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特許7068276インターカレートしたフィロケイ酸塩で強化されたポリ(エチレンテレフタラート)を含むポリマーナノコンポジット
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  • 特許-インターカレートしたフィロケイ酸塩で強化されたポリ(エチレンテレフタラート)を含むポリマーナノコンポジット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】インターカレートしたフィロケイ酸塩で強化されたポリ(エチレンテレフタラート)を含むポリマーナノコンポジット
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/44 20060101AFI20220509BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20220509BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C01B33/44
C08L67/02
C08K9/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019513903
(86)(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017073183
(87)【国際公開番号】W WO2018050770
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】16382430.3
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518106917
【氏名又は名称】インスティチュート テクノロジコ デル エンバラヘ、トランスポルテ イ ロジスティカ (イテエエネエ)
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルダ ベネイト、マリア
(72)【発明者】
【氏名】オルトゥーニョ マンシージャ、ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス レイグ、マリア デル カルメン
(72)【発明者】
【氏名】ガジュル ブランカ、ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】アウセヨ ロメロ、スサナ
(72)【発明者】
【氏名】サバレタ メリ、ハビエル
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/030850(WO,A1)
【文献】特開昭51-106147(JP,A)
【文献】特表2008-521752(JP,A)
【文献】特表2002-519995(JP,A)
【文献】特開2009-275187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層構造を有し、その層間にインターカレート剤を含むインターカレートしたフィロケイ酸塩であって、前記インターカレート剤が、274~30,000g/molの分子量のポリアジパートであり、前記フィロケイ酸塩が、イオン交換により変性されたフィロケイ酸塩以外である、インターカレートしたフィロケイ酸塩。
【請求項2】
インターカレート剤対フィロケイ酸塩の重量比が5:95~60:40である、請求項1に記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩。
【請求項3】
前記ポリアジパートが、1,000~5,000g/molの分子量を有する、請求項1又は2に記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩
【請求項4】
前記フィロケイ酸塩が、モンモリロナイト、セピオライト、ハロイサイト、ベントナイト、カオリナイト、ウォラストナイト、および雲母からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩
【請求項5】
前記フィロケイ酸塩が、ナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、およびカルシウムモンモリロナイトからなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩
【請求項6】
前記フィロケイ酸塩が、ナトリウムモンモリロナイトである、請求項5に記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩
【請求項7】
ポリマーナノコンポジットであって、
- ポリエチレンテレフタラート(PET)ポリマー;および
- 請求項1~6のいずれかに記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩
を含む、ポリマーナノコンポジット
【請求項8】
インターカレートしたフィロケイ酸塩とPETポリマーの、重量対重量の比が、0.2:99.8~20:80である、請求項7に記載のポリマーナノコンポジット
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩を調製するプロセスであって、
i) 前記フィロケイ酸塩を水および水とC ~C 10 アルコールとの混合物から選択される溶媒中に撹拌しながら分散させること;
ii) 前記分散液を超音波処理にかけること、
iii) 水とC ~C 10 アルコールとの混合物中で、前記分散液をポリアジパートのインターカレート剤と混合すること;
iv) 工程iii)の混合物を60℃~75℃の温度で17~24時間連続撹拌しながら保持すること;および
v) 工程iv)で得られた化合物を単離すること
を含む、プロセス
【請求項10】
PETポリマーと請求項1~6のいずれかに記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩とを溶融ブレンドすることを含む、請求項7または8に記載のPETナノコンポジットを調製するプロセス
【請求項11】
請求項1~6のいずれかに記載のインターカレートしたフィロケイ酸塩のPETの強化剤としての使用
【請求項12】
請求項7または8に記載のポリマーナノコンポジットで作製された製造品
【請求項13】
請求項7または8に記載のポリマーナノコンポジットから作製された製造品を調製するプロセスであって、
a) 前記フィロケイ酸塩を前記インターカレート剤中に分散させること;
b) 工程a)で得られた前記分散液をPETと混合すること;
c) 工程b)で得られた前記混合物の押出、射出、または射出延伸ブロー成形によって製造品を得ること;
を含み、
