(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】補体阻害剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20220509BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220509BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220509BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220509BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220509BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220509BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220509BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220509BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220509BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220509BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220509BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220509BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220509BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220509BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220509BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220509BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220509BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220509BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220509BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220509BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220509BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220509BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220509BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220509BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220509BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20220509BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P9/10
A61P37/06
A61P9/00
A61P7/06
A61P7/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P27/02
A61P25/00
A61P13/02
A61P13/12
A61K38/16
A61K35/76
A61K48/00
A61K31/7088
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K39/395 N
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
(21)【出願番号】P 2018567848
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2017065979
(87)【国際公開番号】W WO2018002131
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-26
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510319959
【氏名又は名称】ウニベルジテート ウルム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュレーツェンマイアー,フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】アンリカー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヘッヒスマン,ブリッタ
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0188404(US,A1)
【文献】特開平06-016696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0229497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)補体活性化の古典的経路及び代替経路の転換酵素に対する転換酵素崩壊促進ドメインである第1の補体制御タンパク質反復(CCP)
含有ドメイン、
(ii)宿主細胞認識ドメイン、及び
(iii)第2のCCP含有ドメイン
を含
み、
前記宿主細胞認識ドメインが、補体H因子のCCP6~8及び/又は19~20を含む、
マルチドメインポリペプチド。
【請求項2】
前記宿主細胞認識ドメインが、シアル酸及び/若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物に対する結合活性を有する、並びに/又は補体因子C3b分解産物に対する結合活性を有する、請求項1に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項3】
前記第1のCCP含有ドメインが、補体受容体1型(CR1)
のCCP1~3を含み、及び/又は崩壊促進因子(DAF)
のCCP1~4を含む、請求項1
又は2に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項4】
前記第1のCCP含有ドメインが、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項5】
前記第1のCCP含有ドメインが、配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に対して少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項6】
前記第2のCCP含有ドメインが、CR1のCCP8~10及び/又は15~17を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項7】
前記第2のCCP含有ドメインが、配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に対して少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項8】
前記宿主細胞認識ドメインが、配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に対して少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項9】
N末端、第1のCCP含有ドメイン、宿主細胞認識ドメイン、第2のCCP含有ドメイン、C末端の順序で前記ドメインを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項10】
配列番号5若しくは6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5若しくは6に対して少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項11】
前記第1のCCP含有ドメインが、補体因子C3b及びC4bに対する結合活性を有する少なくとも1つのCCPを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項12】
前記第2のCCP含有ドメインが、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有する、少なくとも1つのCCPを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項13】
前記宿主細胞認識ドメインが、補体因子C3b分解産物に対する結合活性を有し、並びに/又は宿主細胞表面マーカーに対する結合活性を有する、少なくとも1つのCCPを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項14】
補体系の少なくとも2つの活性化経路を阻害する活性を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項17】
請求項15に記載のポリヌクレオチド、及び/又は請求項16に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
医薬の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド、請求項15に記載のポリヌクレオチド、又は請求項16に記載のベクターの使用。
【請求項19】
不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための医薬の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド、請求項15に記載のポリヌクレオチド、又は請求項16に記載のベクターの使用。
【請求項20】
補体タンパク質C5阻害ポリペプチドと組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための医薬の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド、請求項15に記載のポリヌクレオチド、又は請求項16に記載のベクターの使用。
【請求項21】
請求項1~14のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド、請求項15に記載のポリヌクレオチド、又は請求項16に記載のベクターと組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための医薬の製造における、補体タンパク質C5阻害ポリペプチドの使用。
【請求項22】
(i)請求項1~14のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチド、及び(ii)補体タンパク質C5阻害ポリペプチドを含む、同時、個別又は連続使用のための組合せ製剤。
【請求項23】
補体活性化の程度を妨げる、又は低減するin vitro法であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載のマルチドメインポリペプチドを、補体因子を含む反応混合物に適用すること
を含み、それによって、前記反応混合物における補体活性化の程度を妨げる、又は低減する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)補体活性化の古典的経路及び代替経路の転換酵素に対する転換酵素崩壊促進ドメインである第1の補体制御タンパク質反復(CCP)含有ドメイン、(ii)宿主細胞認識ドメイン、及び(iii)補因子活性を有する第2のCCP含有ドメインを含む、マルチドメインポリペプチドに関する。本発明は更に、前記マルチドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、並びに前記ポリヌクレオチド及び/又は前記ベクターを含む宿主細胞に関する。更に、本発明は、医薬に使用するための、並びに不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、マルチドメインポリペプチド、ポリペプチド、及びベクターに関する。更に、本発明は、マルチドメインポリペプチド、ポリペプチド、及びベクターに関する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、系統発生的により古い先天性免疫及び適応免疫応答という2つの枝に分けることができる。適応免疫系又は後天性免疫系による免疫応答は、典型的には、先天性免疫応答よりも特異的である。適応免疫系の他の特徴は、免疫学的記憶の発達、及び抗原の曝露と最大免疫応答との間に典型的に観察される遅延である。
【0003】
