(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】角形金属管切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 21/00 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B23D21/00 530B
B23D21/00 Z
(21)【出願番号】P 2018232024
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】592260572
【氏名又は名称】日鉄めっき鋼管株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柵木 優平
(72)【発明者】
【氏名】坂入 悟
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 晃浩
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179524(JP,A)
【文献】特開平01-216715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 15/04,21/00,23/00,
33/00-33/02,35/00,
B26D 3/16,
B21D 24/16,28/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形金属管をプレスカットするための角形金属管切断機であって、前記角形金属管は、第1角部と、前記第1角部に対向する第2角部と、前記第2角部から延在された第1及び第2壁部とを有しており、
前記角形金属管の軸方向に交わる面に沿って変位可能に設けられた上刃と、
前記第1角部側から前記第2角部側に向けて前記上刃が前記角形金属管をプレスカットするように、前記角形金属管を保持する一対の下刃ブロックと
を備え、
前記一対の下刃ブロックには、
前記第1及び第2壁部の外面にそれぞれ対向する第1及び第2対向面と、
前記上刃のプレスカット方向に係る前記第1及び第2対向面のそれぞれの下方において前記上刃の幅方向に並べて配置された複数のスクレーパと
が設けられている、
角形金属管切断機。
【請求項2】
前記複数のスクレーパは、前記上刃のプレスカット方向に沿って各スクレーパを見た時に、前記上刃の幅方向に係る各スクレーパの側端部が互いに重なるか又は隣接するように配置されている、
請求項1記載の角形金属管切断機。
【請求項3】
前記複数のスクレーパは、前記上刃の幅方向に関して最も外側に配置された最外スクレーパを含み、
前記上刃の幅方向に係る前記最外スクレーパの外側端部は、前記第1又は第2対向面の外側端部よりも外方に位置している、
請求項1又は請求項2に記載の角形金属管切断機。
【請求項4】
前記複数のスクレーパは、
前記一対の下刃ブロックに設けられた孔の内部に配置された付勢体と、
前記孔の奥行方向に沿って進退可能に前記付勢体によって付勢されたピンと
を有し、
前記孔の奥行方向に沿って前記ピンを見た時に、前記上刃のプレスカット方向に係る上流側の前記ピンの上縁には、前記第1又は第2対向面と平行に延在されている平行部が設けられている、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の角形金属管切断機。
【請求項5】
前記ピンは、前記孔の奥行方向に沿って前記ピンを見た時に矩形部の両側に円弧部が設けられた外形を有しており、
前記矩形部の上縁が平行部を構成している、
請求項4記載の角形金属管切断機。
【請求項6】
前記ピンの先端には、前記上刃のプレスカット方向及び幅方向に延在された先端面が設けられており、
前記上刃のプレスカット方向に係る前記先端面の下縁は、前記上刃の幅方向に延在されている、
請求項4又は請求項5に記載の角形金属管切断機。
【請求項7】
前記角形金属管は、前記角形金属管の軸方向と平行な方向に流され、
前記一対の下刃ブロックをそれぞれ含み、前記角形金属管の流れ方向に並べて配置されるとともに、前記上刃が通過可能な上刃通過空間を互いの間に形成する一対の下刃体