前記インターカレート剤が、274~30,000g/molの分子量のポリアジパートであり、前記フィロケイ酸塩がイオン交換によって変性されていない、プロセス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年9月15日に出願された欧州特許出願EP16382430.3号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、イオン交換反応によって変性されていないインターカレートしたフィロケイ酸塩、その調製プロセス、インターカレートしたフィロケイ酸塩を含有するポリマーナノコンポジット、および包装、特に食品包装用のポリマーナノコンポジットの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレンテレフタラート(PET)は、一部その高い透明性ならびに良好な機械的特性およびバリア特性のために、いくつかの包装用途が見出された。これは、包装材料産業に適用するための大量のPETの製造をもたらした。PETは、安定で非生分解性の材料であるため、PET系製品の環境への影響を低減することは難題となっていた。したがって、そのような材料の経済的および環境的影響を減らすための新しい方法を見つけることが非常に望ましい。
【0004】
ポリマーコンポジットを強化するためのナノ充填剤としてのナノ粒子の開発は、機械的特性およびバリア特性を改善し、ポリマー包装材料における重量、ひいては経済的および環境的影響を低減することを可能にする方法である。フィロケイ酸塩のような層状構造を有する充填剤は、それらが機械的特性およびバリア特性において改善をもたらすので最も研究されている(欧州特許第1787918A1号明細書、米国特許第2016024283号明細書)。
【0005】
欧州特許第1787918A1号明細書には、フィロケイ酸塩で強化された生分解性ポリエステル樹脂が記載されている。フィロケイ酸塩は、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、またはホスホニウムイオンで置換されている。アンモニウムイオンの例としては、とりわけ、テトラエチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、およびジメチルジオクタデシルアンモニウムが挙げられる。この樹脂は、改善されたバリア特性を有するが、破断点伸びのような機械的特性の改善に関しては考慮されていない。
【0006】
米国特許第2016024283A1号明細書は、透明性およびバリア特性を維持しながら、非スメクタイト型粘土材料のインターカレーションの結果として、PETにおいて改善された物理的特性を示すPETナノコンポジットを開示している。この論文では、バリア特性の改善は達成されていない。
【0007】
国際公開第2005030850A1号は、oligoPETを使用するインターカレートしたナトリウムモンモリロナイトの形成を記載している。このインターカレートをPETに添加してナノコンポジットを得、これを押出してフィルム、ボトルなどを得ることができるとされている。それにもかかわらず、本願の比較例8および例7に示される例1の再現において、得られたナノコンポジットは、非常に脆く、好ましくない熱的特性を有するので、ボトルのようないくつかの物品の製造におけるそれらの使用は不可能である。
【0008】
多くの研究がナノクレイ-PETコンポジットのバリアおよび機械的性能に焦点を合わせてきたが、改善はほとんど報告されていない。さらに、ポリマー材料上のフィロケイ酸塩粘土の分散を改善するために一般的に使用される変性剤は、食品との接触には好適ではないか、またはPETの加工温度において熱的に安定ではない。これらの変性剤の分解は、ポリマーマトリックスの劣化をもたらし、コンポジットの機械的特性およびバリア特性に悪影響を及ぼし、溶融化合物の粘度の低下により加工不可能な材料さえももたらす。
【0009】
上記の問題を克服するために、本発明は、改善された機械的特性およびバリア特性を有するPETナノコンポジットをもたらすためのナノ充填剤として使用する準備ができている新しい熱安定性粘土に関する。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、未処理のフィロケイ酸塩中に274~30,000g/molの分子量のポリエステル、特にポリアジパートまたはポリフタラートをインターカレートすることにより、イオン交換反応により変性された、例えばヘキサデシルトリメチルアンモニウムカチオンにより変性されたフィロケイ酸塩よりも高温でより安定なインターカレートしたフィロケイ酸塩が製造されることを見出した。したがって、本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩は、劣化することなくより高い温度で加工することができ、これはPETのような高融点を有するポリマーの特性を改善するために使用されるときに有利である。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様は、小板の形態の層状構造を有し、小板間にインターカレート剤を有するフィロケイ酸塩に関し、インターカレート剤は、274~30,000g/mol、または1,000~20,000g/mol、または1,500~20,000g/mol、または2,500~20,000g/mol、または1,500~12,000g/mol、または2,500~12,000g/mol、または1,000~5,000g/mol、または1,500~2,500g/molの分子量のポリエステルであり、フィロケイ酸塩は、イオン交換反応によって変性されたフィロケイ酸塩以外のものである。
【0012】
さらに、本発明者らは、ポリアジパートまたはポリフタラートでインターカレートされたフィロケイ酸塩のポリエチレンテレフタラート(PET)ポリマーへの組み込みが、改善された機械的特性だけでなく向上したバリア特性も示す熱劣化抵抗を維持するPETナノコンポジットをもたらすことを見出した。
【0013】
したがって、本発明の別の態様は、ポリエチレンテレフタラート(PET)ポリマーと上で定義したようにインターカレートしたフィロケイ酸塩とを含むポリマーナノコンポジットに関する。
【0014】
本発明のポリマーナノコンポジットが優れたバリア特性を示すという事実は、ボトルの壁を通る水蒸気の損失、特に包装内のCOレベルを保つためのソフトドリンクの損失が最小限に抑えられるので、水性飲料(例えば、水、ジュース、牛乳)の貯蔵に対するその使用に有利である。良好なバリア特性は、食品包装においても有利である。食品容器は、意図された貯蔵寿命のために食品を良好な状態に保持するために、酸素および水蒸気の拡散に対して良好なバリア特性を示さなければならない。そのため、バリア特性の改善は、食品の貯蔵寿命の延長をもたらし得る。加えて、本発明のポリマーナノコンポジットは、優れた機械的強度およびより低い剛性を示し、これは、ポリマーナノコンポジットの変形および亀裂を回避しながら、長期貯蔵包装にとって有利である。当技術分野では、上で定義したようにポリエステル、特にポリアジパートまたはポリフタラートでインターカレートされたフィロケイ酸塩がPETに優れた機械的特性およびバリア特性を付与し得ることを示唆していない。
【0015】
本発明の別の態様は、上で定義したようにインターカレートしたフィロケイ酸塩を調製するプロセスであって、
i)フィロケイ酸塩を水および水とC~C10アルコールとの混合物から選択される溶媒中に撹拌しながら分散させること;
ii)任意に、分散液を超音波処理にかけること;
iii)分散液を、上で定義したようにポリエステルであるインターカレート剤、特にポリアジパート、ポリフタラート、およびそれらの混合物から選択されるインターカレート剤と混合し、任意に水とC~C10アルコールとの混合物に溶解すること;
iv)工程iii)の混合物を60℃~75℃の温度で17~24時間連続撹拌しながら保持すること;ならびに
