(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】半導体冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20220509BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 M
(21)【出願番号】P 2018152824
(22)【出願日】2018-08-15
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219572(JP,A)
【文献】国際公開第2014/045758(WO,A1)
【文献】特開2012-156322(JP,A)
【文献】特開2011-108683(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0108247(US,A1)
【文献】特開2017-092468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の一方の面に配線層を介して半導体素子が搭載される半導体モジュールに接合される半導体冷却装置であり、
前記絶縁基板の他方の面側に接合される放熱基板と、
前記放熱基板における前記絶縁基板側とは反対側の面に設けられた複数のフィンと、
前記フィンの先端に接合され、前記放熱基板の材料より線膨張係数の小さい材料で形成された反り防止板と、
前記放熱基板のフィンが設けられた面側に装着されて、前記放熱基板との間に前記フィンを収容して冷却媒体流通空間を形成したジャケットと、を備え、
前記反り防止板は、基板と、該基板における前記放熱基板側とは反対側の面の少なくとも一部に設けられた突出部と、を備え、
前記突出部の先端が前記ジャケットの内面の一部に当接していることを特徴とする半導体冷却装置。
【請求項2】
前記放熱基板のフィンが設けられた面側に前記ジャケットが装着された際に前記反り防止板の突出部の先端が前記ジャケットの内面の一部に接触することで前記反り防止板の少なくとも一部が変形した状態で前記突出部の先端が前記ジャケットの内面の一部に当接している請求項1に記載の半導体冷却装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記基板を構成する材料とは異なる材料で形成されている請求項1または2に記載の半導体冷却装置。
【請求項4】
前記反り防止板の突出部が、隣り合うフィンとフィンの間の領域に対応した領域に設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【請求項5】
前記反り防止板の突出部は、突条部からなり、該突条部の長さ方向が、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【請求項6】
前記反り防止板の突出部は、相互に離間して配置された複数の突条部からなり、これら複数の突条部の長さ方向が、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載した基板を冷却する半導体冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子は大電力を扱うことが多く、それに伴って発熱量が増大している。このため、半導体素子を実装した基板に冷却器を接合し、この冷却器に放熱して、発生した熱の除去が行われている。放熱に大きなスペースを確保できる定置設備では、強制空冷が可能であるが、限られたスペース内に機器が配置される場合は、液冷式冷却器が用いられる。
【0003】
半導体素子は、セラミック等の絶縁基板上に形成された配線層に搭載され、前記絶縁基板の反対側の面に、アルミニウムや銅の高熱伝導金属からなる冷却器がろう付等により接合される。冷却器としては、放熱板の一方の面に放熱フィンを接合したものがあり、さらに放熱板の前記一方の面側にジャケットを装着してフィンを内蔵した冷却媒体流通空間を形成した液冷式冷却器が知られている。
【0004】
従来、フィンを備えた放熱板と、ジャケット(冷媒流通空間形成用筐体)とが、別部材で構成されている場合には、ジャケットを装着した際にフィンの先端と筐体との間に隙間が生じてしまっていたが、この隙間を流れる冷却媒体と、フィンとの間で殆ど熱交換がなされないために、十分な放熱性能(冷却性能)が得られないという問題があった。
【0005】
そこで、上記のようなフィンの先端とジャケットとの隙間を冷却媒体が通過してしまう問題を解消するために、以下のような構成の冷却器が提案されている。
【0006】
