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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物及び接着シート
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220509BHJP
   C08G 18/83 20060101ALI20220509BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20220509BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220509BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/83 010
C09J7/10
C09J7/30
C09J175/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019505269
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2018033330
(87)【国際公開番号】W WO2019069621
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2019-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2017195369
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信之
(72)【発明者】
【氏名】吉原 裕美
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080439(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110845(WO,A1)
【文献】特開2018-100403(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00-290/14
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーと、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーと、(C)光重合開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が30,000~150,000であり、
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーは、ポリカーボネートジオールとジイソシアネートとカルボン酸ジオールとを反応させた後、グリシジル(メタ)アクリレートを反応させて得た、主鎖にポリカーボネート構造とウレタン構造を有し、側鎖に(メタ)アクリル基を有するプレポリマー、ポリエーテルジオールとジイソシアネートとカルボン酸ジオールとを反応させた後、グリシジル(メタ)アクリレートを反応させて得た、主鎖にポリエーテル構造とウレタン構造を有し、側鎖に(メタ)アクリル基を有するプレポリマー、及びポリエステルジオールとジイソシアネートとカルボン酸ジオールとを反応させた後、グリシジル(メタ)アクリレートを反応させて得た、主鎖にポリエステル構造とウレタン構造を有し、側鎖に(メタ)アクリル基を有するプレポリマーからなる群から選択される、ウレタン構造を主鎖に、(メタ)アクリル基を側鎖に含むポリマーであり、
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部に対して、前記(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを40~120質量部含有し、
前記光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上3.0×10Pa以下である光硬化性樹脂組成物(ただし、前記光硬化性樹脂組成物は複素環含有モノマーは含有しない。)。
【請求項2】
前記光硬化性樹脂組成物を乾燥させて得られる未硬化物の25℃での引張貯蔵弾性率(E’)が5.0×10Pa以上3.0×10Pa以下である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーの二重結合当量が1,000~5,000g/eqである、請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部に対して、前記(C)光重合開始剤を0.5質量部以上含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を含む接着シート。
【請求項6】
タッチパネル式入出力装置及び画像表示装置のうちの少なくとも1つの情報表示装置を構成する部材の貼り合わせに用いられる、請求項5に記載の接着シート。
【請求項7】
前記情報表示装置が車載用装置である、請求項6に記載の接着シート。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の接着シートを含む情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物及び接着シートに関し、更に詳しくは、例えば有機ELディスプレイ表示部、液晶ディスプレイ表示部に使用可能な光硬化性樹脂組成物、並びに該光硬化性樹脂組成物を用いた接着シートに関する。以下、液晶ディスプレイ表示部を例に説明する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)は、デジタル化された電子機器の普及に伴いごく一般的な表示装置となっており、液晶テレビやPC(Personal Computer)ディスプレイ、携帯電話端末、携帯型ゲーム機、カーナビゲーション、電卓、時計など、さまざまな機器の表示部として用いられている。
【0003】
LCDには機械的な保護のために、液晶表示パネル等の画像表示部材の表面側に光透過性硬化樹脂層(接着層)を介して光透過性の透明な保護部材が配置されている。LCDは、画像表示部材と保護部材との間に光硬化性樹脂組成物を配した後、光硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させて光透過性硬化樹脂層(接着層)とし、それにより画像表示部材と保護部材とを接着することにより構成されている。
【0004】
LCDの保護部材は一般的に板状部材で構成されているが、カーナビゲーション、スピードメーター等の車載器においては、デザイン性の観点から、近年、LCDの保護部材を三次元曲面形状としたものが望まれている。従来、保護部材にはガラス製のパネルやシートが使用されてきたが、このような要望に対応するために、所望の形状に加工しやすい樹脂製のパネルやシートが使用されるようになってきた。
【0005】
樹脂製保護部材は形状加工性に優れる反面、アウトガス成分が発生しやすいため、特に湿熱環境下において樹脂製保護部材から発生した気泡が接着層に移行して、樹脂製保護部材と接着層との接着力の低下や接着層の変色等を引き起こし、延いては表示部の鮮明性の低下や剥がれを引き起こすことがある。
