(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】半導体デバイスの検査治具及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20220509BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220509BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20220509BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G01R31/26 F
H01L21/66 B
G01R1/073 E
G01R31/26 J
G01R31/28 K
G01R31/28 J
(21)【出願番号】P 2018144577
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003414
【氏名又は名称】東京特殊電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 穂高
(72)【発明者】
【氏名】林 重雄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 聖司
(72)【発明者】
【氏名】長谷 真吾
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-335651(JP,A)
【文献】特開2006-237318(JP,A)
【文献】特開平10-197596(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102830252(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
G01R 31/28
H01L 21/66
G01R 1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子を有する半導体デバイスの電気特性の検査に使用され、前記半導体デバイスの電気特性を検査する電極の対応位置に設けられた複数のプローブを前記電極に接触して前記電気特性を検査する半導体デバイスの検査治具であって、
インピーダンス整合された高周波基板と、前記高周波基板側に設置されて前記プローブの位置を固定する高周波基板側ホルダーと、前記半導体デバイス側に設置されて前記プローブの位置を固定する半導体デバイス側ホルダーとを備え、
前記高周波基板、前記高周波基板側ホルダー及び前記半導体デバイス側ホルダーには、それぞれ、前記受光素子に光を到達させるための穴が設けられており、
少なくとも前記半導体デバイス側ホルダーに設けられた穴には、前記半導体デバイスが有する電極及び/又は回路パターン等の目印に対応した2個以上の切り欠きを有する、ことを特徴とする半導体デバイスの検査治具。
【請求項2】
前記半導体デバイス側ホルダーに設けられた前記穴の大きさは、前記高周波基板及び前記高周波基板側ホルダーに設けられた前記穴よりも小さい、請求項1に記載の半導体デバイスの検査治具。
【請求項3】
前記高周波基板側ホルダーと前記半導体デバイス側ホルダーとは、一定の距離を空けて設置されている、請求項1又は2に記載の半導体デバイスの検査治具。
【請求項4】
受光素子を有する半導体デバイスの電気特性の検査に適用され、前記半導体デバイスの電気特性を検査する電極の対応位置に設けられた複数のプローブを前記電極に接触して前記電気特性を検査する半導体デバイスの検査治具を用いた検査方法であって、
前記検査治具は、インピーダンス整合された高周波基板と、前記高周波基板側に設置されて前記プローブの位置を固定する高周波基板側ホルダーと、前記半導体デバイス側に設置されて前記プローブの位置を固定する半導体デバイス側ホルダーとを備え、前記高周波基板、前記高周波基板側ホルダー及び前記半導体デバイス側ホルダーには、それぞれ、前記受光素子に光を到達させるための穴が設けられており、少なくとも前記半導体デバイス側ホルダーに設けられた穴には、前記半導体デバイスが有する電極及び/又は回路パターン等の目印に対応した2個以上の切り欠きを有し、
