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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】新規抗CD137抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220509BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220509BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20220509BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220509BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220509BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220509BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220509BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220509BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220509BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220509BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220509BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K51/10 100
A61K51/10 200
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2019527232
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017079930
(87)【国際公開番号】W WO2018091740
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】1619648.7
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503211529
【氏名又は名称】アリゲーター・バイオサイエンス・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・エルマルク
(72)【発明者】
【氏名】サラ・フリッツェル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・フュレブリンク
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ペッテション
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・サール
(72)【発明者】
【氏名】カリン・エネル・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ローラ・ヴァラス
(72)【発明者】
【氏名】ローラ・フォン・シャンツ
(72)【発明者】
【氏名】ニーナ・ヴェイトンマキ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/134358(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/029073(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
A61K 39/395
A61K 45/00
A61K 51/10
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
C07K 16/28
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/63
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD137のドメイン2に対する結合特異性を有する抗体またはその抗原結合断片であって
a)コンセンサス配列G、F、T/N、F、G、Y、S、Yを有する重鎖CDR1配列、
b)コンセンサス配列I、G、S、G/T、S、S、Y/H、Tを有する重鎖CDR2配列、および
c)配列ARVYSSPGIDYを有する重鎖CDR3配列、を含む重鎖可変領域を含み、
並びに
a)コンセンサス配列Q、S、I、S/G、S、Y/Tを有する軽鎖CDR1配列、
b)コンセンサス配列A/G、A、Sを有する軽鎖CDR2配列、および
c)配列QQYYTWVPFTを有する軽鎖CDR3配列、を含む軽鎖可変領域を含む、
体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体または抗原結合断片は、以下の特性、
a)架橋依存性機構を介してCD137を刺激し、T細胞および他の免疫細胞を活性化する能力、および/または
b)カニクイザルCD137抗体との交差反応性、および/または
c)Fc受容体に結合することができる、および/または
d)腫瘍免疫を誘導することができる、
のうちの1つ以上を示す、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
Fc受容体に結合することができる抗体またはその抗原結合断片が、T細胞を活性化する能力を含み、T細胞を活性化する能力が、CD137およびFc受容体の両方への結合に依存する、請求項2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体または抗原結合断片が、ヒトCD137のアミノ酸66~107に位置する、またはその中に位置するエピトープに結合することができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
インタクトな抗体を含むまたはそれからなる;または、Fv断片およびFab様断片からなる群から選択される抗原結合断片を含むかまたはそれからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記インタクトな抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体である、請求項5に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記Fv断片は、単鎖Fvまたはジスルフィド結合Fvである、請求項5に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記Fab様断片は、Fab断片、Fab’断片またはF(ab) 断片である、請求項5に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
以下のCDR:
a)GFTFGYSY[配列番号3]、
b)IGSGSSYT[配列番号4]、および
c)ARVYSSPGIDY[配列番号5]、を含む、重鎖可変領域を含む;並びに
以下のCDR:
)QSISSY[配列番号6]、
b)AAS[配列番号7]、および
c)QQYYTWVPFT[配列番号8]、を含む、軽鎖可変領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む;および、配列番号2のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項9に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
以下のCDR:
a)GFNFGYSY[配列番号21]、
b)IGSTSSHT[配列番号22]、および
c)ARVYSSPGIDY[配列番号23]、を含む、重鎖可変領域を含む、並びに
以下のCDR:
a)QSIGST[配列番号24]、
b)GAS[配列番号25]、および
c)QQYYTWVPFT[配列番号26]、を含む、軽鎖可変領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
配列番号19のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む;および、配列番号20のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
重鎖定常領域、またはその一部を含む;および/または軽鎖定常領域、またはその一部を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記重鎖定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群から選択される免疫グロブリンサブタイプのものである、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
前記重鎖定常領域が、免疫グロブリンサブタイプIgG4であり、配列番号12、13、14および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、請求項14に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
前記軽鎖定常領域がκまたはλ軽鎖のものである、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
前記軽鎖定常領域が、配列番号16のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるκ軽鎖である、請求項16に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
Fc領域を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
前記Fc領域が天然に存在する、または前記Fc領域が天然に存在しない、請求項18に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
前記天然に存在しないFc領域が、抗体または抗原結合断片の半減期を短縮するための突然変異を含む、請求項19に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
前記抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を有する2本の重鎖および配列番号18のアミノ酸配列を有する2本の軽鎖を含むまたはそれらからなるインタクトなIgG4分子である;および/または
前記抗体が、配列番号29のアミノ酸配列を有する2本の重鎖および配列番号30のアミノ酸配列を有する2本の軽鎖を含むまたはそれらからなるインタクトなIgG4分子である、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
細胞傷害性部分および/または検出可能部分をさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項23】
前記細胞傷害性部分が、放射性同位元素を含むまたはそれからなる、または、前記細胞傷害性部分が、細胞傷害性薬物を含むまたはそれからなる、請求項22に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項24】
前記検出可能部分が、放射性同位元素を含むまたはそれからなる、請求項22に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、またはその成分ポリペプチド鎖をコードする、単離された核酸分子。
【請求項26】
抗体重鎖またはその可変領域をコードする;および/または、抗体軽鎖またはその可変領域をコードする、請求項25に記載の核酸分子。
【請求項27】
配列番号9のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる、または、配列番号27のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる;および/または、配列番号10のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる、または、配列番号28のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる、請求項25または26に記載の核酸分子。
【請求項28】
請求項25~27のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項29】
前記ベクターが、発現ベクターである、請求項28に記載のベクター。
【請求項30】
請求項25~27のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項28または29に記載のベクターを含む、組換え宿主細胞。
【請求項31】
前記宿主細胞が細菌細胞または哺乳動物細胞またはヒト細胞である、請求項30に記載の組換え宿主細胞。
【請求項32】
請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片を産生する方法であって、請求項30または31に記載の宿主細胞を、コードされる抗体またはその抗原結合断片の発現を許容する条件下で培養することを含む、方法。
【請求項33】
有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項34】
非経口送達に適合する、または、静脈内送達に適合する、または、局所送達に適合する、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
求項1~24のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む医薬
【請求項36】
癌の治療における使用のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む医薬。
【請求項37】
前記癌が、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵癌、卵巣癌、肺癌、子宮頸癌、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、骨癌、多発性骨髄腫、白血病、皮膚癌、膀胱癌および神経膠芽腫からなる群から選択される、請求項36に記載の医薬。
【請求項38】
前記白血病が、急性リンパ芽球性白血病[ALL]または急性骨髄性白血病[AML]である、請求項37に記載の医薬。
【請求項39】
前記皮膚癌が、黒色腫である、請求項37に記載の医薬。
【請求項40】
事前にスクリーニングされ、CD137およびFcγRを発現する細胞を含む腫瘍を有すると同定された患者を治療するために使用されるものである、請求項37~39のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項41】
請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片と、1つ以上のさらなる治療剤と、を含む、医薬。
【請求項42】
前記1つ以上のさらなる治療剤が癌の治療剤である、請求項41に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌等の疾患の治療に有用性を有する、CD137に対する結合特異性を有する抗体ベースのポリペプチドに関する。本発明はまた、そのような抗体を含む医薬組成物、使用、方法およびキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
CD137(4-1BB、TNFRSF9)はTNF受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであり、活性化されたCD4およびCD8T細胞、Treg、DC、単球、肥満細胞ならびに好酸球に発現する。CD137の活性化は、CD8T細胞の活性化および生存において重要な役割を果たす(Lee et al.,2002;Pulle et al.,2006)。それは、エフェクター機能を開始させるのではなく、持続および増強させ、Th1サイトカイン産生を優先的に支持する(Shuford et al.,1997)。CD4T細胞において、CD137刺激は最初に活性化、後に活性化誘導性細胞死をもたらし、なぜCD137アゴニスト抗体が腫瘍免疫だけではなく自己免疫においても治療効果を示したかを説明する(Zhang,JCI,2007,Sun,Trends Mol Med,2003)。CD137はTreg機能も抑制する(So,Cytokine Growth Factor Rev,2008)。CD137の活性化は、受容体のオリゴマー化に依存する(Rabu et al.,2005;Wyzgol et al.,2009)。
【0003】
CD137アゴニスト抗体は、腫瘍環境において内皮細胞を活性化し、ICAM-1およびVCAM-1の上方制御およびT細胞動員の改善をもたらすことが示されている(Palazon,Cancer Res,2011)。
【0004】
CD137は、マウスまたはヒトにおいて、それぞれサイトカインまたはCD16によって活性化されたNK細胞で上方制御される(例えば、Melero,CCR19(5)1044-53,2013およびそこに引用される参考文献を参照されたい)。CD137は、マウスだけではなくヒトにおいてもNK細胞を活性化し、ADCCを増強することが示されている(Kohrt et al.,2014)が、マウスにおいてNK細胞活性化をもたらし、ヒトにおいて阻害をもたらすという、マウスおよびヒトにおいてNK細胞に対する反対の作用を示唆する報告が存在する(Baessler,Blood,2010)。
【0005】
いくつかの研究は、アゴニストCD137抗体を用いた処置による腫瘍免疫の誘導を実証している(Dubrot et al.,2010;Gauttier et al.,2014;Kim et al.,2001;McMillin et al.,2006;Melero et al.,1997;Miller et al.,2002;Sallin et al.,2014;Taraban et al.,2002;Uno et al.,2006;Vinay and Kwon,2012;Wilcox et al.,2002)。さらに、それは、前臨床モデルにおいてCpG、TRAIL、CD40、OX-40、DR5、PD-1/PD-L1、CTLA-4Tim-3、IL-2、IL-12を含むいくつかの免疫調節剤と相乗作用を発揮する(Curran et al.,2011;Gray et al.,2008;Guo et al.,2013;Kwong et al.,2013;Lee et al.,2004;Morales-Kastresana et al.,2013;Pan et al.,2002;St Rose et al.,2013;Uno et al.,2006;Wei et al.,2013;Westwood et al.,2010;Westwood et al.,2014a;Westwood et al.,2014b)。
【0006】
2つのCD137抗体が臨床開発中である。ウレルマブ(BMS-66513)は、Bristol-Myers Squibbによって開発された完全ヒトIgG4抗体である。種々の適応症におけるいくつかの第I相試験および第II相試験が現在進行中である。他の開発中のCD137抗体は、Pfizerによって開発された完全ヒトIgG2抗体、PF-05082566である。これは現在、リンパ腫および種々の固形癌において第I相開発段階にある。
【0007】
CD137抗体のアゴニスト効果は、Fc領域のアイソタイプによって影響を受ける。診療所で検査される抗体は、IgG2またはIgG4のいずれかである。ほとんどのTNFRファミリーメンバーと同様に、CD137は活性化のために架橋に依存する(Wilson2011,Cancer Cell)。APCの膜上に発現されるCD137Lは、受容体の著しい複数の架橋を誘導し得る。抗体は、それ自体では2つのCD137受容体と架橋できるのみであり、強いシグナルを誘導するためには、他の細胞上で発現されるFcγRsを介したさらなる架橋(トランス)が強いCD137媒介シグナルの誘導に必要であり得る。これに対する例外は、未知の機構によって架橋非依存性シグナル伝達を誘導するIgG2抗体であり得る(White et al,2015Cancer Cell)。T細胞はFcγRsを発現せず、in vivoでのFcγRs媒介性架橋は、単球、マクロファージ、DC、ならびに潜在的にB細胞および他の細胞型によって媒介されると考えられている。CD40アゴニストのマウスモデルにおいて、阻害性FcγRであるFcγRIIBとの相互作用がこの効果に大きな役割を果たすことが示唆されている(Li2011,Science)が、OX40抗体の場合、活性化受容体との相互作用がより重要であり得る(Bulliard2014,Imm and Cell Biol)。CD137抗体の場合、FcγRIIは重要ではない(Sanmamed2015,Semin Onc)。ヒトのFcγR分布、および異なるFcγRに対する異なるIgGアイソタイプの親和性がマウスと異なるため、この解釈の妥当性は不明である。さらに、ヒトIgG1は、mIgGIIaと同様であり、またmIgG1よりも著しく低い、比較的低い親和性でmIgGIIaに結合するが、後者はin vivoで最も強力な効果を有する(Li Science2011,Overdijk2012JI,Horton et al2008,White et al2011and2014)。
【0008】
