(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】車両用シフト装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B60K20/02 A
(21)【出願番号】P 2019129591
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】591050970
【氏名又は名称】津田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000243700
【氏名又は名称】万能工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 章里
(72)【発明者】
【氏名】遠山 睦
(72)【発明者】
【氏名】福島 孝明
(72)【発明者】
【氏名】西川 尚孝
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-280348(JP,A)
【文献】特開2015-6864(JP,A)
【文献】特開2015-6866(JP,A)
【文献】特開2015-174563(JP,A)
【文献】特開平2-275176(JP,A)
【文献】特開平9-226397(JP,A)
【文献】中国実用新案第205226336(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に支持されたベースプレートと、
下端に球状軸部を備え該球状軸部が回動自在に支持されたシフトレバーと、
前記シフトレバーに連繋され該シフトレバーへの車体前後方向の操作力をケーブルを介して変速装置に伝達するコントロールレバーとを備えた車両用シフト装置において、
前記シフトレバーの前記球状軸部は、前記ベースプレートによって回動自在に支持されており、
前記コントロールレバーは、前記ケーブルが連結されるケーブル連結部が上部に、車幅方向における前記球状軸部の両外側において前記ベースプレートに回動自在に支持された一対の回動軸部が下部にそれぞれ設けられていると共に、前記ケーブル連結部と前記各回動軸部との間であって前記球状軸部よりも上側において車幅方向に分岐されて前記各回動軸部に向かって延在する分岐部を備えていることを特徴とする車両用シフト装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用シフト装置において、
前記シフトレバーと前記コントロールレバーとの連繋は、前記シフトレバーに形成された係止開口に対して前記コントロールレバーに形成された係止突起部が挿入されて係止されて成り、
前記コントロールレバーに形成された前記係止突起部の突出方向と、前記ケーブル連結部の突出方向とは互いに反対方向であって、
前記係止開口に対する前記係止突起部の係止位置、前記球状軸部の位置、前記ケーブル連結部の位置が略同一平面上に位置していることを特徴とする車両用シフト装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用シフト装置において、
前記コントロールレバーの前記各回動軸部の回動中心同士を繋いだ中心線は、前記球状軸部の中心を通り、
前記ケーブル連結部の中央部、および、前記係止開口に対する前記係止突起部の係止位置は、前記球状軸部の中心を通って車体前後方向に沿って延在する仮想平面上または該仮想平面の近傍に位置していることを特徴とする車両用シフト装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の車両用シフト装置において、
前記ベースプレートには、前記シフトレバーのシフト操作を案内する開口を有するゲート部が設けられており、
前記ゲート部の前記開口の縁部には、前記ベースプレートとは別部品であって該ベースプレートの構成材料よりも軟質の材料で成るクッション部材が組み付けられており、
前記シフトレバーには、該シフトレバーの各シフト位置での当該シフトレバーの位置決め機能を有するディテント機構を構成する上下移動可能なディテントピンが設けられており、
前記クッション部材は、前記ディテントピンが上昇位置に達した状態で該ディテントピンに当接するように下方に延在されたディテントクッション部を有しており、
前記ディテントクッション部は、前記ベースプレートに係止する係止突起および該係止突起の上側に形成された開口を備えていることを特徴とする車両用シフト装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両用シフト装置において、
前記ベースプレートには、前記クッション部材の前記ディテントクッション部が挿入される挿入孔が設けられており、該挿入孔の内面を構成している縦壁と該縦壁に対向する前記ディテントクッション部の側面との間には隙間が設けられていることを特徴とする車両用シフト装置。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一つに記載の車両用シフト装置において、
前記コントロールレバーの前記各回動軸部の外周縁は、車幅方向から見た形状が真円形状であり、
前記ベースプレートは、前記回動軸部の外周縁のうちの上側を支持する上側支持部を有するベースプレートアッパと、前記回動軸部の外周縁のうちの下側を支持する下側支持部を有するベースプレートロアとが一体的に組み付けられて構成されており、
前記ベースプレートアッパの前記上側支持部および前記ベースプレートロアの前記下側支持部のうち少なくとも一方の支持部における車幅方向から見た形状は、前記各回動軸部の外周縁の形状に合致した円弧形状となっており、
前記ベースプレートロアには、前記シフトレバーの前記球状軸部が組み付けられる前の状態において、前記球状軸部を組み付ける際の組み付け軌跡から退避させるように一方側に回動された前記コントロールレバーを載置して仮保持する仮保持部が設けられていることを特徴とする車両用シフト装置。
【請求項7】
請求項6記載の車両用シフト装置において、
前記ベースプレートアッパおよび前記ベースプレートロアそれぞれには、ピン孔が形成された組み付け壁部が設けられ、それぞれの組み付け壁部同士が重ね合わされて各ピン孔に亘って係合ピンが挿通されることによって、前記ベースプレートアッパと前記ベースプレートロアとが一体的に組み付けられており、
前記ベースプレートアッパの組み付け壁部および前記ベースプレートロアの組み付け壁部のうち、ピン挿通方向の外側に位置する組み付け壁部には、該組み付け壁部の延在方向に沿う方向に延在するピン抜け止め片が一体的に設けられており、該ピン抜け止め片は、前記係合ピンの挿入方向に対して直交する方向であって、前記係合ピンから退避する位置と前記係合ピンの端面を覆う位置との間で撓み、前記各ピン孔に亘って前記係合ピンが挿通された状態で該係合ピンの端面を押さえ込む構成とされていることを特徴とする車両用シフト装置。
【請求項8】
請求項1~3のうち何れか一つに記載の車両用シフト装置において、
前記シフトレバーには、該シフトレバーの各シフト位置での当該シフトレバーの位置決め機能を有するディテント機構を構成する上下移動可能なディテントピンが設けられており、
前記ベースプレートには、前記ディテントピンの上下移動を規制することによって前記シフトレバーの移動を規制するためのシフトロックユニットが組み付けられており、
前記シフトロックユニットのシフトロックケースには、前記シフトレバーの移動を規制するシフトロック状態において前記ディテントピンに当接することで該ディテントピンの上下移動を規制するシフトロックリンクを回動自在に支持するように水平方向に延在するボスが設けられており、
前記ベースプレートには、前記ボスが載置されることで該ボスを支持するボス受け部が設けられており、
前記ボスにおける前記ボス受け部に当接する部位は平坦面形状で成り、前記ボス受け部は、前記ボスの平坦面が重ね合わされる平坦面を有する凸部により構成されていることを特徴とする車両用シフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シフト装置に係る。特に、本発明は、車両用シフト装置を構成する部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速装置等の変速装置を搭載した車両の車室内には、運転者がシフト操作を行うためのシフト装置が備えられている。この種のシフト装置は、例えば特許文献1にも開示されているように、車体に支持されたベースプレート(特許文献1では装置本体と称している)と、下端に球状軸部を備え該球状軸部が回動自在に支持されたシフトレバーと、運転者のシフトレバーへの操作力をケーブルを介して変速装置(例えば変速装置の油圧回路に備えられたバルブ)に伝達するコントロールレバー(特許文献1では変速機切換部材と称している)とを備えている。
【0003】
前記コントロールレバーは、前記ケーブルの一端部が連結されるケーブル連結部と、前記ベースプレートに回動自在に支持された回動軸部とを備えている。
【0004】
また、この特許文献1に開示されているコントロールレバーは、シフトレバーの球状軸部を回動自在に支持するレバー保持部が設けられており、このレバー保持部に対して車幅方向の両側に前記回動軸部が一体的に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているコントロールレバーにあっては、前述したようにレバー保持部に対して車幅方向の両側に回動軸部が一体的に設けられている。レバー保持部は、内側に球状軸部を嵌め込むための空間を有していると共に、球状軸部を嵌め込む際に弾性変形可能となるように複数のスリットが設けられている。このため、レバー保持部は剛性が比較的低い部分となっている。従って、特許文献1に開示されている構成では、各回動軸部の支持剛性が低下している可能性がある。
