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  • 特許-スパッタリングターゲットの溶接方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲットの溶接方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220509BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C23C14/34 C
B23K20/12 360
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020124079
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022001664
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】202010573673.1
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520269525
【氏名又は名称】浙江最成半導体科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】姚科科
(72)【発明者】
【氏名】大岩一彦
(72)【発明者】
【氏名】廣田二郎
(72)【発明者】
【氏名】林智行
(72)【発明者】
【氏名】山田浩
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-503771(JP,A)
【文献】特開2019-155394(JP,A)
【文献】特開2019-034313(JP,A)
【文献】特開2018-164913(JP,A)
【文献】特開2014-193489(JP,A)
【文献】特開2017-070994(JP,A)
【文献】特開2016-049555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングターゲットの溶接方法、特徴は、ターゲット(1)、バッキングプレート(2)及摩擦攪拌溶接装置によって実施される。
本スパッタリングターゲットの溶接方法には、以下のステップが含まれる。
まず、ターゲットとバッキングプレートとの間の距離を1mm以下に設定する。
次に、摩擦攪拌溶接装置で溶接を行う。この際、摩擦攪拌溶接装置の回転ツールを溶接接合部に挿入し、挿入深さは3~20mmとし、回転ツールを回転しながら溶接を行う。回転ツールが溶接しているとき、ターゲット(1)とバッキングプレート(2)を同時に回転させる。
【請求項2】
請求項1に記載のスパッタリングターゲットの溶接方法において、特徴は、バッキングプレート(2)の材質にアルミ合金或いは銅合金を使用すること。
【請求項3】
請求項1に記載のスパッタリングターゲットの溶接方法において、特徴は、回転ツールの回転数が500~2000rpmであること。
【請求項4】
請求項1に記載のスパッタリングターゲットの溶接方法において、特徴は、ターゲット(1)とバッキングプレート(2)の同時回転速度が50~200mm/minであること。
【請求項5】
請求項1に記載のスパッタリングターゲットの溶接方法において、特徴は、回転ツールが溶接する時の溶接温度がバッキングプレート(2)の金属固相線温度以下であること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットの溶接技術分野に関連するスパッタリングターゲットの溶接方法を
開示している。
【背景技術】
【0002】
一般に、スパッタリングターゲットはターゲット、バッキングプレート等で構成される。
ターゲットは、高速イオンビームの衝撃を受ける高純度アルミ合金であり、スパッタリン
グターゲットの核心部分である。スパッタリングコーティング中、ターゲットがイオンの
衝撃を受けた後、表面の原子がスパッタリングによって飛び散られ、基板上に堆積して電
子薄膜を形成する。高純度金属の強度が低いため、スパッタリング工程を完了するには、
スパッタリングターゲットを専用の機械に設置する必要がある。機械の内部は高電圧、高
真空の環境である。それで、超高純度金属のターゲットがバッキングプレートと各溶接方
式によって接合される必要がある。バッキングプレートは、スパッタリングターゲットを
固定する役割を果たし、良好な電気伝導性と熱伝導性を備えている必要がある。従来の技
術では、スパッタリングターゲットが一体成型であり、製造には一つ大きな原料が必要で
あり、原料のコストが非常に高く、それで、スパッタリングターゲットをチップの製造に
用いるコストも高くなり、チップ製造業の発展に不利である。
【発明の概要】