特許文献1では、放熱フィンの先端部と接するように冷媒流動防止部材を設け、フィンの先端とジャケットとの隙間を冷媒が通過してしまうことを防止する構成が提案されている。また、特許文献2では、放熱フィンの先端部を、ジャケットの底壁の内面に設けられた凹部内に配置した構成が提案されている。また、特許文献3では、ジャケットは、放熱フィンの先端部分に対して先端に対向する方向および側方を微小な隙間を介して囲む状態にフィンの先端を受け入れる遊嵌手段を備えた構成とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-110025号公報
【文献】特開2012-4405号公報
【文献】特開2007-165481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような液冷式冷却器を接合した半導体冷却装置において、半導体素子の発熱によって温度が上昇すると、放熱基板の材料である金属の線膨張係数が、絶縁基板の材料であるセラミックの線膨張係数よりも大きいために、膨張しようとする放熱基板が絶縁基板に引っ張られて反りが生じる。放熱基板にこのような反りが生じると、絶縁基板にクラックが生じたり、絶縁基板が剥離することがある。
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、優れた冷却性能が得られると共に放熱基板の反りを防止できる半導体冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]絶縁基板の一方の面に配線層を介して半導体素子が搭載される半導体モジュールに接合される半導体冷却装置であり、
前記絶縁基板の他方の面側に接合される放熱基板と、
前記放熱基板における前記絶縁基板側とは反対側の面に設けられた複数のフィンと、
前記フィンの先端に接合され、前記放熱基板の材料より線膨張係数の小さい材料で形成された反り防止板と、
前記放熱基板のフィンが設けられた面側に装着されて、前記放熱基板との間に前記フィンを収容して冷却媒体流通空間を形成したジャケットと、を備え、
前記反り防止板は、基板と、該基板における前記放熱基板側とは反対側の面の少なくとも一部に設けられた突出部と、を備え、
前記突出部の先端が前記ジャケットの内面の一部に当接していることを特徴とする半導体冷却装置。
【0012】
[2]前記放熱基板のフィンが設けられた面側に前記ジャケットが装着された際に前記反り防止板の突出部の先端が前記ジャケットの内面の一部に接触することで前記反り防止板の少なくとも一部が変形した状態で前記突出部の先端が前記ジャケットの内面の一部に当接している前項1に記載の半導体冷却装置。
【0013】
[3]前記突出部は、前記基板を構成する材料とは異なる材料で形成されている前項1または2に記載の半導体冷却装置。
【0014】
[4]前記反り防止板の突出部が、隣り合うフィンとフィンの間の領域に対応した領域に設けられている前項1~3のいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【0015】
[5]前記反り防止板の突出部は、突条部からなり、該突条部の長さ方向が、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されている前項1~4のいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【0016】
[6]前記反り防止板の突出部は、相互に離間して配置された複数の突条部からなり、これら複数の突条部の長さ方向が、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されている前項1~4のいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、放熱基板における絶縁基板側とは反対側の面に設けられたフィンの先端に、放熱基板の材料より線膨張係数の小さい材料で形成された反り防止板が接合されている。半導体素子の発熱によって絶縁基板および放熱基板の温度が上昇すると、絶縁基板よりも線膨張係数の大きい放熱基板が伸びて反ろうとするが、フィンの先端に接合された反り防止板が放熱基板の伸びを抑制するので、放熱基板の反りを防止できて、絶縁基板のクラック発生や絶縁基板の剥離を防ぐことができ、ろう付け後の冷却での反りも防止できる。また、反り防止板は、基板と、該基板における放熱基板側とは反対側の面の少なくとも一部に設けられた突出部と、を備えてなる構成であるから、反り防止板の突出部の先端がジャケットの内面の一部に十分に当接した状態の半導体冷却装置を提供できる。即ち、反り防止板とジャケットの内面との間の隙間に生じる冷却媒体の流れを阻害できて、冷却性能に優れた半導体冷却装置を提供できる。
【0018】
[2]の発明では、反り防止板の少なくとも一部が変形した状態で突出部の先端がジャケットの内面の一部に当接しており、前記変形に対して反り防止板が変形前の本来の形状に復帰しようとすることで、反り防止板の突出部の先端がジャケットの内面の一部に十分に当接した状態の半導体冷却装置を提供できる。即ち、反り防止板とジャケットの内面との間の隙間に生じる冷却媒体の流れを十分に阻害でき、これにより冷却性能をより向上させることができる。
