(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】4点サスペンションアーム
(51)【国際特許分類】
B60G 7/00 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B60G7/00
(21)【出願番号】P 2019558425
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2018057689
(87)【国際公開番号】W WO2018197132
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】102017207166.4
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】シュティークリッツ・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー・インゴルフ
(72)【発明者】
【氏名】バウアー・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ビュルクマン・マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ニーケ・パトリツィア
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-206575(JP,A)
【文献】特開2014-133446(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014221079(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア要素(2)と、糸(3)と、4つのブッシュ(6)とを含む、車両の車輪懸架部のための4点サスペンションアーム(1)であって、前記糸(3)が樹脂によってあらかじめ含浸されており、さらに、前記コア要素(2)が、
平面視で四角形状のねじり要素(4)と、該ねじり要素(4)と一体的に結合され
、かつ、該ねじり要素(4)の四隅からそれぞれ突出した4つの支持アーム(5)とを備えており、前記コア要素(2)及び前記各ブッシュ(6)が、少なくとも部分的に前記糸(3)で巻き付けられており、前記各ブッシュ(6)が、各軸受要素を収容するために前記各支持アーム(5)の各先端部に配置されており、前記各ブッシュ(6)が少なくとも1つの定着要素(10)を備えており、該少なくとも1つの定着要素(10)と前記ブッシュ(6)の間に少なくとも1つのアンダーカット部(14)が形成されており、前記コア要素(2)が
、前記アンダーカット部(14)に係合しており、巻付けプロセス中に前記糸
をガイドするために、前記各ブッシュ(6)及びその少なくとも1つの定着要素(10)が前記各支持アーム(5)よりも大きな幅を有していることを特徴とする4点サスペンションアーム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの定着要素(10)が、少なくとも1つのウェブ(16)を介して前記各ブッシュ(6)と一体的に結合されており、前記少なくとも1つのウェブ(16)が、前記糸(3)
のガイドのためにそれぞれガイド面(17)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項3】
前記各ブッシュ(6)が、中空空間(18)を包囲する2つのウェブ(16)を備えており、前記両ウェブ(16)が、前記支持アーム(5)の方向へ合流するとともに前記定着要素(10)へつながっており、前記少なくとも1つの定着要素(10)が2つの溝(19)を備えており、該溝が、前記コア要素(2)を収容する前記各アンダーカット部(14)を形成してい
ることを特徴とする請求項1又は2に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項4】
前記各ブッシュ(6)が、前記糸(3)
をガイドするための2つのガイドアーム(11)を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの定着要素(10)が、前記糸(3)
を交点(21)へガイドする少なくとも1つの側面(20)を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項6】
前記各ブッシュ(6)が2つの定着要素(10)を備えており、該定着要素が、前記糸(3)
をガイドするために前記交点(21)へ合流しているとともに先端部(15)において互いに結合されており、該先端部(15)には、前記ブッシュ(6)の方向へ前記コア要素(2)を収容する少なくとも1つの空隙部(22)が形成されており、前記コア要素(2)が