前記高周波基板側に撮像装置を配置し、該撮像装置で得た画像を見ながら、前記半導体デバイス上の目印と、前記半導体デバイス側ホルダーに少なくとも設けられた切り欠きとの位置合わせを行い、その位置合わせにより、前記半導体デバイス上の前記電極と前記プローブとを位置合わせする、ことを特徴とする半導体デバイスの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの検査治具及び検査方法に関し、さらに詳しくは、例えばI/O変換の機能を持ち、10GHz以上の信号を送受信し、250μm以下の狭ピッチ電極を備えた半導体デバイス等を検査するための検査治具及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の検査では、半導体基板上の複数のチップ内の集積回路に所定の信号を同時入力させ、このときの出力信号の正常/異常を同時検査することで、一括動作確認を行っている。そのための検査装置としては、例えば特許文献1に記載のアライメント装置が提案されている。このアライメント装置は、プローブシートに設けられているプローブ端子と半導体ウエハに形成されている検査用電極とを正確に位置合わせできるようにした装置である。詳しくは、半導体基板の外周付近に2個の位置合わせマークを形成し、プローブ基板にも2個の位置合わせマークを形成し、これら位置合わせマークの位置をそれぞれ検出して位置ずれ量を測定している。検査基板には、位置合わせマークを検出するために2個の貫通孔が設けられ、その2個の貫通孔の上方にそれぞれ1台のCCDカメラを設置している。各CCDカメラは、検査基板の貫通孔を介して、半導体基板の位置合わせマーク及びプローブ基板の位置合わせマークを1個ずつ撮像し、撮像画像を用いて位置ずれ量を測定し、さらに、測定結果に基づいて基板載置台の位置を調整して、半導体基板の検査用電極とプローブ間の位置合わせと接触を行っている。
【0003】
近年、半導体集積回路の多品種少量生産品に対応する半導体検査装置が要請されている。特許文献2では、特許文献1のような従来型の半導体検査装置をそのまま用いたときの問題(精度、その場観察及び価格に劣る)を解決した小型基板検査装置を提案している。その小型基板検査装置は、小形の半導体基板の集積回路中の検査用電極とプローブとの間の位置あわせ精度・接触精度が高く、処理基板全体の状態をその場で観察しながら検査ができる、安価で小型な基板検査装置であって、集積回路と、集積回路の電極に当接されるプローブ端子が設けられたプローブ基板とを位置合わせするために、プローブ基板を透明にして、集積回路に設けた複数の第1の位置合わせマークとプローブ基板に設けた複数の第2の位置合わせマークとをカメラにより撮像して位置合わせするという技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-164655号公報
【文献】特開2015-82587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の半導体検査装置において、固定された半導体デバイスの電極と検査治具のプローブとの位置合わせは、半導体デバイスの上に検査治具を移動させ、半導体デバイス上の目印(使用していない電極や回路パターンなど)を目視(カメラによる一つの画像)により確認しながら、検査治具側との位置を少しずつ移動(XYZθ方向)させて調整している。
【0006】
ところで、現在の半導体デバイスでは、10GHz以上の高周波信号を送受信するなど、高速化が進んでおり、電気信号を取り出して検査する検査冶具の伝送線路もインピーダンス整合をしなければならない。また、半導体デバイスには、I/O変換機能のための複数の受光素子、発光素子及び電気信号電極を備えたものがあり、そうした半導体デバイスの検査では、受光素子と発光素子との間で光信号の送受信を行っている。また、半導体デバイスの小型化もさらに進んでおり、近年では、サイズは5mm角以下、電極ピッチは250μm以下になっている。
【0007】
このような半導体デバイスを検査する検査治具の位置調整において、検査治具の検査基板には半導体デバイス上の複数の受光素子や発光素子に光信号を送受信するための穴が開いているとともに、インピーダンス整合のために検査基板の片面にグランド層を設けている。
【0008】
しかしながら、特許文献1のアライメント装置では、位置合わせのための貫通穴を開けるスペースがなく、受光素子や発光素子に光信号を送受信することができない。また、特許文献2の半導体検査装置では、透明基板による透過光を観察しながら位置合わせしており、片面にグランド層を有する高周波基板には適用できない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、例えばI/O変換の機能を持ち、10GHz以上の信号を送受信し、250μm以下の狭ピッチ電極を備えた半導体デバイス等を検査するための、半導体デバイスの検査治具及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る半導体デバイスの検査治具は、受光素子を有する半導体デバイスの電気特性の検査に使用され、前記半導体デバイスの電気特性を検査する電極の対応位置に設けられた複数のプローブを前記電極に接触して前記電気特性を検査する検査治具であって、
