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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】人体排泄物の解析
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20220509BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20220509BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N33/483 C
G01N33/50 N
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020146892
(22)【出願日】2020-09-01
(62)【分割の表示】P 2017544028の分割
【原出願日】2016-02-25
(65)【公開番号】P2020201279
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】62/120,639
(32)【優先日】2015-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517286331
【氏名又は名称】アウトセンス ダイアグノスティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アッタール,イシェイ
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-252805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0261605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 33/483 - G01N 33/98
A61B 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器内に置かれる対象者の人体排泄物に使用される方法であって、
前記人体排泄物が前記便器内に置かれている間、1以上の光センサを用いて前記便器からの光を受け取ることと、
コンピュータプロセッサを用いて、
受け取った前記光を解析することによって、それぞれの波長を中心とする少なくとも第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出することと、
前記第1スペクトル帯域の強度と前記第2スペクトル帯域の強度との間の第1比を判定することと、
前記第2スペクトル帯域の強度と前記第3スペクトル帯域の強度との間の第2比を判定することと、
当該判定に応じて、前記人体排泄物内に血液が存在すると判定することと、
少なくとも部分的に当該判定に応じて、出力デバイスの出力を生成することと、を含む方法。
【請求項2】
前記人体排泄物が大便であり、前記人体排泄物内に血液が存在すると判定することが、前記大便内に血液が存在すると判定することである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記人体排泄物が尿であり、前記人体排泄物内に血液が存在すると判定することが、前記尿内に血液が存在すると判定することである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象者の複数の人体排泄物内の血液に関するデータを記録することをさらに含み、前記出力を生成することが、記録された前記データに応答して出力を生成することである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1以上の光センサを用いて前記便器から光を受け取ることが、1以上のカメラを用いて前記便器から1以上の画像を受け取ることであり、受け取った前記光内で少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出することが、前記1以上の画像内の複数の各画素を個別に解析することによって前記人体排泄物の各部分内の少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を特定することである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1以上の光センサを用いて前記便器から光を受け取ることが、前記対象者が前記便器内に人体排泄物を排泄した後に、排泄後にいずれの人物も何らかの行動をとる必要なく、1以上の光センサを用いて前記便器から光を受け取ることである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記人体排泄物内に血液が存在すると判定することに応じて、前記血液のソースを示す前記対象者からの入力を要求することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出することが、各々が40nm未満の帯域幅を有する少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出することである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出することが、各々が8nmより大きい帯域幅を有する少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出することである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記便器内の排泄物を照射することをさらに含み、前記光を受け取ることが、前記照射から生じる反射光を受け取ることである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記便器内の排泄物を照射することが、白色光を用いて前記便器内の排泄物を照射することである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記便器内の排泄物を照射することが、少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域の光で前記便器内の排泄物を照射することである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上の光センサを用いて前記便器から光を受け取ることが、マルチスペクトルカメラを用いて前記便器から光を受け取ることである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