、前記アンダーカット部(14)に係合していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項7】
1つの糸(3)が、前記コア要素(2)及び前記各ブッシュ(6)に複数回巻き付けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項8】
前記コア要素(2)が発泡材料で形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項9】
前記各ブッシュ(6)が金属材料で形成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項10】
前記糸(3)が、前記各支持アーム(5)において、前記各支持アーム(5)の各長手軸線(7)に対し
て平行にガイドされていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項11】
前記糸(3)が、前記各支持アーム(5)の各端面(8)において、前記各支持アーム(5)の各長手軸線(7)に対して15~45°の角度範囲でガイドされていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【請求項12】
前記糸(3)が、前記ねじり要素(4)において、当該4点サスペンションアーム(1)の長手軸線(9)に対して40~60°の角度範囲でガイドされていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の4点サスペンションアーム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車輪懸架部、特に乗用車又は商用車の車輪懸架部のための4点サスペンションアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
4点サスペンションアームは、車両フレームにおいてリジッドアクスルを緩衝可能にガイドするために、特に商用車において用いられる。このとき、4点サスペンションアームは、アクスルの横方向ガイド及び長手方向ガイドを担う。さらに、4点サスペンションアームは、スタビライザの機能も満たす。
【0003】
特許文献1から、特に商用車のリジッドアクスルの車輪懸架部のための4点サスペンションアームが知られている。4点サスペンションアームは4つの軸受孔部を備えており、当該軸受孔部のうち2つの軸受孔部はアクスルにリンク式に結合可能であり、2つの軸受孔部は車両フレームにリンク式に結合可能である。4点サスペンションアームは、一体的なねじれ可能なものとして、及び軸受によって規定された四角形状あるいは台形状の中空ハウジングとして形成されている。中空ハウジングは、本質的に、車両に関して横向きに配置されて複数の側で開放された、本質的にO字状まで丸められた四角形状の断面を有するパイプによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102004014610号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎となる課題は、車両の車輪懸架部のための4点サスペンションアームを更に発展させることにあり、特に大量生産適格性を改善し、製造プロセスを加速させるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1の主題によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明による、車両の車輪懸架部のための4点サスペンションアームは、コア要素と、糸と、4つのブッシュとを含んでおり、前記糸が樹脂によってあらかじめ含浸されており、さらに、コア要素が、ねじり要素と、該ねじり要素と一体的に結合された4つの支持アームとを備えており、前記コア要素及び前記各ブッシュが、少なくとも部分的に前記糸で巻き付けられており、前記各ブッシュが、各軸受要素を収容するために前記各支持アームの各先端部に配置されており、前記各ブッシュが少なくとも1つの定着要素を備えており、該少なくとも1つの定着要素と前記ブッシュの間に少なくとも1つのアンダーカット部が形成されており、前記コア要素が、該コア要素の前記支持アームとの前記ブッシュの係合式の結合のために前記アンダーカット部に係合している。
【0008】
車輪懸架部は、車両の車輪を操舵可能及び/又は緩衝可能に車両の車体及び/又はフレームに結合させる装置と理解される。車両は、原動機付き車両であってよく、特に、商用車又は乗用車であってよい。