【0007】
そして、この構成にあっては、シフトレバーを操作した際の操作力の反力が球状軸部およびコントロールレバーのレバー保持部を介して各回動軸部に作用することになるが、各回動軸部の支持剛性が低下しているため、これら回動軸部同士の間に亘る中心線(軸線)が湾曲するように各回動軸部が変形してしまう(撓る)可能性がある。このような変形が生じた場合、コントロールレバーの回動抵抗が増大してシフトレバーの操作性が悪化したり、局所的な面圧の増加に起因して摩耗が生じたりする虞がある。
【0008】
回動軸部での変形量を小さくするための手段として、各回動軸部同士の間の距離を大きくすることが考えられる。しかしながら、この構成は、コントロールレバーの大型化に繋がってしまい実用性に欠けるものである。
【0009】
また、前記摩耗を抑制するための手段として、各回動軸部を支持するベースプレートの支持孔の内径寸法を大きくして回動抵抗を小さくすることが考えられる。しかしながら、この構成では、各回動軸部のガタツキを招いてしまう可能性がある。このガタツキを抑制するために、レバー保持部の下側の肉厚を大きくするなどして、前記操作力の反力に耐え得る剛性を確保することが考えられるが、この場合、コントロールレバーの大型化に繋がるとともにシフト装置全体としての重量の増大に繋がってしまい実用性に欠けるものとなる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コントロールレバーの大型化や重量の増大を抑制しながらも、該コントロールレバーの回動抵抗を低減し、シフトレバーの操作性の改善および局所的な摩耗の抑制を図ることができる車両用シフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車体に支持されたベースプレートと、下端に球状軸部を備え該球状軸部が回動自在に支持されたシフトレバーと、前記シフトレバーに連繋され該シフトレバーへの車体前後方向の操作力をケーブルを介して変速装置に伝達するコントロールレバーとを備えた車両用シフト装置を前提とする。そして、この車両用シフト装置は、前記シフトレバーの前記球状軸部が、前記ベースプレートによって回動自在に支持されており、前記コントロールレバーは、前記ケーブルが連結されるケーブル連結部が上部に、車幅方向における前記球状軸部の両外側において前記ベースプレートに回動自在に支持された一対の回動軸部が下部にそれぞれ設けられていると共に、前記ケーブル連結部と前記各回動軸部との間であって前記球状軸部よりも上側において車幅方向に分岐されて前記各回動軸部に向かって延在する分岐部を備えていることを特徴とする。
【0012】
この特定事項により、運転者によるシフトレバーの操作(車体前後方向の操作)が行われた際には、ベースプレートによって回動自在に支持された球状軸部を回動中心としてシフトレバーが回動し、その操作力がコントロールレバーに伝達される。この操作力を受けたコントロールレバーは、ベースプレートに回動自在に支持された一対の回動軸部を回動中心として回動し、ケーブル連結部に連結されたケーブルを介して変速装置に操作力を伝達する。これにより、変速装置の変速動作(走行レンジの切り替え動作等)が行われることになる。
【0013】
本解決手段にあっては、シフトレバーの球状軸部およびコントロールレバーの回動軸部は、それぞれベースプレートによって個別に支持されている。つまり、コントロールレバーが、球状軸部よりも上側において車幅方向に分岐されて各回動軸部に向かって延在する分岐部を備えていることにより、各回動軸部は、車幅方向における球状軸部の両外側において、当該球状軸部を支持する部分とは個別にベースプレートによって回動自在に支持されている。このため、シフトレバーを操作した際の操作力の反力がコントロールレバーの各回動軸部に直接的に作用することはない。従って、この反力の影響によって回動軸部同士の間に亘る中心線が湾曲するように各回動軸部が変形してしまうことが抑制される。その結果、この変形に伴ってコントロールレバーの回動抵抗が増大してシフトレバーの操作性が悪化したり、局所的な面圧の増加に起因して摩耗が生じたりすることを抑制できる。また、回動軸部での変形量を小さくするために各回動軸部同士の間の距離を大きくする必要もないため、コントロールレバーの大型化を抑制することができる。更には、前記回動抵抗を小さくするために各回動軸部を支持するベースプレートの支持孔の内径寸法を大きくする必要もなく、各回動軸部のガタツキを抑制することができる。
【0014】
また、前記シフトレバーと前記コントロールレバーとの連繋は、前記シフトレバーに形成された係止開口に対して前記コントロールレバーに形成された係止突起部が挿入されて係止されて成り、前記コントロールレバーに形成された前記係止突起部の突出方向と、前記ケーブル連結部の突出方向とは互いに反対方向であって、前記係止開口に対する前記係止突起部の係止位置、前記球状軸部の位置、前記ケーブル連結部の位置が略同一平面上に位置している。
【0015】
これによれば、係止開口に対する係止突起部の係止位置とケーブル連結部の位置とが略同一平面上に位置していることにより、シフトレバーからの操作力に起因するコントロールレバーの捩れを抑制することができる。また、係止開口に対する係止突起部の係止位置と球状軸部の位置とが略同一平面上に位置していることにより、球状軸部への捩れ入力を低減することができる。また、係止突起部の突出方向とケーブル連結部の突出方向とが互いに反対方向となっているため、係止突起部が係止開口から抜け出る側(例えば走行モードを変更する際に抜け出る側)とケーブル連結部に対するケーブル取り付け作業を行う側とが同じ側となり、コントロールレバー周辺のスペースを効果的に利用でき、体格の小型化を図ることができる。
【0016】
また、前記コントロールレバーの前記各回動軸部の回動中心同士を繋いだ中心線は、前記球状軸部の中心を通り、前記ケーブル連結部の中央部、および、前記係止開口に対する前記係止突起部の係止位置は、前記球状軸部の中心を通って車体前後方向に沿って延在する仮想平面上または該仮想平面の近傍に位置していることを特徴とする車両用シフト装置。
【0017】
これによれば、シフトレバーを操作した際には、コントロールレバーの各回動軸部の回動中心同士を繋いだ中心線上の点を中心として球状軸部が回動することになる。このため、シフトレバーの操作角度がコントロールレバーの回動角度に一致することになり、シフトレバーとコントロールレバーとの間に相対的な変位が生じることがない。従って、シフトレバーの操作性を良好に得ることができる。また、ケーブル連結部の中央部、および、係止開口に対する係止突起部の係止位置が、球状軸部の中心を通って車体前後方向に沿って延在する仮想平面上または該仮想平面の近傍に位置していることにより、前述したようにコントロールレバーに作用する前記捩れ方向の力を低減することができる。
【0018】
また、前記ベースプレートには、前記シフトレバーのシフト操作を案内する開口を有するゲート部が設けられており、前記ゲート部の前記開口の縁部には、前記ベースプレートとは別部品であって該ベースプレートの構成材料よりも軟質の材料で成るクッション部材が組み付けられており、前記シフトレバーには、該シフトレバーの各シフト位置での当該シフトレバーの位置決め機能を有するディテント機構を構成する上下移動可能なディテントピンが設けられており、前記クッション部材は、前記ディテントピンが上昇位置に達した状態で該ディテントピンに当接するように下方に延在されたディテントクッション部を有しており、前記ディテントクッション部は、前記ベースプレートに係止する係止突起および該係止突起の上側に形成された開口を備えている。
【0019】
これによれば、ディテント機構を作動させてディテントピンが上昇位置に達した際には、該ディテントピンがクッション部材のディテントクッション部に当接することになる。このクッション部材は軟質の材料で構成されているため、ディテントピンがクッション部材のディテントクッション部に当接した際の衝撃はディテントクッション部の弾性変形によって吸収されることになる。また、ディテントクッション部における係止突起の上側には開口が形成されており、この部分は脆弱となっている。このため、この開口の周囲の弾性変形量を大きく確保することができ、これによっても、前記衝撃は効果的に吸収される。以上のことから、ディテントピンがクッション部材のディテントクッション部に当接した際の衝撃音を低減することができ、また、前記当接時にディテントピンに入力される荷重も軽減されることになる。その結果、ディテント機構の作動時の静粛性の確保およびディテント機構の耐久性の向上を図ることができる。
【0020】
また、クッション部材をベースプレートとは別部品として作製して該ベースプレートのゲート部の開口の縁部に組み付けるようにしているため、これらを一体的に作製する(ベースプレートの内側に異なる材料で成るクッション部材を一体的にモールディングする)従来の作製手法に比べて製造コストの低廉化を図ることができる。
【0021】
また、前記ベースプレートには、前記クッション部材の前記ディテントクッション部が挿入される挿入孔が設けられており、該挿入孔の内面を構成している縦壁と該縦壁に対向する前記ディテントクッション部の側面との間には隙間が設けられている。
【0022】