【0006】
これを解決するものとして、例えば、温度100℃及び周波数1Hzで測定された貯蔵弾性率(G’A100)が1×10Pa未満である接着剤層(A)を有する活性エネルギー線硬化性ポリウレタン接着シートであって、前記接着剤層(A)が硬化した層(A’)の温度100℃及び周波数1Hzで測定された貯蔵弾性率(G’A’100)が2×10Pa以上であり、温度60℃及び湿度90%の環境下に24時間放置された場合に気体を発生し得る被着体(b)の接着に使用することを特徴とする活性エネルギー線硬化性ポリウレタン接着シートが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2017-110143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カーナビゲーション等の情報表示装置を自動車に搭載して使用する場合、特に夏季には自動車内の温度が非常に高くなる場合があり、接着層にはそのような使用環境においても保護部材から発泡する気泡を抑制する耐発泡性や、表示部の鮮明性を維持するための耐湿熱白化性を備えることが求められる。
一方、被着体の中にはその表面に微細な凹凸(段差)を有するものがあり、特に樹脂製保護部材の表面には凹凸部が存在するため、接着層の形成に用いられる接着シートとの界面に隙間ができてしまうと、樹脂製保護部材から発生した気泡によりこの隙間が広がってしまい、接着シートが樹脂製保護部材から剥がれやすくなってしまう。接着シートは未硬化状態で被着体に貼り付けられ、その後紫外線を照射することにより硬化されるが、接着シートには未硬化状態において被着体表面の凹凸部を埋める性能(追従性)が要求される。
【0009】
従来の光硬化性樹脂組成物では、特にカーナビゲーションのような高温高湿環境下に晒される可能性のある情報表示装置に用いるにはまだ十分ではなく、耐発泡性、耐湿熱白化性及び貼付時の被着体への追従性を全て満足できる光硬化性樹脂組成物が求められている。
そこで、本発明は、例えば、温度85℃×湿度85%という高温高湿環境下において、被着体として樹脂製部材を用いた場合でも、発泡を抑制して被着体と接着シートとの界面剥離を防止することができ、さらに常温貼付時の貼合工程においても追従性を有する光硬化性樹脂組成物及び該光硬化性樹脂組成物を含有する接着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、光硬化性樹脂組成物を硬化物としたときの100℃における引張貯蔵弾性率(E’)に着目し、特定のウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーと水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーと光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を、その硬化物の100℃における引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上の硬さとなるように構成することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は以下の(1)~(9)を特徴とする。
(1)(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーと、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーと、(C)光重合開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物であって、前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が30,000~150,000であり、前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部に対して、前記(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを40質量部以上含有し、前記光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上である光硬化性樹脂組成物。
(2)前記光硬化性樹脂組成物を乾燥させて得られる未硬化物の25℃での引張貯蔵弾性率(E’)が5.0×10Pa以上である、前記(1)に記載の光硬化性樹脂組成物。
(3)前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部に対して、前記(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを40~120質量部含有する、前記(1)又は(2)に記載の光硬化性樹脂組成物。
(4)前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーの二重結合当量が1,000~5,000g/eqである、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物。
(5)前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部に対して、前記(C)光重合開始剤を0.5質量部以上含有する、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物。
(6)前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物を含む接着シート。
(7)タッチパネル式入出力装置及び画像表示装置のうちの少なくとも1つの情報表示装置を構成する部材の貼り合わせに用いられる、前記(6)に記載の接着シート。
(8)前記情報表示装置が車載用装置である、前記(7)に記載の接着シート。
(9)前記(6)~(8)のいずれか1つに記載の接着シートを含む情報表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光硬化後の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上であるので硬度が高く、よって、樹脂製部材から発生する気泡を抑制することができ、特に高温高湿環境下においても優れた耐発泡性を発揮することができる。また、高温高湿環境下における耐湿熱白化性にも優れ、さらに樹脂製部材に貼り付ける際には樹脂製部材への形状追従性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に記載する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本実施形態における光硬化性樹脂組成物は、
(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーと、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーと、(C)光重合開始剤とを含有し、