を備える、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の角形金属管切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形金属管をプレスカットするための角形金属管切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の角形金属管切断機としては、例えば下記の特許文献1等に示されているような構成を挙げることができる。すなわち、従来の角形金属管切断機は、一対の下刃ブロックにより角形金属管を挟持しているとき、下刃ブロックの端面に沿って上刃を変位させることにより角形金属管をプレスカットできるように構成している。下記の特許文献2では、角形金属管ではなく、丸形金属管の切断機において、一対の下刃ブロックのそれぞれの下部に1つずつピン(スクレーパ)を設けて、上刃に付着した切屑をピンにより掻き落とすことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-179524号公報
【文献】特開平1-216715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の角形金属管切断機に対して、特許文献2で提案されている構成(一対の下刃ブロックのそれぞれの下部に1つずつピンを設ける構成)を適用し、角形金属管をプレスカットしたところ、上刃に付着した切屑を掻き落とすことができないことがあった。切屑が上刃に残ると、その切屑に起因して角形金属管の端部に変形が生じることがある。
【0005】
角形金属管を切断した際の切屑が上刃に残る原因は、以下のように考えられる。すなわち、丸形金属管を切断した際の切屑は、上刃の先端形状に倣って丸形金属管が押しつぶされたような形状を有し、部分的に千切れることなく全体として1つの物体として生成されることが多い。これは、丸形金属管が周方向に一様な形状を有しているためと考えられる。丸形金属管の切屑が上述のようなものであるため、特許文献2で提案されている構成により丸形金属管の切屑を掻き落とすことができると考えられる。
【0006】
一方、角形金属管は、周方向に互いに離れて位置する複数の角部と、それら角部の間に設けられた壁部とを有している。すなわち、角形金属管の形状は周方向に一様でない。角形金属管を切断した際の切屑は、角部の位置で千切れたり千切れなかったりすることがあり、形状にばらつきが生じやすい。特許文献2で提案されている構成では、下刃ブロックのそれぞれの下部に1つずつピンが設けられているだけなので、切屑の形状のばらつきに対応できず、上述のような問題が生じると考えられる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、角形金属管を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができ、角形金属管の端部に変形が生じる虞を低減できる角形金属管切断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る角形金属管切断機は、角形金属管をプレスカットするための角形金属管切断機であって、角形金属管は、第1角部と、第1角部に対向する第2角部と、第2角部から延在された第1及び第2壁部とを有しており、角形金属管の軸方向に交わる面に沿って変位可能に設けられた上刃と、第1角部側から第2角部側に向けて上刃が角形金属管をプレスカットするように、角形金属管を保持する一対の下刃ブロックとを備え、一対の下刃ブロックには、第1及び第2壁部の外面にそれぞれ対向する第1及び第2対向面と、上刃のプレスカット方向に係る第1及び第2対向面のそれぞれの下方において上刃の幅方向に並べて配置された複数のスクレーパとが設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の角形金属管切断機によれば、上刃のプレスカット方向に係る第1及び第2対向面のそれぞれの下方において上刃の幅方向に複数のスクレーパが並べて配置されているので、角形金属管を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができ、角形金属管の端部に変形が生じる虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1による角形金属管切断機を示す斜視図である。
【
図2】
図1の角形金属管と第1及び第2下刃ブロックの保持溝とを示す説明図である。
【
図3】
図1の上流側下刃体の第1及び第2下刃ブロックを示す正面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2による角形金属管切断機1における上流側下刃体の第1及び第2下刃ブロックを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による角形金属管切断機1を示す斜視図である。
図1に示す角形金属管切断機1は、角形金属管2をプレスカット(押し切り)するための装置である。角形金属管2は、角形金属管2の軸方向2aと平行な方向に流される。本実施の形態の角形金属管2は、
