(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20220509BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20220509BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20220509BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/02
B29C45/64
H01L21/56 T
(21)【出願番号】P 2018227785
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】小河 冬彦
(72)【発明者】
【氏名】奥西 祥人
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-066492(JP,A)
【文献】特開平08-252849(JP,A)
【文献】特開平05-147063(JP,A)
【文献】特開平11-058435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/02
B29C 45/64
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型を型締めする型締め機構と、
前記成形型のポット内でプランジャを移動させるプランジャ駆動機構と、
前記型締め機構による前記成形型のクランプ圧力を検出するクランプ圧力検出部と、
前記プランジャ駆動機構による樹脂のトランスファ圧力を検出するトランスファ圧力検出部と、
前記クランプ圧力検出部が検出したクランプ圧力及び前記トランスファ圧力検出部が検出したトランスファ圧力に基づいて、前記型締め機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記成形型及び前記プランジャの上昇を停止させ前記クランプ圧力及び前記トランスファ圧力を一定とする前に、前記検出したトランスファ圧力が上昇した場合に、当該トランスファ圧力に応じて前記クランプ圧力が上昇するように前記型締め機構を制御し、前記検出したトランスファ圧力が低下した場合には、当該トランスファ圧力に関わらず
、当該トランスファ圧力の低下を検出した時点での前記クランプ圧力で一定となるように前記型締め機構を制御する、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記トランスファ圧力の前回検出値と前記トランスファ圧力の今回検出値とを比較し、前記今回検出値が前記前回検出値よりも小さい場合に、
当該今回検出値に関わらず、前回検出値以下となった当該今回検出値を検出した時点での前記クランプ圧力で一定となるように前記型締め機構を制御する、請求項1記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランスファーモールド法の樹脂成形を行う樹脂成形装置としては、下型と上型とで被成形品をクランプして、下型に形成されたポットからプランジャによって樹脂を圧送し、下型と上型との間に形成されたキャビティに樹脂を供給して樹脂封止を行うものがある。
【0003】
この樹脂成形装置では、樹脂成形時において、プランジャによる樹脂の注入圧力(トランスファ圧力)がバックプレッシャとして金型を開く方向に作用することから、被成形品に作用するクランプ圧力が変化して、樹脂バリが発生する恐れがある。また、バックプレッシャを考慮してクランプ圧力をその分大きく設定することも考えられるが、そうすると、被成形品を傷めたりする恐れもある。
【0004】
このため、特許文献1に示す樹脂成形装置では、樹脂成形時において、プランジャによる樹脂の注入圧力(トランスファ圧力)に応じてクランプ圧力を制御するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の樹脂成形装置では、注入圧力(トランスファ圧力)に応じてクランプ圧力を制御するだけであり、樹脂成形時にトランスファ圧力が低下した場合にはクランプ圧力も低下することになってしまい、バックプレッシャの問題を解決することが難しい。