(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】局所ニューロモデュレーション技術を行うための皮質刺激部位の識別及び誘導方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20220509BHJP
A61N 2/04 20060101ALI20220509BHJP
A61B 5/024 20060101ALI20220509BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20220509BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20220509BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N2/04
A61B5/024
A61B5/33 100
A61B5/352
(21)【出願番号】P 2018549748
(86)(22)【出願日】2016-12-09
(86)【国際出願番号】 NL2016050865
(87)【国際公開番号】W WO2017099603
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-09
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2016-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518204316
【氏名又は名称】ニューロケア グループ ネザーランズ ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アルンス マルティン ヴィルコ
(72)【発明者】
【氏名】ブラントウェイク アリエ クイリヌス バスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】イセゲル タビタ アマンダ
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0085316(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174418(US,A1)
【文献】特表2011-509731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0119689(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00- 1/36
A61N 2/00- 2/04
A61B 5/00- 5/352
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加対象者における少なくとも1つの皮質刺激部位を、第1局所ニューロモデュレーション技術を用いることによって行う、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に関係する精神疾患又は神経疾患の治療のために使用可能な標的として識別するシステムであって、
前記対象者の異なる皮質領域に第2局所ニューロモデュレーション技術のパルスを印加するモデュレーション装置であって、規定された位置において、前記対象者の頭部上を移動するように構成されるモデュレーション装置と、
前記モデュレーション装置から行われる前記皮質領域でのパルス印加と同時に、前記皮質領域について、前記対象者の心拍に代表される精神生理学的信号を測定する検出器と、を備え、
前記検出器は前記モデュレーション装置に機能的に結合されて、前記モデュレーション装置が前記パルスを印加して
前記腹内側前頭前野を間接的に又はシナプス経由で刺激している間に同時に前記精神生理学的信号を測定し、
前記モデュレーション装置及び前記検出器は互いに機能的に結合されて、前記精神生理学的信号に心拍数の減少又は心拍変動の増加を示す規則的な変化を認めると、対応する皮質領域の位置を、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の前記脳深部領域に機能的に接続されている少なくとも1つの皮質刺激部位として識別して、前記治療の前記標的を提示する、システム。
【請求項2】
前記検出器は前記モデュレーション装置に機能的に結合されて、前記モデュレーション装置がニューロモデュレーションを行っている間に同時に前記精神生理学的信号を測定し、
前記システムはさらに、前記局所ニューロモデュレーションを行っている間、前記対象者の頭部上で前記モデュレーション装置を移動させるアクチュエータを備え、
前記検出器は、前記精神生理学的信号に所定の変化が生じたら移動を停止させるために、前記アクチュエータに機能的に結合される、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記モデュレーション装置に機能的に結合されるECG機器をさらに備え、閉ループ刺激サイクルにおいて、ECGを用いて心拍のリアルタイム測定を行い、前記ECG中においてR波ピークを決定し、前記R波ピークのリアルタイムでの検出に基づいて前記モデュレーション装置によってTMSパルスを起動し、次のR波ピークまでの時間を測定し、これら後続のR波ピーク間の待ち時間が最大である部位を示して、前記皮質刺激部位を判定する、請求項
1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
