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特許7068301ERI/CHA連晶骨格型を有する結晶性ゼオライト
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  • 特許-ERI/CHA連晶骨格型を有する結晶性ゼオライト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ERI/CHA連晶骨格型を有する結晶性ゼオライト
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20220509BHJP
   B01J 29/72 20060101ALI20220509BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220509BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20220509BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20220509BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/72 A ZAB
B01D53/94 222
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019526547
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2017079440
(87)【国際公開番号】W WO2018091583
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】16199703.6
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スレープラサンス・プリンサナス・スレー
(72)【発明者】
【氏名】ステフ・ユレス・ペーテル・ケルクホフス
(72)【発明者】
【氏名】エルケ・ヤーネ・ユーネ・フェルハイエン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・アドリアーン・マルテンス
(72)【発明者】
【氏名】フランク-ヴァルター・シュッツェ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-354412(JP,A)
【文献】特表2013-522011(JP,A)
【文献】特表2014-515701(JP,A)
【文献】特表2000-511106(JP,A)
【文献】特表2010-524677(JP,A)
【文献】特表2016-506353(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第02985128(CA,A1)
【文献】特表2012-523958(JP,A)
【文献】特表2008-515760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86 - 53/96
F01N 3/08 - 3/38
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHA骨格型材料とERI骨格型材料との連晶を含み、2~60の範囲のシリカのアルミナに対するモル比を有する、結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項2】
前記ERI含有量が、組み合わされたERIとCHAとの総重量に基づいて、10~85重量%の範囲である、請求項1に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項3】
前記ゼオライトが、CuOとして、前記各ゼオライトの総重量に基づいて、計算すると、0.1~10重量%の量で銅を含む、請求項1又は2に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項4】
前記銅のアルミニウムに対する原子比が、0.002~0.5の範囲である、請求項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項5】
前記ゼオライトが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群から選択される1つ以上のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを、純金属として、前記ゼオライトの総重量に基づいて、計算すると、0.1~5.0重量%の量で含む、請求項1~のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライト。
【請求項6】
以下のステップ、すなわち、
a)フォージャサイト骨格型のゼオライトと、Cu-テトラエチレンペンタミン(Cu-TEPA)と、少なくとも1つの化合物M(OH)(式中、Mはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、若しくはアンモニウムカチオン、又はそれらの混合物である)と、を含む、第1の水性反応混合物を調製するステップと、
b)
シリカ供給源と、
アルミナ供給源と、
少なくとも1つの塩AB又はAB(式中、Aはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選択され、Bは塩化物、臭化物、ヨウ化物、及び水酸化物から選択される)と、
一般式[NR1R2R3R4](式中、R1、R2、R3、及びR4は互いに独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を表し、X-は臭化物、ヨウ化物、及び水酸化物から選択される)を有する第四級アルキルアンモニウム塩と、
臭化ヘキサメトニウム、ヨウ化ヘキサメトニウム、又は水酸化ヘキサメトニウムと、
を含む、第2の水性反応混合物を調製するステップと、
c)前記2つの水性反応混合物を組み合わせるステップと、
d)前記2つの水性反応混合物を組み合わせたものを加熱して、
CHA骨格型材料とERI骨格型材料との連晶と、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選択される少なくとも1つのカチオンと、
銅カチオンと、
を含む結晶性アルミノシリケートゼオライトを形成するステップと、
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトを作製するためのプロセス。
【請求項7】
ステップa)における前記Cu-TEPAが、0.0001モル/重量Cu-TEPA/前記フォージャサイト骨格型のゼオライト~0.0016モル/重量Cu-TEPA/前記フォージャサイト骨格型のゼオライトの量で使用される、請求項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトを作製するためのプロセス。
【請求項8】
ステップa)における前記化合物M(OH)が、0.001モル/重量M(OH)/前記フォージャサイト骨格型のゼオライト~0.025モル/重量M(OH)/前記フォージャサイト骨格型のゼオライトの量で使用される、請求項又はに記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトを作製するためのプロセス。
【請求項9】
ステップd)から得られた前記ゼオライトが、その後に焼成される、請求項7~8
のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトを作製するためのプロセス。
【請求項10】
焼成後に得られた前記ゼオライトが、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、及び銅カチオンの量を減らすために、イオン交換される、請求項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトを作製するためのプロセス。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトを含むウォッシュコート。
【請求項12】
SCR触媒における請求項1~のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトの使用。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載の結晶性アルミノシリケートゼオライトを含むSCR触媒。
【請求項14】
請求項11に記載の前記ウォッシュコートを含むSCR触媒。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のSCR触媒を含有する排気ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ERI/CHA連晶骨格型を有する結晶性ゼオライト、及び当該ゼオライトを作製するためのプロセスに関する。本発明によるゼオライトは、NOの選択接触還元(SCR)に好適である。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、非常に規則的な細孔構造及び分子寸法のチャネルを有し、かつ多数の骨格構造において生成する微多孔性アルミノシリケート材料である。それらは、各骨格型を定義する国際ゼオライト協会(IZA)の構造委員会によって分類される。この委員会はまた、3つの大文字からなる骨格型コードを、全てのユニークかつ確認された骨格トポロジーに割り当てている。例えば、ゼオライトの広く使用されている群は、コードERIが割り当てられているエリオナイト骨格に属し、別の広く使用されている群は、チャバザイト骨格に属し、CHAとコードされている。ゼオライトは、骨格型、並びに化学組成、原子分布、結晶サイズ、及び形態によって区別することができる。
【0003】
最大細孔口径の環サイズによって定義されるそれらの細孔サイズによりゼオライトを分類することは一般的である。大きい細孔サイズを有するゼオライトは12個の四面体原子の最大環サイズを有し、中程度の細孔サイズを有するゼオライトは10個の最大細孔サイズを有し、小さい細孔サイズを有するゼオライトは8個の四面体原子の最大細孔サイズを有する。既知の小細孔ゼオライトは、特にAEI、CHA(チャバザイト)、ERI(エリオナイト)、LEV(レビン)、及びKFI骨格に属する。大きい細孔サイズを有する例は、フォージャサイト(FAU)骨格型のゼオライトである。
【0004】
ゼオライトは、窒素及び水を形成するために、窒素酸化物とアンモニアとのいわゆる選択接触還元(SCR)において触媒として重要な役割を果たし、特に、銅及び鉄のようなカチオンがゼオライト細孔に含まれる場合に重要な役割を果たす。SCRプロセスは、化石燃料の燃焼から、特に定置式発電所及びディーゼルエンジンを動力源とする車両から生じる排気ガスを浄化するために広く使用されてきた。ゼオライトは天然に存在するが、SCR又は他の工業用途を目的としたゼオライトは通常は合成プロセスによって製造される。
【0005】
