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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220509BHJP
   E04H 1/04 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04H9/02 321B
E04H1/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018212948
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079514
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 耕次
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正人
(72)【発明者】
【氏名】山谷 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 元優
(72)【発明者】
【氏名】小田 稔
(72)【発明者】
【氏名】松崎 真豊
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-274616(JP,A)
【文献】特開2009-133076(JP,A)
【文献】特開2003-082868(JP,A)
【文献】特開2002-121924(JP,A)
【文献】特開2004-211288(JP,A)
【文献】特開2010-116701(JP,A)
【文献】特開2010-285797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
E04H 1/00-1/14
E04B 1/00-1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平断面において概ね矩形の内周フレームと、前記内周フレームの外側に設けられ、前記水平断面において概ね矩形の外周フレームと、前記内周フレームの内側に設けられた内部耐震部材と、前記内周フレームと前記外周フレームとの間に周方向に分割して設けられた、複数の半PCa床スラブと、を有し、
前記水平断面において、前記外周フレームは4つの外側辺部と4つの外側隅切り部とを有し、前記内周フレームは4つの内側辺部と4つの内側隅切り部とを有し、
前記水平断面において、前記4つの外側辺部の梁の少なくとも一部は、前記外側隅切り部の梁より曲げ剛性が大きい曲げ剛性増大梁である、建物。
【請求項2】
前記水平断面において、前記曲げ剛性増大梁は前記内側辺部及び前記内側隅切り部の梁より曲げ剛性が大きい、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記曲げ剛性増大梁は逆梁である、請求項1または2に記載の建物。
【請求項4】
前記外側隅切り部の梁の少なくとも一部は扁平梁である、請求項3に記載の建物。
【請求項5】
前記逆梁の下面と前記扁平梁の下面は同一水平面にある、請求項4に記載の建物。
【請求項6】
前記複数の半PCa床スラブの一部は前記内側隅切り部と前記外側隅切り部との間に設けられ、且つ前記内側隅切り部に支持される辺と前記外側隅切り部に支持される辺とを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の建物。
【請求項7】
前記内側隅切り部と前記外側隅切り部は直線状であり、前記半PCa床スラブは四辺形の平面形状を有している、請求項6に記載の建物。
【請求項8】
前記建物は集合住宅である、請求項1から7のいずれか1項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物に関し、特に中高層塔状集合住宅の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内側チューブと外側チューブとを備えたダブルチューブ型の高層集合住宅が知られている。特許文献1には、水平断面において概ね矩形の内側チューブと概ね矩形の外側チューブとを備え、内側チューブと外側チューブの隅部が隅切りされた建物が開示されている。内側チューブはコアウォールを有し、外側チューブは所定の間隔で設置された柱を有し、複数の床スラブがコアウォールと柱との間に放射状に設けられている。このような構成により、コアウォールから放射状に梁を設置する必要がなく、広くて解放感のある居住空間を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5297028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された建物は隅部が隅切りされているため、床スラブをPCaスラブ(プレキャストスラブ)で構成する場合に、各PCaスラブを概ね四辺形の形状とすることができる。このため、隅部におけるPCaスラブを一般部のPCaスラブと同様に施工することができる。