【0019】
[3]の発明では、突出部を構成する材料と、基板を構成する材料とは、異なる材料であるから、放熱基板の様々な形状に対し、反りをより十分に防止できる。また、異なる材料を用いることにより、反り防止板とジャケット内面との間の隙間に生じる冷却媒体の流れを十分に阻害できる。
【0020】
[4]の発明では、反り防止板の突出部が、隣り合うフィンとフィンの間の領域に対応した領域に設けられているので、放熱基板の反りをより十分に防止できる。
【0021】
[5]の発明では、反り防止板の突出部は、突条部からなり、該突条部の長さ方向が、冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されているから、反り防止板とジャケットの内面との間の隙間に生じる冷却媒体の流れを十分に阻害できて、冷却性能をより一層向上させることができる。
【0022】
[6]の発明では、反り防止板の突出部は、相互に離間して配置された複数の突条部からなり、これら複数の突条部の長さ方向が、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されているから、反り防止板とジャケットの内面との間の隙間に生じる冷却媒体の流れをより十分に阻害できて、冷却性能をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る半導体冷却装置の一実施形態を分解状態で示す斜視図である。
【
図2】
図1の半導体冷却装置の組み立て状態におけるA-A線断面図である。
【
図3】
図1の半導体冷却装置の放熱基板を反り防止板側から見た斜視図である。
【
図4】本発明に係る半導体冷却装置の他の実施形態を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る半導体冷却装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図6】反り防止板のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図6の反り防止板を用いて構成された本発明の半導体冷却装置を示す断面図である。
【
図8】本発明に係る半導体冷却装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の半導体冷却装置1の一実施形態を
図1、2に示す。
図1は、組み立て前の分解状態で示す斜視図であり、
図2は、組み立て後の半導体冷却装置を示す断面図である。
【0025】
前記半導体冷却装置1は、放熱基板10、多数のピン状のフィン11、反り防止板20およびジャケット30を備えている。前記放熱基板10は、平面視略長方形形状の板体で構成されている。通常は、前記放熱基板10は、金属材で形成されている。前記放熱基板10における一方の面(絶縁基板側とは反対側の面)の中央部に多数のフィン11が放熱基板10と一体に立設され、前記放熱基板10における前記フィン11群の周囲がフランジ部12となされている(
図1~3参照)。前記フランジ部12の四つの角部(コーナー部)にジャケット取付用孔13が穿設されている(
図1、3参照)。
【0026】
前記反り防止板20は、平面寸法が前記放熱基板10より小さい大きさの平面視略長方形形状である(
図3参照)。前記反り防止板20は、前記フィン11の先端にろう付けされて前記放熱基板10と平行状に配置されている(
図2、3参照)。前記反り防止板20は、前記放熱基板10を構成する材料より線膨張係数の小さい材料で形成されている。
【0027】
本実施形態では、前記反り防止板20は、基板20aと、該基板20aにおける放熱基板10側とは反対側の面の少なくとも一部に設けられた突出部20bとを備えてなる(
図2、3参照)。前記基板20aは、前記フィン11の先端にろう付け接合された平面視略矩形状の平板からなる。前記突出部20bは、前記基板20aに設けられた突条部からなり、該突条部20bは、前記基板20aの一方の端縁部から対向する他方の端縁部まで延ばされている(
図3参照)。本実施形態では、前記基板20aと前記突出部20bとは一体に形成されている。
【0028】
前記ジャケット30は、前記フィン11群を収容する凹部(収容部)31を有する箱形(天面のない箱形)である(
図1参照)。前記ジャケット30のひとつの側壁に孔33が設けられ、該側壁に対向する側壁に孔34が設けられ、これらの孔33、34は、いずれも前記ジャケット30の収容部31に連通している(
