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特許7068235帯鋼カッターを製造する方法及び工具用の帯鋼カッター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】帯鋼カッターを製造する方法及び工具用の帯鋼カッター
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/00 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B26D1/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019119360
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2020001164
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】A 50538/2018
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】519234165
【氏名又は名称】フェーストアルピーネ・プレシジョン・ストリップ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】アントン・ハース
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・カストナー
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6080370(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2005/155478(US,A1)
【文献】独国実用新案第202007013402(DE,U1)
【文献】独国実用新案第202009009301(DE,U1)
【文献】米国特許第3581604(US,A)
【文献】オーストリア国特許発明第508551(AT,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化された切断エッジ(2)を有する帯鋼カッターを製造する方法であって、基端で中間組織を備えつつ表面で脱炭部(4,4’)を備えた、断面が本質的に長方形状の帯鋼(1)が、長手切断エッジ(2)の形成を伴う切削加工をなされ、つづいて、切断エッジ範囲(6,7)において材料の硬化をなされる、前記方法において、
第1のステップでは、長手側で、切断エッジ(2)の形成を伴う切断面(3,3’;5,5’)の切削式の成形がなされ、そのうえで、第2のステップでは、前記切断エッジ範囲(6;7)の硬化が行われ、つづいて、第3のステップにおいて、前記切断面(3,3’)が、前記表面の形状付けのために、前記切断エッジ(2)へ向けて、研磨による精密加工によって切削加工され、その後、第4のステップでは、前記切断エッジ範囲(6,7)での少なくとも1つの連続硬化が行われ、前記切断エッジ(2)への先端の前記切断エッジ範囲(7)における材料の硬さ増大がなされることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ1による前記切断面(3,3’;5,5’)の成形が、研削によって行われ、前記第2のステップでは、550~700HVの値への前記切断エッジ範囲(6,7)の誘導式の硬化が行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ1及びステップ2により製造された切断エッジ範囲(6,7)の表面が、(オーストリア規格、EN ISO 4287による)0.005~0.12μmのRa及び0.05~1.2μmのRzの粗さをもって精密加工によって研磨して形成され、このとき作成されるエッジ(2)のエッジ半径がS≦2.5μmで成形されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
幾何学的な形成及び研磨された前記表面(8,8’)への局所的なエネルギー入力に基づき、前記連続硬化のパラメータが面範囲(3,3’;5,5’)において検出され、650HV以上の材料硬さが、前記切断エッジ(2)から基端へ0.05~0.15mmの深さまで前記面範囲(7,6)内へ作成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの長手側で切削式の成形によって作成された、硬化された切断エッジ(2)を有する切断面で製造された、工具、特に厚紙、段ボール、プラスチックフィルム及びこれらに類するもののような平坦な材料を加工する工具を製造する帯鋼カッターにおいて、
当該帯鋼カッター(1)が、断面において、基端に中間組織を有しており、前記切断面(3,3’;5,5’)が、最大で2.5μmの半径を有する前記切断エッジ(2)へ向けて、精密加工によって研磨された表面(3,3’)を備えており、材料の硬さが、先端の前記切断エッジ範囲(7)において、面範囲内へ0.05~0.15mmの深さまで少なくとも650HVであるとともに、基端方向へ減少していることを特徴とする帯鋼カッター。