しかし、隅切りしない場合に存在した隅部の柱と梁が存在しないため、建物の構造強度が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は構造強度の確保が容易で、かつ施工性に優れたダブルチューブ型の建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建物は、水平断面において概ね矩形の内周フレームと、内周フレームの外側に設けられ、水平断面において概ね矩形の外周フレームと、内周フレームの内側に設けられた内部耐震部材と、内周フレームと外周フレームとの間に周方向に分割して設けられた、複数の半PCa床スラブと、を有している。水平断面において、外周フレームは4つの外側辺部と4つの外側隅切り部とを有し、内周フレームは4つの内側辺部と4つの内側隅切り部とを有している。水平断面において、4つの外側辺部の梁の少なくとも一部は、外側隅切り部の梁より曲げ剛性が大きい曲げ剛性増大梁である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内周フレームと外周フレームに4つの隅切り部が設けられているため、隅切り部がない場合と比べて梁と柱の量が減少する。しかし、4つの外側辺部に位置する梁の少なくとも一部が、外側隅切り部に位置する梁より曲げ剛性が大きくされ、且つ内周フレームの内側に内部耐震部材が設けられるため、建物の構造強度の確保が容易である。また、半PCa床スラブを外側隅切り部と内側隅切り部とによって支持することができるため、良好な施工性を確保することができる。従って、本発明によれば、構造強度の確保が容易で、かつ施工性に優れたダブルチューブ型の建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る建物の正面図である。
図2図1のA-A線に沿った建物の水平断面図である。
図3図1のB-B線に沿った建物の水平断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る建物の図2と同様の水平断面図である。
図5】内側隅切り部と外側隅切り部が設けられない建物の水平断面図である。
図6図2,3のC-C線に沿った建物の部分断面図である。
図7図2,3のD-D線に沿った建物の部分断面図である。
図8図2,3のE方向からみた建物の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の建物の実施形態について説明する。本発明の建物は主に中高層塔状集合住宅(いわゆるタワーマンション)に好適に適用することができるが、建物の用途及び階数は特に限定されず、任意の用途ないし階数の建物に適用できる。図1は建物の正面図、図2図1のA-A線に沿った建物の水平断面図であり、柱と梁の存在するレベルにおける建物の水平断面を示している。図3図1のB-B線に沿った建物の水平断面図であり、梁の設けられていないレベルにおける建物の水平断面を示している。本明細書において「水平断面」は特記ない場合、柱と梁の存在するレベルにおける建物の水平断面、すなわち図2に示す断面を意味する。なお、図2において放射方向D1は建物1の中心1Aから離れる方向を意味し、周方向D2は建物1の中心1Aに関し時計回りまたは反時計周りの方向を意味する。
【0010】
建物1は概ね矩形の、本実施形態では概ね正方形の平面形状を有している。建物1は内周フレーム2と、内周フレーム2の外側に設けられた外周フレーム3とを有している。内周フレーム2と外周フレーム3との間は複数の住戸4となっており、仕切り壁(図示せず)によって互いに区画されている。内側フレームの内側はエレベータ、階段室、パイプシャフトなどの縦シャフトが設けられたコアスペース5となっている。コアスペース5と住戸4との間には内周フレーム2に沿って周回する廊下6が設けられ、各住戸4へのアクセスが可能となっている。建物1の外周に沿ってバルコニー7が設けられている。
【0011】
内周フレーム2は所定間隔で設けられた内側柱11と、内側柱11に沿って連続的に設けられた内側梁12とで構成されている。外周フレーム3は所定間隔で設けられた外側柱13と、外側柱13に沿って連続的に設けられた外側梁14とで構成されている。内周フレーム2と外周フレーム3は柱と梁で構成された架構であり、構造要素としての壁(耐震壁)は設けられていない。内周フレーム2は水平断面において4つの内側辺部2Aと4つの内側隅切り部2Bとで構成された概ね矩形の平面形状を有している。同様に、外周フレーム3は水平断面において4つの外側辺部3Aと4つの外側隅切り部3Bとで構成された概ね矩形の平面形状を有している。換言すれば、内側梁12は水平断面において4つの内側辺部2Aと4つの内側隅切り部2Bを構成し、外側梁14は水平断面において4つの外側辺部3Aと4つの外側隅切り部3Bを構成する。内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bは互いに対して対向して設けられている。4つの内側隅切り部2Bは隣接する2つの内側辺部2Aに対して45度の角度をなし、4つの外側隅切り部3Bは隣接する2つの外側辺部3Aに対して45度の角度をなしている。4つの内側辺部2A、4つの内側隅切り部2B、4つの外側辺部3A、4つの外側隅切り部3Bはそれぞれ同一の長さを有している。内周フレーム2と外周フレーム3はほぼ相似形であり、かつそれらの中心が水平断面における建物1の中心1Aと一致している。
