(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
G02B6/44 366
(21)【出願番号】P 2018211366
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2020-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真之介
(72)【発明者】
【氏名】伊佐地 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】富川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136376(JP,A)
【文献】特開平09-166733(JP,A)
【文献】特開平10-170779(JP,A)
【文献】特開2001-051169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0370026(US,A1)
【文献】特開2015-129837(JP,A)
【文献】特開2012-083418(JP,A)
【文献】特開2014-139609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0072886(US,A1)
【文献】特開2002-107589(JP,A)
【文献】特開平11-038284(JP,A)
【文献】米国特許第07382955(US,B1)
【文献】国際公開第2018/174004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバをそれぞれ有する複数の光ファイバユニットと、
前記複数の光ファイバユニットを包む押さえ巻きと、
前記押さえ巻きの内側に配置された介在物と、
前記押さえ巻きを被覆するシースと、を備え、
前記複数の光ファイバユニット
には、最外層に位置する複数の外側ユニット
と、前記外側ユニットの径方向内側に位置する内側ユニットと、が含まれ、
前記外側ユニットは、ケーブル中心軸を中心としてSZ状に撚り合わされ、
前記外側ユニットの径方向内側の端部と前記ケーブル中心軸との間の距離をr
1とし、
前記外側ユニットの径方向外側の端部と前記ケーブル中心軸との間の距離をr
2とし、
前記介在物のうち、前記ケーブル中心軸からの距離がr
1以上r
2以下の範囲にある部分の断面積の合計値をSとするとき、
D=S÷(π×r
2
2-π×r
1
2)により表される外層介在密度Dが
、0.05≦D<0.10の範囲内であり、
前記介在物の一部が前記押さえ巻きに接している、光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記介在物は、繊維状の材質により形成され、吸水性を有している、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記介在物は、前記複数の外側ユニットとともに、前記ケーブル中心軸を中心としてSZ状に撚り合わされている、請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバユニットの周囲に介在物を配置した光ファイバケーブルが用いられている。
例えば特許文献1の光ファイバケーブルでは、複数のテープ心線を積層し、その周囲にユニット被覆層を設けることで光ファイバユニットを形成している。当該光ファイバユニットの周囲に介在物を設けることで、光ファイバケーブルの形状を円形にしやすくしている。
また、特許文献2の光ファイバケーブルでは、光ファイバユニット同士の間に挟まれるように介在物を配置することで、光ファイバケーブル内における光ファイバユニットの移動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-51169号公報