治療のために人の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行う請求項
3に記載のシステムであって、
前記対象者の決定された皮質領域に第2局所ニューロモデュレーション技術のパルスを印加するモデュレーション装置と、
前記モデュレーション装置から行われる前記皮質領域でのパルス印加と同時に、前記皮質領域について、前記対象者の心拍に代表される精神生理学的信号を測定する検出器と、を備え、
前記検出器は前記モデュレーション装置に機能的に結合されて、前記モデュレーション装置が前記パルスを印加している間に同時に前記精神生理学的信号を測定し、
前記モデュレーション装置及び前記検出器は互いに機能的に結合されて、前記精神生理学的信号に規則的な変化を認めると、対応する皮質領域の位置を、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の前記脳深部領域に機能的に接続されている前記少なくとも1つの皮質刺激部位として識別して、前記治療の前記標的を提示する、システム。
【請求項5】
前記モデュレーション装置及び前記検出器に機能的に結合されるコンピュータシステムをさらに備え、また、コンピュータプログラムを備え、該コンピュータプログラムは、前記コンピュータシステム上で実行されたときに、前記パルスを印加する前記モデュレーション装置を同時に制御するとともに、前記精神生理学的信号を測定する前記検出器を同時に制御し、前記精神生理学的信号に規則的な変化が生じたと判定すると、対応する皮質領域を、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の前記脳深部領域に機能的に結合される少なくとも1つの皮質刺激部位として識別して、前記治療の前記標的を提示する、請求項
1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
人の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うシステムであって、
第1局所ニューロモデュレーション技術を用いることによって行う、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に関係する精神疾患又は神経疾患の治療のために使用可能な標的として、印加対象者における少なくとも1つの皮質刺激部位を識別する前記システムを備え、
前記モデュレーション装置及び前記検出器に機能的に結合されるコンピュータシステム又は前記コンピュータシステムをさらに備え、また、コンピュータプログラムをさらに備え、該コンピュータプログラムは、前記コンピュータシステム上で実行されたときに、前記パルスを印加する前記モデュレーション装置を同時に制御するとともに、前記精神生理学的信号を測定する前記検出器を同時に制御し、前記精神生理学的信号をモニタリングして、前記皮質刺激部位の前記局所ニューロモデュレーションをモニタリングする、請求項
1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記検出器及び前記モデュレーション装置のうちの少なくとも一方は、前記精神生理学的信号に所定の変化が生じると、知覚で感知できる信号を供給するインジケータを備える、請求項
1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、局所ニューロモデュレーション技術を行うための、特により深部の皮質領域又は皮質下領域を操作することによる、皮質領域の識別に関する。
[発明の背景]
電磁刺激を用いるための方法及びシステムを説明する。この方法では、例えば、皮質領域を識別することができる。このようにして識別された皮質領域は、その後に、例えばうつ状態における、例えば経頭蓋磁気刺激法、すなわちTMSという治療行為に使用することができる。
【0002】
脳に対する磁気刺激に関しては、概して、以下の刊行物を参照する。これらの刊行物は、以降の本発明の説明においてさらに説明される。
(1)Schutter,D.J.L.G.「大うつ病性障害における脳に対する低速周波数磁気刺激法の有効性の量的考察(Quantitative review of the efficacy of slow-frequency magnetic brain stimulation in major depressive disorder)」Psychol.Med.1-7(2010年)
(2)Schutter,D.J.L.G.「二重盲検方式に基づく同時対照試験における左背外側前頭前野に対する高周波数経頭蓋磁気刺激法の抗うつ有効性:メタ分析(Antidepressant efficacy of high-frequency transcranial magnetic stimulation over the left dorsolateral prefrontal cortex in double-blind sham-controlled designs:a meta-analysis)」Psychol.Med.39,65-75(2009年),ベルリン