考慮すべき別の要因は、FcγR受容体の関与が、抗体でコーティングした細胞で、ADCC、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、および補体依存性細胞傷害(CDC)も引き起こす可能性があるということである(簡略化のために、以下のADCCはADCPおよびCDCを含むものとする)。典型的には、ヒトIgG1は、標的の性質、細胞型および受容体密度に応じて、NK/マクロファージ依存性ADCCの強力な誘導物質である。IgG4抗体もまたADCCを誘導し得るが、IgG1よりも低い程度である(Wang2015,Front Imm;Vidarson2014Front Imm)。
【0009】
したがって、アイソタイプが異なるCD137アゴニスト抗体の効果は、1)より強い免疫活性化をもたらす架橋の誘導と、2)エフェクターT細胞(主にCD8T細胞)およびTregsの両方の死滅をもたらし得るADCCの誘導とのバランスによって影響を受け得る。1)および2)の正味の効果は、CD137発現細胞の分布、標的細胞がFcγR発現免疫細胞と結合する可能性、受容体密度および親和性、ならびにADCCに対するTeff対Tregの感受性に依存する可能性が高い。CD137の発現は、黒色腫腫瘍においてCD8およびTregの両方で高い(Quezada,presentation SITC2015)。IgG4型は、マクロファージおよび単球によるFcγRI媒介性架橋を可能にするが、それでもなおエフェクターCD8T細胞のNK媒介性ADCCを最小限に抑える。
【0010】
しかしながら、上記で概説したように、マウスとヒトのFcR間の発現および親和性の違いのために、マウスモデルにおいて異なるヒトFcの比較を説明することは困難である。さらに、CD137とCD137Lとの結合をブロックする抗体のin vivoでの機能的帰結が現在議論されている。
【0011】
いくつかの研究は、アゴニストCD137mAbを用いた処置による腫瘍免疫の誘導を実証している(Dubrot et al.,2010;Gauttier et al.,2014;Kim et al.,2001;McMillin et al.,2006;Melero et al.,1997;Miller et al.,2002;Sallin et al.,2014;Taraban et al.,2002;Uno et al.,2006;Vinay and Kwon,2012;Wilcox et al.,2002)。2つの異なる抗体、Lob12.3および3H3が、マウスのin vivo試験に一般的に使用される(Shuford1997J Exp Med)。
【0012】
マウスモデルに見られる毒性は、時間依存的ではあるが用量依存的ではない様式で反復投与した後に検出された(Ascierto2010Semin Onc,Dubrot2010Can Imm,Niu2007JI)。毒性は、皮膚毒性および肝毒性:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ比(ASAT/ALAT)およびサイトカイン放出を含む。これは、毒性が、免疫細胞集団(おそらくT細胞)のCD137媒介性の事前活性化を必要とするか、または増強された架橋をもたらし得るCD137抗体の凝集体を潜在的に形成する抗薬物抗体(ADA)応答によって引き起こされる二次効果に依存するかを示唆しているマウスに見られる毒性は可逆的であり、TNFα/CD8細胞依存性に依存すると考えられる(Ascierto2010Sem Onc)。サルの毒性試験では、4週間にわたって週1回、最大100mg/kgの単回投与および反復投与の両方が、皮膚毒性または肝毒性が検出されることなく許容されることが示された(Ascierto2010,Semin Onc)。
TNF受容体ファミリーメンバーを介した長期かつ継続的な活性化は、免疫枯渇につながる可能性がある。したがって、受容体を発現している細胞の休止期間を可能にする様式でそのような抗体を投与することが有利であるかもしれない。特定の投薬プロトコルにおいて休止期間を延長するための1つのアプローチは、例えば、新生児Fc受容体(FcRn)との結合を減少させることによって、抗体の半減期を短縮することである。これは、投与経路にもよるが、治療に付随する毒性も軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第4,235,871号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
改善された抗腫瘍療法、特に臨床用途に適した、軽減された毒性等の改善された特性を有する抗CD137抗体に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、CD137のドメイン2に対する結合特異性を有する抗体またはその抗原結合断片(「抗体ポリペプチド」)を提供し、該抗体または抗原結合断片は、CD137アゴニストであり、かつ参照抗体「1630/1631」とヒトCD137との結合を阻害することができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、CD137のドメイン2に対する結合特異性を有する抗体またはその抗原結合断片(「抗体ポリペプチド」)を提供し、該抗体または抗原結合断片はCD137アゴニストであり、かつ参照抗体「2674/2675」とヒトCD137との結合を阻害することができる。
【0017】
本発明の上記態様の一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、参照抗体「1630/1631」および/または「2674/2675」とヒトCD137との結合を阻害することができる。
【0018】
本発明の第1の態様によれば、1つ以上の参照抗体とヒトCD137との結合を阻害することができる抗体ポリペプチドが提供される。
【0019】
誤解を避けるために、以下の開示は本発明の第1および第2の態様の両方に適用できる。
【0020】
「CD137」は、例えば、GenBank登録番号AAH06196.1(その配列は以下の配列番号11に記載される)に記載されるような、ヒトCD137タンパク質を特に含む。CD137は、科学文献において4-1BBおよびTNFRSF9としても知られている。
【0021】
ヒトCD137、アミノ酸配列:>gi|571321|gb|AAA53133.1|4-1BB[ホモサピエンス]
【化1】
【0022】
「ドメイン2」は、ヒトCD137のアミノ酸66~107に対応する(上記配列番号11の太字の下線領域を参照)。
【0023】
したがって、本発明の抗体ポリペプチドは、CD137に対する特異性を有する。「特異性」は、抗体ポリペプチドが、in vivoで、すなわち、CD137が人体内に存在する生理学的条件下で、CD137に結合することができることを意味する。好ましくは、抗体ポリペプチドは、in vivoでは他のいかなるタンパク質にも結合しない。そのような結合特異性は、ELISA、免疫組織化学、免疫沈降、ウェスタンブロット、およびCD137を発現するトランスフェクト細胞を用いたフローサイトメトリー等の当該技術分野において周知の方法によって決定することができる。
【0024】
抗体は、好ましくは、10×10-9M未満または7×10-9M未満、より好ましくは4、または2×10-9M未満、最も好ましくは1.2×10-9M未満のKd値でヒトCD137に結合する。有利には、抗体ポリペプチドは、CD137に選択的に結合することができる、すなわち、他のいかなるタンパク質と比べて少なくとも10倍強力にCD137に結合する。抗CD137抗体は、好ましくはCD137に特異的に結合する、すなわち、CD137には結合するが他の分子には結合しないかまたはより低い親和性で結合する。したがって、典型的には、ヒトCD137に対する抗体のKdは、他の非標的分子、例えば、マウスCD137、他のTNFRスーパーファミリーメンバー、または環境中の任意の他の無関係な物質もしくは付随する物質に対するKdの2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍低い。より好ましくは、Kdは、50倍少ない、さらにより好ましくは100倍少ない、さらにより好ましくは200分倍少ない。
【0025】
相互作用(抗体とリガンドとの間の相互作用等)の全体的な親和性(KD)ならびにオン速度(ka)およびオフ速度(kd)を測定するための方法は、当該技術分野において周知である。例示的なin vitro法は、添付の実施例に記載される。フローサイトメトリーに基づく方法を使用することも考えられる(Sklar et al.,Annu Rev Biophys Biomol Struct,(31),97-119,2002)。
【0026】
本明細書で使用されるCD137という用語は、典型的にはヒトCD137を指す。抗体は、非ヒト霊長類、例えばMacaca fascicularis(カニクイザル)由来のCD137等の、他の哺乳動物由来のCD137に対してある程度の結合親和性を有し得る。抗体は、好ましくはマウスCD137に結合しない、かつ/または他のヒトTNFRスーパーファミリーメンバー、例えばヒトOX40もしくはCD40に結合しない。
【0027】
典型的には、本発明は、その天然状態にあるCD137、特に細胞表面に局在するCD137に対して親和性を有する抗体または抗原結合断片を提供する。
【0028】
「細胞の表面に局在する」は、CD137の1つ以上の領域が細胞表面の外面に存在するように、CD137が細胞と会合していることを意味する。例えば、CD137は、細胞外表面に提示された1つ以上の領域とともに細胞原形質膜に挿入され得る(すなわち、膜貫通タンパク質として配向される)。これは細胞によるCD137の発現の過程で起こり得る。したがって、一実施形態において、「細胞の表面に局在する」は、「細胞の表面に発現する」ことを意味し得る。代替として、CD137は、それを細胞表面の特定の領域(単数または複数)に局在化させる共有結合的および/またはイオン的な相互作用によって細胞外に存在してもよい。
【0029】
本明細書に定義される抗体およびその抗原結合断片は、CD137アゴニストである。例えば、それらはCD8+T細胞からのインターフェロンγの放出を誘導することが可能であり得る。抗CD137抗体のアゴニスト活性は、初代CD8+T細胞に基づくT細胞アッセイにおいて評価され得る(実施例を参照)。
【0030】
したがって、抗体はCD137を発現する細胞の活性を調節することができ、該調節は該細胞の活性の増加または低下である。細胞は、典型的にはT細胞である。抗体は、CD4+もしくはCD8+エフェクター細胞の活性を増加させることができるか、または制御性T細胞(Treg)の活性を低下させることができるか、もしくは該細胞を枯渇させることができる。いずれの場合も、抗体の正味の効果は、エフェクターT細胞、特にCD4+、CD8+、またはNKエフェクターT細胞の活性の増加である。エフェクターT細胞の活性の変化を決定するための方法は周知であり、先に記載される通りである。
【0031】
抗体は、好ましくはin vitroでCD8+T細胞における活性の増加を引き起こし、任意選択的に、該活性の増加は、T細胞による増殖、IFN-γ産生および/またはIL-2産生の増加である。増加は、同じアッセイで測定されたアイソタイプ対照抗体によって引き起こされる活性の変化より、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも25倍高い。
【0032】
上記で概説したように、1つ以上の参照抗体とヒトCD137との結合を阻害することができる抗体ポリペプチドが提供される。本明細書に記載される参照抗体は、参照抗体1630/1631および参照抗体2674/2675である。
【0033】
参照抗体「1630/1631」は、それぞれ配列番号17および18のアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含むインタクトなIgG抗体を意味する。
【化2】
【化3】
【0034】
参照抗体「2674/2675」は、それぞれ配列番号29および30のアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含むインタクトなIgG抗体を意味する。
【化4】
【化5】
【0035】
以下に論じるように、参照抗体「1630/1631」は、CD137のドメイン2に結合する。参照抗体2674/2675もまた、CD137のドメイン2に結合する。したがって、本発明の抗体または抗原結合断片は、CD137のドメイン2にも結合することを理解されたい。
【0036】
「参照抗体「1630/1631」とヒトCD137との結合を阻害することができる」は、本発明の抗体ポリペプチドの存在が、「1630/1631」とヒトCD137との結合を全体的または部分的に阻害することを意味する。同様に、「参照抗体「2674/2675」とヒトCD137との結合を阻害することができる」は、本発明の抗体ポリペプチドの存在が、「2674/2675」とヒトCD137との結合を全体的または部分的に阻害することを意味する。そのような競合的結合阻害は、当該技術分野において周知のアッセイおよび方法を用いて、例えば、固定化されたCD137を有するBIAcoreチップを使用して、試験される抗体ポリペプチドを用いておよび用いずに、参照抗体「1630/1631」または「2674/2675」とともにインキュベートすることにより決定することができる。代替として、参照抗体「1630/1631」または「2674/2675」をBIAcoreチップの表面に固定化し、CD137抗原を固定化した抗体に結合させ、次いで二次抗体を同時CD137結合能について試験する、ペアワイズマッピング手法を用いることができる(例えば、「BIAcore Assay Handbook’,GE Healthcare Life Sciences,29-0194-00AA05/2012(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0037】
さらなる代替例において、競合的結合阻害はフローサイトメトリーを用いて決定することができる。例えば、試験抗体が1630/1631または2674/2675参照抗体の細胞表面抗原との結合を阻害することができるかどうかを調べるために、抗原を発現する細胞を、細胞を洗浄する前に試験抗体とともに20分間プレインキュベートし、フローサイトメトリーによって検出することができるフルオロフォアにコンジュゲートした参照1630/1631または2674/2675抗体とともにインキュベートすることができる。試験抗体とのプレインキュベーションがフローサイトメトリーにおける参照1630/1631または2674/2675抗体の検出率を低下させる場合、試験抗体は参照抗体と細胞表面抗原との結合を阻害する。試験される抗体がCD137に対して高い親和性を示す場合、より短いプレインキュベーション期間が用いられてもよい(またはプレインキュベーションを全く行わなくてもよい)。
【0038】
さらなる代替例において、競合的結合阻害は、(例えば、実施例8に記載されるように)ELISAを用いて決定することができる。
【0039】
「抗体またはその抗原結合断片」は、実質的にインタクトな抗体分子だけではなく、キメラ抗体、ヒト化抗体、単離されたヒト抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、ならびにそれらの抗原結合断片および誘導体を含む。好適な抗原結合断片および誘導体として、必ずしも限定されないが、Fv断片(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片およびF(ab)断片)、単一可変ドメイン(例えばVおよびVドメイン)およびドメイン抗体(dAb、単一および二重形式[すなわちdAb-リンカー-dAb]を含む)が挙げられる。全抗体ではなく抗体断片を使用する潜在的な利点は、数倍にもなる。より小さいサイズの断片は、固形組織のより良好な透過性等の改善された薬理学的特性をもたらし得る。さらに、Fab、Fv、ScFv、およびdAb抗体断片等の抗原結合断片は、E.coliで発現されてそこから分泌され得るため、大量の該断片を容易に産生することを可能にする。
【0040】
例えば、抗原結合断片は、scFv分子、すなわち、VおよびVパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して結合している分子を含んでもよい。
【0041】
「抗体またはその抗原結合断片」という句はまた、抗体模倣物(例えば、高度の安定性を有するが、特定の位置に可変性を導入することを可能にする非抗体足場構造)を包含することが意図される。生化学の当業者は、Gebauer&Skerra,2009,Curr Opin Chem Biol13(3):245-255(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に論じられるように、多くのそのような分子に精通しているであろう。例示的な抗体模倣物として、アフィボディ(トリネクチンとも称される、Nygren,2008,FEBS J,275,2668-2676)、CTLD(テトラネクチンとも称される、Innovations Pharmac.Technol.(2006),27-30)、アドネクチン(モノボディとも称される、Meth.Mol.Biol.,352(2007),95-109)、アンチカリン(Drug Discovery Today(2005),10,23-33)、DARPin(アンキリン、Nat.Biotechnol.(2004),22,575-582)、アビマー(Nat.Biotechnol.(2005),23,1556-1561)、マイクロボディ(FEBS J,(2007),274,86-95)、ペプチドアプタマー(Expert.Opin.Biol.Ther.(2005),5,783-797)、クニッツドメイン(J.Pharmacol.Exp.Ther.(2006)318,803-809)、アフィリン(Trends.Biotechnol.(2005),23,514-522)、アフィマー(Avacta Life Sciences,Wetherby,UK)が挙げられる。
【0042】
当業者はさらに、本発明が、現在存在するかまたは将来的に存在するかにかかわらず、抗体およびその抗原結合断片の修飾型、例えば、ポリエチレングリコールまたは別の好適なポリマーの共有結合により修飾された型も包含することを理解するであろう(下記参照)。
【0043】
抗体および抗体断片を作製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、抗体分子のin vivo産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi.et al,1989.Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:3833-3837、Winter et al.,1991,Nature349:293-299(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))、または培養中の細胞株によるモノクローナル抗体分子の形成を用いるいくつかの方法のうちのいずれか1つを介して抗体を作製することができる。これらは、限定されないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびエプスタイン・バーウイルス(EBV)-ハイブリドーマ技術(Kohler et al.,1975.Nature256:4950497;Kozbor et al.,1985.J.Immunol.Methods81:31-42;Cote et al.,1983.Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:2026-2030;Cole et al.,1984.Mol.Cell.Biol.62:109-120(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
【0044】
モノクローナル抗体の産生に適した方法はまた、「Monoclonal Antibodies:A manual of techniques”,H Zola(CRC Press,1988(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))および「Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications”,J G R Hurrell(CRC Press,1982(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))にも開示されている。
【0045】
同様に、抗体断片は、当該技術分野において周知の方法を用いて得ることができる(例えば、Harlow&Lane,1988,“Antibodies:A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。例えば、本発明による抗体断片は、抗体のタンパク質分解性加水分解によって、または断片をコードするDNAのE.coliもしくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物または他のタンパク質発現系)における発現によって調製することができる。代替として、抗体断片は、従来の方法による全抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。
【0046】
本発明の抗体は、参照抗体1630/1631および2674/2675の可変領域を参照することによって定義される。
【0047】
「1630/1631」と命名された参照抗体は以下を含む:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
【化6】
および