インピーダンス整合された高周波基板と、前記高周波基板側に設置されて前記プローブの位置を固定する高周波基板側ホルダーと、前記半導体デバイス側に設置されて前記プローブの位置を固定する半導体デバイス側ホルダーとを備え、
前記高周波基板、前記高周波基板側ホルダー及び前記半導体デバイス側ホルダーには、それぞれ、前記受光素子に光を到達させるための穴が設けられており、
少なくとも前記半導体デバイス側ホルダーに設けられた穴には、前記半導体デバイスが有する電極及び/又は回路パターン等の目印に対応した2個以上の切り欠きを有する、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、高周波基板、高周波基板側ホルダー及び半導体デバイス側ホルダーにそれぞれ設けられた穴により、半導体デバイスが備える受光素子に光を到達させることができる。そして、少なくとも半導体デバイス側ホルダーに設けられた穴は2以上の切り欠きを有するので、その切り欠きが半導体デバイスの電極及び/又は回路パターン等の目印に対応することにより、当該検査治具が備えるプローブを、検査のための電極位置に正確に接触させるように位置決めすることができる。
【0012】
本発明に係る半導体デバイスの検査治具において、前記半導体デバイス側ホルダーに設けられた前記穴の大きさは、前記高周波基板及び前記高周波基板側ホルダーに設けられた前記穴よりも小さいことが好ましい。この発明によれば、高周波基板側から、半導体デバイス側のホルダーに設けられた切り欠きが観察し易くなる。
【0013】
本発明に係る半導体デバイスの検査治具において、前記高周波基板側ホルダーと前記半導体デバイス側ホルダーとは、一定の距離を空けて設置されていることが好ましい。この発明によれば、インピーダンス整合のためにプローブの周囲に誘電体を無くすことが好ましく、高周波基板側ホルダーと半導体デバイス側ホルダーとの間を一定の距離とすることにより適当なインピーダンス整合を実現しやすくなる。
【0014】
(2)本発明に係る半導体デバイスの検査方法は、受光素子を有する半導体デバイスの電気特性の検査に適用され、前記半導体デバイスの電気特性を検査する電極の対応位置に設けられた複数のプローブを前記電極に接触して前記電気特性を検査する半導体デバイスの検査治具を用いた検査方法であって、
前記検査治具は、インピーダンス整合された高周波基板と、前記高周波基板側に設置されて前記プローブの位置を固定する高周波基板側ホルダーと、前記半導体デバイス側に設置されて前記プローブの位置を固定する半導体デバイス側ホルダーとを備え、前記高周波基板、前記高周波基板側ホルダー及び前記半導体デバイス側ホルダーには、それぞれ、前記受光素子に光を到達させるための穴が設けられており、少なくとも前記半導体デバイス側ホルダーに設けられた穴には、前記半導体デバイスが有する電極及び/又は回路パターン等の目印に対応した2個以上の切り欠きを有し、
前記高周波基板側に撮像装置を配置し、該撮像装置で得た画像を見ながら、前記半導体デバイス上の目印と、前記半導体デバイス側ホルダーに少なくとも設けられた切り欠きとの位置合わせを行い、その位置合わせにより、前記半導体デバイス上の前記電極と前記プローブとを位置合わせする、ことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、半導体デバイス上の電極と検査治具が備えるプローブとを正確に位置合わせすることができるので、半導体デバイスの電気特性を検査する電極の対応位置に設けられた複数のプローブを電極に接触して半導体デバイスの電気特性を正確に検査することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えばI/O変換の機能を持ち、10GHz以上の信号を送受信し、250μm以下の狭ピッチ電極を備えた半導体デバイス等を検査するための、半導体デバイスの検査治具を提供することができる。この検査治具を使用することにより、1つのカメラ画像を見ながら、半導体デバイス上の目印と半導体デバイス側ホルダーの切り欠きとの位置を容易に合わせることができ、その位置合わせにより、半導体デバイス上の検査用電極と検査治具のプローブとを正確に位置合わせして接触させ、検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る半導体デバイスの検査治具の一例を示す模式図である。