(3)M.T.,Van den Eynde,F.& Jeff Daskalakis,Z.「初期大うつ病の治療のための低周波反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の臨床的に意義のある有効性及び受容性:無作為の二重盲検方式に基づく同時対照試験のメタ分析(Clinically Meaningful Efficacy and Acceptability of Low-Frequency Repetitive Transcranial Magnetic stimulation (rTMS) for Treating Primary Major Depression: A Meta-Analysis of Randomized, Double-Blind and Sham-Controlled Trials)」Neuropsychopharmacology 38,543-551(2013年)
(4)Smith,R.,Allen,J.J.,Thayer,J.F.&Lane,R.D.「主観的な情動反応の評価時の、大うつ病における内側前頭前野及び下位脳幹間の変容した機能的結合:予備的研究(Altered functional connectivity between medial prefrontal cortex and the inferior brainstem in major depression during appraisal of subjective emotional responses:A preliminary study)」Biol.Psychol.108,13-24(2015年)
(5)Dua,S.,&MacLean,P.D..「陰茎勃起に関する前頭葉内側面における位置特定(Localization for Penile Erection in Medial Frontal Lobe)」The American Journal of Physiology,207,1425-34,(1964年)
さらに、Peter T.Fox及びJack L.Lancasterが発明者であり、生物的に誘導されたフィードバックを用いて脳機能領域に対するコイル位置の設定を行う、経頭蓋磁気刺激(TMS)のコンピュータ支援型のロボットによる送出装置及び方法について説明している、米国特許出願公開第2013/0085316号明細書を参照する。この装置は、ロボット部材に実装されたTMSコイルを有している。刺激コイルの位置は、TMSによって誘発された様々なタイプの生物学的反応を用いて、自動的に最適化することができる。
【0003】
Alvaro Pascual-Leone及びMichael D. Foxが発明者である米国特許出願公開第2015/0119689号明細書では、神経疾患及び精神疾患の治療に関し、患者の脳に対して経頭蓋磁気刺激(TMS)を印加するために個々の標的部位を識別する技術について説明している。TMS刺激標的部位の識別は、機能的結合磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、刺激を与えることによってうつ病や他の疾患の症状を低減させ得る脳の他の領域に機能的に結合している脳皮質領域を決定することに基づいていてもよい。例えば、左背外側前頭前野(DLPFC)内において刺激標的部位を識別して、帯状膝下野内やDLPFCと機能的に結合されている他の辺縁系領域内での活動を遠隔で調節してもよい。うつ病や他の神経疾患及び精神疾患を治療するために、識別されたTMS標的部位において、TMSを患者の頭部に印加してもよい。
[発明の概要]
例えば経頭蓋磁気刺激(TMS)パルスによる電磁刺激を用いて、的確な皮質領域(区域1)を識別して、例えば脳機能の効果的な治療・検査を可能にする方法が記載されている。
【0004】
本発明は、第1局所ニューロモデュレーション技術を用いることによって行う、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に関係する精神疾患又は神経疾患の治療のために使用可能な標的として、印加対象者における少なくとも1つの皮質刺激部位を識別する方法を提供し、該方法は、
被験者の異なる皮質領域に第2局所ニューロモデュレーション技術のパルスを印加すること、
皮質領域でのパルス印加と同時に、当該皮質領域について、被験者の心拍に代表される精神生理学的信号を測定すること、及び
精神生理学的信号の規則的な変化を認めると、治療の標的を提示するために、対応する皮質領域を、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に機能的に結合されている少なくとも1つの皮質刺激部位として識別すること、を含む。
【0005】
本発明はさらに、第1局所ニューロモデュレーション技術を用いることにより、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に関係する精神疾患又は神経疾患の治療のために使用可能な標的として、印加対象者における少なくとも1つの皮質刺激部位を識別するシステムを提供し、該システムは、
被験者の異なる皮質領域に第2局所ニューロモデュレーション技術のパルスを印加するモデュレーション装置であって、規定された位置において、被験者の頭部上を動くように構成されているモデュレーション装置と、
モデュレーション装置から行われる皮質領域でのパルス印加と同時に、当該皮質領域について、被験者の心拍に代表される精神生理学的信号を測定する検出器と、を備え、
検出器はモデュレーション装置に機能的に結合されて、モデュレーション装置がニューロモデュレーションを行っている間に同時に精神生理学的信号を測定し、
モデュレーション装置及び検出器は機能的に結合されて、精神生理学的信号の規則的な変化を認めると、対応する皮質領域の位置を、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に機能的に接続されている少なくとも1つの皮質刺激部位として識別して、治療の標的を提示する。