【文献】特許第6255120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光ファイバケーブルでは、光ファイバユニットをSZ状に撚り合わせる場合がある。ここで、光ファイバユニットをSZ状に撚り合わせると、撚りが解消される方向に光ファイバユニットが移動する「撚り戻り」が生じる。従来の光ファイバケーブルでは、撚り戻りの抑制が不十分な場合があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、撚り戻りを抑制した光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る光ファイバケーブルは、複数の光ファイバをそれぞれ有する複数の光ファイバユニットと、前記複数の光ファイバユニットを包む押さえ巻きと、前記押さえ巻きの内側に配置された介在物と、前記押さえ巻きを被覆するシースと、を備え、前記複数の光ファイバユニットのうち最外層に位置する複数の外側ユニットは、ケーブル中心軸を中心としてSZ状に撚り合わされ、前記外側ユニットの径方向内側の端部と前記ケーブル中心軸との間の距離をr1とし、前記外側ユニットの径方向外側の端部と前記ケーブル中心軸との間の距離をr2とし、前記介在物のうち、前記ケーブル中心軸からの距離がr1以上r2以下の範囲にある部分の断面積の合計値をSとするとき、D=S÷(π×r2
2-π×r1
2)により表される外層介在密度Dが0.05以上0.20以下であり、前記介在物の一部が前記押さえ巻きに接している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、撚り戻りを抑制した光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図である。
【
図2】
図1の光ファイバケーブルにおいて、各部の寸法を説明するための概略図である。
【
図3】本実施形態の変形例に係る光ファイバケーブルの断面図である。
【
図4】本実施形態の他の変形例に係る光ファイバケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の光ファイバケーブルについて図面に基づいて説明する。
図1に示すように、光ファイバケーブル100は、複数の光ファイバユニット10を有するコア20と、コア20を内部に収容するシース55と、シース55に埋設された一対の抗張力体56(テンションメンバ)および一対の線条体57と、を備えている。コア20は、複数の光ファイバユニット10を包む押さえ巻き54を有している。
【0010】
(方向定義)
本実施形態では、光ファイバケーブル100の中心軸線をケーブル中心軸Oという。また、光ファイバケーブル100の長手方向(光ファイバユニット10の長手方向)を単に長手方向という。長手方向に直交する断面(ケーブル中心軸Oに直交する断面)を横断面という。横断面視(
図1)において、ケーブル中心軸Oに交差する方向を径方向といい、ケーブル中心軸O周りに周回する方向を周方向という。
なお、横断面視において、光ファイバケーブル100が非円形である場合には、光ファイバケーブル100の図心にケーブル中心軸Oが位置する。
【0011】
シース55は、ケーブル中心軸Oを中心とした円筒状に形成されている。シース55の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレン共重合体(EP)などのポリオレフィン(PO)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)などを用いることができる。
【0012】
線条体57の材質としては、PPやナイロン製の円柱状ロッドなどを用いることができる。また、PPやポリエステルなどの繊維を撚り合わせた糸(ヤーン)により線条体57を形成し、線条体57に吸水性を持たせてもよい。
一対の線条体57は、コア20を径方向で挟むように配置されている。各線条体57は、コア20の外周面(押さえ巻き54の外周面)に接している。なお、シース55に埋設される線条体57の数は、1または3以上であってもよい。
【0013】
抗張力体56の材質としては、例えば金属線(鋼線など)、抗張力繊維(アラミド繊維など)、およびFRPなどを用いることができる。
一対の抗張力体56は、コア20を径方向で挟んで配置されている。また、一対の抗張力体56は、コア20から径方向に間隔をあけて配置されている。なお、シース55に埋設される抗張力体56の数は、1または3以上であってもよい。また、抗張力体56をシース55に埋設しなくてもよい。
【0014】
シース55の外周面には、長手方向に沿って延びる一対の突起58が形成されている。突起58と線条体57とは、周方向において同等の位置に配置されている。なお、突起58は、線条体57を取り出すためにシース55を切開する際の目印となる。突起58に代えて、例えばシース55の一部の色を他の部位と異ならせることで、線条体57の位置を示す目印を設けてもよい。
【0015】
