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特許7068144樹脂モールドプレス装置及び樹脂モールド装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】樹脂モールドプレス装置及び樹脂モールド装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/02 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B29C45/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018220654
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020082529
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐大
(72)【発明者】
【氏名】西沢 賢司
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 高志
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-082716(JP,A)
【文献】実開平04-124613(JP,U)
【文献】特開平07-314491(JP,A)
【文献】特開平06-328494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを樹脂でモールドする樹脂モールドプレス装置であって、
前記ワークを支持する第一金型と、
前記樹脂が供給されるキャビティが設けられた第二金型と、
トランスファ駆動機構によって押動されるプランジャユニットと、を備え、
前記プランジャユニットは、複数のプランジャ取付け部を有すると共に、
一端側の前記プランジャ取付け部には、前記第一金型に設けられるポットに挿通されて、前記トランスファ駆動機構による押動の際に前記キャビティに前記樹脂を供給するプランジャが第一付勢部材を介在させた状態で取付けられ、
他端側の前記プランジャ取付け部には、前記トランスファ駆動機構による押動の際に前記第一金型に当接可能に設けられるダミープランジャが第二付勢部材を介在させた状態で取付けられ
前記プランジャは、前記プランジャユニットの一端側において、一又は複数個配設されており、
前記ダミープランジャは、前記プランジャユニットの他端側において配設され、その配設条件として、前記トランスファ駆動機構による押動の際に、前記プランジャを押動する反力として前記プランジャユニットに生じる回転モーメントを相殺する回転モーメントを発生させるように、位置、個数、及び前記第二付勢部材の付勢力が設定されていること
を特徴とする樹脂モールドプレス装置。
【請求項2】
前記プランジャは、前記プランジャユニットの一端側において、一又は複数個配設されており、
前記ダミープランジャは、前記プランジャユニットの他端側において、前記トランスファ駆動機構の押動軸の軸心を中心として前記プランジャと対称となる位置に、同数が配設されていること
を特徴とする請求項記載の樹脂モールドプレス装置。
【請求項3】
前記プランジャは、前記プランジャユニットの一端側において、前記プランジャ取付け部が一列で設けられている場合には一又は二個、前記プランジャ取付け部が二列で設けられている場合には二又は四個配設されており、
前記ダミープランジャは、前記プランジャユニットの他端側において、前記トランスファ駆動機構の押動軸の軸心を中心として前記プランジャと対称となる位置に、同数が配設されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂モールドプレス装置。
【請求項4】
前記プランジャは、前記一端側のプランジャ取付け部に対して着脱可能に取付けられており、
前記ダミープランジャは、前記他端側のプランジャ取付け部に対して着脱可能に取付けられていること
を特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂モールドプレス装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂モールドプレス装置に、ワーク供給部、成形品収納部、搬送部の少なくとも一つを備えること