受け取った前記光を解析することが、2つの空間規模と1つの波長規模とを含むデータのハイパーキューブを生成することである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
出力デバイスと通信可能に構成され、便器内に置かれる対象者の人体排泄物に使用される装置であって、
前記人体排泄物が前記便器内に置かれている間、前記便器からの光を受け取るように構成された1以上の光センサと、
受け取った前記光を解析することによって、それぞれの波長を中心とする少なくとも第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出し、
前記第1スペクトル帯域の強度と前記第2スペクトル帯域の強度との間の第1比を判定し、
前記第2スペクトル帯域の強度と前記第3スペクトル帯域の強度との間の第2比を判定し、
当該判定に応じて、前記人体排泄物内に血液が存在すると判定し、
少なくとも部分的に当該判定に応じて、前記出力デバイスに出力を生成するように構成されたコンピュータプロセッサと、を備える
装置。
【請求項16】
前記人体排泄物が大便であり、前記コンピュータプロセッサが、前記大便内に血液が存在すると判定することによって前記人体排泄物内に血液が存在すると判定するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記人体排泄物が尿であり、前記コンピュータプロセッサが、前記尿内に血液が存在すると判定することによって前記人体排泄物内に血液が存在すると判定するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記コンピュータプロセッサが、前記対象者の複数の人体排泄物内の血液に関するデータを記録し、記録された前記データに応答して前記出力を生成するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記1以上の光センサが、前記人体排泄物の1以上の画像を取得するように構成された1以上のカメラであり、前記コンピュータプロセッサが、前記人体排泄物の各部分内の少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を特定し、前記1以上の画像内の複数の各画素を個々に解析することによって、受け取った前記光内の少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記対象者が前記便器内に人体排泄物を排泄した後に、前記1以上の光センサが、排泄後にいずれの人物も何らかの行動をとる必要なく、前記便器から光を受け取るように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記人体排泄物内に血液が存在すると判定することに応じて、前記コンピュータプロセッサが、前記血液のソースを示す前記対象者からの入力を要求するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項22】
前記コンピュータプロセッサが、各々が40nm未満の帯域幅を有する少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出することによって少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項23】
前記コンピュータプロセッサが、各々が8nmを超える帯域幅を有する少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出することによって少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域を検出するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項24】
前記便器内の排泄物を照射するように構成された光源をさらに備え、前記1以上の光センサが、前記照射から生じる反射光を受け取るように構成される、請求項16~23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記光源が、白色光で前記便器内の排泄物を照射するように構成される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記光源が、少なくとも前記第1、第2及び第3スペクトル帯域の光で前記便器内の排泄物を照射するように構成される、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記1以上の光センサがマルチスペクトルカメラである、請求項16~23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
前記コンピュータプロセッサが、2つの空間規模と1つの波長規模とを含むデータのハイパーキューブを生成することによって、受け取った前記光を解析するように構成される、請求項27に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年2月25日に出願されたAttarの米国仮出願第62/120,639号「生体外生物学的サンプルにおける血液の遠隔感知のための装置及び方法」の優先権を主張する。上述の出願は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明のある用途は概して、人体排泄物の解析に関する。具体的には、本発明のある用途は、尿や大便などの人体排泄物中の血液を検出する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
結腸直腸癌は、結腸や直腸などの大腸部分で成長した癌である。大便内の血液の検出は結腸直腸癌のスクリーニングツールとして使用される。しかしながら、血液は、微量であることが多く、すなわち目に見えない。便グアヤック試験は、血液が目に見えない場合でも大便内の血液の存在を検出するいくつかの方法のうちの1つである。大便サンプルは、特別に作製されたグアヤック紙と呼ばれる紙上に置かれて、過酸化水素が加えられる。血液の存在下で青色が紙上に表示される。典型的には、結腸直腸癌の疑いのある患者は、結腸鏡検査、S状結腸鏡検査、及び/又は、CT、PET及び/又はMRIなどの外部撮像技術を用いて評価される。