【0009】
コア要素は、本質的に、4点サスペンションアームの形状を形成するために設けられている。したがって、コア要素は、負荷を受容するためではなく、ストラングの堆積あるいは巻き付けのためにのみ設けられている。換言すれば、車両アクスルあるいは車輪懸架部により導入される負荷及び力は、糸から形成された4点サスペンションアームの外層によってのみ受容される。したがって、糸は、少なくとも嵌合式に4つのブッシュに結合されている。加えて、糸は、係合式に4つのブッシュに結合されることも可能である。
【0010】
4つの支持アームは、車両アクスル又は車輪支持部を車両のフレーム及び/又は車体に結合するために設けられている。このために、2つの支持アームは車両アクスル又は車輪支持部にリンク式に結合されている一方、他の2つの支持アームは、車両の車体又はフレームにリンク式に結合されている。ねじり要素を介して支持アームは互いに結合されている。リンク式にとは、ここでは、少なくとも1つの軸線周りに旋回可能であることを示している。ねじり要素は、4つの支持アームを旋回に対して安定化させるために用いられる。支持アーム及びねじり要素は、各支持アームの旋回、すなわち、ねじれ軸線を中心とした各支持アームの旋回がねじり要素のねじれを伴うように配置されている。ねじりトルクによりねじれが生じ、当該ねじりトルクを、各支持アームが旋回時にねじり要素へ作用させる。
【0011】
本発明による4点サスペンションアームにより、製造、特に巻付け時の糸の方向付けに基づき、ロール安定化についての所定のねじり剛性の調整、アクスルをガイドする大きな横安定性の調整、より良好な快適特性についての所定の長手可撓性の調整及びバネストロークについての所定の運動機構あるいは弾性運動機構の記述の調整が可能となる。特に、運動機構ほぼ全体を4点サスペンションアーム自体によって描写することができ、したがって、ブッシュに収容された軸受要素、特にゴム軸受を負荷解除することが可能である。
【0012】
各ブッシュの定着要素は、本質的に、ブッシュを係合式に支持アームに結合するために設けられている。特に、定着要素は、4点サスペンションアームにおける引張力及び圧縮軸方向力、横力並びに垂直力を導入し、特に、垂直力は、係合部を介してブッシュから4点サスペンションアームへ導入される。また、各ブッシュと各支持アームの間の係合式の結合は、巻付けプロセス時に遠心力を妨害する。
【0013】
少なくとも1つの定着要素の本発明による構成形態は、パイプ状のブッシュ部分と定着要素の間にアンダーカット部あるいはアンダーカット構造部を形成するようになっており、アンダーカット部は、コア要素の製造時にコア要素の発泡材料によって満たされ、したがって、ブッシュを係合式にコア要素に結合させ、更に回転に対して固定する。したがって、巻付けプロセスの開始時には既に支持アームの長手方向における各ブッシュと支持アームの間の係合式の結合が存在するため、巻付けプロセスをより早期に加速することができるか、又は最初から大きな速度で行うことが可能である。これにより、本発明による4点サスペンションアームの製造プロセスが本質的に加速される。
【0014】
糸又は糸群は、好ましくは樹脂で包囲された多数の無端繊維で構成されている。糸群は、束にまとめられた複数の糸と理解され得る。当該束は、ここでも糸である。特に、糸は、コア要素の巻付け直前に含浸されることが可能であるか、又は樹脂で含浸された糸、特にいわゆるトウプレグ半製品又はプレプレグ糸を用いることが可能である。湿式巻付け方法では、糸は、巻付け直前に樹脂に含浸され、コア要素の周りに巻き付けられる。コア要素への糸の最大堆積速度は、例えば巻付け中の遠心力による樹脂損失に基づき、約0.5m/sであり得る。これに対し、あらかじめ含浸された糸を用いた堆積速度は、大きく増大され得る。なぜなら、樹脂はより粘性が大きく、したがって、遠心力がわずかな影響を有するためである。したがって、糸は、繊維合成樹脂複合材料で成形されている。好ましくは、糸は、炭素繊維強化合成樹脂、ガラス繊維強化合成樹脂、アラミド繊維強化合成樹脂又は他の適切な繊維合成樹脂複合材料で成形されている。
【0015】
構成要素の好ましい発展形成では、糸が緊張されており、すなわち糸の応力を生じさせる力で負荷を受けている。結果として、糸は、各支持アーム及びねじり要素と嵌合式に結合されている。好ましくは、糸は、各支持アームの旋回が支持アームとの糸の嵌合によって、ここでも糸とねじり要素の間の嵌合を介してねじり要素へ伝達される糸へ作用する力が生起されるように延びている。このとき、生起された力は、糸の応力の拡大をもたらす。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの定着要素は、少なくとも1つのウェブを介して各ブッシュと一体的に結合されており、少なくとも1つのウェブは、糸の収容及びガイドのためにそれぞれガイド面を備えている。これにより、ウェブと当該ウェブに接触する糸部分の間の嵌合式の結合が形成される。したがって、少なくとも1つのウェブは、リング状のブッシュ部分と定着要素の間の結合要素として設けられている。