【0006】
より深い皮質領域又は皮質下領域(標的区域)を操作することによって変化する精神生理学的信号を測定する、つまり経シナプス標的識別を行うことによって、電磁刺激又は操作によって効果的に刺激できる部位が発見可能であることが見出された。
【0007】
特に、経頭蓋磁気刺激(TMS)パルスを用いて、より深い皮質領域又は皮質下領域(標的区域)の操作によって変化する精神生理学的信号を測定する、つまり経シナプス標的識別を行うことによって、的確な皮質領域(区域1)を識別する方法が記載されている。本発明は、その好適な実施形態において、TMSを用いて直接的に標的にするには深すぎる腹内側前頭前野(VMPFC:前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む)を、前頭前野からVMPFCへのTMS信号の経シナプス中継の結果として前頭前野内において心拍数の減少が生じている部位を発見することによって、最適にかつ個別に標的にすることを必要とする。このようにして識別された皮質領域は、その後、例えばうつ状態におけるTMSの治療行為のために使用される。
【0008】
一実施形態において、閉ループ刺激サイクルで、心拍がECGを用いてリアルタイム測定され、R波ピークがECG中で決定され、R波ピークのリアルタイムでの検出に基づいてTMSパルスが起動され、次のR波ピークまでの時間が測定され、これら後続のR波ピーク間の待ち時間が最大である部位が、皮質刺激部位であると判定される。
【0009】
一実施形態において、第1局所ニューロモデュレーション技術は電気刺激技術を含む。
一実施形態において、第2局所ニューロモデュレーション技術は電気刺激技術を含む。
一施形態において、局所ニューロモデュレーション技術の少なくとも1つは、様々な前頭部区域において、その下にある皮質組織を刺激又は調節するように適用される技術を含む。
【0010】
一実施形態において、局所ニューロモデュレーション技術は、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)、高解像度tDCS(HD-tDCS)、経頭蓋交流電気刺激(tACS)、経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)、脳深部刺激(DBS)、超音波技術、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0011】
一実施形態において、第1及び第2局所ニューロモデュレーション技術は同一の局所ニューロモデュレーション技術である。
一実施形態において、第1及び第2局所ニューロモデュレーション技術のうちの少なくとも1つは経頭蓋磁気刺激(TMS)を含む。
【0012】
一実施形態において、精神生理学的信号は、心電図(ECG)、筋電図(EMG)、プレチスモグラフィー、瞳孔測定、呼吸記録法、及びこれらの組み合わせから選択される。
一実施形態において、規則的な変化は、遠隔作用、経シナプス作用、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0013】
一実施形態において、TMSパルスを前頭前野区域に向けることによって、一連のTMS刺激中における心拍数の減少によって識別された、特に吻側前帯状皮質及び前帯状皮質膝下部を含む腹内側前頭前野を間接的に又はシナプス経由で刺激する。
【0014】
一実施形態において、本方法は、処置と同時の又は処置前の、基礎心拍数を増加させる同時課題(認識的、身体的、又は情緒的なもののいずれか)を用いることによって最適化される。
【0015】
一実施形態において、rTMSに対する抗うつ効果の有効性を高めることを特に狙いとしている。
本発明はさらに、TMS刺激の角度感度を推定し、最適な刺激を行うためのrTMSコイルの最適角度を最適化する方法の使用に関する。
【0016】
該使用の一実施形態において、本方法は、様々なコイル角度を用いて、刺激を行うのに最適なコイル角度を識別するために適用される。
一実施形態において、本方法はさらに、rTMS刺激中に刺激コイルの移動をモニタリングすることを含み、rTMSパルスが精神生理学的パラメータの変化をもはやもたらさないときに、刺激コイルとrTMS刺激を受ける人の頭部とが互いに対して移動される。
【0017】
一実施形態において、本方法は、心拍を定量化する装置、特に心電図(ECG)を生成する装置又はプレチスモグラフィー装置を用いる。
一実施形態において、精神生理学的信号は、筋電図検査(EMG)、電気皮膚反応(GSR)、皮膚電位(EDA)、瞳孔測定、呼吸記録法、及びこれらの組み合わせによって生じる。
【0018】
一実施形態において、経頭蓋磁気刺激は、特に1Hzよりも大きい周波数を用いて、一連の高周波刺激を印加することを含む。
一実施形態において、経頭蓋磁気刺激は、特に1Hz以下の周波数、又は単一パルスを用いて、一連の低周波刺激を印加することを含む。
【0019】
本発明はさらに、局所ニューロモデュレーション技術を適用して精神疾患又は神経疾患を治療する方法に関し、該方法は、印加対象者の少なくとも1つの皮質刺激部位を、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法に従って、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に関係する精神疾患又は神経疾患の治療のための標的として識別し、その後、識別された皮質刺激部位に対して第1/第2局所ニューロモデュレーション技術を適用することを含む。