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであり、トランスファ圧力によるバックプレッシャの影響を低減して樹脂成形品の向上することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る樹脂成形装置は、成形型を型締めする型締め機構と、前記成形型のポット内でプランジャを移動させるプランジャ駆動機構と、前記型締め機構による前記成形型のクランプ圧力を検出するクランプ圧力検出部と、前記プランジャ駆動機構による樹脂のトランスファ圧力を検出するトランスファ圧力検出部と、前記クランプ圧力検出部が検出したクランプ圧力及び前記トランスファ圧力検出部が検出したトランスファ圧力に基づいて、前記型締め機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記検出したトランスファ圧力が上昇した場合に、当該トランスファ圧力に応じて前記クランプ圧力が上昇するように前記型締め機構を制御し、前記検出したトランスファ圧力が低下した場合には、当該トランスファ圧力に関わらず前記クランプ圧力が所定値となるように前記型締め機構を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成した本発明によれば、トランスファ圧力によるバックプレッシャの影響を低減して樹脂成形品の向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を示す図である。
【
図4】同実施形態のトランスファ圧力及びクランプ圧力の継時変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、成形型を型締めする型締め機構と、前記成形型のポット内でプランジャを移動させるプランジャ駆動機構と、前記型締め機構による前記成形型のクランプ圧力を検出するクランプ圧力検出部と、前記プランジャ駆動機構による樹脂のトランスファ圧力を検出するトランスファ圧力検出部と、前記クランプ圧力検出部が検出したクランプ圧力及び前記トランスファ圧力検出部が検出したトランスファ圧力に基づいて、前記型締め機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記検出したトランスファ圧力が上昇した場合に、当該トランスファ圧力に応じて前記クランプ圧力が上昇するように前記型締め機構を制御し、前記検出したトランスファ圧力が低下した場合には、当該トランスファ圧力に関わらず前記クランプ圧力が所定値となるように前記型締め機構を制御することを特徴とする。
【0013】
このような本発明の樹脂成形装置であれば、検出したトランスファ圧力が上昇した場合に、当該トランスファ圧力に応じてクランプ圧力が上昇するように型締め機構を制御し、検出したトランスファ圧力が低下した場合には、当該トランスファ圧力に関わらずクランプ圧力が所定値となるように型締め機構を制御するので、トランスファ圧力の低下に応じてクランプ圧力が低下することが無く、トランスファ圧力によるバックプレッシャの影響を低減して樹脂成形品の向上することができる。
【0014】
具体的に前記制御部は、前記検出したトランスファ圧力が低下した場合には、当該トランスファ圧力に関わらず前記クランプ圧力が一定値となるように前記型締め機構を制御することが望ましい。この構成であれば、型締め機構の制御を簡単にすることができる。
【0015】
その他、前記制御部は、前記検出したトランスファ圧力が低下した場合には、当該トランスファ圧力に関わらず前記クランプ圧力が所定の関係で変化する値となるように前記型締め機構を制御するものであってもよい。ここで、所定の関係で変化する値は、例えばクランプ圧力が直線的又は段階的に単調増加又は単調減少する値であることが考えられる。
【0016】
具体的な制御態様としては、前記制御部は、前記トランスファ圧力の前回検出値と前記トランスファ圧力の今回検出値とを比較し、前記今回検出値が前記前回検出値よりも小さい場合に、前記クランプ圧力が低下しないように前記型締め機構を制御することが望ましい。ここで、制御部は、トランスファ圧力の前回検出値と今回検出値との差分を算出することにより、前回検出値と今回検出値とを比較してもよい。
【0017】
また、上述した樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。
【0018】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。
【0019】