図1の左側から右側に向けて流されている。角形金属管2が流される方向を流れ方向2bと呼ぶ。流される角形金属管2を角形金属管切断機1が所定タイミングでプレスカットすることにより、所定長の角形金属管2が得られる。
【0013】
角形金属管2は角形の断面形状を有する金属管である。本実施の形態の角形金属管2の断面形状は正方形である。しかしながら、角形金属管2の断面形状は、例えば長方形等の他の矩形又は多角形であってもよい。角形金属管2を構成する金属管は、鋼管、又は銅管等の他の金属管とすることができる。鋼管の素材鋼としては、普通鋼、ステンレス鋼、ハイテン鋼又は特殊鋼を用いることができる。
【0014】
角形金属管切断機1は、上刃10、上流側下刃体11、下流側下刃体12及び一対のスペーサ13を有している。上流側下刃体11及び下流側下刃体12は、一対の下刃体を構成している。
【0015】
上刃10は、角形金属管2の軸方向2aに交わる面に沿って変位可能に設けられた刃物である。上刃10が変位する面は、角形金属管2の軸方向2aに直交する面であることが好ましい。上刃10は、上死点と下死点との間を往復するように構成されており、上死点から下死点に向かうときに角形金属管2をプレスカットとする。
図1は、上刃10が上死点に位置している状態を示している。上刃10の上死点から下死点に向かう方向を、上刃10のプレスカット方向10aと呼ぶ。上刃10のプレスカット方向10aは、鉛直方向と平行であってもよいが、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。上刃10のプレスカット方向10aを鉛直方向に対して45°傾斜させることができる。上刃10が変位する面内で上刃10のプレスカット方向10aに直交する方向を上刃10の幅方向10bと呼ぶ。本実施の形態の上刃10は、先端10cに向けて先細り状となる外形を有している。本実施の形態の上刃10の先端10cは、上刃10の幅方向10bに係る中央に配置されている。上刃10の先端外形は、例えば幅方向10bに直線状に延びるフラット状等の他の形状としてもよい。上刃10の全体的な先端外形をフラット状とする場合、角形金属管2と最初に接する先端位置に高さ5mm程度の小さな三角豆刃を形成してもよい。
【0016】
上流側下刃体11は、角形金属管2を保持するための第1及び第2下刃ブロック111,112を有している。第1及び第2下刃ブロック111,112は、互いの間に角形金属管2が位置するように角形金属管2の両側に配置されている。また、第1及び第2下刃ブロック111,112は、上刃10の幅方向10bに互いに近づく方向及び離れる方向に変位可能に設けられている。第1及び第2下刃ブロック111,112には、角形金属管2の外形に適合された保持溝113,114が設けられている。第1及び第2下刃ブロック111,112が互いに近づけられていとき、保持溝113,114により角形金属管2が保持される。
【0017】
下流側下刃体12は、角形金属管2の流れ方向2bに係る上流側下刃体11の下流側に配置されている。下流側下刃体12の構成は、上流側下刃体11の構成と同様である。すなわち、下流側下刃体12は、上刃10の幅方向10bに互いに近づく方向及び離れる方向に変位可能な第3及び第4下刃ブロック121,122を有している。
図1では表れていないが、第3及び第4下刃ブロック121,122は、上述の第1及び第2下刃ブロック111,112と同様に保持溝を有している。
【0018】
一対のスペーサ13は、角形金属管2の流れ方向2bに係る上流側下刃体11と下流側下刃体12との間に配置されている。また、一対のスペーサ13は、上刃10の幅方向10bに係る上流側下刃体11及び下流側下刃体12の外縁側に配置されている。上刃10の幅方向10bに係る外縁側又は外側とは、上刃10の幅方向10bに関して角形金属管2から離れた側を指す。一対のスペーサ13が上流側下刃体11と下流側下刃体12との間に配置されることにより、上刃10が通過可能な上刃通過空間130が上流側下刃体11と下流側下刃体12との間に形成されている。
【0019】
本実施の形態では、上流側下刃体11の第1下刃ブロック111、下流側下刃体12の第3下刃ブロック121及びスペーサ13は、互いに締結されており、上刃10の幅方向10bに互いに一体に変位されるように構成されている。同様に、上流側下刃体11の第2下刃ブロック112、下流側下刃体12の第4下刃ブロック122及びスペーサ13は、互いに締結されており、上刃10の幅方向10bに互いに一体に変位されるように構成されている。
【0020】
次に、
図2は、
図1の角形金属管2と第1及び第2下刃ブロック111,112の保持溝113,114とを示す説明図である。