(b)配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
【化7】
【0048】
「2674/2675」と命名された参照抗体は以下を含む:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
【化8】
および
(b)配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
【化9】
【0049】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、標準的な20個の遺伝的にコードされたアミノ酸およびそれらの対応する(天然の「L」型と比較して)「D」型の立体異性体、ωアミノ酸および他の天然に存在するアミノ酸、非従来型アミノ酸(例えば、α,α-ジ置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸等)ならびに化学的に誘導されたアミノ酸を含む(下記参照)。
【0050】
アミノ酸が「アラニン」または「Ala」または「A」のように具体的に列挙されている場合、その用語は、他に明示的に述べられていない限り、L-アラニンおよびD-アラニンの両方を指す。所望の機能特性がポリペプチドによって保持されている限り、他の非従来型アミノ酸も本発明のポリペプチドに適した成分であり得る。示されたペプチドについて、各コードされたアミノ酸残基は、必要に応じて、従来型アミノ酸の慣用名に対応する一文字表記によって表される。
【0051】
一実施形態において、本明細書に定義される抗体ポリペプチドは、L-アミノ酸を含むかまたはそれからなる。
【0052】
当業者は、抗体またはその抗原結合断片の結合特異性が、構成重鎖および軽鎖の可変領域内の相補性決定領域(CDR)、例えば、本明細書に記載されるCDR等の存在によって付与されることを理解するであろう。
【0053】
当業者はさらに、上記可変領域を含む任意のインタクトなIgG抗体が、1630/1631または2674/2675がCD137と結合するのを競合的に阻害する本発明の抗体ポリペプチドを同定するための参照抗体として使用され得ることを理解するであろう。しかしながら、好ましくは、参照抗体1630/1631は、それぞれ配列番号17および18に定義される重鎖および軽鎖からなり、参照抗体2674/2675は、それぞれ配列番号29および30に定義される重鎖および軽鎖からなる。
【0054】
競合的結合は、典型的には、試験抗体が参照抗体(この場合は1630/1631または2674/2675)に結合する抗原のエピトープで結合するか、または少なくともそれに非常に近接して結合するために生じる。しかしながら、当業者は、競合的結合が立体障害によっても生じ得ることを理解するであろう:したがって、試験抗体は、参照抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープで結合し得るが、それでもなお参照抗体と抗原との結合を妨げるのに十分なサイズまたは構成であり得る。
【0055】
本発明の抗体および抗原結合断片は、それらを癌の診断薬および治療剤として特に好適にする特性を示すことに基づいて、抗CD137抗体のスクリーニング後に同定された。
【0056】
したがって、一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、以下の特性のうちの1つ以上を示す:
a)架橋依存性機構を介してCD137を刺激し、T細胞および他の免疫細胞を活性化する能力(例えば、CD8+T細胞からのインターフェロンγの放出を誘導するため、実施例を参照)、および/または
b)カニクイザルCD137との交差反応性(実施例を参照)。
【0057】
例えば、抗体または抗原結合断片は、上記特性の両方を示し得る。
【0058】
上記のように、本発明の抗体は架橋依存性機構を有し得る。「架橋依存性機構」は、CD137を刺激するために抗体がCD137およびFc受容体の両方に結合しなければならない、Fc架橋依存性の機構を含む。そのため、抗体は、CD137およびFc受容体の両方に結合することができなければならない。
【0059】
好ましい実施形態において、標的とされるFc受容体はFcγRである。FcγRの例として、FcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIBが挙げられる。したがって、一実施形態において、FcγRはFcγRIIAであり得る。FcγRIIAは、FcγRIIAのR131およびH131アロタイプの両方を含む。したがって、一実施形態において、標的とされるFcγRは、FcγRIIAのR131アロタイプである。
【0060】
代替の実施形態において、抗体は、Fc受容体との結合の非存在下でCD137を刺激することができるように、Fc架橋非依存性であり得る。
【0061】
したがって、例示的な抗体2674/2675および1630/1631は、共刺激性CD137受容体を標的とするFcγR架橋依存性アゴニスト抗体である。したがって、それらはCD137およびFcγRを発現する細胞を含む組織または腫瘍においてのみ活性である。「CD137およびFcγRを発現する細胞を含む腫瘍」は、CD137およびFcγRを発現する腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤性免疫細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、T細胞、B細胞および顆粒球等)を含む腫瘍または腫瘍流入領域リンパ節を含む。CD137およびFcγRは、腫瘍内の別々の細胞上で発現され得、かつ/または同じ細胞で同時発現され得ることを理解されたい。したがって、参照抗体2674/2675および1630/1631は、腫瘍の微小環境においてCD137およびFcγRの両方を発現する細胞に関連した適応症において腫瘍指向性の免疫活性化を提供するであろう:これは、全身性免疫活性化を誘導することができるFcγR非依存性CD137アゴニスト(例えば、ウレルマブ)とは対照的である。抗体2674/2675および1630/1631の腫瘍局在化作用は、主として異なるFcγRを発現する腫瘍浸潤マクロファージ/骨髄細胞の数に依存する。
【0062】
IgG4は、FcγRIに対して高親和性で結合し、またFcγRIIaおよびFcγRIIbに対して中程度/低い親和性で結合することが知られている。FcγRIおよびFcγRIIaは単球に発現し、FcγRIIbはB細胞に高密度で発現する。抗体2674/2675および1630/1631の架橋は、腫瘍内でおよび隣接する流入領域リンパ節において優先的に起こる。血清IgGレベルが高い全身血中では、遊離型の非ブロックFcγRの利用可能性は、効果的な架橋が起こるには低すぎると考えられる。したがって、全身性免疫活性化のリスクは低いと考えられており、これは他のCD137mAbと比較してリスク便益プロファイルを改善する。
【0063】
2674/2675および1630/1631等の本発明の抗体を用いた治療のための患者選択およびバイオマーカーの理論的根拠は、CD137およびFcγRを発現する浸潤細胞を有する腫瘍型によって導かれ得る。したがって、本発明の抗体は、CD137およびFcγRを発現する細胞を含む腫瘍を有することに基づいて(すなわち、コンパニオン診断試験として)選択された患者に使用するためのものであり得る。
【0064】
「浸潤細胞」は、単球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、T細胞、B細胞、顆粒球等の腫瘍浸潤性免疫細胞を含む
【0065】
有利には、抗体または抗原結合断片は、腫瘍免疫を誘導することができる。腫瘍免疫は、当該技術分野において周知の方法を用いて、例えば、同じ腫瘍を用いたCD317抗体処置によって所与の腫瘍から治癒したマウスを再チャレンジすることによって、実証することができる。腫瘍免疫が抗体療法によって誘導されている場合、その腫瘍は再チャレンジの際に拒絶される。
【0066】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、CD137を発現する細胞に結合すると、以下を誘導することが実質的にできない:
a)抗体依存性細胞傷害(ADCC)
b)抗体依存性細胞食作用(ADCP)および/または
c)補体依存性細胞傷害(CDC)。
【0067】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、参照抗体1630/1631および/または2674/2675が結合することができるCD137のエピトープと少なくとも部分的に重複する、CD137の細胞外ドメインのエピトープに結合することができる。したがって、抗体または抗原結合断片は、CD137のドメイン2に/その中に位置するエピトープに結合することが可能であり得る。
【0068】
一実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドは、インタクトな抗体(IgG1またはIgG4抗体等)を含むかまたはそれからなる。好ましい態様において、抗体はIgG4抗体である。
【0069】
代替の実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドは、Fv断片(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片およびF(ab)断片)、およびドメイン抗体(例えば、単一のV可変ドメインまたはV可変ドメイン)からなる群から選択される抗原結合断片を含むかまたはそれからなる。特に、抗体ポリペプチドはscFvであり得る。
【0070】
さらなる実施形態において、上で論じたように、本発明のポリペプチドは、アフィボディ、テトラネクチン(CTLD)、アドネクチン(モノボディ)、アンチカリン、DARPin(アンキリン)、アビマー、iMab、マイクロボディ、ペプチドアプタマー、クニッツドメインおよびアフィリンを含むかまたはそれらからなる群から選択される抗体模倣物を含むかまたはそれからなる。
【0071】
一実施形態において、本発明の第1または第2の態様による抗体またはその抗原結合断片は、
a)コンセンサス配列G、F、T/N、F、G、Y、S、Yを有する重鎖CDR1配列
b)コンセンサス配列I、G、S、G/T、S、S、Y/H、Tを有する重鎖CDR2配列、および
c)配列ARVYSSPGIDYを有する重鎖CDR3配列、を含む。
【0072】
一実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、
a)コンセンサス配列Q、S、I、S/G、S、Y/Tを有する軽鎖CDR1配列
b)コンセンサス配列A/G、A、Sを有する軽鎖CDR2配列、および
c)配列QQYYTWVPFTを有する軽鎖CDR3配列、を含む。
【0073】
好ましい態様において、本発明の第1の態様による抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRを含む重鎖可変領域を含む:
a)GFTFGYSY[配列番号3]、または配列番号3と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列
b)IGSGSSYT[配列番号4]、または配列番号4と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列、および
c)ARVYSSPGIDY[配列番号5]、または配列番号5と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列。
【0074】
したがって、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号3、4および5のCDRを含む重鎖可変領域を含み得る。
【0075】
例えば、抗体またはその抗原結合断片は、1630/1631参照抗体の対応する領域のアミノ酸配列、すなわち配列番号1を有する重鎖可変領域を含み得る。
【0076】
代替の好ましい実施形態において、本発明の第1または第2の態様による抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRを含む重鎖可変領域を含む:
a)GFNFGYSY[配列番号21]、または配列番号21と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列、
b)IGSTSSHT[配列番号22]、または配列番号22と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列、および
c)ARVYSSPGIDY[配列番号23]、または配列番号23と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列。
【0077】
したがって、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号21、22および23のCDRを含む重鎖可変領域を含み得る。
【0078】
例えば、抗体またはその抗原結合断片は、2674/2675参照抗体の対応する領域のアミノ酸配列、すなわち配列番号19を有する重鎖可変領域を含み得る。
【0079】
しかしながら、CDR配列内の低レベルの変異(典型的には、わずか1、2または3個のアミノ酸)は、CD137に対する抗体または抗原結合断片の特異性を喪失することなく許容され得ることを理解されたい(いずれかの実施形態に関して、1630/1631または2674/2675)。
【0080】
例えば、代替の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、上記で定義されたCDRを含む重鎖可変領域を含んでもよく、H1およびH2のCDRは、それぞれ、配列番号3および4の変異型であり、H3CDRは配列番号5である。
【0081】
さらなる代替の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、上記で定義されたCDRを含む重鎖可変領域を含んでもよく、H1およびH2のCDRは、それぞれ、配列番号21および22の変異型であり、H3CDRは配列番号23である。
【0082】
パーセント同一性は、例えば、Expasy機関のサイト(http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN_form.html)において、Math.パラメータとして、グローバルアライメントオプション、スコアリングマトリックスBLOSUM62、開始ギャップペナルティ-14、伸長ギャップペナルティ-4を使用して、LALIGNプログラム(Huang and Miller,Adv.Appl.Math.(1991)12:337-357その開示は参照により本明細書に組み込まれる))によって決定することができる。代替として、2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、好適なコンピュータプログラム、例えば、University of Wisconsin Genetic Computing GroupのGAPプログラムを使用して判定されてもよく、パーセント同一性は、配列が最適に整列されたポリペプチドに関連して算出されることを理解されたい。
【0083】
アライメントは、代替として、(参照により本明細書に組み込まれる、Thompson et al.,1994,Nucl.Acid Res.22:4673-4680に記載されるような)ClustalWプログラムを使用して実施されてもよい。使用されるパラメータは、次の通りであり得る。
-高速ペアワイズアライメントパラメータ:Kタプル(ワード):サイズ1、ウィンドウサイズ:5、ギャップペナルティ:3、上対角成分の数:5。スコアリング方法:xパーセント。
-マルチプルアライメントパラメータ:ギャップ開始ペナルティ:10、ギャップ伸長ペナルティ;0.05。
-スコアリングマトリックス:BLOSUM。
【0084】
代替として、BESTFITプログラムを使用して、局所配列アライメントを判定してもよい。
【0085】
さらに好ましい実施形態において、本発明の第1の態様による抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRを含む軽鎖可変領域を含む:
a)QSISSY[配列番号6]、または配列番号6と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列
b)AAS[配列番号7]、または配列番号7と比較して最大2個のアミノ酸変異、例えば、1もしくは2個の変異を含むアミノ酸配列、および
c)QQYYTWVPFT[配列番号8]、または配列番号8と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列。
【0086】
したがって、抗体ポリペプチドは、配列番号6、7および8のCDRを含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0087】
例えば、抗体またはその抗原結合断片は、1630/1631参照抗体の対応する領域のアミノ酸配列、すなわち配列番号2を有する軽鎖可変領域を含み得る。
【0088】
代替の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、上記で定義されたCDRを含む軽鎖可変領域を含んでもよく、L1およびL2のCDRは、それぞれ、配列番号6および7の変異型であり、L3CDRは配列番号8である。
【0089】
さらなる好ましい実施形態において、本発明の第1または第2の態様による抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRを含む軽鎖可変領域を含む:
a)QSIGST[配列番号24]、または配列番号24と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列
b)GAS[配列番号25]、または配列番号25と比較して最大2個のアミノ酸変異、例えば、1もしくは2個の変異を含むアミノ酸配列、および
c)QQYYTWVPFT[配列番号26]、または配列番号26と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2もしくは3個の変異を含むアミノ酸配列。
【0090】
したがって、抗体ポリペプチドは、配列番号24、25および26のCDRを含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0091】
例えば、抗体またはその抗原結合断片は、1630/1631参照抗体の対応する領域のアミノ酸配列、すなわち配列番号20を有する軽鎖可変領域を含み得る。
【0092】
代替の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、上記で定義されたCDRを含む軽鎖可変領域を含んでもよく、L1およびL2のCDRは、それぞれ、配列番号24および25の変異型であり、L3CDRは配列番号26である。
【0093】
当業者は、ヒト治療のために、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体が使用されることを理解するであろう。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト抗体に由来する最小部分を有する遺伝子操作されたキメラ抗体または抗体断片である。ヒト化抗体は、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補的決定領域が、所望の機能を有するマウス、ラット、またはウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)の相補的決定領域に由来する残基によって置き換えられた抗体を含む。いくつかの例において、ヒト抗体のFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入された相補性決定領域またはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、相補性決定領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てが関連するヒトコンセンサス配列のものに対応する、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、典型的にはヒト抗体に由来するFc領域等の抗体定常領域の少なくとも一部も含むことが最適である(例えば、Jones et al.,1986.Nature321:522-525;Riechmann et al.,1988,Nature332:323-329;Presta,1992,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0094】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野において周知である。概して、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば移入残基と称され、典型的には移入可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的に、ヒト相補性決定領域を対応するげっ歯類の相補性決定領域で置換することにより、記載されるように行うことができる(例えば、Jones et al.,1986,Nature321:522-525;Reichmann et al.,1988.Nature332:323-327;Verhoeyen et al.,1988,Science239:1534-1536l;US4,816,567(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。したがって、そのようなヒト化抗体は、実質的にインタクト未満のヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されているキメラ抗体である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの相補性決定領域残基およびおそらくいくつかのフレームワーク残基が、げっ歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されているヒト抗体であり得る。キメラ抗体は、Neubergerらによって論じられている(1998,8th International Biotechnology Symposium Part2,792-799)。
