(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】シート保持装置
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20220509BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
E04G5/00 301E
E04G21/32 B
(21)【出願番号】P 2020068269
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】515230501
【氏名又は名称】佐藤 良弘
(73)【特許権者】
【識別番号】515230442
【氏名又は名称】佐藤 弘剛
(73)【特許権者】
【識別番号】515230523
【氏名又は名称】佐藤 衛
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】特許業務法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良弘
(72)【発明者】
【氏名】西田 誠
(72)【発明者】
【氏名】石川 誼希
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-204767(JP,A)
【文献】特開2019-163608(JP,A)
【文献】特開平10-088811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊結部を有する足場の支柱に、ハトメを有するシートを保持するシート保持装置であって、前記保持装置は、固定部材とクリップと係止部材とを備え、前記固定部材は前記緊結部で固定されると共に支柱に対して間隔を保って立ち上がる起立板を備えており、該起立板には少なくとも左右に一対の貫通孔を有し、前記クリップは繋ぎ部の両側から一対の脚部を並設してあり、該一対の脚部は、左右のシート縁部で対向配置された両ハトメを通り抜けると共に左右の貫通孔をも挿通し、さらにクリップ脱落防止用の係止部材を前記脚部間に跨って着脱可能に挿置し、クリップの繋ぎ部で前記両ハトメ間のシート縁部を押圧することを特徴とするシート保持装置。
【請求項2】
前記起立板の中央上端には軸支部を設け、前記係止部材には縦長の長溝を形成し、該係止部材は前記軸支部に対して長溝に沿って上下方向にスライド可能に起立板の裏側に離脱不能に取り付けてあり、前記一対の脚部の内側対向位置には前記長溝を挟んだ左右の作用部が嵌入する切り込み溝が形成してあることを特徴とする請求項1記載のシート保持装置。
【請求項3】
前記起立板の上端には、内側に屈曲する載置片が設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載のシート保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場に取り付ける防護用のシートを保持するシート保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場等で用いられる仮設足場には、防護用のシートが取り付けられる。一般的に、シートを足場に固定する方法としては、シートに設けられたハトメに紐を通して、足場の
支柱に縛り付ける方法が採用されている。
しかし、大量のシートを全て紐で縛り付けるのは大変な労力が必要となる。さらには紐の緩みなどによるシートのたるみの発生が問題となることもある。そして紐の緩みを防止するために、紐を固く結ぶと、シートを取り外すときの労力が多くなってしまうという問題点があった。
【0003】
そこで、シートを足場に固定する労力を減少させるものとして、例えば特許文献1に、足場の支柱に設けられている緊結部を利用して、シートのハトメを掛けるフックを配する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シートのハトメをフックに掛けるのみでは、シートの固定は不十分である。そのため、足場に配置したシートに強風が作用した場合には、シートが振動してしまったり、シートのハトメがフックから外れてしまったりする恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、上記事情に鑑みて、少ない労力で、確実にシートを足場に保持することができるシート保持装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係るシート保持装置は、緊結部を有する足場の支柱に、ハトメを有するシートを保持するシート保持装置であって、前記保持装置は、固定部材とクリップと係止部材とを備え、前記固定部材は前記緊結部で固定されると共に支柱に対して間隔を保って立ち上がる起立板を備えており、該起立板には少なくとも左右に一対の貫通孔を有し、前記クリップは繋ぎ部の両側から一対の脚部を並設してあり、該一対の脚部は、左右のシート縁部で対向配置された両ハトメを通り抜けると共に左右の貫通孔をも挿通し、さらにクリップ脱落防止用の係止部材を前記脚部間に跨って着脱可能に挿置し、クリップの繋ぎ部で前記両ハトメ間のシート縁部を押圧することを特徴とする。
【0008】
前記起立板の中央上端には軸支部を設け、前記係止部材には縦長の長溝を形成し、該係止部材は前記軸支部に対して長溝に沿って上下方向にスライド可能に起立板の裏側に離脱不能に取り付けてあり、前記一対の脚部の内側対向位置には前記長溝を挟んだ左右の作用部が嵌入する切り込み溝が形成してあることを特徴とする。さらに、記起立板の上端には、内側に屈曲する載置片が設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、足場の支柱の緊結部に固定される固定部材の左右一対の貫通孔及び左右シートの両ハトメにそれぞれ跨ってクリップの一対の脚部を挿通し、さらに一対の脚部間に跨ってクリップ脱落防止用の係止部材を着脱可能に挿置し、クリップの繋ぎ部でハトメ間のシート縁部を押圧可能に構成したので、極めて簡単な作業により足場の支柱にシートを確実に保持でき、しかもシートの取り外しも効率的にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るシート保持装置の固定部材を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るシート保持装置のクリップを示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るシート保持装置の係止部材を示す斜視図である。
【
図4】固定部材における中段の貫通孔にクリップを挿通した状態を示す斜視図である。
