(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】電池パック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/655 20140101AFI20220509BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220509BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20220509BHJP
H01M 10/659 20140101ALI20220509BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220509BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20220509BHJP
【FI】
H01M10/655
H01M10/613
H01M10/643
H01M10/659
H01M50/204 401H
H01M50/202
(21)【出願番号】P 2019532519
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2018026690
(87)【国際公開番号】W WO2019021880
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2017143045
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】福留 和明
(72)【発明者】
【氏名】有川 博
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-253747(JP,A)
【文献】特開2001-307784(JP,A)
【文献】特表2011-521403(JP,A)
【文献】特開2016-056352(JP,A)
【文献】特開2013-012441(JP,A)
【文献】特開平09-092237(JP,A)
【文献】特開2010-062093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/655
H01M 10/613
H01M 50/20
H01M 10/659
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上の二次電池セル
と、
前記二次電池セルを保持する電池ホルダ
と、
前記二次電池セルを前記電池ホルダ
に収納してなる電池集合体と、
前記二次電池セルの表面を被覆
し、該二次電池セルの発熱により溶融可能な、プレ成型された可撓性を有する放熱成形体と、
前記電池集合体を収納する外装ケースと、
を備える電池パック
であって、
前記二次電池セルが、外観を円筒形状としており、
前記電池ホルダが、前記二次電池セルの端部をそれぞれ保持する円筒形のセル保持部を有する一対の部材で構成されると共に、前記二次電池セルの外装缶が前記電池ホルダから表出する部位にリブを形成しており、
前記放熱形成体は、前記二次電池セルと前記リブの間に圧入されてなる電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記放熱成形体が、吸熱反応により溶融する化学反応を示す材質で構成されてなる電池パック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記放熱成形体が、前記二次電池セルの円筒形側面の曲面に沿った形状に成形されてなる電池パック。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記電池集合体が、複数の二次電池セルを隣接させた姿勢に、前記電池ホルダで保持しており、
前記放熱成形体が、前記隣接する二次電池セルを跨ぐように配置されてなる電池パック。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記放熱成形体が、複数に分割されて、前記電池ホルダに保持された前記二次電池セル
の表面をそれぞれ被覆するよう構成されてなるパック電池。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記電池ホルダが、複数の前記二次電池セルを隣接する姿勢で保持しており、