を特徴とする樹脂モールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを樹脂でモールドする樹脂モールドプレス装置及び樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造に関し、ワークを樹脂でモールドする樹脂モールド装置としてトランスファモールド装置が広く用いられている。このトランスファモールド装置は上型と下型とでワークを型締めし、モールド金型のポットからプランジャで溶融樹脂を押し出し、キャビティに樹脂を充填して樹脂モールドするものである。例えば、ワークがリードフレームや有機基板等の場合に、これらを樹脂モールドする樹脂モールド装置として、樹脂タブレット(モールド樹脂)を投入するポットを複数個設けたマルチポット方式(マルチプランジャ方式)の金型を備える装置が知られている(特許文献1:特開平9-155911号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-155911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に例示される樹脂モールド装置において、リードフレームや有機基板等のような比較的小型(例えば、一辺100mm・他辺300mm以下)の短冊状もしくは個片状の形状を有するワークを樹脂モールドする場合には、複数個のポットが配設される列を挟んで両側に平行にワークを配置する構成の金型を用いればよい。
【0005】
しかし、同じ樹脂モールド装置を用いて、比較的大型のワーク、例えば、ウェハ(例えば、直径300mm)や大判基板(300mm角以上)を樹脂モールドする場合には、当該ワークに合わせて樹脂モールドプレス装置(特に、金型、トランスファ駆動機構、プランジャユニット等)を新規に設計・製作する必要性が生じる。そのため、ワーク毎に専用設計となる金型は止むを得ないとしても、トランスファ駆動機構、プランジャユニットまでも新規に設計・製作するとなると、きわめて長い時間を要し、また、装置コストの増大も招くこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、樹脂モールドプレス装置のトランスファ駆動機構、プランジャユニットを変更せずに、もしくは変更を最小限に抑え、より広範な種類のワークの樹脂モールドが可能となる樹脂モールドプレス装置を実現することを目的とする。
【0007】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る樹脂モールドプレス装置は、ワークを樹脂でモールドする樹脂モールドプレス装置であって、前記ワークを支持する第一金型と、前記樹脂が供給されるキャビティが設けられた第二金型と、トランスファ駆動機構によって押動されるプランジャユニットと、を備え、前記プランジャユニットは、複数のプランジャ取付け部を有すると共に、一端側の前記プランジャ取付け部には、前記第一金型に設けられるポットに挿通されて、前記トランスファ駆動機構による押動の際に前記キャビティに前記樹脂を供給するプランジャが第一付勢部材を介在させた状態で取付けられ、他端側の前記プランジャ取付け部には、前記トランスファ駆動機構による押動の際に前記第一金型に当接可能に設けられるダミープランジャが第二付勢部材を介在させた状態で取付けられ、前記プランジャは、前記プランジャユニットの一端側において、一又は複数個配設されており、前記ダミープランジャは、前記プランジャユニットの他端側において配設され、その配設条件として、前記トランスファ駆動機構による押動の際に、前記プランジャを押動する反力として前記プランジャユニットに生じる回転モーメントを相殺する回転モーメントを発生させるように、位置、個数、及び前記第二付勢部材の付勢力が設定されていることを要件とする。
【0009】
これによれば、複数のプランジャ取付け部を有するプランジャユニットを備えると共に、一端側のプランジャ取付け部のみに樹脂供給用のプランジャを取付けることによって、樹脂モールドプレス装置(特に、トランスファ駆動機構、プランジャユニット等)を新規に設計・製作することなく、前述の比較的大型のワークに対しても樹脂モールドすることが可能となる。しかしながら、この構成を採用した場合、新たな課題が生じ得る。より具体的には、プランジャユニットの一端側のみにプランジャを押動する反力が作用するため、当該プランジャユニットやトランスファ駆動機構が傾斜するように変形してしまう課題である。この点について、強度を高めようとすれば構成要素の大型化が必要となり、装置の重量増及びコスト増を招くこととなる。
【0010】
上記の新たな課題に対し、本実施形態においては、プランジャユニットの他端側のプランジャ取付け部にダミープランジャを取付けて、トランスファ駆動機構による押動の際に第一金型に当接させる構成により、その解決を図っている。この構成によれば、プランジャユニットの他端側にダミープランジャを押動する反力を作用させることができるため、プランジャユニットの両端にそれぞれ作用する力が相殺されるようにしてバランスをとることが可能となる。したがって、プランジャユニットの一端側にのみ反力が作用して変形してしまう課題の解決を図ることができる。