【0020】
一実施形態において、閉ループ刺激サイクルで、心拍がECGを用いてリアルタイムで測定され、R波ピークがECG中で決定され、R波ピークのリアルタイムでの検出に基づいてTMSパルスが起動され、次のR波ピークまでの時間が測定されながら、治療が施される。
【0021】
一実施形態において、本方法は、特に大うつ病性障害(MDD)又はうつ病に対して適用され、
検出器はモデュレーション装置に機能的に結合されて、モデュレーション装置がニューロモデュレーションを行っている間に同時に精神生理学的信号を測定し、
本システムはさらに、局所ニューロモデュレーションを行っている間、人の頭部上でモデュレーション装置を移動させるアクチュエータを備え、
検出器は、精神生理学的信号の所定の変化が生じたら移動を停止させるために、アクチュエータに機能的に結合される。
【0022】
一実施形態において、本システムはさらに、モデュレーション装置に機能的に結合されているECG装置を備え、閉ループ刺激サイクルにおいて、心拍のリアルタイム測定をECGを用いて行い、ECG中でR波ピークを決定し、R波ピークのリアルタイムでの検出に基づいて、モデュレーション装置によってTMSパルスを起動し、次のR波ピークまでの時間を測定し、これら後続のR波ピーク間の待ち時間が最大である部位を示して、皮質刺激部位を決定する。
【0023】
人の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うシステムの一実施形態において、
被験者の決定された皮質領域に第2局所ニューロモデュレーション技術のパルスを印加するモデュレーション装置と、
皮質領域におけるモデュレーション装置からのパルス印加と同時に、皮質領域についての、被験者の心拍に代表される精神生理学的信号を測定する検出器とを備え、
検出器はモデュレーション装置に機能的に結合されて、モデュレーション装置がニューロモデュレーションを行っている間に同時に精神生理学的信号を測定し、
モデュレーション装置及び検出器は互いに機能的に結合されて、精神生理学的信号の規則的な変化を認めると、対応する皮質領域の位置を、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に機能的に接続されている少なくとも1つの皮質刺激部位として識別して、治療の標的を提示する。
【0024】
一実施形態において、本システムはさらに、モデュレーション装置及び検出器に機能的に結合されているコンピュータシステムを備え、また、該コンピュータシステム上で実行されたときに、パルスを印加するモデュレーション装置を同時に制御するとともに、精神生理学的信号を測定する検出器を同時に制御し、精神生理学的信号の規則的な変化が生じたと判定すると、対応する皮質領域を、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に機能的に接続されている少なくとも1つの皮質刺激部位として識別して、治療の標的を提示する、コンピュータプログラムを備える。
【0025】
本発明はさらに、人の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うシステムに関し、該システムは、
第1局所ニューロモデュレーション技術を用いることによって行う、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に関係する精神疾患又は神経疾患の治療のために使用可能な標的として、印加対象者における少なくとも1つの皮質刺激部位を識別するシステムを備え、
さらに、モデュレーション装置及び検出器に機能的に結合されるコンピュータシステム、又は前述のコンピュータシステムを備え、また、該コンピュータシステム上で実行されたときに、パルスを印加するモデュレーション装置を同時に制御するとともに、精神生理学的信号を測定する検出器を同時に制御し、精神生理学的信号をモニタリングして、皮質刺激部位の局所ニューロモデュレーションをモニタリングする、さらなるコンピュータプログラムを備える。
【0026】
一実施形態において、検出器及びモデュレーション装置のうちの少なくとも一方は、精神生理学的信号の所定の変化が生じたら、知覚的に感知できる信号を供給するインジケータを備える。
【0027】
本発明はさらに、コンピュータプログラムに関し、該プログラムは、コンピュータシステム上で実行されたときに、パルスを印加するモデュレーション装置を同時に制御するとともに、精神生理学的信号を測定する検出器を同時に制御し、精神生理学的信号に規則的な変化が生じたと判定されると、対応する皮質領域を、前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む腹内側前頭前野の脳深部領域に機能的に接続されている少なくとも1つの皮質刺激部位として識別して、治療の標的を提示する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明は、前頭前野からVMPFC(VMPFC:前帯状皮質膝下部及び吻側前帯状皮質を含む)へのTMS信号の経シナプス中継の結果として前頭前野内において心拍数の減少が生じている部位を発見することによって、TMSを用いて直接的に標的にするには深すぎる腹内側前頭前野を、最適かつ個別に標的にすることを必要とする。このようにして識別された皮質領域は、その後、例えばうつ状態におけるTMSの治療行為のために使用される。一実施形態においては、経シナプス中継は機能的結合も含み得る。