<樹脂成形装置100の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、トランスファーモールド法を使用した樹脂成形装置である。この樹脂成形装置は、例えば、半導体チップが装着された基板を樹脂成形するものであり、樹脂材料として円柱状をなすタブレット状の熱硬化性樹脂(以下、「樹脂タブレット」という。)を使用するものである。なお、「基板」としては、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、樹脂基板、金属基板などの一般的な基板及びリードフレームなどが挙げられる。
【0020】
具体的に樹脂成形装置1は、
図1に示すように、樹脂封止前の基板W(以下、「封止前基板W」という。)及び樹脂タブレットTを供給する供給モジュール2と、樹脂成形する例えば2つの樹脂成形モジュール3A、3Bと、樹脂成形品を搬出するための搬出モジュール4とを、それぞれ構成要素として備えている。なお、構成要素である供給モジュール2と、樹脂成形モジュール3A、3Bと、搬出モジュール4とは、それぞれ他の構成要素に対して互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0021】
また、樹脂成形装置1は、供給モジュール2により供給される封止前基板W及び樹脂タブレットTを樹脂成形モジュール3A、3Bに搬送する搬送機構5(以下、「ローダ5」という。)と、樹脂成形モジュール3A、3Bにより樹脂成形された樹脂成形品を搬出モジュール4に搬送する搬送機構6(以下、「アンローダ6」という。)とを備えている。
【0022】
本実施形態の供給モジュール2は、基板供給モジュール7及び樹脂供給モジュール8を一体化したものである。
【0023】
基板供給モジュール7は、基板送出部71と、基板供給部72を有している。基板送出部71は、マガジン内の封止前基板Wを基板整列部に送り出すものである。基板供給部72は、基板送出部71から封止前基板Wを受け取り、受け取った封止前基板Wを所定方向に整列させて、ローダ5に受け渡すものである。
【0024】
樹脂供給モジュール8は、樹脂送出部81と、樹脂供給部82とを有している。樹脂送出部81は、後述するストッカ83から樹脂タブレットTを受け取り、樹脂供給部82に樹脂タブレットTを送り出すものである。樹脂供給部82は、樹脂送出部81から樹脂タブレットTを受け取り、受け取った樹脂タブレットTを所定方向に整列させて、ローダ5に受け渡すものである。
【0025】
樹脂成形モジュール3A、3Bは、それぞれプレス部31を有している。各プレス部31は、
図2に示すように、昇降可能な成形型である下型311と、下型311の上方に相対向して固定された成形型である上型312と、下型311及び上型312を型締めするための型締め機構313とを有している。
【0026】
下型311は、可動盤314の上面に固定されており、上型312は、上部固定盤315の下面に固定されている。型締め機構313は、可動盤314を上下移動させることによって、上型312及び下型311を型締め又は型開きするものである。なお、型締め機構313としては、サーボモータ等の回転を直線移動に変換するボールねじ機構を用いて可動盤314に伝達する直動方式のものや、サーボモータ等の動力源を例えばトグルリンクなどのリンク機構を用いて可動盤314に伝達するリンク方式のものを用いることができる。
【0027】
型締め機構313には、下型311及び上型312の型締め時に生じるクランプ圧力を検出するクランプ圧力検出部10が設けられている。クランプ圧力検出部10は、例えばひずみゲージ、ロードセル、圧力センサである。このクランプ圧力検出部10により検出されたクランプ圧力信号は、制御部9に送信される。
【0028】
下型311には、ローダ5により搬送された封止前基板Wが装着される装着部311aが形成されている。また、下型311には、ローダ5により搬送された樹脂タブレットTが装着される複数のポット311bが形成されている。さらに、下型311には、ポット311b内に樹脂タブレットTを例えば上型312に形成された樹脂通路312a及びキャビティ312bに注入するためのプランジャ316が設けられている。
【0029】
プランジャ316は、プランジャ駆動機構317によってポット311b内で昇降移動する。このプランジャ駆動機構317は、プランジャ316を下型311に対して進退移動させるものであり、これにより、プランジャ51はポット311b内において進退移動する。ここで、プランジャ駆動機構317としては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0030】