【0011】
上記の作用効果を高めるために、前記プランジャは、前記プランジャユニットの一端側において、一又は複数個配設されており、前記ダミープランジャは、前記プランジャユニットの他端側において配設され、その配設条件として、前記トランスファ駆動機構による押動の際に、前記プランジャを押動する反力として前記プランジャユニットに生じる回転モーメントを相殺する回転モーメントを発生させるように、位置、個数、及び前記第二付勢部材の付勢力が設定されている構成が好適である。
【0012】
一実施形態として、前記プランジャは、前記プランジャユニットの一端側において、一又は複数個配設されており、前記ダミープランジャは、前記プランジャユニットの他端側において、前記トランスファ駆動機構の押動軸の軸心を中心として前記プランジャと対称となる位置に、同数が配設されている構成とすればよい。
【0013】
具体的には、前記プランジャは、前記プランジャユニットの一端側において、前記プランジャ取付け部が一列で設けられている場合には一又は二個、前記プランジャ取付け部が二列で設けられている場合には二又は四個配設され、前記ダミープランジャは、前述の対称位置に前記プランジャと同数配設される例が考えられる。
【0014】
なお、前記プランジャ及び前記ダミープランジャは、いずれも前記プランジャ取付け部に対して着脱可能に構成されていることが好ましい。これによれば、ワーク形状、樹脂量等に応じて、その都度、最適なものに交換することが可能となる。したがって、装置の汎用性をより一層高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂モールドプレス装置のトランスファ駆動機構、プランジャユニットを変更せずに、もしくは変更を最小限に抑え、より広範な種類のワークに対して樹脂モールドが可能となる樹脂モールドプレス装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂モールド装置の例を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る樹脂モールドプレス装置の一例を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る樹脂モールドプレス装置のプランジャユニットの一例を示す概略平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る樹脂モールドプレス装置のプランジャユニットの一例を示す概略図である。
図5】本発明の実施形態に係る樹脂モールドプレス装置の他の例を示す概略図である。
図6】本発明の実施形態に係る樹脂モールドプレス装置のプランジャユニットの他の例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本発明の実施形態に係る樹脂モールド装置100の例を示す概略図(平面図)である。また、図2は、本発明の実施形態に係る樹脂モールド装置100の樹脂モールドプレス装置(以下、単に「プレス装置」と称する場合がある)110の例を示す概略図(正面断面図)である。なお、説明の便宜上、図2(及び同方向の図4、5)において紙面の上下により樹脂モールド装置100及びプレス装置110における上下方向を説明する場合がある。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
本実施形態に係る樹脂モールド装置100は、ワーク(被成形品)Wの樹脂モールド成形を行う装置である。以下、樹脂モールド装置100として、ワークWを支持するワーク支持部38、及びモールド樹脂(単に「樹脂」と称する場合がある)が収容されるポット40が設けられた第一金型(下型)20と、ワークWにおいて樹脂モールドされる部位が収容されて樹脂が充填されるキャビティ30が設けられた第二金型(上型)21とを有して構成される樹脂モールド金型10を備えるトランスファモールド装置を主な例として説明する。
【0019】
先ず、成形対象であるワークWについて、一般的な構成例を説明する。ワークWは、第一部材Wa上に、第二部材Wbが搭載された構成を備えている。より具体的には、第一部材Waとして、例えば短冊状に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、リードフレーム、キャリア、ウェハといった各種の内包部材が例に挙げられる。また、第二部材Wbとして、半導体チップ(単に、「チップ」と称する場合がある)、放熱板、配線・放熱のためのリードフレーム、電気的接続のためのバンプといった各種の部材が例に挙げられる。すなわち、本発明におけるワークWは、これらの第一部材Wa上に第二部材Wbが搭載(ダイ実装、フリップチップ実装、ワイヤボンディング実装等)されて重ね合わされた状態のものをいう。したがって、当該ワークWには、基板に一段あるいは複数段にチップが搭載されたもの、基板に半導体装置が搭載されたもの、基板に撮像素子が搭載され撮像素子の受光面に光透過ガラスを接合したもの等も含まれる。ここでは、樹脂モールドする形態として、基板実装された複数の搭載部品を一つのキャビティに収容して一括して樹脂モールドする場合を想定している。なお、個々の搭載部品ごとに個別にキャビティに収容して樹脂モールドする場合にも適用し得る。