先天性免疫系は、原始生物にさえも高度に保存されている。この枝の細胞性エフェクターは、好中球、単球、及びマクロファージを主に含むが、一方、可溶性の先天性免疫エフェクターは、急性期タンパク質又は細孔形成ペプチドのような他のエフェクターに加えて、主に補体系からなる(Parkin & Cohen (2001) The Lancet 357: 1777-89.)。補体系は、血清中の熱不安定成分からなり、これは、細菌に対する抗体反応を「補完する」とPaul Ehrlichによって記載された。補体系の他の機能は、食細胞による取り込みを通してそれらの効果的なクリアランスを支持するための、微生物侵入物、免疫複合体、破片、アポトーシス細胞及びネクローシス細胞のオプソニン化である(Ricklin et al. (2010) Nature Immunology 11: 785-797)。補体系は、古典的経路(CP)、レクチン経路(LP)、及び代替経路(AP)という3つの活性化経路で構成されている。
【0004】
CPの活性化は、典型的には、パターン認識分子(PRM)として作用する補体成分C1qを介して抗体依存的様式で達成される。一連のタンパク質分解活性化事象の後、CPのC3転換酵素(C4bC2a)は、3つの補体活性化経路全ての中心である補体成分C3を、アナフィラトキシンであるC3a、及びC3b(オプソニン)へ切断する。この切断のために、コンフォメーション変化が起こり、以前は内部にあったチオエステル結合が、C3bのタンパク質表面に達する。この活性な、そして一旦露出すると短命な、チオエステル結合は、細胞表面上に局在する分子のヒドロキシル基及びアミノ基に共有結合することができるか、又は水によって溶解(「クエンチ」)され得る。結果として、C3転換酵素が下方制御されていない場合、多くのC3b分子による細胞のオプソニン化が起こり得る。大量のC3b分子の産生は、C5転換酵素によるC5の活性化を促進する。C5転換酵素は、C5をC5a(最も強力なアナフィラトキシン)及びC5bに切断し、これは、補体因子C6~9を動員して、膜侵襲複合体(MAC)を形成し、細胞膜に穴を組み立てて溶解し殺傷する。
【0005】
レクチン経路(LP)は、CPと同様に構成されている。活性化は、病原体関連分子パターン(PAMP)又は危険関連分子パターン(DAMP)の認識を介して起こる。LP内で、PAMP又はDAMPは、C1q(CPのパターン認識分子)に相同であるいくつかのパターン認識分子、すなわちマンノース結合レクチン(MBL)並びに様々な種類のコレクチン及びフィコリンによって検出することができる。PAMP又はDAMPに続いて、結合MBLはコンフォメーション変化を受け、次いで、MBL結合セリンプロテアーゼ(MASP)と結合する。MBLは、C1qと構造及び機能が相同である。CPと類似して、MASP2は、C2をC2a及びC2bに、そしてC4をC4a及びC4bにタンパク質分解的に活性化する。活性化された成分は、LPのC3転換酵素C4bC2aを構築することができ、これはCPと同一であり、C3をC3a及びC3bに切断する。CPと類似して、C3転換酵素の厳密な調節がない場合、より多くのC3b分子の産生は、C5転換酵素を介したC5の活性化を促進する。C5のタンパク質分解活性化は、C5bがMACの形成を開始する終末及び溶解補体経路の開始点である。
【0006】
代替経路は、低レベルで自己活性化の過程を通じて活性化される。この過程は、C3の「ティックオーバー(tick-over)」活性化と呼ばれる。C3分子は、本質的に準安定なコンフォメーションを有する。常に、少ない割合のC3分子は、自発的なコンフォメーション変化(活性化)を受け、それが以前には内部にあったチオエステルドメインを露出させる。チオエステルは、水によってクエンチされるか、又は無差別に(自己又は外来に対して)細胞表面上の求核基に付着することができる。このような「自己活性化」C3は、C3(H2O)と呼ばれ、C3b分子と構造的に類似している。C3b又はC3(H2O)は、C3に隠れている新しいタンパク質表面を露出させる。これらの新しい表面は、APの別の補体因子であるB因子に結合する。B因子がC3b又はC3(H2O)に結合している場合、それは、プロテアーゼD因子によってBa及びBbに切断され得る。Bbは、C3(H2O)(又はC3b)に結合したままであり、APのC3転換酵素であるC3bBbを構成する。CP及びLPのC3転換酵素と類似して、C3bBbは、C3を切断することによってC3b分子及びC3a分子を産生することができる。APの正の調節因子であるタンパク質プロパージン(Properdin)は、APのC3転換酵素のタンパク質-タンパク質相互作用を安定化することによって重要な役割を果たす。調節されていない場合、代替経路、古典的経路、又はレクチン経路によって生成されたいずれのC3bも、APのより多くのC3転換酵素を構築し、正のフィードバックループにおいて産生されたC3b分子の数を更に増幅することができる。このステップは、APの「増幅ループ」と呼ばれる。したがって、活性化の3つの経路は、C3活性化のレベルで収束し、調節されていない場合は、MAC形成に蓄積する。
【0007】
古典的経路及びレクチン経路は、それらが病原体又は内因性危険分子の感知を通じて特異的に活性化されるまで不活性である。反対に、APは、常に低レベルで活性であり、無差別にC3b(又は最初はC3(H2O))分子を産生する。補体系内の10を超える異なる調節タンパク質が公知である。一部の調節因子は、まさにCP及びLPを開始するレベルで阻害するが、最も厳密に制御されるカスケードの部分は、活性化シグナルの増幅器として作用する転換酵素、並びにC3転換酵素及び炎症性C5転換酵素を形成するプラットフォームを構築するC3bである。溶解性MACを特異的に制御するいくつかの調節因子も存在する。
【0008】
調節タンパク質は、C3転換酵素を不安定化し、転換酵素のより速い崩壊をもたらす崩壊促進因子に分類することができる。更なるグループは、H因子及びI因子のように、C3b又は/及びC4bを分解するタンパク質を含む; 可溶性プロテアーゼI因子による非特異的分解を防ぐために、C3b又はC4bの不活性化は、標的に結合し、I因子を動員する補因子タンパク質(例えばFH又はCR1)の存在を必要とする。調節因子の更なるグループは、MACの形成を阻害する。
【0009】
多くの疾患、特に遺伝性疾患は、補体の機能不全、特に補体の過剰活性化に関連している。したがって、補体系の人工的な調節因子を提供しようとして、補体タンパク質C5に特異的に結合し、終末活性化を阻害するモノクローナル抗体であるエクリズマブが開発された(Hillmen et al. (2006), NEJM355(12):1233)。同様の開発系統において、C5阻害タンパク質rEV576(コバーシン(coversin))が開発された(Romay-Penabad et al (2014), Lupus 23(12):1324)。更に、リンカーを介して補体H因子の補体制御タンパク質反復(CCP)1~4及び19~20を連結する「ミニ-FH」と呼ばれるタンパク質が得られた(WO 2013/142362 A1); しかし、後者は代替経路を阻害するのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Parkin & Cohen (2001) The Lancet 357: 1777-89.
【文献】Ricklin et al. (2010) Nature Immunology 11: 785-797
【文献】Hillmen et al. (2006), NEJM355(12):1233
【文献】Romay-Penabad et al (2014), Lupus 23(12):1324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、先行技術の欠点を回避する改善された補体阻害剤に対する必要性が当技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本明細書に開示される手段及び方法によって解決される。
【0014】
したがって、本発明は、
(i)補体活性化の古典的経路及び代替経路の転換酵素に対する転換酵素崩壊促進ドメインである第1の補体制御タンパク質反復(CCP)含有ドメイン、
(ii)宿主細胞認識ドメイン、及び
(iii)第2のCCP含有ドメイン
を含む、マルチドメインポリペプチドに関する。
【0015】
また、本発明は、
(i)補体受容体1型(CR1)のCCP1~3に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、及び/又は崩壊促進因子(DAF)のCCP1~4に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、第1の補体制御タンパク質反復(CCP)含有ドメイン、
(ii)補体H因子のCCP6~8又はCCP19~20に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、宿主細胞認識ドメイン、及び
(iii)CR1のCCP8~10及び/又はCCP15~17に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、第2のCCP含有ドメイン
を含む、マルチドメインポリペプチドに関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】CR1由来構築物(A)及びDAF由来構築物(B)による代替経路媒介性溶血の阻害。x軸: 阻害剤(構築物)の濃度、y軸: 溶血(%)。
【
図3A-B】5%血清中のCR1由来構築物(A)及びDAF由来構築物(B)による古典的経路媒介性溶血の阻害。x軸: 阻害剤(構築物)の濃度、y軸: 溶血(%)。
【
図3C】75%血清中のDAF由来構築物による古典的経路媒介性溶血の阻害。x軸: 阻害剤(構築物)の濃度、y軸: 溶血(%)。
【
図4】CR1由来構築物(A)及びDAF由来構築物(B)による、PNH-RBCの代替経路媒介性溶血の阻害。x軸: 阻害剤(構築物)の濃度、y軸: 溶血(%)。
【
図5】阻害剤の組み合わせによる古典的経路媒介性溶血の阻害。x軸: 阻害剤(構築物): a NHS; b NHS+エクリズマブ(1.2μM); c FB枯渇血清; d NHS+ミニFH(=FH(1-4)FH(19-20)、2.5μM); e NHS+ミニFH(2.5μM)+エクリズマブ(1.2μM); f NHS+トリプルI(=DAF(1-4)FH(19-20)CR1(15-17)、0.17μM); g NHS+トリプル-I(0.17μM)+エクリズマブ(1.2μM); h NHS+CR1(1-3)(7.3μM); i NHS+CR1(1-3)(7.3μM)+エクリズマブ(1.2μM) y軸: PNH III RBCの溶解(%)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下記で使用される場合、用語「有する(have)」、「含む(comprise)」又は「含む(include)」又はそれらの任意の文法的な変化形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語により導入される特徴に加えて、更なる特徴がこの文脈において説明された実体に存在しない状況、及び1つ以上の更なる特徴が存在する状況の両方を意味し得る。一例として、「AはBを有する」、「AはBを含む(comprise)」及び「AはBを含む(include)」という表現は、Bに加えて、Aに他の要素が存在しない状況(すなわち、Aが単独的及び排他的にBからなる状況)、並びに、Bに加えて、実体Aに1つ以上の更なる要素、例えば要素C、要素C及び要素D又は更なる要素が存在する状況の両方を意味し得る。
【0018】
更に、下記で使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より特に」、「詳しくは」、「より詳しくは」、又は同類の用語は、任意選択的な特徴と併せて使用され、更なる可能性を限定するものではない。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意選択的な特徴であり、いかなる場合も特許請求の範囲を限定することを意図するものでない。本発明は、当業者が認識するように、代替的な特徴を使用することにより実施してもよい。同様に、「本発明の実施形態において」又は同様の表現により導入される特徴は、任意選択的な特徴であるものとし、本発明の更なる実施形態に関するいかなる限定もなく、本発明の範囲に関するいかなる限定もなく、またこうして導入された特徴を本発明の他の任意選択的特徴又は非任意選択的特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる限定もない。更に、別段の記載がない限り、用語「約」は、関連分野において一般に認められている技術的精度を有する表示値に関し、好ましくは、表示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。
【0019】
用語「補体制御タンパク質反復」(当技術分野において「CCP」、「短い補体様反復」、「短いコンセンサス反復」又は「SCR」とも称される)は、原則として、当技術分野において公知であり、例えば、Schmidt et al. (2008), Clin Exp Immunol.151(1):14-24に概説された。CCPは、2つのジスルフィド結合を形成する4つの保存されたシステイン残基、及び1つの保存されたトリプトファンを含む(残りのアミノ酸はかなり配列変動がある)、約60~70アミノ酸を含むペプチド配列である。補体タンパク質C3b及び/又はC4bへの結合に加えて、CCPは、更なる活性、例えば、本明細書において以下に特定される崩壊促進活性及びI因子補因子活性を媒介することが見出された。