前記隙間が設けられていることにより、ディテントクッション部にディテントピンが当接した場合に該ディテントクッション部が弾性変形できるスペースが確保されていることになる。つまり、上昇位置に達したディテントピンがクッション部材のディテントクッション部に当接した場合、このディテントクッション部には上向きの荷重が作用することになるが、この荷重は、前記隙間を埋めるようにディテントクッション部が弾性変形することで吸収される。これによっても、ディテントピンがクッション部材のディテントクッション部に当接した際の衝撃音を低減することができ、また、ディテントピンに入力される荷重も軽減されることになる。その結果、ディテント機構の作動時の静粛性の確保およびディテント機構の耐久性の向上を図ることができる。
【0023】
また、前記コントロールレバーの前記各回動軸部の外周縁は、車幅方向から見た形状が真円形状であり、前記ベースプレートは、前記回動軸部の外周縁のうちの上側を支持する上側支持部を有するベースプレートアッパと、前記回動軸部の外周縁のうちの下側を支持する下側支持部を有するベースプレートロアとが一体的に組み付けられて構成されており、前記ベースプレートアッパの前記上側支持部および前記ベースプレートロアの前記下側支持部のうち少なくとも一方の支持部における車幅方向から見た形状は、前記各回動軸部の外周縁の形状に合致した円弧形状となっている。また、前記ベースプレートロアには、前記シフトレバーの前記球状軸部が組み付けられる前の状態において、前記球状軸部を組み付ける際の組み付け軌跡から退避させるように一方側に回動された前記コントロールレバーを載置して仮保持する仮保持部が設けられている。
【0024】
コントロールレバーの各回動軸部の外周縁を車幅方向から見た形状は真円形状であり、ベースプレートアッパの上側支持部およびベースプレートロアの下側支持部のうち少なくとも一方の支持部における車幅方向から見た形状は回動軸部の外周縁の形状に合致した円弧形状となっているため、各回動軸部と支持部(円弧形状となっている支持部)との間の接触面積を大きく確保することができる。つまり、各回動軸部の外周面および支持部の内周面それぞれの面圧(単位面積当たりに作用する荷重)を小さくでき、これら各回動軸部の外周面および支持部の内周面の摩耗を抑制することができる。
【0025】
また、シフトレバーの球状軸部をベースプレートロアに組み付ける際には、その組み付け軌跡から退避させるようにコントロールレバーを一方側に回動させ、該コントロールレバーをベースプレートロアに設けられた仮保持部に載置して仮保持させる。これにより、球状軸部の組み付け作業時にコントロールレバーが邪魔になることがなく、球状軸部の組み付け作業を効率良く行うことができる。
【0026】
前記ベースプレートアッパおよび前記ベースプレートロアそれぞれには、ピン孔が形成された組み付け壁部が設けられ、それぞれの組み付け壁部同士が重ね合わされて各ピン孔に亘って係合ピンが挿通されることによって、前記ベースプレートアッパと前記ベースプレートロアとが一体的に組み付けられており、前記ベースプレートアッパの組み付け壁部および前記ベースプレートロアの組み付け壁部のうち、ピン挿通方向の外側に位置する組み付け壁部には、該組み付け壁部の延在方向に沿う方向に延在するピン抜け止め片が一体的に設けられており、該ピン抜け止め片は、前記係合ピンの挿入方向に対して直交する方向であって、前記係合ピンから退避する位置と前記係合ピンの端面を覆う位置との間で撓み、前記各ピン孔に亘って前記係合ピンが挿通された状態で該係合ピンの端面を押さえ込む構成とされている。
【0027】
係合ピンの端面を押さえ込むピン抜け止め片を、組み付け壁部の延在方向に対して直交する方向(係合ピンの挿入方向)に延在させた場合(従来技術の場合)には、組み付け壁部における係合ピンの挿入方向の寸法が前記ピン抜け止め片の長さ寸法(組み付け壁部の延在方向に対して直交する方向の寸法)分だけ大きくなってしまう。その結果、ベースプレートが大型化してしまう。これに対し、本解決手段では、ピン抜け止め片を、組み付け壁部の延在方向に沿う方向に延在させ、係合ピンの挿入方向に対して直交する方向であって、係合ピンから退避する位置と係合ピンの端面を覆う位置との間で撓むように構成したため、係合ピンの挿入方向でのピン抜け止め片の寸法を小さくでき、ベースプレートの小型化を図ることができる。
【0028】
前記シフトレバーには、該シフトレバーの各シフト位置での当該シフトレバーの位置決め機能を有するディテント機構を構成する上下移動可能なディテントピンが設けられており、前記ベースプレートには、前記ディテントピンの上下移動を規制することによって前記シフトレバーの移動を規制するためのシフトロックユニットが組み付けられており、前記シフトロックユニットのシフトロックケースには、前記シフトレバーの移動を規制するシフトロック状態において前記ディテントピンに当接することで該ディテントピンの上下移動を規制するシフトロックリンクを回動自在に支持するように水平方向に延在するボスが設けられており、前記ベースプレートには、前記ボスが載置されることで該ボスを支持するボス受け部が設けられており、前記ボスにおける前記ボス受け部に当接する部位は平坦面形状で成り、前記ボス受け部は、前記ボスの平坦面が重ね合わされる平坦面を有する凸部により構成されている。
【0029】
シフトレバーの移動を規制するシフトロック状態にあっては、シフトロックケースに設けられたボスによって回動自在に支持されたシフトロックリンクがディテントピンに当接することで、該ディテントピンの上下移動を規制する。この場合、ディテントピンがシフトロックリンクを押圧することがあり、その押圧力は、シフトロックリンクを介してシフトロックケースのボスに入力されることになる。本解決手段では、ボスにおけるボス受け部に当接する部位は平坦面形状で成り、ボス受け部は、ボスの平坦面が重ね合わされる平坦面を有する凸部により構成されている。つまり、前記押圧力は、ボスおよびボス受け部それぞれに設けられた平坦面同士の重ね合わせ部によって受け止められることになり、前記押圧力に対する耐力が十分に確保されている。また、ボスとボス受け部とは前記平坦面同士で当接されているため、これらボスおよびボス受け部が円弧面同士で当接する従来技術のものに比べて寸法精度を良好に得ることができる。また、ボス受け部は前記平坦面を有する凸部により構成されているため、成形時の変形を抑制でき、これによっても高い寸法精度を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、シフトレバーへの車体前後方向の操作力をケーブルを介して変速装置に伝達するコントロールレバーの上部に、ケーブルが連結されるケーブル連結部を、コントロールレバーの下部に、車幅方向におけるシフトレバーの球状軸部の両外側においてベースプレートに回動自在に支持された一対の回動軸部をそれぞれ設け、ケーブル連結部と各回動軸部との間であって球状軸部よりも上側において車幅方向に分岐されて各回動軸部に向かって延在する分岐部を備えさせている。これにより、シフトレバーを操作した際の操作力の反力がコントロールレバーの各回動軸部に直接的に作用することをなくし、この反力の影響によって各回動軸部が変形してしまうことを抑制できる。その結果、この変形に伴ってコントロールレバーの回動抵抗が増大してシフトレバーの操作性が悪化したり、局所的な面圧の増加に起因して摩耗が生じたりすることを抑制できる。また、回動軸部での変形量を小さくするために各回動軸部同士の間の距離を大きくする必要もないため、コントロールレバーの大型化を抑制することができる。更には、前記回動抵抗を小さくするために各回動軸部を支持するベースプレートの支持孔の内径寸法を大きくする必要もなく、各回動軸部のガタツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図3】実施形態に係るシフト装置の右側面図である。
【
図4】実施形態に係るシフト装置の左側面図である。
【
図6】実施形態に係るシフト装置の分解斜視図である。
【
図8】シフトレバーとコントロールレバーとの係止状態を示す平面図である。
【
図9】シフトレバーとコントロールレバーとの係止状態を示す斜視図である。
【
図10】コントロールレバーの回動軸部およびその周辺を示す側面図である。
【
図11】コントロールレバーの仮保持状態を示す斜視図である。
【
図12】シフト装置のゲート部を示す平面図である。
【
図14】シフトゲートクッションにおけるディテントクッション部を示す側面図である。
【
図16】
図12におけるXVI-XVI線に沿った断面図である。
【
図18】シフトロックケースおよびシフトロックリンクを示す側面図である。
【
図19】ベースプレートアッパにおけるシフトロックケース組み付け部分を示す斜視図である。
【
図20】シフトロック状態においてディテントピンからシフトロックリンクを介してシフトロックケースのボスに入力される荷重を説明するための図である。
【
図24】係合ピンによるベースプレートアッパとベースプレートロアとの係合部分を示す図である。
【
図25】
図24におけるXXV-XXV線に沿った断面図である。
【
図26】従来技術における係合ピンによるベースプレートアッパとベースプレートロアとの係合部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、オートマチックモードとマニュアルモードとの切り替えが可能な自動変速装置を搭載した車両に備えられたシフト装置に本発明を適用した場合について説明する。なお、本発明は、マニュアルモードを有しない自動変速装置を搭載した車両に備えられたシフト装置に対しても適用が可能である。
【0033】
-シフト装置の全体構成-
図1は本実施形態に係るシフト装置1の斜視図である。
図2はシフト装置1の平面図である。
図3はシフト装置1の右側面図である。
図4はシフト装置1の左側面図である。
図5はシフト装置1の正面図である。
図6はシフト装置1の分解斜視図である。
【0034】