更に、ゼオライトは既知のイオン交換体である。これらはまた、分子篩として、及び広範な反応において触媒として使用することもできる。ゼオライトの既知の使用としては、例えば、流動接触分解、水素分解、炭化水素変換反応、再処理方法、及び熱蓄積が挙げられる。
【0006】
多様な工業用途で使用される相純ゼオライト骨格は、ゼオライト結晶化の分野における例外である。ゼオライト結晶化条件の大部分は、異なるゼオライト相又は連晶材料の物理的混合物の形成をもたらす。合成パラメータを微調整するときのみ、純粋なゼオライト相が得られる。
【0007】
ゼオライトは、通常、Li、Na、又はKなどのアルカリカチオン、Ca若しくはSrなどのアルカリ土類カチオン、又は第四級アンモニウムカチオンを含む水熱合成によって作製することができる。これらのカチオンは、例えば、電荷補償四面体アルミニウム原子に必要な骨格外(extra-framework)化学種として存在する。Cu又はFeが充填されたゼオライトが想定される場合、これらのカチオンは、通常、合成後方法によって銅及び/又は鉄のカチオンと置き換えられる必要がある。これは、例えば国際公開第2011/073390(A2)号及び同第2011/073398(A2)号に記載されているような追加の合成ステップによって行うことができる。
【0008】
Cu含有ゼオライトを製造するための一段階合成プロセスも既に知られている。Cu含有ゼオライトの調製の例は、例えば国際公開第2009/141324(A1)号及び同第2015/084817(A1)号において見出すことができる。
【0009】
国際公開第2009/141324(A1)号は、CHA骨格構造を有するリンを含まないゼオライト材料の調製のための水熱プロセスに関する。当該プロセスでは、水溶液は、骨格元素として用いられる三価及び/又は四価の元素、並びにCHA骨格構造を有する最終Cuゼオライトの調製に必要な全てのCuを含む。三価元素は好ましくはAlであり、四価元素は、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、及びこれらの2つ以上の混合物から選択されることが好ましい。
【0010】
国際公開第2015/084817(A1)号は、遷移金属-CHA分子篩及びそれを作製するための混合テンプレート合成を開示している。遷移金属は、好ましくはCu又はFeである。ゼオライトを合成するための反応混合物は、アルミナ供給源及びシリカ供給源、遷移金属アミン有機テンプレート剤、種結晶、及び第2の有機テンプレート剤を含み、そのテンプレート剤の各々はCHA骨格構造を形成するのに好適である。第2の有機テンプレート剤は、第四級有機アンモニウム塩である。
【0011】
欧州特許第2 517 774(A2)号は、SCRにおいて窒素酸化物を窒素に変換するためのゼオライト触媒を開示しており、そのゼオライトは、ERI骨格型コードを有し、Cr、Ce、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属を0.01~20重量%含有する。いくつかの実施形態では、触媒は、CHA骨格型コードを有する別の遷移金属含有小細孔ゼオライトを更に含んでいてもよい。しかしながら、ERI及びCHA骨格型のゼオライトの物理的混合物を報告しているが、連晶は報告していない。本発明によるSCR触媒は、約400℃まで良好な熱安定性及び良好なNO変換率を示す。
【0012】
欧州特許第2 517 774(A2)号と同じファミリーに属する欧州特許第2 517 775(A2)号は、SCRにおいて窒素酸化物を窒素に変換するためのゼオライト触媒を開示しており、そのゼオライトは、小細孔ゼオライトであって、AFT、AFX、ATT、DDR、EAB、EPI、GIS、GOO、IHW、LTA、MER、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAV SIV、UEI、UFI、VNI、及びYUGからなる群から選択される骨格コード型を有し、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、Ir、Ptからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属を0.1~10重量%含有する。これらの触媒はまた、約400℃まで良好な熱安定性及び良好なNO変換率を示す。欧州特許第2 517 774(A2)号及び欧州特許第2 517 775(A2)号も属する同じファミリーの更に別のメンバーである欧州特許第2 517 777(A2)号は、CHA骨格型を有し、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、Ir、及びPtからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属を0.01~20重量%有する2つ以上のゼオライトを含むSCRのためのゼオライト触媒を開示している。熱安定性及びNO変換率は、それぞれ欧州特許第2 517 774(A2)号及び欧州特許第2 517 775(A2)号に記載されている触媒と同等である。
【0013】
Rao及びThomasによって提案された分類に基づいて、ゼオライトに関連した異なる型の連晶は、エピタキシャル連晶と多型連晶であり、CNR Rao and JM Thomas:「Intergrowth Structures:The Chemistry of Solid-Solid Interfaces」,Acc Chem Res 1985,13,113~119を参照されたい。エピタキシーは、組成的又は構造的に異なるゼオライト相によるゼオライト結晶の配向表面連晶を含み、一方、層状材料中の個々のシートが異なる配列で積層されるときに多型が生じる。
【0014】
いくつかのエピタキシー例が文献で報告されている。例は、ゼオライトA上でのゼオライトX(E de Vos Burchart,JC Jansen,H van Bekkum:「Ordered overgrowth of zeolite X onto crystals of zeolite A」,Zeolites 1989,9,423~435)、ゼオライトA上でのゼオライトP(Breck,Zeolite Molecular Sieves:Structure,Chemistry and Use,John Wiley & Sons,New York,1974)、又はFAU/EMT表面連晶材料(AM Goossens,BH Wouters,PJ Grobet,V Buschmann,L Fiermans,JA Martens:「Synthesis and Characterization of Epitaxial FAU-on-EMT Zeolite Overgrowth Materials」,Eur J Inorg Chem 2001,1167~1181)の構造表面連晶である。Goossens et al.,Eur J Inorg Chem 2001,1167~1181に提示されているようなゼオライト及びそれらの連晶の概略図を図1に示す。
【0015】
チャバザイト群としても知られるABC-6材料ファミリー内では、OFF/LEV表面連晶が存在する(WS Wise and RW Tschernich:「The chemical compositions and origin of the zeolites offretite,erionite,and levyne」,Am Mineral 1976,61,853~863)。
【0016】
組成表面連晶の例は、ZSM-5又はZSM-11とシリカライト-1との組み合わせにおいて見出すことができ、米国特許第4,148,713号は、アルミニウムを含まない外側シェルを含有するアルミノシリケートゼオライトを開示している。外側シェルは、本質的に、ZSM-5型構成においてゼオライト表面上に結晶化したSiOである。米国特許第4,394,251号は、アルミナ含有同形構造シェルによって囲まれた結晶性シリケートを使用する炭化水素変換プロセスを開示している。結晶性シリケートは、好ましくは、ZSM-5及びZSM-11などの中間細孔サイズゼオライトのケイ質類似体であり、外側シェルは結晶性アルミノシリケートを含む。米国特許第4,394,362号は、アルミニウムを実質的に含まないZSM-5又はZSM-11などの中間細孔サイズ結晶性シリケートを含む内側部分と、アルミニウム含有同形構造外側シェルと、を有する結晶性シリケート粒子を開示している。
【0017】
連晶として、多型は、ゼオライト結晶化におけるより一般的な現象である。結合のあらゆる不整合もなく、個々の結晶中の異なる構造的に均一なドメインの積層として描写することができる。2つ以上の型のドメインは、例えば、それらが異なる周期性を示すとき、構造的に関連し得る。これは、ほとんどの場合、一般的なシートが交互に積層するものとして、例えばFAU/EMT(MW Anderson,KS Pachis,F Prebin,SW Carr,O Terasaki,T Ohsuna and V Alfredsson:「Intergrowths of Cubic and Hexagonal Polytypes of Faujasitic Zeolites」,J Chem Soc Chem Commun 1991,1660~1664、及びMMJ Treacy,DEW Vaughan,KG Strohmaier and JM Newsam,「Intergrowth Segregation in FAU-EMT Zeolite Materials」,Proc R Soc Lond A-Math Phys Eng Sci,1996,452,813~840)又はMFI/MEL(JM Thomas and GR Millward:「Direct,Real-space Determination of Intergrowths in ZSM-5/ZSM-11 Catalysts」,J Chem Soc Chem Commun 1982,1380~1383、及びGR Millward,S Ramdas and JM Thomas:「Evidence for Semi-regularly Ordered Sequences of Mirror and Inversion Symmetry Planes in ZSM-5/ZSM11 Shape-selective Zeolitic Catalysts」,J Chem Soc Faraday Trans 1983,79,1075~1082)として生成する。時には、それらは、実質的に異なる構造、例えばMAZ/MOR(ME Leonowicz and DEW Vaughan:「Proposed synthetic zeolite ECR-1 structure gives a new zeolite framework topology」,Nature 1987,329,819~821)及び歪んだゼオライト材料のファミリーBEA(MMJ Treacy and JM Newsam:「Two new three-dimensional twelve-ring zeolite frameworks of which zeolite beta is a disordered intergrowth」,Nature 1988,332,249~251)を有する。次いで、積層パターンは、厳密な交互配置から、周期性が全くないドメイン配置へと変化し得る。