【0020】
用語「第1のCCP含有ドメイン」は、本明細書で使用される場合、補体活性化の古典的経路及び代替経路の転換酵素に対する転換酵素崩壊促進ドメインである、本明細書に特定されるマルチドメインポリペプチドのドメインに関する。したがって、好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、補体活性化の代替経路及び古典的経路の両方のC3転換酵素に対する崩壊促進活性を有する少なくとも1つのCCPを含む。用語「崩壊促進活性」は、本明細書で使用される場合、補体活性化の代替経路のC3転換酵素、すなわちC3bBbの、及び/又は補体活性化の古典的経路のC3転換酵素、すなわちC4bC2aの崩壊、好ましくは不活性化を媒介するCCP又はCCP含有ドメインの特性に関する。好ましくは、CCPの崩壊促進活性は、実施例において本明細書に特定されるように、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、2~10個、好ましくは2~5個、より好ましくは3~4個の、上記の活性を有するか又はそれに寄与するCCPを含む。好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、本明細書において以下に特定される補体受容体1型(CR1)、好ましくはヒトCR1のCCP1~3を含み; 及び/又は本明細書において以下に特定される崩壊促進因子(DAF)、好ましくはヒトDAFのCCP1~4を含む。好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、天然に存在する配列における補体受容体1型(CR1)のCCP1~3を含み; 及び/又は天然に存在する配列における崩壊促進因子(DAF)のCCP1~4を含む。
【0021】
好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であり、かつ補体活性化の古典的経路及び代替経路の転換酵素に対する転換酵素崩壊促進ドメインであるという活性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。より好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。また好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であり、かつ補体活性化の古典的経路及び代替経路の転換酵素に対する転換酵素崩壊促進ドメインであるという活性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。より好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。
【0022】
好ましくは、第1のCCP含有ドメインは、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのCCPを含む。当業者には理解されるように、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有する1つ以上のCCPは、上に特定される崩壊促進活性を有するCCP(単数又は複数)とは異なるCCPであり得る; 好ましくは、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有するCCP(複数可)は、上に特定される崩壊促進活性を有するCCP(複数可)である。用語「補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性」は、当業者によって理解される。好ましくは、この用語は、測定可能な親和性で補体タンパク質C3b及びC4bの少なくとも1つに結合する、第1のCCP含有ドメインの、及び/又はそのCCPの少なくとも1つの特性に関する。好ましくは、CCP又はCCP含有ドメインのC3b又はC4bへの結合親和性は、実施例において本明細書に特定されるように表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。
【0023】
用語「補体受容体1型」又は「CR1」は、原則として、C3b/C4b受容体又は分化群35タンパク質(cluster of differentiation 35 protein、CD35)としても知られる、タンパク質の補体活性化調節因子(RCA)ファミリーのメンバーに関するものとして当業者に公知である。好ましくは、CR1は哺乳動物CR1であり、より好ましくは、CR1はヒトCR1である。最も好ましくは、CR1は、Genbankアクセション番号P17927.3 GI:290457678で特定されるアミノ酸配列を有するヒトCR1である。
【0024】
用語「崩壊促進因子」又は「DAF」はまた、原則として、分化群55タンパク質(cluster of differentiation 55 protein、CD55)としても知られる、補体系の細胞表面結合調節因子に関するものとして当業者に公知である。好ましくは、DAFは、哺乳動物DAF、より好ましくはヒトDAFである。最も好ましくは、DAFは、Genbankアクセション番号P08174.4 GI:60416353で特定されるアミノ酸配列を有するヒトDAFである。
【0025】
用語「第2のCCP含有ドメイン」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのCCPを含むマルチドメインポリペプチドのドメインに関する。好ましくは、前記第2のCCP含有ドメインは、前記第1のCCP含有ドメインと直接隣接していない、すなわち、前記第2のCCP含有ドメインは、連続する一連のペプチド結合によって前記第1のCCP含有ドメインに連結されていないか、又は好ましくは、前記第1のCCP含有ドメイン及び第2のCCP含有ドメインは、C3bにもC4bにも結合活性を有しないドメインによって分離されている。したがって、好ましくは、マルチドメインポリペプチドが融合ポリペプチドである場合、第1のCCP含有ドメイン及び第2のCCP含有ドメインは、好ましくは、少なくとも宿主細胞認識ドメインによって分離されている。好ましくは、第2のCCP含有ドメインは、2~10個、好ましくは2~5個、より好ましくは3~4個のCCP(好ましくは以下に記載される活性を有するか又はそれに寄与するもの)を含む。好ましくは、第2のCCP含有ドメインは、本明細書において上に特定されるCR1、好ましくはヒトCR1のCCP8~10及び/又は15~17を含む。より好ましくは、第2のCCP含有ドメインは、CR1、好ましくはヒトCR1のCCP15~17を含む。更により好ましくは、第2のCCP含有ドメインは、配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であり、好ましくは本明細書において以下に記載されるI因子補因子活性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。最も好ましくは、第2のCCP含有ドメインは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。
【0026】
好ましくは、第2のCCP含有ドメインは、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有し、好ましくはI因子補因子活性を更に有する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、最も好ましくは3~4個のCCPを含む。用語「I因子補因子活性」は、本明細書で使用される場合、C3b及び/又はC4bに結合し、I因子による前記C3b及び/又はC4bのタンパク質分解を媒介する化合物、好ましくはCCP又はCCP含有ドメインの特性に関する。好ましくは、I因子補因子活性は、実施例において本明細書に示されるように決定される。
【0027】
用語「宿主細胞認識ドメイン」は、本明細書で使用される場合、宿主細胞表面マーカー、好ましくはシアル酸及び/若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物に対する結合活性を有し、並びに/又は補体因子C3b分解産物、好ましくはiC3b及び/若しくはC3dg若しくはC3dに対する結合活性を有する、マルチドメインポリペプチドのドメインに関する。好ましくは、宿主細胞認識ドメインは、宿主細胞表面マーカー、好ましくはシアル酸及び/若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物に対する結合活性を有し、並びに/又は補体因子C3b分解産物、好ましくはiC3b及び/若しくはC3dg若しくはC3dに対する結合活性を有する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのCCPを含む。好ましくは、宿主細胞認識ドメインは、本明細書において上に特定される補体H因子、好ましくはヒト補体H因子のCCP6~8及び/又は19~20を含む。より好ましくは、宿主細胞認識ドメインは、配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であり、好ましくは宿主細胞表面マーカー、好ましくはシアル酸及び/若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物に対する結合活性を有し、並びに/又は補体因子C3b分解産物、好ましくはiC3b及び/若しくはC3dgに対する結合活性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。より好ましくは、宿主細胞認識ドメインは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。好ましくは、CCP又は宿主細胞認識ドメインの宿主細胞表面マーカーへの結合活性及び補体因子C3b分解産物への結合活性は、実施例において本明細書に特定されるように表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「マルチドメインポリペプチド」は、少なくともポリペプチドドメイン(本明細書において以下に特定される)を含む任意の化学分子に関する。ドメイン間の化学結合が必ずしもペプチド結合である必要はないことは理解されるべきである。ドメイン間の化学結合が、エステル結合、ジスルフィド結合、又は当業者に公知の任意の他の適切な共有化学結合であることも本発明によって想定される。ドメインが他のドメインからごくわずかな程度までしか解離しないほど低い解離定数を有する非共有結合も想定される。好ましくは、前記非共有結合の解離定数は、10-5mol/l未満(Strep-Tag:Strep-Tactin結合を用いる場合のように)、10-6mol/l未満(Strep-TagII:Strep-Tactin結合の場合のように)、10-8mol/l未満、10-10mol/l未満、又は10-12mol/l未満(ストレプトアビジン:ビオチン結合の場合のように)である。解離定数を決定する方法は、当業者に周知であり、例えば、分光学的滴定法、表面プラズモン共鳴測定、平衡透析等が挙げられる。更に、マルチドメインポリペプチドのドメイン間の結合は間接的であること、例えば、ドメインが、ビオチンに対する親和性を有するタグを含み、ビオチン部分を含む更なる分子又は粒子に結合することもまた想定される。好ましくは、ドメイン間の化学結合はペプチド結合であり、すなわち、好ましくは、マルチドメインポリペプチドは本発明のドメインを含むか又はそれからなる融合ポリペプチドである。好ましくは、マルチドメインポリペプチドの少なくとも2つのドメインは、リンカーペプチドによって連結されている。適切なリンカーペプチドは、原則として、当技術分野において公知である。好ましいリンカーペプチドは、グリシン及び/又はプロリン残基を含むか、又は好ましくはそれからなる。より好ましくは、リンカーペプチドは、ポリグリシンリンカーペプチドである。最も好ましくは、リンカーペプチド、特に本明細書の他の箇所に特定される第1のCCP含有ドメイン及び宿主細胞認識ドメインを連結するリンカーペプチドは、14又は15個のグリシン残基を含む、好ましくはそれからなるリンカーである。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、本明細書に記載の成分からなる。
【0029】