【0003】
一、解決すべき技術問題
本発明の目的は、従来の技術における上記の欠点に対して一種のスパッタリングターゲッ
ト溶接方法を提供し、現在の一体成型のスパッタリングターゲットの高コストの問題を解
決し、またスパッタリングターゲットの生産性が低い問題も解決できる。
【0004】
二、技術方案
本発明は、上記の技術課題を解決するために、一種のスパッタリングターゲットの溶接方
法を提供し、ターゲット、バッキングプレート、摩擦攪拌溶接装置よって実施する。
スパッタリングターゲットの溶接方法は、以下のステップが含まれる。
まず、ターゲットとバッキングプレートとの間の距離を1mm以下に設定する。
次に、摩擦攪拌溶装置で溶接を行い、摩擦攪拌溶接装置の回転ツールを溶接接合部に挿入
し、挿入深さが3~20mmであり、回転ツールが回転しながら溶接を行い、ターゲットとバ
ッキングプレートが同時に回転させる。
この中、バッキングプレートの材質はアルミ合金或いは銅合金である。
この中、回転ツールの回転数が500~2000rpm。
この中、ターゲットとバッキングプレートの同時回転速度が50~200mm/min。
この中、回転ツールが溶接する時の溶接温度がバッキングプレートの金属固相線温度以下
である。
この中、溶接中の溶接接合部のバリの高さがhであること。
0mm <h≦1mmの場合、バリの高さは正常であり、溶接が続けられる。
h> 1mmの場合、回転ツールの挿入深さを浅くすることにより、バリの高さが通常状態にな
り、溶接が続けられる。
h = 0mmの場合、回転ツールの挿入深さを深くすることにより、バリの高さが通常状態に
なり、溶接が続けられる。
この中、溶接中の溶接接合部のバリの高さがhであること。
0mm <h≦1mmの場合、バリの高さは正常であり、溶接が続けられる。
h> 1mmの場合、回転ツールの回転速度を下げることにより、バリの高さが通常状態になり
、溶接が続けられる。
h = 0mmの場合、回転ツールの回転速度を上げることにより、バリの高さが通常状態にな
り、溶接が続けられる。
【0005】
三、有益な効果
従来の技術と比べ、本発明は、バッキングプレートにアルミ合金或いは銅合金を使用する
ことにより、スパッタリングターゲット製造の原材料のコストを節約でき、それに高い溶
接率も保証でき、これにより、低コストのスパッタリングターゲットの大量生産が可能に
なる。このスパッタリングターゲットをチップ製造に使用すると、チップ製造のコストも
大幅に低下する。
同時に、溶接中に発生するバリの高さを、回転ツールの挿入深さと回転速度をリアルタイ
ムに制御することで調整し、溶接品質を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は本発明のターゲットとバッキングプレートの構造図である。
【0007】
図の中、1はターゲット、2はバッキングプレート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
これから、本発明の具体的な実施方式を添付図及実施例を参照してさらに詳細に説明する
。以下の実施例は、本発明を例示するために使用され、本発明の範囲を限定できない。
【0009】
実施例1:
本発明のスパッタリングターゲット溶接方法は、添付図1に示されるように、ターゲット
1、バッキングプレート2、及摩擦攪拌溶接機装置によって実施される。スパッタリング
ターゲットの溶接方法は、以下のステップが含まれる。
まず、ターゲットとバッキングプレートとの間の距離を1mmに設定する。
次に、摩擦攪拌溶装置で溶接を行い、摩擦攪拌溶接装置の回転ツールを溶接接合部に挿入
し、挿入深さが3mmであり、回転ツールが回転しながら溶接を行い、ターゲットとバッキ
ングプレートが同時に回転させる。
本実施例の溶接方法の溶接成功率は平均98%であり、従来の溶接方法の成功率は平均40%
であり、本発明によって、ターゲット1とバッキングプレート2を良好に溶接してスパッ
たリングターゲットを形成する。
【0010】
実施例2:
本発明のスパッタリングターゲット溶接方法は、以下のステップが含まれる。
まず、ターゲットとバッキングプレートとの間の距離を0.2mmに設定する。
次に、摩擦攪拌溶装置で溶接を行い、摩擦攪拌溶接装置の回転ツールを溶接接合部に挿入
し、挿入深さが10mmであり、回転ツールが回転しながら溶接を行い、ターゲットとバッキ
ングプレートが同時に回転させる。
また、本実施例では、バッキングプレート2の材質はアルミ合金或いは銅合金。回転ツー
ルの回転数が500rpm。ターゲット1とバッキングプレート2の同時回転速度が50mm/min。
溶接温度は400℃より少し高い。
バッキングプレート2の材質がアルミ合金或いは銅合金を使用することで、原材料のコス
トを大幅に減少できる。本実施例の溶接方法の溶接成功率は平均98%であり、従来の溶接