【0017】
好ましくは、各ブッシュは、中空空間を包囲する2つのウェブを備えており、両ウェブは、支持アームの方向へ合流するとともに定着要素へ開口しており、少なくとも1つの定着要素が2つの溝を備えており、該溝が、コア要素を収容する各アンダーカット部を形成しているとともに、コア要素の支持アームとのブッシュの係合式の結合のために設けられている。中空空間は、特にブッシュの質量軽減に寄与し、したがって空であるか、あるいは空気で満たされている。しかし、中空空間を充填材料、特に発泡材料で満たすことも考えられる。
【0018】
好ましい実施形態によれば、各ブッシュは、糸を収容及びガイドする2つのガイドアームを備えている。ガイドアームは、接線方向において、ブッシュのリング状のリング部分に配置されているとともに、互いに本質的に平行に形成されている。両ガイドアームは、特にブッシュと糸の間の嵌合式の結合を改善するとともに、ブッシュと各支持アームの間の嵌合式の結合もより大きな結合面によって改善する。
【0019】
さらに、好ましくは、少なくとも1つの定着要素は、糸を収容し、交点へガイドする少なくとも1つの側面を備えている。このとき、ガイド面は定着要素の各側面を有する平面にあり、これに代えて、少なくとも1つの定着要素は、2つ又はそれより多くの側面を備えることも可能である。交点は、2つの糸部分が巻付けプロセス時に交差する点と理解され得る。したがって、ブッシュの各巻付け時には、糸の少なくとも2つの部分が直接重なり合っているとともに、交点を形成する。複数の交点の重なりを避けるために、したがって、交点の高さを低減するために、糸部分は幅へ変位されることが可能であり、その結果、交点の幅が増大する。特に、交点の糸延長及び形成により枠組みが形成され、当該枠組みは、改善された負荷受容部及び負荷分配部を実現している。したがって、糸の巻付けは、目的をもった糸ガイドによって、繊維枠組みを形成している。
【0020】
これに代えて、定着要素には少なくとも2つの定着脚部を形成することができ、当該定着脚部の間には凹部が形成されており、当該凹部は、コア要素における定着要素の接触面を拡大し、糸部分の交点における割裂引張力及び割裂圧縮力の発生を回避する。これにより、圧縮負荷をより良好にブッシュから4点サスペンションアームへ導入することができる。なぜなら、割裂引張力による応力集中(応力超過)が糸部分の交点において回避されるためである。
【0021】
好ましくは、各ブッシュが2つの定着要素を備えており、該定着要素は、糸を収容及びガイドするために交点へ合流しているとともに先端部において互いに結合されており、該先端部には、ブッシュの方向へコア要素を収容する少なくとも1つの空隙部が形成されており、コア要素は、ブッシュをコア要素の支持アームと係合式に結合させるアンダーカット部に係合している。少なくとも1つの空隙部は、両定着要素を少なくとも部分的にあるいは一部において少なくとも2つの部分に分割する。両定着要素を互いに結合する先端部は、好ましくは丸められて形成されている。このとき、有利には、改善された応力分布及び糸の交点における応力集中の防止である。
【0022】
本発明は、ちょうど1つの糸が、コア要素及び各ブッシュに複数回巻き付けられていることという技術的な示唆を含んでいる。特に、糸は、7~11km、好ましくは9kmの長さを有しているとともに、自動化されて巻付け軸からほどかれ、4点サスペンションアームを形成するためにロボットによってコア要素へ巻き付けられる。しかし、また、4点サスペンションアームを形成するために、2つ又はそれより多くのロボットが同時にコア要素を各糸で巻き付けることも考えられる。
【0023】
好ましくは、コア要素は発泡材料で形成されている。特に、コア要素は固体で軽量の永続的な発泡材料で形成されている。好ましくは、発泡材料は、ポリマー、例えばポリウレタン、ポリスチロール又はポリメタクリルイミドで形成されている。また、コア要素は、インライナコア、ロストコア又はブローコアとしても形成されることが可能である。本質的に、特にコア要素の特性は、糸で巻き付けられることができ、したがって形状付与物として用いられる。
【0024】
好ましくは、各ブッシュは、金属材料で形成されている。特に、ブッシュは、鋼合金又は軽金属合金、特にアルミニウム合金又はマグネシウム合金で形成されている。また、ブッシュは、押出プレスによって形成される。また、ブッシュは、少なくとも部分的にコア要素と接着されている。