好ましくは、ポリペプチド、特にマルチドメインポリペプチド、及び/又はドメイン、特にCCP含有ドメインへの言及は、本明細書に記載の特定のポリペプチド及びドメインの変異体(バリアント)を含む。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド変異体」及び「ドメイン変異体」は、少なくともドメイン(単数又は複数)(本明細書に特定される)を含むが、示される前記ポリペプチド又はドメインとは構造が異なる任意の化学分子に関する。好ましくは、ポリペプチド変異体又はドメイン変異体は、本明細書に特定されるポリペプチド又はドメインに含まれる、25~500個、より好ましくは30~300個、最も好ましくは35~150個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドを含む。更に、本発明に従って言及されるポリペプチド変異体又はドメイン変異体は、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加のために異なるアミノ酸配列を有するものとし、変異体のアミノ酸配列は、依然として、好ましくは、特定のポリペプチド又はドメインのアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、又は99%同一であることが理解されるべきである。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、当技術分野において周知のアルゴリズムによって決定することができる。好ましくは、同一性の程度は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定されるべきであり、ここで、比較ウィンドウにおけるアミノ酸配列の断片は、最適なアラインメントのために比較される配列と比較して、付加又は欠失(例えば、ギャップ又はオーバーハング)を含み得る。パーセンテージは、好ましくはペプチドの全長にわたって、両方の配列において同一のアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して、一致する位置の数を得て、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman(1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、及びTFASTA)、又は目視検査によって行ってもよい。2つの配列が比較のために同定されていることを考慮すると、GAP及びBESTFITが、好ましくは、それらの最適なアラインメント、及びしたがって同一性の程度を決定するために使用される。好ましくは、ギャップウェイトについて5.00、及びギャップウェイトレングスについて0.30のデフォルト値が使用される。上に言及されたポリペプチド変異体又はドメイン変異体は、対立遺伝子変異体、又は任意の他の種特異的ホモログ、パラログ、若しくはオルソログに由来し得る。更に、本明細書で言及されるポリペプチド変異体は、特定のポリペプチドの断片又は前述の種類の変異体を含む(これらの断片及び/又は変異体が、上に言及されるドメインを含む限り)。そのような断片は、例えば、ポリペプチドの分解産物又はスプライス変異体であり得るか、又はそれに由来し得る。非天然アミノ酸を含むことによって、及び/又はペプチド模倣物であることによって、翻訳後修飾、例えば、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、スモ化、又はミリスチル化によって異なる変異体が、更に含まれる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「Xに対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むドメイン」は、Xに対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有する、上に特定されるXの変異体を含むドメインに関する。好ましくは、Xに対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むドメインは、Xの活性を有するXの変異体であり、より好ましくは本明細書に特定されている通りである。
【0031】
したがって、好ましくは、本発明のマルチドメインポリペプチド及びその変異体は、好ましくはin vitro及び/又はin vivoで、補体活性化の阻害剤であるという活性を有する、すなわち、補体反応を阻害する活性を有する。好ましくは、マルチドメインポリペプチド及びその変異体は、補体系の少なくとも2つ、より好ましくは3つ全ての活性化経路を阻害する活性を有する。より好ましくは、マルチドメインポリペプチド及びその変異体は、補体活性化の少なくとも代替経路及び古典的経路を阻害する活性を有し、好ましくは補体活性化の少なくとも代替経路、古典的経路、及びレクチン経路を阻害する活性を有する。
【0032】
好ましくは、マルチドメインポリペプチドは、隣接するポリペプチド配列として、そのドメインの少なくとも2つを含み、好ましくはそのドメインの3つ全てを含み、すなわち、マルチドメインポリペプチドは、好ましくは、前記3つのドメインを含む融合ポリペプチドである。好ましくは、原則として、3つのドメインは、当業者によって適切であると考えられる任意の順序でそのような融合ポリペプチドに含まれ得る。より好ましくは、マルチドメインポリペプチドは、N末端、第1のCCP含有ドメイン、宿主細胞認識ドメイン、第2のCCP含有ドメイン、C末端の順序で前記ドメインを含む。更により好ましくは、マルチドメインポリペプチドは、配列番号5又は6に示されるアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるか、又は本明細書において上に特定されるその変異体であり、好ましくは、前記変異体は、上に特定される補体活性化の阻害剤であるという活性を依然として有する。
【0033】
有利には、本発明の基礎となる研究において、本明細書に記載の化合物は、補体阻害活性を有し、補体活性化の3つの公知の経路全てを阻害するのに特に適していることが見出された。驚くべきことに、因子C3bに対する本発明の化合物の解離定数は、20nM~40nMの範囲にあることが見出された。更に、化合物は、約75nM~150nMの濃度で代替経路を介して誘導される溶血、及び100nM未満の濃度で古典的経路を介して誘導される溶血を妨げることが見出された。
【0034】
上述した定義は、下記に必要な変更を加えて適用する。下記で更に述べた追加の定義及び説明はまた、本明細書に記載した全ての実施形態についても必要な変更を加えて適用する。
【0035】
本発明は更に、本発明のマルチドメインポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドに関する。
【0036】
用語「ポリヌクレオチド」は、本発明に従って使用される場合、本明細書において上に特定されるドメインを含むマルチドメインポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。前述のドメインを含むマルチドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、周知技術を用いて関連ドメインをコードするポリヌクレオチドを合成することによって、本発明に従って得られた。
【0037】
したがって、ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、配列番号7又は13に示される核酸配列を含み、及び/又は配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、配列番号8又は14に示される核酸配列を含む。配列番号5又は6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドはまた、縮重遺伝コードのために、他のポリヌクレオチドによってコードされてもよいことが理解されるべきである。
【0038】
更に、用語「ポリヌクレオチド」は、本発明に従って使用される場合、前述の特定のポリヌクレオチドの変異体を更に包含する。ポリヌクレオチド変異体は、好ましくは、配列が、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加及び/又は欠失によって配列番号7、8、13、又は14に示される上述の特定の核酸配列から誘導することができ、それによって、変異体核酸配列が、上に特定される活性を含むポリペプチドを依然としてコードするものとすることを特徴とする核酸配列を含む。変異体は、配列番号7、8、13、又は14に示される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。更に、配列番号5又は6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドも包含される。同一性パーセント値は、好ましくは、全アミノ酸又は核酸配列領域にわたって計算される。異なる配列を比較するための様々なアルゴリズムに基づいた一連のプログラムを当業者は利用することができる。この文脈において、Needleman及びWunsch又はSmith及びWatermanのアルゴリズムにより特に信頼性の高い結果が得られる。配列アラインメントを実施するには、GCGソフトウェアパケット(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991))の一部である、プログラムPileUp(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins et al., CABIOS, 5 1989: 151-153)、又はプログラムGap及びBestFit(Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970))、及びSmith and Waterman(Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981))を使用することができる。上記においてパーセント(%)で列挙した配列同一性値は、好ましくは、以下の設定: ギャップウェイト: 50、レングスウェイト: 3、アベレージマッチ: 10.000、及びアベレージミスマッチ: 0.000(別段の記載がない限り、配列アラインメントの標準設定として常に使用されるものとする)で、配列領域全体に対してプログラムGAPを使用して決定することができる。変異体はまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前述の特定の核酸配列にハイブリダイズすることが可能な核酸配列を含むポリヌクレオチドを包含する。これらのストリンジェントな条件は当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6で確認することができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に関する好ましい例は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中のハイブリダイゼーション条件、続いて0.2×SSC、0.1% SDS、50~65℃での1回以上の洗浄ステップである。これらのハイブリダイゼーション条件は、核酸の種類に応じて、及び例えば、有機溶媒が存在する場合、緩衝液の温度及び濃度に関して異なることは、当業者には理解される。例えば、「標準ハイブリダイゼーション条件」下では、温度は、核酸の種類に応じて、0.1~5×SSC(pH7.2)の濃度を有する水性緩衝液中42℃から58℃の間で異なる。有機溶媒が上述の緩衝液、例えば50%ホルムアミド中に存在する場合、標準条件下の温度は約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば0.1×SSC及び20℃~45℃、好ましくは30℃から45℃の間である。DNA:RNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば0.1×SSC及び30℃~55℃、好ましくは45℃から55℃の間である。上述のハイブリダイゼーション温度は、例えば、長さが約100bp(=塩基対)であり、ホルムアミドの非存在下で50%のG+C含有量を有する核酸について決定される。当業者は、教科書、例えば上で言及した教科書、又は以下の教科書: Sambrook et al., "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; Hames and Higgins (Ed.) 1985, "Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (Ed.) 1991, "Essential Molecular Biology: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxfordを参照することにより、必要とされるハイブリダイゼーション条件をどのように決定するかが分かる。或いは、ポリヌクレオチド変異体は、PCRに基づく技術、例えば、DNAの混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づく増幅により、すなわち、本発明のポリペプチドの保存ドメインに対する縮重プライマーを使用して得ることができる。本発明のポリペプチドの保存ドメインは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列、又はポリペプチドのアミノ酸配列の、他のCCPの配列との配列比較によって同定してもよい。鋳型として、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト由来のDNA又はcDNAを使用してもよい。
【0039】