(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量が30,000~150,000であり、
(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー100質量部に対して、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを40質量部以上含有し、
光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上である。
以下、各成分について説明する。
【0015】
[ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー]
本実施形態における光硬化性樹脂組成物は、(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(以下、「(A)成分」ともいう。)を含む。ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーは、ウレタン構造を主鎖に(メタ)アクリル基を側鎖に含むポリマーであって、例えば、ボリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、硬化後の接着シートの無黄変性の観点から、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートとは、主鎖にポリカーボネート構造とウレタン構造を有し、側鎖に(メタ)アクリル基を有するプレポリマーのことをいう。ボリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートジオールとジイソシアネートとカルボン酸ジオールとを反応させた後、グリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得ることができる。
【0017】
ポリカーボネートジオールの重量平均分子量は、好ましくは170~1,000であり、より好ましくは300~700であり、さらに好ましくは400~600である。ポリカーボネートジオールの重量平均分子量が上記範囲であると、ウレタンプレポリマー主鎖に、リワークに必要な膜性が付与される傾向にある。
【0018】
ジイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4’4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2’4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDIなどの脂環式ポリイソシアネート等が挙げられ、中でも、光学特性(黄変しにくさ)の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートが好まししい。
【0019】
カルボン酸ジオールとしては、特に限定されず、例えば、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
【0020】
ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートとは、主鎖にポリエーテル構造とウレタン構造を有し、側鎖に(メタ)アクリル基を有するプレポリマーのことをいい、ポリエステル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリエステル構造とウレタン構造を有し、側鎖に(メタ)アクリル基を有するプレポリマーのことをいう。これらのプレポリマーは、ポリカーボネートジオールの代わりに、それぞれ、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールを用いること以外は上記ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと同様の方法により得ることができる。このとき、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールの好ましい重量平均分子量は、上述したポリカーボネートジオールの好ましい重量平均分子量と同じである。
【0021】
(A)成分の重量平均分子量(MW)は、30,000~150,000である。重量平均分子量が30,000以上であると、製膜性が良好になるとともに、硬化性が高まるので、光硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)を1.0×10Pa以上とすることができる。また、重量平均分子量が150,000以下であれば貼り合せ時の形状追従性を良好に保つことができる。重量平均分子量は、40,000以上がより好ましく、さらに好ましくは50,000以上であり、また、120,000以下がより好ましく、さらに好ましくは100,000以下である。具体的に好ましい(A)成分の重量平均分子量の範囲は、40,000~120,000が好ましく、50,000~100,000がより好ましい。
【0022】
ここで、重量平均分子量は、平均分子量が約500~約100万の標準ポリスチレンを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0023】
(A)成分の二重結合当量は、好ましくは1,000~5,000g/eqであり、1,500g/eq以上がより好ましく、さらに好ましくは1,800g/eq以上であり、また、2,500g/eq以下がより好ましく、さらに好ましくは2,200g/eq以下である。二重結合当量が上記範囲であると、硬化収縮の影響が少なく、長期信頼性に優れ、また、硬化が容易となる。
【0024】
ここで、二重結合当量は、1当量のエチレン性不飽和二重結合基を含む樹脂の質量をいう。
【0025】
(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-10~20℃であり、-5℃以上がより好ましく、さらに好ましくは0℃以上であり、また、15℃以下がより好ましく、さらに好ましくは10℃以下である。ガラス転移温度が上記範囲であると、製膜性が良好となり取扱い性が向上する。
【0026】
ここで、ガラス転移温度は、動的粘弾性測定(DMA)により測定した値をいう。
【0027】
(A)成分は、耐腐食性の観点から実質的に酸を含まないことが好ましく、「実質的に酸を含まない」とは、(A)成分の酸価(mgKOH/g)が、1.0mgKOH/g以下、好ましくは0.5mgKOH/g以下、最も好ましくは0mgKOH/gであることを意味する。
【0028】
ここで、酸価は、樹脂の固形分1gに対して混合溶剤(質量比:トルエン/メタノール=50/50)を加え、溶解後、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を適量添加し、0.lNの水酸化カリウム水溶液で滴定し、下記式(α)により求めることができる。
x=10×Vf×56.1/(Wp×I)・・・(α)