これらの図における矢印FRは車体前方向、矢印RRは車体後方向、矢印UPは上方向、矢印LHは車体左方向、矢印RHは車体右方向をそれぞれ示している。このシフト装置1は、運転席側方のセンタコンソール部分に配設された所謂フロアシフト装置として構成されている。
【0035】
図1~
図6に示すように、本実施形態に係るシフト装置1は、シフトレバー2、ベースプレート3、コントロールレバー4、シフトゲートクッション5、シフトロックユニット6、マニュアルモード切替スイッチ7を含んで構成されている。以下、各部材について説明する。
【0036】
(シフトレバー)
シフトレバー2は、運転者が把持してシフト操作を行う操作部材である。
図6に示すように、このシフトレバー2は、レバー本体21、レバー係止部材22、球状軸部材(本発明でいう球状軸部)23を含んで構成されている。
【0037】
レバー本体21は、中空のレバーパイプ24を備え、このレバーパイプ24の内部に後述するディテント機構(シフトレバー2の各シフト位置での当該シフトレバー2の位置決め機能を有するディテント機構)を作動させるためのディテントロッド25が上下方向に移動可能に収容されている。レバーパイプ24の上部には図示しないシフトノブが取り付けられており、このシフトノブに備えられたシフトノブスイッチを押し込むことによってレバーパイプ24の内部でディテントロッド25が下方に移動する構成となっている(シフトロックユニット6によるシフトロックが行われていない場合)。
【0038】
ディテントロッド25にはディテントピン26が連繋されている。このディテントピン26は、ディテント機構のディテントプレート(図示省略)の各シフト位置に応じた溝に係合可能とされており、これら溝のうちP(パーキング)溝とR(リバース)溝との間でのディテントピン26の移動(シフトレバー2のPレンジ位置とRレンジ位置との間での移動)、N(ニュートラル)溝からR(リバース)溝へのディテントピン26の移動(シフトレバー2のNレンジ位置からRレンジ位置への移動)に際しては、シフトノブスイッチを押し込んでディテントロッド25と共にディテントピン26を下方に移動させて該ディテントピン26を各溝から離脱させる必要がある構成となっている。このディテント機構の構成は周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0039】
レバー係止部材22は、前記レバー本体21の下部(下端よりも僅かに上側の部分)を保持すると共に後述するコントロールレバー4に係止する部材である。つまり、このレバー係止部材22には、レバー本体21を挿通するための開口が設けられており、この開口にレバー本体21の下部が挿通された状態で、該レバー本体21がレバー係止部材22に一体的に組み付けられている。また、このレバー係止部材22には、前記ディテントピン26の下方への移動を許容する長孔22aが形成されている。更に、このレバー係止部材22には、後述するコントロールレバー4を係止するための係止開口22bが設けられている。この係止開口22bは、車幅方向に貫通する略矩形状の開口で構成されており、コントロールレバー4の一部(後述するコントロールレバー4の係止突起部42)が挿入されることで該コントロールレバー4が係止され、これによってシフトレバー2への操作力がコントロールレバー4に伝達されるようになっている。
【0040】
球状軸部材23は、前記レバー本体21の下端に取り付けられた略球形の部材である。この球状軸部材23には、レバー本体21の下端を挿入するための開口が設けられており、この開口にレバー本体21の下端(レバーパイプ24の下端)が挿入された状態で、該レバー本体21が球状軸部材23に一体的に組み付けられている。また、この球状軸部材23は、ベースプレート3の構成部材の一つである後述するレバー保持部材33によって回動自在に支持される部材であり、所定の外径寸法を有している。
【0041】
(ベースプレート)
ベースプレート3は、ベースプレートロア31、ベースプレートアッパ32、レバー保持部材33が一体的に組み付けられて構成されている。
【0042】
ベースプレートロア31は、車体(例えばフロアパネル)に組み付けられて支持される部材である。そのため、このベースプレートロア31の複数箇所には、当該ベースプレートロア31を車体に組み付けるためのボルトが挿通されるボルト挿通孔31a,31a,…(
図2を参照)が複数箇所に形成されている。
【0043】
また、ベースプレートロア31の中央部には、レバー保持部材33を一体的に組み込むためのレバー保持部材装着部31bが設けられている。このレバー保持部材装着部31bは、レバー保持部材33の外形形状に略合致した凹部で構成されており、レバー保持部材33が上側から嵌め込まれることで該レバー保持部材33が離脱不能に取り付けられる。
【0044】
また、ベースプレートロア31における車体前側部分には、後述するコントロールレバー4のケーブル連結部44に連結されたケーブル8(
図3および
図4を参照)が挿通される開口31c(
図2および
図5を参照)が設けられている。この開口31cは、ベースプレートロア31の先端の縦壁部31dに設けられ且つ上側が開放された構成となっている。
【0045】
ベースプレートアッパ32は、前記ベースプレートロア31の上側に組み付けられる部材である。このベースプレートアッパ32は、ベースプレートロア31に組み付けられた状態において、このベースプレートロア31との間に形成された空間に、前記シフトレバー2の下側部分(レバー本体21の下部、レバー係止部材22、球状軸部材23)、レバー保持部材33、コントロールレバー4、シフトロックユニット6、マニュアルモード切替スイッチ7を収容する構成となっている。
【0046】
なお、ベースプレートロア31およびベースプレートアッパ32それぞれには、十分な剛性を確保するために各所に補強リブ37,37,…が設けられており、ベースプレートロア31およびベースプレートアッパ32の肉厚を大きくすることなしに十分な剛性が確保されるように設計されている。
【0047】
また、
図2に示すように、ベースプレートアッパ32には、シフトレバー2のレバー本体21が挿通されるゲート開口32b,32c,32dを有するゲート部32aが設けられている。つまり、このゲート部32aのゲート開口32b,32c,32dに沿ってレバー本体21が移動するようにシフトレバー2のシフト操作が行われることで、自動変速装置の変速動作(走行レンジの切り替え動作等)が行われるようになっている。本実施形態に係る自動変速装置は、オートマチックモードとマニュアルモードとの切り替えが可能であるため、ゲート部32aには、オートマチックモード用のゲート開口32bとマニュアルモード用のゲート開口32cとが備えられている。オートマチックモード用のゲート開口32bには、車体前側からPレンジ位置、Rレンジ位置、Nレンジ位置、Dレンジ位置がそれぞれ設定されている。マニュアルモード用のゲート開口32cは、ゲート連通開口(ゲート開口)32dを介してオートマチックモード用のゲート開口32bと連通しており、変速段をアップさせるためのプラス操作位置と、変速段をダウンさせるためのマイナス操作位置とがそれぞれ設定されている。
【0048】
図6に示すように、レバー保持部材33は、内側に球状軸部材23を嵌め込むための空間33aを有し、該空間33aの外側に弾性変形可能な複数の保持片33b,33b,…が設けられた構成となっている。つまり、レバー保持部材33に球状軸部材23を嵌め込む際には、該球状軸部材23をレバー保持部材33の内部に押し込んでいくことで、球状軸部材23が保持片33b,33b,…を外側に押し広げながら前記空間33aに嵌め込まれ、保持片33b,33b,…が元の形状に復帰することで、球状軸部材23がレバー保持部材33から抜け止めされた状態で回動自在に支持されることになる。
【0049】
(コントロールレバー)
コントロールレバー4は、運転者のシフトレバー2への車体前後方向の操作力をケーブル8を介して変速装置(例えば変速装置の油圧回路に備えられたバルブ)に伝達する部材である。
【0050】
図7はコントロールレバー4の斜視図である。
図8はシフトレバー2のレバー係止部材22とコントロールレバー4との係止状態を示す平面図である。
図9はシフトレバー2のレバー係止部材22とコントロールレバー4との係止状態を示す斜視図である。
【0051】
これらの図に示すように、コントロールレバー4は、レバー本体部41、係止突起部42、回動軸部43,43、ケーブル連結部44、分岐部45を備えている。
【0052】
レバー本体部41はコントロールレバー4の本体部分であり、コントロールレバー4がベースプレート3に組み付けられた状態において、車体前後方向に沿って延在する第1延在部41a、該第1延在部41aの前端縁から車幅方向の左側(車幅方向の一方側)に向かって延在する第2延在部(車幅方向の一方側に向かって延在する車幅方向延在部)41b、該第2延在部41bの端縁(車幅方向の左側の端縁)から車体前方に向かって延在する第3延在部(車幅方向延在部に連続し車体前後方向に沿って延在する前後方向延在部)41cを備えている。
【0053】
係止突起部42は、前記レバー本体部41の第1延在部41aの後側縁に連続し、車幅方向の左側に向けて突出している。この係止突起部42の側面視の形状(車幅方向から見た形状)は、前記レバー係止部材22の係止開口22bの形状に略合致している。そして、
図8および
図9に示すように、このレバー係止部材22の係止開口22bにコントロールレバー4の係止突起部42が挿入される(車幅方向の右側から挿入される)ことでコントロールレバー4とシフトレバー2とが係止され、これによってシフトレバー2への操作力がコントロールレバー4に伝達されるようになっている。
【0054】