【請求項6】
精密加工により切削加工あるいは研磨された前記切断面(3,3’;5,5’)の表面(3,3’)が、(オーストリア規格、EN ISO 4287による)0.005~0.12μmのRa及び0.05~1.2μmのRzの粗さを有していることを特徴とする請求項5に記載の帯鋼カッター。
【請求項7】
研磨された前記切断範囲(7,6)の表面が、少なくとも先端の切断エッジ範囲(7)において、1つ又は更に1つの連続硬化において形成された表面層(8,8’)、すなわち酸化被膜及び/又はすべり層又は硬質材料層を支持していることを特徴とする請求項5又は6に記載の帯鋼カッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化された切断エッジを有する帯鋼カッターを製造する方法であって、基端で中間組織を備えつつ表面で脱炭部を備えた、断面が本質的に長方形状の帯鋼が、長手切断エッジの形成を伴う切削加工をなされ、つづいて、切断エッジ範囲において材料の硬化をなされる、前記方法に関するものである。
【0002】
さらに、本発明は、平坦な材料を加工するための工具を製造する帯鋼カッターに関するものである。
【背景技術】
【0003】
上述の帯鋼カッターは、平坦な材料を切断及び/又は切り込むための工具を製造するために用いられる。
【0004】
工具の製造は、本質的に、帯鋼カッターを所望の形状へ曲げることによって、及び帯鋼カッターをカッター支持部において固定することでなされる。
【0005】
帯鋼カッターをその長手延長部に対して横方向に曲げるときには、その外側において、材料において必然的に中立繊維まで引張応力が生じ、この引張応力により、材料分離中に亀裂に至ることがある。
【0006】
この理由から、帯鋼カッターを製造するための出発材料(原材料)として、本質的に長方形状の、この層の変形性を高めるための表面脱炭部と、切断エッジ範囲における材料の硬化に関して基端の中間組織とを有するバネ鋼帯が用いられる。
【0007】
上述の種類の出発材料は、つづいて、長手切断エッジの形成を伴う切削加工を受け、この加工は、通常、研削によってなされる。
【0008】
帯鋼カッターの刃持性を改善するために、あるいはこれにより製造された、平坦な材料を加工する工具の寿命を延長するために、切断エッジあるいは切断エッジ範囲は、材料の熱的な調質(焼き戻し)あるいはその硬化を受ける。
【0009】
このとき、硬化及び焼き戻しあるいは硬化による熱的な調質は、急冷によるオーストナイト系又は部分オーストナイト系の組織構造の作成を伴う材料の加熱によってなされる。
【0010】
通常用いられる製造技術は、切断エッジ範囲における材料硬さの不都合なばらつき、低減された曲げ適合性、帯鋼カッターの切断面における平坦なワークピースの不都合な付着傾向及びこれらに類するものを生じさせることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】オーストリア国特許発明第508551号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、これまでの製造の欠点を克服し、生産のステップ順序において有利な生産品質を経済的にもたらす、冒頭に挙げた種類の帯鋼カッターを製造する方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の課題は、帯鋼カッターの品質を改善すること、及び工具における使用技術的な利点を有しつつ帯鋼カッターの寿命を延長することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、製造技術的に、第1のステップでは、長手側で、切断エッジの形成を伴う切断面の切削式の成形がなされ、そのうえで、第2のステップでは、切断エッジ範囲の硬化が行われ、つづいて、第3のステップにおいて、切断面が、表面の形状付けのために、切断エッジへ向けて、研磨による精密加工によって切削加工され、その後、第4のステップでは、切断エッジ範囲での少なくとも1つの連続硬化が行われ、切断エッジへの先端の切断エッジ範囲における材料の硬さ増大がなされることによって達成される。
【0015】
本発明により達成される利点は、本質的に互いに調和されたステップ順序にある。
【0016】
バネ鋼帯の切断面切削式の成形は、基端に位置決めされた中間組織を露出させ、このことは、熱的な調質時に切断エッジ範囲における材料の有利な焼入れ性につながるものである。
【0017】
中間組織は、主として針状に形成されているとともに、場合によっては超顕微鏡的なカーバイドを備えており、このカーバイドは、オーステナイト化する際に高速で解放され、急冷後、繊細な硬質組織を生じさせる。
【0018】