前述の核酸配列のいずれかの断片を含むポリヌクレオチドも、本発明のポリヌクレオチドとして包含される。断片は、上に特定されるドメインを含み、及び好ましくは上に特定される活性を依然として有するポリペプチドをコードするものとする。したがって、ポリペプチドは、前記生物活性を付与する本発明のドメインを含み得るか、又はそれからなり得る。本明細書で意味する場合の断片は、好ましくは、前述の核酸配列の少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも250個又は少なくとも500個の連続するヌクレオチドを含むか、又は前述のアミノ酸配列の少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも80個、少なくとも100個又は少なくとも150個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは、前述の核酸配列からなるか、又は前述の核酸配列を含むかのいずれかである。したがって、それらは更なる核酸配列もまた含有し得る。詳しくは、本発明のポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードしてもよく、融合タンパク質の一方のパートナーは、上記の核酸配列によってコードされているマルチドメインポリペプチドである。そのような融合タンパク質は、追加の部分として、発現をモニターするための他のポリペプチド(例えば、緑色、黄色、青色、又は赤色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ等)、又は検出可能マーカーとして若しくは精製目的のための補助手段として役立ち得るいわゆる「タグ」を含んでもよい。様々な目的のためのタグは、当技術分野において周知であり、FLAGタグ、6-ヒスチジンタグ、MYCタグ等を含む。
【0041】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチド(すなわち、その天然のコンテキストから単離されたもの)として、又は遺伝子操作された形態でのいずれかで提供されるものとする。ポリヌクレオチドは、好ましくは、cDNAを含むDNA、又はRNAである。この用語は、一本鎖ポリヌクレオチド、及び二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。更に、天然に存在する修飾ポリヌクレオチドを含む化学的に修飾されたポリヌクレオチド、例えばグリコシル化ポリヌクレオチド若しくはメチル化ポリヌクレオチド、又は人工修飾されたもの、例えばビオチン化ポリヌクレオチドも含まれる。
【0042】
したがって、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、a)配列番号7、8、13、又は14に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリヌクレオチドであり、b)配列番号5又は6に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドをコードし、及び/又はc)配列番号7、8、13、又は14にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドである。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、a)配列番号7、8、13、又は14の核酸配列を含む、好ましくはそれからなるポリヌクレオチドであり、及び/又はb)配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるポリペプチドをコードする。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、上に特定される活性を有するマルチドメインポリペプチドをコードする。
【0043】
本発明は更に、本発明のポリヌクレオチドを含む、ベクターに関する。
【0044】
用語「ベクター」は、好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルス又はレトロウイルスベクター、並びに人工染色体、例えば、細菌人工染色体又は酵母人工染色体を包含する。更にこの用語はまた、ターゲティング構築物のゲノムDNAへのランダム又は部位特異的組込みを可能にするターゲティング構築物に関する。そのようなターゲティング構築物は、好ましくは、以下に詳細に記載されるように相同組換え又は異種組換えのいずれかにとって十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主における増殖及び/又は選択のための選択マーカーを更に含む。ベクターは、当技術分野において周知の様々な技術により宿主細胞に組み込まれ得る。例えば、プラスミドベクターは、沈澱物、例えば、リン酸カルシウム沈澱物若しくは塩化ルビジウム沈澱物に、又は帯電した脂質との複合体に、又は炭素系クラスター、例えばフラーレンに導入することができる。或いは、プラスミドベクターは、熱ショック又はエレクトロポレーションの技術により導入され得る。ベクターがウイルスであるならば、宿主細胞への適用前に、適切なパッケージング細胞株を使用してin vitroでパッケージングしてもよい。レトロウイルスベクターは、複製コンピテント又は複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は、一般に、補完する宿主/細胞のみにおいて起こる。
【0045】
より好ましくは、本発明のベクターにおいて、ポリヌクレオチドは、原核細胞及び/若しくは真核細胞、又は単離されたその画分における発現を可能にする発現調節配列に作動的に連結される。前記ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの、ポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を保証する調節エレメントは、当技術分野において周知である。それらは、好ましくは、転写の開始を保証する調節配列を含み、任意選択で、転写の終止及び転写物の安定化を保証するポリ-Aシグナルを含む。追加の調節エレメントとしては、転写エンハンサー、及び翻訳エンハンサーを挙げることができる。原核宿主細胞における発現を許容する、可能性のある調節エレメントは、例えば、大腸菌(E. coli)におけるlac、trp又はtacプロモーターを含み、また真核宿主細胞における発現を許容する調節エレメントの例は、酵母におけるAOX1若しくはGAL1プロモーター、又はCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー、又は哺乳動物及び他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。更に、誘導性発現調節配列は、本発明に包含される発現ベクターにおいて使用され得る。そのような誘導性ベクターは、tet若しくはlacオペレーター配列、又は熱ショック若しくは他の環境因子によって誘導可能な配列を含み得る。適切な発現調節配列は、当技術分野において周知である。転写開始を担うエレメントに加えて、そのような調節エレメントはまた、ポリヌクレオチドの下流にある、転写終結シグナル、例えば、SV40-ポリ-A部位又はtk-ポリ-A部位を含み得る。この文脈において、適切な発現ベクターは当技術分野において公知であり、例えば、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia社)、pBluescript(Stratagene社)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(InVitrogene社)又はpSPORT1(GIBCO BRL社)等である。好ましくは、前記ベクターは、発現ベクター、及び遺伝子移入若しくはターゲティングベクターである。ウイルス、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、又はウシパピローマウイルス由来の発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを標的細胞個体群に送達するのに使用してもよい。当業者に周知の方法を使用して組換えウイルスベクターを構築することができる; 例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.、及びAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)に記載されている技術を参照されたい。
【0046】
好ましくは、ベクターは、宿主細胞における本発明のポリヌクレオチドの発現を媒介するベクターである。当業者は、ベクターと、ベクターの増殖のための、及び/又はベクターによってコードされるタンパク質の発現のための宿主細胞との組み合わせをどのように選択するかを知っている。
【0047】
更に、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0048】
「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、本発明のベクターを増殖させる能力、及び/又は本発明のベクター若しくはポリヌクレオチド上にコードされるマルチドメインポリペプチドを産生する能力を有する細菌細胞、古細菌細胞、又は真核細胞に関する。好ましくは、宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)種由来の細菌細胞、鱗翅類細胞、マウス細胞、ラット細胞、又はヒト細胞である; より好ましくは、細胞は、酵母細胞、好ましくはピキア(Pichia)属のもの、より好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞である。好ましくは、宿主細胞は、in vitroで培養された細胞である。更に好ましい実施形態において、宿主細胞は、in vivoの細胞、好ましくは網膜色素上皮細胞、脈絡膜血管系内の内皮細胞、及び/又は網膜若しくは脈絡膜内の別の細胞である。
【0049】
本発明はまた、医薬に使用するための、本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターに関する。更に、本発明はまた、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターに関する。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「不適切な補体活性化」は、タイミング及び/又は大きさにおいて、所定の状況下の補体活性化の正常レベルを超える補体活性化に関する。したがって、好ましくは、不適切な補体活性化は、所定の状況下の健康な参照、好ましくは見かけ上健康な対象の補体活性化の程度を超える、好ましくは顕著に超える補体活性化である。好ましくは、不適切な補体活性化は、患者において疾患の症状を引き起こす補体活性化である。不適切な補体活性化の症状は、当技術分野において公知であり、溶血、黄斑変性、一時的な腫脹、例えば遺伝性血管浮腫におけるもの等を含む。好ましくは、不適切な補体活性化は、サンプル中の補体因子C3及び/又はC4活性を決定することによって決定される。
【0051】
当業者に知られているように、様々な疾患が、不適切な補体活性化に関連し、及び/又はそれによって引き起こされる。したがって、好ましくは、本発明はまた、不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターに関する。好ましくは、前記の不適切な補体活性化を症状として有する疾患は、虚血再灌流障害、抗体媒介性移植片拒絶、移植後血栓性微小血管症、自己免疫性溶血性貧血、急性及び遅発性溶血性輸血反応、寒冷凝集素症、関節リウマチ、アクアポリン-4抗体陽性の視神経脊髄炎、CD59欠乏、C3-糸球体症、非定型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症、及び加齢黄斑変性からなるリストから選択される。
【0052】
用語「処置する」は、本明細書で使用される場合、本明細書で言及される疾患若しくは障害又はそれに伴う症状を、好ましくは有意な程度まで、改善することを意味する。また前記処置するは、本明細書で使用される場合、本明細書で言及される疾患又は障害に関する健康の完全回復も含む。本発明に従って使用される場合の処置は、処置しようとする全ての対象において有効ではないかもしれないことを理解されたい。しかし、この用語は、好ましくは、本明細書で言及される疾患又は障害に罹患している対象の統計的に有意な部分が順調に処置され得ることを必要とするものとする。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計用評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値決定、スチューデントt検定、マンホイットニー検定等を使用し、それ以上作業することなく当業者によって決定され得る。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.0001である。好ましくは、処置は、所定のコホート又は個体群の対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に有効であるものとする。
【0053】
用語「予防する」は、本明細書で使用される場合、本明細書で言及される疾患又は障害に関する健康を、対象において一定期間維持することを意味する。前記期間は、投与された薬物化合物の量、及び本明細書の他の箇所で論じられている対象の個々の因子に依存することが理解される。予防は、本発明による化合物で処置される全ての対象において有効ではないかもしれないことも理解されるべきである。しかし、この用語は、好ましくは、コホート又は個体群の対象の統計的に有意な部分が、本明細書で言及される疾患若しくは障害、又はそれに付随する症状に罹患することから効果的に予防されることを必要とする。好ましくは、通常、すなわち本発明による予防策なしで、本明細書で言及される疾患又は障害を発症する対象のコホート又は個体群が、この文脈において想定される。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、本明細書の他の箇所で論じられている様々な周知の統計的評価ツールを使用して、それ以上作業することなく当業者によって決定され得る。
【0054】