v)工程(iv)で得られた化合物を単離すること
を含むプロセスに関する。
【0016】
このため、本発明はまた、上記プロセスにより得られるインターカレートしたフィロケイ酸塩に関する。
【0017】
本発明の別の態様は、上で定義したようにPETナノコンポジットを調製するプロセスであって、上で定義したようにPETとインターカレートしたフィロケイ酸塩とを溶融ブレンドすることを含む、プロセスに関する。
【0018】
本発明の別の態様は、PETの強化剤としての、上で定義したようにポリエステル、特にポリアジパートまたはポリフタラートでインターカレートされたフィロケイ酸塩の使用に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、上で定義したようにPETナノコンポジットから作製された製造品を調製するプロセスであって、
a)フィロケイ酸塩をインターカレート剤中に分散させること;
b)工程a)で得られた分散液をPETと混合すること;
c)工程b)で得られた混合物の押出、射出、または射出延伸ブロー成形によって製造品を得ること;
を含み、
インターカレート剤が、274~30,000g/mol、または1,000~20,000g/mol、または1,500~20,000g/mol、または2,500~20.000g/mol、または1,500~12,000g/mol、または2,500~12,000g/mol、または1,000~5,000g/mol、または1,500~2,500g/molの分子量のポリエステルであり、フィロケイ酸塩が、イオン交換反応によって変性されない、プロセスに関する。
【0020】
本発明はまた、上記のプロセスのうちのいずれか1つによって得られるPETナノコンポジットに関する。
【0021】
本発明はまた、本発明のPETナノコンポジットから作製された任意の製造品に関する。物品は、押出などの当技術分野で既知の方法によって製造することができる。PETナノコンポジットの改善された機械的特性およびバリア特性は、それを容器、バッグ、またはフィルムとしてのその使用に特に有用なものにする。したがって、本発明の別の態様は、上で定義したようにPETナノコンポジットで作製されたボトル、容器、バッグ、またはフィルムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】インターカレート剤(PAまたはPF)を用いた、フィロケイ酸塩(精製ナトリ ウムモンモリロナイト、BYK AdditivesからのNanofil116(登録商標))のX線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「PETナノコンポジット」は、その中に組み込まれたナノ粒子の形態のナノスケール材料を含有するPET材料を指す。「ナノ粒子」は、0.1~100nmの範囲内など、ナノメートルサイズの範囲内の少なくとも1つの寸法を有する粒子に関する。本発明の場合、ナノスケール材料は、ラメラの厚さが約1~2nmである本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩である。
【0024】
本明細書で使用されるとき、用語「フィロケイ酸塩」は、層状シリカート、すなわち層の構造を有するシリカート、特に天然のカルシウムまたはナトリウム粘土を指す。より具体的には、それは、SiO四面体が2次元シート内で互いに結合し、2:1または1:1の比でAlOまたはMgO八面体の層と縮合している層状シリカートを指す。負に帯電した層は、層を一緒に保持することができる正のカチオン(例えば、Na、K、Ca2+、Mg2+)を引き付ける。本発明の範囲内で使用され得る非限定例のフィロケイ酸塩は、セピオライト、ハロイサイト、ベントナイト、カオリナイト、ウォラストナイト、雲母、ナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイトである。特定の実施形態では、フィロケイ酸塩は、ナトリウムモンモリロナイトである。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「イオン交換反応によって変性されていないフィロケイ酸塩」は、それらの正のカチオン(例えば、Na、K、Ca2+、Mg2+)が変性剤としてのアルキルアンモニウムカチオンによって交換されないフィロケイ酸塩を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「インターカレートした」およびその単語の変形は、インターカレート剤と呼ばれる材料がフィロケイ酸塩小板に挿入されて、小板を完全に分離することなく層間間隔を増加させる層状フィロケイ酸塩の配置を指す。本明細書で使用されるとき、用語「インターカレート剤」は、層間間隔を増加させるために層状フィロケイ酸塩の小板の間に配置される材料を指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリエステル」は、それらの主鎖中にエステル官能基を含有するポリマーを指す。本発明の目的に有用なポリエステルの例は、ポリアジパートおよびポリフタラートである。
【0028】
本明細書で使用されるとき、用語「分子量」は、平均分子量を指し、これはこの種のポリマーにおいて使用される一般的な分子量測定値である。
【0029】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0030】
上記のように、本発明の第1の態様は、274~30,000g/mol、または1,000~20,000g/mol、または1.500~20,000g/mol、または2,500の~20,000g/mol、または1,500~12,000g/mol、または2,500~12,000g/mol、または1,000~5,000g/mol、または1,500~2,500g/molの分子量のポリエステルでインターカレートされたフィロケイ酸塩であって、イオン交換によって変性されていない、フィロケイ酸塩に関する。
【0031】
本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の特定の実施形態では、インターカレート剤対フィロケイ酸塩の重量比は、5:95~60:40、特に10:90~40:60、より具体的には15:85~20:80である。別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、フィロケイ酸塩の隣接する小板間の間隔は、少なくとも3Å、特に3~14.52Åに拡大される。
【0032】
本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、ポリエステルは、ポリアジパート、ポリフタラート、またはそれらの混合物から選択される。
【0033】
本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、ポリエステルは、ポリアジパートである。
【0034】
本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、ポリエステルは、ポリフタラートである。
【0035】
別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、ポリアジパートまたはポリフタラートは、1,000~5,000g/mol、特に1,500~2,500g/molの分子量を有する。