【0095】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む当該技術分野で既知の種々の技術を用いて同定することもできる(例えば、Hoogenboom&Winter,1991,J.Mol.Biol.227:381;Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581;Cole et al.,1985,In:Monoclonal antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,pp.77;Boerner et al.,1991.J.Immunol.147:86-95(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0096】
当業者は、本発明のヒト化抗体または抗原結合断片が、重鎖定常領域またはその一部をさらに含み得ることを理解するであろう(下記参照)。
【0097】
一実施態様において、抗体ポリペプチドは、IgG重鎖(IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖等)のCH1、CH2および/またはCH3領域を含む。したがって、抗体ポリペプチドは、IgG4重鎖由来の定常領域の一部または全てを含み得る。例えば、抗体ポリペプチドは、それぞれ上記で定義された重鎖および軽鎖可変領域のいずれかと組み合わせて、CH1およびCL定常領域を含むFab断片であり得る。
【0098】
同様に、上記で定義された本発明の抗体または抗原結合断片は、軽鎖定常領域またはその一部をさらに含み得る(下記参照)。例えば、抗体ポリペプチドは、κまたはλ軽鎖由来のCL領域を含み得る。
【0099】
一実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、抗体Fc領域を含む。当業者は、Fc部分がIgG抗体、または異なるクラスの抗体(IgM、IgA、IgDまたはIgE等)に由来し得ることを理解するであろう。一実施形態において、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体に由来する。しかしながら、有利には、Fc領域はIgG4抗体に由来する。
【0100】
Fc領域は、天然に存在し得る(例えば、内因性に産生された抗体の一部)か、または人工的であり得る(例えば、天然に存在するFc領域に対して1つ以上の点突然変異を含む)。Fc領域の変異体は、典型的には、FcγRおよび/または新生児Fc受容体(FcRn)等のFc受容体に改変された親和性で結合し、ポリペプチドの機能および/または半減期を改善する。生物学的機能および/または半減期は、天然Fc領域を含むポリペプチドの半減期と比較して延長または短縮することができる。変異体Fc領域の存在によって調節され得るそのような生物学的機能の例として、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、および/またはアポトーシスが挙げられる。
【0101】
したがって、Fc領域は、天然に存在し得る(例えば、内因性に産生されたヒト抗体の一部)か、または人工的であり得る(例えば、天然に存在するヒトFc領域に対して1つ以上の点突然変異を含む)。
【0102】
当該技術分野において十分に実証されているように、抗体のFc領域は、その血清半減期および補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞食作用(ADCP)等のエフェクター機能を媒介する。
【0103】
治療用モノクローナル抗体またはFc融合タンパク質のFc領域を遺伝子操作することにより、それらに必要とされる薬理活性により適した分子の作製が可能となる(Strohl,2009,Curr Opin Biotechnol20(6):685-91(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0104】
(a)半減期を延長するために遺伝子操作されるFc領域
治療用抗体の有効性を改善するための1つのアプローチは、その血清持続性を増大させることであり、それによってより高い循環レベル、より少ない頻度の投与、およびより少ない用量を可能にする。
【0105】
IgGの半減期は、新生児受容体FcRnへのそのpH依存性結合に左右される。内皮細胞の表面に発現されるFcRnは、IgGにpH依存的に結合し、それを分解から保護する。
【0106】
pH6.0ではFcRnに選択的に結合するが、pH7.4では選択的に結合しないいくつかの抗体は、様々な動物モデルにおいてより高い半減期を示す。
【0107】
T250Q/M428L(Hinton et al.,2004,J BiolChem.279(8):6213-6(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))およびM252Y/S254T/T256E+H433K/N434F(Vaccaro et al.,2005,Nat.Biotechnol.23(10):1283-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))等の、CH2ドメインとCH3ドメインとの界面に位置するいくつかの突然変異は、FcRnに対する結合親和性およびin vivoでのIgG1の半減期を延長することが示されている。
【0108】
(b)改変されたエフェクター機能のために遺伝子操作されるFc領域
治療用抗体またはFc融合タンパク質の用途に応じて、(ADCC等の)エフェクター機能を低下または増大させることが望ましい場合がある。
【0109】
細胞表面分子、特に免疫細胞上の分子を標的とする抗体については、特定の臨床的適応のためにエフェクター機能を無効にすることが必要な場合がある。
【0110】
4つのヒトIgGアイソタイプは、活性化Fcγ受容体(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa)、阻害性FcγRIIb受容体、および補体の第1成分(C1q)と異なる親和性で結合し、非常に異なるエフェクター機能をもたらす(Bruhns et al.,2009,Blood.113(16):3716-25(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0111】
IgG4対IgG2のFcγRI結合親和性
Bruhnsらは、既知のヒトFcγRおよびそれらの多型変異体の、異なるヒトIgGサブクラスに対する特異性および親和性を評価する一連の実験を行った(Bruhns et al.,2009,Blood.113(16):3716-25(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。この研究において、IgG2はFcγRIに対して検出可能な親和性を有しなかったが、IgG1、IgG3およびIgG4は全て、FcγRIに対するナノモル範囲の結合親和性を示したことが明確に実証された(Bruhns et al.,2009,Blood.113(16):3716-25,Lu et al.,2015,Proc Natl Acad Sci USA.112(3):833-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。主要なヒトFcγRおよびそれらの変異体とIgGアイソタイプとの間の相対的結合親和性の概要を表Aにまとめる。(Stewart et al.2014,J Immunother.2(29)(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【表A】
【0112】
しかしながら、細胞活性化は、IgG免疫複合体に対するFcγRIの親和性に影響を及ぼし、Bruhnsの論文における表面プラズモン共鳴によって生成されたデータは、炎症部位で起こることを正確に再現しない可能性がある。Hogarthらによる総説(Hogarth et al.2012,Nat Rev Drug Discov11(4):311-31(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる))は、この研究およびFcγRとIgGとの結合に焦点を当てた他の研究の概要を述べている。
【0113】
骨髄細胞サブセットにおけるFcγRI発現
ヒトFcγRは主に骨髄系統の細胞によって発現され、このことは循環骨髄細胞サブセットに関する多数の研究において実証されている。通常、CD14CD16として同定される古典的単球は、高レベルのFcγRII(CD32)、中間レベルのFcγRI、および低レベルのFcγRIII(CD16)を呈する(Almeida et al.2001,100(3):325-38,Cheeseman et al.2016,PLoS One11(5):e0154656(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。しかしながら、CD14CD16非古典的単球は、高レベルのFcγRIII、中間レベルのFcγRII、および低レベルのFcγRIを呈する(Almeida et al。2001)。異なる骨髄細胞サブセットにおけるヒトFcγR遺伝子の発現を示すいくつかの公表されているマイクロアレイデータセットの要約および編纂が、これらの観察を裏付けている(Guilliamset al.2014,Nat Rev Immunol.14(2):94-108(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0114】
一旦、組織内に入ると、単球はマクロファージに分化し、環境要因に応じて、これらのマクロファージは特定の表現型を得る。Rousselらによる研究(Roussel et al.2017、J Leukoc Biol.102(2):437-447(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))では、種々の炎症性刺激を用いることにより末梢血単球を異なるマクロファージ系統に分極させ、これらの細胞の発現プロファイルを評価した。この場合、IFN-γで刺激した単球は、特異的にCD64の高度に上昇した発現をもたらした。循環CD14単球上でCD64発現の増加が検出されたSLE患者において同様の所見が認められ、それはインターフェロン刺激遺伝子の発現と相関していた(Li et al.2010,Arthritis Res Ther12(3):R90(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0115】
種々のヒト腫瘍内の骨髄細胞浸潤
炎症性単球、単球性骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)およびマクロファージ等の種々の骨髄細胞サブセットが、多数の研究において癌患者に蓄積することが示されている(Solito et al.2014,Ann N Y Acad Sci1319:47-65、Hu et al.2016,Clin Transl Oncol.18(3):251-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。最近の試みは、これらの細胞の特徴付けを標準化するための戦略を提案することを目的としているが(Bronte et al.2016,Nat Commun.7:12150(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))、これらの細胞集団の多くの表現型の定義は依然として文献中に見出すことができる(Elliott et al.2017,Front Immunol.8:86(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。最も一般的には、これらの細胞は、マーカーCD11b、CD14、CD33の発現およびHLA-DR(単球MDSC)の低発現によって定義される(Bronte et al.2016)。さらに、腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、CD64およびCD68(M1分極化、抗腫瘍形成性)、またはCD163およびCD206(M2分極化、抗腫瘍形成性)の発現によって一般に同定される(Elliott et al.2017)。
【0116】
Elliottらによる最近の総説(上記参照)は、癌患者において骨髄細胞サブセットを同定するために使用される多数の表現型の概要を述べている。これらの研究のほとんどは、循環細胞にそれらの分析の重点を置いており、骨髄CD11b細胞の頻度の増加が、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、膵臓癌、前立腺癌および腎細胞癌の患者の血中に観察されている(Solito et al.2014,Elliott et al.2017)。他の研究もまた、これらの細胞の腫瘍組織への浸潤のレベルを特徴付けることを試みた。結腸直腸腫瘍では、高頻度のCD14CD169細胞が観察された。これらの細胞はCD163およびCD206も発現したことから、M2分極化TAMであることが示唆された(Li et al.2015,PLoS One10(10):e0141817(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。結腸直腸癌患者における別の研究はまた、健康な個体と比較して増加した数のCD11bCD33HLA-DR細胞を検出した(Zhang et al.2013,PLoS One8(2):e57114(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0117】
同様に、CD11b骨髄細胞も膀胱腫瘍において同定されており、それらは全有核細胞の10~20%を占めていた(Eruslanov et al.2012,Int J Cancer130(5):1109-19(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。さらに高い頻度のCD11b細胞が膵臓癌において観察され、CD45細胞の60%超がCD11bCD15CD33であった(Porembka et al.2012,Cancer Immunol Immunother61(9):1373-85(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。また、ある研究では、非小細胞肺癌内の主要な骨髄細胞集団はCD11bCD15CD66b好中球様集団であると結論付けた。興味深いことに、一旦これらの細胞が血液から腫瘍組織に移動すると、これらの細胞は上方制御されたFcγRIを含む発現プロファイルの改変を示す(Eruslanov et al.2014,J Clin Invest.124(12):5466-80(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0118】
腫瘍浸潤細胞におけるFcγRIの発現
多数の研究がヒト腫瘍内の骨髄細胞の高い浸潤を確認したが、これらの細胞上のFcγRの発現を詳細に探求した研究はない。しかしながら、いくつかの刊行物が腫瘍組織内のFcγRI発現細胞の存在を示している。
【0119】
Morimuraらによる研究(Morimura et al.1990,Acta Neuropathol.80(3):287-94(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、免疫細胞化学により12のヒト試料からの神経膠腫を評価し、これらを腫瘍周囲対照組織と比較した。この研究は、腫瘍周囲組織と比較して、神経膠腫におけるマクロファージの高い存在(マーカーCD163、RM3/1を使用)、ならびにFcγRIおよびFcγRII(CD32)の増加を実証した。Griesingerらによる最近の研究(Griesinger et al.2013,J Immunol.191(9):4880-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、種々の小児脳腫瘍型のフローサイトメトリー分析を実施することによりこれらの観察を確認した。ここで、高頻度のCD45CD11b骨髄細胞が、毛様細胞性星細胞腫および上衣腫患者由来の組織に観察された。これらの細胞はまた、高レベルのFcγRIも発現した。
【0120】
脳腫瘍に加えて、FcγRI発現は他の種類の腫瘍についても示されている。Gruganら(Grugan et al.2012,J Immunol.189(11):5457-66(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、ヒト乳房腫瘍組織内のCD11bCD14細胞の存在を実証した。これらの細胞は、高レベルのFcγRIおよびFcγRIIa、ならびにFcγRIIbおよびFcγRIIIを発現することが示された。また、FcγRIの発現を呈する消化管間質腫瘍において、CD45CD11bCD14CD68TAMが同定された(Cavnar et al.2013,J Exp“Med.“210(13):2873-86(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。CD45CD11bFcγRI細胞も、結腸直腸癌患者において同定されており、これらの細胞は健康な対照組織と比較して腫瘍組織においてより高いFcγRIの発現を示した(Norton et al.2016,Clin Transl Immunology.5(4):e76(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。FcγRI発現はまた、黒色腫転移についても実証されている(Hansen et al.2006,Acta Oncol45(4):400-5(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0121】
IgGとFcγRまたはC1qとの結合は、ヒンジ領域およびCH2ドメインに位置する残基に依存する。CH2ドメインの2つの領域は、FcγRおよびC1qの結合にとって重要であり、IgG2およびIgG4に特有の配列を有する。233~236位のIgG2残基、ならびに327、330および331位のIgG4残基のヒトIgG1への置換は、ADCCおよびCDCを大きく減少させることが示された(Armour et al.,1999,Eur J Immunol.29(8):2613-24;Shields et al.,2001,J BiolChem.276(9):6591-604,(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。さらに、Idusogieらは、K322を含む異なる位置でのアラニン置換が、補体活性化を有意に減少させることを実証した(Idusogie et al.,2000,J Immunol.164(8):4178-84(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。同様に、マウスIgG2AのCH2ドメインにおける変異は、FcγRIおよびC1qとの結合を減少させることが示された(Steurer.et al.,1995.J Immunol.155(3):1165-74(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0122】
ヒトIgG1のCH2ドメインにおいて多数の突然変異が行われており、それらがADCCおよびCDCに及ぼす影響がin vitroで試験されている(上記で引用した参考文献)。特に、333位のアラニン置換はADCCおよびCDCの両方を増大させることが報告されている(Shields et al.,2001,上記参照、Steurer et al.,1995、上記参照)。Lazarらは、FcγRIIIaに対してより高い親和性を有し、FcγRIIbに対してより低い親和性を有し、結果としてADCCの増強をもたらす三重変異体(S239D/I332E/A330L)について記載した(Lazar et al.,2006,PNAS103(11):4005-4010(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。同じ突然変異を用いて、ADCCが増大した抗体を作製した(Ryan et al.,2007,Mol.Cancer Ther.6:3009-3018(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。Richardsらは、マクロファージによる標的細胞の食作用の増強を媒介する、改善されたFcγRIIIa親和性およびFcγRIIa/FcγRIIb比を有する、わずかに異なる三重変異体(S239D/I332E/G236A)を研究した(Richards et al.,2008.Mol Cancer Ther.7(8):2517-27(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0123】