本発明はまた、補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブと組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターに関する。
【0055】
本発明は更に、本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターと組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ、又はrEV576(コバーシン)に関する。
【0056】
用語「補体タンパク質C5」は、補体経路の活性化後に切断されて補体タンパク質C5a及びC5bをもたらすタンパク質に関するものとして当業者によって理解される。対応して、「補体タンパク質C5阻害ポリペプチド」は、補体タンパク質C5を特異的に認識し阻害するポリペプチド、好ましくは抗体、より好ましくはモノクローナル抗体である。好ましくは、補体タンパク質C5阻害ポリペプチドは、C5に特異的に結合し終末活性化を阻害する抗体である; より好ましくは、補体タンパク質C5阻害ポリペプチドは、エクリズマブ(CAS番号: 219685-50-4)である。また好ましくは、補体タンパク質C5阻害ポリペプチドは、rEV576(コバーシン)である。
【0057】
本発明は更に、(i)本発明によるマルチドメインポリペプチド、及び(ii)補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ又はrEV576(コバーシン)を含む、同時、個別又は連続使用のための組合せ製剤に関する。
【0058】
用語「組合せ製剤」は、本出願において言及される場合、1つの製剤中に本発明の薬学的に活性な化合物を含む製剤に関する。好ましくは、組合せ製剤は容器に含まれており、すなわち、好ましくは、前記容器は本発明の全ての薬学的に活性な化合物を含む。好ましくは、前記容器は、別々の製剤として、すなわち、好ましくは、マルチドメインポリペプチドの1つの製剤、及び補体タンパク質C5阻害ポリペプチドの1つの製剤として、本発明の薬学的に活性な化合物を含む。当業者には理解されるように、用語「製剤」は、本発明の少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む、又はそれからなる化合物の(好ましくは薬学的に許容される)混合物に関する。好ましくは、組合せ製剤は、補体タンパク質C5阻害ポリペプチド及びマルチドメインポリペプチドを単一の固体医薬形態、例えば錠剤中に含み、より好ましくは、本発明の1つの化合物は、即時放出製剤又は急速放出製剤に含まれ、本発明の第2の化合物は、徐放製剤又は遅延放出製剤に含まれる; より好ましくは、本発明の化合物は、2つの別々の、好ましくは液体の製剤に含まれる; 前記別々の液体製剤は、好ましくは注射用である(好ましくは対象の体の異なる部分における)。
【0059】
好ましくは、組合せ製剤は、個別投与用又は併用投与用である。「個別投与」は、本明細書で使用される場合、本発明の薬学的に活性な化合物の少なくとも2つが、異なる経路を介して、及び/又は対象の体の異なる部分に投与される投与に関する。例えば、1つの化合物は腸内投与によって(例えば経口的に)投与され得るが、第2の化合物は非経口投与によって(例えば静脈内に)投与される。好ましくは、個別投与用の組合せ製剤は、個別投与用の少なくとも2つの物理的に分離された製剤を含み、それぞれの製剤は少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含有し; 例えば、組合せ製剤の薬学的に活性な化合物を、それらの化学的性質又は生理学的性質のために、異なる経路によって、例えば非経口的及び経口的に投与しなければならない場合に、前記選択肢は好ましい。逆に、「併用投与」は、本発明の薬学的に活性な化合物が同じ経路を介して、例えば、経口的に又は好ましくは静脈内に投与される投与に関する。
【0060】
また好ましくは、組合せ製剤は、同時投与用又は連続投与用である。「同時投与」は、本明細書で使用される場合、本発明の薬学的に活性な化合物が同時に投与される、すなわち、好ましくは、薬学的に活性な化合物の投与が15分未満の時間間隔内に、より好ましくは5分未満の時間間隔内に開始される投与に関する。最も好ましくは、薬学的に活性な化合物の投与は、例えば、薬学的に活性な化合物を含む錠剤を呑み込むことによって、又は薬学的に活性な化合物の1つを含む錠剤を呑み込み、同時に第2の化合物を注射することによって、又は1つの薬学的に活性な化合物を含む溶液の静脈内注射を適用し、体の異なる部分に第2の化合物を注射することによって、同時に開始する。逆に「連続投与」は、本明細書で使用される場合、本発明の相乗効果を可能にする、対象における薬学的に活性な化合物の血漿濃度をもたらす投与であるが、好ましくは、本明細書において上に特定される同時投与ではない投与に関する。好ましくは、連続投与は、薬学的に活性な化合物、好ましくは全ての薬学的に活性な化合物の投与を1日又は2日の時間間隔内で、より好ましくは12時間の時間間隔内で、更により好ましくは4時間の時間間隔内で、更により好ましくは1時間の時間間隔内で、最も好ましくは5分の時間間隔内で開始する投与である。
【0061】
好ましくは、組合せ製剤は、薬学的に適合性のある組合せ製剤である。用語「薬学的に適合性のある製剤」及び「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、本発明の化合物、及び任意選択により1つ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物に関する。本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として製剤化することができる。好ましい許容される塩は、酢酸塩、メチルエステル、HCl、硫酸塩、塩化物等である。医薬組成物は、好ましくは局所投与され、又はより好ましくは全身投与される。薬物投与に通常使用される適切な投与経路は、経口投与、静脈内投与、皮下投与、又は非経口投与、並びに吸入である。しかし、化合物の性質及び作用機序に応じて、医薬組成物は、他の経路によって同様に投与され得る。更に、化合物は、通常の医薬組成物中で、又は本明細書の別の箇所に特定される個別の医薬組成物として、他の薬物と組み合わせて投与することができ、前記個別の医薬組成物はパーツのキット形態で提供してもよい。好ましくは、組合せ製剤は、1つ以上の化合物に関して長期放出製剤である。
【0062】
化合物は、好ましくは、従来の手順に従って、標準の医薬担体と薬物とを組み合わせることによって調製された従来の剤形で投与される。これらの手順は、所望の製剤にとって適切な成分を混合、造粒、及び圧縮又は溶解することを含み得る。薬学的に許容される担体又は希釈剤の形態及び特性は、それが組み合わせられる有効成分の量、投与経路、及び他の周知の変動要因によって決定されることは理解されよう。
【0063】
担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合性があり、その受容者に有害でないという意味において許容されなければならない。使用される医薬担体は、例えば、固体、ゲル又は液体であり得る。固体担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等である。液体担体の例は、リン酸緩衝生理食塩水、シロップ、落花生油及びオリーブ油等の油、水、乳剤、様々なタイプの湿潤剤、滅菌溶液等である。同様に、担体又は希釈剤は、当技術分野で周知の時間遅延材料、例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレート等を単独で、又はワックスと共に含んでいてもよい。前記適切な担体は、上記のもの及び当技術分野で周知の他のものを含み、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。
【0064】
希釈剤(複数可)は、化合物(単数又は複数)の生物活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。更に、医薬組成物又は製剤はまた、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤、活性酸素スカベンジャー等を含んでいてもよい。
【0065】
治療上有効量は、本明細書で言及されている疾患又は状態に伴う症状を予防、改善又は処置する、本発明の医薬組成物中で使用される化合物の量を意味する。そのような化合物の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準の製薬手順、例えばED50(個体群の50%で治療上有効な用量)及びLD50(個体群の50%に対する致死用量)によって決定することができる。治療効果と毒性作用との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比率として表すことができる。
【0066】
投与計画は、主治医及び他の臨床学的因子によって、好ましくは上記の方法のいずれか1つに従って決定される。医学分野において周知であるように、任意のある患者のための投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、一般的な健康状態、並びに同時に投与される他の薬物を含めた、多くの因子に依存する。経過は、定期的評価によってモニターすることができる。典型的な用量は、例えば、1~1500mgの範囲であり得る; しかし、この例示範囲の下方又は上方の用量が特に前述の因子を考慮して予測される。一般に、医薬組成物の規則的投与としての投与計画は、1日当たり100μg~100mg単位の範囲内であるべきである。投与計画が持続注入である場合はまた、毎分体重1キログラム当たり100μg~100mg単位の範囲内にそれぞれあるべきである。好ましくは、それぞれの薬物の長期放出製剤は、1週間に1回から2ヶ月に1回、又は更により長い間隔で注射される。経過は、定期的評価によってモニターすることができる。本発明の化合物の好ましい用量及び濃度は、本明細書の他の箇所に特定されている。
【0067】
例として、マルチドメインポリペプチドの血漿濃度は、好ましくは、25nM以上、より好ましくは50nM以上である。また好ましくは、マルチドメインポリペプチドの血漿濃度は、20nM~20μM、より好ましくは50nM~5μMの範囲である。補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、特にエクリズマブの有効濃度は、当技術分野において公知である。本発明のマルチドメインポリペプチドの相乗効果により、併用処置における補体タンパク質C5阻害ポリペプチドの有効濃度は低くなり得る。
【0068】
本明細書で言及されている医薬組成物及び製剤は、好ましくは、本明細書で挙げた疾患又は状態を処置又は改善又は予防するために、例えば長期放出製剤の場合、少なくとも1回投与される。しかし、前記医薬組成物は、2回以上、例えば、毎日1~4回を非限定的な日数まで投与してもよい。短いクリアランス時間を有するいくつかの化合物はまた、長い処置時間中に全身に有効量を提供するために、血流中の注入として適用してもよい。
【0069】
特定の医薬組成物は、製薬分野において周知の方法で調製され、本明細書において上に言及される少なくとも1つの活性化合物を、薬学的に許容される担体又は希釈剤との混合物中で、又は他のやり方でこれらと結び付けて含む。これらの特定の医薬組成物の製造については、活性化合物(複数可)は、通常、担体若しくは希釈剤と混合されるか、又は、カプセル、サッシェ、カシェ、ペーパー若しくは他の適切な容器若しくはビヒクルに封入若しくはカプセル化される。得られた製剤は、投与様式に適合させることができ、すなわち錠剤、カプセル剤、坐剤、溶液、懸濁液等の形態である。推奨投与量は、考慮される受容者に応じて投与量の調整を予期するために、処方者又は使用者の指示書に表示されるものとする。
【0070】
本発明はまた、(i)マルチドメインポリペプチド、(ii)補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、及び(iii)少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬; 及び上に特定される処置及び/又は予防に使用するための前記医薬に関する。
【0071】
用語「医薬」は、当業者には理解される。理解されるように、「組合せ製剤」という用語について本明細書において上に与えられた定義は、好ましくは、必要な変更を加えて本発明の医薬という用語に適用される。
【0072】
更に、本発明は、対象における不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防する方法であって、
有効量の、本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターを前記対象に投与すること
を含み、それによって、前記対象における不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防する、方法に関する。
【0073】
本発明の処置及び/又は予防方法は、好ましくは、in vivo法である。更に、それは、上に明確に言及されるものに加えたステップを含み得る。例えば、更なるステップは、例えば、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を診断すること、又は追加の化合物、例えば補体タンパク質C5阻害ポリペプチドを投与することに関連し得る。更に、前記ステップの1つ以上は、自動化された装置によって実施してもよい。
