに変更するように規定されたものである(図6(a)参照)。しかし、第1データは、図10(a)~(c)に示すように、負圧値Pが相対的に低い程、移動速度Vが相対的に低くなるように規定されたものであってもよい。図10(a)は、負圧値Pに応じて一定の変化率でリニアに速度Vを変更させるように規定されたものである。図10(b)は、負圧値Pが低い領域では速度Vの変化率が大きく、負圧値Pが高い領域では速度Vの変化率が小さくなるように、負圧値Pに応じて動的に速度Vを変更させるように規定されたものである。図10(c)は、負圧値Pが高い領域では速度Vの変化率が大きく、負圧値Pが低い領域では速度Vの変化率が小さくなるように、負圧値Pに応じて動的に速度Vを変更させるように規定されたものである。
【0076】
例えば、負圧値Pが多少下がっても吸着状態に影響が出ないような部品については、図10(b)に示すような第1データに基づきヘッドユニット6の移動速度Vを変更するようにすれば、生産効率の低下を抑制する上でより有利となる。また、負圧値Pが少しでも下がると吸着状態に影響が出るような部品については、図10(c)に示すような第1データに基づきヘッドユニット6の移動速度Vを変更すれば、部品の搭載安定性及び搭載精度を保つ上でより有利となる。従って、第1データとして予め図10(a)~(c)のようなデータを記憶部34に格納しておき、ステップS15の処理では、演算処理部32が、部品の種類に応じて、第1データを使い分けるようにしてもよい。
【0077】
なお、図示を省略するが、第2データについても同様である。第2データについては、ずれ量Dが相対的に大きい程、移動速度Vが相対的に低くなるように、ヘッドユニット6の移動速度Vと吸着位置のずれ量Dとの関係が規定されたものであってもよい。この場合、第2データとしても、図10(a)~(c)に準じ、ずれ量Dに応じて一定の変化率でリニアに速度Vを変更させるように規定されたもの、ずれ量Dが小さい領域では速度Vの変化率が大きく、ずれ量Dが大きい領域では速度Vの変化率が小さくなるように、ずれ量Dに応じて動的に速度Vを変更させるように規定されたもの、さらに、ずれ量Dが大きい領域では速度Vの変化率が大きく、ずれ量Dが小さい領域では速度Vの変化率が小さくなるように、ずれ量Dに応じて動的に速度Vを変更させるように規定されたものが考えられる。
【0078】
(2)第1実施形態(図5)のステップS13の処理では、演算処理部32は、不安定部品がその他の部品よりも先に基板PB上に搭載されるように吸着部品の搭載順序を変更するが、その際、ヘッドユニット6の移動距離が最短になるように、不安定部品の搭載順序は維持しつつその他の吸着部品の搭載順序を変更するようにしてもよい。即ち、不安定部品を搭載してから最後の吸着部品を搭載し終えるまでのヘッドユニット6のトータル移動距離が最短となるように、搭載順序を変更するようにしてもよい。そのようにすれば、不安定部品がその他の部品よりも先に基板PB上に搭載されるように吸着部品の搭載順序を変更することによる弊害、即ちヘッドユニット6のトータル移動量が増加する、換言すればタクトタイムが長くなるといったことを抑制できるという利点がある。
【0079】
(3)第1、第2実施形態では、各ヘッド20の吸着部品のなかに不安定部品が存在する場合、当該不安定部品が搭載されるまでの間、ヘッドユニット6の移動速度が設定速度Vから速度Vに変更されるが、さらに、不安定部品が基板PB上に搭載される際のヘッド20の移動速度、即ちヘッド20のZ方向及びR方向の移動速度についても、駆動情報として設定された設定速度よりも低い速度に変更するようにしてもよい。この構成によれば、不安定部品を基板PBへ搭載する際のヘッド20の駆動中に当該不安定部品に位置ずれや脱落が生じることが抑制される。従って、部品の搭載安定性及び搭載精度がより高度に保たれる。
【符号の説明】
【0080】
1 部品実装装置
5 部品供給部
6 ヘッドユニット
7 部品認識カメラ(情報取得部)
20 ヘッド
21 ノズル
28 圧力センサ(情報取得部)
30 制御装置
32 演算処理部(制御部、判別部)
34 記憶部
36 モータ制御部
38 画像処理部
40 吸着制御部
C1~C4 部品
P1~P4 搭載ポイント
Pc 代替ポイント
Sp 移動開始地点
設定速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10