【0036】
ポリアジパートは、アジピン酸のポリエステル、1つ以上のジオール、および任意に1つ以上の一価アルコールである。ポリフタラートは、フタル酸のポリエステル、1つ以上のジオール、および任意に1つ以上の一価アルコールである。特に、ジオールは、直鎖状または分岐状(可能な場合)のC~C14ジオール、より具体的にはC~C10ジオールである。好適なジオールの特定の例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。また、特に、一価アルコールは、直鎖状または分岐状(可能な場合)のC~C14アルコール、より具体的にはC~C10アルコールである。好適な一価アルコールの特定の例としては、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2,3-ジメチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特に、ポリアジパートは、アジピン酸と1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、および2-エチル-1-ヘキサノールとのポリエステルである。また特に、ポリフタラートは、ポリ(エチレングリコールフタラート)である。
【0037】
本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、フィロケイ酸塩は、モンモリロナイト、セピオライト、ハロイサイト、ベントナイト、カオリナイト、ウォラストナイト、および雲母からなる群から選択される。特に、フィロケイ酸塩は、ナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、およびカルシウムモンモリロナイトからなる群から選択される。より具体的には、フィロケイ酸塩は、ナトリウムモンモリロナイトである。
【0038】
本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の調製のために、好適な溶媒上のフィロケイ酸塩の懸濁液は、好適な溶媒中のインターカレート剤の溶液と混合される。特に、混合に先立って、フィロケイ酸塩分散液を激しく撹拌し、任意に超音波処理にかける。
【0039】
好適な溶媒の例としては、水、C~C10アルコール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。C~C10アルコールは、1~10個の炭素原子を含有する任意の一価アルコールまたはそれらの混合物であり得る。特に、アルコールは、C~Cアルコールである。好適なC~Cアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどが挙げられる。本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の調製プロセスの特定の実施形態では、溶媒は、水とエタノールとの混合物である。
【0040】
したがって、上記のように、インターカレートしたフィロケイ酸塩の調製プロセスは、
i)フィロケイ酸塩を水および水とC~C10アルコールとの混合物から選択される溶媒中に撹拌しながら分散させること、
ii)任意に、分散液を超音波処理にかけること;
iii)分散液を、上で定義したようにポリエステルであるインターカレート剤、特にポリアジパート、ポリフタラート、およびそれらの混合物から選択されるインターカレート剤と混合し、任意に水とC~C10アルコールとの混合物に溶解すること;
iv)工程iii)の混合物を60℃~75℃の温度で17~24時間連続撹拌しながら保持すること;ならびに
v)工程(iv)で得られた化合物を単離すること
を含む。
【0041】
特定の実施形態では、工程i)における激しい撹拌は、600~3000rpmの速度で、特に90~150分間行われる。より特定の実施形態では、工程i)における激しい撹拌は、900rpmおよび70℃で120分間行われる。
【0042】
超音波処理の音波の強度、およびそれらの周波数は、使用される出発成分の性質に合わせて調整することができ、これは場合ごとに予備試験によって容易に決定することができる。特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、超音波の周波数は、20~35kHzである。特に、超音波処理は、15~30分間行われる。また、特に超音波処理は、40~50℃の温度で行われる。
【0043】
インターカレートしたフィロケイ酸塩の調整プロセスの別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、工程iv)における撹拌は、600~3000rpmの速度で行われる。
【0044】
別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、単離工程は、得られたインターカレートしたフィロケイ酸塩を精製することを含む。特に、インターカレートしたフィロケイ酸塩は、過剰の非インターカレートしたポリエステル、特に非インターカレートしたポリアジパート(PA)またはポリフタラート(PF)を除去するために、工程iv)で得られた懸濁液を濾過すること、それに水:エタノール溶液を添加することによって単離された固体、すなわちインターカレートしたフィロケイ酸塩を洗浄すること、および混合物を50℃~70℃の温度で撹拌しながら維持することによって精製される。懸濁液を濾過し、得られた精製インターカレートしたフィロケイ酸塩を最後に乾燥させる。
【0045】
乾燥工程は、70℃~90℃の温度で行うことができる。それは、従来のオーブン中で、凍結乾燥により、噴霧化により、または噴霧乾燥により行うことができる。一般に、乾燥プロセスは、約15~約20時間、特に約17時間かかる可能性がある。乾燥工程後、所望の粒度分布を有する粒状固体を得るために、インターカレートしたフィロケイ酸塩を続いて粉砕して篩い分けすることができる。一般に、63ミクロン未満、より具体的には45ミクロン未満の粒度を有する生成物を得るために粉砕および篩分けされる。
【0046】
本発明はまた、上に開示されたプロセスの特定のおよび/もしくは好ましい実施形態のいずれかまたはそれらの組み合わせによって得ることができるインターカレートしたフィロケイ酸塩に関する。
【0047】
上述のように、本発明の別の態様は、ポリエチレンテレフタラート(PET)ポリマーと上で定義したようにインターカレートしたフィロケイ酸塩とを含むポリマーナノコンポジットに関する。
【0048】
本発明のPETナノコンポジットの別の特定のものにおいては、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、インターカレートしたフィロケイ酸塩対PETポリマーの重量対重量比は、0.2:99.8~20:80、特に1:99~18:82、より具体的には2:98~16:84である。
【0049】
本発明のPETナノコンポジットの他の特定のものにおいては、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、インターカレート剤は、ポリアジパート、ポリフタラート、またはそれらの混合物から選択される。
【0050】
本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、インターカレート剤は、ポリアジパートである。
【0051】