【0020】
続いて、樹脂モールド装置100の概要について説明する。図1に示すように、樹脂モールド装置100は、ワークWを供給するワーク供給部100A、ワークWを予熱する予熱部100B、ワークWを樹脂モールドするプレス部100C、樹脂モールド後の成形品Wpを収納する成形品収納部100D、及び搬送部100Eを備えて構成される。
【0021】
先ず、ワーク供給部100Aは、ワークWを収納したマガジン(不図示)を収容するストッカ102を備えている。各マガジンからプッシャ(不図示)により送り出されたワークWが、例えば二枚一組でセット台104に向い合わせで並べられる。
【0022】
セット台104の側方には、モールド樹脂(一例として、樹脂タブレット)Tを供給するためのタブレット供給部106が設けられている。セット台104のワークWは、後述する搬送部100Eのローダ122によって保持されて予熱部100Bへ移送される。また、タブレット供給部106の樹脂タブレットTは、ローダ122によって保持されてプレス部100Cへ移送される。
【0023】
次に、予熱部100Bは、ワークWの予熱を行うヒータブロック108を備えている。搬送部100E(ローダ122)によってワーク供給部100Aから移送されたワークWは、ヒータブロック108上に載置され、その状態で所定温度まで加熱(予熱)が行われる。予熱されたワークWは、搬送部100Eのローダ122によって保持されてプレス部100Cへ移送される。
【0024】
次に、プレス部100Cは、後述する樹脂モールド金型10を開閉駆動して予熱されたワークWをクランプして樹脂モールドするプレス装置110を備えている。プレス装置110は、樹脂モールド金型10を型開閉方向に押動する公知の型締め機構、樹脂モールド金型10のポット40内で溶融した樹脂をポット40からキャビティ30に充填するトランスファ駆動機構(後述)を備えている。
【0025】
なお、本実施形態においては、樹脂モールド金型10の金型面(樹脂モールド面)をリリースフィルムFにより被覆して樹脂モールドする構成としている。このため、プレス装置110は、樹脂モールド金型10の金型面にリリースフィルムFを供給するフィルム供給機構112を備えている。当該フィルム供給機構112は、樹脂モールド金型10の両側にリリースフィルムFを金型面(上型面)に供給する供給ロール112aと、リリースフィルムFを巻き取る巻き取りロール112bを備えている。また、リリースフィルムFには、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。ただし、樹脂モールド金型10の金型面をリリースフィルムFで被覆しない構成としてもよい。
【0026】
次に、成形品収納部100Dは、樹脂モールド後の成形品Wpをセットするセット部114、成形品Wpからゲート等の不要樹脂を除去するゲートブレイク部116、不要樹脂が除去された成形品Wpを収納するストッカ118を備えている。成形品Wpは、収納用のマガジン120に収納され、成形品が収納されたマガジン120はストッカ118に順次収容される。
【0027】
次に、搬送部100Eは、ワークWをプレス部100Cに搬入するローダ122及び成形品Wpをプレス部100Cから搬出するアンローダ124を備えている。ワーク供給部100A、予熱部100B、プレス部100C及び成形品収納部100Dは、ユニット化された架台同士が連結されて樹脂モールド装置100が組み立てられている。各ユニットの装置奥側にはガイド部126が各々設けられ、ガイド部126同士を直線的に連結するように組み付けることでガイドレールが形成されている。ローダ122とアンローダ124は各々、ガイドレールに沿ってガイド部126上の所定位置からワーク供給部100A、予熱部100B、プレス部100C、成形品収納部100Dに向かって直線的に進退動可能に設けられている。
【0028】
