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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】義歯あるいは部分義歯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/36 20060101AFI20220509BHJP
   A61C 13/007 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A61C13/36
A61C13/007
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019507741
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017070001
(87)【国際公開番号】W WO2018029163
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2019-02-08
(31)【優先権主張番号】102016114825.3
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ファウスト,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ムーメンターラー,フィリップ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0080094(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02742907(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/041937(WO,A1)
【文献】特開2015-136520(JP,A)
【文献】特表2016-517308(JP,A)
【文献】国際公開第2013/124452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/36
A61C 13/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯および製造すべき義歯床を使用したデジタルデータに基づいた義歯あるいは部分義歯の製造方法であり、形成的あるいは切削的に作成される歯および/または形成的あるいは切削的に作成される義歯床(12)がそれらの歯(10)および義歯床(12)が相互に接触して余剰を有する接合材あるいは結合剤によって相互に接合あるいは結合されるそれら歯(10)および義歯床(12)の領域を除いて超過寸法を有するように加工し、その際歯と義歯床の間の結合領域にCADを使用して歯および/または義歯床の外形の超過寸法を追加するとともに歯肉縁に接続する接続領域は超過寸法を無くし、さらに結合剤によるリセスの填塞と、歯の挿入と、結合剤の硬化を実施し、リセスを填塞する結合剤の硬化後に歯肉縁(20)領域の接合材あるいは結合剤の余剰分をいわば自動的に同時除去しながら前記超過寸法(30,32)を除去することによって歯(10)および/または義歯床(12)を所要の原寸に、すなわち超過寸法が無くなるように加工、特に切削することを特徴とする方法。
【請求項2】
超過寸法が義歯床(12)と歯(10)の間の接合材あるいは結合剤の層厚と比べて小さいか、同等か、あるいは大きくなるようにし、特に接合材あるいは結合剤の層厚の3倍にすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
接合材あるいは結合剤を被包していて歯肉縁(20)を形成する縁部領域には超過寸法を設けないことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
義歯床(12)上の超過寸法(30,32)が歯(10)上の超過寸法(30,32)と比べて小さいか、同等か、あるいは大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれ
かに記載の方法。
【請求項5】
歯(10)を歯列あるいは複合歯として一括加工し、義歯床(12)に対して前庭方向から見て懸垂線を形成し、特に歯肉縁(20)の下方に延在させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
超過寸法を切削的に除去し、特に余剰接合材/結合剤と共に除去し、その際特に好適にはCAM支援による切削によって除去することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