コア20は、複数の光ファイバユニット10と、複数の介在物3a~3dと、光ファイバユニット10および介在物3a~3dを包む押さえ巻き54と、を備えている。光ファイバユニット10はそれぞれ、複数の光ファイバ心線若しくは光ファイバ素線(以下、単に光ファイバ1という)と、光ファイバ1を束ねる結束材2と、を有している。光ファイバユニット10および介在物3a~3dは、長手方向に沿って延びている。
【0016】
本実施形態の光ファイバユニット10は、いわゆる間欠接着型テープ心線であり、複数の光ファイバ1を長手方向に直交する方向に引っ張ると、網目状(蜘蛛の巣状)に広がるように互いに接着されている。詳しくは、ある一つの光ファイバ1が、その両隣の光ファイバ1に対して長手方向で異なる位置においてそれぞれ接着されており、かつ、隣接する光ファイバ1同士は、長手方向で一定の間隔をあけて互いに接着されている。
なお、光ファイバユニット10の態様は間欠接着型テープ心線に限られず、適宜変更してもよい。例えば、光ファイバユニット10は、複数の光ファイバ1を単に結束材2で束ねたものであってもよい。
【0017】
図1に示すように、光ファイバユニット10は、径方向内側の層および径方向外側の層の二層に分けられて配置されている。本明細書では、最外層に位置する光ファイバユニット10を外側ユニット10Aという。また、外側ユニット10Aの径方向内側に位置する光ファイバユニット10を内側ユニット10Bという。
図1の例では、3つの内側ユニット10Bが、ケーブル中心軸Oを中心として、互いにSZ状または螺旋状に撚り合わされている。また、9つの外側ユニット10Aが、3つの内側ユニット10Bを囲むように、ケーブル中心軸Oを中心としてSZ状に撚り合わされている。なお、光ファイバユニット10の数は適宜変更可能である。
【0018】
横断面視において、内層に位置する内側ユニット10Bは扇形に形成され、最外層に位置する外側ユニット10Aは四角形に形成されている。なお、図示の例に限られず、断面が円形、楕円形、若しくは多角形の光ファイバユニット10を用いても良い。また、光ファイバユニット10の断面形状が崩れていてもよい。また、内側ユニット10Bが無く、1つの層(外側ユニット10Aの層)でコア20が構成されていてもよい。
【0019】
結束材2は、細長い紐状であり、複数の光ファイバ1の周囲に巻き付けられている。光ファイバ1は、部分的に結束材2の隙間から露出している。このため、シース55を切開して押さえ巻き54を除去すると、結束材2の隙間から、光ファイバ1を視認可能となっている。結束材2は、薄く可撓性に富む樹脂などの材質により形成されている。このため、光ファイバ1は、結束材2で束ねられた状態であっても、この結束材2を変形させながらシース55内の空いている空間に適宜移動する。従って、実際の製品における光ファイバユニット10の断面形状は、
図1のように整っていない場合がある。
【0020】
押さえ巻き54は、ケーブル中心軸Oを中心とした円筒状に形成されている。押さえ巻き54の内周面は、外側ユニット10Aの径方向外側の端部に接している。また、押さえ巻き54の内周面は、介在物3aに接している。押さえ巻き54としては、不織布やプラスチック製のテープ部材などを用いることができる。押さえ巻き54は、例えば吸水テープなどの吸水性を有する材質により形成されていてもよい。
【0021】
介在物3a~3dは、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などからなる繊維状の材質により形成されている。なお、介在物3a~3dは、吸水性を有するヤーンなどであってもよい。この場合、光ファイバケーブル100の内部の防水性能を高めることができる。
【0022】
横断面視において、介在物3aは、周方向で隣り合う外側ユニット10A同士の間に挟まれ、かつ押さえ巻き54の内周面に接している。介在物3bは、周方向で隣り合う外側ユニット10A同士の間に挟まれているが、押さえ巻き54には接していない。介在物3a、3bは、外側ユニット10Aとともに、ケーブル中心軸Oを中心としてSZ状に撚り合わされている。
【0023】
介在物3cは、周方向で隣り合う内側ユニット10B同士の間に挟まれている。介在物3cは、介在物3a、3bよりも径方向内側に位置しており、押さえ巻き54の内周面に接していない。介在物3cは、内側ユニット10Bとともに、ケーブル中心軸Oを中心として、SZ状または螺旋状に撚り合わされている。なお、介在物3cは配置されていなくてもよい。
【0024】
介在物3dは、光ファイバケーブル100の中心部に位置している。