【
図2】ホルダーに設けられるプローブ穴の位置と、切り欠き設けた穴の位置の一例を示す平面図である。
【
図3】切り欠きを有する矩形穴を設けたホルダーの例と、そのホルダーを半導体デバイス上に配置して位置合わせした平面図であり、(A)は矩形穴の一辺に切り欠きを2つ設けた例であり、(B)は矩形穴の二辺に切り欠きをそれぞれ1つ設けた例である。
【
図4】半導体デバイス側ホルダーの一例と、その半導体デバイス側ホルダーを半導体デバイス上に配置して位置合わせする態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る半導体デバイスの検査治具及び検査方法について図面を参照しつつ説明する。本発明はその要旨の範囲で変形又は応用が可能であり、以下の実施形態に限定されない。なお、本発明の「検査治具」は「検査部品」に言い換えてもよい。
【0019】
[半導体デバイスの検査治具]
本発明に係る半導体デバイスの検査治具10(単に「検査治具」ともいう。)は、
図1~
図4に示すように、受光素子52を有する半導体デバイス50の電気特性の検査に使用され、電気特性を検査する電極51の対応位置に設けられた複数のプローブ1を電極51に接触して電気特性を検査する半導体デバイス50の検査治具10であって、インピーダンス整合された高周波基板11と、高周波基板側に設置されてプローブ1の位置を固定する高周波基板側ホルダー12と、半導体デバイス側に設置されてプローブ1の位置を固定する半導体デバイス側ホルダー13とを備えている。高周波基板11、高周波基板側ホルダー12及び半導体デバイス側ホルダー13にはそれぞれ受光素子52に光を到達させるための穴20が設けられており、少なくとも半導体デバイス側ホルダー13に設けられた穴20には、半導体デバイス50が有する電極及び/又は回路パターン等の目印に対応した2個以上の切り欠き21を有している。
【0020】
この検査治具10を用いた半導体デバイスの検査では、
図1に示すように、高周波基板側に撮像装置40を配置し、その撮像装置40で得た画像を見ながら、
図3に示す半導体デバイス上の目印53,54と、半導体デバイス側ホルダー13に少なくとも設けられた切り欠き21との位置合わせを行い、その位置合わせにより、半導体デバイス上の電極(検査用電極)51とプローブ1とを位置合わせする。この位置合わせは半導体デバイスステージ(図示しない)又は検査治具ステージ(図示しない)の一方又は両方を移動して行うことができ、半導体デバイス50の電気特性を検査する電極51の対応位置に設けられた複数のプローブ1を電極に接触して半導体デバイスの電気特性を正確に検査することができる。
【0021】
この検査治具10は、高周波基板11、高周波基板側ホルダー12及び半導体デバイス側ホルダー13にそれぞれ穴20を設け、その穴20により、半導体デバイス50が備える受光素子52に光を到達させて半導体デバイスが備えるI/O変換機能を動作させ又は動作させないで検査することができる。こうした位置合わせは、目視又は撮像装置40で得た画像を見ながら手動又は自動で行うが、少なくとも半導体デバイス側ホルダー13に設けられた穴20には2以上の切り欠き21(
図3参照)が設けられているので、その切り欠き21を半導体デバイス50の目印(電極54、回路パターン53等)に対応させて位置調整する。その結果、検査治具10が備えるプローブ1を、半導体デバイス50の電極51に正確に接触させることができる。本発明に係る検査治具10は、こうした方法での検査を可能にする穴20及び切り欠き21を有する点に特徴がある。
【0022】
以下、各構成要素を詳しく説明する。
【0023】
(半導体デバイス)
半導体デバイス50は、
図1に示すように、本発明に係る検査治具10の検査対象である。この半導体デバイス50は、受光素子52を有するものであれば特に限定されないが、10GHz以上の高周波信号を送受信する高速デバイスである。具体的には、受光素子、発光素子及び電気信号電極等を任意に同一面に有するI/O変換機能を備えたものを好ましく挙げることができる。こうした半導体デバイス50は、10GHz以上の高周波で駆動し、受光素子と発光素子との間で光信号の送受信を行っている。また、小型化もさらに進んでおり、サイズは5mm角以下、電極ピッチは250μm以下、さらに150μm以下の狭ピッチ電極を備えたものに対して好ましく検査できる。