【0004】
膀胱癌は、癌細胞が膀胱の上皮内層内で増殖している状況である。尿内の血液の検出は膀胱癌のスクリーニングに有効である。血液の検出技法は、尿サンプルに特定の化学物質を含有する試験片を置いて、試験片の色変化を検出することを含む。
【発明の概要】
【0005】
本発明のある用途によれば、便器(大便又は尿など)内に置かれる対象者の人体排泄物が自動的に解析される。典型的には、人体排泄物が便器内に置かれる間、1以上の光センサ、例えば、1以上のカメラを用いて(便器の内容物から反射される)光を便器から受け取る。コンピュータプロセッサを用いて、受光を解析する(例えば、受光のスペクトル解析を行う)ことによって、赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分が受光内に検出される。当該検出に応じて、コンピュータプロセッサは、人体排泄物内に血液が存在すると判定する。典型的には、コンピュータプロセッサは、少なくとも部分的に当該判定に応じて、出力デバイス(電話、タブレット装置又はパーソナルコンピュータなど)の出力を生成する。ある用途の場合、出力デバイスは、デバイスに内蔵される出力コンポーネント(光(例えば、LED)又は画面)を含む。典型的には、対象者が人体排泄物を便器内に排泄した後にいずれかの人物が何らかの動作を実行する必要なく、上記ステップが実行される。従って、例えば、対象者は、排泄物内に血液が存在するか否かを判定しやすくするため、便器に何も追加する必要がない。
【0006】
ある用途の場合、装置は長期間にわたって、例えば1週間超又は1ヶ月超、対象者の複数の人体排泄物の結果を解析し記録する。典型的には、このように装置は、特徴として間欠的にのみ出血する早期ステージの癌及び/又はポリープの存在をスクリーニングするように構成される。ある用途の場合、装置は、ある期間にわたって人体排泄物(例えば、大便)内に検出される血液の量と閾値量とを比較する。
【0007】
本発明のある用途によると、便器内に置かれる対象者の人体排泄物に使用される方法が提供され、当該方法は、
前記人体排泄物が前記便器内に置かれている間、1以上の光センサを用いて前記便器からの光を受け取ることと、
コンピュータプロセッサを用いて、
前記受光を解析することによって、赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を前記受光内で検出することと、
当該検出に応じて、前記人体排泄物内に血液が存在すると判定することと、
少なくとも部分的に当該判定に応じて、出力デバイスの出力を生成することと、を含む。
【0008】
ある用途では、人体排泄物は大便であり、人体排泄物内に血液が存在すると判定することは、大便内に血液が存在すると判定することである。
【0009】
ある用途では、人体排泄物は尿であり、人体排泄物内に血液が存在すると判定することは、尿内に血液が存在すると判定することである。
【0010】
ある用途では、当該方法は、対象者の複数の人体排泄物内の血液に関するデータを記録することをさらに含み、出力を生成することは、記録されたデータに応答して出力を生成することである。
【0011】
ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、1以上のカメラを用いて便器から1以上の画像を受け取ることであり、1以上のスペクトル成分を受光内で検出することは、1以上の画像内の複数の各画素を個別に解析することによって人体排泄物の各部分内のスペクトル成分を特定することである。
【0012】
ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、対象者が便器内に人体排泄物を排泄した後にいずれの人物も排泄後に何らかの行動をとる必要なく、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることである。
【0013】
ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、分光計を用いて便器から光を受け取ることである。ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、1以上のモノクロカメラを用いて便器から光を受け取ることである。ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、1以上のカラーカメラを用いて便器から光を受け取ることである。ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、1以上のモノクロカメラと1以上のカラーカメラとを用いて便器から光を受け取ることである。
【0014】
ある用途では、当該方法は、人体排泄物内に血液が存在すると判定することに応じて、血液のソースを示す対象者からの入力を要求することをさらに含む。
【0015】
ある用途では、赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出することは、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、ヘムから成る群から選択される赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出することである。
【0016】
ある用途では、当該方法は、大便及び尿から成る群から選択される人体排泄物による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出することをさらに含む。
【0017】
ある用途では、当該方法は、便器内の排泄物を照射することをさらに含み、光を受け取ることは、照射から生じる反射光を受け取ることである。
【0018】
ある用途では、便器内の排泄物を照射することは、白色光を用いて便器内の排泄物を照射することである。
【0019】
ある用途では、便器内の排泄物を照射することは、1以上のスペクトル帯域の光で便器内の排泄物を照射することである。
【0020】
ある用途では、1以上のスペクトル成分を検出することは、530nm~785nmの範囲内の波長を中心とする1以上のスペクトル帯域を検出することである。ある用途では、1以上のスペクトル成分を検出することは、540nm、565nm、575nmから成る群から選択される概算波長を中心とする1以上のスペクトル帯域を検出することである。ある用途では、1以上のスペクトル帯域を検出することは、40nm未満の帯域幅を有する1以上のスペクトル帯域を検出することである。