回動軸部43,43は、コントロールレバー4の下端に設けられており、ベースプレート3によって回動自在に支持される部分である。
図10はコントロールレバー4の回動軸部43およびその周辺を示す側面図である。この
図10に示すように、各回動軸部43,43の外周縁は、車幅方向から見た形状が真円形状である。つまり、これら回動軸部43,43は、車幅方向に沿って所定の厚さ寸法を有する略円柱形状となっている。
【0055】
ベースプレートロア31におけるレバー保持部材装着部31bの両外側(車幅方向の両外側)には、コントロールレバー4の各回動軸部43,43の下側半分を支持するための下側支持部34が設けられている。同様に、ベースプレートアッパ32において前記レバー保持部材装着部31bの両外側(ベースプレートアッパ32がベースプレートロア31に組み付けられた状態での車幅方向の両外側)には、コントロールレバー4の各回動軸部43,43の上側半分を支持するための上側支持部35が設けられている。
【0056】
下側支持部34における車幅方向から見た形状は、前記各回動軸部43の外周縁の形状に合致した円弧形状となっている。このため、この下側支持部34に回動軸部43が載置された状態では、回動軸部43の下側の外周縁(外周面)がベースプレートロア31の下側支持部34の内面に当接している。
【0057】
一方、上側支持部35の内面には、回動軸部43の回動中心に向かって突出する複数の突部36,36,36が設けられている。これら突部36,36,36の先端は、回動軸部43の上側の外周縁(外周面)に部分的に当接しており、各回動軸部43,43がベースプレート3に回動自在に支持された状態において各回動軸部43,43にガタツキが生じることを防止している。
【0058】
この構成により、各回動軸部43,43と下側支持部34,34との間の接触面積を大きく確保することができ、各回動軸部43,43の外周面および下側支持部34,34の内周面それぞれの面圧(単位面積当たりに作用する荷重)を小さくでき、これら各回動軸部43,43の外周面および下側支持部34,34の内周面の摩耗を抑制することができる。例えば、シフトレバー2のシフト操作が行われた際に発生するケーブル8からの反力をこれら各回動軸部43,43の外周面および下側支持部34,34の内周面によって受け止めることができるので、各面の摩耗を抑制することができる。
【0059】
なお、
図10に示すように、本実施形態にあっては、上側支持部35の内面から突出する複数の突部36,36,36の先端面は平坦面となっているが、これに限らず、各回動軸部43の外周縁の形状に合致した円弧面に形成されていてもよい。
【0060】
前記ケーブル連結部44は、前記第3延在部41cにおける車幅方向の右側(車幅方向の他方側)の面から車幅方向の右側に向かって突出している。また、このケーブル連結部44は、略円柱形状であって、その軸心方向の先端部近傍には、ケーブル8の一端部が連結される溝44aが全周に亘って形成されている。
【0061】
以上のようにして前記回動軸部43,43およびケーブル連結部44が配設されていることにより、コントロールレバー4にあっては、ケーブル連結部44が上部に、車幅方向における球状軸部材23の両外側においてベースプレート3に回動自在に支持された一対の回動軸部43,43が下部にそれぞれ設けられていることになる。
【0062】
本実施形態の特徴の一つは、コントロールレバー4に前記分岐部45が設けられている点にある。この分岐部45は、レバー本体部41の下端縁に連続し、車幅方向に分岐されて各回動軸部43,43に向かって延在している。言い替えると、この分岐部45は、ケーブル連結部44と各回動軸部43,43との間であって球状軸部材23よりも上側において車幅方向に分岐されて各回動軸部43,43に向かって延在している。このため、分岐部45は、レバー本体部41の下端に連続し且つ車幅方向の右側に変位して、車幅方向の右側に位置する回動軸部43の上面に連続する右側分岐部45Rと、レバー本体部41の下端縁に連続し且つ車幅方向の左側に変位して、車幅方向の左側に位置する回動軸部43の上面に連続する左側分岐部45Lとを備えている。
【0063】
具体的に、右側分岐部45Rは、レバー本体部41の下端縁から車幅方向の右側に向かって下方に傾斜する部分と、この部分から、右側に位置する回動軸部43の上面に向かって下方に延在する部分とを有している。同様に、左側分岐部45Lは、レバー本体部41の下端縁から車幅方向の左側に向かって下方に傾斜する部分と、この部分から、左側に位置する回動軸部43の上面に向かって下方に延在する部分とを有している。
【0064】
このような分岐部45が設けられ、この分岐部45(45R,45L)の下端に各回動軸部43,43が一体的に設けられた構成となっている。つまり、シフトレバー2の球状軸部材23およびコントロールレバー4の回動軸部43,43は、それぞれベースプレート3によって個別に支持された構成となっている。つまり、シフトレバー2の球状軸部材23は、ベースプレートロア31における車幅方向中央部に配設されたレバー保持部材装着部31bに嵌め込まれたレバー保持部材33によって回動自在に支持されているのに対し、コントロールレバー4の各回動軸部43,43は、ベースプレート3における車幅方向の両外側(レバー保持部材33の両外側)においてベースプレートロア31の下側支持部34とベースプレートアッパ32の上側支持部35との間で回動自在に支持されている。
【0065】
また、
図7および
図9に示すように、コントロールレバー4におけるレバー本体部41、回動軸部43,43、分岐部45には、コントロールレバー4の軽量化を図るための複数の凹部46,46,…が設けられている。これら凹部46,46,…の形成位置および大きさは、コントロールレバー4の各部の剛性を十分に確保した上で十分な軽量化を図ることができるように設計されたものである。
【0066】
また、各回動軸部43,43の支持位置として具体的には、各回動軸部43,43の回動中心同士を繋いだ中心線(車幅方向に沿って延在する中心線;
図8における一点鎖線L1)が、レバー保持部材33によって回動自在に支持されている球状軸部材23の中心を通り、また、コントロールレバー4のケーブル連結部44の軸心方向の中央部は、球状軸部材23の中心を通って車体前後方向に沿って延在する仮想平面(
図8における一点鎖線L2)の近傍に位置している。なお、このケーブル連結部44の長手方向の中央部を、球状軸部材23の中心を通って車体前後方向に沿って延在する仮想平面L2上に位置させるようにしてもよい。また、レバー係止部材22の係止開口22bに対するコントロールレバー4の係止突起部42の係止位置(係止突起部42の外面が係止開口22bの内面に接触している位置)も、仮想平面L2上または該仮想平面L2の近傍に位置している。
【0067】
また、
図11(コントロールレバー4の仮保持状態を示す斜視図)に示すように、ベースプレートロア31には、シフトレバー2の球状軸部材23が組み付けられる前の状態において、球状軸部材23を組み付ける際の組み付け軌跡(
図11において一点鎖線L3で示す矢印を参照)から退避させるように車体前後方向の前側に回動されたコントロールレバー4を載置して仮保持する仮保持部31eが設けられている。
【0068】
この仮保持部31eは、正面視の外縁が略台形状の板部で成り、その上縁(水平方向に延在する上縁)に、前記回動位置にあるコントロールレバー4が載置されるようになっている。より具体的には、コントロールレバー4のレバー本体部41と分岐部45との境界部分が仮保持部31eの上縁に載置されるようになっている。つまり、シフトレバー2の球状軸部材23をレバー保持部材33に組み付ける際には、その組み付け軌跡から退避させるようにコントロールレバー4を車体前後方向の前側に回動させ、該コントロールレバー4をベースプレートロア31の仮保持部31eに載置して仮保持させるようになっている。これにより、球状軸部材23の組み付け作業時にコントロールレバー4が邪魔になることがなく、球状軸部材23の組み付け作業を効率良く行うことができるようにしている。
【0069】
なお、コントロールレバー4が仮保持部31eの上縁に載置された状態におけるコントロールレバー4の回動姿勢は、シフトレバー2がPレンジ位置に操作された状態におけるコントロールレバー4の回動姿勢よりも更に前側に回動した姿勢(倒れ込んだ姿勢)となっている。
【0070】
(シフトゲートクッション)
図12は、シフト装置1のゲート部32aを示す平面図である。また、
図13は、シフトゲートクッション(クッション部材)5の斜視図である。
【0071】
シフトゲートクッション5は、ベースプレート3とは別部品で作製されており、ベースプレート3の構成材料よりも軟質の材料で構成されている。例えば、ベースプレート3はガラス繊維により強化されたナイロン樹脂で構成されているのに対し、シフトゲートクッション5はハイトレル(登録商標)等の熱可塑性ポリエステルエラストマによって構成されている。これら材料はこれに限定されるものではなく、適宜選択される。
【0072】
そして、このシフトゲートクッション5は、シフトゲートクッション部51とディテントクッション部52とを備えている。
【0073】
シフトゲートクッション部51は、ベースプレートアッパ32のゲート部32aのゲート開口32b,32c,32dの縁部を覆う部分である。つまり、このシフトゲートクッション部51は、ベースプレートアッパ32のゲート部32aのゲート開口32b,32c,32dの縁部に沿う枠形状に形成されている。このため、このシフトゲートクッション部51の中央部には、前記ゲート部32aの各ゲート開口32b,32c,32dに対応した各ゲート開口51b,51c,51dが設けられている。つまり、これらゲート開口51b,51c,51dに沿ってレバー本体21が移動するようにシフトレバー2のシフト操作が行われることになる。