図2の中央には、角形金属管2の断面が示されている。角形金属管2は、第1角部21と、第1角部21に対向する第2角部22と、第2角部22から延在された第1及び第2壁部23,24とを有している。本実施の形態の角形金属管2は、上刃10が第1角部21側から第2角部22側に向けて角形金属管2をプレスカットするように第1~第4下刃ブロック111,112,121,122(
図1参照)によって保持されている。上刃10のプレスカット方向10aに関連し、第1角部21を上流側角部と呼び、第2角部22を下流側角部と呼ぶことができる。また、第1及び第2壁部23,24を下流壁部と呼ぶことができる。
【0021】
第1及び第2下刃ブロック111,112の保持溝113,114には、角形金属管2の第1及び第2壁部23,24の外面に対向する第1及び第2対向面115,116が設けられている。第1及び第2対向面115,116は、上刃10のプレスカット方向10aに関連し下流側対向面と呼ぶことができる。これら第1及び第2対向面115,116は、角形金属管2の第1及び第2壁部23,24の外面と接触されていてもよい。
【0022】
次に、
図3は
図1の上流側下刃体11の第1及び第2下刃ブロック111,112を示す正面図であり、
図4は
図3のスクレーパ5の側面図であり、
図5は
図4のピン52の正面図である。
【0023】
図3には、下流側下刃体12の第3及び第4下刃ブロック121,122に対向する第1及び第2下刃ブロック111,112の内端面が示されている。
図3では角形金属管2の図示を省略しているが、角形金属管2と保持溝113,114との関係は
図2に示す通りである。
図3に示すように、第1及び第2下刃ブロック111,112の内端面には、複数の締結孔3、凹部4及び複数のスクレーパ5が設けられている。
【0024】
締結孔3は、上刃10の幅方向10bに係る上流側下刃体11の外縁側に配置されているとともに、上刃10のプレスカット方向10aに互いに離間して配置されている。ボルト等の締結部材が締結孔3に通されて、上流側下刃体11、下流側下刃体12及びスペーサ13が互いに締結される。
【0025】
凹部4は、上刃10のプレスカット方向10aに係る第1及び第2下刃ブロック111,112の内端面の下部に設けられている。本実施の形態の凹部4は、全体として三角形状の外形を有している。凹部4は、第1及び第2下刃ブロック111,112の内端面の他の部分よりも第3及び第4下刃ブロック121,122の内端面から遠ざかるように凹まされている。凹部4は、上刃10が角形金属管2をプレスカットした際の切屑が上流側下刃体11と下流側下刃体12との間に嵌まり込む虞を低減するために設けられている。
【0026】
複数のスクレーパ5は、上刃10のプレスカット方向10aに係る第1及び第2対向面115,116のそれぞれの下方において上刃10の幅方向10bに並べて配置されている。本実施の形態では、第1及び第2対向面115,116のそれぞれの下方に3つずつスクレーパ5が配置されている。スクレーパ5は、上刃10が角形金属管2をプレスカットした際に上刃10に付着する切屑を掻き落とすための構成である。角形金属管2をプレスカットした際の切屑は、角部の位置で千切れたり千切れなかったりすることがあり、形状にばらつきが生じやすい。本実施の形態のように第1及び第2対向面115,116のそれぞれの下方において複数のスクレーパ5が上刃10の幅方向10bに並べて配置されていることで、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができ、角形金属管の端部に変形が生じる虞を低減できる。
【0027】
本実施の形態の各スクレーパ5は、上刃10のプレスカット方向10aに沿って各スクレーパ5を見た時に、上刃10の幅方向10bに係る各スクレーパ5の側端部5aが互いに重なり合うように配置されている。換言すると、各スクレーパ5は、上刃10のプレスカット方向10aに沿って各スクレーパ5を見た時に上刃10の幅方向10bに関して各スクレーパ5の間に隙間が生じないように配置されている。各スクレーパ5の間に隙間が生じることを回避することにより、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。スクレーパ5の側端部5aは、後述のピン52の側端部と理解することができる。
【0028】
なお、各スクレーパ5は、上刃10のプレスカット方向10aに沿って各スクレーパ5を見た時に、上刃10の幅方向10bに係る各スクレーパ5の側端部5aが互いに隣接するように配置されていてもよい。このような配置でも、各スクレーパ5の間に隙間が生じることを回避して、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。また、各スクレーパ5は、上刃10のプレスカット方向10aに沿って各スクレーパ5を見た時に、上刃10の幅方向10bに係る各スクレーパ5の側端部5aが互いに離間するように配置されていてもよい。各スクレーパ5の側端部5aが離間されていても、第1及び第2対向面115,116のそれぞれの下方において1つずつスクレーパ5が配置される態様と比較して、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。