IgG4抗体は、そのエフェクター機能の欠如のために、細胞枯渇を伴わない受容体調節のための好ましいIgGサブクラスを意味する。IgG4分子は、Fabアーム交換と呼ばれる動的プロセスにおいて半分子を交換することができる。この現象は、治療用抗体と内因性IgG4の間でもin vivoで起こり得る。
【0124】
S228P変異は、この組み換えプロセスを妨げ、それほど予測不能ではない治療用IgG4抗体の設計を可能にすることが示されている(Labrijn et al.,2009,Nat Biotechnol.27(8):767-71(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0125】
さらなる実施形態において、Fc領域のエフェクター機能は、その中のCH2ドメイン内の炭水化物部分の修飾によって、例えば、産生中のフコース、ガラクトース、バイセクティングN-アセチルグルコサミンおよび/またはシアル酸の相対レベルを変更することによって改変され得る(Jefferis,2009,Nat Rev Drug Discov.8(3):226-34and Raju,2008,Curr Opin Immunol.,20(4):471-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0126】
したがって、Fc領域中のフコース残基が欠如しているかまたは少ない治療用抗体は、ヒトにおいて増強されたADCC活性を示し得ることが知られている(例えば、Peipp et al.,2008,Blood112(6):2390-9、Yamane-Ohnuki&Satoh,2009,MAbs1(3):230-26、Iida et al.,2009,BMC Cancer9;58(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。低フコース抗体ポリペプチドは、キンフネンシン等のマンノシダーゼの阻害剤を含む培地中で培養した細胞における発現によって産生することができる(以下の実施例Iを参照)。
【0127】
抗体のグリコシル化を低フコース型に変更するための他の方法は、ラムノースを代謝することができない細胞における細菌酵素GDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキスロースレダクターゼの使用を含む(例えばProBioGen AG(Berlin,Germany)のGlymaxX(登録商標)技術を用いる)。
【0128】
低フコース抗体を作製するための別の方法は、抗体産生細胞におけるα-(1,6)-フコシルトランスフェラーゼの阻害または枯渇による(例えば、Lonza Ltd(Basel、Switzerland)のPotelligent(登録商標)CHOK1SV技術を用いる)。
【0129】
(完全な重鎖を形成するために)本明細書に開示される任意のVH領域配列と組み合わせることができる例示的な重鎖定常領域アミノ酸配列は、本明細書において再現されるIgG1重鎖定常領域配列である。
【化10】
【0130】
他の重鎖定常領域配列は、当該技術分野において既知であり、本明細書に開示される任意のVH領域と組み合わせることもできる。例えば、前述のように、好ましい定常領域は、本明細書で再現されるもの等の修飾されたIgG4定常領域である。
【化11】
【0131】
この修飾されたIgG4配列は、IgG4のコアヒンジの安定化をもたらし、IgG4をより安定にし、Fabアーム交換を阻止する。
【0132】
別の好ましい定常領域は、本明細書で再現されるもの等の修飾されたIgG4定常領域である。
【化12】
【0133】
この修飾されたIgG4配列は、減少したFcRn結合を示し、故に、野生型IgG4と比較して短縮された血清半減期をもたらす。さらに、それはIgG4をより安定にするIgG4のコアヒンジの安定化を示し、Fabアーム交換を防ぐ。
【0134】
また、本明細書で再現されるもの等の野生型IgG4定常領域も、本発明のポリペプチドにおける使用に適している。
【化13】
【0135】
(完全な軽鎖を形成するために)本明細書に開示される任意のVL領域配列と組み合わせることができる例示的な軽鎖定常領域アミノ酸配列は、本明細書において再現されるκ鎖定常領域配列である。
【化14】
【0136】
他の軽鎖定常領域配列は、当該技術分野において既知であり、本明細書中に開示される任意のVL領域と組み合わせることもできる。
【0137】
本発明の例示的実施形態において、抗体ポリペプチドは、それぞれ配列番号13および16のIgG4定常領域を含み得る。
【0138】
したがって、本発明の例示的な抗体ポリペプチドは、
(a)配列番号13の定常領域と一緒に配列番号1の可変領域を含む重鎖、および
(b)配列番号16の定常領域と一緒に配列番号2の可変領域を含む軽鎖、を含む。
【0139】
例えば、抗体ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を有する2本の重鎖および配列番号18のアミノ酸配列を有する2本の軽鎖を含むかまたはそれらからなるインタクトなIgG4分子であり得る。
【0140】
本発明の代替の例示的ポリペプチドは、
(a)配列番号13の定常領域と一緒に配列番号19の可変領域を含む重鎖、および
(b)配列番号16の定常領域と一緒に配列番号20の可変領域を含む軽鎖、を含む。
【0141】
例えば、抗体ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列を有する2本の重鎖および配列番号30のアミノ酸配列を有する2本の軽鎖を含むかまたはそれらからなるインタクトなIgG4分子であり得る。
【0142】
本発明の第1または第2の態様の一実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドは「融合」ポリペプチドであるかまたはそれを含む。
【0143】
薬物動態特性を改善するためにある部分に融合されていることに加えて、本発明のポリペプチドはまた、該ポリペプチドの精製を容易にするためにグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはプロテインA等のポリペプチドに融合され得ることを理解されたい。そのような融合の例は当業者に周知である。同様に、該ポリペプチドは、His6等のオリゴヒスチジンタグに、または周知のMycタグエピトープ等の抗体によって認識されるエピトープに融合されてもよい。該ポリペプチドの任意の変異体または誘導物への融合も、本発明の範囲内に含まれる。IL-1R結合特性またはin vivo半減期等の望ましい特性を保持または改善する融合体(またはその変異体、誘導体もしくは融合体)が好ましいことを理解されたい。
【0144】
したがって、融合体は、上記本発明のポリペプチドに望ましい特徴を付与するさらなる部分と一緒に、上に詳述したようなアミノ酸配列を含み得る:例えば、この部分は、ポリペプチドを検出もしくは単離すること、またはポリペプチドの細胞取り込みを促進することにおいて有用であり得る。該部分は、当業者に周知であるように、例えば、ビオチン部分、放射活性部分、蛍光部分、例えば小さなフルオロフォアまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)フルオロフォアであり得る。該部分は、当業者に既知のように、免疫原性タグ、例えば、Mycタグであり得るか、または当業者に既知のように、親油性分子もしくはポリペプチドの細胞取り込みを促進することができるポリペプチドドメインであり得る。
【0145】
当業者は、本発明の抗体ポリペプチドが、修飾または誘導体化されている1つ以上のアミノ酸を含み得るかまたはそれらからなり得ることを理解するであろう。
【0146】
1つ以上のアミノ酸の化学誘導体は、官能側鎖との反応によって達成され得る。そのような誘導体化分子は、例えば、遊離アミノ基が、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するように誘導体化された分子を含む。遊離カルボキシル基は、塩、メチル、およびエチルエステルまたは他の種類のエステル、ならびにヒドラジドを形成するように誘導体化され得る。遊離ヒドロキシル基は、O-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成するように誘導体化され得る。また、20個の標準アミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体を含むペプチドも、化学的誘導体として含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンはプロリンと置換され得、5-ヒドロキシリジンはリジンと置換され得、3-メチルヒスチジンはヒスチジンと置換され得、ホモセリンはセリンと置換され得、オルニチンはリジンと置換され得る。誘導体はまた、必要な活性が維持される限り、1つ以上の付加または欠失を含むペプチドを含む。他の含まれる修飾は、アミド化、アミノ末端アシル化(例えばアセチル化またはチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシルアミド化(例えばアンモニアまたはメチルアミンを用いる)、および同様の末端修飾である。
【0147】
当業者は、ペプチド模倣化合物もまた有用であり得ることをさらに理解するであろう。「ペプチド模倣物」という用語は、治療剤としてある特定のペプチドの立体構造および望ましい特徴を模倣する化合物を指す。
【0148】
例えば、上記ポリペプチドは、アミノ酸残基がペプチド(-CO-NH-)結合によって結合された分子だけではなく、ペプチド結合が反転している分子も含む。そのようなレトロ-インベルソペプチド模倣物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるMeziere et al.(1997)J.Immunol.159,3230-3237に記載されるもの等の、当該技術分野で既知の方法を用いて作製されてもよい。このアプローチは、側鎖の配向ではなく、主鎖に関与する変化を含む疑似ペプチドを作製することを含む。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含むレトロ-インバースペプチドは、タンパク質分解に対する耐性がはるかに高い。代替として、上記ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸残基が、従来のアミド結合の代わりに-y(CHNH)-結合によって連結されたペプチド模倣化合物であり得る。
【0149】
さらなる代替例において、アミノ酸残基の炭素原子間の間隔を保持する適切なリンカー部分が使用される限り、ペプチド結合は完全に省略されてもよい:リンカー部分が、ペプチド結合と実質的に同じ電荷分布および実質的に同じ平面性を有することが有利であり得る。
【0150】
また、エキソタンパク質分解消化に対する感受性を低下させるのに役立つように、上記ポリペプチドは、そのN末端またはC末端で都合よくブロックされ得ることも理解されたい。
【0151】
D-アミノ酸およびN-メチルアミノ酸等の様々な非コードアミノ酸または修飾アミノ酸も、哺乳動物ペプチドを修飾するために使用されている。さらに、環化等の共有結合的修飾によって、またはラクタムもしくは他の種類の架橋を組み込むことによって、推測される生理活性立体構造が安定化され得る:例えば、参照により本明細書に組み込まれるVeber et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA75:2636およびThursell et al.,1983,Biochem.BiophysRes.Comm.111:166を参照されたい。
【0152】
典型的には、本発明の抗体ポリペプチドは、「裸の」抗体ポリペプチドであり、すなわち、細胞傷害性部分または検出可能部分等のさらなる機能的部分を含まない。例えば、治療効果が、例えば、炎症を低減するために、免疫細胞に対する本発明の抗体の直接的作用によって媒介される場合、抗体は任意の細胞傷害活性を欠くことが有利であり得る。
【0153】
しかしながら、代替の実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドは、例えば、診断薬(例えば、in vivoイメージングにおける)または治療剤としてのそれらの意図された使用を容易にするために機能的部分を用いて増強されてもよい。したがって、一実施形態において、抗体ポリペプチドは治療的部分と直接的または間接的に結合している。好適な治療的部分は、癌細胞(または関連する幹細胞もしくは前駆細胞)の増殖を減少させるもしくは阻害すること、または特に死滅させることができる部分である。例えば、治療剤は、放射性同位元素(例えば、90Y、177Lu、99Tc等)または細胞傷害性薬物(例えば、代謝拮抗薬、毒素、細胞分裂阻害薬)等の細胞傷害性部分であってもよい。
【0154】
代替として、細胞傷害性部分は、光子活性化療法、中性子活性化療法、中性子誘導性オージェ電子療法、シンクロトロン照射療法、または低エネルギーX線光子活性化療法等の活性化療法における使用に適した1つ以上の部分を含み得るかまたはそれらからなり得る。
【0155】
任意選択的に、本発明の抗体ポリペプチドは、検出可能部分をさらに含んでもよい。例えば、検出可能部分は、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123Iおよび201Tlからなる群から選択される放射性同位元素等の放射性同位元素を含み得るかまたはそれらからなり得る。任意選択的に、薬剤は、86Y/90Yまたは124I/211At等の一対の検出可能な細胞傷害性の放射性核種を含み得る。代替として、抗体ポリペプチドは、いわゆる「マルチモーダル・セラノスティクス」を提供するために、検出可能部分として、また細胞傷害性部分としてマルチモーダル様式で同時に作用することが可能な放射性同位元素を含んでもよい。したがって、結合部分は、放射性核種または化学療法薬等の細胞傷害性薬物を用いた治療能力と一緒に、マルチイメージング(例えば、SPECT、PET、MRI、光学的、または超音波)の能力を有するナノ粒子に結合されてもよい。
【0156】
治療的部分および/または検出可能部分(放射性同位元素、細胞傷害性部分等)は、抗体またはその断片に直接的または間接的に結合していてもよい。好適なリンカーは当該技術分野において既知であり、例えば、補欠分子族、非フェノール系リンカー(N-スクシミジルベンゾエートの誘導体;ドデカボレート)、大環状化合物および非環式キレート剤の両方のキレート化部分、例えば、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、デフェロキサミン(DFO)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)の誘導体、および1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)の誘導体、3,6,9,15-テトラアザビシクロ¥[9.3.1]-ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-4-(S)-(4-イソチオシアナト-ベンジル)-3,6,9-三酢酸(PCTA)の誘導体、5-S-(4-アミノベンジル)-1-オキサ-4,7,10-トリアザシクロドデカン-4,7,10-トリス(酢酸)(DO3A)の誘導体、ならびに他のキレート化部分を含む。
【0157】
好ましいリンカーの1つは、例えば、177Lu-DTPA-[本発明の抗体ポリペプチド]において使用されるDTPAである。さらに好ましいリンカーは、例えば、89Zr-DFO-[本発明の抗体ポリペプチド]において使用されるデフェロキサミン、DFOである。
【0158】
しかしながら、当業者は、本発明の抗体ポリペプチドの多くの医学的用途は細胞傷害性または診断用部分の存在を必要としないことを理解するであろう。
【0159】
上で論じたように、本発明の抗体ポリペプチドの産生のための方法は当該技術分野において周知である。
【0160】
好都合には、抗体ポリペプチドは、組換えポリペプチドであるかまたはそれを含む。そのような組換えポリペプチドの産生に適した方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、原核生物または真核生物の宿主細胞における発現等である(例えば、文献内の関連性のある開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、Green&Sambrook,2012,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Fourth Edition,Cold Spring Harbor,New Yorkを参照されたい)。
【0161】
抗体はポリクローナル抗体であってもよいが、抗体がモノクローナル抗体であること、またはその抗原結合断片、変異体、融合体もしくは誘導体がモノクローナル抗体に由来することが好ましい。
【0162】
好適なモノクローナル抗体は、既知の技術、例えば、「Monoclonal Antibodies;A manual of techniques”,H Zola(CRC Press,1988)および「Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Application”,SGR Hurrell(CRC Press,1982)」、に開示される技術によって調製され得る。多特異性または単一特異性のポリクローナル抗体が産生され得る。それらは単一特異性であることが好ましい。
【0163】
本発明の抗体ポリペプチドはまた、ウサギ網状赤血球溶解物またはコムギ胚芽溶解物(Promegaから入手可能)等の市販のin vitro翻訳系を用いて産生することもできる。好ましくは、翻訳系はウサギ網状赤血球溶解物である。好都合には、翻訳系は、TNT転写-翻訳系(Promega)等の転写系に結合させることができる。この系は、翻訳と同じ反応でコード化DNAポリヌクレオチドから好適なmRNA転写物を産生するという利点を有する。
【0164】
当業者は、本発明の抗体ポリペプチドが、代替として、例えば周知の液相または固相合成技術(例えば、t-BocまたはFmoc固相ペプチド合成)を用いて、人工的に合成され得ることを理解するであろう。
【0165】
本発明の第3の態様は、本発明の第1または第2の態様の抗体もしくは抗原結合断片、またはその成分ポリペプチド鎖をコードする単離された核酸分子を提供する。「核酸分子」は、一本鎖または二本鎖であり得るDNA(例えば、ゲノムDNAまたは相補的DNA)およびmRNA分子を含む。「単離された」は、核酸分子が細胞内に位置しないか、または別様に細胞内に提供されていないことを意味する。
【0166】
一実施形態において、核酸分子はcDNA分子である。
【0167】
好ましくは、核酸分子は、以下に再現される、配列番号9および配列番号10のいずれかから選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
「1630」のVH領域をコードするヌクレオチド配列
【化15】
「1631」のVL領域をコードするヌクレオチド配列
【化16】
【0168】
代替の好ましい実施形態において、核酸分子は、以下に再現される、配列番号27および配列番号28のいずれかから選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
「2674」のVH領域をコードするヌクレオチド配列
【化17】
「2675」のVL領域をコードするヌクレオチド配列
【化18】
【0169】
当業者は、ある特定の宿主細胞における抗体ポリペプチドの発現のために、例えば、ヒト細胞における発現のために、核酸分子がコドン最適化され得ることを理解するであろう(例えば、Angov,2011,Biotechnol.J.6(6):650-659(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0170】
また、本発明の範囲内には以下も含まれる:
(a)本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様による核酸分子を含むベクター(発現ベクター等)を提供する。
(b)本発明の第5の態様は、本発明の第3の態様による核酸分子、または本発明の第4の態様によるベクターを含む宿主細胞(例えば、哺乳類細胞、例えばヒト細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞、例えばCHOK1SV細胞)を提供する。
(c)本発明の第6の態様は、発明の第1または第2の態様による抗体ポリペプチドを作製する方法であって、本発明の第5の態様による宿主細胞の集団を該ポリペプチドが発現される条件下で培養することと、そこからポリペプチドを単離することと、を含む、方法を提供する。
【0171】
本発明の第7の態様は、薬学的有効量の本発明の第1または第2の態様による抗体または抗原結合断片と、薬学的に許容される希釈剤、担体、アジュバントまたは賦形剤と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0172】
当業者は、EDTA、クエン酸塩、EGTAまたはグルタチオン等のキレート剤を含む追加の化合物も、医薬組成物に含まれ得ることを理解するであろう。
【0173】
医薬組成物は、十分に貯蔵安定性であり、ヒトおよび動物への投与に適した、当該技術分野において既知の方法で調製することができる。例えば、医薬組成物は、例えば、フリーズドライ、噴霧乾燥、噴霧冷却により、または超臨界粒子形成からの粒子形成の使用により、凍結乾燥されてもよい。
【0174】