【0029】
本特許において、我々は本発明の好適な実施形態として一貫してTMSについて話を進めていくが、本発明はまた、例えばtDCS(経頭蓋直流電気刺激)、tACS(経頭蓋交流電気刺激)、tRNS(経頭蓋ランダムノイズ刺激)、DBS(脳深部刺激)といった電気刺激技術、超音波技術等を含む、他の局所ニューロモデュレーション技術にも適用される。
【0030】
TMS(経頭蓋磁気刺激)は、脳機能に直接影響を及ぼす非侵襲ニューロモデュレーション技術である。TMSの基本原理は、磁気誘導の原理に基づいて、下にある表層皮質のニューロン内に電流を誘導するために、被験者の頭皮の上方で磁気短パルスを印加することである。反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の印加は、大うつ病性障害(MDD)又はうつ病の治療において最もよく研究されてきたものである。メタ分析がいくつか行われており、その中では、プラセボと比較して、左又は右背外側前頭前野(DLPFC)に印加されたrTMSには抗うつ効果があることが実証された。(1)、(2)、(3)を参照されたい。
【0031】
MDDにおけるTMS刺激に関して、右及び左背外側前頭前野(DLPFC)は第一に関心のある区域であった。ほとんどの研究では、DLPFCの位置の特定を、「5cmルール」か、時には改良された「6cmルール」を用いて行ってきた。一次運動野(M1)の手の区域(刺激すると親指の対側での運動反応を誘発する)は、頭皮上にある検出可能な参照点と考えられている。そこから、コイルを矢状方向において5cm又は6cm前方に移動する。DLPFCを標的にする別の方法は、EEGの10-20法での位置F3又はF4を用いることである。治療中にコイルをこれらの場所に配置することは、DLPFCを標的にすることと見なされる。しかし、これらの方法には限界があり、解剖学的に定義されるDLPFCを一貫性なく不正確に標的にするという結果を生じるおそれがあることが議論される可能性もある。この問題を解決するために、構造的MRIを用いたニューロナビゲーションシステムのような技術的な進歩を発展させ、また、使用してきた。ニューロナビゲーションされたrTMSでは、治療前に患者の脳のMRIを取得し、鼻根点、後頭結節、珠間切痕等の頭蓋骨の測定可能な解剖学的標識点に対するDLPFCの正確な解剖学的位置を設定する。これを、TMSコイルを三次元で追跡可能なソフトウェアと組み合わせて、厳密に解剖学的に定義された区域に刺激を印加することができる。これらの取り組みは全て、解剖学的標的であるDLPFCがMDDにおいて臨床有効性に影響する適切な標的であることを「想定」している。しかし、最近の研究によれば、rTMSの臨床有効性は、腹内側前頭前野(より具体的には膝下帯状皮質)でのrTMSの下流(シナプス経由)作用の影響をより受けやすく、このため、DLPFCからこの膝下帯状皮質への白質の突起部、又は他の機能的結合原理に依存することが示唆されている。米国特許出願公開第2015/0119689号明細書を参照されたい。これと同じ著者らはまた、rTMS刺激において皮質を標的にすることを、MRI等の脳画像法によって最適化し、膝下野に対して最大の反相関を示す(このような区域が機能的に結合されていることを示唆する)皮質領域を、rTMSを用いて標的にされる特定の区域として設定する方法を提案している。米国特許出願公開第2015/0119689号明細書を参照されたい。この取り組みは、臨床効果がDLPFCの皮質の表層レベルで影響を受けるという想定とは対照的に、白質の結合性を、rTMS信号をシナプス経由でより深い皮質領域へと伝搬するものと想定している点で、上述の取り組みとは異なる。それでもなお、これらのMRIの標的設定の取り組みでは、製造される個別のMRIと、さらなるコストがかかる設備とが必要になり、このTMS誘導方法が実際の臨床において広く一般に実施されることを妨げている。
【0032】
うつ病においてrTMSを用いる目的が、前帯状皮質膝下部(sgACC)と吻側前帯状皮質(rACC)の両方を含む、腹内側前頭前野(VMPFC)の刺激を間接的に実現することであると想定すると、rTMSについて個々の皮質標的を最適化する別の取り組みは、これらの区域の機能に関する解剖学的知識に依存することである。VMPFCは、感情情報の処理、及び続いて起こる心拍等の神経及び内臓反応の調整に関係があるとされてきた。概要は(4)を参照されたい。
【0033】
刺激によって誘発された手の動きを観察する(運動誘発電位、つまりMEPを設定する基本的な方法)こと以外に、手の動きに関与する一次運動野区域の位置を特定する確実な方法がないのと同様に、他の活用状況についても同じことがいえる。MEPの設定は、一次運動野を直接刺激することによって実現される。しかし、本発明は特に、刺激の遠位への(シナプス経由の)作用に関する。より詳細には、本発明は、例えば心拍数(HR)、発汗速度(GSR)等の直接観測可能な身体的又は精神生理学的測定値を利用して、皮質領域が精神生理学的に関係すると予測される領域に対する知見を用いて、所望の皮質領域をリアルタイムで個々に標的にすることを提案する。これにより、本発明は、5/6cmルールやF3の位置、つまりDLPFC区域という仮定に基づく誘導を用いるよりも的確な区域を精密に識別することができる。
【0034】