【0029】
複数のスクレーパ5は、上刃10の幅方向10bに関して最も外側に配置された最外スクレーパ50を含んでいる。上刃10の幅方向10bに係る最外スクレーパ50の外側端部50aは、第1又は第2対向面115,116の外側端部115a,116aよりも外方に位置している。具体的には、第1下刃ブロック111における最外スクレーパ50の外側端部50aが第1対向面115の外側端部115aよりも外方に位置し、第2下刃ブロック112における最外スクレーパ50の外側端部50aが第2対向面116の外側端部116aよりも外方に位置している。角形金属管2を切断した際の切屑は、上刃10の幅方向10bに関して第1及び第2対向面115,116の外側端部115a,116aの間で発生する。最外スクレーパ50が上述のように配置されていることで、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。
【0030】
図4に示すように、各スクレーパ5は、付勢体51とピン52とを有している。付勢体51は、第1及び第2下刃ブロック111,112に設けられた孔117の内部に配置されている。本実施の形態の付勢体51は、コイルバネによって構成されている。しかしながら、付勢体51として、例えば皿バネ、竹の子バネ又は空気バネ等の他の構成を用いてもよい。ピン52は、後端側が孔117に収められるとともに、先端が孔117から突出する柱状の部材である。ピン52は、孔117の奥行方向117aに沿って進退可能に付勢体51によって付勢されている。ピン52の先端上面53は曲面によって構成されている。プレスカット方向10aに沿って降下する上刃10が先端上面53に当接されることにより、付勢体51の付勢力に逆らってピン52が孔117の奥へと押される。上刃10が下死点から上死点へと向かい、ピン52が上刃10と非接触となったとき、付勢体51の付勢力によりピン52が突出される。
【0031】
図3及び
図5のように孔117の奥行方向117aに沿ってピンを見た時に、上刃10のプレスカット方向10aに係る上流側のピン52の上縁には、第1又は第2対向面115,116と平行に延在されている平行部54が設けられている。第1又は第2対向面115,116と平行に延在されている平行部54が設けられることで、第1又は第2対向面115,116とスクレーパ5との間隔が局所的に狭くなることを回避でき、その局所的に狭い箇所が破損することを回避できる。
【0032】
ピン52は、
図3及び
図5に示すように孔117の奥行方向117aに沿ってピン52を見た時に、矩形部550(
図5参照)の両側に円弧部551(
図5参照)が設けられた外形を有している。この外形は、俵形、陸上トラック形又はカプセル形と呼ぶこともできる。矩形部550の上縁が平行部54を構成することができる。円弧部551は、半円とすることができる。
【0033】
図4及び
図5に示すように、ピン52の先端には、上刃10のプレスカット方向10a及び幅方向10bに延在された平面状の先端面56が設けられている。プレスカット方向10aに沿って上刃10が変位する時、上刃10の表面上を先端面56が摺動する。
図5に特に表れているように、上刃10のプレスカット方向10aに係る先端面56の下縁56aは、上刃10の幅方向10bに延在されている。上刃10が下死点から上死点へと戻るとき、上刃10に付着した切屑は先端面56の下縁56aに引っ掛かる。上述のように下縁56aが上刃10の幅方向10bに延在されていることで、先端面56の下縁56aに切屑が引っ掛かりやすくすることができ、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。ピン52の外形が俵形等とされていることで、ピン52の外形が真円形の場合と比較して下縁56aの延在幅を長くでき、下縁56aに切屑がより引っ掛かりやすくすることができる。下縁56aの下部には凹部57が設けられており、下縁56aは突状の角部を構成している。
【0034】
以上の説明では、第1及び第2下刃ブロック111,112の構成について説明した。第3及び第4下刃ブロック121,122の構成は、第1及び第2下刃ブロック111,112の構成と同様である。第3及び第4下刃ブロック121,122のスクレーパ5は、第1及び第2下刃ブロック111,112のスクレーパ5と向かい合うように配置される。