したがって、ユニットの構成を変えることにより、ガイド部126同士を連結させた状態を維持しながら、樹脂モールド装置100の構成態様を変更することができる。たとえば、図1に示す例は、プレス装置110を二台設置した例であるが、プレス装置110が単数又は三台以上の複数台連結された樹脂モールド装置(不図示)を構成することも可能である。また、ワーク供給部100A、予熱部100B、成形品収納部100D、更には搬送部(ガイド部126及びローダ122、アンローダ124)の少なくとも一部が無い樹脂モールド装置であってもよいし、又はプレス部100Cと樹脂モールド金型10だけのマニュアルの樹脂モールド装置であってもよい。
【0029】
続いて、樹脂モールド装置100が備えるプレス装置110の構成について説明する。
【0030】
本実施形態に係るプレス装置110の概略図(正面断面図)を図2に示す(リリースフィルムFは無くともよいため、図の簡素化のため図示省略)。プレス装置110は、第一金型(下型)20と第二金型(上型)21とを有する樹脂モールド金型10を備えている。なお、第一金型(下型)20が可動型、第二金型(上型)21が固定型の場合を例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。
【0031】
先ず、第一金型(下型)20は、図2に示すように、第一モールドベース(下型モールドベース)34及び第一チェイスブロック(下型チェイスブロック)36を備えており、下型チェイスブロック36が下型モールドベース34を介して可動プラテン22に固定される構成となっている。
【0032】
下型チェイスブロック36の上面にはワークW(第一部材Wa側)が支持されるワーク支持部38が設けられている。本実施形態においては、比較的大型のワークW用として、一つのワークWを支持するワーク支持部38が設けられている。
【0033】
一方、第二金型(上型)21は、図2に示すように、第二モールドベース(上型モールドベース)26及び第二チェイスブロック(上型チェイスブロック)28を備えており、上型チェイスブロック28が上型モールドベース26を介して固定プラテン24に固定される構成となっている。なお、固定プラテン24は、ポスト42に固定されている。
【0034】
上型チェイスブロック28の下面にはワークWの所定部位(第二部材Wbが搭載された部位)が収容されるキャビティ30が設けられている。本実施形態においては上記の下型チェイスブロック36のワーク支持部38に対応する位置に、一つのキャビティ30が設けられている。また、上型チェイスブロック28には、キャビティ30に連通する樹脂流路(カル、ランナ等)32が設けられている。なお、変形例として、キャビティ30の底部に可動のキャビティ駒を備える公知の構成を採用してもよいし、キャビティは下型側のみに設ける場合でもよいし、更に上下型に設ける場合でもよい(いずれも不図示)。
【0035】
本実施形態に係る樹脂モールド金型10においては、可動プラテン22が、駆動源(電動モータ)及びその駆動力を伝達する伝達機構(トグルリンク等のリンク機構もしくはねじ軸等)を有する公知の型締め機構によって昇降(ポスト42に沿って移動)される構成となっている。これによって、第一金型(下型)20と第二金型(上型)21との型開閉が行われる。なお、型締め機構による可動プラテン22の移動速度、加圧力等は、適宜、設定される。
【0036】
さらに、第一金型(下型)20には、モールド樹脂(ここでは、樹脂タブレット)Tが収容される筒状のポット40が設けられている。ポット40は、図2に示すように、下型モールドベース34及び下型チェイスブロック36に連続する貫通孔として形成されている。ポット40内にはトランスファ駆動機構11により押動されるプランジャ16が配設されている。このプランジャ16が押動されて、ポット40内のモールド樹脂Tがキャビティ30内へ供給される。
【0037】
なお、トランスファ駆動機構11は、駆動源としての油圧もしくは電動モータ(不図示)、及びその駆動力によって押動(進退動)される押動軸12を備えて構成されており、押動軸12の先端にプランジャユニット13が固定される。
【0038】
ここで、本実施形態に特徴的な構成であるプランジャユニット13について説明する。トランスファ駆動機構11によって押動されるプランジャユニット13には、複数のプランジャ取付け部(一例として、六個の14A~14F)が設けられている。図2に示すように、上記のプランジャ16は、プランジャユニット13の一端13a側のプランジャ取付け部14Aに、第一付勢部材15を介在させた状態で取付けられている。
【0039】