【0025】
好ましい実施例によれば、糸は、各支持アームにおいて、各支持アームの各長手軸線に対して本質的に平行にガイドされている。好ましくは、糸は、径方向において、各支持アーム及び当該支持アームと一体的に結合されたねじり要素に巻き付けられている。特に、フレーム側の両支持アームは、糸が連続的な巻付けプロセスにおいてコア要素に堆積され得るように、ねじり要素からほどかれる。支持アームは、本質的に、曲げを受容するために設けられている。
【0026】
好ましくは、糸は、各支持アームの各端面において、各支持アームの各長手軸線に対して15~45°の角度範囲でガイドされている。これにより、例えば、横力により生じるせん断応力を受容することが可能である。好ましくは、支持アームは、各端面において枠組み状に糸で巻き付けられている。これにより、各支持アームは、軽量構造で補強される。
【0027】
また、好ましくは、糸は、ねじり要素において、4点サスペンションアームの長手軸線に対して40~60°の角度範囲でガイドされている。ねじり要素は、特に、ねじりに基づいて増大するせん断応力によって負荷を受ける。特に、ねじり要素の全表面は、糸で覆われ、特に複数回巻付けられている。好ましくは、コア要素の全表面は、糸で覆われ、特に複数回巻付けられている。
【0028】
好ましくは、各ブッシュは、巻付けプロセス中に糸をガイドする支持アームの各コア要素よりも大きな幅を有している。このことは、ブッシュの範囲における所望の糸のガイドをサポートするものである。糸は、直接ブッシュの周囲で、及びコア要素に沿ってガイドされる。各ブッシュにおける定着要素の形成により、支持アームに対して平行に、及び特に定着要素によって規定された角度で糸をガイドすることが可能となる。
【0029】
以下では、本発明の好ましい実施例を、同一又は類似の要素には同一の符号が付された図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による4点サスペンションアームの概略的な平面図である。
【
図2】
図1による本発明の4点サスペンションアームの概略的な側面図である。
【
図3a】第1の実施例による、部分的に図示された支持アームに配置されたブッシュの概略的な斜視図である。
【
図3b】
図3aによる糸を用いた巻付けを図示するブッシュの概略的な斜視図である。
【
図4a】第2の実施例によるブッシュの概略的な斜視図である。
【
図4b】
図4aによる糸を用いた巻付けを図示するブッシュの概略的な斜視図である。
【
図5a】第3の実施例によるブッシュの概略的な斜視図である。
【
図5b】
図5aによる糸を用いた巻付けを図示するブッシュの概略的な斜視図である。
【
図6a】第4の実施例によるブッシュの概略的な斜視図である。
【
図6b】
図6aによる糸を用いた巻付けを図示するブッシュの概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1によれば、本発明による4点サスペンションアーム1は、ここでは不図示の車両のここでは不図示の車輪懸架部のために、コア要素2、糸3及びブッシュ6を含んでいる。糸3は、例示的であるとともに、非常に簡易化して図示されている。特に、糸3は、本質的に4点サスペンションアーム1の全表面を形成している。コア要素2は、トーション要素4と、当該トーション要素4と一体的に結合された4つの支持アーム5とで構成されている。各支持アーム5の各先端部には、それぞれ、ここでは不図示の軸受要素、特に分子状ジョイントを収容するブッシュ6が配置されているとともに各支持アーム5と係合式に結合されている。4点サスペンションアームは、例えば、けん引用トラックにおいてシャシ連結部として用いられ、このとき、Aアーム及びスタビライザの役割を担う。したがって、4点サスペンションアーム1は、横方向ガイドと、決定的にはアクスルの長手方向ガイドとを担う。また、4点サスペンションアーム1を介して、ロール安定化も図示されている。
【0032】
コア要素2及び各ブッシュ6が少なくとも部分的に糸3によって巻き付けられていることによって、各ブッシュ6及び糸3は、少なくとも嵌合式に互いに結合されている。コア要素2は、負荷を伝達せず、糸3についての形状付与にのみ用いられる。糸3は、多数の無端の繊維で構成されているとともに、樹脂によってあらかじめ含浸されている。これに対して、コア要素2は、発泡材料で形成されている。また、各ブッシュ6は、押出プレス法において、金属材料、特にアルミニウムで形成されている。コア要素2、糸3及び4つのブッシュは、固有の接合部を有するほぼ一体構造を備えている。ちょうど1つ糸3が、コア要素2及び各ブッシュ6に複数回巻き付けられている。このとき、曲げ応力を受容するために、糸3は、各支持アーム5においては、各支持アーム5の各長手軸線7に対して本質的に平行にガイドされている。また、糸3は、トーション要素4においては、ねじりによるせん断応力を受容するために、4点サスペンションアーム1の長手軸線9に対して約50°の角度でガイドされている。