図1の例では、ケーブル中心軸Oと同軸上に1本の介在物3dが配置されている。ただし、
図3に示すように、光ファイバケーブル100の中心部に複数の介在物3dを配置してもよい。また、介在物3dはケーブル中心軸Oと同軸上に位置していなくてもよい。介在物3dは、内側ユニット10Bとともに、ケーブル中心軸Oを中心として、SZ状または裸線状に撚り合わされていてもよい。あるいは、介在物3dは内側ユニット10Bとともに撚り合わされていなくてもよい。また、介在物3dは配置されていなくてもよい。
【0025】
介在物3a、3bは、外側ユニット10Aに接している。介在物3c、3dは、内側ユニット10Bに接している。ここで、結束材2は細長い紐状であり、例えば螺旋状に光ファイバ1の束に巻かれている。このため、光ファイバ1のうち、紐状の結束材2に覆われていない部分は、部分的に介在物3a~3dに接触する。
【0026】
光ファイバ1は通常、ガラスにより形成された光ファイバ裸線の周囲に、樹脂などの被覆材がコーティングされた構造となっている。このため、光ファイバ1の表面は平滑であり、光ファイバ1同士が接触した際の摩擦係数は比較的小さい。これに対して、介在物3a~3dは繊維状の材質により形成されている。このため、介在物3a~3dと光ファイバ1とが接触した際の摩擦係数は、光ファイバ1同士が接触した際の摩擦係数よりも大きい。
【0027】
以上のことから、複数の光ファイバユニット10に挟まれるように介在物3a~3dを配置することで、これら光ファイバユニット10同士が相対移動する際の摩擦抵抗を大きくすることができる。これにより、光ファイバケーブル100内における光ファイバユニット10の移動を抑制することが可能となる。
【0028】
ところで、本実施形態では、外側ユニット10AがSZ状に撚り合わされている。これにより、光ファイバケーブル100が曲げられたときに、外側ユニット10Aに含まれる光ファイバ1に張力が作用することを抑制しつつ、中間後分岐の作業性を向上させることができる。
一方で、外側ユニット10AをSZ状に撚り合わせた場合には、外側ユニット10Aの撚り戻りを抑制することが課題となる。また、光ファイバケーブル100に圧縮力が作用した際に、外側ユニット10Aに作用する側圧を抑制することも求められている。
【0029】
そこで本実施形態では、外側ユニット10A同士の間に配置する介在物3a、3bの量を最適化している。以下、具体的な実施例を用いて説明する。
【0030】
(介在物の位置)
まず、介在物3a、3bを外側ユニット10A同士の間に配置することの効果を確認した結果を説明する。ここでは、表1に示す8つの光ファイバケーブル(実施例1~4、比較例1~4)を作成した。なお、実施例1~4および比較例1~4では、介在物3a~3dとして、吸水性のヤーンを用いている。
【0031】
【0032】
(実施例1)
実施例1の光ファイバケーブルでは、1つの光ファイバユニット10に含まれる光ファイバ1の数は、144本とした。3本の内側ユニット10BをSZ状に撚り合わせ、その外周に9本の外側ユニット10AをSZ状に撚り合わせた。すなわち、光ファイバユニット10の数は合計で12であり、光ファイバ1の数は合計で1728である。介在物3aを8本設けたが、介在物3b~3dは設けなかった。介在物3aは、外側ユニット10A同士の間に、それぞれ1本ずつ配置した。
【0033】
光ファイバユニット10は、撚り合わせ装置(オシレータ)の設定角度を±400°として撚り合わせた。なお、「設定角度」とは、オシレータを揺動させる角度の範囲である。例えば設定角度が±400°の場合、オシレータはCW方向に400°揺動した後、CCW方向に400°揺動する動作を繰り返す。このようにして撚り合わされた光ファイバユニット10を押さえ巻き54で包み、さらにシース55で被覆することで光ファイバケーブルを作成した。
【0034】
(実施例2)
実施例2として、介在物3a~3dの数を実施例1から変更した光ファイバケーブルを作成した。介在物3aを5本設け、介在物3cを3本設けた。設定角度は±500°とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0035】
(実施例3)
実施例3として、介在物3a~3dの数を実施例1から変更した光ファイバケーブルを作成した。
図3に示すように、介在物3aを1本、介在物3cを3本、介在物3dを4本設けた。4本の介在物3dのうち、1本をケーブル中心軸Oと同軸上に配置し、その1本の周囲に、残りの3本を沿わせて配置した。設定角度は±600°とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0036】