これによれば、プランジャユニット13の一端13a側に配設されるプランジャ16によって、ポット40内に収容されるモールド樹脂(樹脂タブレット)Tを押出し、樹脂流路(カル、ランナ等)32を通過させて、キャビティ30内に供給することができる。また、第一付勢部材15(一例として、圧縮コイルバネ)を介在させた構成によって、プランジャ16が押動された際に、第一付勢部材15の付勢力(弾発力)により僅かに変位して過剰な押圧力を逃がすとともに保圧時にはモールド樹脂Tの樹脂量のばらつきに順応することができる。ここで、プランジャ16は、プランジャ取付け部14Aに対して着脱可能に取付けられており、ワークWの形状やモールド樹脂Tの樹脂量等に応じて、最適な寸法(軸方向長さ)のものを使用することができる。なお、トランスファ駆動機構11によるプランジャユニット13の移動速度、加圧力等は、適宜、設定される。
【0040】
前述の通り、比較的小型(例えば、一辺100mm・他辺300mm以下)の短冊状もしくは個片状の形状を有するワークを樹脂モールドする樹脂モールド装置においては、複数のポット及び対応する複数のプランジャを備えたマルチプランジャ方式のプレス装置が多用されている。そのため、小型ワーク用の樹脂モールド装置を、比較的大型のワーク、例えば、ウェハ(例えば、直径300mm)や大判基板(300mm角以上)を樹脂モールドする樹脂モールド装置として活用するためには、プレス装置(特に、金型、トランスファ駆動機構、プランジャユニット等)を新規に設計・製作しなければならず、時間もコストも多くかかる原因となっていた。
【0041】
この問題に対して、上記の本実施形態に係る構成によれば、プレス装置110(特に、トランスファ駆動機構11、プランジャユニット13)を新規に設計・製作することなく、マルチプランジャ方式の小型ワーク用の樹脂モールド装置を、大型ワーク用の樹脂モールド装置として活用することが可能となる。したがって、装置の遊休資産化を抑制し、高効率で稼働させることが可能となる。
【0042】
しかしながら、この構成を採用すると、前述の新たな課題が生じ得ることを本願発明者は究明した。より具体的には、プランジャユニット13の一端13a側のみにプランジャ16を押動する反力が作用するため、当該プランジャユニット13やトランスファ駆動機構11が傾斜するように変形してしまう課題である。従来の解決策の例である強度の向上により対応しようとすれば、構成要素の大型化が必要となり、装置の重量増及びコスト増を招いてしまうこととなる。
【0043】
この新たな課題の解決を図るために、本実施形態においては、図2に示すように、ダミープランジャ18を、プランジャユニット13の他端13b側のプランジャ取付け部14Fに、第二付勢部材17(一例として、圧縮コイルバネ)を介在させた状態で取付ける構成としている。さらに、当該ダミープランジャ18を取付ける構成は、トランスファ駆動機構11による押動の際に第一金型(下型)20(一例として、下型モールドベース34)に当接可能となるように設定されている。
【0044】
この構成によれば、プランジャユニット13の他端13b側にダミープランジャ18を押動する反力を作用させることができるため、プランジャユニット13の両端にそれぞれ作用する力が相殺されるようにしてバランスをとることが可能となる。換言すれば、プランジャユニット13の両端に作用する力(圧力)を平衡化する平衡機構が実現される。その結果、プランジャユニット13の一端13a側にのみ力が作用して変形してしまう課題の解決を図ることができる。
【0045】
したがって、トランスファ駆動機構11が駆動されて、プランジャ16によるモールド樹脂Tのキャビティ30への圧送が開始される時に、ダミープランジャ18が第一金型(下型)20(下型モールドベース34)に当接を開始するように設定することが好適である。
【0046】
さらに、上記の作用効果を高めるためには、次の構成が好適である。すなわち、プランジャ16は、プランジャユニット13の一端13aにおいて、一又は複数個配設されており、ダミープランジャ18は、プランジャユニット13の他端13b側において配設され、その配設条件として、トランスファ駆動機構11による押動の際に、プランジャ16を押動する反力としてプランジャユニット13に生じる回転モーメントを相殺する回転モーメントを発生させるように、位置、個数、及び第二付勢部材17の付勢力の各パラメータが設定されている構成である。なお、「相殺」とは、完全に相殺、及び、強度面から許容される所定の差以下の相殺、の両方を含む意である。
【0047】
一実施形態として、プランジャ16を、プランジャユニット13の一端13a側において、一又は複数個配設される構成とし、ダミープランジャ18を、プランジャユニット13の他端13b側において、トランスファ駆動機構11の押動軸12の軸心Cを中心としてプランジャ16と対称となる位置に、当該プランジャ16と同数が配設される構成とする例が考えられる。
【0048】