図1、2参照)。前記互いに対向する側壁の各孔33、34に連通してパイプ管からなるジョイント35が取り付けられている。このジョイント35に冷却媒体の導管が接続される。また、前記ジャケット30の上面において、前記凹部(収容部)31の開口縁の近傍にこれを取り囲むように溝36が形成され、この溝36にOリング37が嵌め込まれている。また、前記ジャケット30の上面における前記溝36の外側に4つの雌ねじ部38が形成されている。
【0029】
半導体モジュール2は、絶縁基板40の一方の面に配線層41が接合され、該配線層41に半導体素子42がはんだ層43によって接合されてなる(
図1、2参照)。また、前記絶縁基板40の他方の面に、半導体素子42が発する熱を前記半導体冷却装置1に伝達するための伝熱層44が接合されている。そして、前記半導体モジュール2は、伝熱層44を介して前記半導体冷却装置1の放熱基板10にろう付け接合されている(
図2参照)。
【0030】
前記半導体冷却装置1は、以下のようにして組み立てられて半導体モジュール2に取り付けられる。
【0031】
前記半導体モジュール2が接合された放熱基板10をジャケット30に被せ、凹部31にフィン11群を収容して放熱基板10でジャケット30の(凹部31の)開口部を閉じて、放熱基板10のジャケット取付用孔13をジャケット30の雌ねじ部38に位置合わせを行う。次に、放熱基板10のジャケット取付用孔13にボルト50を挿入し、ジャケット30の雌ねじ部38に止め付ける。これにより、放熱基板10とジャケット30で取り囲まれた冷却媒体流通空間が形成され、Oリング37によって液密構造が形成される。このようにして半導体モジュール2に半導体冷却装置1が接合された液密構造において、前記反り防止板20の突出部(突条部)20bの下面が、前記ジャケット30の底壁の内面に当接して、突出部(突条部)20bの下面とジャケット30の底壁の内面との間の隙間がない状態になっている(隙間が閉塞されている)。また、前記反り防止板20の突出部(突条部)20bの長さ方向の一方の端縁が、前記ジャケット30における一方の側壁(4つの側壁のうちジョイントが取り付けられていない2つの側壁のうちの一方の側壁)の内面に当接すると共に、前記突出部(突条部)20bの長さ方向の他方の端縁が、ジャケット30の他方の側壁(4つの側壁のうちジョイントが取り付けられていない2つの側壁のうちの残りの側壁)の内面に当接している。また、前記反り防止板20の突条部20bの長さ方向は、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されている(
図2参照)。
【0032】
前記半導体モジュール2に接合された半導体冷却装置1において、ジャケット30の一方の側壁の孔33から冷却媒体流通空間に冷却媒体を導入すると、この冷却媒体は、反り防止板20の突出部(突条部)20bの存在により反り防止板20とジャケット30底面との間の隙間を流れることなく(前記隙間を冷却媒体が流れるのを防止できて)、前記冷却媒体流通空間のフィン11群の間の空間を通過して熱交換を行って、対向する他方の側壁の孔34から排出される(
図2参照)から、優れた冷却性能が得られる。
【0033】
即ち、前記半導体モジュール2に接合された半導体冷却装置1において、半導体素子42が発する熱は、配線層41、絶縁基板40、伝熱層44、放熱基板10、フィン11に伝達され、フィン11から冷却媒体に排熱されるのであるが、このとき、冷却媒体は、反り防止板20の突出部(突条部)20bの存在により反り防止板20とジャケット30底面との間の隙間を流れることがないから(前記隙間を冷却媒体が流れるのを防止できるから)、優れた冷却性能が得られる(
図2参照)。
【0034】
前記放熱基板10の線膨張係数は前記絶縁基板40の線膨張係数よりも大きく、前記反り防止板20の線膨張係数は前記放熱基板10の線膨張係数よりも小さい。即ち、放熱基板10の両側に放熱基板10よりも線膨張率の小さい絶縁基板40と反り防止板20が配置されている。半導体素子42の発熱によって絶縁基板40および放熱基板10の温度が上昇すると、線膨張係数の大きい放熱基板10が絶縁基板40よりも伸びて反ろうとするが、反対側に配置された反り防止板20が放熱基板10の伸びを抑制する。その結果、放熱基板10の反りが抑制され、絶縁基板40でのクラック発生や絶縁基板の剥離を防止でき、ろう付け後の冷却での反りも防止できる。
【0035】
図5に、本発明に係る半導体冷却装置1の他の実施形態を示す。この実施形態では、前記反り防止板20は、基板20aと、該基板20aにおける放熱基板10側とは反対側の面の一部に形成された突条部20bとを備えてなり、前記基板20aと前記突出部20bとは一体に形成されており、前記突出部20bの先端は、前記基板20aの表面(下面)よりも突出している。このように基板20aと突出部20bとが一体に形成されてなる反り防止板20は、前記放熱基板10の構成材料よりも線膨張係数の小さい材料で形成されている。前記反り防止板20の基板20aにおける前記突出部20bの突出側とは反対側の面(上面)が、前記フィン11の先端にろう付け接合されている。前記突条部20bは、前記基板20aの一方の端縁部から対向する他方の端縁部まで延ばされている。また、前記反り防止板20の突条部20bの長さ方向は、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されている(