複数の歯および製造すべき義歯床を使用したデジタルデータに基づいた義歯あるいは部分義歯を製造するための中間加工部材であり、形成的あるいは切削的に作成される歯および/または形成的あるいは切削的に作成される義歯床(12)がそれらの歯(10)および義歯床(12)が相互に接触して余剰を有する接合材あるいは結合剤によって相互に接合あるいは結合されるそれら歯(10)および義歯床(12)の領域を除いて超過寸法を有するように形成し、その際歯と義歯床の間の結合領域にCADを使用して歯および/または義歯床の外形の超過寸法を追加するとともに歯肉縁に接続する接続領域は超過寸法を設けず、さらに結合剤によるリセスの填塞と、歯の挿入と、結合剤の硬化を実施し、リセスを填塞する結合剤の硬化後に歯肉縁(20)領域の接合材あるいは結合剤の余剰分をいわば自動的に同時除去しながら前記超過寸法(30,32)を除去することによって歯(10)および/または義歯床(12)を所要の原寸に、すなわち超過寸法が無くなるように加工し得るよう、特に切削することを特徴とする義歯を製造するための中間加工部材。
【請求項8】
中間加工の状態において少なくとも義歯床(12)が、特にさらに歯(10)も0.05ないし1.0mmである超過寸法(30,32)を備え、その超過寸法を除去工程、特に切削によって目標値である原寸まで除去し、すなわち超過寸法が無くなるように加工し得ることを特徴とする請求項7記載の義歯を製造するための中間加工部材。
【請求項9】
中間加工の状態において義歯が接合/結合継ぎ目に隣接して歯肉縁(20)の領域内に余剰接合材/結合剤を有し、その箇所において少なくとも義歯床(12)が、さらに歯(10)も超過寸法(30,32)を備えないことを特徴とする請求項7または8記載の義歯を製造するための中間加工部材。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかに記載の中間加工部材を用いて製造される義歯であって、義歯床(12)の超過寸法(30,32)の領域と歯(10)の超過寸法(30,32)の領域の間の接続領域(36)を余剰接合材/結合剤によって填塞することを特徴とする義歯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は請求項1ないし7前文に記載の義歯あるいは部分義歯の製造方法、ならびに請求項14前文に記載の義歯に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯あるいは部分義歯の製造のために、義歯を樹脂部材製の義歯床と共に切削することが知られている。そのことは周知の方式において例えば「デジタルデンチャー」方法に基づいて実施され、例えば特許文献1によってその原理が知られている。
【0003】
問題点は歯肉縁が100%再生可能でなくまた2つの平面が上下に存在することである。数学的に硬直性の線に追随しなければならない。
【0004】
義歯床は通常樹脂材料から切削され、その際同時に歯用リセスを共に切削する必要がある。
【0005】
歯も同様に切削することができ、その際任意の材料、例えば複合材料あるいはセラミックから形成することができる。それに代えて既製の歯を挿入することもでき;その場合歯用リセスを歯の基底形状に適合させる。
【0006】
特許文献2により義歯床への歯の統合の改善が開示されており、それまで周知であった解決方式に比べて著しい進歩が達成された。
【0007】
歯は個別の歯として作成するか、または隣接する歯を圧着によって一体式に相互に結合させた歯列として作成することができる。
【0008】
個別の歯を使用する場合は、特許文献3によって開示されたトランスファーテンプレートを基礎にすることが好適である。
【0009】
歯と義歯床の間の結合はいずれにしても強固で特に永続的である必要がある。任意の適宜な接合材あるいは結合剤を使用することができ、例えば接着剤を使用することもできる。歯と義歯床の間の結合剤のための所与の間隙は、CADを使用して適宜に設計することによって結合剤あるいはその他の要求に応じて広範に調節することができる。一般的にその間隔が80μmないし200μm、通常は約100μmとなる。
【0010】
歯を挿入する前に歯用リセスの中に注入される結合剤が接着間隙を完全に填塞することを確立する必要がある。
【0011】
前記のことは、接着間隙が不完全に填塞されると残留する窪み部が実質的に無菌に保持されない点を除いても歯と歯用リセスの間の結合が喪失されるため重要である。
【0012】
従って一般的に余剰の結合剤を使用し、それが接着継ぎ目から漏出して後に除去する必要がある。
【0013】