(式(α)中、xは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定した樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは測定した樹脂溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。)
【0029】
[水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー]
本実施形態における光硬化性樹脂組成物は、(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー(以下、「(B)成分」ともいう。)を含む。本実施形態においては、(A)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーに対して(B)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーを加えることで、硬化後の架橋密度を高め、常温での粘弾性を高めるとともに、高温高湿環境下における白化を抑制している。
【0030】
(B)成分としては、例えば、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸とポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物等が挙げられる。これらの(B)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
中でも、耐湿熱白化の観点から、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0031】
本実施形態においては、(A)成分100質量部に対して(B)成分を40質量部以上含有させる。(B)成分の含有量が40質量部以上であると、耐湿熱白化性が向上するので、情報表示装置の表示部の鮮明性を保つことができる。(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量は、40~120質量部であることが好ましく、その下限は45質量部以上がより好ましく、さらに好ましくは50質量部以上であり、また、上限は110質量部以下がより好ましく、さらに好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内にあることにより、前記表示部の鮮明性を保つことができ、貼合時の発泡を防ぐことができる。具体的に好ましい(B)成分の含有量の範囲は、(A)成分100質量部に対して45~120質量部がより好ましく、45~110質量部がさらに好ましく、50~100質量部が特に好ましく、50~80質量部が最も好ましい。
【0032】
[(C)光重合開始剤]
本実施形態における光硬化性樹脂組成物は、(C)光重合開始剤(以下、「(C)成分」ともいう。)を含む。光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、分子内水素引き抜き型光重合開始剤等のいずれの光重合開始剤も用いることができ、中でも、反応性、硬化の均一性の観点から、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤が好ましい。具体的には、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が挙げられ、アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられ、中でも、ラジカル発生効率が高く、深部硬化性の観点から、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0033】
(A)成分100質量部に対する(C)成分の合有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1.0質量部以上であり、さらに好ましくは1.5質量部以上である。(C)光重合開始剤の含有量が上記範囲であると、硬化反応性が良好となり、長期信頼性が向上する傾向にある。(C)成分の含有量の上限としては特に限定されないが、多すぎると光学特性が低下する傾向にあるため、7.0質量部以下であることが好ましい。
【0034】
[その他の成分]
本実施形態における光硬化性樹脂組成物には、上述した(A)~(C)成分以外にも、シランカップリング剤、シリカ、アルミナ、水和アルミナ等の各種フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レペリング剤、消泡剤、着色顔料、有機溶媒等の、通常接着剤に添加されることがある添加剤を含んでいてもよい。
【0035】
光硬化性樹脂組成物中にシランカップリング剤を含有させることで接着力を維持し、被着体に対する長期信頼性が向上する。
シランカップリング剤としては、例えば、モノマー型シランカップリング剤、アルコキシオリゴマー型シランカップリング剤、多官能型シランカップリング剤等のいずれのシランカップリング剤も用いることができる。
【0036】
[光硬化性樹脂組成物の製造]
本実施形態の光硬化性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、上述した含有成分を、各種の混合機や分散機を用いて混合分散することによって調製することができる。混合・分散工程は特に限定されず、通常の手法により行えばよい。
【0037】
[光硬化性樹脂組成物の引張貯蔵弾性率]
本実施形態の光硬化性樹脂組成物の粘弾性は、動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)により測定することができる。所定厚みのフィルム状に形成した試験片について、動的粘弾性装置を用いて、周波数1Hzおよび所定温度の条件で測定される引っ張り測定で測定した値(引張貯蔵弾性率E’)を求める。試験片としては、具体的に幅5mm、長さ50mm、厚み0.1mmに切断した試験片を使用することができる。
【0038】
具体的には、本実施形態においては、光硬化した後の試験片(硬化物)について、100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上である。硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上であると、硬度が十分に高く、よって、被着体(例えば、樹脂製部材)から発生する気泡(アウトガス)を抑制することができ、特に高温高湿環境下(温度85℃、湿度85%)においても気泡の発生を抑え優れた耐発泡性を発揮することができる。硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)は、本発明の効果が得られやすいという観点から、2.0×10Pa以上であることが好ましく、さらに好ましくは3.0×10Pa以上であり、また、上限は特に限定はされないが3.0×10Pa以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0×10Pa以下である。具体的に好ましい硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)の範囲は、2.0×10~3.0×10Paがより好ましく、3.0×10~1.0×10Paがさらに好ましい。