プランジャ駆動機構317には、プランジャ駆動機構317による樹脂のトランスファ圧力を検出するトランスファ圧力検出部11が設けられている。トランスファ圧力とは、より具体的にいうと、ポット311b内の樹脂タブレットTを加熱して溶融させた溶融樹脂をプランジャ316で押圧するときにプランジャ316に加わる圧力である。トランスファ圧力検出部11は、例えばひずみゲージ、ロードセル、圧力センサである。このトランスファ圧力検出部11により検出されたトランスファ圧力信号は、制御部9に送信される。
【0031】
その他、上型312と下型311とには、それぞれヒータ等の加熱部(
図2のヒータ318参照)が埋め込まれている。この加熱部により上型312及び下型311は、通常は180℃程度に加熱される。
【0032】
<樹脂成形装置100の樹脂成形動作>
以下、本実施形態の樹脂成形装置100の樹脂成形の基本動作を説明する。
【0033】
基板送出部71は、マガジン内の封止前基板Wを基板供給部72に送り出す。基板供給部72は、受け取った封止前基板Wを所定の方向へ整列させて、ローダ5に引き渡す。これと並行して、樹脂送出部81は、ストッカ83から受け取った樹脂タブレットTを樹脂供給部82に送り出す。樹脂供給部82は、受け取った樹脂タブレットTのうち必要な個数(
図1では4個)をローダ5に引き渡す。
【0034】
次に、ローダ5が、受け取った2枚の封止前基板Wと4個の樹脂タブレットTとを、プレス部31へ同時に搬送する。ローダ5は、封止前基板Wを下型311の装着部311aに、樹脂タブレットTを下型311に形成されたポット311bの内部に、それぞれ供給する。
【0035】
その後、型締め機構313を用いて上型312と下型311とを型締めする。そして、各ポット311b内の樹脂タブレットTを加熱して溶融させた溶融樹脂をプランジャ316によって押圧する。これにより、溶融樹脂は、樹脂通路312aを通して上型312に形成されたキャビティ312bの内部に注入される。引き続き、硬化に必要な所要時間だけ溶融樹脂を加熱することによって、溶融樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成する。これにより、キャビティ312b内の半導体チップとその周辺の基板とは、キャビティ312bの形状に対応して成形された硬化樹脂(封止樹脂)内に封止される。
【0036】
次に、硬化に必要な所要時間の経過後において、上型312と下型311とを型開きして、封止済基板(図示なし)を離型する。その後、アンローダ6を使用して、プレス部31により樹脂封止された封止済基板(樹脂成形品)を、搬出モジュール4の基板収容部41に収容する。
【0037】
上記の一連の動作を含む樹脂成形装置1全体の動作は、制御部9により制御される。この制御部9は、
図1においては、供給モジュール2に設けているが他のモジュールに設けてもよい。なお、制御部9は、例えば、CPU、内部メモリ、AD変換器、入出力インバータ等を有する専用又は汎用のコンピュータから構成される。
【0038】
<制御部9の具体的な制御内容>
次に、制御部9の具体的な制御内容について
図3を参照して説明する。
【0039】
(ステップS1:下型上昇開始)
封止前基板Wと4個の樹脂タブレットTとがプレス部31に供給された後に、制御部9は、型締め機構313を制御して、下型311を上昇させる。
【0040】
(ステップS2:クランプ圧力検出)
このとき、型締め機構313に設けられたクランプ圧力検出部10がクランプ圧力を検出して、そのクランプ圧力信号を制御部9に送信する。
【0041】
(ステップS3:クランプ圧力、設定値a≦検出値P)
制御部9は、クランプ圧力の検出値Pが予め定めた設定値a以上(設定値a≦検出値P)となったか否かを判断する。
【0042】
検出値Pが設定値aよりも小さい場合には、(ステップS2:クランプ圧力検出)に戻り、制御部9は、型締め機構313を制御して下型311の上昇を継続し、クランプ圧力検出部10は、クランプ圧力を検出する。
【0043】
(ステップS4:下型上昇停止)
一方、検出値Pが設定値a以上となった場合には、制御部9は、型締め機構313を制御して、下型311の上昇を停止する。
【0044】
(ステップS5:プランジャ上昇開始)