不規則に漏出する余剰接着剤あるいは結合剤を通常手作業で除去する。しかしながら手持ち式切削工具を使用する手作業は手間がかかるばかりでなく、しばしば設計と実際の義歯の間の不整合をもたらし、特に歯肉縁の領域における表面の不良化を伴う。境界線が三次元に形成されるため例えば歯科技工士が或る場所で過剰に材料を削除した場合に前記境界線が点状あるいは部分的に移動し、そのことは手動の後加工に際して容易に起こり得ることである。
【0014】
逆に歯科技工士が歯肉縁を損傷しないように過度に用心して作業すると余剰結合剤が残留して美観的に不充分なものとなる。
【0015】
さらに、ラピッドプロトタイピング方法によって不明確に余剰材料を形成して後から除去することが提案されている。しかしながらこれによっても上述と同様な問題が生じ、そのためこの方法は普及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】欧州特許第1832245号(B1)明細書
【文献】欧州特許出願公開第2742907号(A1)明細書
【文献】国際公開第2015/055790号(A1)パンフレット
【文献】国際公開第2015/055790号(A1)パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って本発明の目的は、義歯の製造に関してより改善し、特に製造効率の観点から著しく改善するばかりでなく美観的な品質の観点からも大幅な進歩を達成する、請求項1ないし7前文に記載の義歯あるいは部分義歯の製造方法、ならびに請求項14前文に記載の義歯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の課題は本発明に従って請求項1,7および14によって解決される。好適な追加構成が従属請求項によって定義される。
【0019】
本発明によれば歯と義歯床の間の結合領域に原寸に対する超過寸法を仮想的に作成する。前記超過寸法はCADを使用して歯および/または義歯床の外形に対して例えば0.2mmを追加し、特に少なくとも歯肉縁の上方および下方の領域で例えば10mmの高さにわたって形成する。前記の超過寸法は歯と義歯床が相互に結合されるかあるいは接触する領域には形成されず、それ以外の領域に形成される。従って先行技術と同様に結合間隙が保持され、その際歯用リセスが結合剤によって充分に填塞され、従って歯を挿入した後に結合間隙が接合材あるいは結合剤によって充分に填塞されて空隙が存在しないようにすることが保証される。
【0020】
前記の超過寸法を除去する際は、余剰が存在する場合の接合材あるいは結合剤がいわば自動的に同時除去されることが極めて好適である。
【0021】
従って従来必要であった手間がかかる上に作業ミスが発生しやすい手動工程を省略することができる。
【0022】
歯の近心側および遠心側を圧着によって相互に結合した一体式の歯列の場合、歯用リセスへの歯の挿入を手作業で行うかまたは特許文献4に記載のトランスファーテンプレートによって実施することができる。
【0023】
その後結合剤を硬化させ、そのために例えば周知の締付け装置を使用するかまたはその他の任意の装置を使用することができ、それによって結合剤の確実な硬化を確立するために歯と義歯床の間で所要のプレス圧力を適正に保持し得るようにする。
【0024】
本発明に係る方法の好適な実施形態によれば硬化後に歯が装着された義歯床を再び切削装置内に固定する。硬化した余剰結合剤あるいは余剰接着剤を歯および/または義歯床の超過寸法と共に削除し、従って歯肉縁と歯と義歯床のいずれもが原寸になるようにする。
【0025】
変更された実施形態によれば再度固定する際の不整合が完全に排除され、それによれば歯列の装填と接着剤塗付ならびに切削装置内への歯列の装填を義歯床がワークピースホルダ内に固定された状態で実施する。
【0026】
そのことは停止した切削装置の扉を開放して容易に実施することができ、その際歯列の歯根領域を歯用リセス内に押圧する適宜な締付け装置を使用することも好適である。
【0027】
接着剤の硬化後に例えば0.3mmの超過寸法を削除し、従って歯、義歯床、および歯肉縁が原寸になるようにする。
【0028】
本発明によれば機械によって余剰接着剤を除去することによって懸垂線形状の歯肉縁がCADプログラム支援による設計と正確に同一となり、従って義歯の美観的な品質が大幅に改善されることが極めて好適である。
【0029】
本発明によれば余剰接着剤の手作業による除去に比べて著しく時間節約が可能になることも好適である。すなわち、超過寸法と余剰接着剤を切削工具によって短時間、例えば3分以内除去することができ、一方手作業による除去は30分ないし40分が見込まれていた。
【0030】
超過寸法を必ずしも義歯床と歯の両方に設ける必要はない。
【0031】
例えば既製の歯を標準寸法で、すなわち超過寸法を伴わずに使用し、義歯床を例えば0.15mmの超過寸法をもって形成することも可能である。それでも余剰接着剤の削除を機械によって効率的かつ迅速に実行することができる。