【0024】
一例としては、100Gbpsの光信号を受信し、25Gbpsで4ラインの電気信号で発信する半導体デバイス50を挙げることができる。この半導体デバイス50は、5mm角以下のサイズの受光素子52を複数個備え、同一面に電気信号を発信する電極51を150μmピッチで複数個有しているもの等を例示できる。
【0025】
(高周波基板)
高周波基板11は、
図1に示すように、プローブ1の位置を固定するホルダー14(高周波基板側ホルダー12と半導体デバイス側ホルダー13)に接合して一体化した検査治具10を構成している。高周波基板11は、半導体デバイス50に対して、ホルダー14を挟んだ反対側の位置に設けられている。
【0026】
高周波基板11は、上記半導体デバイス50の検査に使用されるものであり、インピーダンス整合のために、片面(裏面ともいう。)にGND層を有し、他方の面(表面ともいう。)に回路パターンを有した高周波伝送可能な基板である。この高周波基板11は、表面の回路パターンと裏面のGND層との間に絶縁層が設けられている。絶縁層としては、例えば低誘電率のフッ素系絶縁材料(例えばPFA等)を挙げることができ、その厚さは特に限定されない。高周波基板11の回路パターンのピッチも特に限定されないが、近年の小型化・集積化に対応したものとして、例えば250μm以下、さらには150μm以下等を挙げることができる。例えば、回路パターンのピッチが150μmの場合、導体幅が70μmで導体間が80μmで精密配線されるように構成できる。
【0027】
高周波基板11は、表面には回路パターンが高密度配線され、裏面にはGND層が配置されていることから、GND層が設けられた位置には穴が開けられないし、大きな穴や余計な穴を開けるスペースもない。しかし、本発明では、高周波基板11の構造設計により、伝送線路のインピーダンスを保持したまま、
図2~
図4に示すような小さな穴20をあけている。その穴20は、半導体デバイス50が有する受光素子52を含む位置に開けられ、検査器(図示しない)側の光ファイバー(図示しない)から照射される光信号を受光素子で受光することができる。さらに、
図1に示すように、撮像装置40で得た画像を見ながら、
図3に示す半導体デバイス上の目印53,54と、半導体デバイス側ホルダー13に少なくとも設けられた切り欠き21とを、目視又は撮像して位置決め調整することで、半導体デバイス50と検査治具10との位置合わせを行い、半導体デバイス50が備える電極51と、検査治具10が備えるプローブ1とを位置合わせしたうえで接触させることができる。
【0028】
なお、高周波基板11の表面に設けられる回路パターンは、プローブ1と接続される回路パターンと、裏面のGND層とビア(スルーホールの内周にメッキで接続)で接続させているGNDパターンとで構成されている。こうした高周波基板11では、プローブ1に接触する電極付近の回路パターンは幅が細いけれども、その回路パターンの幅を広くするように変化させるとインピーダンスが変化してしまう。そのため、幅が変化した回路パターンには、前記したGNDパターンを沿わせることによりインピーダンスを一定にすることができる。
【0029】
(高周波基板側ホルダー)
高周波基板側ホルダー12は、
図1に示すように、プローブ1の位置を固定するホルダー14(高周波基板側ホルダー12と半導体デバイス側ホルダー13)のうち、高周波基板側に位置するホルダーである。高周波基板側ホルダー12は、半導体デバイス側ホルダー13と一定の距離を空けて設置されている。こうすることにより、適当なインピーダンス整合を実現しやすくなる。なお、高周波基板側ホルダー12は、加工性、絶縁性、誘電率等を考慮して選択された樹脂材料で形成されていればよい。例えば、加工性の観点では、ポリエステル系樹脂等の加工性の良い樹脂を採用でき、低誘電率の観点では、フッ素系樹脂材料等の樹脂を採用でき、インピーダンスへの影響を小さくすることができる。また、反射特性を最少とするために、厚さは薄い方が望ましい。また、インピーダンス整合のために、プローブ1が設けられる位置での高周波基板側ホルダー12と半導体デバイス側ホルダー13との間は、プローブ1の周囲に誘電体を設けないことが好ましい。
【0030】
高周波基板側ホルダー12には、例えば
図2に示すように、プローブ1を挿通させるためのプローブ穴22と、上記した高周波基板11と同様、光信号を送受信させるための穴20とが少なくとも設けられている。穴20への切り欠きは、少なくとも半導体デバイス側ホルダー13には設けられているが、高周波基板側ホルダー12には設けられていなくてもよいし、必要に応じて設けられていてもよい。