【
図5】固定部材における上段及び下段の貫通孔にクリップを挿通した状態を示す斜視図である。
【
図6】固定部材に取り付け係止部材が待機位置にある状態を裏側から見た斜視図である。
【
図7】係止部材が待機位置から起立状態になった状態を裏側から見た斜視図である
【
図8】クリップの脚部間に係止部材を挿置した状態を裏側から見た斜視図である。
【
図9】クリップの脚部間に係止部材を挿置した状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係るシート保持装置の一部を支柱に組み立てる状態を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係るシート保持装置で、シートを保持する状態を示すもので、(A)はシートの裏側から示す斜視図であり、(B)はシートの表側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態にかかるシート保持装置について、図面を参照しながら説明する。
本実施の形態に係るシート保持装置は、支柱に固定される固定部材1と、固定部材にシート50を保持するためのクリップ2と、シート50を保持した後クリップ2の抜け落ちを防止するための係止部材3と、から構成されている。
【0012】
前記固定部材1は、
図1に示すように、水平板4と該水平板4の一端から立ち上がる起立板5から成る金属製の板体であり、起立板5には貫通孔6が穿設されており、当該貫通孔6は左右方向に一対ずつで上下に三段の貫通孔6a,6a,6b,6b,6c,6cの計六個を有している。また、
図7に示すように、水平板4の下面の他端側には支柱60に取り付けられた緊結部61に圧入するクサビ部7が設けてある。
また、前記起立板5の中央上端には、軸支部15を取り付けてある突出部16が形成してあり、さらに、起立板5の両側上端には、内側に屈曲する載置片17,17が形成してある。
【0013】
前記クリップ2は、
図2に示すように、繋ぎ部8の両側から同方向に延設している一対の脚部9,9を有する略門型形状を成している。該脚部9,9は左右シート50,50の左側縁と右側縁に沿って定間隔で対向配置されたハトメ51,51に跨って挿入されると共に、前記した左右の貫通孔6,6にも挿通するものである。また、脚部9の内側の対向位置には、繋ぎ部8の裏面と接するハトメ51及び起立板5の肉厚分の間隔を保ち横方向に切り込み溝11,11が穿設してある。
【0014】
前記係止部材3は、
図3に示すように、真ん中を縦走する長溝12を挟んで左右に一対の作用部13,13を備える縦長板状体である。該係止部材3は起立板5の前記軸支部15に対して長溝12に沿ってスライド可能に起立板5の裏側に離脱不能に取り付けてある(
図6、
図7、
図8)。軸支部15には、係止部材3を離脱不能にするための鍔10が形成されている。
【0015】
係止部材3はシート50を保持するクリップ2の抜け落ちを防止するためのものであり、まず、準備段階として、起立板5の裏側の軸支部15に支持される係止部材3を長溝12に沿って引き上げ、長溝12の下端位置に軸支部15がきたときに、軸支部15を支点として係止部材3を回動して横に倒し、いずれか一方の前記載置片17に載せて待機するようにしておく(
図6参照)。次いで、貫通孔6,6を挿通したクリップ2の抜け落ち防止操作は、係止部材3を回動して前記の待機位置から縦に起立させた後(
図7参照)、長溝12に沿って係止部材3をスライドさせ、該長溝12の上端位置に軸支部15がくるようにすれば、係止部材3の両作用部13,13が前記切り込み溝11,11に嵌まり込み、クリップ2の引き抜きができなくなり、クリップ2が固定部材1から抜け落ちることが防止できる(
図8参照)。
【0016】
建築現場で用いられる防護用シート50の大きさは、長さが5400mmで幅が1800mmであり、前記シート50の周縁に設けられているハトメ51は左右及び上下の縁端から17mmの箇所であり、さらに各ハトメ51の間隔は450mm置きに配設されている。
したがって、前記クリップの一対の脚部9,9は、左右のシート50,50の衝合箇所に対向するハトメ51,51に跨って挿入可能に設定されており、また、固定部材1の起立板5に設けられている左右の二つの貫通孔6,6の間隔も前記クリップの脚部9、9が挿入可能に設定されている。
【0017】
次に、建築現場で設置された支柱の外側に防護用シートを張る手順について説明する。
まず、
図10に示すように、支柱60に450mmの間隔で設けられている各緊結部61に固定部材1の下面のクサビ部7を打ち込んで順次に固定部材1を固定する。次いで、左右のシート50,50の衝合する部分にある対向するハトメ51,51位置に対応する各固定部材1の上下の真ん中(中段)にある左右の貫通孔6b,6bを使い、前記ハトメ51,51に跨ってクリップ2の脚部9,9を挿通し、左右ハトメ51,51間の左右シート50,50の両縁部をクリップ繋ぎ部8で上から押さえ、さらに各シート50の裏側から待機位置の係止部材3を回動して起立させ、長溝12を利用して係止部材3をスライドさせ、係止部材3の作用部13,13を前記各脚部9の切り込み溝11,11にそれぞれ嵌入してクリップ2の脱落不能にし、前記クリップの繋ぎ部8がハトメ51,51間を確実に押圧する(
図9参照)。
このようにして、左右のシート50,50を順次固定部材1及びクリップ2並びに係止部材3を利用して確実に支柱60に保持して行くものである。
【0018】
固定部材1に設けた上下方向に設けた上段と下段の各左右の貫通孔は、上下及び左右の各シート50,50,50,50が衝合している部分に使用し、下のシート50,50には下段にある左右の貫通孔6c,6cの下段を使用し、上のシート50,50には上段にある左右の貫通孔6a,6aを使用することによって、上下及び左右のシートが衝合する箇所においてもクリップ2と係止部材3を前記と同様な使い方により繋ぎ部8で上下の左右縁部を押圧して確実に支柱60に保持することができる。
このように、クリップの一対の脚部をハトメ及び貫通孔の挿通し、さらに係止部材を脚部間の切り込み溝に通すだけで支柱のシートを確実に保持できるものである。また、シートを外すときは、係止部材を上方へ持ち上げて一対の脚部の切り込み溝から抜き取り、後はクリップを貫通孔及びハトメから引き抜くだけで簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0019】
1 固定部材
2 クリップ
3 係止部材
5 起立板
6 貫通孔
6a 上段の貫通孔
6b 中段の貫通孔
6c 下段の貫通孔
8 繋ぎ部
9 脚部
11 切り込み溝
12 長溝
13 作用部
15 軸支部
17 載置片
50 シート
51 ハトメ
60 支柱