本発明のインターカレートしたフィロケイ酸塩の別の特定の実施形態では、任意に上で定義された特定の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、インターカレート剤は、ポリフタラートである。
【0052】
最終製品の特性を調整するために、本発明のPETナノコンポジットは、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐水化剤、難燃剤、末端封鎖剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、加工助剤、鎖延長剤、耐衝撃性改善剤、紫外線安定剤、防曇剤、および充填剤などのさらなる添加剤を含むことができる。
【0053】
帯電防止剤の例としては、エトキシル化脂肪酸エステルが挙げられる。可塑剤の例としては、クエン酸エステル、グリコール、およびポリグリコールが挙げられる。酸化防止剤の例としては、フェノール、リン酸塩、およびトコフェロールが挙げられる。加工助剤の例としては、アクリルポリマーが挙げられる。鎖延長剤の例としては、アクリルコポリマーが挙げられる。耐衝撃性改善剤の例としては、エチレン、アクリルコポリマー、およびポリマーが挙げられる。紫外線安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、およびピペリジン誘導体が挙げられる。防曇剤の例としては、エトキシル化脂肪酸エステルが挙げられる。
【0054】
上述のように、対応するナノコンポジットは、PETポリマーと上で定義したようにインターカレートしたフィロケイ酸塩とを溶融ブレンドすることによって得ることができる。インターカレートしたフィロケイ酸塩成分の添加は、ポリマーが溶融され添加剤と混合される全ての慣用の混合機中で行うことができる。好適な機械は、当業者に既知である。それらは、主にミキサー、混練機、および押出機である。このプロセスは、加工中に添加剤を導入することにより押出機中で行うのが好ましい。特に好ましい加工機は、一軸スクリュー押出機、逆回転および共回転二軸スクリュー押出機、遊星歯車押出機、リング押出機、または共混練機である。より特に好ましくは、共回転二軸スクリュー押出機が好ましい。好適な押出機は、1~60スクリュー直径、好ましくは35~48スクリュー直径のスクリュー長を有する。スクリューの回転速度は、好ましくは毎分10~600回転(rpm)、例えば25~300rpmである。最大処理量は、スクリュー直径、回転速度、および駆動力に依存する。
【0055】
特定の実施形態では、溶融ブレンドは、230℃~280℃、特に260℃の温度で行われる。
【0056】
あるいは、上記のように、上で定義したようにPETナノコンポジットから作製される製造品の調製のための本発明のプロセスの別の態様によれば、最初に、最終包装の調製のための原料としてPETインターカレートしたフィロケイ酸塩ナノコンポジットを製造する代わりに、フィロケイ酸塩は、最初にPAまたはPFのようなインターカレート剤中に分散させることができ(工程a)、混合物を最終製造品の調製プロセスでPETと直接混合することができる(工程b)。
【0057】
本発明のこの態様の特定の実施形態では、工程b)、すなわち工程a)で得られた分散液とPETとの混合は、配合工程による溶融混合によって行うことができる。
【0058】
別の特定の実施形態では、工程b)は、工程c)を実施するのに使用される装置に分散液を直接供給するためにメルトポンプを使用することによって行うことができる。
【0059】
混合プロセスは、押出、射出、または射出延伸ブロー成形によって行うことができる。したがって、インターカレート剤中に分散したフィロケイ酸塩を主流ポリマー中に導入するための計量システムが必要とされる。液体成分の場合、計量装置は、液体を例えば押出機の主入口で主ポリマー顆粒を有する供給物と一緒に、圧力なしで、または押出機に沿って位置する圧力下のポイントで導入する1つ以上の計量ポンプを備えるシステムであり得る。
【0060】
カラーコンセントレートまたは液体着色剤は、1~3%、場合によっては最大8%の減量率で樹脂プレフォームに組み込むことができる。このような製造システムでは、液体着色剤は、所望の減量率で供給するように較正された液体カラーポンプを使用して射出成形機のスロートに供給される。インターカレートしたフィロケイ酸塩の分散液は、蠕動計量ポンプを使用して、射出、押出、またはブロー成形機の供給スロートに注入することができ、動作中に直接供給することができる。これにより、配合切り替え時間が短縮され、ホッパー内の樹脂を空にする必要を排除することができる。液体分散液は、粒状物の表面に付着し、スクリューによって運ばれ、溶融され、それをポリマーマトリックス中に組み込み、プレフォーム中に注入される。
【0061】
本発明はまた、上に開示されたプロセスの特定のおよび/もしくは好ましい実施形態のいずれかまたはそれらの組み合わせによって得ることができるPETナノコンポジットに関する。
【0062】
上述のように、本発明はまた、本発明のPETナノコンポジットから作製された任意の製造品に関する。特に、本発明は、本発明のPETナノコンポジットから作製されたプレフォームおよびボトルを提供する。特に、これらの物品は、射出延伸ブロー成形(ISBM)によって製造することができる。射出延伸ブロー成形は、二機プロセスでも一機プロセスでも行うことができる。一機プロセスでは、全ての工程が同じ機械で行われる。したがって、冷却工程、輸送工程、および再加熱工程は、延伸工程に必要な温度プロファイルに従ってプレフォームをわずかに再加熱することからなる単一の調整工程によって置き換えられる。二機プロセスが一般に好ましく、それは2つの別々の場所で行われる。それは、
i)プレフォームの調製であって、
-マルチキャビティ金型上に射出成形によってプレフォームを提供する工程;
-プレフォームを室温に冷却する工程;
を含む、調製;
ii)ボトルなどの最終製造品の調製であって:
-プレフォームをブロー成形機に輸送する工程;
-プレフォームについての所定の温度プロファイルに従って、ブロー成形機内で、特に反射放射熱オーブン内でプレフォームを再加熱する工程;
-加熱されたプレフォームを平衡ゾーンに通して、熱をプレフォーム壁を通して均一に分散させる工程;
-センターロッドによってプレフォームを軸方向に延伸する工程;
-延伸されたプレフォームを高圧空気によって放射状に配向する工程
を含む、調製を含む。
【0063】
二機プロセスは、一機プロセスよりも優れた特定の利点を示す。例えば、プレフォーム物品は、容器よりも小さくて、よりコンパクトである。したがって、多数の容器を輸送することと比較して、多数のプレフォーム物品を輸送することは、より簡単でより費用がかからない。この事実は、生産者がある場所でプレフォーム物品を作製し、第2の場所で容器を製造することを促進し、全体的な生産コストを削減する。したがって、二機プロセスの1つの利点は、それが製造の各段階の別々の最適化を容易にすることである。さらに、二機プロセスは、より生産的であり、大量生産用途についてのコスト削減のためのより多くの機会を提供することが認識されている。
【0064】
本発明により調製された物品は、様々な食品および非食品用途に使用することができる容器およびボトルである。食品用途は、水、ジュース、油、香料入りの炭酸飲料、および炭酸飲料、等張飲料、乾燥製品、生乳、および固形食品の貯蔵を含む。非食品用途は、化粧品および医薬品、食器洗浄用または洗剤用洗剤、ならびに乾燥製品の貯蔵を含む。