前記放熱成形体が、前記電池ホルダに保持された複数の前記二次電池セルの内、周囲に位置する二次電池セルの側面を覆う環状に形成されてなる電池パック。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記電池ホルダが、前記放熱成形体を前記二次電池セルの表面に押圧する成形体押圧部を備えてなる電池パック。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記放熱成形体が、ウレタン樹脂又はシリコーン樹脂を含む材質で構成されてなる電池パック。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記放熱成形体が、吸熱反応するフィラーを含む材質で構成されてなる電池パック。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一に記載の電池パックであって、さらに
前記電池集合体を収納する防水容器を備え、
前記電池集合体を前記防水容器に収納した状態で、前記外装ケース内に収納してなる電池パック。
【請求項11】
複数の円筒形二次電池セルを、該円筒形二次電池セルを保持する一対の電池ホルダに収納してなる電池集合体と、前記電池集合体を収納する外装ケースとを備える電池パックの製造方法であって、
前記電池ホルダが、前記円筒形二次電池セルの端部をそれぞれ保持する円筒形のセル保持部を有し、
前記電池ホルダから露出した前記円筒形二次電池セルの表面を被覆する、該円筒形二次電池セルの発熱により溶融可能な、プレ成型された可撓性を有する放熱成形体を準備する工程と、
前記円筒形二次電池セルの一方の端部を、前記一対の電池ホルダの内、一方の電池ホルダの円筒形のセル保持部に挿入する工程と、
前記セル保持部から露出した前記円筒形二次電池セルの側面を、前記放熱成形体で被覆する工程と、
前記放熱成形体は、前記二次電池セルの外装缶が前記電池ホルダから表出する部位に形成されたリブと、前記円筒形二次電池セルの間に圧入される工程と、
前記円筒形二次電池セルの他方の端部を、前記一対の電池ホルダの内、他方の電池ホルダの円筒形のセル保持部に挿入する工程と、
を含む電池パックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックは、電動工具、電動アシスト自転車、電動バイク、ハイブリッド電気自動車、電気自動車などの電源として、さらには家庭や店舗などでの蓄電用として幅広く用いられている。このような電池パックは、充電可能な二次電池セルを複数、直列や並列に接続して充放電可能としている。例えば
図8に示すように、複数の電池セル81を電池ホルダ82に収納してなる電池集合体80を、防水容器83に収納し、この防水容器83を電池のコアパックとして外装ケース84に収納している。電池ホルダ82は、複数の電池セル81を互いに平行な姿勢とし、かつ各電池セル81の両端に設けられた電極端子を同一面に配置すると共に、電池ホルダ82の両側面において、電池セル81の電極端子をリード板85で接続している。
【0003】
このような電池パックにおいても、近年の高出力化の要求に伴い、二次電池セルの容量や使用数が増大しており、これにより二次電池セルの一部が熱暴走した際の安全対策も求められている。従来の電池パックでは、袋状の防水容器83内に電池集合体80を収納した状態で、ポッティング樹脂を充填している。ポッティング樹脂をウレタン樹脂等として、二次電池セル間の隙間を充填することにより、均熱化を図り、一の二次電池セルの温度が上昇しても、ポッティング樹脂を介して他の二次電池セル等に熱伝導することにより、局部的な温度上昇を抑制することが可能となる。
【0004】
しかしながら、この方法では防水容器内にポッティング樹脂を充填することから、多量のポッティング樹脂が必要となり、電池パック全体の重量が増大するという問題があった。また電池パックの製造工程において液体状のポッティング樹脂を防水容器に充填し、硬化させる作業が必要となり、時間がかかる上、作業性の面でも好ましくなく、製造のタクトタイム、製造コスト等の点で不利となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-92237号公報