【0018】
具体的には、材料のABC-6ゼオライトファミリーについては、連晶としての多型が良く知られている。ABC-6ファミリーに属する材料は、例えば、チャバザイト、オフレタイト、エリオナイト、グメリナイト、ソーダライト、及びレビンである。ABC-6ファミリーのゼオライト材料の構造は、平面六員環(planar six-ring,6R)を含有する層の積層として表すことができる。1つの層中の6Rは、異なる仕方で次の層の6Rに接続することができる。層中の6Rの3つの異なる位置は、A、B、又はCとすることができる。異なる層中の6Rは、互いに平行に(位置A)、又は転位(位置B及びC)によって接続され得、その結果、ABC-6ファミリーに属する異なる骨格をもたらすことができる。例えば、オフレタイトはAABの積層配列を有する3つの接続層によって表すことができ、一方、エリオナイトはAABAACの配列を有する6つのユニークな層を含有する。これらの層の1つの層間にある積層欠陥は、いくつかの場所で積層配列がわずかに変更されていて、その積層欠陥は簡単に生成し、異なる骨格型の連晶をもたらす。OFFゼオライトのAAB積層配列がAABAACによってランダムに置き換えられている例、又はその逆の例は、ERI/OFF連晶と称され、ERI及びOFF骨格型は内部成長系列の端成分である。ゼオライトT及びZSM-34は、最も一般的な例である。チャバザイトと連晶することができる材料の例は、GME及びAEI骨格型のゼオライトである。ABC-6ファミリー内では、チャバザイト(AABBCC)とオフレタイト(AAB)との連晶などの他の連晶が理論的に可能である。しかしながら、ERI/OFF及びCHAと、GME又はAEIとの上記連晶以外に、他の連晶は報告されていない。
【0019】
連晶材料の多くは、それらの相純末端メンバーと比較して、特別な触媒特性、収着特性、又は分子分離特性を示す。これは、触媒脱蝋においてERI/OFFに関して見ることができ(NY Chen,JL Schlenker,WE Garwood and GT Kokotailo:「TMA-Offretite.Relationship between Structural and Catalytic Properties」,J Catal 1984,86,24~31)また、メタノールから炭化水素への変換におけるMFI/MEL連晶に関して見ることができる(JM Thomas and GR Millward:「Direct,Real-space Determination of Intergrowths in ZSM-5/ZSM-11 Catalysts」,J Chem Soc Chem Commun 1982,1380~1383)。
【0020】
更に、チャバザイト及び第2の小細孔ゼオライトに基づくいくつかの連晶が知られており、
国際公開第2011/112949(A1)号は、支持体で担持されたCr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、Ir、及びPtから選択される1つ以上の遷移金属を開示している。支持材料は、少なくとも2つの異なる小細孔、三次元骨格構造を有する少なくとも1つの連晶相を有する分子篩を有する。好ましくは、第1又は第2の骨格構造は、AEI、GME、AFX、AFT、及びLEVから選択され、他の骨格構造はCHAである。国際公開第2011/112949(A1)号の分子篩は、米国特許第6,334,994(B1)号、同第7,094,389(B2)号、米国特許出願公開第2002/0165089(A1)号、及び国際公開第2005/063623(A2)号に開示されている合成技術を使用して合成することができる。
【0021】
米国特許第6,334,994(B1)号は、AEI及びCHA構造を有するシリコ-アルミノ-ホスフェート連晶を開示している。それは、SiO、Al、及びPと、有機テンプレート材料との混合物から製造される。当該混合物は、Al供給源及びP供給源の少なくとも一部を、水、Si供給源、及び有機テンプレート材料と組み合わせることによって製造される。それらの試薬は、異なる順序及び量で、並びに異なる供給源から添加することができるが、Al-イソプロポキシド、リン酸、コロイダルシリカ、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシドは、それぞれ、Al、P、Si、及び有機テンプレート材料の特に有用な供給源であることが証明されている。
【0022】
米国特許第7,094,389(B2)号及び国際公開第2005/063623(A2)号は、両方とも、骨格リンを実質的に含まず、CHA及びAEI骨格型分子篩の両方を含む、結晶性材料を開示している。結晶性材料は、その焼成された無水形態で、酸化物X及びYOを更に含む。XはAl、B、Fe、In、及び/又はGaなどの三価元素であり、YはSi、Sn、Ti、及び/又はGeなどの四価元素である。結晶性材料は、水の供給源と、酸化物X及びYOの供給源と、を含む反応混合物を調製し、積層欠陥、又はCHA骨格型分子篩及びAEI骨格型分子篩のうちの少なくとも1つの連晶相を含む結晶材料の結晶を形成するのに十分な条件下で当該反応混合物を維持し、このようにして得られた結晶性材料を回収することによって、作製される。好ましくは、CHA及び/又はAEI骨格型の形成を誘導するための有機指向剤も、混合物に添加される。指向剤は、有機アミン又はアンモニウム化合物であり得る。更に、反応混合物は、AEI、OFF、CHA、又はLEV骨格型を有する種結晶を含んでいてもよい。
【0023】
米国特許第2002/0165089(A1)号は、AEI及びCHA骨格型を有する少なくとも1つの連晶相を含むシリコアルミノホスフェート分子篩に関する。これらの分子篩は、ケイ素の反応性供給源、アルミニウムの反応性供給源、及びリンの反応性供給源を含む混合物を、有機構造指向剤の存在下、自生圧力下で水熱処理することによって調製される。好ましくは、有機構造指向剤はテトラエチルアンモニウム化合物である。
【0024】
これまで知られているゼオライト、及びそれらを作製するためのプロセスには、いくつかの欠点がある。例えば、SCR触媒として使用されるいくつかのゼオライトの熱安定性は、より高い温度範囲では不十分である。したがって、より高い熱安定性を有するゼオライトに関するニーズが存在する。更に、既知のゼオライトを作製するためのプロセスは、高圧で約150℃において最終生成物の結晶化を伴ういくつかのプロセスステップを含み、エネルギー消費が多くなる。いくつかのゼオライトは銅を含むが、既知のプロセスによって得られる未加工ゼオライトは、ほとんどが銅を含まない。所望のCuO含有量は、ゼオライトの0.1~10重量%である。結果として、ゼオライト中にCuOを挿入するイオン交換ステップが必要である。一方、ゼオライト形成及びCuOの組み込みが組み合わされるワンポットゼオライト合成手順が存在する。しかしながら、既知のワンポットプロセスは、当該ゼオライトの実際的応用のためには銅含有量が高過ぎる。したがって、多くの既知のプロセスでは、過剰な銅を除去するためのイオン交換ステップが必要である。従来技術のプロセスでは、しばしば、小細孔ゼオライトの形成のために高価なテンプレートの使用が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】国際公開第2011/073390(A2)号
【文献】国際公開第2011/073398(A2)号
【文献】国際公開第2009/141324(A1)号
【文献】国際公開第2015/084817(A1)号
【文献】欧州特許第2 517 774(A2)号
【文献】欧州特許第2 517 775(A2)号
【文献】欧州特許第2 517 777(A2)号
【文献】米国特許第4,148,713号
【文献】米国特許第4,394,251号
【文献】米国特許第4,394,362号
【文献】国際公開第2011/112949(A1)号
【文献】米国特許第6,334,994(B1)号
【文献】米国特許第7,094,389(B2)号
【文献】米国特許出願公開第2002/0165089(A1)号
【文献】国際公開第2005/063623(A2)号
【非特許文献】
【0026】
【文献】CNR Rao and JM Thomas:「Intergrowth Structures:The Chemistry of Solid-Solid Interfaces」,Acc Chem Res 1985,13,113~119
【文献】E de Vos Burchart,JC Jansen,H van Bekkum:「Ordered overgrowth of zeolite X onto crystals of zeolite A」,Zeolites 1989,9,423~435
【文献】Breck,Zeolite Molecular Sieves:Structure,Chemistry and Use,John Wiley & Sons,New York,1974
【文献】AM Goossens,BH Wouters,PJ Grobet,V Buschmann,L Fiermans,JA Martens:「Synthesis and Characterization of Epitaxial FAU-on-EMT Zeolite Overgrowth Materials」,Eur J Inorg Chem 2001,1167~1181
【文献】WS Wise and RW Tschernich:「The chemical compositions and origin of the zeolites offretite,erionite,and levyne」,Am Mineral 1976,61,853~863
【文献】MW Anderson,KS Pachis,F Prebin,SW Carr,O Terasaki,T Ohsuna and V Alfredsson:「Intergrowths of Cubic and Hexagonal Polytypes of Faujasitic Zeolites」,J Chem Soc Chem Commun 1991,1660~1664
【文献】MMJ Treacy,DEW Vaughan,KG Strohmaier and JM Newsam,「Intergrowth Segregation in FAU-EMT Zeolite Materials」,Proc R Soc Lond A-Math Phys Eng Sci,1996,452,813~840
【文献】JM Thomas and GR Millward:「Direct,Real-space Determination of Intergrowths in ZSM-5/ZSM-11 Catalysts」,J Chem Soc Chem Commun 1982,1380~1383
【文献】GR Millward,S Ramdas and JM Thomas:「Evidence for Semi-regularly Ordered Sequences of Mirror and Inversion Symmetry Planes in ZSM-5/ZSM11 Shape-selective Zeolitic Catalysts」,J Chem Soc Faraday Trans 1983,79,1075~1082