【0065】
説明および特許請求の範囲を通して、「含む」という語およびその語の変形は、他の技術的特徴、添加物、構成要素、または工程を排除することを意図していない。以下の例および図面は、説明のために提供されるものであり、それらは、本発明を限定することを意図するものではない。図面に関連し、請求項の括弧内に配置された参照符号は、単に請求項の了解度を高めることを試みるためのものであり、請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の特定のおよび好ましい実施形態の全ての可能な組み合わせを網羅する。
【0066】

材料
PETペレット(CRグレード)は、Novapet S.Aから供給された。これは、射出延伸ブロー成形用途の標準グレードである。シートとしても加工することができる。
【0067】
4%~9%の含水量を有する精製ナトリウムモンモリロナイト(BYK AdditivesからのNanofil116(登録商標)、これからはN116)。ナトリウムモンモリロナイトのCECは、116ミリ当量/100gであった。
【0068】
Cymit Quimica,S.L.によって供給された純度99%のヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HDTA)ブロミド。
【0069】
ポリアジパート(PA):アジピン酸と1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、および2-エチル-1-ヘキサノールとのポリエステル(Glyplast 206/5NL、Condensia Quimica S.L.により供給)。
【0070】
ポリフタラート(PF):ポリ(エチレングリコールフタラート)およびジイソデシルフタラート(Glyplast 392、CondensiaQuimica S.L.により供給)。
【0071】
OligoPETは、Novapet S.A.によって供給されたポリエチレンテレフタラートリゴマーである(これからは、OPET)。
【0072】
Alcoholes Montpletから供給されたエタノール。
【0073】
例1.ポリアジパート(PA)またはポリフタラート(PF)をインターカレートしたモンモリロナイトの調製。
例1a:PA(N116_PA)でインターカレートしたモンモリロナイト
PAをインターカレートしたモンモリロナイトの製造のために、20グラムの精製ナトリウムモンモリロナイトを、1リットルのエタノール/水(60/40v/v)の混合物中に70℃で、特に900rpmの速度で120分間激しく撹拌しながら分散させた。次いで、混合物を、特に20kHzで20分間、45℃で超音波処理した。
【0074】
次いで、30グラムのPAを400mlのエタノール/水(60/40v/v)の混合物中に70℃で溶解させた。その後、予め調製したフィロケイ酸塩懸濁液を2時間ゆっくり添加し、溶液を600rpmで連続的に撹拌しながら少なくとも17時間(70℃で)保持した。
【0075】
過剰の非インターカレートしたPAを除去するために、得られたインターカレートしたフィロケイ酸塩の精製を以下のように行った。フィロケイ酸塩懸濁液を真空濾過した。次いで、1Lの40/60容量の水/エタノールの新たに調製した溶液を60℃で、濾過したフィロケイ酸塩に添加し、続いて懸濁液を再び濾過した。フィロケイ酸塩を70℃で少なくとも12時間乾燥した。最後に、フィロケイ酸塩を粉砕し、45ミクロン以下の粒度に篩い分けした。
【0076】
例1b:PF(N116_PF)をインターカレートしたモンモリロナイト
PFをインターカレートしたモンモリロナイトの製造のために、PFを用いた以外は同様の手順に従った。さらに、PFが水中でより低い溶解度を有するので、精製工程と同様にPFを溶解するために使用したエタノールと水との割合は70/30v/vであった。
【0077】
比較例1:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムカチオン(N116_1HDTA)で変性されたモンモリロナイトの調製
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムカチオンで変性されたモンモリロナイトを製造するために、20グラムの精製ナトリウムモンモリロナイトを70℃の水に激しく撹拌しながら分散させた。次いで、200mlのエタノールを添加し、混合物を特に20kHzで20分間超音波処理にかけた。
【0078】
8.46グラムの臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを500mLのエタノールに70℃で溶解し、フィロケイ酸塩懸濁液をそれにゆっくり添加した。次いで、溶液を少なくとも17時間(70℃で)連続撹拌しながら保持した。水和カチオン(モンモリロナイト層の内側)とアルキルアンモニウムイオンとの間のカチオン交換反応をエタノール水溶液中で行った。
【0079】
変性フィロケイ酸塩の精製は、分散液を真空濾過し、濾過したフィロケイ酸塩に1Lの50/50容量の水/エタノールの新鮮な溶液を添加することにより行った。混合物を少なくとも1時間70℃で撹拌しながら維持した。濾過した溶液が60μS/cm未満の導電率を有するまでこの手順を繰り返した。
【0080】
懸濁液を濾過した後、フィロケイ酸塩を70℃で少なくとも12時間乾燥した。最後に、フィロケイ酸塩を粉砕し、45ミクロン以下の粒度に篩い分けした。
【0081】
得られた変性フィロケイ酸塩は、1CECのHDTAを有するN116であった。
【0082】
比較例2:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムカチオンで変性され、PA(N116_1HDTA_PA)をインターカレートしたモンモリロナイトの調製
比較例1で得られた1CECのHDTAを有する20gのN116を、900rpmおよび50℃で2時間、激しく撹拌しながら1Lのエタノール/水(60/40v/v)に分散させた。
【0083】
次いで、22gのPAを45℃で400mlのエタノール/水(60/40v/v)の混合物に溶解した。次いで、予め調製したフィロケイ酸塩懸濁液を撹拌しながら30分間ゆっくり添加し、混合物を全ての懸濁液が添加されるまで数回超音波処理にかけた。次いで、溶液を少なくとも17時間連続撹拌しながら70℃に保持した。精製、粉砕、および篩い分けの工程は、例1aと同様にして行った。
【0084】
比較例3:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムカチオンで変性され、PF(N116_1HDTA_PF)をインターカレートしたモンモリロナイトの調製
インターカレーションのプロセスは、比較例2に記載したプロセスと同じであったが、インターカレーションプロセスおよび70/30v/vである精製工程においてこの可塑剤を溶解するのに使用したエタノール/水の割合が異なる。精製、粉砕、および篩い分けの工程は、例1aと同じであった。
【0085】
例2:インターカレート剤および/または変性剤を用いたフィロケイ酸塩の熱特性評価
例1aおよび1bで得られたフィロケイ酸塩中のインターカレート剤の存在をTGAによる熱特性評価で検証し(表1参照)、その安定性を比較例1、2、および3で得られたフィロケイ酸塩と比較した。
【0086】