【文献】特開2010-62093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、簡便な方法で二次電池セルの温度上昇を抑制する機能を付加できるようにした電池パック及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の第1の形態に係る電池パックによれば、一以上の二次電池セルと、前記二次電池セルを保持する電池ホルダと、前記二次電池セルを前記電池ホルダに収納してなる電池集合体と、前記二次電池セルの表面を被覆し、該二次電池セルの発熱により溶融可能な、
プレ成型された可撓性を有する放熱成形体と、前記電池集合体を収納する外装ケースと、を備え、前記二次電池セルが、外観を円筒形状としており、前記電池ホルダが、前記二次電池セルの端部をそれぞれ保持する円筒形のセル保持部を有する一対の部材で構成されると共に、前記二次電池セルの外装缶が前記電池ホルダから表出する部位にリブを形成しており、前記放熱形成体は、前記二次電池セルと前記リブの間に圧入されてなる。上記構成により、従来のように電池集合体の全体をポッティングするのに比べ、必要な部位に放熱成形体を設けることで任意の部位に放熱性を持たせることが可能となり、放熱成形体の量を低減でき、軽量化が図られると共に、製造工程も簡略化できる。さらにまた、前記二次電池セルが、外観を円筒形状としており、前記電池ホルダが、前記二次電池セルの端部をそれぞれ保持する円筒形のセル保持部を有する一対の部材で構成されると共に、前記二次電池セルの外装缶が前記電池ホルダから表出する部位に、リブが形成され、前記放熱成形体は、二次電池セルとリブとの間に圧入される。この構成であれば、前記放熱成形体で、前記セル保持部から露出した前記二次電池セルの側面を被覆することができる。上記構成により、二次電池セルを電池ホルダで保持しつつ、部分的に露出された円筒形側面を放熱成形体で被覆して放熱させることが可能となる。さらに、組立時に放熱成形体を容易に二次電池セル1の表面に押圧させることが可能となり、接着材を塗布する必要が無く、組立作業の作業性を高めることが可能となる。
【0008】
また第2の形態に係る電池パックによれば、上記構成に加えて、前記放熱成形体を、吸熱反応により溶融する化学反応を示す材質で構成することができる。上記構成により、放熱成形体がこれと接触する二次電池セルの発熱を受けて溶融する際、化学反応を吸熱反応とすることで二次電池セルの冷却効果を発揮させることが可能となる。
【0009】
さらに第3の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記放熱成形体を、前記二次電池セルの円筒形側面の曲面に沿った形状に成形することができる。上記構成により、放熱成形体を円筒形二次電池セルの側面に沿って配置することが可能となる。
【0010】
さらにまた第4の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池集合体が、複数の二次電池セルを隣接させた姿勢に、前記電池ホルダで保持しており、前記放熱成形体を、前記隣接する二次電池セルを跨ぐように配置することができる。上記構成により、複数の二次電池セルを一の放熱成形体で被覆して放熱させることができる。
【0012】
さらにまた第5の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記放熱成形体を、複数に分割して、前記電池ホルダに保持された前記二次電池セルの表面をそれぞれ被覆するよう構成することができる。
【0013】
さらにまた第6の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池ホルダが、複数の二次電池セルを隣接する姿勢で保持しており、前記放熱成形体を、前記電池ホルダに保持された複数の前記二次電池セルの内、周囲に位置する二次電池セルの側面を覆う環状に形成することができる。
【0014】
さらにまた第7の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池ホルダに、前記放熱成形体を前記二次電池セルの表面に押圧する成形体押圧部を備えることができる。上記構成により、放熱成形体を接着材を使用することなく二次電池セルの表面に押圧して熱結合状態とすることができる。
【0015】
さらにまた第8の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記放熱成形体を、ウレタン樹脂又はシリコーン樹脂を含む材質で構成することができる。
【0016】