【文献】ME Leonowicz and DEW Vaughan:「Proposed synthetic zeolite ECR-1 structure gives a new zeolite framework topology」,Nature 1987,329,819~821
【文献】MMJ Treacy and JM Newsam:「Two new three-dimensional twelve-ring zeolite frameworks of which zeolite beta is a disordered intergrowth」,Nature 1988,332,249~251
【文献】NY Chen,JL Schlenker,WE Garwood and GT Kokotailo:「TMA-Offretite.Relationship between Structural and Catalytic Properties」,J Catal 1984,86,24~31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、本発明の目的は、向上した熱安定性を有する新規なゼオライト及びそれらを作製するためのプロセスを提供することであり、そのプロセスは、遷移金属の含有量、Si/Al比(SAR)に関して多種多様な小細孔ゼオライトを製造することを可能にし、また高価なテンプレートの使用を必要としない、という意味において柔軟性がある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、かかる新規なゼオライトに対して向上した熱安定性を付与可能であることを見出した。したがって、本発明のこの第1の目的は、CHA骨格型材料とERI骨格型材料との連晶を含む結晶性アルミノシリケートゼオライトによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】Goossens et al.,Eur J Inorg Chem 2001,1167~1181に提示されているゼオライト及びそれらの連晶の概略図である。
図2】比較例1による純粋なCHA骨格型及び比較例3によるERI骨格型それぞれと比較された、実施形態1で得られた焼成ERI/CHAゼオライト連晶のX線回折パターンである。
図3a】低倍率における実施形態1によるゼオライトのHRTEM画像である。
図3b】高倍率における実施形態1によるゼオライトのHRTEM画像である。焼成試料についてTEM試験を実施した。結晶をエタノール中に分散させ、超音波処理により処理した。数滴をホーリーカーボンコーティングされたCuグリッド上に配置した。200kVで操作したFEI Tecnai顕微鏡を使用してHRTEM画像を作製した。
図4】実施形態6によるNO変換試験のグラフである。実線は450℃の測定点と150℃の戻り点を接続している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明による新規な結晶性アルミノシリケートゼオライト及びそれらを作製するためのプロセスについて以下に説明するが、本発明は以下に示す全ての実施形態を、個々に、かつ互いに組み合わせて包含するものである。
【0031】
本発明で使用するとき、「相純ゼオライト」という用語は、ただ1つの結晶構造を有する結晶から構成されるゼオライトを指し、すなわち、その結晶は他の結晶構造を含有しない。
【0032】
結晶構造とは、結晶性材料中の原子、イオン、又は分子の秩序ある配置に関する記述である。秩序構造は、構成粒子の固有の性質から発生し、物質内の三次元空間の主方向に沿って繰り返される対称パターンを形成する。したがって、「結晶」は、その構成要素が結晶構造に配置されている固体材料を表す。
【0033】
「結晶性物質」は結晶で構成される。
【0034】
「骨格型」とも称される「ゼオライト骨格型」は、四面体に配位した原子のコーナー共有ネットワークを表す。
【0035】
「CHA骨格型材料」は、CHA骨格型を有するゼオライト材料である。同じことは、「ERI骨格型材料」についても準用される。
【0036】
ゼオライトの「連晶」は、少なくとも2つの異なるゼオライト骨格型、又は同じ骨格型の2つの異なるゼオライト組成物を含む。
【0037】
「表面連晶」ゼオライトでは、一方の骨格構造が他方の骨格構造の上で成長する。したがって、「表面連晶」は、「連晶」の種を表し、「連晶」は属である。
【0038】
以下、本発明による結晶性アルミノシリケートゼオライトをそれぞれ「ゼオライト」又は「本発明によるゼオライト」と称する。
【0039】
本発明によるゼオライトは、CHA骨格型及びERI骨格型の連晶を含む。好ましい実施形態では、当該連晶は表面連晶である。本発明によるゼオライトに関して使用される「連晶」及び「表面連晶」という用語は、a)CHA骨格構造上で成長するERI骨格構造、b)ERI骨格構造上で成長するCHA骨格構造、及びc)a)とb)との混合物を含む。
【0040】
本発明の一実施形態では、ゼオライトのERI含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて、10~85重量%の範囲である。好ましくはERI含有量は25~80重量%の範囲であり、更により好ましくはERI含有量は50~80重量%の範囲であり、最も好ましくはERI含有量は40~60重量%の範囲である。ERI及びCHAの含有量それぞれの測定は、ERI/CHA連晶におけるERI及びCHAの相対量を判定することによるXRDパターンの分析に基づいている。
【0041】
本発明の一実施形態では、ゼオライトにおけるシリカのアルミナに対するモル比は、2~60、好ましくは10~30、更により好ましくは10~20の範囲である。以下、シリカのアルミナに対するモル比をSARと略記する。
【0042】
本発明の一実施形態では、ゼオライトは、それぞれの酸化物CuO及びFeとして、それぞれのゼオライトの総重量に基づいて、計算すると、0.1~10重量%、好ましくは1.5~6重量%、更により好ましくは1.5~3.5重量%の量で、銅、又は銅と鉄との混合物を含む。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、ゼオライトは、酸化銅CuOとして、それぞれのゼオライトの総重量に基づいて、計算すると、0.1~10重量%の銅、好ましくは1.5~6重量%のCu、更により好ましくは1.5~3.5重量%のCuを含む。
【0044】
本発明の一実施形態では、ゼオライトにおける銅のアルミニウムに対する原子比は0.002~0.5の範囲である。
【0045】
本発明の一実施形態では、ゼオライトは、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン、アンモニウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、及びバリウムカチオンからなる群から選択される1つ以上のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを含む。アンモニウムカチオンNH が、より重いアルカリ金属カチオンと非常に類似した特性を有することは、当業者には良く知られている。したがって、アンモニウムカチオンNH は、本発明におけるアルカリカチオンであると考えられ、一般的な方法に従う。好ましい実施形態では、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンは、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はナトリウムとカリウムとの混合物である。1つ以上のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンは、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて、計算すると、0.1~5.0重量%、好ましくは0.3~2.0重量%の量で存在する。アンモニウムカチオンの場合、それらの含有量は、当業者に既知の燃焼分析によって計算される。
【0046】
本発明の一実施形態では、本発明による結晶性アルミノシリケートゼオライトは、CHA骨格型材料とERI骨格型材料との連晶からなる。
【0047】
本発明の別の実施形態では、本発明による結晶性アルミノシリケートゼオライトは、CHA骨格型材料とERI骨格型材料との連晶、更に、相純ERI及び/又はCHAを含む。
【0048】
これらの実施形態の両方において、SARは、上記のように、2~60、好ましくは10~30、更により好ましくは10~20の範囲である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のゼオライトは、CHA骨格型とERI骨格型との連晶を含み、更に以下の特徴を含む。
ゼオライトのERI含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて、10~85重量%の範囲である。
SARは2~60の範囲である。
ゼオライトは、CuOとして計算すると、0.1~10重量%の量の銅を含む。
ゼオライトにおける銅のアルミニウムに対する原子比は0.002~0.5の範囲である。
ゼオライトは、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて計算すると、0.3~5重量%の量で、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はナトリウムカチオンとカリウムカチオンとの混合物を含む。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明のゼオライトは、CHA骨格型とERI骨格型との連晶を含み、更に以下の特徴を含む。
ゼオライトのERI含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて、10~85重量%の範囲である。
SARは10~30の範囲である。
ゼオライトは、CuOとして計算すると、0.1~10重量%の量の銅を含む。
ゼオライトにおける銅のアルミニウムに対する原子比は0.005~0.5の範囲である。
ゼオライトは、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて計算すると、0.3~5重量%の量で、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はナトリウムカチオンとカリウムカチオンとの混合物を含む。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のゼオライトは、CHA骨格型とERI骨格型との連晶を含み、更に以下の特徴を含む。
ゼオライトのERI含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて、10~85重量%の範囲である。
SARは10~20の範囲である。
ゼオライトは、CuOとして計算すると、0.1~10重量%の量の銅を含む。
ゼオライトにおける銅のアルミニウムに対する原子比は0.005~0.5の範囲である。