「薬学的に許容される」は、本発明の抗体ポリペプチドのCD137結合活性の有効性を低下させない非毒性物質を意味する。そのような薬学的に許容される緩衝剤、担体または賦形剤は、当該技術分野において周知である(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company(1990)、およびhandbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press(2000)(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0175】
「緩衝剤」という用語は、pHを安定化する目的で酸-塩基混合物を含む水溶液を意味することが意図される。緩衝剤の例は、トリズマ、ビシン、トリシン、MOPS、MOPSO、MOBS、トリス、ヘペス、HEPBS、MES、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ホウ酸塩、ACES、ADA、酒石酸塩、AMP、AMPD、AMPSO、BES、CABS、カコジル酸、CHES、DIPSO、EPPS、エタノールアミン、グリシン、HEPPSO、イミダゾール、イミダゾール乳酸、PIPES、SSC、SSPE、POPSO、TAPS、TABS、TAPSOおよびTESである。
【0176】
「希釈剤」という用語は、薬学的調製物に抗体ポリペプチドを希釈することを目的とした水溶液または非水溶液を意味することが意図される。希釈剤は、食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノールまたは油(ベニバナ油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油またはゴマ油等)のうちの1つ以上であり得る。
【0177】
「アジュバント」という用語は、本発明の抗体ポリペプチドの生物学的効果を高めるために製剤に添加される任意の化合物を意味することが意図される。アジュバントは、異なるアニオンを有する1つ以上の亜鉛塩、銅塩または銀塩であってもよく、例えば、限定されないが、異なるアシル組成の、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン酸塩、亜硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、および酢酸塩であり得る。アジュバントはまた、カチオン性ポリマー、例えば、カチオン性セルロースエーテル、カチオン性セルロースエステル、脱アセチル化ヒアルロン酸、キトサン、カチオン性デンドリマー、カチオン性合成ポリマー、例えば、ポリ(ビニルイミダゾール)、ならびにカチオン性ポリペプチド、例えば、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン、およびこれらのアミノ酸を含むペプチドであり得る。
【0178】
賦形剤は、炭水化物、ポリマー、脂質およびミネラルのうちの1つ以上であり得る。炭水化物の例として、ラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、およびシクロデキストリンが挙げられ、これらは、例えば、凍結乾燥を容易にするために組成物に添加される。ポリマーの例は、全て異なる分子量の、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギネート、カラギーナン、ヒアルロン酸およびそれらの誘導体、ポリアクリル酸、ポリスルホン酸、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、加水分解の程度が異なるポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、およびポリビニルピロリドンであり、これらは、例えば、粘度制御のため、生体接着を達成するため、または化学的分解およびタンパク質分解から脂質を保護するために組成物に添加される。脂質の例は、全て異なるアシル鎖長および飽和度の、脂肪酸、リン脂質、モノ-、ジ-、およびトリグリセリド、セラミド、スフィンゴ脂質および糖脂質、卵レシチン、大豆レシチン、水素添加卵レシチンおよび大豆レシチンであり、これらはポリマーと同様の理由で組成物に添加される。ミネラルの例は、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛および酸化チタンであり、これらは、液体蓄積の減少または有利な顔料特性等の利点を得るために組成物に添加される。
【0179】
本発明の抗体ポリペプチドは、その送達に適していることが当該技術分野において既知である任意の種類の医薬組成物に製剤化され得る。
【0180】
一実施形態において、本発明の医薬組成物はリポソームの形態であってもよく、抗体ポリペプチドは、他の薬学的に許容される担体に加えて、ミセル、不溶性単層、および液晶として凝集形態で存在する脂質等の両親媒性薬剤と組み合わされる。リポソーム製剤に適した脂質として、限定されないが、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸等が挙げられる。好適な脂質はまた、血流循環時間を延長するために極性頭部基においてポリ(エチレングリコール)によって修飾された上記の脂質を含む。そのようなリポソーム製剤の調製は、例えば、米国特許第4,235,871号に見出すことができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0181】
本発明の医薬組成物はまた、生分解性微粒子の形態であってもよい。脂肪族ポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、PLAとPGAとのコポリマー(PLGA)、またはポリ(カプロラクトン)(PCL)等、およびポリ無水物は、微粒子の生成において生分解性ポリマーとして広く使用されている。そのような微粒子の調製物は、米国特許第5,851,451号および欧州特許第0213303号に見出すことができ、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0182】
さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物はポリマーゲルの形態で提供され、ポリマー、例えばデンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギネート、カラギーナン、ヒアルロン酸およびそれらの誘導体、ポリアクリル酸、ポリビニルイミダゾール、ポリスルホン酸塩、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、加水分解度の程度が異なるポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、およびポリビニルピロリドンが、薬剤を含む溶液の増粘のために使用される。ポリマーはまた、ゼラチンまたはコラーゲンも含み得る。
【0183】
代替として、抗体ポリペプチドは、食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノールもしくは油(ベニバナ油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油またはゴマ油等)、トラガカントガム、および/または種々の緩衝剤に単純に溶解してもよい。
【0184】
本発明の医薬組成物は、活性抗体ポリペプチドの作用を増強するためのイオンおよび規定のpHを含み得ることを理解されたい。さらに、組成物は、滅菌等の従来の薬学的操作に供されてもよく、かつ/または防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、充填剤等の従来のアジュバントを含んでもよい。
【0185】
本発明による医薬組成物は、当業者に既知の任意の好適な経路を介して投与され得る。したがって、可能な投与経路は、非経口(静脈内、皮下、および筋肉内)、局所、眼、鼻、肺、口腔、経口、非経口、膣内および直腸内を含む。また、インプラントからの投与も可能である。
【0186】
好ましい一実施形態において、医薬組成物は、非経口的に、例えば、静脈内、脳室内、関節内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、もしくは皮下に投与されるか、または注入技術によって投与されてもよい。それらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含み得る滅菌水溶液の形態で好都合に使用される。水溶液は、必要に応じて(好ましくはpH3~9に)好適に緩衝されるべきである。無菌条件下の好適な非経口用製剤の調製は、当業者には周知の標準的な薬学的技術によって容易に達成される。
【0187】
非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、ならびに該製剤を該当するレシピエントの血液と等張にするための溶質を含み得る水性および非水性の滅菌注射液、また、懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌注射液を含む。製剤は、単位用量または複数用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアル内に提示されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時注射液および懸濁液は、以前に記載した種類の滅菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製され得る。
【0188】
したがって、本発明の医薬組成物は、非経口投与、例えば静脈内投与に特に適している。
【0189】
代替として、医薬組成物は、鼻腔内にまたは吸入によって(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134A3または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227EA3)等のヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素、または他の好適なガス等の好適な噴射剤を使用して、加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示形態で)投与されてもよい。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するための弁を備えることによって決定されてもよい。加圧容器、ポンプ、スプレー、またはネブライザーは、例えば、エタノールと、溶媒としての噴射剤との混合物を使用する活性ポリペプチドの溶液または懸濁液を含んでもよく、これはさらに、滑沢剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンをさらに含んでもよい。吸入器または注入器内で使用するためのカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチン製)は、本発明の化合物とラクトースまたはデンプン等の好適な粉末基剤との粉末混合物を含むように製剤化され得る。
【0190】
エアロゾルまたは乾燥粉末製剤は、好ましくは、各計量された用量または「一吹き」が、患者への送達のために少なくとも1mgの本発明の化合物を含むように準備される。エアロゾルを用いた全体的な1日用量は患者ごとに異なり、単回用量で、より一般的には、1日を通して分割された用量で投与され得ることを理解されたい。
【0191】
代替として、本発明の抗体ポリペプチドは、坐剤もしくはペッサリーの形態で投与することができるか、またはローション、溶液、クリーム、軟膏もしくは散布剤の形態で局所投与されてもよい。本発明の化合物はまた、例えば皮膚パッチの使用により、経皮投与されてもよい。それらはまた、具体的には、眼内経路によって投与されてもよい。
【0192】
眼に使用するために、本発明の抗体ポリペプチドは、任意選択的に塩化ベンジルアルコニウム等の防腐剤と組み合わせた、等張性のpH調整した滅菌生理食塩水中の微粒子化した懸濁液として、または好ましくは、等張性のpH調整した滅菌生理食塩水中の溶液として製剤化することができる。代替として、それらは、ワセリン等の軟膏に製剤化されてもよい。
【0193】
皮膚への局所適用のために、本発明の抗体ポリペプチドは、例えば、以下のうちの1つ以上との混合物中に懸濁または溶解された活性化合物を含む好適な軟膏として製剤化することができる:鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水。代替として、それらは、例えば、以下のうちの1つ以上との混合物中に懸濁または溶解された好適なローションまたはクリームとして製剤化することができる:鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水。
【0194】
医薬組成物は、薬学的に有効な量で患者に投与される。本明細書で使用される「治療有効量」、または「有効量」、または「治療上有効な」は、所与の状態および投与計画に対して治療効果をもたらす量を指す。これは、必要な添加剤および希釈剤、すなわち担体または投与ビヒクルと相まって所望の治療効果をもたらすように計算された活性物質の所定量である。さらに、それは宿主の活性、機能および応答における臨床的に有意な欠陥を低減させる、最も好ましくは防止するのに十分な量を意味することが意図される。代替として、治療有効量は、宿主において臨床的に重要な状態の改善を引き起こすのに十分な量である。当業者には理解されるように、化合物の量はその比活性に応じて変動し得る。好適な投与量は、必要な希釈剤と相まって所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性組成物を含み得る。本発明の組成物の製造方法および使用において、治療有効量の活性成分が提供される。治療有効量は、当該技術分野において周知であるように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患等の患者の特徴に基づいて、通常の技能を有する医療従事者または獣医学従事者によって決定され得る薬学的に有効な用量の投与は、個々の用量単位、さもなければいくつかのより小さな用量単位の形態における単回投与、および特定の間隔で細分化された用量の複数回投与の両方によって行われ得る。代替として、用量は、長期間にわたる連続注入として提供されてもよい。
【0195】
本発明の抗体ポリペプチドの診断用途の文脈において、本明細書中で使用される「薬学的有効量」、または「有効量」、または「診断上有効な」は、例えば、in vivoイメージング目的で、診断のために検出可能なシグナルを提供する量を指す。
【0196】
抗体ポリペプチドは、使用されているポリペプチドの有効性/毒性に応じて種々の濃度で製剤化することができる。例えば、製剤は、0.1μM~1mM、より好ましくは、1μM~500μM、500μM~1mM、300μM~700μM、1μM~100μM、100μM~200μM、200μM~300μM、300μM~400μM、400μM~500μM、500μM~600μM、600μM~700μM、800μM~900μM、または900μM~1mMの濃度で活性抗体ポリペプチドを含んでもよい。典型的には、製剤は、300μM~700μMの濃度で活性抗体ポリペプチドを含む。
【0197】
典型的には、ヒト患者における抗体ポリペプチドの治療用量(治療的部分を含むかまたは含まない)は、投与1回当たり100μg~1gの範囲である(70kgの体重に基づいて、例えば、投与1回当たり300μg~700mgである)。例えば、最大治療用量は、投与1回当たり0.1~10mg/kg、例えば0.1~5mg/kg、または1~5mg/kg、または0.1~2mg/kgの範囲であり得る。そのような用量は、腫瘍専門医/医師によって決定されるような異なる間隔で投与され得ることを理解されたく、例えば、用量は、毎日、週2回、毎週、隔週または毎月投与されてもよい。
【0198】
当業者は、本発明のポリペプチドおよび医薬製剤が医学および獣医学の両方の分野において有用性を有することをさらに理解するであろう。したがって、本発明の方法は、ヒトおよび非ヒト動物(ウマ、イヌおよびネコ等)の両方の治療に用いられ得る。しかしながら、好ましくは、患者はヒトである。
【0199】
獣医学的使用のために、本発明の薬剤、薬物および医薬組成物は、通常の獣医学的診療に従って適宜許容される製剤として投与され、獣医師は、ある特定の動物にとって最も適切であろう投与計画および投与経路を決定する。
【0200】
本発明の第8の態様は、医薬に使用するための、本発明の第1または第2の態様による抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0201】
一実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドおよび製剤は、癌に罹患しているか、または癌に罹患するリスクがある患者または対象を治療するために使用することができる。
【0202】
「治療」は、患者の治療的処置および予防的処置の両方を含む。「予防的」という用語は、患者または対象における癌の可能性、または癌細胞の蔓延、播種、もしくは転移を予防または低減する、本明細書に記載される薬剤またはその製剤の使用を包含するように使用される。「予防的」という用語はまた、腫瘍性障害のために以前に治療されたことのある患者における癌の再発を予防するための、本明細書に記載される薬剤またはその製剤の使用も包含する。
【0203】
癌は固形腫瘍の形成と関連しているか、または血液癌であり得る。治療され得る癌の種類には、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫および胚細胞腫瘍が含まれる。
【0204】
例えば、抗体またはその抗原結合断片は、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵癌、卵巣癌、肺癌、子宮頸癌、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、骨癌、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ芽球性白血病[ALL]および急性骨髄性白血病[AML]等)、皮膚癌(例えば、黒色腫)、膀胱癌および神経膠芽腫からなる群から選択される癌の治療に使用するためのものであり得る。
【0205】
一実施形態において、癌は、表16または表17の癌のリストから選択され得る。
【0206】
典型的には、本発明の治療剤は、例えば血流中への注射または腫瘍の部位もしくはその近傍への注射によって、非経口形態で投与される。
【0207】
一実施形態において、薬剤は、事前にスクリーニングされ、CD137およびFcγR、例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIBまたはそれらの組み合わせを発現する細胞を含む腫瘍を有すると同定された患者を治療するためのものである。
【0208】
本発明の関連する態様は以下を提供する:
(i)癌を治療するための薬物の調製における、本発明の第1または第2の態様による抗体またはその抗原結合断片の使用、および
(ii)有効量の本発明の第1または第2の態様による抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、癌を有する個体を治療するための方法。
【0209】
本発明の抗体ベースの薬剤は、患者における癌の唯一の治療として、または併用治療(さらなる治療は医薬品、放射線療法および/または手術であり得る)の一部として用いられ得ることをさらに理解されたい。
【0210】
したがって、患者はまた、癌のための1つ以上のさらなる治療、例えば、医薬品(化学療法剤等)、放射線療法および/または手術を受けてもよい。
【0211】
例えば、本発明の医薬組成物は、癌の治療に用いられる他の治療剤、例えば、代謝拮抗薬、アルキル化剤、アントラサイクリンおよび他の細胞傷害性抗生物質、ビンカアルキロイド、エトポシド、白金化合物、タキサン、トポイソメラーゼI阻害薬、抗増殖性免疫抑制剤、コルチコステロイド、性ホルモンおよびホルモン拮抗薬、ならびに他の治療用抗体(トラスツズマブ)等と組み合わせて投与され得る。
【0212】
一実施形態において、1つ以上のさらなる治療は、従来の化学療法剤(アルキル化剤、代謝拮抗薬、植物アルカロイドおよびテルペノイド、トポイソメラーゼ阻害薬、ならびに抗悪性腫瘍薬等)、放射線療法剤、抗体ベースの治療剤(ゲムツズマブ、アレムツズマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ニモツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ)、およびステロイドからなる群から選択される。
【0213】
本発明の第9の態様は、本発明の第1または第2の態様による抗体を用いた治療に感受性を示す患者を同定する方法であって、患者がCD137およびFcγRを発現する細胞を含む腫瘍を有するかどうかを同定するために患者をスクリーニングすることを含む、方法を提供する。
【0214】
任意選択的に、スクリーニングされるFcγRはFcγRIIAである。一実施形態において、FcγRIIAはR131アロタイプである。
【0215】
好適なバイオマーカースクリーニング法は、当該技術分野において周知である。例えば、腫瘍生検試料を患者から採取し、その中のCD137および/またはFcγRの発現レベル(RNAレベルおよび/またはタンパク質レベル)を決定するために、例えば、免疫組織化学的検査、フローサイトメトリーまたはプロテオームアプローチを用いて分析してもよい。
【0216】
本発明の所与の態様、特徴、またはパラメータの優先度および選択肢は、文脈に別段の指示がない限り、本発明の全ての他の態様、特徴、およびパラメータに関するありとあらゆる優先度および選択肢と組み合わせて開示されている通りであると見なされるべきである。
【0217】