【0039】
また、本実施形態においては、乾燥させて得られた未硬化物(外見上は半硬化状態に見える)について、25℃での引張貯蔵弾性率(E’)が5.0×10Pa以上であることが好ましい。未硬化物の25℃での引張貯蔵弾性率(E’)が5.0×10Pa以上であると、被着体に貼合する過程での耐発泡性が向上し、気泡の発生を抑制することができる。未硬化物の25℃での引張貯蔵弾性率(E’)は、本発明の効果が得られやすいという観点から、6.0×10Pa以上であることがより好ましく、さらに好ましくは8.0×10Pa以上であり、また、上限は特に限定はされないが5.0×10Pa以下であることが好ましく、さらに好ましくは3.0×10Pa以下である。具体的に好ましい未硬化物の25℃での引張貯蔵弾性率(E’)の範囲は、6.0×10~5.0×10Paがより好ましく、8.0×10~3.0×10Paがさらに好ましい。
【0040】
なお、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、硬化物のせん断貯蔵弾性率G’を求めることができない。せん断貯蔵弾性率(G’)は試験片を治具で上下から挟み込み、せん断(ずり)を加えることにより測定されるが、本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上であることから分かるように、硬化物は硬いものである。よって、せん断を加えた場合に治具内で試験片が滑ってしまい正確な測定ができないものと推測される。
【0041】
[接着シート]
本実施形態における接着シートは、上述した光硬化性樹脂組成物を含む。具体的には、例えば、PET等の保護フィルム上に本実施形態の光硬化性樹脂組成物を塗布して乾燥させた後、反対面にも保護フィルムを設けることにより、両面に保護フィルムが設けられた接着シートを得ることができる。特に、光硬化性樹脂組成物を、有機溶媒を用いてワニスとした後、保護フィルム上に塗布し、乾燥することが好ましい。このとき用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。中でも、溶解性の観点から、メチルエチルケトンが好ましい。また、ワニス中の有機溶媒の含有量は(A)成分100質量部に対して、好ましくは100~200質量部であり、より好ましくは130~170質量部である。
【0042】
保護フィルムとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される1種以上の樹脂からなるフィルムが挙げられ、中でも、製造コストを低減する観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるフィルムが好ましい。
【0043】
保護フィルムには、光硬化性樹脂組成物が塗布される面に離型処理が施されていてもよい。保護フィルムに離型処理が施されていることにより、使用時に保護フィルムを容易に剥離することが可能になるため、取扱い性が向上する。離型処理としては、特に限定されず、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキルグラフトポリマ一系離型剤等の離型剤や、プラズマ処理により表面処理する方法等を用いることができる。
【0044】
保護フィルムに光硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、塗布厚さに応じて、コンマコータ一、ダイコータ一、グラビアコーターなどを適宜採用することができる。
【0045】
光硬化性樹脂組成物の乾燥は、ドライヤ一等により実施することができ、その際の乾燥条件は、各成分の種類及び含有量等により適宜調整することができる。乾燥後の接着シートの厚さは、好ましくは10~250μmであり、より好ましくは25~125μm、さらに好ましくは30~75μmである。接着シートの厚さが上記範囲であると、被着体(例えば画像表示部材や保護部材の凹凸など)との追従性、接着性が良好となり、結果的に長期信頼性が向上する。本実施形態における長期信頼性とは、発泡が抑制されて、映像の鮮明性が維持されることを含む。
【0046】
接着シートはエネルギー線を照射することにより硬化される。エネルギー線は、特に限定されず、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を使用することができるが、硬化反応を効率良く行えるという観点から、紫外線を使用することが好ましい。
紫外線の光源としては、紫外線(UV)が発せられる光源を使用することができる。紫外線の光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ、LED等が挙げられる。
【0047】
[情報表示装置]
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、タッチパネル式入出力装置及び画像表示装置のうちの少なくとも1つの情報表示装置を構成する部材の貼り合わせに用いることができる。例えば、情報表示装置の画像表示部材と保護部材との間に、本実施形態の光硬化性樹脂組成物を含有する接着シートを配置させ、この積層体にエネルギー線を照射することにより、画像表示部材と保護部材とを接着することができる。
なお、本実施形態における光硬化性樹脂組成物は、高温高湿環境下においての耐発泡性、耐湿熱白化性に優れるため、車載用の情報表示装置を構成する部材の貼り合せに好ましく使用することができる。
【実施例
【0048】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
実施例及び比較例において用いた各成分・材料は以下のとおりである。
[(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー]
以下の合成例1~3及び、比較合成例1~2に従って、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(a)~(e)を作製した。
(1)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(a)
ポリカーボネート骨格ウレタン(メタ)アクリレート(重量平均分子量50,000、二重結合当量2,000g/eq)
(2)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(b)
ポリエーテル骨格ウレタン(メタ)アクリレート(重量平均分子量50,000、二重結合当量2,000g/eq)
(3)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(c)
ポリエステル骨格ウレタン(メタ)アクリレート(重量平均分子量50,000、二重結合当量2,000g/eq)
(4)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(d)
ポリカーボネート骨格ウレタン(メタ)アクリレート(重量平均分子量10,000、二重結合当量2,000g/eq)