さらにまた第9の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記放熱成形体を、吸熱反応するフィラーを含む材質で構成することができる。上記構成により、放熱成形体が、二次電池セルとの接触部分がこの二次電池セルの発熱によって部分的に溶融するため、接着材等を用いることなく密着させることが可能となり、接触界面で断熱層となる隙間を低減して、熱伝導に優れた熱結合状態を容易に得ることが可能となる。
【0017】
さらにまた第10の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、さらに前記電池集合体を収納する防水容器を備え、前記電池集合体を前記防水容器に収納した状態で、前記外装ケース内に収納することができる。上記構成により、電池集合体の防水を図ることが可能となる。
【0018】
さらにまた第11の形態に係る電池パックの製造方法によれば、複数の円筒形二次電池セルを、該円筒形二次電池セルを保持する一対の電池ホルダに収納してなる電池集合体と、前記電池集合体を収納する外装ケースとを備える電池パックの製造方法であって、前記電池ホルダが、前記円筒形二次電池セルの端部をそれぞれ保持する円筒形のセル保持部を有し、前記電池ホルダから露出した前記円筒形二次電池セルの表面を被覆する、該円筒形二次電池セルの発熱により溶融可能な、プレ成型された可撓性を有する放熱成形体を準備する工程と、前記円筒形二次電池セルの一方の端部を、前記一対の電池ホルダの内、一方の電池ホルダの円筒形のセル保持部に挿入する工程と、前記セル保持部から露出した前記円筒形二次電池セルの側面を、前記放熱成形体で被覆する工程と、前記放熱成形体は、前記二次電池セルの外装缶が前記電池ホルダから表出する部位に形成されたリブと、前記円筒形二次電池セルの間に圧入される工程と、前記円筒形二次電池セルの他方の端部を、前記一対の電池ホルダの内、他方の電池ホルダの円筒形のセル保持部に挿入する工程とを含むことができる。これにより、従来のように電池集合体の全体をポッティングするのに比べ、必要な部位に放熱成形体を設けることで任意の部位に放熱性を持たせることが可能となり、放熱成形体の量を低減でき、軽量化が図られると共に、製造工程も簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る電池パックを示す斜視図である。
【
図4】
図3の電池集合体を底面側から見た斜視図である。
【
図6】放熱成形体を挿入する部位を示す拡大分解斜視図である。
【
図7】
図7A~
図7Eは実施形態2に係る電池パックの製造工程を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施形態1)
【0021】
実施形態1に係る電池パックを
図1~
図7Eに示す。これらの図において、
図1は本発明の実施形態1に係る電池パック100を示す斜視図、
図2は
図1の電池パック100の分解斜視図、
図3は
図2の電池集合体10を示す斜視図、
図4は
図3の電池集合体10を底面側から見た斜視図、
図5は
図3の電池集合体10の分解斜視図、
図6は放熱成形体を挿入する部位を示す拡大分解斜視図、
図7A~
図7Eは実施形態2に係る電池パックの製造工程を示す分解斜視図を、それぞれ示している。
図1に示す電池パック100は、外形を箱形の外装ケース40で構成している。外装ケース40は、
図2に示すように二分割され、内部に収納空間を設けている。外装ケース40内部の収納空間には、電池集合体10が収納される。外装ケース40は、絶縁性に優れた軽量な材質、例えば樹脂製とする。
【0022】
電池集合体10は、防水容器に収納することで防水性を発揮させる。
図3に示す例では、防水容器の一例として防水袋30で覆われており、防水性を持たせている。防水袋30は、透明な樹脂製で、例えばポリエチレンなどが利用できる。なお、防水機能を持たせない場合は、防水袋を省略してもよい。
【0023】
電池集合体10は、
図3、
図4に示すように外形を一部が括れた箱形としている。この電池集合体10は、
図5の分解斜視図に示すように、複数本の二次電池セル1を電池ホルダ11に収納している。電池ホルダ11は左右に二分割して、各二次電池セル1を両側から挟み込むようにして保持している。電池ホルダ11同士は、例えばねじ止めや嵌合、溶接などによって固定される。各電池ホルダ11は、二次電池セル1の端部をそれぞれ保持する円筒形のセル保持部12を形成している。また電池ホルダ11に二次電池セル1をセットした状態で、二次電池セル1の端面を電池ホルダ11から表出させて、リード板2と溶接するように構成している。