【0031】
なお、高周波基板側ホルダー12には、後述する半導体デバイス側ホルダー13と同様の堀り込み部を設けてもよい。こうすることにより、高周波基板側ホルダーを薄くすることができる。
【0032】
(半導体デバイス側ホルダー)
半導体デバイス側ホルダー13は、
図1及び
図4に示すように、プローブ1の位置を固定するホルダー14(高周波基板側ホルダー12と半導体デバイス側ホルダー13)のうち、半導体デバイス側に位置するホルダーである。半導体デバイス側ホルダー13は、適当なインピーダンス整合を実現しやすくするため、高周波基板側ホルダー12と一定の距離を空けて設置されている。例えば、高周波基板側ホルダー12と半導体デバイス側ホルダー13とは、上面からみた形状がロの字形状のプレート15を間に介して固定され、高周波基板側ホルダー12と半導体デバイス側ホルダー13との間の空間16が一定の空間距離を保つように構成されている。この半導体デバイス側ホルダー13も、高周波基板側ホルダー12と同様、加工性、絶縁性、誘電率等を考慮して選択された樹脂材料で形成されていればよい。例えば、加工性の観点では、ポリエステル系樹脂等の加工性の良い樹脂を採用でき、低誘電率の観点では、フッ素系樹脂材料等の樹脂を採用でき、インピーダンスへの影響を小さくすることができる。また、反射特性を最少とするために、厚さは薄い方が望ましい。
【0033】
半導体デバイス側ホルダー13にも、例えば
図2に示すように、プローブ1を挿通させるためのプローブ穴22と、光信号を送受信させるための穴20とが少なくとも設けられている。この半導体デバイス側ホルダー13では、
図2及び
図3に示すように、穴20への切り欠き21が設けられている。切り欠き21は、半導体デバイス上の目印53,54と最も近い位置に配置される半導体デバイス側ホルダー13に、その目印53,54と対応するように設ける。こうすることで、目視確認も容易であるし、撮像装置(カメラ)40の焦点を最も合わせやすく、正確な位置決めを可能とするのに最も有効である。
【0034】
半導体デバイス側ホルダー13に設けられた穴20の大きさは、高周波基板11及び高周波基板側ホルダー12に設けられた穴よりも小さい。こうすることにより、高周波基板側から、半導体デバイス側ホルダー13に設けられた切り欠き21を目視や撮像装置40で観察し易くなる。なお、穴20と切り欠き21については、後で詳しく説明する。
【0035】
半導体デバイス側ホルダー13は、検査治具10に組み込む際に必要な機械的強度が必要であるが、その機械的強度を確保するために、半導体デバイス側ホルダー13の厚さを一定の厚さ(1.15mm以上)とすることが望ましい。しかし、その厚さが厚くなり過ぎると、高周波基板側の撮像装置(カメラ)40から半導体デバイス側ホルダー13の切り欠き21と半導体デバイス上の目印53,54とを撮像する場合、半導体デバイス側ホルダー13の高周波基板側の面と半導体デバイス上の目印53,54との距離が大きくなってしまうので、焦点を双方同時に合わせることができない。そのため、半導体デバイス側ホルダー13の高周波基板側の面を薄くするための掘り込み部18を設けることが好ましい。この堀り込み部18により、前記した距離を短くすることができ、焦点を合わせ易くすることができる。また、半導体デバイス50をはめ込むための半導体デバイス側の面にも掘り込み部17を必要に応じて設けてもよく、中央部分の厚さをさらに薄くすることが可能である。
【0036】
図4の例では、例えば、半導体デバイス側ホルダー13の厚さを1.15mmとし、高周波基板側の面を薄くするための掘り込み部18の深さを0.65mmとし、半導体デバイス50をはめ込むための半導体デバイス側の面の掘り込み部17の深さを0.25mmとした場合、中央部分の厚さを0.25mmと薄くすることができる。なお、半導体デバイス50をはめ込むための掘り込み部17は必須ではなく、必要に応じて設ければよい。半導体デバイス50をはめ込むための半導体デバイス側の面に掘り込み部17を設けない場合は、高周波基板側の面の掘り込み部18を深く(例えば0.9mm)することもできる。また、中央部分の厚さを薄く(例えば0.25mm)することにより、例えば直径0.07μmのプローブ1を挿通させるための穴22(例えば直径0.09mm)の加工を容易にできるという付随効果を奏することができる。こうした例より、位置合わせにおいて、半導体デバイス側ホルダー13の高周波基板側の面と半導体デバイス上の目印53,54との距離を例えば0.55mm程度と距離を短くすることにより焦点を合わせやくなり、目視や撮像しながら検査治具10の位置を微調整し、少しずつ検査治具10を半導体デバイス50に近づけていくことができる。また、半導体デバイス側ホルダー13を薄くすることにより、反射特性も改善することができる。なお、この段落で例示した各寸法は一例であり、特に限定されない。