図5参照)。しかして、前記放熱基板10のフィン11が設けられた面側に前記ジャケット30が装着された際に前記反り防止板20の突出部20Bの先端が前記ジャケット30の内面(底面)の一部に接触することで前記反り防止板20の突出部20Bおよびその近傍部が特に内方側に(冷却媒体流通空間側に)少し変形した状態で突出部20bの先端がジャケット30の内面(底面)の一部に当接している。前記変形に対して反り防止板20が変形前の本来の形状に復帰しようとすることで反り防止板20の突出部20bの先端がジャケット30の内面(底面)の一部に十分に当接した(接触した)状態になるので、反り防止板20とジャケット30の内面との間の隙間に生じ得る冷却媒体の流れを十分に阻止できて、優れた冷却性能が得られる。
【0036】
図7に、本発明に係る半導体冷却装置1のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、前記反り防止板20は、波板からなり(
図6参照)、即ち基板20aと、該基板20aにおける放熱基板10側とは反対側の面の一部に形成された複数条の突条部20bとを備えてなり、前記基板20aと前記突出部20bとは一体に形成されていて、前記突出部20bの先端は、前記基板20aの表面(下面)よりも突出している。このように基板20aと突出部20bとが一体に形成されてなる波板形状の反り防止板20は、前記放熱基板10の構成材料よりも線膨張係数の小さい材料で形成されている。前記反り防止板20の基板20aにおける前記突出部20bの突出側とは反対側の面(上面)が、前記フィン11の先端にろう付け接合されている(
図7参照)。前記突条部20bは、前記基板20aの一方の端縁部から対向する他方の端縁部まで延ばされている(
図6参照)。また、前記反り防止板20の複数の突条部20bの長さ方向は、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されている(
図7参照)。しかして、前記放熱基板10のフィン11が設けられた面側に前記ジャケット30が装着された際に前記反り防止板20の突出部20Bの先端が前記ジャケット30の内面(底面)の一部に接触することで前記反り防止板20の突出部20Bおよびその近傍部が特に内方側に(冷却媒体流通空間側に)少し変形した状態で突出部20bの先端がジャケット30の内面(底面)の一部に当接している。前記変形に対して反り防止板20が変形前の本来の形状に復帰しようとすることで反り防止板20の突出部20bの先端がジャケット30の内面の一部に十分に当接した状態になるので、反り防止板20とジャケット30の内面との間の隙間に生じ得る冷却媒体の流れを十分に阻止できて、優れた冷却性能が得られる。
【0037】
図8に、本発明に係る半導体冷却装置1のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、前記反り防止板20は、基板20aと、該基板20aにおける放熱基板10側とは反対側の面の一部に形成された2条の突条部20bとを備えてなり、前記基板20aと前記突条部20bとは一体に形成されており、前記突条部20bの先端は、前記基板20aの表面(下面)よりも突出している。前記反り防止板の突条部20bは、いずれも、隣り合うフィン11とフィン11の間の領域に対応した領域に設けられている(
図8参照)。このように基板20aと突出部20bとが一体に形成されてなる反り防止板20は、前記放熱基板10の構成材料よりも線膨張係数の小さい材料で形成されている。前記反り防止板20の基板20aにおける前記突出部20bの突出側とは反対側の面(上面)が、前記フィン11の先端にろう付け接合されている。前記突条部20bは、前記基板20aの一方の端縁部から対向する他方の端縁部まで延ばされている。また、前記反り防止板20の突条部20bの長さ方向は、前記冷却媒体流通空間における冷却媒体の流れ方向に対して略直交するように配置されている(
図8参照)。しかして、前記放熱基板10のフィン11が設けられた面側に前記ジャケット30が装着された際に前記反り防止板20の突出部20Bの先端が前記ジャケット30の内面(底面)の一部に接触することで前記反り防止板20の突出部20Bおよびその近傍部が特に内方側に(冷却媒体流通空間側に)少し変形した状態で突出部20bの先端がジャケット30の内面(底面)の一部に当接している。前記変形に対して反り防止板20が変形前の本来の形状に復帰しようとすることで反り防止板20の突出部20bの先端がジャケット30の内面(底面)の一部に十分に当接した(接触した)状態になるので、反り防止板20とジャケット30の内面との間の隙間に生じ得る冷却媒体の流れを十分に阻止できて、優れた冷却性能が得られる。