【0024】
二次電池セル1は、円筒形の外装缶を有する円筒形電池である。例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池等が利用できる。特に単位体積あたりのエネルギー効率に優れたリチウムイオン二次電池が好ましい。複数の二次電池セル1は、端面の電極をリード板2で接続して、直列や並列に接続される。
図5の例では、35本の二次電池セル1を5並7直で接続している。これに応じてリード板2の形状や配置が決定される。
【0025】
リード板2は導電性に優れた金属で構成される。リード板2はスポット溶接等によって二次電池セル1の端面と接続される。さらにリード板2は回路基板3と接続される。回路基板3は電池ホルダ11の一面に配置される。回路基板3には、二次電池セル1の充放電回路や保護回路が実装される。
(放熱成形体20)
【0026】
さらに二次電池セル1の表面には、放熱成形体20が配置されている。放熱成形体20は、予め成形された板状の部材であり、二次電池セル1の外装缶の形状に応じて湾曲されている。また放熱成形体20は、可撓性を有すると共に、二次電池セル1の発熱により溶融する材質で形成される。
【0027】
二次電池セルを複数、隣接させて用いる電池パックでは、中間の二次電池セルよりも周囲に位置する二次電池セルの方が温度が高くなりやすい傾向にある。それは、中間に位置する二次電池セルの場合は、仮に温度が高くなっても、周囲に存在する二次電池セルに熱伝導され易く、結果として吸熱効果が発揮されるため、一部の二次電池セルのみの温度が高くなる事態を抑制できる。これに対して周囲部に配置された二次電池セルでは、周囲に存在する二次電池の数が少ないことから、温度上昇しても熱の逃げ場が無く、結果として温度上昇を抑制する機能が得られ難い。このため、二次電池セルの発熱を効率的に伝熱する機構が必要となる。そこで従来の電池パックでは、電池集合体を防水袋に収納して、内部にポッティング樹脂を注入して密閉することで、注入されるポッティング樹脂を二次電池セルに熱結合状態に密着して熱伝導性を向上させることが行われてきた。
【0028】
しかしながら、この構造の電池パックは、注入されるポッティング樹脂を全ての二次電池セルの表面に熱結合するために、内部の隙間を満たすようにポッティング樹脂を大量に充填する必要があることから、注入するポッティング樹脂の量が多くなって、電池パックの重量が増加する。電池パックは小型軽量化が求められており、特にアシスト自転車用の電池パックは、電池パック自体が重くなるとその分だけ駆動力が必要となってアシスト効果が損なわれてしまうことから、軽量化の要求が高い。また大量のポッティング樹脂を使用することで製造コストが高くなる上、製造工程においても、液状のポッティング樹脂の注入工程や、これが硬化されるまでの待ち時間の発生などが生じることから、タクトタイムが長くなって生産性の面でも不利となり、さらに製造コストを押し上げる要因となっていた。
【0029】
これに対して本実施形態に係る電池パック100では、このようなポッティング樹脂の注入や硬化に代えて、予め熱伝導性に優れた放熱成形体20を成形しておき、組立時に二次電池セル1の周囲を被覆することで、電池集合体10の周囲に位置する二次電池セル1の放熱性を向上させている。この方法であれば、電池集合体10の全体をポッティングする方法に比べ、必要な部位に放熱成形体20を配置することで任意の部位に放熱性を持たせることが可能となる。また放熱成形体20の量を低減できる結果、軽量化が図られる。さらに、プレ成形された有形の放熱成形体20を二次電池セル1の周囲に配置できることから、液状のポッティング樹脂を注入、硬化させる作業と比べて製造工程を大幅に簡略化できる。
【0030】
放熱成形体20は、二次電池セル1の周囲に密着させやすいよう、二次電池セル1の外形に沿う形状に予め成形される。さらに、可撓性を有する材質とすることで、実際の二次電池セル1の形状に応じて変形させやすくして、外装缶の製造公差や組み付け時の誤差などを吸収して一層の密着性が図られる。
図5の例では、円筒形二次電池セル1を側面同士が隣接する姿勢に並べた状態で電池ホルダ11によって保持されている。電池ホルダ11は、円筒形二次電池セル1の端面の一部をセル保持部12に挿入して保持し、外装缶の中間部分を電池ホルダ11から露出させている。よって、この露出部分に放熱成形体20を配置する。
(成形体押圧部13)
【0031】