インターカレート剤(PAまたはPF)、変性剤(HDTA)、および両方の混合物を用いて調製したフィロケイ酸塩は、言及した有機化合物が分解する範囲に対応して、200~600℃の間で重量変化を示した。例1a、1b、ならびに比較例1、2、および3の変性および/またはインターカレートしたフィロケイ酸塩の熱安定性を評価するために、1%のフィロケイ酸塩が失われたときの初期分解温度(T )の値を決定した。これらの結果は、インターカレートしたフィロケイ酸塩が、HDTAで変性され、PAまたはPFのいずれかでインターカレートしたフィロケイ酸塩よりも安定であり、さらにHDTAのみで変性されたものよりもさらに安定であることを確認する。したがって、インターカレート剤としてのPAおよび/またはPFの使用は、単独でまたはインターカレート剤と組み合わせてのいずれかで、HDTAと比較して粘土の耐熱性を高める。PETの加工温度は、約260℃であり、これはそれに由来する分解生成物を製造することなくインターカレートしたフィロケイ酸塩と共に作用することを可能にするので、これは好ましい結果である。
【0087】
【表1】
【0088】
図1において、インターカレート剤(PAまたはPF)を含むフィロケイ酸塩(N116)のX線回折パターンを示す。
【0089】
例3.PET-フィロケイ酸塩ナノコンポジットの調製
ナノコンポジットを製造するために使用される変性および/またはインターカレートしたフィロケイ酸塩の百分率は、それらの有機含有量(インターカレート剤および変性剤として表1に示されている)に依存して変化し、これにより無機最終含有量は、2%である。
【0090】
例3a:PAをインターカレートしたPET-モンモリロナイト(PET+2.44%N116_PA)
例1aで調製したインターカレートしたフィロケイ酸塩、およびNovapetからのPETグレードCRを用いて、PETナノコンポジットサンプルを得た。
【0091】
この目的のために、二軸スクリュー押出機(Coperion GmbH製ZSK 26MC)を使用してPET樹脂(Novapet製のCR)に例1aで調製した2重量%のフィロケイ酸塩(無機含有量として計算して2.44%のN116_PAに相当)を添加することによって混合物を調製した。混合物をスクリュー回転数300rpm、平均樹脂温度260℃、樹脂供給速度10kg/hで溶融混練して所望の樹脂複合材料を得た。得られた樹脂複合材料をストランドとして押出し、急速に水冷してストランドカッターを使用してペレットとして得た。サンプルを結晶化させ、最終複合材料中の含水量を調べて、その後の加工工程における劣化を回避した。
【0092】
円形断面試験片(40mm×0.6mm)を、射出成形機(HM45/210、Wittmann Battenfeld製)を使用して、それぞれ26℃および9秒に設定した金型温度および冷却時間、275℃の平均PET溶融温度、ならびに20秒の全体のサイクル時間で射出成形した。
【0093】
例3b:PFをインターカレートしたPET-モンモリロナイト(PET+2.41%N116_PF)
例1bで調製したインターカレートしたフィロケイ酸塩(2.41%のN116_PFを含む)、およびNovapetからのPETグレードCRを用いた以外は、例3aと同じプロセスを行った。
【0094】
比較例4:1CECのHDTAを有するPET-モンモリロナイト(PET+2.78%N116_1HDTA)
比較例1で調製した変性フィロケイ酸塩(2.78%のN116_1HDTAを有する)、およびNovapetからのPETグレードCRを用いた以外は、例3aと同じプロセスを行った。
【0095】
比較例5:1CECのHDTAおよびPAを含むPET-モンモリロナイト(PET+3.50%N116_1HDTA_PA)
比較例2で調製した挿入および変性フィロケイ酸塩(3.50%のN116_1HDTA_PAを有する)、およびNovapetからのPETグレードのCRを用いた以外は、例3aと同じプロセスを行った。
【0096】
比較例6:1CECのHDTAおよびPFを有するPET-モンモリロナイト(PET+4.10%N116_1HDTA_PF)
比較例3で調製した挿入および変性フィロケイ酸塩(4.10%のN116_1HDTA_PFを有する)、およびNovapetからのPETグレードのCRを用いた以外は、例3aと同じプロセスを行った。
【0097】
例4:例7のHDTAナノコンポジットで変性されたPET-モンモリロナイトの特性評価
PETで調製したサンプル上の酸素透過率の評価
酸素透過率は、標準ASTM D3985:「クーロメトリーセンサーを使用したプラスチックフィルムおよびシートを通る酸素ガス透過率の標準試験方法」。実験装置は、OX-TRAN 2/20 SMであった。測定条件は、23℃、相対湿度0%であった。試験は、酸素(100%)で実施した。
【0098】
PETで調製されたサンプルにおける結果(表2)は、本発明のナノコンポジットの酸素透過性の減少を示す。PAをインターカレートしたフィロケイ酸塩で調製したナノコンポジットで、最良の改善が観察され、酸素透過性の減少は、ほぼ19%であった。
【0099】
PETと高バリアポリマー(特にMitsubishi Gas ChemicalからのポリアミドグレードMXD6、m-キシレンジアミン(MXDA)とアジピン酸との重縮合によって製造された結晶質ポリアミド)との混合によって調製されたサンプルから得られたものとの結果も比較した。
【0100】
PFをインターカレートしたPETのバリア特性の向上(酸素透過性の低下)は、PET+MXD6の材料と同様であり、PAをインターカレートしたPETのバリア特性の向上は、PET+MXD6の材料よりも高かった。いずれにせよ、PETとMXD6との混合によって得られた材料の使用と比較して、PETのバリア特性を改善するためにインターカレートしたフィロケイ酸塩を使用することは、2つの異なるポリマーの使用は、多材料包装のリサイクル性が困難になるため、環境上の利点をもたらす。
【0101】
【表2】
【0102】
機械的特性
標準ISO-527に従って、万能試験機(型式M350-20CT)を使用して機械的特性を評価した。
【0103】
結果を表3に提示し、例5aおよび5b、ならびに比較例4~6で得られたPETおよびナノコンポジットのヤング率および破断点伸びを示した。
【0104】
表3で観察できるように、純粋なPETに対してPETナノコンポジットの場合にはヤング率が増加し、また、インターカレートしたフィロケイ酸塩を有するナノコンポジットの場合には、純粋なPETに対して破断点伸びの増加が観察された(PAがインターカレートされたナノコンポジットで得られた最良の結果)。ヤング率の増加は、一般に破断点伸びの減少を暗示するので、これは予想外の結果であるが、それは変性フィロケイ酸塩(PET+2.78%N116_1HDTA)およびインターカレートした変性フィロケイ酸塩(PET+3.50%N116_1HDTA_PAおよびPET+4.10%N116_1HDTA_PF)を有するナノコンポジットにおいて観察された。
【0105】
【表3】
【0106】
熱特性
PETに基づくナノコンポジットの熱安定性は、TGAによって決定された。安定性を比較するために、1%のナノコンポジットが失われたときの初期分解温度(T )および最大劣化率での温度の値をそれらの熱重量曲線から抽出した。結果を表4に示す。インターカレートした粘土が使用される場合、T は、ほとんど維持され、一方HDTAで変性された粘土の使用は、T が15℃またはさらには30℃低いナノコンポジットをもたらすことが観察されている。Tmax.劣化率でも同様の効果が観察される。