【0033】
図2には、
図1に図示された4点サスペンションアーム1が側面図で示されている。また、糸3は、各支持アーム5の各端面8においては、横方向力によるせん断応力を受容するために、各支持アーム5の各長手軸線7に対して約20°の角度でガイドされている。
図2から、特に、完成された4点サスペンションアーム1の平坦な構造を伴うコア要素2の平坦な構造が見て取れる。これにより、構造空間が削減される。また、各支持アーム5の各先端部は、少なくとも部分的に各ブッシュ6に対して相補的に形成されている。
【0034】
図3a~
図6bには、本発明による4点サスペンションアーム1の各ブッシュ6の4つの実施例が例示的に図示されている。特に、4つの支持アーム5のうち1つの先端部が図示されている。以下に、4つの支持アーム5のうち1つを説明するが、当該説明は、同様に形成された他の3つのコア要素2の支持アーム5についても当てはまる。ブッシュ6は、定着要素10に一体的に結合されている。定着要素10は、ブッシュ6をコア要素2の支持アーム5と係合式に結合させるために設けられている。定着要素10は、巻付けプロセスにおいて生じる遠心力を支持アーム5へ導入するために設けられている。これにより、巻付けプロセスを最初から大きな速度で行うことが可能である。巻付けプロセス中に糸3をガイドするために、ブッシュ6は、各支持アーム5よりも大きな幅を有している。
【0035】
図3a及び
図3bによれば、第1の実施例では、定着要素10が2つのウェブ16を介してブッシュ6と一体的に形成されている。したがって、ブッシュ6は、中空空間13を包囲する2つのウェブ16を備えており、両ウェブ16は、定着要素10の方向へ合流し、定着要素10へ開口している。空間的に定着要素10とブッシュ6の間には、各側における定着要素10においてそれぞれ溝19が形成されており、当該溝は、コア要素2を収容する各アンダーカット部14を形成している。支持アーム5を形成するコア要素2は、アンダーカット部14に係合するとともに、ブッシュ6を係合式にコア要素2の支持アーム5に結合させるものである。また、各ウェブ16は、
図3bに図示された糸3の収容及びガイドのための各ガイド面17を形成している。定着要素10には2つの定着脚部12が形成されており、当該定着脚部12の間には凹部23が形成されており、当該凹部は、コア要素2の支持アーム5における定着要素10の接触面を拡大させる。各ガイド面17は、1つの平面において各定着脚部12の側面20と共に配置されている。
【0036】
図3bによれば、糸3は、両ガイド面17及び両側面20に接触するとともに、両側面20を介して共通の交点21へガイドされる。また、糸3は、ブッシュ6の周囲で、及び長手方向において支持アーム5に沿って径方向にもガイドされる。横方向力に基づくせん断応力を受容するために、糸3は、支持アーム5の各端面8において、約20°の角度で支持アーム5の長手方向においてガイドされており、当該角度は、定着要素10の幾何形状によって設定される。コア要素2は、凹部23において、鋭角に合流する部分24を形成しており、当該部分は、糸3を収容し、交点21へ向けてガイドするために設けられている。
【0037】
図4aによれば、第2の実施例では、ブッシュ6は2つの定着要素10を備えている。両定着要素10は、
図4bに図示された支持アーム5の長手軸線に関して約20°の角度で合流する。
【0038】
図4bによれば、各定着要素10とブッシュ6の間で空間的にアンダーカット部14が形成されている。支持アーム5を形成するコア要素2は、アンダーカット部14に係合するとともに、ブッシュ6を係合式にコア要素2の支持アーム5に結合させるものである。また、定着要素10は、糸3を収容及びガイドする各ガイド面17を形成するとともに、交点21の方向において鈍角で形成されており、これにより、より良好な応力経過により、応力ピークを低減することが可能である。アンダーカット部14に係合するコア要素2は、鋭角に合流する部分24を更に形成しており、当該部分は、糸3を収容するとともに交点21へガイドするために設けられており、当該部分24は、それぞれ、各定着要素10の各ガイド面17を有する1つの平面に位置するガイド面25を備えている。糸3は、ガイド面17,25に接触するとともに、共通の交点21へガイドされる。また、糸3は、ブッシュ6の周囲で、及び長手方向において支持アーム5に沿って径方向にもガイドされる。横方向力に基づくせん断応力を受容するために、糸3は、支持アーム5の各端面8において、約20°の角度で支持アーム5の長手方向においてガイドされており、当該角度は、各定着要素10の幾何形状によって設定される。