その後、制御部9は、プランジャ駆動機構317を制御して、プランジャ316の上昇を開始する。制御部9は、検出値Pが設定値aの8割以上のクランプ圧力となったタイミングでプランジャ316の上昇を開始させるなど、検出値Pが設定値aになる前にプランジャ316の上昇を開始させてもよい。なお、制御部9によるプランジャ駆動機構317の制御は、速度制御段階と圧力制御段階とを有し、例えばプランジャの位置が所定位置に到達するまでは速度制御段階であり、その後、圧力制御段階となる。プランジャ位置は、例えばプランジャ駆動機構317であるサーボモータのエンコーダによって検出することができる。
【0045】
(ステップS6:トランスファ圧力及びプランジャ位置検出)
このとき、プランジャ駆動機構317に設けられたトランスファ圧力検出部11がトランスファ圧力を検出して、そのトランスファ圧力信号を制御部9に送信する。また、プランジャ駆動機構317に設けられたプランジャ位置検出部(不図示)がプランジャ316の位置を検出して、そのプランジャ位置信号を制御部9に送信する。
【0046】
(ステップS7:トランスファ圧力及びプランジャ位置、設定値α≦検出値X)
制御部9は、トランスファ圧力及びプランジャ位置のそれぞれの検出値Xが、予め定めたそれぞれの設定値α以上(設定値α≦検出値X)となったか否かを判断する。
なお、ここでは、トランスファ圧力及びプランジャ位置の両方の検出値Xがそれぞれの設定値α以上であることを条件(AND条件)としているが、何れか一方の検出値Xが設定値α以上であることを条件(OR条件)としてもよい。
【0047】
検出値Xが設定値αよりも小さい場合には、(ステップS6:トランスファ圧力及びプランジャ位置検出)に戻り、制御部9は、プランジャ駆動機構317を制御してプランジャ316の上昇を継続し、トランスファ圧力検出部11及びプランジャ位置検出部は、トランスファ圧力及びプランジャ位置を検出する。
【0048】
(ステップS8:下型上昇再開)
一方、検出値Xが設定値α以上の場合には、制御部9は、型締め機構313を制御して、下型311の上昇を再開する。これにより、クランプ圧力は上昇する(
図4参照)。
【0049】
(ステップS9:クランプ圧力及びトランスファ圧力検出)
このとき、クランプ圧力検出部10がクランプ圧力を検出して制御部9に送信し、トランスファ圧力検出部11がトランスファ圧力を検出して制御部9に送信する。
【0050】
(ステップS10:トランスファ圧力、前回検出値≧今回検出値)
制御部9は、トランスファ圧力の今回検出値と前回検出値とを比較し、今回検出値が前回検出値以下(前回検出値≦今回検出値)となったか否かを判断する。ここで、今回検出値は、ステップS10の処理を行うために新たに取得したトランスファ圧力の検出値のことである。前回検出値は、今回検出値の取得以前に取得したトランスファ圧力の検出値であって、今回検出値の直前に取得した検出値であっても良いし、所定時間前に取得した検出値であってもよい。
【0051】
(ステップS11:トランスファ圧力に応じてクランプ圧力を追従制御)
今回検出値が前回検出値よりも大きい場合には、制御部9は、トランスファ圧力に応じてクランプ圧力を制御する。つまり、トランスファ圧力の上昇に追従してクランプ圧力を上昇させるべく、型締め機構313を制御する(
図4参照)。
【0052】
(ステップS12:クランプ圧力、設定値b≦検出値Q)
そして、制御部9は、クランプ圧力の検出値Qが予め定めた設定値b以上(設定値b≦検出値Q)となったか否かを判断する。
【0053】
(ステップS13:下型上昇停止)
クランプ圧力の検出値Qが設定値b以上の場合には、制御部9は、型締め機構313を制御して、下型311の上昇を停止する。
【0054】
クランプ圧力の検出値Qが設定値bよりも小さい場合には、制御部9は、次のステップ(ステップS14:トランスファ圧力、設定値β≦検出値Y)に移る。
【0055】
(ステップS14:トランスファ圧力、設定値β≦検出値Y)
次に、制御部9は、トランスファ圧力の検出値Yが予め定めた設定値β以上(設定値β≦検出値Y)となったか否かを判断する。
【0056】
(ステップS15:プランジャ上昇停止)
トランスファ圧力の検出値Yが設定値β以上の場合には、制御部9は、プランジャ駆動機構317を制御して、プランジャ316の上昇を停止する。これにより、樹脂成形時における型開き前の制御が終了する。
【0057】
一方、トランスファ圧力の検出値Yが設定値βよりも小さい場合には、(ステップS9:クランプ圧力及びトランスファ圧力検出)に戻り、制御部9は、型締め機構313を制御して下型311の上昇を継続し、クランプ圧力検出部10及びトランスファ圧力検出部11は、クランプ圧力及びトランスファ圧力を検出する。