【0074】
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、補体系を有する動物、好ましくは哺乳動物に関する。より好ましくは、対象は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌ、マウス、又はラット、最も好ましくはヒトである。
【0075】
更に、本発明は、補体活性化の程度を妨げる、又は低減するin vitro法であって、
本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターを、補体因子を含む反応混合物に適用すること
を含み、それによって、前記反応混合物における補体活性化の程度を妨げる、又は低減する、方法に関する。
【0076】
本発明の補体活性化の程度を妨げる、又は低減するin vitro法は、上に明確に言及されるものに加えたステップを含み得る。例えば、更なるステップは、例えば、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを宿主細胞に導入すること、又は前記反応混合物中の補体活性化の程度を決定することに関連し得る。更に、前記ステップの1つ以上は、自動化された装置によって実施してもよい。
【0077】
更に、本発明は、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターの使用; 及び不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための医薬の製造のための、本発明によるマルチドメインポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターの使用に関する。
【0078】
上記を考慮すると、以下の実施形態が好ましい。
【0079】
1. (i)補体活性化の古典的経路及び代替経路の転換酵素に対する転換酵素崩壊促進ドメインである第1の補体制御タンパク質反復(CCP)、
(ii)宿主細胞認識ドメイン、及び
(iii)第2のCCP含有ドメイン
を含む、マルチドメインポリペプチド。
【0080】
2. (i)補体受容体1型(CR1)のCCP1~3に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、及び/又は崩壊促進因子(DAF)のCCP1~4に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、第1の補体制御タンパク質反復(CCP)ドメイン、
(ii)補体H因子のCCP6~8又はCCP19~20に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、宿主細胞認識ドメイン、及び
(iii)CR1のCCP8~10及び/又はCCP15~17に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、第2のCCP含有ドメイン
を含む、マルチドメインポリペプチド。
【0081】
3. 前記第1及び/又は第2のCCP含有ドメインが、多数のCCPを含む、実施形態1又は2に記載のマルチドメインポリペプチド。
【0082】
4. 前記第1及び/又は第2のCCP含有ドメインが、2~10個、好ましくは2~5個、より好ましくは3~4個のCCPを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0083】
5. 前記第1のCCP含有ドメインが、補体受容体1型(CR1)、好ましくはヒトCR1のCCP1~3を含み、及び/又は崩壊促進因子(DAF)、好ましくはヒトDAFのCCP1~4を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0084】
6. 前記第1のCCP含有ドメインが、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~5のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0085】
7. 前記第1のCCP含有ドメインが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~6のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0086】
8. 前記第1のCCP含有ドメインが、配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~7のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0087】
9. 前記第1のCCP含有ドメインが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~8のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0088】
10. 前記第2のCCP含有ドメインが、CR1、好ましくはヒトCR1のCCP8~10及び/又は15~17を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0089】
11. 前記第2のCCP含有ドメインが、CR1、好ましくはヒトCR1のCCP15~17を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0090】
12. 前記第2のCCP含有ドメインが、配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~11のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0091】
13. 前記第2のCCP含有ドメインが、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~12のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0092】
14. 前記宿主細胞認識ドメインが、補体H因子、好ましくはヒト補体H因子のCCP6~8及び/又は19~20を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0093】
15. 前記宿主細胞認識ドメインが、配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~14のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0094】
16. 前記宿主細胞認識ドメインが、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~15のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0095】
17. 隣接するポリペプチド配列として、前記ドメインの少なくとも2つを含み、好ましくは前記ドメインの3つ全てを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0096】
18. N末端、第1のCCP含有ドメイン、宿主細胞認識ドメイン、第2のCCP含有ドメイン、C末端の順序で前記ドメインを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0097】
19. 前記ドメインの少なくとも2つが、リンカーペプチド、好ましくはポリグリシンリンカーペプチドによって連結されている、実施形態1~18のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0098】
20. 前記第1のCCP含有ドメインと前記宿主細胞認識ドメインとが、14又は15個のグリシン残基を含む、好ましくはそれからなる、リンカーによって連結されている、実施形態1~19のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0099】
21. 配列番号5若しくは6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5若しくは6に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~20のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0100】
22. 配列番号5又は6に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~21のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0101】
23. 前記第1のCCP含有ドメインが、補体因子C3b及びC4bに対する結合活性を有する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのCCPを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0102】
24. 前記第2のCCP含有ドメインが、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有し、好ましくはI因子補因子活性を更に有する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのCCPを含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0103】
25. 前記宿主細胞認識ドメインが、補体因子C3b分解産物、好ましくはiC3b及び/若しくはC3dg及び/若しくはC3dに対する結合活性を有し、並びに/又は宿主細胞表面マーカー、好ましくはシアル酸及び/若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物に対する結合活性を有する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのCCPを含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0104】
26. 補体反応を阻害する活性を有する、実施形態1~25のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0105】
27. 補体系の少なくとも2つ、好ましくは3つ全ての活性化経路を阻害する活性を有する、実施形態1~26のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0106】
28. 補体活性化の少なくとも代替経路及び古典的経路を阻害する活性を有し、好ましくは補体活性化の少なくとも代替経路、古典的経路、及びレクチン経路を阻害する活性を有する、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0107】
29. 実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【0108】
30. a)配列番号7、8、13、又は14に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリヌクレオチドであり、
b)配列番号5又は6に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドをコードし、及び/又は
c)配列番号7、8、13、又は14にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドである、
実施形態29に記載のポリヌクレオチド。
【0109】
31. a)配列番号7、8、13、又は14の核酸配列を含む、好ましくはそれからなるポリヌクレオチドであり、及び/又は
b)配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるポリペプチドをコードする、
実施形態29又は30に記載のポリヌクレオチド。
【0110】
32. 実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【0111】
33. 実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、及び/又は実施形態32に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【0112】
34. 医薬に使用するための、実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態33に記載のベクター。
【0113】
35. 不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態33に記載のベクター。
【0114】
36. 虚血再灌流障害、抗体媒介性移植片拒絶、移植後血栓性微小血管症、自己免疫性溶血性貧血、急性及び遅発性溶血性輸血反応、寒冷凝集素症、関節リウマチ、アクアポリン-4抗体陽性の視神経脊髄炎、CD59欠乏、C3-糸球体症、非定型又は定型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症、及び/又は加齢黄斑変性を処置及び/又は予防するための、実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態33に記載のベクター。