(実施例4)
実施例4として、介在物3a~3dの数を実施例1から変更した光ファイバケーブルを作成した。
図4に示すように、介在物3aを1本、介在物3bを4本、介在物3cを3本設けた。介在物3dは設けなかった。設定角度は±500°とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0037】
(比較例1)
比較例1として、介在物3a、3bを設けず、介在物3cを3本、介在物3dを5本設けた光ファイバケーブル100を作成した。設定角度は±600°とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
【0038】
(比較例2)
比較例2として、介在物3c、3dの数を比較例1から変更した光ファイバケーブル100を作成した。その他の条件は比較例1と同様とした。
【0039】
(比較例3)
比較例3として、介在物3c、3dの数を比較例1から変更した光ファイバケーブル100を作成した。介在物3cを3本設け、介在物3dは設けなかった。その他の条件は比較例1と同様とした。
【0040】
(比較例4)
比較例4として、介在物3b~3dの数を比較例1から変更した光ファイバケーブル100を作成した。介在物3bを4本、介在物3cを3本、介在物3dを1本設けた。その他の条件は比較例1と同様とした。
【0041】
実施例1~4および比較例1~4の光ファイバケーブルについて、外側ユニット10Aに実際に導入されたSZ撚りの角度(導入角度)を確認した結果を表1に示す。導入角度は、ケーブル化後に、光ファイバケーブルを長手方向に所定の間隔を空けて切断し、特定の光ファイバまたは光ファイバユニットの各切断面における位置を確認することで測定した。設定角度と導入角度との差が大きいほど、外側ユニット10Aが大きく撚り戻りしていることを意味する。
【0042】
表1の「判定」欄は、導入角度が±135°以上の場合に結果が良好(OK)とし、導入角度が±135°未満の場合に結果が不十分(NG)とした。なお、導入角度が±135°以上であることは、光ファイバケーブルが曲げられたときに、光ファイバケーブルが圧縮される部分および引っ張られる部分の双方に、1つの外側ユニット10Aが確実にまたがって配置されるための条件となる。この条件を満たすことで、外側ユニット10Aに作用する引っ張りおよび圧縮を打ち消し合い、光ファイバ1に張力が作用することを抑制できる。
【0043】
表1に示す通り、実施例1~4のほうが比較例1~4よりも導入角度を大きくすることができた。また、実施例1~4は導入角度が±135°以上となり、良好な結果が得られた。これは、介在物3aが押さえ巻き54に接することで、介在物3aと押さえ巻き54との摩擦力によって外側ユニット10Aの撚り戻りを抑止できたためである。
【0044】
実施例1~4と比較例1~4との対比から、押さえ巻き54に接する介在物3aにより、最外層に位置する外側ユニット10Aの撚り戻りを抑制できることが確認された。
また、実施例4と比較例4との対比から、少なくとも1本の介在物3aを設けることで、大きな撚り戻り抑止効果が得られることが確認された。
また、実施例3と実施例4との対比から、内側ユニット10B同士に挟まれている介在物3dよりも、外側ユニット10A同士に挟まれている介在物3bの方が、撚り戻り抑止効果が大きいことが確認された。
また、比較例1~4より、介在物3b~3dの数や配置の変更が、撚り戻り抑止効果に与える影響は少ないことが確認された。
【0045】
次に、介在物3a、3bを設ける際の最適な密度について検討した結果を説明する。
ここでは、「外層介在密度D」のパラメータを用いる。外層介在密度Dとは、コアに含まれる複数の光ファイバユニット10のうち、外側ユニット10A同士の間に挟まれた介在物の密度である。
【0046】
ここで
図2を用いて、外層介在密度Dについてより詳しく説明する。
図2に示す仮想円C1は、最外層に位置する複数の外側ユニット10Aの径方向内側の端部を結んだ円弧である。仮想円C2は、最外層に位置する複数の外側ユニット10Aの径方向外側の端部を結んだ円弧である。仮想円C2は、押さえ巻き54の内周面と実質的に重なる。
【0047】
寸法r1は仮想円C1の半径であり、寸法r2は仮想円C2の半径である。換言すると、寸法r1は、最外層に位置する外側ユニット10Aの径方向内側の端部とケーブル中心軸Oとの間の距離である。また、寸法r2は、最外層に位置する外側ユニット10Aの径方向外側の端部(押さえ巻き54の内周面)とケーブル中心軸Oとの間の距離である。