(5)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(e)
ポリカーボネート骨格ウレタン(メタ)アクリレート(重量平均分子量180,000、二重結合当量2,000g/eq)
【0050】
[(B)成分:水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー]
(1)水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー(a)
4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、製品名「4-HBA」)
【0051】
[(C)成分:光重合開始剤]
(1)光重合開始剤(a)
2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、商品名「Irgacure TPO」、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤)
(2)光重合開始剤(b)
2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製、商品名「Irgacure 907」、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤)
(3)光重合開始剤(c)
2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(BASF社製、商品名「Irgacure 369」、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤)
【0052】
[粘着剤]
(1)粘着剤(a)
スリーエム社製、商品名「8146」(アクリル系粘着剤)
【0053】
(合成例1)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(a)
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、品名:HDI、略名HDI)33.3質量部と、重量平均分子量400のポリカーボネートジオール59.4質量部と、ジメチロールブタン酸7.3質量部と、触媒としてジブチル錫ラウレート等の有機錫化合物1質量部と、有機溶媒としてメチルエチルケトン100質量部を反応容器に入れ、70℃で24時間反応させた。
得られた合成物の反応状況を確認するため、IR測定機器を用いて分析を行った。IRチャートにおいて当該合成物のNCO特性吸収(2270cm-1)が消失していることを確認し、合成物がカルボキシル基を有するウレタンアクリレートであることを確認した。
次に、得られたカルボキシル基を有するウレタンアクリレート100質量部と、グリシジルメタクリレート7.1質量部と、触媒としてトリエチルアミン0.7質量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.05質量部とを反応容器に入れ、75℃で12時間反応を行い、付加反応させることによりウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(a)を得た。
なお、付加反応は、以下の方法に従って測定した酸価が1.0mgKOH/g以下になった時点で終了させた。また、得られたウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(a)は、重量平均分子量50,000、固形分濃度50質量%、二重結合当量2,000g/eq、Tg5℃であった。
【0054】
(酸価測定方法)
樹脂の固形分1gを秤量し、混合溶剤(質量比:トルエン/メタノール=50/50)を加えて溶解後、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を適量添加し、0.lNの水酸化カリウム水溶液で滴定し、下記式(α)により酸価を測定した。
x=10×Vf×56.1/(Wp×I)・・・(α)
(式(α)中、xは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定した樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは測定した樹脂溶液中の不揮発分の割合を(質量%)を示す。)
【0055】
(合成例2)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(b)
ポリカーボネートジオールに代えてポリエーテルジオール(重量平均分子量400)を用いたこと以外は合成例1と同様の方法により、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(b)を得た。
得られたウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(b)は、重量平均分子量50,000、固形分濃度50質量%、二重結合当量2,000g/eq、Tg5℃であった。
【0056】
(合成例3)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(c)
ポリカーボネートジオールに代えてポリエステルジオール(重量平均分子量400)を用いたこと以外は合成例1と同様の方法により、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(c)を得た。
得られたウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(c)は、重量平均分子量50,000、固形分濃度50質量%、二重結合当量2,000g/eq、Tg5℃であった。
【0057】
(比較合成例1)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(d)
ヘキサメチレンジイソシアネートと、ポリカーボネートジオール(重量平均分子量400)とジメチロールブタン酸とを、70℃で18時間反応させたこと以外は合成例1と同様の方法により反応を行い、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(d)を得た。
得られたウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(d)は、重量平均分子量10,000、固形分濃度50質量%、二重結合当量2,000g/eq、Tg5℃であった。
【0058】
(比較合成例2)ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(e)
ヘキサメチレンジイソシアネートと、ポリカーボネートジオール(重量平均分子量400)とジメチロールブタン酸とを、70℃で72時間反応させたこと以外は合成例1と同様の方法により反応を行い、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(e)を得た。
得られたウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(e)は、重量平均分子量180,000、固形分濃度50質量%、二重結合当量2,000g/eq、Tg5℃であった。