【0038】
本発明において、放熱基板10とフィン11は、一体成形物であってもよいし、相互に接合されてなる接合物であってもよい。
【0039】
前記放熱基板10を構成する材料としては、純アルミニウム、アルミニウム合金、純銅、銅合金などの高熱伝導性材料が好ましい。これらの金属の線膨張係数は、後述する絶縁基板40を構成する材料の線膨張係数よりも大きい。
【0040】
前記フィン11の形状は、図示例の横断面円形のピン形状(
図3参照)に特に限定されるものではなく、例えば、横断面菱形のピン形状であってもよいし、或いは冷却媒体の流れを阻害しない方向に延ばされた略板状のストレートフィンであってもよい。前記フィン11は、熱、温度変化、冷却媒体等の影響により変形するものでない、又は変形し難いものであるのが好ましい。フィン11が変形すると、反り防止板20による放熱基板10の反り防止効果が低下するため、フィン11は高剛性材で形成されているのが好ましい。このような高剛性のフィン11としては、特に限定されるものではないが、例えば、ピンフィン、角柱フィン、菱形フィンと呼ばれる支柱形状のフィンが挙げられ、略板状のフィンでは高さ15mm以下、板厚0.2mm以上で隣り合うフィン間の隙間(離間間隔)が2mm以下に設定されたものが挙げられる。
【0041】
前記フィン11を構成する材料としては、純アルミニウム、アルミニウム合金、純銅、銅合金等の高熱伝導性材料が好ましい。
【0042】
前記反り防止板20を構成する材料としては、前記放熱基板10の構成材料よりも線膨張係数の小さい材料を用いる。純アルミニウムよりも線膨張係数が小さい材料を用いるのが好ましく、例えば、AlN、SiN、アルミニウムめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板の他、これらの複合材等を例示できる。
【0043】
前記反り防止板20の厚さは、0.2mm~5mmであるのが好ましく、中でも0.2mm~2mmであるのが特に好ましい。
【0044】
上記実施形態(
図2)では、反り防止板20を構成する基板20aと突出部20bとは、一体に形成されていたが、反り防止板20は、例えば、別部材である基板20aと突出部20bとが接合されてなる構成であってもよい(
図4参照)。このような別部材の構成としては、例えば、前記放熱基板10の構成材料よりも線膨張係数の小さい材料で形成された基板20aと、該基板20aにおける前記放熱基板10側とは反対側の面の少なくとも一部に接合された突出部20bとを備えた構成であって、前記突出部20bが、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、SUS、樹脂又はゴム等からなる構成が挙げられる。
【0045】
前記ジャケット30を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、純アルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム複合材、樹脂等が挙げられる。なお、放熱基板10とジャケット30で形成される液密構造は、特に限定されず、例えば、上記実施形態のようなボルト50等を用いたものであってもよいし、その他の液密構造としてもよい。
【0046】
なお、前記絶縁基板40を構成する材料は、電気絶縁性に優れていると共に、熱伝導性が良くて放熱性に優れている材料であるのが好ましく、このような好適材料として、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素等のセラミックを例示できる。
【0047】
前記配線層41および前記伝熱層44を構成する材料としては、導電性に優れかつ熱伝導性に優れた材料を用いるのが好ましく、このような好適材料として、純アルミニウム、アルミニウム合金、純銅、銅合金等を例示できる。
【0048】
なお、上記実施形態では、半導体モジュール2の絶縁基板40と、半導体冷却装置1の放熱基板10とが伝熱層44を介して接合されていたが、このような伝熱層を介さずに絶縁基板40と放熱基板10とが直接に接合された構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る半導体冷却装置は、例えば、発熱量の大きい半導体素子の冷却装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0050】
1…半導体冷却装置
2…半導体モジュール
10…放熱基板
11…フィン
20…反り防止板
20a…基板
20b…突出部
30…ジャケット
40…絶縁基板
41…配線層
42…半導体素子