ゼオライトは、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて計算すると、0.3~5重量%の量で、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はナトリウムカチオンとカリウムカチオンとの混合物を含む。
【0052】
本発明による結晶性アルミノシリケートゼオライトを作製するためのプロセスを提供する目的は、以下のステップ、すなわち、
a)フォージャサイト骨格型のゼオライトと、Cu-テトラエチレンペンタミン(Cu-TEPA)と、少なくとも1つの化合物M(OH)(式中、Mはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、若しくはアンモニウムカチオン、又はそれらの混合物である)と、を含む、第1の水性反応混合物を調製するステップと、
b)
シリカ供給源と、
アルミナ供給源と、
少なくとも1つの塩AB又はAB(式中、カチオンAはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選択され、アニオンBは塩化物、臭化物、ヨウ化物、及び水酸化物から選択される)と、
一般式[NR1R2R3R4](式中、R1、R2、R3、及びR4は互いに独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を表し、X-は臭化物、ヨウ化物、及び水酸化物から選択される)を有する第四級アルキルアンモニウム塩と、
臭化ヘキサメトニウム、ヨウ化ヘキサメトニウム、又は水酸化ヘキサメトニウムと、
を含む、第2の水性反応混合物を調製するステップと、
c)その2つの水性反応混合物を組み合わせるステップと、
d)その2つの水性反応混合物を組み合わせたものを加熱して、
CHA骨格型材料とERI骨格型材料との連晶と、
リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン、アンモニウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、及びバリウムカチオン、並びにそれらの混合物から選択されるカチオンと、
銅カチオンと、
を含む結晶性アルミノシリケートゼオライトを形成するステップと、
を含む。
【0053】
本発明によるプロセスのステップa)において、3つの成分、すなわち、フォージャサイト骨格型のゼオライト、Cu-TEPA、及び少なくとも1つの化合物M(OH)を任意の順序で混合することができる。しかしながら、最初にゼオライトを少なくとも1つの化合物M(OH)の水溶液中に懸濁させ、次いでCu-TEPA溶液を添加することが好ましい。
【0054】
好ましくは、少なくとも1つの化合物M(OH)及びCu-TEPAを、ステップa)において0.5~2M水溶液の形態で使用する。
【0055】
フォージャサイトネットワーク型のゼオライトは既知であり、ゼオライトYの名称で多種多様に市販されている。特に、得られる銅含有小細孔ゼオライトのSARを容易に制御することができる異なるSARを有する大量のフォージャサイトが利用可能である。
【0056】
本発明のプロセスの実施形態では、フォージャサイト骨格型のゼオライトは5~60の範囲のSARを有する。
【0057】
同様に、得られる銅含有小細孔ゼオライトの銅含有量は、本発明のプロセスで使用される銅錯体の量を介して容易に制御することができる。
【0058】
本発明のプロセスの実施形態では、銅含有小細孔ゼオライトの銅含有量は、CuOとして、銅含有小細孔ゼオライトの総重量に基づいて、計算すると、0.1~10重量%、特に1.5~6重量%、特に好ましくは1.5~3.5重量%である。
【0059】
本発明のプロセスで使用される銅錯化剤テトラエチレンペンタミンは既知であり、市販されている。テトラエチレンペンタミンは「TEPA」とも称される。対応する銅錯体Cu-TEPAは、既知のプロセスに従って製造することができ、例えば、以下に記載の実施形態の中の「Cu-TEPAの合成」の説明を参照されたい。
【0060】
本発明のプロセスの実施形態では、銅錯体は、0.0001モル/重量Cu-TEPA/FAUゼオライト~0.0016モル/重量Cu-TEPA/FAUゼオライトの量で使用される。
【0061】
本発明によるプロセスのステップa)で使用される化合物M(OH)において、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、又はそれらの混合物である。換言すれば、M(OH)は、NaOH、KOH、NHOH、又はそれらの混合物である。好ましくは、M(OH)は、NaOH、NHOH、又は両方の混合物である。
【0062】
ステップa)においてCu-TEPAと組み合わせてNaOH、KOH、及び/又はNHOHを使用すると、フォージャサイト骨格型ゼオライトは、確実にCHA骨格型に変換される。
【0063】
本発明のプロセスの実施形態では、M(OH)は、0.001モル/重量M(OH)/FAUゼオライト~0.025モル/重量M(OH)/FAUゼオライトの量で使用される。
【0064】
フォージャサイト骨格型のゼオライト、Cu-TEPA、及び少なくとも1つの化合物M(OH)を、混合後に室温で15分間撹拌する。それから得られた第1の反応混合物は、第2の反応混合物と混合するために直ちに使用してもよく、又は、第2の反応混合物と混合する前に、室温~150℃、好ましくは90~98℃の温度で、36~60時間、好ましくは48時間、静置してもよい。
【0065】
本発明によるプロセスのステップb)で使用される好適なシリカ供給源は、市販の安定化シリカゾル及びヒュームドシリカである。好適な市販のシリカ供給源は、例えば、Ludox(登録商標)AS-40である。更に、シリカ供給源としては、テトラエトキシシラン(TEOS)及びテトラメトキシシラン(TMOS)などのアルコキシシランを使用することができる。
【0066】
好適なアルミナ供給源は、例えば、アルミニウム-トリ-sec-ブトキシドAl[O(CH)(CH)C、アルミニウムニトレート、アルミニウムスルフェート、アルミン酸ナトリウム、アルミニウム粉末、及び水酸化アルミニウムである。
【0067】
一実施形態では、シリカ及びアルミナ供給源の量は、出発組成物の計算されたSARが10~100、好ましくは50~80の範囲であるように選択する。当業者は、合成の際のSAR及び最終ゼオライトのSARは必ずしも同一ではないことを知っており、また、最終ゼオライトにおいて所望のSARを得るために合成の際にSAR値をどのように選択するかについても知っている。
【0068】
ステップb)による第2の反応混合物は、少なくとも1つの塩AB又はABを更に含み、そのカチオンAは、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン、アンモニウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、及びバリウムカチオンから選択され、そのアニオンBは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、及び水酸化物から選択される。「少なくとも1つの塩AB又はAB」とは、1つの塩のみが選択されるか、又は2つ以上の塩の混合物であり得るかのいずれかを意味している。2つ以上の塩が使用される場合、それらのうちの少なくとも2つは、同じカチオン(例えばKBr及びKCl)若しくは同じアニオン(例えばNaCl及びKCl)のいずれかを共有してもよく、又は異なるカチオン及び異なるアニオン(例えばNaCl及びKBr)を有する少なくとも2つの塩を使用してもよい。好ましい実施形態では、カチオンはNa及びKから選択され、アニオンは塩化物及び臭化物から選択される。
【0069】
第四級アルキルアンモニウムカチオンは、一般式[NR1R2R3R4]を有し、式中、R1、R2、R3、及びR4は互いに独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を表す。直鎖又は分枝鎖アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-ブチル、2-ブチル、tert-ブチル、1-ペンチル、2-ペンチル、3-メチル-ブチル、2,2-ジメチル-プロピル、並びにヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルの全ての異性体から選択される。
【0070】
好ましくは、第四級アルキルアンモニウム塩は、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0071】
臭化ヘキサメトニウム、ヨウ化ヘキサメトニウム、又は水酸化ヘキサメトニウムを使用してERIを形成する。
【0072】
好ましい実施形態では、ステップb)による第2の反応混合物の調製は、次のように実施する。すなわち、アルミナ供給源を、室温で2~30分間撹拌しながら、第四級アルキルアンモニウム塩の水溶液に添加する。次いで、シリカ供給源の水性懸濁液を、撹拌しながら5~15分以内に室温で添加する。その後、臭化ヘキサメトニウム、ヨウ化ヘキサメトニウム、又は水酸化ヘキサメトニウムを添加し、次いで、脱イオン水中に溶解させた少なくとも1つの塩AB又はABを添加する。
【0073】
続いて、その溶液を更に18~30時間、好ましくは24時間、室温で撹拌し、それによって液体ゲルを形成する。次いで、このゲルを、室温で、撹拌することなく、更に36~60時間、好ましくは48時間エージングさせる。
【0074】
当業者は、所望のSAR、アルカリ金属又はアルカリ土類金属及び銅の含有量を有するゼオライトを得るために、フォージャサイト骨格型のゼオライト、少なくとも1つの化合物M(OH)、Cu-TEPA、シリカ、アルミナ、及び塩AB又はABの含有量を調整する方法を知っている。当業者は、請求項の範囲から逸脱することなく、当該知識を適用することができる。
【0075】
本発明のプロセスのステップc)に従って、ステップa)及びb)それぞれから得られた2つの反応混合物を混合する。第1の反応混合物は、第2反応混合物に添加してもよく、又はその逆に添加してもよく、又は第1及び第2の反応混合物を互いに同時に混合してもよい。好ましい実施形態では、第2の反応混合物を、室温で2~5分以内に第1の反応混合物に添加する。得られた混合物を室温で10~20分間撹拌することによって均質化する。
【0076】
加熱ステップd)は、95℃~160℃の温度で、自生圧力下で3~28日間行う。一実施形態では、加熱ステップは95℃で21日間行う。別の実施形態では、加熱ステップは160℃で4~8日間行う。当業者は、より高い温度とより短い反応時間とを組み合わせることが合理的であり、逆もまた同様であることを知っている。当業者は、クレームの保護範囲を逸脱することなく、この知識を利用することができる。
【0077】
次いで、この加熱ステップによって得られた固体生成物を濾別し、脱イオン水で洗浄し、次いで、50~80℃、好ましくは60℃で8~16時間乾燥させる。
【0078】