【0032】
ここで歯肉縁に接続する領域は超過寸法を無くしすなわち原寸にすることが好適である。この接続領域は例えば1mmあるいは2mmの高さにすることができ、その中に余剰接着剤の大きな部分が集積され従って簡単に除去することができる。
【0033】
本発明によれば、歯の超過寸法を形成してその後原寸に切削することによってトランスファーテンプレートの不使用による不正確な接着を補償し得ることが極めて好適である。従ってトランスファーテンプレートを用いないで歯あるいは歯列を歯用リセス内に挿入することができ、硬化後に第2の切削工程によって歯の原寸の正確な再現を達成することができる。
【0034】
本発明は個別の歯の適用に限定されるものではない。個別の歯に代えて複合歯あるいは歯列を使用することもでき、その際複合歯は単一部材あるいは複数部材式とすることができる。例えば14本の歯に相当する総義歯を2組の3本セットと8本の歯列からなる3部材(3+3+8)から構成することができる。すなわち本発明は歯、複合歯、あるいは歯列等の分割の方式によって限定されることはない。
【0035】
歯のみが超過寸法を有する場合、その部分(ならびに勿論歯肉縁の領域)のみを切削すれば充分である。そのことにより特に切削し易い合成歯を使用すれば著しく時間短縮可能になる。
【0036】
変更された実施形態によれば、歯肉縁に接続する例えば高さ10mmの限定された領域、すなわち歯肉縁の上側および下側のみが超過寸法を有して形成され第2の切削に際して原寸まで切削される。この解決方式においてはその領域のみが切削装置によって再加工され原寸まで切削される。
【0037】
この解決方式によれば0.05ないし0.1mmの極めて小さな超過寸法のみを形成することもできる。その場合超過寸法を有する歯は原寸に対して極めて小さな厚みの差を有するのみとなる。
【0038】
別の変更された実施形態によれば、標準的な方式によって接着される標準的な歯および標準的な義歯床を再度原寸に切削する。この場合切削を例えば義歯床上で6mmおよび歯面上で4mmの帯域に限定することができる。それによって著しく時間短縮される。他方で歯の損傷を防止するための独自の切削手法が必要になる。
【0039】
本発明によれば余剰結合剤が1つの工程内で自動的に除去されることが極めて好適である。それによって改善された品質と改善された歯肉縁領域の外観、さらに大幅な時間短縮が達成される。
【0040】
超過寸法、すなわち歯および/または義歯床の原寸と異なるように追加的に付加された層厚が必要に応じて広範に調整可能であることが理解される。例えばサブミリの厚みレンジが可能であり、特に0.05ないし0.8mm、特に好適には約0.3mmとすることができる。超過寸法は均一な層厚とすることができるが、不均一な層厚で超過寸法を形成することも可能である。
【0041】
その場合例えば咬合側あるいは切端側領域において超過寸法をより大きく選定することができる。その理由は、トランスファーテンプレートを用いずに歯を歯用リセス内に挿入する際に発生し得る歯用リセス内における歯の「傾倒」の形状的な影響である。
【0042】
歯用リセス内における傾斜状態が発生すると、その傾斜が義歯部材と歯の間の接触領域、すなわち基底領域において最も小さくなり、また基底領域から離れた歯の領域において最も大きくなることにつながる。それはすなわち切端あるいは咬合領域である。
【0043】
そのことは適宜な仮想的補正において考慮することができ、従って超過寸法を歯肉縁領域において最も小さくなるようにする。いずれにしても歯肉縁領域の直近の隣接領域には超過寸法を設けないことが好適である。従ってその場所において例えば歯肉縁から1mmの高さの帯域で歯および義歯部材のいずれもが原寸で存在する。
【0044】
義歯床の超過寸法は歯の超過寸法と直接的に相関しない。トランスファーテンプレートを用いない構成が歯の位置誤差を補償するだけで良いものである場合、義歯床を原寸ですなわち超過寸法を設けずに加工し、歯は超過寸法を設けて加工することができる。余剰接着剤を排除する目的だけである場合、変更された実施形態において歯の超過寸法を0あるいは略0まで低減することができる。
【0045】
切削装置は第2の切削に際して再び原寸に合わせて動作するように設定されるが、その際既に原寸である歯を損傷しないような配慮が必要であることが理解される。既製の歯を使用する場合は通常その歯が原寸で存在する。その場合超過寸法除去によって義歯床と余剰接着剤が削除され;従って再固定不整合あるいは再固定不正確性を後から補正することもできる。いずれにしても重要なことは結合剤の余剰分の除去である。
【0046】