【0012】
内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bを設けることで、建物1のコーナー部の住戸面積を確保することが容易となる。すなわち、外側隅切り部3Bを設けることで建物1のコーナー部の住戸面積は減少するが、内側隅切り部2Bを設けることで減少した住戸面積の少なくとも一部を補償することができる。内側隅切り部2Bと内側辺部2Aの寸法比及び外側隅切り部3Bと外側辺部3Aの寸法比は特に限定されないが、内側隅切り部2Bの長さが内側辺部2Aの長さより短く、且つ外側隅切り部3Bの長さが外側辺部3Aの長さより短い範囲で自由に設定することができる。内側隅切り部2Bの長さをできるだけ長くし、外側隅切り部3Bの長さをできるだけ短くすることで住戸面積の確保は容易となるが、内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bの間隔が増加し、後述する半PCa床スラブ15のスパンが増加する。従って、内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bの長さは、両者のバランスを考慮して決定することが望ましい。
【0013】
内周フレーム2の内側には内部耐震部材8が設けられている。内部耐震部材8は柱8Aと梁8Bとからなる内部フレームである。柱8Aは建物1の中心1Aの周囲に均等に配置され、梁8Bは内側梁12及び外側梁14と平行に、且つ互いに直交する方向に、各方向で同程度の梁量となるように配置されている。エレベータ、階段室などの縦シャフトは柱8Aの間の空間に設置される。図4に示すように、内部耐震部材8は耐震壁8Cであってもよい。耐震壁8Cは互いに直交する方向に、各方向で同程度の壁量となるように配置されている。耐震壁8Cはエレベータ、階段室などを仕切る仕切壁としても利用され、最下階から最上階まで連続的に設けられている。耐震壁8Cには廊下6との連絡のため、部分的に開口(図示せず)が設けられている。内部フレームと耐震壁8Cは構造設計、施工性などを考慮して選択することができるが、意匠設計上は内部フレームのほうが開放感に優れ、耐震壁8Cより有利となる場合が多い。
【0014】
内周フレーム2と外周フレーム3との間には、周方向D2に分割された複数の半PCa床スラブ15が設けられている。後述するように、半PCa床スラブ15は、工場で製作されるPCa版16と、PCa版16上に現場施工されるRC(鉄筋コンクリート)版17とからなる複合構造である(図6,7参照)。半PCa床スラブ15は四辺形の平面形状を有しているが、場所によって形状が異なっている。すなわち、内側辺部2Aの中央付近と外側辺部3Aの中央付近との間に設けられる半PCa床スラブ15はほぼ矩形であるが、内側隅切り部2B及び外側隅切り部3Bに近づくにつれ、外側辺部3Aに支持される辺の長さが内側辺部2Aに支持される辺の長さより長くなっている。内側隅切り部2Bの中央付近と外側隅切り部3Bの中央付近との間に設けられる半PCa床スラブ15は、外側辺部3Aに支持される辺の長さと内側辺部2Aに支持される辺の長さの差が最大となっており、且つほぼ台形形状となっている。このように半PCa床スラブ15の形状を場所によって変えることで、外側辺部3Aに支持される半PCa床スラブ15の辺の長さをできるだけ均一化することができる。これによって、工場で製作されるPCa版16の輸送の制約を軽減することが可能となる。なお、床スラブは全てがPCa版からなるフルPCa床スラブとすることも可能であるが、輸送や揚重機の制約から半PCa床スラブとすることが好ましい。
【0015】
全ての半PCa床スラブ15は四辺形の平面形状を有し、その一つの辺15Aが内側辺部2Aまたは内側隅切り部2Bに、辺15Aと対向する他の辺15Bが外側辺部3Aまたは外側隅切り部3Bに支持されている。換言すれば、全ての半PCa床スラブ15は内側辺部2Aまたは内側隅切り部2Bに支持される辺15Aと、外側辺部3Aまたは外側隅切り部3Bに支持される辺15Bとを有している。建物1のコーナー部の半PCa床スラブ15は、内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bとの間に設けられており、内側隅切り部2Bに支持される辺15Aと外側隅切り部3Bに支持される辺15Bとを有している。図5は、内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bが設けられない比較例の建物101の、図2と同じ水平断面を示している。建物101のコーナー部には、鋭角の頂部をもつ複数の三角形の半PCa床スラブ115が、鋭角の頂部が内側隅部2Cに位置するように配置されている。半PCa床スラブ115のPCa版の周囲には多数の鉄筋が配置されるため、半PCa床スラブ115の施工が極めて困難である。また、内側隅部2Cの近傍には床開口を設けることも困難である。これに対して本実施形態では、複数の半PCa床スラブ15が内側隅切り部2Bに沿って並列して配置されるため、コーナー部の半PCa床スラブ15を他の半PCa床スラブ15と同様に設置することができ、建物1の施工性が向上する。
【0016】