(5)によれば、従来の研究では、VMPFCの直接的な電気刺激の結果、心拍数が減少することが示されている。しかしVMPFCは、表層皮質組織に向けられたrTMSが到達するには深すぎる。したがって、本発明のある特定の実施形態は、様々な前頭部区域で一連のTMSパルス(例えば運動限界の100%で例えば10Hz)を発する際にHRを測定することが、VMPFCに機能的に結合される区域、よって(米国特許出願公開第2015/0119689号明細書に従って)MDD治療の最良の標的を識別するのに役立つ可能性があることを示唆している。
【0035】
米国特許出願公開第2015/0119689号明細書と本発明との違いは、標的を定めるために、(オフラインの)脳画像標識を用いる代わりに、リアルタイムでの(自律神経系の活動の指標となる)精神生理学的測定値を用いることである。
【0036】
さらに、同じ一つの装置(TMS装置)が、位置特定方法と、後続のrTMSを用いた治療との両方に使用可能であるため、より費用効率の高い解決法を提供する。被験者の右及び/又は左前頭皮質内において、F3又はF4の位置を取り囲む、例えば1~2cm離れた様々な点からなるグリッドにおいてTMS刺激を印加した後、一連の刺激の印加中や印加終了直後の心拍数の変化や心拍変動(HRV)をリアルタイムで定量化する、又は、TMSパルスに位相同期された(phase-locked)ECGから心拍誘発電位(HBEP)が生成される。その結果、HR、HRV、又はHBEPにおける最も明瞭な変化と関連する刺激部位を、VMPFCに向けられる刺激についての最適な部位であり、よって、うつ病の治療に最も効果的な部位であると見なす。
【0037】
さらに、上述の処置のさらなる改善点は、基礎心拍数を増加させる(認識的、身体的、又は情緒的のいずれかに関する)課題を用いることによって、その変化、特に心拍の減少をより適切に定量化することである。異なる周波数の一連のTMS(例えば9.5Hz、2Hz、40Hz、又はシータバースト刺激等のパターン化されたTMS)は異なる作用を有する、つまり、ある周波数が心拍数やHRVを増加させ得るのに対し、別の周波数が心拍数やHRVを減少させ得る、ことも考えられる。
【0038】
最後に、本発明はまた、刺激コイルが右の皮質部位を依然として横切っている状態にある場合に、患者には治療のためのrTMSが、本方法を用いて設定された部位に施されながら、心拍のリアルタイム検査によってリアルタイム評価を行う方法として使用することもできる。なぜなら、1回の治療中に患者又はコイルが動いても、心拍又はHRVにもはや変化がみられないときに、刺激の正確性をリアルタイムで確実に検証できるからである。この方法は、神経・心臓誘導rTMS、又はNCG-rTMSと称されている。
【0039】
本発明はさらに、患者に局所ニューロモデュレーション技術を適用するための皮質刺激部位を識別し誘導する方法に関し、該方法は、
異なる皮質領域にTMSパルスを印加すること、
同時に精神生理学的信号を測定すること、
1つ以上の特定の皮質領域を刺激した結果としての精神生理学的信号の規則的な変化を観察することであって、該規則的な変化は当該皮質領域がその区域に機能的に結合されていることによってのみ生じ得る、規則的な変化を観察すること、及び
精神疾患又は神経疾患を治療するために、これらの部位のうちの少なくとも1つを、局所ニューロモデュレーションを行う標的として用いること
を含む。
【0040】
本発明はさらに、人の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うシステムに関し、該システムは、
人の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うモデュレーション装置と、
局所ニューロモデュレーションを行っている間、人の頭部上でモデュレーション装置を移動させるアクチュエータと、
精神生理学的信号を測定する検出器と、を備え、
検出器は、モデュレーション装置に機能的に結合されていることで、モデュレーション装置がニューロモデュレーションを行っている間に同時に精神生理学的信号を測定し、検出器は、精神生理学的信号に所定の変化が生じたら移動を停止させるために、アクチュエータに機能的に結合される。
【0041】
本発明はさらに、人の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うシステムに関し、該システムは、
人の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うモデュレーション装置と、
精神生理学的信号を測定する検出器と、を備え、
検出器は、モデュレーション装置に機能的に結合されていることで、モデュレーション検出器がニューロモデュレーションを行っている間に同時に精神生理学的信号を測定し、検出器及びモデュレーション装置のうちの少なくとも一方は、精神生理学的信号に所定の変化が生じたら、知覚的に感知できる信号を供給するインジケータを備える。
【0042】
当業者であれば、本出願内において、「ほぼ囲んでいる(substantially encloses)」内や「ほぼ~まで伸びている(substantially extends up to)」内にあるような、「ほぼ(substantially)」という語について理解されよう。「ほぼ(substantially)」には、「全体に(entirely)」、「完全に(completely)」、「全て(all)」等の語を有する実施形態が含まれていてもよい。したがって、各実施形態では、形容詞的に用いられている「ほぼ(substantially)」を削除してもよい。当てはまる場合、「ほぼ(substantially)」という語は、100%を含め、90%以上、例えば95%以上、特に99%以上、さらには99.5%以上の場合も含む。「備える、含む(comprise)」という語には、「備える、含む(comprise)」が「~からなる(consist of)」のことを意味する実施形態も含まれている。