【0115】
37. 補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ又はrEV576(コバーシン(coversin))と組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態33に記載のベクター。
【0116】
38. 実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態33に記載のベクターと組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ。
【0117】
39. (i)実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、及び(ii)補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ又はrEV576(コバーシン)を含む、同時、個別又は連続使用のための組合せ製剤。
【0118】
40. 対象における不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防する方法であって、
有効量の、実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態33に記載のベクターを前記対象に投与すること
を含み、それによって、前記対象における不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防する、方法。
【0119】
41. 補体活性化の程度を妨げる、又は低減するin vitro法であって、
実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチドを、補体因子を含む反応混合物に適用すること
を含み、それによって、前記反応混合物における補体活性化の程度を妨げる、又は低減する、方法。
【0120】
42. 不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態33に記載のベクターの使用。
【0121】
43. 不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための医薬の製造のための、実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド、実施形態29~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態33に記載のベクターの使用。
【0122】
本明細書で引用された全ての参考文献は、それらの開示内容全体及び本明細書で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書に援用する。
【実施例】
【0123】
実施例1: 構築物
使用される専門語: 実施例で使用されたCR1は、ヒトCR1であった; FHは、ヒト補体H因子に関するものであり、DAFは、ヒト崩壊促進因子に関するものである。タンパク質名の略語に続く数字は、使用されたタンパク質内のCCPの数に関し、例えば、FH(19-20)は、H因子のCCP19及び20に関する。
【0124】
以下の構築物を使用した(
図1): DAF(1-4)とFH(19-20)との間にオリゴ-glyリンカーを含む、「DAF(1-4)FH(19-20)長リンカー」(配列番号11、配列番号16によってコードされる)(
図1A); 及びDAF(1-4)及びFH(19-20)が直接連結している(すなわち、リンカーなし)「DAF(1-4)FH(19-20)短リンカー」(配列番号12、配列番号15によってコードされる)。構築物CR1(1-3)FH(19-20)長リンカー(配列番号9、配列番号18によってコードされる)及び短リンカー(配列番号10、配列番号17によってコードされる)(
図1B)を、同様に構築した。更に、DAF(1-4)(可溶性DAF、「sDAF」、配列番号2)、CR1(1-3)(配列番号1)、CR1(15-17)(配列番号3)も使用した。
【0125】
マルチドメインタンパク質「CR1(1-3)FH(19-20)CR1(15-17)」及び「DAF(1-4)FH(19-20)CR1(15-17)」のコードDNAを、ピキア・パストリス発現についてコドン最適化されるように(Geneart社から)注文し、合成し、ピキア・パストリス発現ベクターpPICZαBにサブクローニングした。CR1(1-3)FH(19-20)CR1(15-17)は、配列番号13によってコードされた; しかし、同じアミノ酸配列(配列番号5)を有するポリペプチドはまた、配列番号7を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよい。また、DAF(1-4)FH(19-20)CR1(15-17)は、配列番号14によってコードされた; しかし、同じアミノ酸配列(配列番号6)を有するポリペプチドはまた、配列番号8を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよい。他の全ての構築物についての発現カセットを、同じベクターバックグラウンドで調製した。
【0126】
それぞれのタンパク質を、P.パストリスにおいて過剰産生し、従来の方法によって精製した。
【0127】
実施例2: 補体タンパク質C3bに対する親和性
表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイ(Schmidt et al. (2013), Journal of Immunology 190: 5712-5721)を用いて、重要な補体タンパク質C3bに対する操作された補体阻害剤の親和性を決定した。C3bの1940応答ユニット(μRU)をチップに結合させた。サンプルを25μl/分で一連の濃度で流し、再現性を調べるために最高濃度及び最低濃度を2連でアッセイした。他のタンパク質についてのKD値の推定値を得るために、アッセイ濃度に対する応答(定常状態中)のプロットを、1:1定常状態親和性モデルに適合させた。CR1(15-17)、DAF(1-4)、及びFH(19-20)について測定されたKD値は、それぞれ、KD=0.95μM、KD=11.5μM、及びKD=4.67μMであり、文献とよく一致した。結果を表1に示す。
【0128】
【0129】
実施例3: 崩壊促進活性アッセイ
崩壊促進活性(DAA)を測定するために、また、確立されたSPRに基づくアッセイ(Schmidt et al. (2013), 同書)を用いた。C3bの3653μRUを、チップ表面に結合させた。精製タンパク質B因子及びD因子(CompTech, USA)の混合物をチップ表面上に流すことによって、B因子はC3bに結合し、こうして、D因子がB因子を切断し活性化することを可能にする。これは、AP転換酵素C3bBbのチップ上での形成をもたらす。二分子C3転換酵素は、遅い速度で本質的に崩壊するが、DAAを有する調節因子に曝露されると、崩壊は劇的に加速する。この設定を用いて、様々な融合タンパク質が、C3bBbをいかに効率的に崩壊させることができるかを試験した。CR1(15-17)はDAAを示さないが、補因子活性のみを示すので、対照として流した。
【0130】
実施例4: 補因子アッセイ
CR1(15-17)を含有する構築物が補因子活性(CA)を有することを確認するために、4つの分析物を用いてCAアッセイを実施した: CR1(15-17)、CR1(1-3)FH(19-20)CR1(15-17)、DAF(1-4)FH(19-20)CR1(15-17)、及びDAF(1-4)FH(19-20)-SL(陰性対照として含めた)。C3b単独を陰性対照として使用した。
【0131】
C3bは、α鎖及びβ鎖という2本の鎖からなる。補因子の存在下で、I因子は、C3bのα'鎖内の特定のペプチド結合を切断することによって、C3bをタンパク質分解的にiC3b(又はC3dg)に不活性化する。この活性/過程は、SDS-PAGE分析によって容易にモニターすることができる: 113kDaの大きなα'鎖は2回切断され、C3α'-68、-46、及び-43バンドという3つのバンドを生じる。β鎖は切断されないままである。予想通り、陰性対照は、α'鎖の切断を全く生じなかったが、CR1(15-17)を含有する全ての断片はCAを示した。
【0132】
実施例5: ウサギ赤血球の代替経路(AP)特異的保護アッセイ
操作された補体調節因子の、AP活性化経路を特異的に阻害する能力を決定するために、ウサギ赤血球(RBC)の溶血アッセイを実施した。この目的のために、ウサギRBCを、阻害剤及び以下の2つの試薬と混合した25%ヒト血清中でインキュベートした: カルシウムイオンを特異的にキレート化し、したがって古典的経路(CP)のあらゆる活性を遮断するために、EGTAを添加した。AP転換酵素は十分な量のMgイオンの存在に依存するので、APの活性を促進するために、マグネシウムイオンを添加した。ウサギ赤血球は、ヒト血清中のAPの公知の活性化剤であり、AP活性を調べるための優れたモデル系である。ウサギRBC上の最初のC3(H2O)及びC3b沈着は、AP増幅ループを介して急速に伝播され、大量のC3bの沈着、及びMACの形成、及び細胞溶解をもたらす。ヒトRBCとは異なり、ウサギ赤血球は、ヒト血清中に存在する補体系を調節することができる調節タンパク質を欠く。結果として、ウサギRBCは溶解し、溶解のレベルは、ヘモグロビンの放出を(分光光度的に)測定することによって決定することができる。補体調節タンパク質におけるスパイクによって、APの阻害が達成され(DAA及びCAによって)、これはC3b沈着を妨げ、その結果としてMAC形成及び溶解も妨げる。結果を
図2及び表2に示す。
【0133】
【0134】
実施例4: 感作ヒツジ赤血球の古典的経路(CP)特異的保護アッセイ
操作された補体調節因子の、補体系のCPを阻害する能力を決定するために、ヒツジRBCを用いた溶血アッセイを実施した。ヒツジRBCは、それらの表面上のシアル酸部分がヒトFHを動員し、それらをAPによる溶解から保護するので、ヒト血清中で容易に溶解しない。この状況を利用して、ヒツジRBCを用いて、補体活性化のCPを調べることができる。ヒツジ赤血球を、それらが5%ヒト血清に曝露される前に、それらの表面に対する抗体で感作させる。マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの添加は、CPの効率的な機能性を保証し、これは、赤血球表面上の抗体がC1複合体によって感知されると、活性化される。活性化は、C3転換酵素の形成、ますます多くのC3b分子の沈着、並びに最終的にはMACの形成及び細胞溶解をもたらす。ヒツジRBCは、それらの表面上に負に帯電したシアル酸分子を有するので、つまり、FH(19-20)によって部分的に標的とされ得る。操作された調節タンパク質をこのアッセイで試験して、CP活性化経路を阻害するそれらの能力を調べた。結果を
図3及び表3に示す。
【0135】
【0136】
実施例5: 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)赤血球のAP媒介性溶解の、臨床的に関連のあるex vivoモデル
エクリズマブ処置を受けているPNH患者からのPNH赤血球を、このアッセイに使用した。ABO適合血清をアッセイに使用した。健常人からのABO適合RBCを対照として使用した。2つの独立した実験を実施し、データ点は2連でアッセイした。PNH赤血球の溶解は、405nmの吸光度でヘモグロビン放出を測定することによって決定した。アッセイした条件下で唯一/主にPNH RBCが溶解することを制御するために、健康な細胞(PNH I型細胞)、PNH II型及びIII型細胞の割合を、血清の非存在下のPBS中の対照サンプルにおいて(溶解は起こらない)、及び操作された阻害剤を添加せずに血清を含有するサンプルについて測定し(FACS分析によって)、PNH細胞溶解について100%値を任意に設定した。血清インキュベーション中にPNH II及びIII細胞の割合が減少した場合、(健康なPNH I型細胞ではなく)実際には脆弱なPNH II及びIII細胞が溶解し、ヘモグロビン放出に寄与したことを示す。これは実際に起こり、405nmでの吸光度の測定が実際にPNH III細胞溶解と相関することを証明した。結果を
図4及び表4に示す。
【0137】
【0138】
実施例6:
PNH赤血球が、PNH赤血球上に存在する血液型抗原に対する同種抗体で感作されると、感作されたPNH赤血球は、同種抗体の存在に依存するCP活性を通して補体依存的様式で迅速に溶解した。エクリズマブの存在でさえも、同種抗体を用いたこれらの困難な条件下での溶血を妨げなかった。補体感受性である実験用のヒト細胞(ヒツジ赤血球の代わりに)を有するこのCPアッセイにおいてPNH赤血球を使用した。健康な赤血球を使用することも可能ではあったが、実験的な読み取り(すなわち、補体活性の検出)を得るのがより困難であったであろう。
図5に示す結果が得られた。予想外なことに、1.2μM(アッセイにおけるC5濃度を超えて5倍である)のエクリズマブは、強力なCP活性化後の溶解を阻害しない; 予想通り、ミニFH(APを阻害する効率的濃度を超えて10倍である2.5μMにおける)は、CP媒介性溶解を阻害しない;
図5において「トリプルI」と称されるDAF(1-4)FH19-20CR1(15-17)は、0.17μMでは、溶血の一部を阻害する; 7.3μMのCR1(1-3)は、溶血の一部を阻害する; したがって、DAF(1-4)FH19-20CR1(15-17)は、CR1(1-3)(活性の40倍の差)又はエクリズマブ単独よりもはるかにより効果的である。
【配列表】