【0048】
なお、最外層に位置する複数の外側ユニット10Aについて、径方向内側の端部の位置が不均一となる(
図2の仮想円C1が非円形となる)場合がある。その場合、各外側ユニット10Aの径方向内側の端部とケーブル中心軸Oとの間の距離の平均値を寸法r
1とする。仮想円C2が非円形となる場合も同様である。つまり、各外側ユニット10Aの径方向外側の端部とケーブル中心軸Oとの間の距離の平均値を寸法r
2とする。
【0049】
ここで、最外層(外側ユニット10Aの層)と、その内側の層(内側ユニット10Bの層)とでは、撚りの状態が異なっている。また、最外層に位置する介在物3a、3bと、内側の層に位置する介在物3c、3dとでは、役割が異なっている。より詳しくは、介在物3aは押さえ巻き54に接して撚り戻りを抑制する。また、介在物3bは、押さえ巻き54に接しないものの、外側ユニット10A同士に挟まれて、外側ユニット10A同士の相対的な移動を抑制する効果がある。一方、介在物3c、3dは押さえ巻き54に接せず、外側ユニット10A同士に挟まれてもいないため、外側ユニット10Aの撚り戻りを抑制する効果は少ない。このため、最外層に配置される介在物3a、3bについては、最外層のなかでの密度を適切な値とすることが好ましい。
【0050】
そこで、最外層の断面積Aを、下記数式(1)により定義する。換言すると、断面積Aは仮想円C1と仮想円C2とで囲まれた領域の面積である。
A=π×r2
2-π×r1
2 …(1)
また、外層介在密度Dを、以下の数式(2)により定義する。
D=S÷A …(2)
数式(2)において、Sは仮想円C1、C2の間の領域に配置される介在物3a、3bの断面積の合計値である。換言すると、Sは、介在物3a~3dのうち、ケーブル中心軸Oからの距離がr1以上r2以下の範囲にある部分の断面積の合計値である。
【0051】
数式(2)は、以下の数式(2)’と表すこともできる。
D=S÷(π×r2
2-π×r1
2) …(2)’
【0052】
外層介在密度Dを変化させて、複数の光ファイバケーブルを作成した結果を表2に示す。なお、介在物3aの量以外の条件は、上記実施例1と同様である。
【0053】
【0054】
表2の「伝送損失」は、ICEA S-87-640-2016に準じた測定結果を示している。より詳しくは、シングルモードの光ファイバについて、波長1550nmにおける伝送損失が0.30dB/km未満の場合に結果が良好(OK)とし、それ以上の場合に結果が不十分(NG)とした。
表2の「総合判定」は、導入角度および伝送損失の双方の結果が良好の場合に、良好(OK)とした。なお、導入角度の判定基準は、実施例1での説明と同様、±135°以上の場合に良好とした。
【0055】
表2に示すように、0.05≦D≦0.20の場合には、総合判定が良好となった。
一方、D=0.00の場合には、伝送損失は良好であったが、導入角度が基準値(±135°)未満であったため、総合判定が不十分となった。これは、介在物3aが配置されておらず、撚り戻りを抑制できなかったためである。
また、D=0.25の場合は、導入角度は良好であったが、伝送損失が基準値(0.30dB/km)以上であったため、総合判定が不十分となった。これは、介在物3aを過剰に配置しすぎたことで、かえって外側ユニット10Aの光ファイバ1に作用する側圧が増大してしまったためである。
【0056】
以上の結果から、外層介在密度Dを0.05以上0.20以下とすることで、外側ユニット10Aの撚り戻りを抑止しつつ、光ファイバ1に作用する側圧を小さく抑えられることが判った。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば
図1の例では、コア20に2層の光ファイバユニット10が含まれていた。しかしながら、コア20に含まれる光ファイバユニットの層の数は、1でもよいし、3以上であってもよい。
また、コア20に光ファイバユニットの層が複数含まれる場合、最外層以外の層に含まれる光ファイバユニット(
図1の例では内側ユニット10B)同士の間には介在物が配置されていなくてもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…光ファイバ 2…結束材 3a…介在物 10…光ファイバユニット 10A…外側ユニット 20…コア 54…押さえ巻き 55…シース O…ケーブル中心軸