本明細書における明白な先行公開文献の記載または考察は、該文献が先端水準の一部であるかまたは共通の一般知識であることを認めるものとして必ずしも解釈されるべきではない。
【0218】
特許請求の範囲および/または本明細書において用語「含む」と合わせて使用される場合の「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、「1つ」を意味する場合もあるが、それはまた「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つ以上」の意味とも一致する。
【0219】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、上記の説明および添付の図面と併せて考慮すると、よりよく認識および理解されるであろう。しかしながら、上記の説明は、本発明の種々の実施形態およびその多数の具体的な詳細を示しているが、それは限定ではなく例示として示されていることを理解されたい。本発明の主旨から逸脱することなく、多くの置換、変更、追加、および/または再編が本発明の範囲内で行われてもよく、本発明は、全てのそのような置換、変更、追加、および/または再編を含む。
【0220】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、これらの図面のうちの1つ以上を、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによってよりよく理解され得る。
【0221】
次に、本発明の特定の態様を具体化する好ましい非限定的な実施例を、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0222】
図1】ヒトCD137およびカニクイザルCD137との結合を示す。別々の2つの実験のデータが含まれる。
図2】実施例6のCD137変異体を示す。
図3】滴定時(左から右へ25μg/ml)のCHO-huCD137細胞に対するCD137LとCD137mAbとの競合の2つの実験の概要である。
図4】参照REF1に対して正規化したクローンの刺激指数を示す。
図5】架橋した場合および架橋しない場合の、抗体によるNF-κB媒介性シグナル伝達の誘導を示す。
図6】1630/1631抗体による治療が、マウス腫瘍モデルにおいて腫瘍体積に及ぼす影響を示す。
図7】Schrodinger社の分析により2674/2675および親クローンである1630/1631クローンについて決定されたパッチサイズおよびAggScoreを示す。
図8】2674/2675とヒトおよびカニクイザルCD137との結合を示す。
図9】CD137レポーターアッセイにおける、2674/2675および親クローン1630/1631とFcγRIでトランスフェクトしたCHO細胞との架橋を示す。
図10】CD137レポーターアッセイにおける、2674/2675および親クローン1630/1631とFcγRIIaR131およびFcγRIIbとの架橋を示す。
図11】レポーター細胞株における架橋非依存性活性化を決定するために使用される、空のベクター(pcDNA3.1)でトランスフェクトしたCHO細胞を示す。
図12】FcγRIでトランスフェクトしたCHO細胞と架橋した場合の、CD137mAbで刺激した後のCD8T細胞のIFN-γ産生を示す。CD8T細胞アゴニストアッセイにおいて2674/2675アゴニスト応答に対して正規化したIFN-γ応答の概要(n=5)。
図13】種々のヒト癌について、Fcγ受容体(X軸)およびTNFRSF9(CD137、Y軸)の平均発現値間の相関を示すドットプロットを示す。Fcγ受容体およびCD137の両方の平均を上回る発現(平均発現レベル≧10)を示す癌は、白抜きの記号として強調されている。
【実施例
【0223】
実施例1-Alligator GOLDからのCD137抗体の選択
ファージディスプレイ選択は、ヒト抗体(scFv)ライブラリー、Alligator GOLDを用いて行った。ビーズもしくは試験管の表面上にコーティングした、またはCD137でトランスフェクトした細胞の表面上に発現された、可溶性形態の組換えCD137に対する選択を行った。CTLA4-Fcおよび無関係のHisタグ化タンパク質を、選択において過剰に含まれる非標的として用いた。各選択ラウンドの前に、ファージストックを非標的タンパク質、ビーズ、またはCD137陰性細胞に対して予め選択して、非特異的結合物質を除去した。
【0224】
ファージ選択から特異的結合物質を同定するために、約4500個の個々のクローンを、組換え標的(CD137-Fc)または非標的タンパク質のいずれかでコーティングしたELISAを用いてファージ型でスクリーニングし、続いていくつかのクローンについて可溶性scFvとして確認した。CD137への特異的結合を示すクローンを配列決定し、さらなる特徴付けのために特有のクローンをIgGとして生成した。
【0225】
実施例2-ELISAによって測定されるヒトCD137との結合
目的
目的は、CD137抗体の結合能を決定することであった。
【0226】
材料および方法
CD137抗体と組換えヒトCD137との結合は、サンドイッチELISAにより決定した。簡潔に述べると、組換えヒトCD137-Fc(R&D番号838-4B)でコーティングしたELISAプレート(Greiner番号655074)を、調査する種々のCD137抗体の段階希釈物とともにインキュベートした。HRP結合ヤギ抗ヒトκ軽鎖(AbD Serotec番号STAR127P)を用いてCD137抗体を検出し、SuperSignal ELISA Pico化学発光基質(Pierce番号37069)を用いて発色させた。種々の抗体のEC50値を、2~6回の別々の実験において決定した。
【0227】
公表されているアミノ酸配列情報から合成された、CD137に対する特異性を有する2つの異なる参照抗体を本試験に使用した(「REF1」および「REF2」と命名)。
【0228】
使用した他の参照抗体、すなわち、REF3、REF4およびREF8は、Alligator GOLDライブラリーから得られたヒトCD137特異的な単一特異性IgG抗体である。それらはアゴニスト性であり、CD137に結合するとT細胞を刺激する。参照抗体の結合エピトープは、実施例6~8に概説されるように確立された(下記参照)。
【0229】
参照抗体は、それらが以前に少なくともいくつかの臨床試験を受けており、それに対して新しい抗CD137抗体が改善された特性および/または機能について評価することができるベンチマークを示すため選択された。
【0230】
結果および結論
例示的な抗体1630/1631は、参照抗体と同様の範囲、すなわちサブナノモルのEC50値を示す。データを表1にまとめる。
【表1】
【0231】
実施例3-フローサイトメトリーによって測定されるヒトおよびカニクイザルCD137との結合
目的
本試験の目的は、ヒトおよびカニクイザル(Macaca fascicularis)CD137との結合を決定することであった。
【0232】
材料および方法
結合およびEC50は、ヒトCD137、カニクイザルCD137、または空のベクターでトランスフェクトしたCHO細胞のフローサイトメトリーを用いて決定した。ヒトまたはカニクイザルCD137の細胞外部分をヒトCD40の膜貫通部分および細胞内部分に融合し、pcDNA3.1にクローニングした。続いて、ベクターをCHO細胞に安定にトランスフェクトした。CD137の発現は、4℃で30分間、CD137抗体(ヒトCD137-PE、BD Biosciences番号555956)を用いてフローサイトメトリーにより確認した。CD137でトランスフェクトした細胞および空のベクターでトランスフェクトした細胞を、CD137抗体とともに4℃で少なくとも1時間インキュベートして結合を飽和させた。抗体の内在化を最小限に抑えるために、0.05%アジ化ナトリウムをインキュベーション緩衝液中で使用し、全ての作業を氷上で行った。PE結合抗hIgG抗体(109-115-098、Jackson Immunoresearch laboratories)を用いてCD137抗体を検出し、4℃で30分間インキュベートした。染色直後に、細胞をパラホルムアルデヒド溶液(10倍濃縮BD CellFIX、BD biosciences番号340181)で固定化した。細胞をFACSVerse(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。各試料の蛍光強度中央値(MFI)を決定し、Graph Pad Prismを使用して用量反応データを分析した。
【0233】
MFIデータを各抗体について正規化した:各抗体の用量滴定において、0%は最低値として定義され、100%は最高値である。EC50および95%信頼区間は、2つの実験のデータ(非線形回帰(曲線適合)、制約は0および100に設定)に基づいてGraph Pad Prismを使用して算出した。
【0234】
結果および結論
CHO-huCD137、CHO-cyCD137、およびCHO-pcDNAとの結合は、2つの別々の実験において確認した(図1)。1630/1631は、2つの参照抗体REF1およびREF2と同等のEC50でヒトCD137に結合する。1630/1631は、カニクイザルCD137に十分に結合する。参照抗体REF1およびREF8(図1)は、カニクイザルCD137に対して非常に弱く結合するかまたは全く結合しない。REF8は、弱い結合を示し、完全な飽和には達しない。
【0235】
EC50の決定は、アッセイ間およびアッセイ内変動を含めるために、試験した各CD137抗体について95%信頼区間として提示されている(表2)。
【表2】
【0236】
実施例4-Biacoreによって測定される親和性
目的
目的は、異なるCD137抗体の親和性、オン速度およびオフ速度を推定することであった。
【0237】
材料および方法
従来のアミンカップリングを用いて、ヒトCD137(R&D Systems)をBiacore(商標)センサーチップ、CM5に固定化した。試験した抗体および対照(段階希釈した1/2の10~0.63nM)を、30μl/mlの流速でHBS-P(GE、番号BR-1003-68)中で結合について分析した。その後5分間会合させ、15分間解離させた。10mMグリシンpH1.7を30秒間用いて、再生を2回行った。速度論的パラメータおよび親和性定数は、1:1Langmuirモデルを用いて算出した。
【0238】
結果および結論
抗体の親和性は、チップ表面上にコーティングしたCD137上に流した二価抗体を用いて測定されたナノモルからサブナノモルの範囲内であった(表3)。
【表3】
【0239】
実施例5-CD137抗体の標的特異性
目的
この試験の目的は、CD137抗体のいずれかがCD137以外の標的に結合するリスクを評価することであった。
【0240】
材料および方法
ELISA法が既に確立されているTNFRスーパーファミリーメンバー(CD40およびOX40)との結合を評価して、非標的タンパク質と交差反応する潜在的傾向を検出した。さらに、BLAST検索を行い、最も類似した配列としてTNFRSF21を同定した(34%の配列同一性)。この配列類似性は比較的低いため、OX40およびCD40への非標的結合の決定は十分であると考えられた。
【0241】
ELISAプレート(Greiner番号655074)を、50μl/ウェルの組換えヒトOX40(R&D番号1493-CD)、CD40-Fc(Ancell番号504-820)、またはPBS中0.5μg/mlの最終濃度に希釈したCD137(R&D番号838-4B)で、37℃で1時間または4℃で一晩コーティングした。プレートをPBS+0.05%TWEEN20(PBST)で洗浄し、続いてPBST+1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックした。抗体試料を、PBST+1%BSA中の10~0.01μg/mlから1/10の連続希釈液として調製し、室温で1時間インキュベートし、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ヒトκ軽鎖抗体(AbD Serotec番号STAR127P)を用いて検出し、SuperSignal ELISA Pico化学発光基質(Pierce ThermoScientific番号37069)を用いて発色させた。
【0242】
結果および結論
【表4】
【0243】
2つの実験の結果は類似していた。1つの抗体(REF4)がOX40およびCD40に対して弱い結合を示したが、残りの抗体はどれも、OX40またはCD40のいずれに対してもいずれの検出可能な結合も示さなかった。分析した抗体の概要、および2つの実験の結果を表4に示す。
【0244】
さらに、複数の供血者からの初代PBLとの結合を試験した。1630/1631および2674/2675とPBLとの結合は参照抗体と同様であった。非標的タンパク質への関連性のある非特異的結合は検出されなかった。
【0245】
実施例6-CD137に結合する抗体のドメインマッピング
目的
目的は、異なるクラスのエピトープ特異性を定義し、参照抗体の特性と比較することであった。
【0246】
材料および方法
トランスフェクトされた細胞の表面に発現されたヒト/マウスCD137キメラのパネルに結合する各抗体の能力をフローサイトメトリーによって分析した。
【0247】
キメラは、ヒトCD137のドメインまたはモジュールを、対応するマウスドメインと交換することによって設計した。CD137ヒト/マウスキメラの遺伝子を合成し(GenScript)、構築物をpcDNA3.1ベクター(Invitrogen)にクローニングし、FreeStyle293-F細胞(Invitrogen)に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をCD137抗体および対照抗体とともにインキュベートし、続いて検出のために抗ヒトIgG-PE(Jackson Immunoresearch)とともにインキュベートし、FACS Verse(BD Biosciences)により分析した。異なるキメラ構築物との結合を、アイソタイプ対照の結合と比較した相対MFIとして算出し、続いて個々の抗体間の親和性の差の影響を最小限に抑えるために全長ヒトCD137構築物に対して正規化を行った。
【0248】
結果および結論
後述の図2に記載されるように、3つの結合パターンが観察された。データを表5にまとめる。
【0249】
パターンA
抗体REF1は、ヒトCD137との結合のためにドメイン1に依存する。
【0250】
パターンB
抗体REF3、REF4、2674/2675および1630/1631は、ヒトCD137との結合のために主にドメイン2に依存する。
【0251】
パターンC
抗体REF2(参照抗体)およびREF8は、ヒトCD137との結合のために主にドメイン3B~4Aに依存していると考えられる。
【表5】
【0252】
実施例7-CD137リガンドのブロック
目的および背景
目的は、CD137抗体がCD137リガンド結合をブロックするかどうかを決定することであった。
【0253】
CD137抗体がリガンド結合領域に近接したエピトープに結合すると、抗原との結合がリガンド結合の部分的または全体的なブロックをもたらし得る。CD137リガンド結合エピトープに近接した結合もまた、CD137リガンド結合エピトープの立体障害または立体構造変化に起因してリガンド結合に影響を及ぼし得る。リガンドブロッキング特性を評価するために、全てのCD137抗体を一定濃度のCD137Lに対して滴定した。
【0254】
材料および方法
ヒトCD137でトランスフェクトしたCHO細胞をリガンド競合に用いた。ヒトCD137の細胞外部分をhCD40の膜貫通部分および細胞内部分に融合し、pcDNA3.1にクローニングした。続いて、ベクターをCHO細胞に安定にトランスフェクトした。CD137の発現は、CD137を標的とする市販の抗体で染色することにより確認した。
【0255】
EC50の濃度のCD137リガンドを添加する前に、CHO-huCD137をCD137モノクローナル抗体とともにプレインキュベートし、所定の飽和濃度(0.25μg/ml)から+4℃で1時間滴定した。+4℃でさらに30分間共インキュベートした後、細胞を洗浄し、結合したCD137リガンドを抗FLAG-APC(Cell signaling technology)で検出した。分析前に、細胞をパラホルムアルデヒド(10倍濃縮BD CellFIX、BD biosciences)で固定化した。分析はFACSverseを用いて行い、MFI(蛍光強度中央値)はFlowJoソフトウェアを用いて算出した。
【0256】
結果および結論
試験した全てのCD137mAbはCD137リガンド結合をブロックしていなかったと結論付けることができる(表6、図3)。ドメイン2B~4Aに結合する、グループBおよびCに属するCD137mAbは、CD137Lをブロックする(2674/2675および1630/1631を含む)。ドメイン1に結合したグループAに属するREF1は、CD137リガンドをブロックしなかった。REF1はCD137Lの結合を増加させた。
【表6】
【0257】
実施例8-競合ELISA
目的および背景
各CD137抗体を互いに競合させることによって、それらのブロックパターンに基づいて類似のエピトープに結合する抗体を決定することが可能である。競合ELISAは、コーティングされたCD137-Fcに結合したときに、ビオチン化CD137抗体を非ビオチン化CD137抗体と共インキュベートすることによって行われる。競合は、ビオチン化CD137抗体からのシグナルの喪失として定義される。低い競合値は、抗体間に競合がないこと、または抗体の結合動態いずれかに起因し得る。1つの抗体の結合はまた、他のCD137抗体の結合に影響を与える抗原に結合したときに立体障害または立体構造変化をもたらし得る。
【0258】
材料および方法
CD137抗体をビオチン化し(EZ-link NHS-LC-Biotin、ThermoFisher)、CD137-Fcに対するインタクトな結合特性を、ビオチン化抗CD137mAbと非ビオチン化抗CD137mAbのEC50を比較することによりELISAで検証した。非ビオチン化抗CD137(抗CD137-bio)を、決定されたEC50より30倍高い濃度のCD137-Fcと0.5時間プレインキュベートした。洗浄せずに、抗CD137-bioを添加し、さらに1時間共インキュベートした。抗CD137-bioの結合はストレプトアビジン-HRP(Pierce)で検出した。競合は、その最大競合(それ自体と競合する)と比較して他の抗体に対して測定された結合を除すことによって相対数として算出した。得られた相対値を最大ブロック能に対して正規化した(表7)。
【表7】
【0259】
結果および結論
競合ELISAを2回繰り返した。両方の実験において、CD137mAbのうちのいくつかは、それ自体と完全には競合しなかった(表7)。ドメインマッピンググループAに属する抗体REF1は、競合ELISAにおいて特有のパターンを示した。分析した他のCD137抗体は、同様のブロックパターンを示した。これらの抗体間の結合動態の差は、これらの抗体の間の結合パターンのわずかな変化をある程度説明し得るが、グループ内の小さな変化が結合エピトープにおける実際の差を反映するということを考慮しないわけにはいかない。
【0260】
実施例9-CD137抗体のin vitro効果
目的
目的は、アゴニスト活性を有するCD137抗体を同定することであった。
【0261】
材料および方法
CD137抗体のアゴニスト活性は、初代ヒトCD8T細胞に基づくT細胞アッセイにおいて評価した。簡潔に述べると、CD8T細胞を製造業者のプロトコルに従ってMACS分離(Miltenyi番号130-096-495)によりヒト末梢血単核球から分離した。細胞を、抗CD3抗体(クローンOKT3、Affymetrix eBioscience番号16-0037)で予めコーティングした96ウェルマイクロタイタープレート(NuncThermo Scientific番号268200)中でインキュベートし、試験されるCD137抗体の濃度を滴定した。72時間または96時間のインキュベーション後、培地を回収し、IFN-γレベルをELISA(BD番号555142)により決定した。
【0262】
各クローンを少なくとも6つのドナーにおいて分析し、参照CD137抗体REF1および陰性対照抗体と比較した。
【0263】
ドナー内の変動が大きいため、刺激指数(SI、陰性対照と比較した抗体による誘導倍率)を各試料について決定し、参照抗体REF1の刺激指数に対して正規化した。
【0264】
結果および結論
参照REF1と同等の有効性を有するいくつかのクローンが同定された。データを図4にまとめる。
【0265】
表8 表8は、CD137刺激により誘導された絶対IFN-γレベルを示す。しかしながら、全てのドナーにおいて全ての抗体を突き合わせて分析したわけではなく、正規化されたSIは有効性の比較により関連している。
【表8】
【0266】
実施例10-in vitro NFkBレポーターアッセイ
293T細胞(3,000万個)を、ヒトCD137、NF-κBプロモーター下のホタルルシフェラーゼ、およびウミシイタケをコードするプラスミドでトランスフェクトした。5時間のトランスフェクション後、抗体を3つの異なる濃度で添加した。18時間後、細胞を回収し、ルシフェラーゼレポーターアッセイ(Promega)を行った。細胞を、架橋せずに、および架橋させて(抗IgG抗体を用いて5μg/mlで架橋)、可溶性抗体とともに培養した。
【0267】
結果
1630/1631は、架橋されるとCD137によるNF-κB媒介性シグナル伝達の誘導を刺激するが、架橋剤の非存在下では刺激しない。対照的に、REF1は架橋剤の非存在下でもCD137によるシグナル伝達を誘導する。
【0268】
実施例11-HT-29結腸癌モデルにおけるin vivo抗腫瘍効果
概要
hPBMCヒト化免疫不全マウスおよびHT-29結腸癌の皮下腫瘍モデルを用いて1630/1631の抗腫瘍効果を調べた。
【0269】
1630/1631は、統計的に有意な腫瘍体積の抑制を示した。
【0270】