【0037】
(穴、切り欠き)
穴20は、
図4に示すように、高周波基板11、高周波基板側ホルダー12及び半導体デバイス側ホルダー13にそれぞれ設けられ、受光素子52に光を到達させるとともに、穴20に設けられた切り欠き21と半導体デバイス50に設けられた目印(電極54、回路パターン53等)とを目視又は撮影により観察するために設けられている。切り欠き21は、少なくとも半導体デバイス側ホルダー13に設けられた穴20に設けられており、その位置は、半導体デバイス50が有する目印(電極54、回路パターン53等)に対応して設けられている。
【0038】
切り欠き21と、半導体デバイス50の目印(電極54、回路パターン53等)とを目視又は撮像して位置決め調整することで、半導体デバイス50と検査治具10との位置合わせを行い、半導体デバイス50が備える電極51と、検査治具10が備えるプローブ1とを位置合わせすることができる。切り欠き21で位置を特定するための目印は、
図3(A)(B)に示すように、半導体デバイス50上に存在する電極54や回路パターン53等、穴20から見えるものを任意に利用することができる。切り欠き21は、そうした目印53,54に対して位置決めする
【0039】
穴20の形状は特に限定されず、円形、楕円形、矩形又は略矩形等、任意に設計できる。また、矩形を組み合わせたL字状、コ字状。T字状、くの字状等の穴でもよい。穴20の大きさも特に限定されないが、スペースが制限されている高周波基板11の構造設計を考慮して空けられていることが望ましい。穴20は、高周波基板11、高周波基板側ホルダー12及び半導体デバイス側ホルダー13でいずれも同じ大きさでも良いが、半導体デバイス側ホルダー13に設けられる穴20は、高周波基板11及び高周波基板側ホルダー12に設けられる穴よりも小さいことが好ましい。こうすることにより、高周波基板側から、半導体デバイス側ホルダー13に設けられた切り欠き21が観察し易くなる。
【0040】
切り欠き21の位置は特に限定されないが、穴20が例えば矩形の場合には、
図3(A)(B)に示すように、任意の辺に2カ所又はそれ以上設けることができる。この2カ所以上の切り欠き21は、半導体デバイス上の目印53,54(使用していない電極54や回路パターン53等)に対応するものであり、その目印を高周波基板側から目視又は撮像しながら切り欠き21に一致するように位置合わせする。
【0041】
切り欠き21は2カ所以上であれば特に限定されず、3カ所でも4カ所でもよい。少なくとも2カ所設けることにより、その切り欠き21と目印53,54とを一致させて位置決めすることができる。3カ所、4カ所としてより精度を増すようにすることも可能であるし、穴の形状を矩形の組み合わせ等として、その任意の辺に切り欠き21を設けて、位置決め精度をさらに向上させてもよい。
【0042】
切り欠き21の大きさは特に限定されないが、半導体デバイス50上の電極54や回路パターン53を特定できるだけの大きさであればよい、例えば、半導体デバイス50の電極54が直径50μmである場合は、切り欠き21は直径70μmの半円形状とすることが好ましい。
【0043】
(プローブ)
プローブ1は、
図1及び
図4に示すように、半導体デバイス50の電気特性の検査に適用され、半導体デバイス50の電気特性を検査する電極51に位置決めされたうえで接触し、電気特性を検査する。プローブ1は、既述したように、ホルダー14(高周波基板側ホルダー12と半導体デバイス側ホルダー13)で保持されている。
【0044】
プローブ1は、高周波基板11と半導体デバイス50とを電気的に接続する。高周波基板11の回路パターンとGND層との距離が決められているので、インピーダンス整合させるためには、プローブ1の太さが制限される。例えば、高周波基板11の回路パターンのピッチが250μmの場合は、プローブ1の直径は90~120μm程度であることが好ましい。また、半導体デバイス50が発信する例えば25Gbps(12.5GHz)程度の信号で共振しないように、プローブ1の長さも5mm以下に制限されることが好ましい。
【0045】
プローブ1の構造は特に限定されないが、