【0039】
図5aによれば、第3の実施例において、各ブッシュ6は2つの定着要素10を備えており、当該定着要素は、糸3を収容し、ガイドするために、
図5bに図示された交点21へ合流する。両定着要素10は、丸められた先端部15において互いに結合されている。先端部15では空隙部22が形成されており、当該空隙部は、両定着要素10に対して横方向へ形成されているとともに、先端部15からブッシュ6のパイプ状のブッシュ部分へ延びている。空隙部22により、コア要素2がアンダーカット部14へ入り込むことが可能となる。また、空隙部22は、押出プレス法につづく方法ステップにおいて、例えば分離によって製造される。これに代えて、複数の空隙部22を形成することも可能である。
【0040】
図5bでは、空隙部22がコア要素を収容しており、コア要素2は、ブッシュ6を支持アーム5と係合式に結合させるために、アンダーカット部14と係合する。糸3は、各支持要素10のガイド面17に接触するとともに、共通の交点21へガイドされる。また、糸3は、ブッシュ6の周囲で、及び長手方向において支持アーム5に沿って径方向にもガイドされる。横方向力に基づくせん断応力を受容するために、糸3は、支持アーム5の各端面8において、約20°の角度で支持アーム5の長手方向においてガイドされており、当該角度は、各定着要素10の幾何形状によって設定される。
【0041】
図6aによれば、第4の実施例において、各ブッシュ6は4つの定着要素10を備えており、当該定着要素は、糸3を収容し、ガイドするために、
図6bに図示された交点21へ合流するが、互いに接触しない。定着要素10は交点21の方向において鈍角で形成されており、これにより、より良好な応力経過により、応力ピークを低減することが可能である。また、ブッシュ6は2つのガイドアーム11を備えており、当該ガイドアームは、定着要素10間でブッシュ長手軸線に関して軸方向に配置されており、それぞれ2つの定着要素10は、軸方向においてガイドアーム11の前方及び後方に配置されている。
【0042】
図6bには、ガイドアーム11が支持アーム5と同一の幅を備えていることが示されており、1つのガイドアーム11が支持アーム5の上側に配置されており、1つのガイドアーム11が支持アーム5の下側に配置されている。ガイドアーム11は、ブッシュ6と糸3の間の付着面を拡大し、ブッシュ6は、少なくとも嵌合式に糸3に結合される。定着要素10とブッシュ6のパイプ状のブッシュ部分の間には、空間的にアンダーカット部14が形成されており、コア要素2は、ブッシュ6を支持アーム5と係合式に結合させるために、アンダーカット部14と係合する。コア要素2は、鋭角に合流する部分24を更に形成しており、当該部分は、糸3を収容するとともに交点21へガイドするために設けられており、当該部分24は、それぞれ、各定着要素10の各ガイド面17を有する1つの平面に位置するガイド面25を備えている。糸3は、ガイド面17,25に接触するとともに、共通の交点21へガイドされる。また、糸3は、ブッシュ6の周囲で、及び長手方向においてガイドアーム11のガイド面26に沿って、及び支持アーム5に沿って径方向にもガイドされる。これにより、さらに、ブッシュ6と糸3の間の嵌合式の結合が形成される。横方向力に基づくせん断応力を受容するために、糸3は、支持アーム5の各端面8において、約20°の角度で支持アーム5の長手方向においてガイドされており、当該角度は、各定着要素10の幾何形状によって設定される。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.コア要素(2)と、糸(3)と、4つのブッシュ(6)とを含む、車両の車輪懸架部のための4点サスペンションアーム(1)であって、前記糸(3)が樹脂によってあらかじめ含浸されており、さらに、前記コア要素(2)が、ねじり要素(4)と、該ねじり要素(4)と一体的に結合された4つの支持アーム(5)とを備えており、前記コア要素(2)及び前記各ブッシュ(6)が、少なくとも部分的に前記糸(3)で巻き付けられており、前記各ブッシュ(6)が、各軸受要素を収容するために前記各支持アーム(5)の各先端部に配置されており、前記各ブッシュ(6)が少なくとも1つの定着要素(10)を備えており、該少なくとも1つの定着要素(10)と前記ブッシュ(6)の間に少なくとも1つのアンダーカット部(14)が形成されており、前記コア要素(2)が、該コア要素(2)の前記支持アーム(5)との前記ブッシュ(6)の係合式の結合のために前記アンダーカット部(14)に係合していることを特徴とする4点サスペンションアーム。