【0043】
さらに、「第1の(first)」「第2の(second)」「第3の(third)」等の語は、明細書や特許請求の範囲で用いられていた場合には、同様の要素を区別するために用いられているのであって、必ずしも連番である、あるいは時系列であることを説明するために用いられているものではない。このように用いられている語同士は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書で説明されている本発明の各実施形態は、本明細書で説明されている又は図示されている以外の順序でも動作可能であることは理解されよう。
【0044】
本明細書中に記載される構成要素は、特に動作中のことを説明されている。当業者には明らかなように、本発明は動作方法や動作中の装置に限定されない。
上述の各実施形態は、本発明を限定するものではなく、例示するものであり、当業者であれば、添付の請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計できることに注目すべきである。各請求項において、括弧内のいずれの参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈するものではない。動詞「備える、含む(to comprise)」及びその活用形を使用することは、請求項に記載されている要素や工程以外のものが存在することを排除するものではない。要素の前に置かれる冠詞「a」又は「an」は、このような要素が複数存在することを排除するものではない。本発明の実施は、別個の要素を数個備えたハードウェアを用いて行ってもよく、また、適切にプログラミングされたコンピュータを用いて行ってもよい。数個の手段を列挙する装置又は機器に関する請求項において、これらの手段のうちのいくつかは、同じ一つのハードウェア製品によって具現化されてもよい。互いに異なる従属請求項に特定の手段が記載されているという事実のみで、これらの手段の組み合わせを効果的に使用できないことを示すものではない。
【0045】
本発明はさらに、明細書に記載されている、かつ/又は、添付の図面に示されている、本発明を特色づける特徴のうちの1つ以上を含む方法又はプロセスに関する。
本特許で説明した種々の態様は、さらなる効果を提供するために組み合わせることができる。さらに、特徴のうちのいくつかは、1つ以上の分割出願の基礎を構成し得る。
【0046】
次に、本発明の各実施形態を、ほんの一例として、添付の概略図を参照して説明する。概略図においては、対応する参照記号は対応する部分を示す。
図面は必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、システムの一実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[好適な実施形態の説明]
図1において、人1の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うシステムの一実施形態が示されている。本実施形態では、本システムは、人1の皮質領域に局所ニューロモデュレーションを行うモデュレーション装置2を備えている。モデュレーション装置2はモデュレーション信号送信器ヘッド3を有している。本実施形態におけるモデュレーション信号送信器ヘッド3は、送信器3から離れた特定の地点、ここでは人1の頭部内の地点に向けた磁気パルスを送出する。ここで、送信器ヘッド3は、その人の頭上において手動で移動させられる。あるいは、本実施形態では例えば送信器ヘッド3であるものを、局所ニューロモデュレーションを行っている間にモデュレーション装置2をその人の頭上で移動させるアクチュエータに装着し、又は組み込んでもよい。人1にはさらに、精神生理学的信号を測定する検出器4を備えている。
図1の本実施形態において、検出器4は心拍数モニタを備えている。本実施形態における検出器4は、精神生理学的信号を処理するとともに、精神生理学的信号の所定の変化が起こったかどうか、及びそれがいつ起こったかを判定するコンピュータプログラムを備えている。一実施形態において、検出器4及び/又はモデュレーション装置2には、精神生理学的信号に所定の変化が起きたときに、知覚的に感知できる信号を供給する信号器を設けることもできる。検出器2とモデュレーション装置2は、例えば有線又は無線で、機能的に結合されてもよい。一実施形態では、説明したように、検出器2、及び/又はモデュレーション装置2、及び/又は送信器ヘッド3は、パルスを送信する部分を人1の頭上で動かすアクチュエータに機能的に結合されてもよい。検出器4及び/又はモデュレーション装置2上で実行されるソフトウェアが、精神生理学的信号に所定の変化が生じたと判定すると、アクチュエータが停止して治療を始めることができる。本実施形態において、第1及び第2局所ニューロモデュレーション技術は同じである。
【0049】
上述の記載及び図面は、本発明のいくつかの実施形態を説明するために組み込まれているのであって、本発明の保護範囲を限定するためのものではないことも明らかであろう。本開示を起点として、当業者にはさらに多くの実施形態が明白であろう。これらの実施形態は、本発明の保護範囲及び本質の範疇にあり、従来技術と本特許の開示との自明の組み合わせである。