放熱成形体20は、二次電池セル1の側面の少なくとも一部に、熱結合状態に接合される。放熱成形体20は、接着剤や両面テープ等の接着材で二次電池セル1の側面に貼付する構成とする他、放熱成形体20を物理的に二次電池セル1の表面に押圧する成形体押圧部13を電池ホルダ11に設けてもよい。
図5及び
図6の拡大断面図に示す電池ホルダ11の例では、成形体押圧部13として、二次電池セル1の外装缶が電池ホルダ11から表出する部位に、リブを形成して、二次電池セル1とリブとの間に放熱成形体20を圧入するように構成している。この構成であれば、組立時に放熱成形体20を容易に二次電池セル1の表面に押圧させることが可能となり、接着材を塗布する必要が無く、組立作業の作業性を高めることが可能となる。
【0032】
リブは、放熱成形体20の外形に沿う形状に形成される。またリブは、セル保持部12と略平行に、セル保持部12に挿入された二次電池セル1の表面から放熱成形体20の厚さ分、又はこれよりも若干狭い間隔だけ離間させた姿勢でセル保持部12の延長方向に沿って突出されている。これにより、可撓性を有する放熱成形体20をリブと二次電池セル1との間の隙間に圧入して、放熱成形体20を隙間なく二次電池セル1の表面に密着させることができる。
【0033】
またリブは、放熱成形体20の全面に渡って設ける必要は必ずしもなく、放熱成形体20の一部を押圧するように部分的に形成することができる。
図6の例では、円筒形二次電池セル1同士を隣接させた谷間の位置にリブを設けている。これによって、リブを円筒形二次電池セル1の頂部に設けた場合と比べて、リブが外部に突出して電池ホルダが厚くなって大型化する事態を回避できる。なお、リブは壁状に形成する他、ロッド状とするなど、放熱成形体を保持可能な任意の構成が適宜利用できる。
【0034】
さらに、二次電池セル1の発熱によって放熱成形体20の接触面を溶融させて密着されるようにしてもよい。この方法であれば、接着剤を用いることなく放熱成形体20を二次電池セル1と密着させることが可能となり、外装缶の表面と放熱成形体20との間に隙間が形成されることによって空気層の断熱効果で熱伝導が阻害される事態を回避できる。
【0035】
放熱成形体20は、熱伝導性及び吸熱性の高い樹脂を用いる。例えば従来のポッティング樹脂で用いられていたウレタン樹脂を好適に利用できる。このような材質を用いることによって、放熱成形体自体の熱容量によって吸熱性を発揮できる。
【0036】
加えて、発熱反応でなく吸熱反応によって溶融する材質とすることが好ましい。これにより、二次電池セル1の発熱時に、吸熱反応による化学反応でも熱を奪う効果が発揮できる。このような材質としては、高温領域で吸熱反応するフィラー成分を含んだウレタン樹脂材が好適に利用できる。この場合は、高温領域で吸熱反応するフィラー成分により一層の放熱抑制効果が発揮される。
【0037】
放熱成形体20は、隣接する二次電池セル1を跨ぐように配置されている。これによって隣接する二次電池セルを熱結合状態として、一の二次電池セルが発熱しても、他の二次電池セルで発熱の一部を吸収するように構成できる。すなわち、隣接する二次電池セル同士の間を断熱するのでなく、逆に熱伝導性を高めることで、一部の二次電池セルの発熱を、周囲の二次電池セルで吸収することによって熱暴走を抑制することが可能となる。
【0038】
なお
図5等の例では、各二次電池セルの周囲全体を放熱成形体で覆うのでなく、二次電池セル1を積層した状態で外周に位置する二次電池セルの露出面を放熱成形体20で覆う構成としている。上述の通り、外周に位置する二次電池セルは、周囲に二次電池セルが隣接しない分だけ熱伝導性が低下するため、二次電池セルが隣接しない領域のみを放熱成形体20で覆い、熱伝導性を高めることで、電池集合体10の中間に位置する二次電池セルと同様の熱伝導性を発揮できる。ただ、本発明は電池積層体を構成する二次電池セルの内、電池積層体から表出する領域のみを放熱成形体で被覆する構成に限定せず、例えば中間部分においても二次電池セル同士の間に放熱成形体を介在させてもよい。これによって中間部分においても熱伝導性を一層高めて、一部の二次電池セルの熱暴走を抑制できる効果が発揮される。
【0039】
また放熱成形体20は、
図5に示すように複数のパーツに分割して、積層状態の二次電池セル1の周囲にそれぞれ配置される。このように放熱成形体20を分割することで、電池ホルダ11のリブに挿入する作業を行い易くできる。ただ、本発明はこの構成に限らず、