方法の成功率は平均40%であり、本発明によって、ターゲット1とバッキングプレート2
を良好に溶接してスパッたリングターゲットを形成する。
【0011】
また、本実施例では、スパッタリングターゲットの溶接時に溶接接合部にバリが発生し、
バリの高さがhであり、0mm <h≦1mmの場合、バリの高さが正常であり、この状
態で溶接を続けることでスパッタリングターゲットの溶接品質は高くなる。
しかし、実際に溶接を行う時、回転ツールの摩耗や変形のため、溶接条件が不安定になり
、溶接品質に悪い影響を与え、溶接部の接合不良となり、同時に溶接部のバリの状態が変
化し、つまり、バリの高さがそれに応じて変化する。
【0012】
即ち、h> 1mmの場合、回転ツールの挿入深さを浅くすることにより、バリの高さを通常状
態に下げて溶接が続けられる。具体的には、バリの高さを通常状態に下げるため、回転ツ
ールの挿入深さを0.02mm減少することでバリの高さを1mm減らすことができる。
例えば、バリの高さが2mmの場合、回転ツールの挿入深さを0.02mm減少することでバリの
高さを1mm減らすことができ、これにより、正常状態に戻って溶接が続けられる。バリの
調整は、溶接中にリアルタイムで行われる。
h = 0mmの場合、回転ツールの挿入深さを深くすることにより、バリの高さが通常状態に
なり、溶接が続けられる。具体的には、回転ツールの挿入深さを0.02mm増やすことでバリ
の高さが1mm高くなれ、これにより、通常状態に戻り、溶接が続けられる。
【0013】
実施例3:
本発明のスパッタリングターゲット溶接方法は、以下のステップが含まれる。
まず、ターゲットとバッキングプレートとの間の距離を0.1mmに設定する。
次に、摩擦攪拌溶装置で溶接を行い、摩擦攪拌溶接装置の回転ツールを溶接接合部に挿入
し、挿入深さが13mmであり、回転ツールが回転しながら溶接を行い、ターゲットとバッキ
ングプレートが同時に回転させる。
【0014】
また、本実施例では、バッキングプレート2の材質はアルミ合金或いは銅合金。回転ツー
ルの回転数が2000rpm。ターゲット1とバッキングプレート2の同時回転速度が150mm/min
。溶接温度は500℃。
バッキングプレート2の材質がアルミ合金或いは銅合金を使用することで、原材料のコス
トを大幅に減少できる。本実施例の溶接方法の溶接成功率は平均98%であり、従来の溶接
方法の成功率は平均40%であり、本発明によって、ターゲット1とバッキングプレート2
を良好に溶接してスパッたリングターゲットを形成する。
【0015】
実施例4:
本発明のスパッタリングターゲット溶接方法は、以下のステップが含まれる。
まず、ターゲット1とバッキングプレート2との間の距離を0mmに設定する。
次に、摩擦攪拌溶装置で溶接を行い、摩擦攪拌溶接装置の回転ツールを溶接接合部に挿入
し、挿入深さが20mmであり、回転ツールが回転しながら溶接を行い、ターゲットとバッキ
ングプレートが同時に回転させる。
【0016】
また、本実施例では、バッキングプレート2の材質はアルミ合金或いは銅合金。回転ツー
ルの回転数が1500rpm。ターゲット1とバッキングプレート2の同時回転速度が200mm/min
。溶接温度は580℃。
本実施例の溶接方法の溶接成功率は平均98%であり、従来の溶接方法の成功率は平均40%
であり、本発明によれば、ターゲット1とバッキングプレート2を良好に溶接してスパッ
たリングターゲットを形成する。
【0017】
実施例5:
実施例1に対して、本実施例の中に、回転ツールの回転速度を制御することでバリの高さ
を制御し、具体的には、スパッタリングターゲットの溶接時の溶接接合部のバリの高さを
hとする。
0mm <h≦1mmの場合、バリの高さは正常であり、溶接が続けられる。
h> 1mmの場合、回転ツールの回転速度を下げることにより、バリの高さを通常状態に下げ
て溶接が続けられる。具体的には、バリの高さを通常状態に下げるために、回転ツールの
回転速度を2%下げることでバリの高さを1mm減らすことができる。
例えば、バリの高さが2mmの場合、回転ツールの回転速度を2%下げると、バリの高さが1m
m減少でき、これにより、通常の状態に戻って溶接が続けられる。バリの調整は、溶接中
にリアルタイムで行われる。
h = 0mmの場合、回転ツールの回転速度を上げることにより、バリの高さを通常状態に上
げて溶接が続けられる。具体的には、回転ツールの回転速度を2%上げることでバリの高
さが1mm高くなれ、これにより、通常状態に戻り、溶接が続けられる。
【0018】
上記は本発明の優先実施方式にすぎない。本技術領域の一般技術者にとって、本発明の技
術的原理を前提としていくらかの改善及補充を行うことができ、これらの改善及び補充も
本発明の保護範囲と見られることを指摘する必要がある。
図1