半PCa床スラブ15は位置によって形状が異なるが、すべて放射方向D1に長く、周方向D2に短い形状を有しているため、1方向スラブとして設計することができる。この場合、放射方向D1の長さが最も長い半PCa床スラブ15に合わせて全ての半PCa床スラブ15を設計することになる。従って、放射方向D1の長さが長くなりやすいコーナー部の半PCa床スラブ15は、放射方向D1の長さができるだけ小さくなるように設計することが好ましい。本実施形態では内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bは直線状の形状を有しているため、曲線状に外側に膨らんだ外側隅切り部と比べて、半PCa床スラブ15の放射方向D1の長さの増加を抑えることができる。
【0017】
図6図2,3のC-C線に沿った、内側辺部2Aと外側辺部3Aの間の区間を示す断面図、図7図2,3のD-D線に沿った、内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bの間の区間を示す断面図である。図8図2,3のE方向からみた側面図であり、2つの外側辺部3Aとこれらに挟まれる一つの外側隅切り部3Bとを展開図で示している。
【0018】
前述のように半PCa床スラブ15はPCa版16と、その上に現場施工されるRC版17とからなっている。PCa版16は内側梁12及び外側梁14に設けられた切欠き19に支持される。PCa版16の厚さの増加を防止するため、PCa版16の放射方向D1の長さは例えば10m程度に抑えることが望ましい。RC版17には重量を抑えるため、ボイド(空洞)17Aが設けられている。図示は省略するが、PCa版16には半PCa床スラブ15の下端筋となる鉄筋やフープ筋が配置されており、RC版17には半PCa床スラブ15の上端筋などが配置されている。内側辺部2Aと外側辺部3Aとの間(図6)及び内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bとの間(図7)は住戸4となっており、住戸4の外側はバルコニー7となっている。なお、説明上、図6,7ではバルコニー7の奥行きを誇張して表示している。住戸4ではRC版17上に床板9が設置され、住戸4とバルコニー7との間は窓10で仕切られている。PCa版16は無梁版であるため、住居内の天井高さの確保が容易であるとともに、解放感のある窓10の設置が可能である。
【0019】
図8(a)に示すように、4つの外側辺部3Aに位置する外側梁14の少なくとも一部(以下、曲げ剛性増大梁14Aという)は、外側隅切り部3Bに位置する外側梁14より曲げ剛性(断面2次モーメント)が大きい。これによって、内側隅切り部2Bと外側隅切り部3Bを設けたことによる建物1の強度の低下を補うことができる。曲げ剛性増大梁14Aは順梁でもよいが、逆梁とすることがより好ましい。曲げ剛性増大梁14Aは梁せいが大きくなる傾向があるため、順梁とすると上階の床から梁が下方に突き出し下階の住戸4からの景観を損ねる可能性がある。逆梁は順梁とは逆に床から上方に突き出すが、バルコニー7には安全用の柵18が設けられているため、景観上大きな問題はない。さらに、逆梁とすることで、バルコニー7の足元の安心感やプライバシー性を高めることができる。
【0020】
外周フレーム3は、少なくとも外側隅切り部3Bに位置する扁平梁14Bを有している。特に、外側隅切り部3Bの全長が扁平梁14Bで構成されることが好ましい。扁平梁14Bは一般的な順梁と比べ、上階床スラブからの梁の垂れ下がりがないため、景観面で有利である。また、バルコニー7の足元に梁がないため、奥行きと解放感のあるバルコニー7を提供することができる。建物1のコーナー部の住居は一般に高グレードとされることが多く、商品性の面からの優位性も確保できる。図8(a)に示すように、逆梁14Aと扁平梁14Bの下面は同一水平平面にある。図8(b)に示すように、扁平梁14Bが一般的な順梁114Bであると、逆梁14Aの上端と順梁114Bの下端との間隔で決まる柱13の高さHを十分に確保することができず、柱13のせん断強度の確保が困難となる場合がある。扁平梁14Bを用いることで柱13の高さHを十分に確保することができる。
【0021】
曲げ剛性増大梁14Aと扁平梁14Bの設置範囲は建物1の階によって変えることができる。地震力の大きい下層階では4つの外側辺部3Aの全長を曲げ剛性増大梁14A(逆梁)で構成し、4つの外側隅切り部3Bの全長を扁平梁14Bで構成することができる。一方、地震力の小さい上層階では4つの外側辺部3Aの一部を曲げ剛性増大梁14A(逆梁)で構成し、外側辺部3Aの残りを順梁または扁平梁14Bで構成することができる。あるいは、上層階と下層階で曲げ剛性増大梁14A(逆梁)の設置範囲を同程度とし、上層階の曲げ剛性増大梁14Aの梁せいを下層階の曲げ剛性増大梁14Aの梁せいより小さくしてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 建物
2 内周フレーム
2A 内側辺部
2B 内側隅切り部
3 外周フレーム
3A 外側辺部
3B 外側隅切り部
8 内部耐震部材
11 内側柱
12 内側梁
13 外側柱
14 外側梁
14A 逆梁(曲げ剛性増大梁)
14B 扁平梁
15 半PCa床スラブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8