材料および方法
白血球濃縮物は、Lund University Hospitalから入手した。
【0271】
Taconic’s DenmarkからのメスSCID-Beigeマウス(7~8週齢)を実験に用いた。全ての実験はMalmo/Lund倫理委員会の承認によって行われた。
【0272】
HT-29結腸癌をATCCから入手し、ATCCの推奨に従って培養した。対数期に増殖しているHT-29細胞株を皮下注射した(0日目(D0)に200μL中4×10細胞)。白血球濃縮物から単離したヒトPBMC(100μL中7×10)を同じ日に腹腔内注射した。6、13、および20日目に腹腔内処置(100μg)を行った。
【0273】
ノギスを用いて幅、長さおよび高さを測定し、腫瘍体積を算出した(幅/2×長さ/2×高さ/2×π×(4/3))。創傷時に腫瘍体積が2cmに達する前、またはマウスの健康に影響を与える前に、動物を屠殺した。
【0274】
GraphPad Prismプログラムを用いたマン・ホイットニー検定によってデータを分析した。
【0275】
結果
4つの異なるドナーを用いて移植したマウスからのプールデータは、ビヒクル群との比較において、12~16日目に1630/1631抗体で処置した場合に腫瘍増殖の阻害の形で統計的に有意な抗腫瘍効果を示した(p=0.0675~p=0.0132、マン・ホイットニーのノンパラメトリックな両側検定)。腫瘍体積抑制率は、10日目~21日目に1630/1631で29~42%の範囲であった(図6および表9を参照)。
【0276】
結論として、1630/1631の抗腫瘍効果をhPBMCヒト化免疫不全マウスおよびHT-29結腸癌の皮下腫瘍モデルを用いて調べた。1630/1631は、統計的に有意な腫瘍体積の抑制を示した。
【表9】
【0277】
実施例12-CD137親抗体クローン1630/1631の最適化
最適化の目的は、親和性および生物物理学的特性に関して、1630/1631抗体の改良型変異体を作製することであった。ビーズの表面上にコーティングした組換えCD137に対するファージ選択を行い、各選択ラウンドの前に、ファージストックをビーズと同様に非標的タンパク質に対して予め選択した。4回目の選択の前に、65℃で熱インキュベーションステップを行った。全体として、選択戦略は、洗浄ステップを延長し、ファージプールとCD137との間のインキュベーション時間を短縮することにより、遅いオフ速度ならびに速いオン速度でクローンの単離を促進するように設計された。
【0278】
ファージ選択後、可溶性scFv型でスクリーニングを行い、標的結合クローンを同定すると同時に多様性を評価した。改善された温度安定性、カニクイザル反応性、および親和性または解離速度を有するクローンを同定するために、拡張一次スクリーニングを行った。S228P安定化変異を有する最終IgG4型に合計50クローンを再クローン化した。最適化変異体のさらなる評価を最終形態で行い、ELISA設定における結合、FACSにより決定される細胞結合、親和性、ELISA設定およびDSFの両方によって決定される温度安定性、SE-HPLC、Schrodinger社のモデル化および特異性に焦点を合わせた。
【0279】
実施例13-クローン2674/2675の改善された安定性
DSF分析による目的は、親クローン1630/1631と比較してクローン2674/2675のTmを決定し、最適化後の温度安定性における改善を評価することであった。
【0280】
材料および方法
全ての抗体を、SARomics Biostructureにおいて示差走査蛍光分析法(DSF)により分析した。試料を滅菌濾過したPBS中0.1mg/mlに希釈し、150μlの体積をSARomicsに送った。
【0281】
DSF測定用の試料(PBS緩衝液中0.1mg/ml)は、63μlの試料+7μlのPBS緩衝液、1:100倍に希釈したSYPRO Orange)で構成されていた。全体で、SYPRO Orangeを1:1000倍に希釈した。Stratagene MX3000P、qPCR機を用いて各構築物について二重測定を行った。測定は25℃~95℃の温度範囲で行った。全ての試料について平均融解温度Tmを算出した。
【0282】
結果および結論
全試料の融解曲線を得、2674/2675および親クローン1630/1631について決定されたTm1およびTm2は以下の表10に見ることができる。2674/2675は、親クローン1630/1631と比較して1~2℃改善されたTm2を示した。
【表10】
【0283】
実施例14-Schrodinger社での抗体凝集予測により分析されたクローン2674/2675の凝集傾向の減少
最適化変異体をSchrodinger社で分析することの目的は、親クローン1630と比較して疎水性パッチのサイズおよび2674/2675の凝集傾向を評価することであった。
【0284】
材料および方法
異なる変異体の配列をSchrodinger社に送り、3D構造を作成した。3DモデルをProtein Surface Analyzerで分析し、AggScoreでランク付けした。REF9-24は、ヒトCD137に対する結合能に基づいて最適化の間に得られたクローンである。
【0285】
結果および結論
クローン2674/2675およびREF9-24(選択の間に得られたクローン)ならびに親クローン1630/1631について定義されたパッチサイズおよびAggScoreは図7に見ることができる。モデル化分析によれば、導入された突然変異は疎水性パッチを明らかに破壊し、凝集傾向を減少させたと結論付けることができる。
【0286】
実施例15-ELISAによって測定された2674/2675とヒトおよびカニクイザルCD137との結合
目的および背景
評価の目的は、ELISAにおいて親クローン1630/1631と比較して2674/2675とヒトおよびカニクイザルCD137の両方との結合を決定することであった。
【0287】
材料および方法
CD137抗体と組換えヒトCD137との結合はサンドイッチELISAにより測定した。簡潔に述べると、組換えヒトCD137-Fc(R&D番号838-4B)でコーティングしたELISAプレート(Greiner番号655074)を、調査する種々のCD137抗体の段階希釈物とともにインキュベートした。CD137抗体は、HRP結合ヤギ抗ヒトκ軽鎖(AbD Serotec番号STAR127P)を用いて検出し、SuperSignal ELISA Pico化学発光基質(Pierce番号37069)を用いて発色させた。種々の抗体のEC50値を、2~6回の別々の実験において決定した。
【0288】
結果および結論
2674/2675は、親クローン1630/1631と同様の範囲、すなわちサブナノモルのEC50値を示す。データを下の表11にまとめる。
【表11】
【0289】
実施例16-2674/2675とヒトおよびカニクイザルCD137との結合(Octet)
目的
目的は、Octetプラットフォームを用いて、ヒトおよびカニクイザルCD137に対する2674/2675および1630/1631の相対的結合親和性を比較することであった。
【0290】
材料および方法
CD137の親和性を、Octet Red96プラットフォーム(ForteBio)を用いて決定した。2674/2675、1630/1631、REF1、REF2および1188アイソタイプ対照を、EDCおよびNHSとのアミンカップリングにより、10μg/mlでARG2バイオセンサー(ForteBio番号18-5092)に結合した。100nMからのCD137(Acro Biosystems番号41B-H5227および番号41B-C52H4)の72倍段階希釈物を1×Kinetic Buffer(ForteBio番号18-1092)中で調製した。会合を180秒間測定し、続いて1×Kinetic Buffer中で180秒間解離させた。再生には10mMグリシンpH2.2を使用した。
【0291】
生成されたデータを参照ウェルのサブトラクション(1188)により参照し、ベースラインをy軸と整列させ、関連性に対する整列により段階間相関を実施し、データ分析ソフトウェア(v.9.0.0.14)におけるSavitzky-Golayフィルタリングによりデータを平滑化した。フィッティング精度の測定として、Xを有する1:1ラングミュア結合モデルを用いて処理データをフィットさせた。
【0292】
結果および結論
ヒトおよびカニクイザルCD137に対する2674/2675、1630/1631およびREF抗体の結合親和性を表12に示す。ヒトCD137に対する2674/2675の親和性は、1630/1631と比較して2倍改善された。カニクイザルCD137に対する2674/2675の親和性は、1630/1631と同じ範囲内であった。
【表12】
【0293】
実施例17-ヒトFcγRに対する2674/2675の結合親和性
目的
目的は、Octetプラットフォームを用いて、ヒトFcγRに対する2674/2675の相対的結合親和性を決定することであった。
【0294】
材料および方法
Anti-Human Fab-CH1(FAB2G)センサーチップ(ForteBio)を備えたOctet RED96プラットフォームを用いてFcγR親和性を決定した。抗体を1×Kinetics Buffer(ForteBio)中で200nMに希釈し、1組の8個の平行センサーに300秒間ロードして、>1.5nmの固定化反応を得た次いで、固定化抗体を、100nMから開始して、7 2倍希釈のFcγRに対してアッセイした。参照用に1つの固定化センサーを1×Kinetics Bufferに対してアッセイし、二重参照を可能にするために抗体を固定化せずにアッセイ全体を繰り返した。含まれるFcγRは、R&D Systemsから入手した(ヒトFcγRI、番号1257-FC-050;ヒトFcγRIIa、番号1330-CD-050;ヒトFcγRIIb、番号1460-CD-050;ヒトFcγRIIIa(V158)、番号4325-FC-050;ヒトFcγRIIIa(F158)、番号8894-FC-050)。FcγRとの結合を60秒間行い、続いて1×Kinetics Buffer中で60秒間解離させ、10mMグリシン、pH1.7を用いてセンサーチップを再生した。生成されたデータを標準的な二重参照により参照し、ベースラインをy軸と整列させ、解離に対する整列による段階間相関を実施し、データ分析ソフトウェア(v.9.0.0.14)におけるSavitzky-Golayフィルタリングによりデータを平滑化した。フィッティング精度の測定として、Xを有する1:1ラングミュア結合モデルを用いて処理データをフィットさせた。非常に速い解離速度でFcγRに対して生成された解離曲線の曲線フィッティングの品質を改善するために、解離曲線の最初の10秒のみを曲線フィッティングに含めた。
【0295】
結果および結論
2674/2675およびREF抗体のヒトFcγRに対する結合親和性を表13に示す。IgG4抗体と高親和性受容体FcγRIとの結合に予想されるように、2674/2675は、ヒトFcγRIに対して全ての他のアッセイされたFc受容体よりも強い結合を有する。2674/2675は、REF1抗体と同等のヒトFcγRとの結合を有する。
【表13】
【0296】
実施例18-FACSによって測定された2674/2675とヒトおよびカニクイザルCD137との結合
本試験の目的は、ヒトおよびカニクイザルCD137との結合を決定することであった。
【0297】
材料および方法
結合およびEC50は、ヒトCD137、カニクイザルCD137または空のベクターでトランスフェクトしたCHO細胞のフローサイトメトリーを用いて決定した。ヒトまたはカニクイザルCD137の細胞外部分をヒトCD40の膜貫通部分および細胞内部分に融合し、pcDNA3.1にクローニングした。続いて、ベクターをCHO細胞に安定にトランスフェクトした。CD137の発現は、4℃で30分間、CD137抗体(ヒトCD137-PE、BD Biosciences番号555956)を用いたフローサイトメトリーにより確認した。CD137でトランスフェクトした細胞および空のベクターでトランスフェクトした細胞を、CD137抗体とともに4℃で少なくとも1時間インキュベートして結合を飽和させた。抗体の内在化を最小限に抑えるために、0.05%アジ化ナトリウムをインキュベーション緩衝液中で使用し、全ての作業を氷上で行った。PE結合抗hIgG抗体(109-115-098、Jackson Immunoresearch laboratories)を用いてCD137抗体を検出し、4℃で30分間インキュベートした。染色直後に、細胞をパラホルムアルデヒド溶液(10倍濃縮BD CellFIX、BD biosciences番号340181)で固定化した。細胞をFACSVerse(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。各試料の蛍光強度中央値(MFI)を決定し、Graph Pad Prismを使用して用量反応データを分析した。
【0298】
MFIデータを各抗体について正規化した:各抗体の用量滴定において、0%は最低値として定義され、100%は最高値である。EC50および95%信頼区間は、2つの実験のデータ(非線形回帰(曲線適合)、制約は0および100に設定)に基づいてGraph Pad Prismを使用して算出した。
【0299】
結果および結論
2674/2675は、親クローン1630ならびにREF1およびREF2 CD137mAbと同等のヒトCD137との結合を示す(図8および表14)。2674/2675および1630/1631はカニクイザルCD137に対して同等の結合を有するが、REF1はカニクイザルCD137には全く結合しない。
【表14】
【0300】
実施例19-CD137mAbの架橋のためにFcγR発現細胞を用いたCD137レポーターアッセイ
目的および背景
CD137mAbをFcγRでトランスフェクトしたCHO細胞と架橋した場合のCD137レポーターアッセイにおける親クローン1630/1631を用いた2674/2675の機能的評価。
【0301】
材料および方法
ヒトFcγRI、FcγRIIa R131、FcγRIIbまたは空のベクター(pcDNA3.1)でトランスフェクトしたCHO細胞を架橋に用いた。FcγR遺伝子をpcDNA3.1にクローニングした。続いて、ベクターをCHO細胞に安定にトランスフェクトした。FcγRの発現は、CD32またはCD64を標的とする市販の抗体で染色することにより確認した。
【0302】
CD137mAbのアゴニスト機能は、CD137レポーターアッセイ(Promega、CD137Bioassay Kit CS196005)を用いて評価した。製造業者のプロトコルに従ってアッセイを行った。簡潔に述べると、FcγRでトランスフェクトしたCHO細胞および滴定濃度のCD137mAbを10%FCSを含むRPMIに希釈し、CD137(ジャーカット/CD137細胞)レポーター細胞を添加する前にアッセイプレートに添加した。アッセイプレートを、Bio-Glo TM Luciferase Assay Detectionの添加まで37℃で6時間インキュベートし、プレートをBMGリーダーで読み取った。
【0303】
結果および結論
CD137レポーターアッセイにおけるFcγRIでトランスフェクトしたCHO細胞とCD137 mAbの架橋は、2674/2675および親クローン1630/1631がレポーター細胞株においてNF-κBのCD137依存性の活性化を誘導することを示している(図9)。CD137抗体が架橋依存性である場合、FcγRI、FcγRIIa R131およびFcγRIIbに対する結合親和性(前の実施例において示した)は、FcγR架橋後にCD137レポーターアッセイにおいて誘導されたアゴニスト活性と十分に相関すると結論付けることができる(図10)。2674/2675、1630/1631またはREF2ではなく、REF1のFcγR架橋依存性の活性化は、空のベクターでトランスフェクトしたCHO細胞を用いて決定した(図11)。
【0304】
実施例20-D137抗体の架橋のためにFcγRI発現CHO細胞を用いたCD8T細胞アゴニストアッセイ
目的および背景
CD137mAbをFcγRI発現細胞と架橋した場合のCD8T細胞アゴニストアッセイにおける親クローン1630/1631を用いた2674/2675の機能的評価
【0305】
材料および方法
ヒトFcγRIでトランスフェクトしたCHO細胞を架橋に用いた。FcγRI遺伝子をpcDNA3.1にクローニングした。続いて、ベクターをCHO細胞に安定にトランスフェクトした。FcγRIの発現は、CD64を標的とする市販の抗体で染色することにより確認した。
【0306】
CD137抗体のアゴニスト活性は、初代ヒトCD8T細胞に基づくT細胞アッセイにおいて評価した。簡潔に述べると、CD8T細胞を製造業者のプロトコルに従ってMACS分離(Miltenyi番号130-096-495)によりヒト末梢血単核球から分離した。細胞を、FcγRIでトランスフェクトしたCHO細胞とプレインキュベートした96ウェルマイクロタイタープレート(NuncThermo Scientific番号268200)中でインキュベートし、抗CD3抗体(クローンOKT3、Affymetrix eBioscience番号16-0037)でコーティングしたトシルビーズとインキュベートし、試験されるCD137抗体の濃度を滴定した。72時間のインキュベーション後、培地を回収し、IFN-γレベルをELISA(BD番号555142)により決定した。
【0307】
各クローンを少なくとも5つのドナーにおいて分析し、参照CD137抗体REF2と比較した。ドナー内の変動が大きいため、比較のためにIFN-γレベルを各ドナー内の2674/2675で正規化した。
【0308】
結果および結論
CD8T細胞アゴニストアッセイにおけるFcγRI発現CHO細胞とCD137mAbの架橋は、2674/2675および親クローン1630/1631が、72時間後のIFN-γ産生の増加として測定されたT細胞活性化を誘導したが、REF2は誘導しなかったことを示している(図12)。2674/2675、1630/1631およびREF2のFcγRに対するIgG結合親和性を決定し、前の実施例において示した。FcγRに対するIgG結合親和性はCD8T細胞において誘導されるアゴニスト活性と相関すると結論付けることができる。
【0309】
実施例21-HT-29結腸癌モデルにおけるin vivo抗腫瘍効果
目的
hPBMCヒト化免疫不全マウスおよびHT-29結腸癌の皮下腫瘍モデルを用いて2674/2675の抗腫瘍効果を調べた。
【0310】
材料および方法
白血球濃縮物は、Lund University Hospitalから入手した。Taconic’s DenmarkからのメスSCID-Beigeマウス(7~8週齢)を実験に用いた。全ての実験はMalmo/Lund倫理委員会の承認によって行われた。
【0311】
HT-29結腸癌をATCCから入手し、ATCCの推奨に従って培養した。対数期に増殖しているHT-29細胞株を皮下注射した(0日目(D0)に200μL中4×10細胞)。白血球濃縮物から単離したヒトPBMC(100μL中10×10)を同じ日に腹腔内注射した。7日目から始めて3週間、腹腔内治療(100μg)を週2回行った。
【0312】
ノギスを用いて幅、長さおよび高さを測定し、腫瘍体積を算出した(幅/2×長さ/2×高さ/2×π×(4/3))。創傷時に腫瘍体積が2cmに達する前、またはマウスの健康に影響を与える前に、動物を屠殺した。
【0313】
結果および結論
2674/2675は、ビヒクル群と比較して、ヒト化マウスモデルにおいて抗腫瘍効果を示した。腫瘍体積抑制率は、19日~28日に2674/2675で0~35%の範囲であった(表15)。
【0314】
結論として、2674/2675の抗腫瘍効果をhPBMCヒト化免疫不全マウスおよびHT-29結腸癌の皮下腫瘍モデルを用いて調べた。2674/2675は、腫瘍体積の抑制を示した。
【表15】
【0315】
実施例22-ヒト腫瘍組織におけるFcγRおよびCD137の同時発現の遺伝子発現分析
目的
マイクロアレイおよびRNA配列データセットの精巧かつ品質管理されたデータベースを用いて、広範囲のヒト癌における種々のFcγ受容体およびCD137の遺伝子発現を評価すること。
【0316】
方法
FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、FcγRIIIbおよびCD137の平均発現値は、ヒト組織についてのRNAマイクロアレイ研究の精巧かつ品質管理されたデータベースであるGenevestigatorを用いて遺伝子発現プロファイリングを行うことによって得た(Hruz et al.2008,Adv Bioinformatics2008:420747(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。CD137に対する種々のFcγ受容体遺伝子の平均発現値をプロットすることによって相関プロットを得た(図13)。Fcγ受容体およびCD137の両方の平均を上回る発現(平均発現レベル≧10)を示す癌を同定し、上位10の固形腫瘍型および血液悪性腫瘍をそれぞれ表16および表17に示す。
【0317】
結果および結論
Fcγ受容体の高い発現およびCD137の平均を上回る発現を示すいくつかのヒト腫瘍をこの方法を用いて同定した。下の表は、本発明において定義される抗体に対して高い感受性を示し得る適応症の例を提供する。このアプローチは、アゴニストCD137抗体による治療から利益を受け得る患者コホートまたは個々の患者を同定するために使用することができる実際に、この種のアプローチは、治療から利益を受け得る患者を個人レベルで同定するために使用することができる。腫瘍を分子的に特徴付けるために使用されている他の方法、例えば、次世代シーケンシング、または免疫組織化学、フローサイトメトリーもしくはプロテオミクスアプローチ等のタンパク質分析に基づく方法も想定することができる。
【表16A】
【表16B】
【表17A】
【表17B】
参考文献
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