場合によっては、ステップd)から得られたゼオライトは、その後に焼成してもよい。700~800℃、好ましくは740~760℃の温度で焼成すると有利である。好ましくは、オーブンをゆっくりと、例えば0.5~2℃/分で加熱する。最終焼成温度が740~760℃に達した後、6~10時間保持する。その後、加熱を止め、ゼオライトを室温まで冷却させる。
【0079】
更に、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、及び銅カチオンの量を低減するために、焼成後に得られたゼオライトは、イオン交換されてもよい。イオン交換法は、当該技術水準において既知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく適用することができる。イオン交換は、例えば、塩化アンモニウム水溶液で処理することによって達成することができる。焼成ゼオライトをNHCl水溶液と混合し、沸点まで加熱する。ゼオライトを濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、次いで乾燥させる。この手順を1回以上繰り返すと、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、及び銅カチオンの含有量が更に低減される。
【0080】
本発明によるプロセスによって得られたゼオライトが銅と鉄との混合物を含む場合、焼成後に当該鉄を導入することが好ましい。導入は、従来技術において良く知られている技術によって、例えば、初期湿潤含浸技術又はイオン交換技術によって、実施され得る。いずれの場合も、適切な鉄前駆体を水に溶解させ、本発明によるゼオライトと接触させる。適切な鉄前駆体はFe2+及びFe3+塩であり、その水への溶解度は水100g当たり1g以上である。好適な鉄前駆体は、例えばFeSO 7HO、FeCl 4HO、FeBr 6HO、Fe(NO 9HO、FeCl 6HOである。好ましくは、Fe3+塩を鉄前駆体として使用する。Feの導入後、ゼオライトを洗浄し、乾燥させ、焼成する。この一般的な手順はまた、当業において既知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく適用することができる。
【0081】
本発明によるERI/CHA連晶は、SCR触媒の調製に使用することができる。更に、それらは好適なイオン交換体である。それらはまた、分子篩として、及び広範な反応において触媒として使用することもできる。ゼオライトの既知の使用としては、例えば、流動接触分解、水素分解、炭化水素変換反応、再処理方法、及び熱蓄積が挙げられる。
【0082】
主に希薄燃焼エンジンによって駆動される車両の排出物は、粒子排出物の他に、特に一次排出物、すなわち一酸化炭素CO、炭化水素HC、及び窒素酸化物NOを含有する。最大15体積%の比較的高い酸素含有量に起因して、一酸化炭素及び炭化水素は、酸化によって無害になり得るが、窒素酸化物を還元して窒素にするのははるかに困難である。
【0083】
本発明によるゼオライトを含有するSCR触媒、すなわち、ERI/CHA連晶骨格型を有する結晶性ゼオライトは、既知の方法によって製造することができる。
【0084】
SCR触媒は、例えば、固体昇華によって得ることができる。この目的のために、ゼオライトと銅塩との乾燥した均質混合物を作製する。次いで、当該混合物を550~900℃の温度に加熱し、それにより銅塩は金属(すなわち銅)又は銅イオンに分解する。続いて、その混合物を、ゼオライト骨格材料中への銅の固体昇華を達成するのに十分な温度及び時間、加熱する。当該プロセスは、しばしば「固体イオン交換」と称される。
【0085】
次いで、このようにして得られた粉末を水に分散させ、バインダーと混合する。好適なバインダーは、例えば、ベーマイト及びシリカゲルである。その後、水、バインダー、及びゼオライトを含むこの混合物は、それぞれ撹拌又は均質化するだけでよく、担体基材をコーティングするためにコーティング懸濁液として直接適用することができる。コーティング懸濁液は、以下、「ウォッシュコート」と称する。
【0086】
本発明によるSCR触媒のいくつかの実施形態では、当該SCR触媒は、担体基材上のコーティングの形態で存在する。担体基材は、それぞれ、いわゆるフロースルー基材又はウォールフローフィルタであることができる。
【0087】
いずれの担体基材も、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、コージライト、又は金属などの不活性材料からなり得る。かかる担体基材は、当業者には既知であり、市場で入手可能である。
【0088】
他の実施形態では、担体基材は、それ自体、触媒活性であってもよく、触媒活性材料、例えばSCR触媒活性材料を含むことができる。この目的に好適なSCR触媒活性材料は、基本的に、当業者に既知の全ての材料、例えば、混合酸化物に基づく触媒活性材料、又はイオン交換ゼオライト化合物に基づく触媒活性材料である。例えば、鉄及び銅交換ゼオライト化合物は、既知の触媒活性材料である。更に、バナジウム、チタン、及びタングステンの化合物を含む混合酸化物は、この目的に特に好適である。
【0089】
触媒活性材料に加えて、これらの担体基材はマトリックス成分を含む。触媒基材の製造のために他の方法で使用される全ての不活性材料は、この文脈において、マトリックス成分として使用することができる。例えば、シリケート、酸化物、窒化物、又は炭化物であり、特に好ましくは、マグネシウムアルミニウムシリケートである。
【0090】
本発明によるSCR触媒の他の実施形態では、触媒それ自体が、担体基材の一部を形成し、例えばフロースルー基材又はウォールフローフィルタの一部として形成する。かかる担体基材は、上記マトリックス成分を更に含む。
【0091】
本発明によるSCR触媒を含む担体基材は、排気ガス浄化の際に使用することができる。あるいは、それらは、触媒活性材料、例えばSCR触媒活性材料でコーティングすることができる。これらの材料がSCR触媒接触活性を示す限りは、上記のSCR触媒は好適な材料である。
【0092】
一実施形態では、触媒活性担体材料は、10~95重量%の不活性マトリックス成分と5~90重量%の触媒活性材料とを混合し、続いて既知のプロトコルに従ってその混合物を押し出すことによって製造される。既に上記したように、触媒基材の製造に通常使用される不活性材料を、この実施形態ではマトリックス成分として使用することができる。好適な不活性マトリックス材料は、例えば、シリケート、酸化物、窒化物、及び炭化物であり、特に好ましくはマグネシウムアルミニウムシリケートである。
【0093】
不活性担体基材上又は単独で触媒活性である担体基材上への触媒活性触媒の適用、並びに担体基材上への触媒活性コーティングの適用(当該担体基材は本発明による触媒を含む)は、当業者に既知の製造プロセスに従って、例えば、広く使用されているディップコーティング、ポンプコーティング、及び吸引コーティング、その後の熱的後処理(焼成)によって、実施することができる。
【0094】
当業者は、ウォールフローフィルタの場合、それらの平均細孔サイズ及び本発明による触媒の平均粒径は、このようにして得られたコーティングがウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔質壁上に配置される(オンウォールコーティング)ように、互いに調整できることを知っている。しかしながら、平均細孔サイズ及び平均粒径は、本発明による触媒がウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔質壁内に配置されるように、互いに調整されることが好ましい。この好ましい実施形態では、細孔の内面は、コーティングされる(インウォールコーティング)。この場合、本発明による触媒の平均粒径は、ウォールフローフィルタの細孔内に入り込むことができる程十分に小さいものである必要がある。
【0095】
本発明による触媒は、希薄燃焼エンジン、特にディーゼルエンジンの排気浄化に有利に使用され得る。それらは、排気ガス中に含まれる窒素酸化物を無害な化合物である窒素及び水に変換する。
【0096】
一般的に知られている排気ガス浄化システムは、多くの場合、排気ガスの経路において、一酸化窒素及び炭化水素に関して酸化機能を有する酸化触媒(DOC)と、その後続段階において、酸化機能層を有する上記選択接触還元型触媒(SCR)と、を配置することによって形成され、尿素水溶液又はアンモニア水溶液を供給するための噴霧手段が、上記酸化触媒の下流かつ上記選択接触還元型触媒の上流に配置されることを特徴としている。更に、煤煙を除去するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)は、しばしば、DOC及びSCRと組み合わされる。これらの配置では、可燃性粒子成分はDPF上に堆積され、そこで燃焼される。かかる配置は、例えば、欧州特許第1 992 409(A1)号に開示されている。かかる触媒の広く使用されている配置は、例えば(上流から下流まで)、
(1)DOC+(NH)+SCR
(2)DOC+DPF+(NH)+SCR
(3)DOC+(NH)+SCR+DPF
(4)DOC+(NH)+SCR+DOC+DPF
である。
【0097】
上記例(1)~(4)において、(NH)は、尿素水溶液、アンモニア水溶液、カルバミン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウムなどが噴霧によって還元剤として供給される位置を表している。自動車の排気ガス浄化システムにおけるかかる尿素化合物又はアンモニア化合物の供給は、当技術分野において良く知られている。
【0098】
したがって、本発明は、更に、排気ガスを本発明による触媒上に通すことを特徴とする、希薄燃焼エンジンの排気ガスを浄化するための方法に言及する。
【0099】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、還元剤としてアンモニアが使用される。必要とされるアンモニアは、例えば、上流窒素酸化物吸蔵触媒(「リーンNOxトラップ」-LNT)によってパティキュレートフィルタの上流側の排気浄化システム内に形成され得る。この方法は「パッシブSCR」として知られている。
【0100】
あるいは、アンモニアを、適切な形態で、例えば、尿素、カルバミン酸アンモニウム、又はギ酸アンモニウムの形態で供給することができ、必要に応じて排気ガス流に添加することができる。広く普及している方法は、尿素水溶液と共に運び、必要に応じて上流インジェクターを介して本発明による触媒に投入する方法である。
【0101】
したがって、本発明はまた、希薄燃焼エンジンから放出される排気ガスを浄化するためのシステムにも言及し、そのシステムは、好ましくは担体基材上のコーティングの形態で又は担体基材の成分として本発明による触媒と、尿素水溶液のためのインジェクターと、を含み、そのインジェクターは、本発明の触媒の上流に配置されることを特徴としている。
【0102】
例えば、窒素酸化物が一酸化窒素と二酸化窒素との1:1混合物で存在する場合、又は両方の窒素酸化物の比が1:1である場合、アンモニアとのSCR反応がより急速に進行することは、SAE-2001-01-3625から知られる。希薄燃焼エンジンからの排気ガスは、一般に、二酸化窒素よりも一酸化窒素が過剰であるため、このSAEの論文は、酸化触媒によって二酸化窒素の量を増加させることを提案している。本発明による排気ガス浄化プロセスは、標準的なSCR反応において、すなわち二酸化窒素の不在下においてだけではなく、急速なSCR反応において、すなわち一酸化窒素の一部が二酸化窒素に酸化されているときにも適用することができ、したがって、理想的には一酸化窒素と二酸化窒素の1:1混合物を提供する。