結合剤としては歯用リセスと歯の間の間隙を填塞するために適した任意の適宜な材料を使用することができる。通常周知の歯科用接着剤を使用し、それが接着間隙から外に膨張するため硬化後に切削によって余剰分を除去する。
【0047】
歯肉縁に接続する超過寸法を設けない領域をここで接続領域と呼称する。その部分を完全に余剰接着剤で填塞することもでき、従って切削によって超過寸法と余剰接着剤を効果的に一括除去することができる。
【0048】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに利点は添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】原寸の義歯床内の歯を本発明に係る超過寸法を有する義歯床内の歯に仮想的に転換しそれを再び原寸に切削する方式を概略的に示した説明図である。
図2図1の超過寸法の形成を示した詳細図である。
図3図1および図2の本発明に係る方法の実施形態における超過寸法あるいは余剰結合剤の除去を示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明に係る方法により、図1に概略的に示された歯10と同様に概略的に示された義歯床12とからなる義歯を製造する。
【0051】
義歯床は歯を受容するためにいずれも歯用リセス14を備え、その際歯10の歯肉領域16がいずれも歯用リセス内に収容される。周知の方式によって各歯が略平坦で緩やかに凹状に形成された基底面18を備え、また歯用リセス14もその部分が対応して形成される。
【0052】
歯10と義歯床12の間の接続部を通常歯肉縁20と呼称する。歯肉縁は前庭側22と口腔側24の両方に存在する。前庭側から見て歯肉縁は周知の方式で懸垂線形状を形成し、また患者の口内、特に前歯の領域において典型的な赤/白接続部を形成する。
【0053】
図1に示された歯10と義歯床12の仮想モデルにおいてそれらの間の接続部に間隙26が形成される。その間隙は後に結合剤あるいは接着剤で填塞するために設定される。柔軟な接着剤を押圧する際にその接着剤が間隙26から押し出されて歯肉縁20の領域に漏出する。
【0054】
図1にはまず歯10と義歯床12の主要な部分が示されている。それは図1において左側に示された部分であり原寸となっている。
【0055】
一方図1の右側部分においては、歯10が超過寸法30と義歯床12が超過寸法32をそれぞれ備える。それらの超過寸法はCADによって仮想的に作成し、原寸に対して均一な層厚を備えた容積拡大を形成する。
【0056】
しかしながら歯10と義歯床12の間の接続領域36には超過寸法30あるいは32が存在しない。すなわち歯肉縁20は開放されているが、CADによる仮想モデルを実際に切削によって作成する場合図1には示されていない余剰接着剤によって被覆される。
【0057】
図2には余剰接着剤の形態が示されている。図2の上部にはまず図1の右側の図が示され、中央にそれの拡大図が示されている。この図面およびその他の図面において同一の構成要素は同じ参照符号によって示される。間隙26は完全に接着剤によって填塞される。しかしながら接着剤は間隙26から側方に膨張してそこに接着剤あるいは結合剤の余剰40を形成する。
【0058】
図示された実施例において余剰接着剤40が接続領域36を完全に填塞し、従って超過寸法32が余剰接着剤を介していわばシームレスで超過寸法30に接続する。
【0059】
図2にはさらに接続領域36と超過寸法の層厚の想定される寸法が記入されており、その際接続領域36は歯肉縁20から計って両側に0.6mmの高さ、すなわち合計1.2mmであり、また超過寸法30ならびに超過寸法32の層厚がいずれも約0.3mmである。
【0060】
余剰40が典型的な接着剤片として歯肉縁20に沿って厚くなったり薄くなったり変化することが理解される。
【0061】
図3に示されるように、本発明に従って余剰40のみでなく超過寸法32および超過寸法30を接続領域36と義歯床12と歯10から除去する。そのために使用する切削工具42の半径を歯肉縁20の輪郭に良好に追従し得る程度に小さく設定し、従って歯肉縁20を懸垂線状に正確に加工して充分な美観を提供する。
【0062】
第1の切削工程において残された超過寸法30と超過寸法32、すなわち該当する追加的材料が一工程で除去されることが理解される。
【0063】
第1の切削工程において使用される切削工具に応じて工具交換を実施することができ、すなわち第2の切削工程のためにより小さな直径を有する特別な切削工具を使用し得ることが理解される。
【0064】
本発明に係る義歯によれば歯の装着誤差を伴わない高い精度を特徴とし、特に装着のためにトランスファーテンプレートを用いない場合でも高い精度を達成し、その上美観的にも極めて良好な品質を提供する。
図1
図2
図3