【0074】
また、このシフトゲートクッション部51には、上下方向に貫通した係止孔51a,51a,…が複数箇所に形成されている。ベースプレートアッパ32の上面には、これら係止孔51a,51a,…に挿入されて係止される複数の係止突起32e,32e,…が設けられている。このため、シフトゲートクッション部51の各係止孔51a,51a,…に、ベースプレートアッパ32の係止突起32e,32e,…がそれぞれ挿入されて係止されることによって、シフトゲートクッション5がベースプレートアッパ32の上面に装着されることになる。この装着状態にあっては、ベースプレートアッパ32のゲート部32aのゲート開口32b,32c,32dの縁部と、シフトゲートクッション部51の外縁部とが重ね合わされ、これらの間に隙間が生じることなく、ベースプレートアッパ32にシフトゲートクッション5が取り付けられることになる。
【0075】
そして、前述したようにシフトゲートクッション5は軟質の材料で構成されているため、シフトレバー2のシフト操作時に、該シフトレバー2がPレンジ位置やDレンジ位置に操作された際、シフトレバー2がシフトゲートクッション5に当接することに起因する衝撃はシフトゲートクッション部51の弾性変形によって吸収されることになる。
【0076】
ディテントクッション部52は、シフトゲートクッション部51における車体前後方向中央位置の両側(車幅方向の両側)から下方に延在している。このディテントクッション部52の下端の位置は、前記ディテントピン26が上昇位置に達した状態で該ディテントピン26に当接する位置に設定されている。
図14(ディテントクッション部52を示す側面図)に示すように、このディテントクッション部52は、側面視が略矩形状の板部で構成されている。ベースプレートアッパ32には、ディテントクッション部52,52が挿入される挿入孔32f,32fが設けられている。
図15は
図12におけるXV-XV線に沿った断面図である。また、
図16は
図12におけるXVI-XVI線に沿った断面図である。
図15に示すように、挿入孔32fの内面を構成している各縦壁のうち車幅方向の外側の縦壁32gには車幅方向に沿って貫通する開口32hが形成されている。また、ディテントクッション部52の側面(車幅方向の外側を向いている側面)52aには、ディテントクッション部52が挿入孔32fに挿入された状態で前記開口32hの上縁に係止する係止突起52bが設けられている。つまり、ディテントクッション部52を挿入孔32fに挿入していき、その挿入量が所定量に達した時点(シフトゲートクッション部51がベースプレートアッパ32の上面に当接した時点)で、係止突起52bが開口32hの上縁に係止されることで抜け止めされる構成となっている。
【0077】
前記挿入孔32fは下側が開放されており、前述したようにディテントクッション部52の係止突起52bが開口32hの上縁に係止されて抜け止めされた状態にあっては、ディテントクッション部52の下端は、前記縦壁32gの下端よりも僅かに下方に突出している(下端の開口から僅かに突出している)。また、このディテントクッション部52の下端面52fは、車幅方向の中央側に向かうに従って下側に傾斜する傾斜面で形成されている。
【0078】
また、ディテントクッション部52における係止突起52bの上側には車幅方向に沿って貫通する開口52cが形成されている。この開口52cは、上下方向の寸法に比べて車体前後方向の寸法が長いスリット状に形成されている。
【0079】
また、
図16に示すように、挿入孔32fの内面を構成している各縦壁のうち車体前後方向の前側の縦壁32iとディテントクッション部52の前端面52dとの間、および、各縦壁のうち車体前後方向の後側の縦壁32jとディテントクッション部52の後端面52eとの間のそれぞれには隙間が設けられている。
【0080】
前述したように、ディテントクッション部52は、ディテントピン26が上昇位置に達した際に該ディテントピン26に当接するように下方に延在されている。シフトゲートクッション5は軟質の材料で構成されているため、ディテントピン26がシフトゲートクッション5のディテントクッション部52に当接した際(
図15および
図16に仮想線で示すディテントピン26を参照)の衝撃はディテントクッション部52の弾性変形によって吸収されることになる。また、前述したように、ディテントクッション部52の下端面52fは、車幅方向の中央側に向かうに従って下側に傾斜する傾斜面で形成されており、このディテントクッション部52の下端部の弾性変形を容易にしている。更に、ディテントクッション部52における係止突起52bの上側には開口52cが形成されており、この部分は脆弱となっている。このため、この開口52cの周囲の弾性変形量を大きく確保することができ、これによっても、前記衝撃は効果的に吸収される。加えて、前記挿入孔32fの内面を構成している縦壁32i,32jとディテントクッション部52の各端面52d,52eとの間には隙間が設けられている。このため、ディテントクッション部52にディテントピン26が当接した場合に該ディテントクッション部52が弾性変形できるスペースが確保されていることになる。つまり、上昇位置に達したディテントピン26がシフトゲートクッション5のディテントクッション部52に当接した場合、このディテントクッション部52には上向きの荷重が作用することになるが、この荷重は、前記隙間を埋めるようにディテントクッション部52が弾性変形することで吸収される。
【0081】
以上のことから、ディテントピン26がシフトゲートクッション5のディテントクッション部52に当接した際の衝撃音を低減することができ、また、この当接時にディテントピン26に入力される荷重も軽減されることになる。その結果、ディテント機構の作動時の静粛性の確保およびディテント機構の耐久性の向上を図ることができる。
【0082】
また、シフトゲートクッション5をベースプレート3とは別部品として作製して該ベースプレート3のゲート部32aのゲート開口32b,32c,32dの縁部に組み付けるようにしているため、これらを一体的に作製する(ベースプレートの内側に異なる材料で成るクッション部材を一体的にモールディングする)従来の作製手法に比べて製造コストの低廉化を図ることができる。
【0083】
(シフトロックユニット)
シフトロックユニット6は、前記シフトノブスイッチの押し込み操作が行われた場合であってもディテントピン26の下方への移動を規制することによってシフトレバー2の移動(例えばPレンジ位置からの移動)を禁止するための機構である。一般にシフトロックユニット6は、シフトレバー2がPレンジ位置にある状態において、運転者が車両のブレーキペダルの踏み込み操作を行っていない場合には、ディテントピン26の下方への移動を規制してシフトレバー2の移動を禁止する。一方、運転者が車両のブレーキペダルの踏み込み操作を行っている場合には、ディテントピン26の下方への移動を許容してシフトレバー2の移動を許可する。
【0084】
図17はシフトロックユニット6のシフトロックケース61の斜視図である。
図18はシフトロックケース61およびシフトロックリンク62を示す側面図である。これらの図に示すように、シフトロックケース61の内面には、ディテントピン26の下方への移動を規制するためのシフトロックリンク62を回動自在に支持するボス63が水平方向に延在するように設けられている。
【0085】
シフトロックリンク62は、ボス63に回動自在に支持される円筒部62aと、該円筒部62aから上方に延在する回動腕部62bとを備えている。回動腕部62bの延在方向の途中には水平方向に突出する係止ピン62cが設けられている。
【0086】
シフトロックケース61における前記シフトロックリンク62の配設位置よりも前側にはアクチュエータ収容部64bが設けられており、このアクチュエータ収容部64bの内部に、シフトロックリンク62の回動位置を調整するためのアクチュエータ64が収容されている。このアクチュエータ64は、電磁ソレノイドを内蔵すると共に、シフトロックリンク62に向かって進退可能なロッド64aを備えている。そして、このロッド64aがシフトロックリンク62の係止ピン62cに連繋している。アクチュエータ64は、電磁ソレノイドに通電されることでロッド64aが没入される構成となっている。
【0087】
また、シフトロックリンク62は、図示しないスプリングによって
図18における反時計回り方向の付勢力を受けており、この付勢力によってディテントピン26に対向する位置となるようになっている。
【0088】
このため、
図18に実線で示すようにアクチュエータ64のロッド64aが突出している状態(電磁ソレノイドに通電されていない状態)では、シフトロックリンク62が規制位置(
図18における反時計回り方向の位置)に回動しており、シフトロックリンク62の上面がディテントピン26の下端に当接することで該ディテントピン26の下方への移動を規制する。一方、アクチュエータ64のロッド64aが没入している状態(電磁ソレノイドに通電された状態)では、
図18に仮想線で示すように、前記スプリングの付勢力に抗してシフトロックリンク62が規制解除位置(
図18における時計回り方向の位置)に回動しており、ディテントピン26の下方への移動を許容するようになっている。つまり、ディテント機構のディテントプレートの溝(例えばP溝)からのディテントピン26の離脱を許容する。
【0089】
図19は、ベースプレートアッパ32におけるシフトロックケース61の組み付け部分を示す斜視図である。この