図7Bに示す実施形態2に係る構成のように、放熱成形体を一体に形成してもよい。この放熱成形体20’は、電池ホルダに保持された複数の円筒形二次電池セル1の内、周囲に位置する円筒形二次電池セル1の側面を覆う環状に形成されている。この構成であれば、放熱成形体20’の姿勢が明確となって、パーツの取り違いや方向の正誤といった組立時のミスを低減できる利点が得られる。
(電池パックの製造方法)
【0040】
ここで、電池パックの製造方法の一部として、実施形態2に係る電池集合体10’の組立方法を
図7A~
図7Eに基づいて説明する。まず
図7Aに示すように、二分割した電池ホルダ11の一方を下側に配置して、二次電池セル1をセル保持部12に各々挿入する。次に
図7Bに示すように、二次電池セル1を一方の電池ホルダ11から直立させた状態で、予め用意された放熱成形体20’を配置する。放熱成形体20’は、二次電池セル1の側面の内、電池ホルダ11のセル保持部12で被覆されない領域を被覆する。この例では、成形体押圧部13の一形態であるリブと、二次電池セル1との隙間に、放熱成形体20’を圧入して固定する。
【0041】
この状態で
図7Cに示すように、他方の電池ホルダ11で、直立姿勢の二次電池セル1の上面側を被覆する。このとき、他方の電池セルのセル保持部12に、二次電池セル1の上面側の端縁を挿入する際、他方の電池ホルダ11のリブで、二次電池セル1の表面に密着された放熱成形体20’を押圧するように注意する。そして、電池ホルダ11同士をねじ止めによって固定する。また、電池ホルダ11の側面に配置したリード板2と、二次電池セル1の端面とをスポット溶接等で固定する。次に、電池集合体10’を横向きに倒した姿勢から、
図7Dに示すように直立姿勢に立てて、上面に回路基板3を固定し、回路基板3とリード板2とを接続する。このようにして、
図7Eに示すように電池セル集合体が得られる。
【0042】
このようにして得られた電池セル集合体を、
図3に示すように防水袋30に入れて密封し、さらに
図2に示すように左右から外装ケース40に収納することで、
図1に示す電池パック100が得られる。
【0043】
このようにして、従来のように電池集合体の全体をポッティングするのに比べ、必要な部位に放熱成形体を設けることで任意の部位に放熱性を持たせることが可能となり、放熱成形体の量を低減でき、軽量化が図られると共に、製造工程も簡略化できる。また放熱成形体は、二次電池セルとの接触部分がこの二次電池セルの発熱によって部分的に溶融するため、接着材等を用いることなく密着させることが可能となり、接触界面で断熱層となる隙間を低減して、熱伝導に優れた熱結合状態を容易に得ることが可能となる。さらに放熱成形体によって二次電池セル間の熱伝導性が向上されて均熱化が図られ、一の二次電池セルの温度が上昇しても、放熱成形体を介して他の二次電池セル等に熱伝導することにより、局部的な温度上昇を抑制することが可能となる。
【0044】
なお以上の例では、二次電池セルに円筒形電池を用いたため、放熱成形体を円筒形の外装缶の側面に沿って湾曲させた形状を繰り返した波形に形成したものを用いた。ただ本発明は、二次電池セルの形状を円筒形に限定せず、角型電池やラミネート電池等を利用することもでき、このような場合は放熱成形体の形状も、二次電池セルの形状に応じて表面に密着しやすい形状に設計される。
【0045】
またこの構成によれば、ポッティング樹脂を注入するための容器、例えば袋を不要とできる。なお
図3の例では、防水性を発揮させるために防水袋30に電池集合体10を収納しているが、この防水袋はポッティング樹脂の注入用ではないため、例えば防水機能が不要な場合や、防水機能を防水袋以外の手段で実現できる場合(例えば水の侵入経路となる隙間をシールする等)には、防水袋を省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の電池パック及びその製造方法によれば、電動工具、電動アシスト自転車、電動バイク、ハイブリッド電気自動車、電気自動車などの電源、あるいは家庭や店舗などでの蓄電用の電源として、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
100…電池パック
1…二次電池セル
2…リード板
3…回路基板
10、10’…電池集合体
11…電池ホルダ
12…セル保持部
13…成形体押圧部(リブ)
20、20’…放熱成形体
30…防水袋
40…外装ケース
80…電池集合体
81…電池セル
82…電池ホルダ
83…防水容器
84…外装ケース
85…リード板