【0059】
<実施例1>
(1)光硬化性樹脂組成物の調製
反応容器の中に、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー(a)100質量部を加え、さらに、水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマー(a)70質量部、光重合開始剤(a)1.5質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン150質量部を加えて均一に撹拌し、樹脂組成物を得た。
【0060】
(2)耐発泡性の評価
(2-1)接着シートの作製
上記(1)で得られた樹脂組成物を、乾燥後の厚さが100μmとなるように膜厚75μmのPETフィルム上に塗布し、130℃で5分間乾燥させた後、反対面にも膜厚75μmのPETフィルムを設置し、両面にPETフィルム(保護フィルム)を備えた接着シートを得た。
【0061】
(2-2)測定用サンプルの作製
接着シートの片面保護フィルム(PETフィルム)を剥離し、樹脂組成物層を1.0mm厚さの透明なポリカーボネート板(帝人株式会社製「PC-1151」、40mm角)へ真空ラミネートにより貼り合わせた。真空ラミネートは、温度25~50℃、圧力0.01~0.05MPa、真空引き60秒、加圧30秒で実施した。次いで、もう片面の保護フィルムを剥離し、樹脂組成物層に1.0mm厚さの透明なポリカーボネート板(帝人株式会社製「PC-1151」、40mm角)を上記真空ラミネートの条件と同条件にて貼り合わせた後、オートクレーブ処理を行い、UV露光することにより測定用サンプルを得た。オートクレーブは温度60℃、圧力0.6MPa、時間1時間にて実施した。UV露光は超高圧水銀ランプ光源を用いて、λ=365nmにおける積算光量が5,000mJ/cmとなるように実施し、測定用サンプルを得た。
【0062】
(2-3)評価方法
[1.貼合時の外観確認]
接着シートのポリカーボネート板への貼合時に、ポリカーボネート板と樹脂組成物層との界面に発泡が見られるか否かを目視にして確認したところ、発泡は見られず、良好な貼付状態を維持できた。
[2.UV硬化後の外観確認]
測定用サンプルを、温度85℃、湿度85%の環境下に250時間静置した後、温度23℃、湿度50%の室温環境に取り出した。測定用サンプルを目視にて観察し、測定用サンプル内に発泡が見られるか否かを確認した(発泡はポリカーボネート板と樹脂組成物層との界面に発生するが、ポリカーボネート板は透明であるため測定用サンプル内で気泡が発生したように見える)。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
○:発泡がない。
×:発泡がある。
【0063】
(3)耐湿熱白化性の評価
(3-1)接着シートの作製
上記「(2-1)接着シートの作製」と同様にして、接着シートを作製した。
【0064】
(3-2)測定用サンプルの作製
上記「(2-2)測定用サンプルの作製」と同様にして、測定用サンプルを作製した。
【0065】
(3-3)評価方法
測定用サンプルを、温度85℃、湿度85%の環境下に250時間静置した後、温度23℃、湿度50%の室温環境に取り出した。測定用サンプルを目視にて観察し、1時間以内に測定用サンプルの樹脂組成物層が白濁するか否かを確認した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
○:樹脂組成物層の白濁がない。
×:樹脂組成物層の全体又は一部に白濁がある。
【0066】
(4)ヘイズの測定
(4-1)接着シートの作製
上記「(2-1)接着シートの作製」と同様にして、接着シートを作製した。
【0067】
(4-2)測定用サンプルの作製
上記「(2-2)測定用サンプルの作製」と同様にして、測定用サンプルを作製した。
【0068】
(4-3)測定方法
測定用サンプルを、温度85℃、湿度85%の環境下に250時間静置した後、温度23℃、湿度50%の室温環境に取り出し、ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製「HM-150」)を用いてヘイズを測定した。なお、測定は室温環境に取り出して1時間以内に行った。得られた測定値より、以下の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
○:ヘイズ値1%未満
×:ヘイズ値1%以上
【0069】
(5)貼合性の評価
(5-1)接着シートの作製
上記「(2-1)接着シートの作製」と同様にして、接着シートを作製した。
【0070】
(5-2)測定用サンプルの作製
接着シートの片面保護フィルム(PETフィルム)を剥離し、樹脂組成物層を1.0mm厚さの透明なポリカーボネート板(帝人株式会社製「PC-1151」、5.5インチ相当サイズ)へ真空ラミネートにより貼り合わせた。真空ラミネートは、温度25~50℃、圧力0.01~0.05MPa、真空引き60秒、加圧30秒で実施した。次いで、もう片面の保護フィルムを剥離し、樹脂組成物層に5.5インチの液晶パネルを上記真空ラミネートの条件と同条件にて貼り合わせた後、オートクレーブ処理を行い、UV露光することにより測定用サンプルを得た。オートクレーブは温度60℃、圧力0.6MPa、時間1時間にて実施した。UV露光は超高圧水銀ランプ光源を用いて、λ=365nmにおける積算光量が5,000mJ/cmとなるように実施し、測定用サンプルを得た。
【0071】
(5-3)評価方法
液晶パネルを点灯させ、目視にて表示ムラがあるか否かを確認した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
○:表示ムラがない。
×:表示ムラがある。
【0072】
(6)製膜性の評価
(6-1)接着シートの作製
上記(1)で得られた樹脂組成物を、乾燥後の厚さが100μmとなるように膜厚75μmのPETフィルム上に塗布し、130℃で5分間乾燥させた後、反対面に膜厚50μmのPETフィルムを設置し、両面にPETフィルムを備えた接着シートを得た。
【0073】
(6-2)測定用サンプルの作製
接着シートの両端をスリットした後、直径6インチφのABS管に100m長さを弛みなく巻き取り、ロール状態の測定用サンプルを得た。
【0074】
(6-3)評価方法
測定用サンプルを、ABS管の軸線が床面に対して水平となる状態で、温度23℃、湿度50%の室温環境下に7日間放置し、ロールの巻き状態を下記評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
○:接着シートが皺がない状態で巻かれており、ロール端部からの樹脂組成物のはみ出しもない。
△:ロール状態の接着シートに若干の皺(ゆるい皺)が見られるがロールから引き出した際には皺は残らず、またロール端部から樹脂組成物が若干はみ出しているが重なる接着シートへの移行は無く、引き出し可能であり、実使用上の問題はない。
×:ロール状態の接着シートに皺が見られロールから引き出した際に皺が残り、またロール端部から樹脂組成物がはみ出し、重なる接着シートへの移行があるため、引き出しが困難であり、実使用上に問題がある。