図19に示すように、ベースプレートアッパ32には、シフトロックケース61のボス63を支持するボス受け部65が設けられている。このボス受け部65は、シフトロックケース61が組み付けられる側(車幅方向の左側)に向かって突出する凸部で構成されている。
【0090】
そして、シフトロックケース61の特徴としては、前記ボス63の断面形状(車幅方向から見た断面形状)にある。
図17および
図20(シフトロック状態においてディテントピン26からシフトロックリンク62を介してシフトロックケース61のボス63に入力される荷重を説明するための図)に示すように、ボス63の断面形状としては、車体前後方向に沿って略水平方向に延在する(実際には水平方向に対して僅かに傾斜している)水平部63aと、この水平部63aの中央部(車体前後方向の中央部)から上方に延在する鉛直部63bとを有する略T字形状となっている。そして、水平部63aの下面63cが前記ベースプレートアッパ32のボス受け部65に載置されることになるが、この水平部63aの下面63cは平坦面で形成されている。
【0091】
一方、ベースプレートアッパ32に設けられているボス受け部65の上面65aに前記ボス63が載置されることになるが、このボス受け部65の上面65aは、ボス63の水平部63aの下面63cに位置合わせされて該下面63cの全面が当接されて載置される平坦面で形成されている。
【0092】
そして、シフトロックユニット6によってシフトレバー2の移動を規制するシフトロック状態(
図18に実線で示す状態)にあっては、シフトロックケース61に設けられたボス63によって回動自在に支持されたシフトロックリンク62がディテントピン26の下端に当接することで、該ディテントピン26の下方への移動を規制する。この場合、前記シフトノブスイッチの押し込み操作に起因してディテントピン26がシフトロックリンク62を下方に向けて押圧することになり、その押圧力は、
図20中に矢印Fで示すように、シフトロックリンク62を介してシフトロックケース61のボス63に入力されることになる。前述したように、本実施形態では、ボス63におけるボス受け部65に当接する下面63cは平坦面で成り、ボス受け部65は、ボス63の下面(平坦面)63cが重ね合わされる平坦面で成る上面65aを有する凸部により構成されている。つまり、前記押圧力Fは、ボス63およびボス受け部65それぞれに設けられた平坦面(下面63cおよび上面65a)同士の重ね合わせ部によって受け止められることになり、前記押圧力Fに対する耐力が十分に確保されている。また、ボス63とボス受け部65とは前記平坦面同士で当接されているため、これらボス63およびボス受け部65が円弧面同士で当接する従来技術のものに比べて寸法精度を良好に得ることができる。また、ボス受け部65は凸部により構成されているため、成形時(樹脂の射出成形時等)の変形を抑制でき、これによっても高い寸法精度を得ることができる。
【0093】
(ボスおよびボス受け部の変形例)
次に、ボス63およびボス受け部65の変形例について説明する。
図21は、本変形例における
図17相当図である。
図22は本変形例における
図19相当図である。
図23は本変形例における
図20相当図である。
【0094】
これらの図に示すように、ボス63の断面形状としては半円形状となっている。つまり、上側が半円弧形状の曲面63dで形成されているのに対し、下側が平坦面63eで形成されている。
【0095】
一方、ベースプレートアッパ32に設けられているボス受け部65の上面65aは、前記実施形態のものと同様に、ボス63の下側の平坦面63eに位置合わせされて該平坦面63eの全面が当接されて載置される平坦面で形成されている。また、本変形例のベースプレートアッパ32にあっては、平坦面で成る上面65aの上側にボス63の先端部分を挿通するための開口65bが設けられている。
【0096】
この構成においても、前記実施形態のものと同様の効果を奏することができる。つまり、前記押圧力Fに対する耐力が十分に確保され、また、寸法精度を良好に得ることができる。
【0097】
(マニュアルモード切替スイッチ)
マニュアルモード切替スイッチ7は、自動変速装置をマニュアルモードに切り替える際にシフトレバー2によって押圧されるスイッチである。つまり、自動変速装置のオートマチックモードにあっては、シフトレバー2は、ベースプレートアッパ32のオートマチックモード用のゲート開口32bに位置しているが、運転者がマニュアルモードを要求する場合には、シフトレバー2をベースプレートアッパ32のオートマチックモード用のゲート開口32bからゲート連通開口32dを経てマニュアルモード用のゲート開口32cに移動させる(
図8の仮想線を参照)。この移動に伴い、コントロールレバー4とシフトレバー2との係止状態が解除され(レバー係止部材22の係止開口22bからコントロールレバー4の係止突起部42が離脱し)、シフトレバー2がマニュアルモード切替スイッチ7の操作部(図示省略)を押圧することになり、自動変速装置はマニュアルモードに切り替えられる。つまり、シフトレバー2がマニュアルモード用のゲート開口32cのプラス操作位置に向けて操作される度に変速段がアップされ、マイナス操作位置に向けて操作される度に変速段がダウンされることになる。
【0098】
このマニュアルモードでシフトレバー2が操作されている際、コントロールレバー4の位置は固定されている。このため、運転者がオートマチックモードを要求し、シフトレバー2をマニュアルモード用のゲート開口32cからオートマチックモード用のゲート開口32bに戻した場合には、再び、レバー係止部材22の係止開口22bにコントロールレバー4の係止突起部42が挿入され、コントロールレバー4とシフトレバー2とが係止される。
【0099】
(ベースプレートアッパとベースプレートロアとの組み付け構造)
次に、前記ベースプレートアッパ32とベースプレートロア31との組み付け構造について説明する。本実施形態にあっては、これらベースプレートロア31とベースプレートアッパ32とは1本の係合ピン9によって一体的に組み付けられている。
【0100】
図24は係合ピン9によるベースプレートアッパ32とベースプレートロア31との係合部分を示す図である。
図25は
図24におけるXXV-XXV線に沿った断面図である。これらの図に示すように、ベースプレートアッパ32およびベースプレートロア31それぞれには、ピン孔31f,32kが形成された組み付け壁部31g,32mが設けられ、それぞれの組み付け壁部31g,32m同士が重ね合わされて各ピン孔31f,32kに亘って係合ピン9が挿通されることによって、ベースプレートアッパ32とベースプレートロア31とが一体的に組み付けられている。
【0101】
また、ベースプレートアッパ32の組み付け壁部32mおよびベースプレートロア31の組み付け壁部31gのうち、ピン挿通方向の外側に位置するベースプレートロア31の一方側(本実施形態では車幅方向の左側)の組み付け壁部31gには、該組み付け壁部31gの延在方向に沿う方向に延在するピン抜け止め片31hが一体的に設けられている。
【0102】
このピン抜け止め片31hは、係合ピン9の挿入方向(水平方向)に対して直交する方向であって、係合ピン9から退避する位置(
図24の仮想線を参照)と係合ピン9の端面を覆う位置(
図24の実線を参照)との間で撓み、各ピン孔31f,32kに亘って係合ピン9が挿通された状態で該係合ピン9の端面(係合ピン9の頭部)を押さえ込む構成とされている。
【0103】
また、ピン抜け止め片31hの具体的な構成としては、係合ピン9の端面を押さえ込むためのピン当接部31iと、該ピン当接部31iと組み付け壁部31gとの間に亘る可撓部31jとを備えている。ピン当接部31iの幅寸法(車体前後方向の寸法)は可撓部31jの幅寸法よりも大きく設定されており、これによって、ピン当接部31iが係合ピン9の端面を押さえ込む範囲が大きく確保されるようになっている。また、可撓部31jは、その下端部のみが組み付け壁部31gに一体成形されており、
図24に仮想線で示すように係合ピン9から退避する位置まで撓むことが可能となっている。
【0104】
また、ピン抜け止め片31hのピン当接部31iには、組み付け壁部31gに向かって幅寸法を大きくするような傾斜面31kが設けられている。このため、係合ピン9の挿入時には該係合ピン9の頭部が傾斜面31kを押圧し、これによってピン抜け止め片31hのピン当接部31iがピン孔31fから後退するように可撓部31jが撓む。そして、係合ピン9の頭部がピン当接部31iを乗り越えると、前記押圧が解除され、可撓部31jが元の形状に復帰することでピン当接部31iが係合ピン9の頭部を押さえ込み、これによって係合ピン9は抜け止めされる。
【0105】
図26は、従来技術における係合ピンaによるベースプレートアッパbとベースプレートロアcとの係合部分を示す斜視図である。この
図26に示すように、係合ピンaの端面を押さえ込むピン抜け止め片d(ベースプレートアッパbに設けられたピン抜け止め片d)を、組み付け壁部eの延在方向に対して直交する方向(係合ピンaの挿入方向)に延在させた場合には、ベースプレートアッパbにおける係合ピンaの挿入方向の寸法がピン抜け止め片dの長さ寸法(組み付け壁部eの延在方向に対して直交する方向の寸法;
図26における寸法t1)分だけ大きくなってしまう。その結果、ベースプレートb,cが大型化してしまう。
【0106】
これに対し、本実施形態では、ピン抜け止め片31hを、組み付け壁部31gの延在方向に沿う方向に延在させ、係合ピン9の挿入方向に対して直交する方向であって、係合ピン9から退避する位置と係合ピン9の端面を覆う位置との間で撓むように構成したため、係合ピン9の挿入方向でのピン抜け止め片31hの寸法を小さくでき、ベースプレート3の小型化を図ることができる。
【0107】