【0107】
【表4】
【0108】
これらの結果から、両方の薬剤(PAおよびPF)をインターカレートしたフィロケイ酸塩を有するナノコンポジットは、変性フィロケイ酸塩または変性およびインターカレートしたフィロケイ酸塩よりも高い安定性を有すると結論付けることができる。
【0109】
例5:PAまたはPF中に分散したPET-フィロケイ酸塩からなる飲料ボトルの調製
例5a:PA中に分散したPET-フィロケイ酸塩からなる飲料ボトルの調製
N116を、40℃の加熱反応器および撹拌機を用いて、57:43の重量比でポリアジパートマトリックス中に分散させた。
【0110】
高固有粘度PET樹脂(NovapetからのMW SOFT BB1200)を原料として使用した。PET樹脂は、劣化を防ぐために予め乾燥させた。全ての材料は、予め調整されており、ポリアジパート中のN116の液体分散液は、最大80℃まで加熱されて粘度を下げ、流動性を促進させた。
【0111】
加工は、二段階プロセス、射出延伸ブロー成形(ISBM)に基づいた。48g/プレフォームの推定重量を有する48個のキャビティを有する射出成形機を使用した。温度は、270℃に設定した。ドージングシステムを射出成形機と組み合わせて、1ショット当たり4.6および9.2グラムの必要量を提供した。430gのポリアジパート中に570gのN116を分散させることにより、それぞれ0.2および0.4%w/wの最終量のモンモリロナイトを有する2つの強化PETを得た。次いで、1kgのPET当たり3、5および7gの分散液をペレットに添加して、それぞれ0.2および0.4%のフィロケイ酸塩の最終含有量を得た。プレフォーム加熱を従来のPETより低く調整し、最終オーブン温度は、約75℃であった。プレフォームをブロー成形し、得られた1.5L容量のボトルを特性評価に供した(下記の例16のデータを参照)。
【0112】
例5b:PF中に分散したPET-フィロケイ酸塩からなる飲料ボトルの調製
小規模試行は、二段階技術を使用して実施した。射出成形工程の前に、PETペレット1gごとに0.035gの量の分散液をホッパー上に直接供給することに代えて、ポリフタラート(430g)中のN116(570g)の分散液をPET(NovapetからのCRグレード)のペレット上に塗布した。プレフォーム射出成形の加工温度は、270℃に設定した。22.5gの重量を有するプレフォームが得られた。次いで、プレフォームを最終温度約95℃で再加熱に供し、ブロー成形して0.5Lのボトルを得た。PET上の粘土の最終重量は、2%w/wであった。
【0113】
例6:例5に記載の飲料ボトルの特性評価。
水蒸気透過率(WVTR)
例5aのボトルからの水の減量は、各ボトルの5つのサンプル(5つのボトルのPET+0.2%N116_PA中に分散および5つボトルのPET+0.4%N116_PA中に分散)を1.5Lの水を充填することによって評価してボトルをキャップで閉めた。充填されていない2本のボトル(各タイプのうちの1本)を同じキャップで閉めたものを対照として使用した。結果を非強化PETボトルと比較した。試験は、PBI 5-1968(Rev.2-1990;The Plastic Bottle Institute.「Methods of test for weight change and compatibility of packed products」.)に開示された方法に従って23℃および50%HRで行った。
【0114】
結果を表5に示す。水蒸気透過度の値が小さいほどバリア特性がより優れていることがわかる。これらの条件でのWVTRの最大減少は、PA中に分散された0.4%のフィロケイ酸塩で強化されたPETで達成された。
【0115】
【表5】
【0116】
酸素透過率(OTR)
例5bからのボトルの酸素透過率は、OXTRANモデル2/21において、標準ASTM D3985:「クーロメトリーセンサーを使用したプラスチックフィルムおよびシートを通る酸素ガス透過率の標準試験方法」に従って決定した。表6でわかるように、これらの条件でのOTRの最大減少は、PF中に分散した2%のフィロケイ酸塩で達成された。
【0117】
【表6】
【0118】
比較例7:OligoPET(N116_OPET)をインターカレートしたモンモリロナイトの調製
OligoPETをインターカレートしたモンモリロナイトを製造するために、400gのOligoPET、および100gの精製N116を60℃および100rpmで押出した。この調製には、Brabender押出機、Plastograph ID 815606を使用した。
【0119】
比較例8:OligoPETを有するPET-モンモリロナイト(PET+10%N116_OPET)
例3aと同じプロセスを行ったが、比較例7で調製したインターカレートしたフィロケイ酸塩(10%N116_OPETを含む)を使用した。
【0120】
例7:PETインターカレートモンモリロナイトの特性評価
機械的特性
標準ISO-527に従って、万能試験機(型式M350-20CT)を使用して機械的特性を評価した。
【0121】
OPETを使用したときの破断点伸びの結果は、劇的に減少し、この材料を非常に脆くする。
【0122】
【表7】
【0123】
したがって、OPETをインターカレートしたモンモリロナイトを有するPETの機械的特性は、劇的に劣化し、ナノコンポジット材料をボトルの製造におけるその使用を不可能にする。
【0124】
熱特性
PETナノコンポジットの熱特性は、示差走査熱量分析(DSC)を使用することによって決定した。DSC分析は、ポリマーの主な熱転移:ガラス転移温度(Tg)、冷結晶化(Tcc)、および融解温度(Tm)、ならびに各熱転移に関連するエンタルピーを決定する。
【0125】
使用される方法は、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで、10℃/分で1つの第1の加熱ランプからなる1工程に基づいている。この試験からの結果は、サンプルの熱履歴を表している。
【0126】
【表8】
【0127】
PETのものと比較してN116_OPETを有するPETナノコンポジットのより低いTgおよびTcc値は、好ましくない結果を示す。Tgの場合、両方の値の間の差はかなり大きく、ナノコンポジット材料は純粋なPETよりも低い温度で軟化状態を達成する。
【0128】
Tccの場合、この熱転移のより低い値は、一旦それらが最終包装を実施するために熱プロセスにかけることになると、材料をより結晶性にすることができる。例えば、ブローボトルの場合、ブロー温度がこの値に近いと、最終包装が結晶化し、それらの最終特性が悪化する。
【0129】
本出願に引用されている参考文献
1.欧州特許第1787918号明細書
2.中国特許第1465621号明細書
3.国際公開第2012017026号
4.PBI 5-1968(Rev.2-1990;The Plastic Bottle Institute.「Methods of test for weight change and compatibility of packed products」
5.ASTM D3985:OXTRANモデル2/21の「Standard Test Method for Oxygen Gas Transmission Rate Through Plastic Sheet and Sheeting Using a Coulometric Sensor」
図1