【0103】
したがって、本発明はまた、希薄燃焼エンジンからの排気ガスを浄化するためのシステムに関するものであり、そのシステムは、酸化触媒、尿素水溶液のためのインジェクター、及び本発明による触媒を、好ましくは、担体基材上のコーティングの形態で、又は担体基材の成分として含むことを特徴としている。
【0104】
本発明による排気ガス浄化システムの好ましい実施形態では、担体支持材料上に担持された白金族金属、好ましくは白金、パラジウム、又はそれらの混合物若しくは組み合わせが、酸化触媒として使用される。
【0105】
好適な材料として当業者に既知である白金のための任意の担体材料は、特許請求の範囲から逸脱することなく使用することができる。当該材料は、30~250m/g、好ましくは100~200m/g(DIN 66132により測定)のBET表面積を示す。好ましい担体基材材料は、アルミナ、シリカ、二酸化マグネシウム、チタニア、ジルコニア、セリア、及びこれらの酸化物のうちの少なくとも2つを含む混合物並びに混合酸化物である。特に好ましい材料は、アルミナ及びアルミナ/シリカ混合酸化物である。アルミナを使用する場合、好ましくは、例えば酸化ランタンによって安定化される。
【0106】
排気ガス浄化システムは、次の順序で配置され、すなわち、排気ガス浄化システムの流れ方向において、酸化触媒が最初に配置され、続いて尿素水溶液のためのインジェクター、最後に本発明による触媒が配置される。
【実施例
【0107】
実施形態
Cu-TEPAの合成
室温で、撹拌しながら、37.9gのテトラエチレンペンタミン(0.2モル、Sigma-Aldrich)を、50gのCuSO 5HO(0.2モル、Sigma-Aldrich)及び200gのHO(1M溶液)からなる溶液に添加することによって、銅-テトラエチレンペンタミン錯体(Cu-TEPA)合成した。その溶液を室温で2時間撹拌し続けた。
【0108】
実施形態1
SAR=30(Si/Al=15)を有する3gのゼオライトY(CBV-720,Zeolyst International)を、27mLの1.2M水酸化ナトリウム溶液中に室温で懸濁した。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を1.5mL添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.033 Al/0.033 Cu-TEPA/0.70 NaOH/34 H0を有する。この懸濁液を室温で15分間撹拌し、次いで静置し、密閉したポリプロピレンボトル(PPボトル)中で、48時間、95℃で加熱した。これをアルミノシリケート溶液1と称する。
【0109】
アルミノシリケート溶液2は次のように調製した。すなわち、0.28gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、室温で5分間撹拌しながら、60mLのPPボトル中の12.43gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、5.46gのLudox(登録商標)AS-40(Sigma-Aldrich)を、室温で撹拌しながら10分以内に滴加し、その後1.65gの臭化ヘキサメトニウム(Acros)を一度に添加した。別の0.25gの塩化カリウム(LabChem)及び5.02gの蒸留水を2分以内に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.015 Al/0.092 KCl/0.81 TEAOH/0.13 RBr/25 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。この溶液を、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。このゲルを、撹拌せずに室温で更に48時間エージングさせた。
【0110】
エージングステップ後、アルミノシリケート溶液2を、アルミノシリケート溶液1に室温で一度に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.025 Al/0.39 NaOH/0.041 KCl/0.018 Cu-TEPA/0.36 TEAOH/0.0553 RBr/30 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。得られた混合物を15分間激しく撹拌することによって均質化し、その後、ステンレス鋼製オートクレーブに移した。この混合物を、自生圧力下、動的条件下、160℃で168時間加熱した。濾過し、500mLの脱イオン水で洗浄し、60℃で8~16時間乾燥させることにより、固体生成物を回収した。そのゼオライトを750℃まで1℃/分の温度勾配で8時間焼成した。生成したゼオライトは、図2に示したX線回折パターンを有し、12.6のSAR、ゼオライトの総重量に基づいて2.7重量%のCuOを有する。Na及びKの量は、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて計算すると、それぞれ0.06重量%及び0.25重量%である。ゼオライトのCHA含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて37重量%であり、ERI/CHA連晶中のERIとCHAの相対量を判定することによるXRDパターンの分析に基づいている。
【0111】
表1に、本実施形態で得られた焼成前のゼオライトのブラッグ距離、2θ位置、及び相対強度を示す。
【0112】
図3に、2つの異なる倍率で、実施形態1によるゼオライトのHRTEM画像を示す。
【0113】
【表1】
【0114】
実施形態2
SAR=30(Si/Al=15)を有する3gのゼオライトY(CBV-720,Zeolyst International)を、1.2Mの水酸化ナトリウム27mL溶液中に室温で懸濁した。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を1.5mL添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.033 Al/0.033 Cu-TEPA/0.70 NaOH/34 H0を有する。この懸濁液を15分間撹拌し、静置し、密閉したPPボトル中で、48時間、95℃で加熱した。これをアルミノシリケート溶液1と称する。
【0115】
アルミノシリケート溶液2を以下のように調製した。0.21gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、室温で5分間撹拌しながら、60mLのPPボトル中の9.32gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、4.1gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を、室温で撹拌しながら10分以内に滴加し、その後1.24gの臭化ヘキサメトニウム(Acros)を一度に添加した。別の0.19gの塩化カリウム(LabChem)及び3.77gの蒸留水を2分以内に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.015 Al/0.092 KCl/0.81 TEAOH/0.13 RBr/25 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。この溶液は、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。このゲルを、撹拌せずに室温で更に48時間エージングさせた。
【0116】
エージングステップ後、アルミノシリケート溶液2を、アルミノシリケート溶液1に室温で一度に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.026 Al/0.44 NaOH/0.034 KCl/0.02 Cu-TEPA/0.30 TEAOH/0.047 RBr/31 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。得られた混合物を15分間激しく撹拌することによって均質化し、その後、ステンレス鋼製オートクレーブに移した。この混合物を、動的条件及び自生圧力の下で、160℃で168時間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、500mLの脱イオン水で洗浄し、そして60℃で8~16時間乾燥させた。得られたゼオライトは、13.6のSAR、及びゼオライトの総重量に基づいて3.3重量%のCuOを有する。Na及びKの量は、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて計算すると、それぞれ0.58重量%及び1.0重量%である。ゼオライトのCHA含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて56重量%であり、ERI/CHA連晶中のERIとCHAの相対量を判定することによるXRDパターンの分析に基づいている。
【0117】
実施形態3
SAR=30(Si/Al=15)を有する3gのゼオライトY(CBV-720,Zeolyst International)を、27mLの1.2M水酸化ナトリウム溶液中に室温で懸濁した。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を1.5mL添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.033 Al/0.033 Cu-TEPA/0.70 NaOH/34 H0を有する。この懸濁液を15分間撹拌し、静置し、密閉したPPボトル中で、48時間、95℃で加熱した。これをアルミノシリケート溶液1と称する。
【0118】
アルミノシリケート溶液2を以下のように調製した。0.28gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、撹拌しながら、60mLのPPボトル中の12.43gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、5.46gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を、室温で5分間撹拌しながら滴加し、その後1.65gの臭化ヘキサメトニウム(Acros)を一度に添加した。別の0.25gの塩化カリウム(LabChem)及び5.02gの蒸留水を2分以内に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.015 Al/0.092 KCl/0.81 TEAOH/0.13 RBr/25 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。この溶液は、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。このゲルを、撹拌せずに室温で更に48時間エージングさせた。