なお、前記構成にあっては、ベースプレートアッパ32の組み付け壁部32mおよびベースプレートロア31の組み付け壁部31gのうち、ベースプレートロア31の組み付け壁部31gがピン挿通方向の外側に位置し、この組み付け壁部31gにピン抜け止め片31hを一体的に設ける構成とした。本発明はこれに限らず、ベースプレートアッパ32の組み付け壁部32mをピン挿通方向の外側に位置させ、この組み付け壁部32mにピン抜け止め片を一体的に設ける構成としてもよい。
【0108】
(ピン抜け止め片の変形例)
次に、ピン抜け止め片31hの変形例について説明する。
図27は、本変形例における
図24相当図である。
【0109】
前記実施形態では、ピン抜け止め片31hが、係合ピン9の挿入方向(水平方向)に対して直交する鉛直方向に延在し、係合ピン9から退避する位置と係合ピン9の端面を覆う位置との間で撓む構成としていた。
【0110】
これに対し、本変形例では、
図27に示すように、ピン抜け止め片31hが、係合ピン9の挿入方向(水平方向)に対して直交する水平方向に延在し、係合ピン9から退避する位置(
図27に仮想線で示すように下側に退避する位置)と係合ピン9の端面を覆う位置との間で撓む構成としたものである。
【0111】
この構成においても、前記実施形態のものと同様の効果を奏することができる。つまり、係合ピン9の挿入方向でのピン抜け止め片31hの寸法を小さくでき、ベースプレート3の小型化を図ることができるものとなっている。
【0112】
なお、この変形例では、ピン抜け止め片31hが係合ピン9から退避する方向を下側としていたが、上側に退避するようにしてもよい。
【0113】
-実施形態の効果-
前述したように、シフトレバー2の球状軸部材23およびコントロールレバー4の回動軸部43,43は、それぞれベースプレート3によって個別に支持されている。つまり、コントロールレバー4が、球状軸部材23よりも上側において車幅方向に分岐されて各回動軸部43,43に向かって延在する分岐部45を備えていることにより、各回動軸部43,43は、車幅方向における球状軸部材23の両外側において、当該球状軸部材23を支持する部分とは個別にベースプレート3によって回動自在に支持されている。
【0114】
このため、シフトレバー2を操作した際の操作力の反力がコントロールレバー4の各回動軸部43,43に直接的に作用することはない。従って、この反力の影響によって回動軸部43,43同士の間に亘る中心線が湾曲するように各回動軸部43,43が変形してしまうことが抑制される。その結果、この変形に伴ってコントロールレバー4の回動抵抗が増大してシフトレバー2の操作性が悪化したり、局所的な面圧の増加に起因して摩耗が生じたりすることがなくなる。また、回動軸部43,43での変形量を小さくするために各回動軸部43,43同士の間の距離を大きくする必要もないため、コントロールレバー4の大型化を抑制することができる。更には、前記回動抵抗を小さくするために各回動軸部43,43を支持するベースプレート3の支持孔(下側支持部34および上側支持部35で構成される支持孔)の内径寸法を大きくする必要もなく、各回動軸部43,43のガタツキを抑制することができる。
【0115】
また、レバー係止部材22の係止開口22bに対するコントロールレバー4の係止突起部42の係止位置とケーブル連結部44の位置とが略同一平面上に位置していることにより、シフトレバー2からの操作力に起因するコントロールレバー4の捩れを抑制することができる。また、係止開口22bに対する係止突起部42の係止位置と球状軸部材23の位置とが略同一平面上に位置していることにより、球状軸部材23への捩れ入力を低減することができる。
【0116】
また、係止突起部42の突出方向とケーブル連結部44の突出方向とが互いに反対方向となっているため、係止突起部42が係止開口22bから抜け出る側(走行モードをマニュアルモードに変更する際に抜け出る側)とケーブル連結部44に対するケーブル8の取り付け作業を行う側とが同じ側となり、コントロールレバー4周辺のスペースを効果的に利用でき、体格の小型化を図ることができる。
【0117】
また、前述したように、コントロールレバー4の各回動軸部43,43の回動中心同士を繋いだ中心線は、球状軸部材23の中心を通り、ケーブル連結部44の中央部は、球状軸部材23の中心を通って車体前後方向に沿って延在する仮想平面L2上または該仮想平面L2の近傍に位置している。このため、シフトレバー2を操作した際には、コントロールレバー4の各回動軸部43,43の回動中心同士を繋いだ中心線上の点を中心として球状軸部材23が回動することになる。このため、シフトレバー2の操作角度がコントロールレバー4の回動角度に一致することになり、シフトレバー2とコントロールレバー4との間に相対的な変位が生じることがない。従って、シフトレバー2の操作性を良好に得ることができる。また、ケーブル連結部44の中央部、および、係止開口22bに対する係止突起部42の係止位置が、球状軸部材23の中心を通って車体前後方向に沿って延在する仮想平面L2上または該仮想平面L2の近傍に位置していることにより、コントロールレバー4に作用する前記捩れ方向の力を低減することができる。
【0118】
-他の実施形態-
なお、本発明は、前記実施形態および前記変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0119】
例えば、前記実施形態および前記変形例では、オートマチックモード用のゲート開口32bが車幅方向の右側に、マニュアルモード用のゲート開口32cが車幅方向の左側にそれぞれ配置されたものとしていた。本発明はこれに限らず。オートマチックモード用のゲート開口が車幅方向の左側に、マニュアルモード用のゲート開口が車幅方向の右側にそれぞれ配置されたものとしてもよい。
【0120】
また、前記実施形態および前記変形例では、オートマチックモードとマニュアルモードとの切り替えが可能な自動変速装置を搭載した車両に備えられたシフト装置1であることから、コントロールレバー4とシフトレバー2との係止状態の解除が可能な構成としていた。つまり、運転者がマニュアルモードを要求する場合には、シフトレバー2の移動に伴ってレバー係止部材22の係止開口22bからコントロールレバー4の係止突起部42が離脱するようにしていた。本発明はこれに限らず、マニュアルモードを有しない自動変速装置を搭載した車両に備えられたシフト装置である場合には、コントロールレバー4とシフトレバー2との係止状態の解除が不能な構成としてもよい。
【0121】
また、前記実施形態および前記変形例では、コントロールレバー4に備えられた各回動軸部43,43は共に同一構成(同一の外径および同一の厚さ寸法)としていた。本発明はこれに限らず、各回動軸部43,43は互いに外径が異なっていたり、互いに厚さ寸法が異なっていてもよい。但し、コントロールレバー4の回動を良好に行うためには、各回動軸部43,43の回動中心同士を繋いだ中心線が、レバー保持部材33によって回動自在に支持されている球状軸部材23の中心を通る構成とすることが好ましい。
【0122】
また、前記実施形態および前記変形例では、コントロールレバー4の各回動軸部43,43の回動中心同士を繋いだ中心線L1が球状軸部材23の中心を通るものとしていたが、これに限定されるものではない。また、前記実施形態では、コントロールレバー4のケーブル連結部44における溝(ケーブル8の一端部が連結される溝)44aの位置は、球状軸部材23の中心を通って車体前後方向に沿って延在する仮想平面L2上に位置するものとしていたが、これについてもこれに限定されるものではない。
【0123】
また、前記実施形態および前記変形例では、ベースプレートロア31の下側支持部34における車幅方向から見た形状を、コントロールレバー4の回動軸部43の外周縁の形状に合致した円弧形状とし、ベースプレートアッパ32の上側支持部35の内面に、回動軸部43の回動中心に向かって突出する複数の突部36,36,36を設けていた。本発明はこれに限らず、ベースプレートアッパ32の上側支持部35における車幅方向から見た形状を、コントロールレバー4の回動軸部43の外周縁の形状に合致した円弧形状とし、ベースプレートロア31の下側支持部34の内面に、回動軸部43の回動中心に向かって突出する複数の突部を設けてもよい。また、ベースプレートロア31の下側支持部34およびベースプレートアッパ32の上側支持部35それぞれにおける車幅方向から見た形状を、コントロールレバー4の回動軸部43の外周縁の形状に合致した円弧形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、自動変速装置を搭載した車両に備えられたシフト装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 シフト装置
2 シフトレバー
22b 係止開口
23 球状軸部材(球状軸部)
26 ディテントピン
3 ベースプレート
31 ベースプレートロア
31e 仮保持部
31f,32k ピン孔
31g,32m 組み付け壁部
31h ピン抜け止め片
32 ベースプレートアッパ
32a ゲート部
32b~32d ゲート開口
32f 挿入孔
32i,32j 縦壁
34 下側支持部
35 上側支持部
4 コントロールレバー
41b 第2延在部(車幅方向延在部)
41c 第3延在部(前後方向延在部)
42 係止突起部
43 回動軸部
44 ケーブル連結部
44a 溝(ケーブルの連結位置)
45 分岐部
5 シフトゲートクッション
52 ディテントクッション部
52b 係止突起
52c 開口
6 シフトロックユニット
61 シフトロックケース
62 シフトロックリンク
63 ボス
63c 下面
63e 平坦面
65 ボス受け部
65a 上面
8 ケーブル
9 係合ピン