【0075】
(7)貯蔵弾性率(E’)の測定
(7-1)接着シートの作製
上記「(2-1)接着シートの作製」と同様にして、接着シートを作製した。
【0076】
(7-2)測定用サンプルの作製
[UV硬化前サンプル]
接着シートを幅5mm、長さ50mmにサイズカットし、両面の保護フィルム(PETフィルム)を剥離して測定用サンプルを得た。
[UV硬化後サンプル]
接着シートに超高圧水銀ランプ光源を用いて、λ=365nmにおける積算光量が5,000mJ/cmとなるようにUV露光することにより、樹脂組成物層を硬化させた。その後、両面の保護フィルム(PETフィルム)を剥離し、幅5mm、長さ50mmにサイズカットして測定用サンプルを得た。
【0077】
(7-3)測定方法
UV硬化前の測定用サンプルとUV硬化後の測定用サンプルについて、動的粘弾性測定装置(TA Instruments製 RSA-G2)を用いて貯蔵弾性率E’を測定した。測定条件は、昇温速度10.0℃/minにて温度範囲-50~100℃で実施し、周波数1Hzとした。25℃、50℃、100℃における貯蔵弾性率E’を表1に示す。なお、表中、「5000以下」とあるのは、樹脂組成物層が溶融してしまい測定できなかったことを意味する。
【0078】
<実施例2>
各成分の種類及び含有量を表1に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例2の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0079】
<実施例3>
各成分の種類及び含有量を表1に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例3の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0080】
<実施例4>
各成分の種類及び含有量を表1に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例4の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0081】
<実施例5>
各成分の種類及び含有量を表1に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例5の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0082】
<実施例6>
各成分の種類及び含有量を表1に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例6の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0083】
<実施例7>
各成分の種類及び含有量を表1に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例7の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例7の光硬化性樹脂組成物は他の実施例に比べて樹脂が柔らかく、耐発泡性の評価において、接着シートをポリカーボネート板へ貼り合せた際、その界面に若干の気泡が発生したが、実使用上は問題のないレベルであった。
【0084】
<実施例8>
各成分の種類及び含有量を表1に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例8の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0085】
<実施例9>
各成分の種類及び含有量を表1に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により実施例9の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0086】
<比較例1>
各成分の種類及び含有量を表2に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により比較例1の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0087】
<比較例2>
各成分の種類及び含有量を表2に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により比較例2の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0088】
<比較例3>
各成分の種類及び含有量を表2に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により比較例3の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
なお、比較例3の光硬化性樹脂組成物は、接着シートをポリカーボネート板に貼り合せると直ぐにその界面に気泡が発生した。
【0089】
<比較例4>
各成分の種類及び含有量を表2に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により比較例4の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0090】
<比較例5>
各成分の種類及び含有量を表2に記載されたとおりに変更した以外は実施例1と同様の方法により比較例5の光硬化性樹脂組成物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
なお、耐発泡性の評価において、接着シートのポリカーボネート板への貼合時に発泡は見られず、良好な貼付状態であった。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1、2の結果より、実施例1~9はいずれも、硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Pa以上であって、十分な硬度を備えていた。また、耐湿熱白化性と貼合性にも優れており、耐発泡性と耐湿熱性に優れ、且つ被着体への形状追従性にも優れることがわかった。これに対し、比較例1~5は水酸基含有(メタ)アクリレート系モノマーの含有量が少ないため耐湿熱白化性に劣り、比較例2,3は硬化物の100℃での引張貯蔵弾性率(E’)が1.0×10Paに満たないため耐発泡性に劣り、比較例4は25℃の未硬化状態の引張貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるため貼合性が悪く形状追従性に劣るものであった。
【0094】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2017年10月5日出願の日本特許出願(特願2017-195369)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の光硬化性樹脂組成物を含む接着シートは、特に車載用の液晶表示ディスプレイ等の接着剤としての産業上利用可能性を有する。