切断面は、特に切断エッジ範囲において、その製造から一貫して欠点となる表面の粗さ規模を有しており、この粗さは、加工あるいは切断作成時に平坦な材料の不都合な付着をもたらすものである。この欠点を除去するために、本発明によれば、硬化後に、第3のステップにおいて切断エッジへ向けた切断エッジ範囲の表面を研磨することで精密加工により形状付けを行い、帯鋼カッターにおける切断製品あるいは平坦な材料の付着の最小値を生じさせる粗さ規模を設定するようになっている。
【0019】
このとき、適当な経済性をもった切断面の表面の精密加工は、生じる熱により、切断エッジへ向けた材料硬さの不都合な低下を伴う硬質組織の焼き戻しにつながり得る。本発明によれば、後続の第4のステップにおいて少なくとも1つの連続硬化が行われ、この連続硬化は、切断エッジへ向けた材料の硬さ増大を生じさせる。
【0020】
従属請求項には、本発明により設定されるべき、材料硬さの好ましい範囲、切断エッジの幾何学的な形状及び表面の粗さが挙げられている。
【0021】
本発明によれば、別の課題は、帯鋼カッターが、断面において、基端に中間組織を有しており、切断面が、最大で2.5μmの半径を有する切断エッジへ向けて、精密加工によって研磨された表面を備えており、材料の硬さが、先端の切断エッジ範囲において、面範囲内へ0.05~0.15mmの深さまで少なくとも650HVであるとともに、基端方向へ減少していることによって解決される。
【0022】
特に、見出されたように、プラスチック面材料の加工について、わずかなエッジ半径による工具切断が有利である。
【0023】
エッジ範囲における工具材料の大きな硬さは、好都合には、酷使における刃持性を延長させるとともに、工具における帯鋼カッターの仕上げ時に(特許文献1)利点を生じさせ得る。
【0024】
本発明による、工具を製造する帯鋼カッターは、請求項5~7に示されている。
【0025】
図面に図示された例及び帯鋼カッターの材料検査に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による帯鋼カッターの範囲の原理的な構造及び配置を示す断面図である。
図2】本発明による帯鋼カッターの金属組織学上の組織図である。
図3】面範囲における図2の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、縁部脱炭部4,4’を有する帯鋼1と、帯鋼の狭小側に位置決めされ、切断エッジ2へ向けてそれぞれ別の面5,5’を有する切断面3,3’とで形成された帯鋼カッターが概略的に断面で示されている。
【0028】
切断エッジ2及び少なくとも1つの面3,3’を有する帯鋼カッターのこのような断面形状も異なる切削加工によって製造可能であれば、多くの場合には、帯鋼1の研削による形状付けと、切断エッジ2の範囲の誘導加熱による硬化とが行われる。
【0029】
しかしながら、チップ除去は、おそらくワークピースにおける切削溝(工具きず)あるいは帯鋼カッターの切断面3,3’の表面の粗さを備えており、切削溝あるいは表面の粗さは、平坦な材料の切断時に例外なく工具とワークピースの間の不都合な付着傾向を生じさせる。この欠点を克服するために、研磨又は精密研磨を用いて切断面3,3’の表面を平滑化することが試みられた。
【0030】
しかしながら、専門家の意見に反して、帯鋼カッターの切断面の表面の平坦な材料の有利な研削について、粗さの最大値も、また最小値も好ましくは限界値であることが分かった。したがって、Raについての値が0.005~0.12μmであり、Rzについての値が0.05~1.2μmであるように、研磨による精密加工によって調整すべきである(オーストリア規格、EN ISO 4287による粗さ特性量)。
【0031】
しかしながら、切断エッジ2へ向いた範囲における切断面3,3’における大きな出力での特定の精密加工は、この範囲における材料硬さの低下を伴うものである。
【0032】
本発明によれば、先端の切断エッジ範囲7では、1つの連続硬化又は複数の連続硬化を用いて材料硬さを切断エッジ2において基端へ0.15mmの深さまで650HV以上に設定することができ、これにより、帯鋼カッターの高い刃持性が達成される。
【0033】
図2には、本発明による帯鋼カッターが、組織図示のためのエッチング処理後の断面において示されている。
【0034】
中間組織及び表面(明るくエッチングされている)における縁部脱炭部を有する帯鋼1は、それぞれ切断エッジを有する他部分から成る面を備えている。
【0035】
切断エッジ範囲6は熱処理組織を示しており、この熱処理組織は、切断エッジ2から切断面へ約300μmまで達している。
【0036】
熱処理組織は、切断エッジから切断エッジ範囲へ約145μmまで、連続硬化によって、明るくエッチングされている精密組織の硬質組織として成形されている。
【0037】
図3は、図2の切断面を拡大して示している。
【0038】
本発明による帯鋼カッターの範囲の容易な割り当てのために、以下の符号リストが用いられるべきである。
【符号の説明】
【0039】
1 帯鋼
2 切断エッジ
3,3’ 切断面
4,4’ 縁部脱炭部
5,5’ 別の面部分
6 硬化された切断エッジ範囲
7 連続硬化による切断エッジ範囲
8 切断範囲における表面層
図1
図2
図3