【0119】
エージングステップ後、アルミノシリケート溶液2を、アルミノシリケート溶液1に室温で一度に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.025 Al/0.39 NaOH/0.041 KCl/0.02 Cu-TEPA/0.36 TEAOH/0.055 RBr/30 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。得られた混合物を15分間激しく撹拌しながら均質化し、静的条件下及び自生圧力下、95℃で504時間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、500mLの脱イオン水で洗浄し、そして60℃で8~16時間乾燥させた。得られたゼオライトは、12.9のSAR、及びゼオライトの総重量に基づいて3.9重量%のCuOを有する。Na及びKの量は、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて計算すると、それぞれ0.93重量%及び1.7重量%である。ゼオライトのCHA含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて46重量%であり、ERI/CHA連晶中のERIとCHAの相対量を判定することによるXRDパターンの分析に基づいている。
【0120】
実施形態4
SAR=12(Si/Al=6)(CBV-712,Zeolyst International)を有する3gのゼオライトYを、14mLの1.2M水酸化ナトリウム溶液と13mLの1.2M水酸化アンモニウム溶液との混合物中に室温で懸濁させた。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を1.5mL添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.083 Al/0.036 Cu-TEPA/0.41 NaOH/0.38 NHOH/38 H0を有する。この懸濁液を15分間撹拌し、静置し、密閉したPPボトル中で、48時間、95℃で加熱した。これをアルミノシリケート溶液1と称する。
【0121】
アルミノシリケート溶液2を以下のように調製した。0.28gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、撹拌しながら、60mLのPPボトル中の12.43gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、5.46gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を、室温で5分以内撹拌しながら滴加し、その後1.65gの臭化ヘキサメトニウム(Acros)を一度に添加した。別の0.25gの塩化カリウム(LabChem)及び5.02gの蒸留水を2分以内に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.015 Al/0.092 KCl/0.81 TEAOH/0.13 RBr/25 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。この溶液は、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。このゲルを、撹拌せずに室温で更に48時間エージングさせた。
【0122】
エージングステップ後、アルミノシリケート溶液2を、アルミノシリケート溶液1に室温で一度に添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.05 Al/0.22 NaOH/0.20 NHOH/0.043 KCl/0.019 Cu-TEPA/0.38 TEAOH/0.059 RBr/32 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。得られた混合物を15分間激しく撹拌することによって均質化し、その後、ステンレス鋼製オートクレーブに移した。この混合物を、静的条件及び自生圧力の下で、160℃で168時間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、500mLの脱イオン水で洗浄し、60℃で8~16時間乾燥させた。得られたゼオライトは、14.4のSAR、及びゼオライトの総重量に基づいて1.7重量%のCuOを有する。Na及びKの量は、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて計算すると、それぞれ0.37重量%及び2.1重量%である。ゼオライトのCHA含有量は、ERIとCHAとの総重量に基づいて20重量%であり、ERI/CHA連晶中のERIとCHAの相対量を判定することによるXRDパターンの分析に基づいている。
【0123】
実施形態5
実施形態4に記載のようにして得られた5gのゼオライトを、0.5MのNHClを含有する500mL水溶液中に懸濁させる。この混合物を、撹拌しながら還流条件下で4時間沸点で加熱する。ゼオライトを、濾過により回収し、1Lの脱イオン水で洗浄し、60℃で8~16時間乾燥させた。その後、この手順を2回繰り返す。Na及びKの量は、純金属として、ゼオライトの総重量に基づいて、計算すると、0.03重量%及び0.41重量%である。Cu含有量は、CuOとして、ゼオライトの総重量に基づいて、計算すると、0.19重量%まで低下した。
【0124】
実施形態6
実施形態1で得られた圧縮ゼオライト粉末からなる触媒ペレットを、オンラインの反応生成物分析を備えている石英固定床管状連続流通反応器に充填する。最初に、触媒を、シミュレートした空気流条件下、すなわち触媒試験の最高温度である450℃において、5%O及び95%N下で、前処理する。前処理後、触媒温度を150℃に低下させる。NH-SCR性能を評価するための典型的なガス組成は、500ppmのNO、450ppmのNH、5%のO、2%のCO、2.2%のHOからなる。ガス時空間速度(GHSV)は、0.5cmの触媒床及び250mL/分のガス流で得られる30000h-1に固定される。温度は一定の温度勾配、50℃間隔で、150から450℃まで段階的に上昇させる。60~120分の等温期間が予測され、各温度プラトーにおいて反応生成物をサンプリングする。150℃への戻り点により試験中の触媒性能の劣化を検出することができる。
【0125】
表2は、測定した各温度でのNO変換率を示している。
【0126】
図4はNO変換試験のグラフである。
【0127】
【表2】
【0128】
比較例1
SAR=30(Si/Al=15)を有する3gのゼオライトY(CBV-720,Zeolyst International)を、27mLの1.2M水酸化ナトリウム溶液中に室温で懸濁した。この溶液に、1MのCu-TEPA溶液を1.5mL添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.033 Al/0.033 Cu-TEPA/0.70 NaOH/34 H0を有する。この懸濁液を室温で15分間撹拌し、静置し、密閉したPPボトル中で、456時間、95℃で加熱した。生成したゼオライトは、純粋なCHA骨格型に対応するX線回折パターンを有する。
【0129】
比較例2
0.28gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、撹拌しながら、室温で、60mLのPPボトル中の12.43gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、5.46gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を、室温で5分以内撹拌しながら滴加し、その後1.65gの臭化ヘキサメトニウム(Acros)を一度に添加した。更に0.25gの塩化カリウム(LabChem)及び5.02gの蒸留水をゆっくり添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.015 Al/0.092 KCl/0.81 TEAOH/0.13 RBr/25 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。この溶液は、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。この混合物を、自生圧力下、動的条件下、160℃で168時間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、500mLの脱イオン水で洗浄し、60℃で一晩乾燥させた。生成したゼオライトは、結晶性材料に対応しているが、ERI骨格型ではないX線回折パターンを有する。得られた生成物は、異なるゼオライト骨格の混合物であった。
【0130】
比較例3
0.28gのアルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Fluka)を、撹拌しながら、室温で、60mLのPPボトル中の12.43gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(35重量%、Sigma-Aldrich)に添加した。この混合物を機械的に10分間撹拌した。この溶液に、5.46gのLudox AS-40(Sigma-Aldrich)を、室温で5分以内撹拌しながら滴加し、その後1.65gの臭化ヘキサメトニウム(Acros)を一度に添加した。更に0.25gの塩化カリウム(LabChem)及び5.02gの蒸留水を室温で10分以内にゆっくり添加した。最終ゲルは、次のモル比、すなわちSiO/0.015 Al/0.092 KCl/0.81 TEAOH/0.13 RBr/25 H0(式中、Rはヘキサメトニウム有機テンプレートである)を有する。この溶液は、室温で、密閉したPPボトル中で24時間撹拌したままにし、液体ゲルを形成させた。この混合物を、自生圧力下、動的条件下、100℃で336時間加熱した。固体生成物を、濾過により回収し、500mLの脱イオン水で洗浄し、そして60℃で8~16時間乾燥させた。生成したゼオライトは、純粋なERI骨格型に対応するX線回折パターンを有する。
【0131】
焼成後の実施形態1で得られたゼオライト、すなわち本発明によるERI/CHAゼオライトのブラッグ距離、2θ位置、及び相対強度、並びに比較例1によるCHA骨格型ゼオライトの対応する値及び比較例3によるERI骨格型ゼオライトの対応する値それぞれを表2に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
実施形態1によるERI/CHAゼオライトの2θ値のいくつかは、上記表3に2回記載されているが、これは、純粋なCHA及び純粋なERIそれぞれの2θ値に対応しているためである。これらの2θ値を表4に記載する。
【0134】
【表4】
図1
図2
図3a
図3b
図4