その場合の具体例としては、図3の平面図に示すように、プランジャ取付け部が一列で設けられている場合には、一例として、プランジャ16が、プランジャユニット13の一端13a側におけるプランジャ取付け部14Aの位置に一個配設され、一方、ダミープランジャ18が、プランジャユニット13の他端13b側における押動軸12の軸心Cに対してプランジャ16と対称となる位置(プランジャ取付け部14Fの位置)に一個配設される構成とする例が考えられる(図4)。あるいは他の例として、プランジャ16が、プランジャユニット13の一端13a側におけるプランジャ取付け部14A、14Bの位置に二個配設され、一方、ダミープランジャ18が、プランジャユニット13の他端13b側における押動軸12の軸心Cに対してプランジャ16と対称となる位置(プランジャ取付け部14F、14Eの位置)に二個配設される構成とする例が考えられる(図5)。
【0049】
また別の例として、図6の平面図に示すように、プランジャ取付け部が二列で設けられている場合には、一例として、プランジャ16が、プランジャユニット13の一端13a側におけるプランジャ取付け部14A、14Gの位置に二個配設され、一方、ダミープランジャ18が、プランジャユニット13の他端13b側における押動軸12の軸心Cに対し対称となる位置(プランジャ取付け部14F、14Lの位置)に二個配設される構成とする例が考えられる(断面図は図4と同じになるため省略)。あるいは他の例として、プランジャ16が、プランジャユニット13の一端13a側におけるプランジャ取付け部14A、14B、14G、14Hの位置に四個配設され、一方、ダミープランジャ18が、プランジャユニット13の他端13b側における押動軸12の軸心Cに関してプランジャ16と対称となる位置(プランジャ取付け部14F、14E、14L、14Kの位置)に四個配設される構成とする例が考えられる(断面図は図5と同じになるため省略)。
【0050】
あるいは、別の実施形態として、プランジャ16を、プランジャユニット13の一端13a側において、一又は複数個配設される構成とし、ダミープランジャ18を、プランジャユニット13の他端13b側において、トランスファ駆動機構11の押動軸12の軸心Cを中心としてプランジャ16と対称ではない位置に、前述の通りプランジャユニット13に生じる回転モーメントを相殺する回転モーメントを発生させる付勢力に設定された第二付勢部材17を介在させて配設される構成とする例が考えられる(不図示)。更に別の実施形態として、プランジャ16を、プランジャユニット13の一端13a側において、一又は複数個配設される構成とし、ダミープランジャ18を、プランジャユニット13の他端13b側において、トランスファ駆動機構11の押動軸12の軸心Cを中心としてプランジャ16と対称ではない数を、前述の通りプランジャユニット13に生じる回転モーメントを相殺する回転モーメントを発生させる付勢力に設定された第二付勢部材17を介在させて配設される構成とする例が考えられる(不図示)。
【0051】
なお、ダミープランジャ18は、プランジャ取付け部(例えば、14F、14E、14L、14K等の一つもしくは複数)に対して着脱可能に取付けられており、プランジャ16の寸法等に応じて、最適な寸法(軸方向長さ)のものを使用することができる。
【0052】
このように、プランジャ16及びダミープランジャ18のいずれもが、対応するプランジャ取付け部に対して着脱可能に取付けられる構成によって、プレス装置110ひいては樹脂モールド装置100の汎用性をより一層高めることが可能となる。
【0053】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂モールドプレス装置によれば、例えば、小型のワークに対応した樹脂モールドプレス装置を備えるトランスファモールド装置を用いて、樹脂モールドプレス装置(特に、トランスファ駆動機構、プランジャユニット)を新規に設計・製作することなく、大型のワークの樹脂モールドを行うことが可能となる。したがって、ワークに合わせて新規の樹脂モールドプレス装置を設計・製作していた従来装置と比較して、設計・製作に要する時間及びコストの削減が可能となるばかりでなく、遊休装置となってしまうことを抑制して装置の稼働率を向上させることが可能となる。なお、樹脂モールド装置形態は本例に限定されること無く、既存の樹脂モールド装置であればよい。
【0054】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、プランジャ取付け部の列数、個数は、上記の実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
10 樹脂モールド金型
11 トランスファ駆動機構
13 プランジャユニット
16 プランジャ
18 ダミープランジャ
100 樹脂モールド装置
110 樹脂モールドプレス装置
T モールド樹脂
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6