2.前記少なくとも1つの定着要素(10)が、少なくとも1つのウェブ(16)を介して前記各ブッシュ(6)と一体的に結合されており、前記少なくとも1つのウェブ(16)が、前記糸(3)の収容及びガイドのためにそれぞれガイド面(17)を備えていることを特徴とする上記1.に記載の4点サスペンションアーム(1)。
3.前記各ブッシュ(6)が、中空空間(18)を包囲する2つのウェブ(16)を備えており、前記両ウェブ(16)が、前記支持アーム(5)の方向へ合流するとともに前記定着要素(10)へつながっており、前記少なくとも1つの定着要素(10)が2つの溝(19)を備えており、該溝が、前記コア要素(2)を収容する前記各アンダーカット部(14)を形成しているとともに、前記コア要素(2)の前記支持アーム(5)との前記ブッシュ(6)の係合式の結合のために設けられていることを特徴とする上記1.又は2.に記載の4点サスペンションアーム(1)。
4.前記各ブッシュ(6)が、前記糸(3)を収容及びガイドするための2つのガイドアーム(11)を備えていることを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
5.前記少なくとも1つの定着要素(10)が、前記糸(3)を収容し、交点(21)へガイドする少なくとも1つの側面(20)を備えていることを特徴とする上記1.~4.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
6.前記各ブッシュ(6)が2つの定着要素(10)を備えており、該定着要素が、前記糸(3)を収容及びガイドするために前記交点(21)へ合流しているとともに先端部(15)において互いに結合されており、該先端部(15)には、前記ブッシュ(6)の方向へ前記コア要素(2)を収容する少なくとも1つの空隙部(22)が形成されており、前記コア要素(2)が、前記ブッシュ(6)を前記コア要素(2)の前記支持アーム(5)と係合式に結合させる前記アンダーカット部(14)に係合していることを特徴とする上記1.~5.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
7.ちょうど1つの糸(3)が、前記コア要素(2)及び前記各ブッシュ(6)に複数回巻き付けられていることを特徴とする上記1.~6.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
8.前記コア要素(2)が発泡材料で形成されていることを特徴とする上記1.~7.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
9.前記各ブッシュ(6)が金属材料で形成されていることを特徴とする上記1.~8.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
10.前記糸(3)が、前記各支持アーム(5)において、前記各支持アーム(5)の各長手軸線(7)に対して本質的に平行にガイドされていることを特徴とする上記1.~9.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
11.前記糸(3)が、前記各支持アーム(5)の各端面(8)において、前記各支持アーム(5)の各長手軸線(7)に対して15~45°の角度範囲でガイドされていることを特徴とする上記1.~10.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
12.前記糸(3)が、前記ねじり要素(4)において、当該4点サスペンションアーム(1)の長手軸線(9)に対して40~60°の角度範囲でガイドされていることを特徴とする上記1.~11.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
13.巻付けプロセス中に前記糸を収容及びガイドするために、前記各ブッシュ(6)が前記各支持アーム(5)よりも大きな幅を有していることを特徴とする上記1.~12.のいずれか1つに記載の4点サスペンションアーム(1)。
【符号の説明】
【0043】
1 4点サスペンションアーム
2 コア要素
3 糸
4 ねじり要素
5 支持アーム
6 ブッシュ
7 支持アームの長手軸線
8 支持アームの端面
9 4点サスペンションアームの長手軸線
10 定着要素
11 ガイドアーム
12 定着脚部
13 凹部
14 アンダーカット部
15 先端部
16 ウェブ
17 ガイド面
18 中空部
19 溝
20 側面
21 交点
22 空隙部
23 凹部
24 部分
25 ガイド面
26 ガイド面