【0058】
(ステップS16:クランプ圧力を一定に制御)
上記の(ステップS10:トランスファ圧力、前回検出値≧今回検出値)において、今回検出値が前回検出値以下の場合には、制御部9は、トランスファ圧力に関わらずクランプ圧力を予め定めた所定値となるように制御する(ステップS16)。本実施形態の制御部9は、クランプ圧力が一定値となるように型締め機構313を制御する(
図4参照)。詳細には、制御部9は、前回検出値以下となった今回検出値を検出した時点でのクランプ圧力で一定に制御する。
【0059】
なお、この一定制御時においても、クランプ圧力検出部10及びトランスファ圧力検出部11は、クランプ圧力及びトランスファ圧力を検出しており(ステップS9)、制御部9は、常時、トランスファ圧力の今回検出値が前回検出値以下(前回検出値≦今回検出値)となったか否かを判断する(ステップS10)。
【0060】
ここで、制御部9は、
図4に示すように、クランプ圧力の一定制御からクランプ圧力の追従制御に切り替える場合に、今回検出値が、クランプ圧力の追従制御からクランプ圧力の一定制御に切り替えた際の検出値を超えた場合としている。なお、トランスファ圧力の今回検出値と直前の前回検出値との比較により、クランプ圧力の追従制御とクランプ圧力の一定制御とを切り替える構成としてもよい。
【0061】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、検出したトランスファ圧力が上昇した場合に、当該トランスファ圧力に応じてクランプ圧力が上昇するように型締め機構313を制御し、検出したトランスファ圧力が低下した場合には、当該トランスファ圧力に関わらずクランプ圧力が所定値となるように型締め機構313を制御するので、トランスファ圧力の低下に応じてクランプ圧力が低下することが無く、トランスファ圧力によるバックプレッシャの影響を低減して樹脂成形品の向上することができる。
【0062】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0063】
例えば、クランプ圧力検出部10は、型締め機構313による下型311及び上型312のクランプ圧力を検出するものであれば、型締め機構313に設ける必要はなく、型締め機構313及び可動盤314の間、可動盤314及び下型311の間、又は、上部固定盤315及び上型312の間などに設けてもよい。
【0064】
また、トランスファ圧力検出部11は、プランジャ駆動機構317による樹脂のトランスファ圧力を検出するものであれば、プランジャ駆動機構317に設ける必要はなく、プランジャ316及びプランジャ駆動機構317の間などに設けてもよい。
【0065】
前記実施形態の制御フローでは、(ステップS12:クランプ圧力、設定値b≦検出値Q)を判断した後に、(ステップS14:トランスファ圧力、設定値β≦検出値Y)を判断しているが、逆であってもよいし、ステップS12及びステップS14を並列的に処理してもよい。
【0066】
さらに、制御部9は、検出したトランスファ圧力が低下した場合には、当該トランスファ圧力に関わらずクランプ圧力が所定の関係で変化する値となるように型締め機構313を制御するものであってもよい。この場合、制御部9は、クランプ圧力が直線的又は段階的に単調増加する値となるように型締め機構313を制御することが考えられる。この場合、クランプ圧力が破損しない程度の増加量とする。また、制御部9は、クランプ圧力が直線的又は段階的に単調減少する値であることが考えられる。この場合、トランスファ圧力によるバックプレッシャの影響を低減できる程度の減少量とする。
【0067】
前記実施形態においては、基板供給・収納モジュールAと樹脂材料供給モジュールCとの間に、2個の樹脂成形モジュールBを接続した構成であるが、基板供給・収納モジュールAと樹脂材料供給モジュールCとを1つのモジュールにして、そのモジュールに樹脂成形モジュールBを接続した構成としても良い。また、樹脂成形装置は、前記実施形態のように各モジュールにモジュール化されていなくても良い。
【0068】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
100・・・樹脂成形装置
J ・・・樹脂
2 ・・・下型(成形型)
3 ・・・上型(成形型)
4 ・・・型締め機構
9 ・・・制御部
10 ・・・クランプ圧力検出部
11 ・・・トランスファ圧力検出部