図5に示すように、プローブ金属部2とプローブ胴体部3とで構成され、プローブ金属部2のうち、一方のプローブ先端2aは半導体デバイス50の電極51に接触し、他方のプローブ後端2bは高周波基板11の電極に接触又は接合している。なお、プローブ金属部2は、そのたわみを利用して電極51に接触する単線型プローブであってもよいし、中間にスプリング等の弾性部材を介してスプリング等の弾力で両方又は一方の電極に接触する複合型プローブであってもよい。単線型プローブの場合は、プローブ胴体部3には絶縁層が設けられていることが好ましい。複合型プローブの場合は、プローブ胴体部3は導電性又は絶縁性のスリーブで構成され、そのスリーブ内に、先端側プローブ、スプリング等の弾性部材、後端側プローブがその順で配置されている。
【0046】
以上説明した検査治具10により、穴20に設けられた2以上の切り欠き21と、半導体デバイス50の目印(電極54、回路パターン53等)とを位置決めし、検査治具10が備えるプローブ1を、半導体デバイス50が備える検査用電極位置に正確に位置合わせして接触させることができる。
【0047】
[検査方法]
本発明に係る半導体デバイス50の検査方法は、上記した本発明に係る検査治具10で行う検査方法である。詳しくは、受光素子52を有する半導体デバイス50の電気特性の検査に適用され、半導体デバイス50の電気特性を検査する電極51の対応位置に設けられた複数のプローブ1を電極51に接触して電気特性を検査する検査治具10を用いた検査方法である。特に、検査治具10は、インピーダンス整合された高周波基板11と、高周波基板側に設置されてプローブ1の位置を固定する高周波基板側ホルダー12と、半導体デバイス側に設置されてプローブ1の位置を固定する半導体デバイス側ホルダー13とを備え、その高周波基板11、高周波基板側ホルダー12及び半導体デバイス側ホルダー13には、それぞれ、受光素子52に光を到達させるための穴20が設けられており、少なくとも半導体デバイス側ホルダー13に設けられた穴20には、半導体デバイス50が有する電極54及び/又は回路パターン53に対応した2個以上の切り欠き21を有している。こうした検査治具10を用い、
図1に示すように、高周波基板側に撮像装置40を配置し、その撮像装置40で得た画像を見ながら、半導体デバイス上の目印(電極54及び/又は回路パターン53)と、半導体デバイス側ホルダー13に少なくとも設けられた切り欠き21との位置合わせを行い、その位置合わせにより、半導体デバイス上の電極51とプローブ1とを位置合わせする。
【0048】
この検査方法は、上記した検査治具10を用いて、半導体デバイス50上の電極51とプローブ1とを位置合わせすることができるので、半導体デバイス50の電気特性を検査する電極51の対応位置に設けられた複数のプローブ1を電極51に接触して半導体デバイス50の電気特性を正確に検査することができる。
【0049】
なお、撮像装置40は特に限定されず、CCDカメラ等を用いることができる。位置決めのための微調整手段も特に限定されず、XYZθ方向に駆動するステージ等を自動又は手動で動作させることにより行うことができる。なお、こうした微調整手段は、当該分野又は関連分野で通常行われる手段であるので、本願ではその説明を省略する。
【0050】
以上説明したように、本発明に係る半導体デバイスの検査治具10及び検査方法によれば、例えばI/O変換の機能を持ち、10GHz以上の信号を送受信し、250μm以下の狭ピッチ電極を備えた半導体デバイス50等を精度よく検査することができる。この検査治具10を使用することにより、1つのカメラ画像を見ながら、半導体デバイス上の目印53,54と半導体デバイス側ホルダー13の切り欠き21との位置を容易に合わせることができ、その位置合わせにより、半導体デバイス上の検査用電極51と検査治具のプローブ1とを正確に位置合わせをすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 プローブ
2 プローブ金属部
2a プローブ先端
2b プローブ後端
3 プローブ胴体部
10 検査治具
11 高周波基板
12 高周波基板側ホルダー
13 半導体デバイス側ホルダー
14 ホルダー
15 プレート
16 空間
17 半導体デバイス側の掘り込み部
18 高周波基板側ホルダー側の掘り込み部
20 穴
21 切り欠き
22 プローブ穴
40 撮像装置(カメラ)
50 半導体デバイス
51 プローブが接触する電極
52 受光素子(光学素子)
53 目印(回路パターン)
54 目印(電極)
55 基材