【0035】
このような角形金属管切断機1では、上刃10のプレスカット方向10aに係る第1及び第2対向面115,116のそれぞれの下方において上刃10の幅方向10bに複数のスクレーパ5が並べて配置されているので、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができ、角形金属管2の端部に変形が生じる虞を低減できる。
【0036】
また、上刃10のプレスカット方向10aに沿って各スクレーパ5を見た時に、上刃10の幅方向10bに係る各スクレーパ5の側端部5aが互いに重なるか又は隣接するように各スクレーパ5が配置されているので、各スクレーパ5の間に隙間が生じることを回避でき、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。
【0037】
また、上刃10の幅方向10bに係る最外スクレーパ50の外側端部50aが第1又は第2対向面115,116の外側端部115a,116aよりも外方に位置しているので、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。
【0038】
また、孔117の奥行方向117aに沿ってピン52を見た時に、上刃10のプレスカット方向10aに係る上流側のピンの上縁に第1又は第2対向面115,116と平行に延在されている平行部54が設けられているので、第1又は第2対向面115,116とスクレーパ5との間隔が局所的に狭くなることを回避でき、その局所的に狭い箇所が破損することを回避できる。
【0039】
また、ピン52の矩形部550の上縁が平行部54を構成しているので、第1又は第2対向面115,116とスクレーパ5との間隔が局所的に狭くなることをより確実に回避できる。
【0040】
また、上刃10のプレスカット方向10aに係る先端面56の下縁56aが上刃10の幅方向10bに延在されているので、先端面56の下縁56aに切屑が引っ掛かりやすくすることができ、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。特に、ピン52が矩形部550と円弧部551とを有する外形を有していることで、ピン52の外形が真円形の場合と比較して下縁56aの延在幅を長くでき、下縁56aに切屑がより引っ掛かりやすくすることができる。
【0041】
また、スクレーパ5が設けられた第1~第4下刃ブロック111,112,121,122をそれぞれ含む上流側下刃体11及び下流側下刃体12が設けられているので、角形金属管2を切断した際の切屑をより確実に掻き落とすことができる。
【0042】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2による角形金属管切断機1における上流側下刃体11の第1及び第2下刃ブロック111,112を示す正面図である。
図6に示すように、本実施の形態の角形金属管切断機1によりプレスカットされる角形金属管2は、長辺及び短辺を有する長方形状の断面を有している。角形金属管2は、第1角部21と第2角部22とが上刃10の幅方向10bに離間するように第1及び第2下刃ブロック111,112に保持されている。本実施の形態の上刃10の先端10cは、プレスカット方向10aに変位される際に角形金属管2の第1角部21に先端10cが最初に接触するように、上刃10の幅方向10bに係る中央からずれて配置されている。
【0043】
第1及び第2下刃ブロック111,112は、プレスカット方向10aに係る上流側において第1角部21の位置で対向し、プレスカット方向10aに係る下流側において第2角部22の位置で対向するように配置されている。第1下刃ブロック111の第1対向面115は、第2下刃ブロック112の第2対向面116よりも短い。第1対向面115の下方には2つのスクレーパ5が配置され、第2対向面116の下方には3つのスクレーパ5が配置されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0044】
このように、長方形状の断面を有する角形金属管2をプレスカットするための角形金属管切断機1にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 角形金属管切断機
10 上刃
10a プレスカット方向
10b 幅方向
11 上流側下刃体(一対の下刃体)
12 下流側下刃体(一対の下刃体)
117 孔
117a 奥行方向
130 上刃通過空間
2 角形金属管
5 スクレーパ
50 最外スクレーパ
50a 外側端部
51 付勢体
52 ピン
54 平行部
550 矩形部
551 円弧部
56 先端面
56a 下縁