【0021】
ある用途では、1以上のスペクトル帯域を検出することは、少なくとも2つのスペクトル帯域を検出することである。当該方法は、少なくとも2つのスペクトル帯域の各スペクトル帯域の強度間の関係を判定することをさらに含み、人体排泄物内に血液が存在すると判定することは、少なくとも部分的に判定された関係に基づき人体排泄物内に血液が存在すると判定することである。
【0022】
ある用途では、少なくとも2つのスペクトル帯域の各スペクトル帯域の強度間の関係を判定することは、
約575nmを中心とする帯域の強度と約565nmを中心とする帯域の強度との間の第1比を判定することと、
約565nmを中心とする帯域の強度と約540nmを中心とする帯域の強度との間の第2比を判定することと、を含む。
【0023】
ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、マルチスペクトルカメラを用いて便器から光を受け取ることである。ある用途では、受光を解析することは、2つの空間規模と1つの波長規模とを含むデータのハイパーキューブを生成することである。
【0024】
本発明のある用途によると、便器内に置かれる対象者の人体排泄物に使用される装置と、出力デバイスとがさらに提供され、当該装置は、
人体排泄物が便器内に置かれている間、便器からの光を受け取るように構成された1以上の光センサと、
受光を解析することと、
当該検出に応じて、人体排泄物内に血液が存在すると判定することと、
少なくとも部分的に当該判定に応じて出力デバイスに出力を生成することと、によって赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出するように構成されたコンピュータプロセッサと、を含む。
【0025】
ある用途では、人体排泄物は大便であり、コンピュータプロセッサは、大便内に血液が存在すると判定することによって、人体排泄物内に血液が存在すると判定するように構成される。ある用途では、人体排泄物は尿であり、コンピュータプロセッサは、尿内に血液が存在すると判定することによって、人体排泄物内に血液が存在すると判定するように構成される。
【0026】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、対象者の複数の人体排泄物内の血液に関連するデータを記録し、記録されたデータに応答して出力を生成するように構成される。
【0027】
ある用途では、1以上の光センサは、人体排泄物の1以上の画像を取得するように構成された1以上のカメラであり、コンピュータプロセッサは、1以上の画像内の複数の各画素を個別に解析することによって人体排泄物の各部分内のスペクトル成分を特定することで、受光内で1以上のスペクトル成分を検出するように構成される。
【0028】
ある用途では、対象者が便器内に人体排泄物を排泄した後に、1以上の光センサが、排泄後にいずれの人物も何らかの行動をとる必要なく、便器から光を受け取るように構成される。
【0029】
ある用途では、1以上の光センサは分光計を含む。ある用途では、1以上の光センサは1以上のモノクロカメラを含む。ある用途では、1以上の光センサは1以上のカラーカメラを含む。ある用途では、1以上の光センサは1以上のカラーカメラと1以上のモノクロカメラとを含む。
【0030】
ある用途では、人体排泄物内に血液が存在すると判定することに応答して、コンピュータプロセッサが、血液のソースを示す対象者からの入力を要求するように構成される。
【0031】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、ヘムから成る群から選択される赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出することによって、赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出するように構成される。
【0032】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、大便及び尿から成る群から選択される人体排泄物による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出するようにさらに構成される。
【0033】
ある用途では、当該装置は、便器内の排泄物を照射するように構成された光源をさらに備え、1以上の光センサは、照射から生じる反射光を受け取るように構成される。ある用途では、光源は、白色光を用いて便器内の排泄物を照射するように構成される。
【0034】
ある用途では、光源が、1以上のスペクトル帯域の光で便器内の排泄物を照射するように構成される。
【0035】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、530nm~785nmの範囲内の波長を中心とする1以上のスペクトル帯域を検出することによって1以上のスペクトル成分を検出するように構成される。ある用途では、コンピュータプロセッサは、540nm、565nm、575nmから成る群から選択される概算波長を中心とする1以上のスペクトル帯域を検出することによって1以上のスペクトル成分を検出するように構成される。
【0036】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、40nm未満の帯域幅を有する1以上のスペクトル帯域を検出することによって前記1以上のスペクトル成分を検出するように構成される。
【0037】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、
少なくとも2つの前記スペクトル帯域を検出し、
少なくとも2つのスペクトル帯域の各スペクトル帯域の強度間の関係を判定し、
少なくとも部分的に判定された関係に基づき人体排泄物内に血液が存在すると判定することによって、人体排泄物内に血液が存在すると判定するように構成される。
【0038】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、
約575nmを中心とする帯域の強度と約565nmを中心とする帯域の強度との間の第1比を判定することと、
前記約565nmを中心とする帯域の強度と約540nmを中心とする帯域の強度との間の第2比を判定することと、によって少なくとも2つのスペクトル帯域の各スペクトル帯域の強度間の関係を判定するように構成される。
【0039】
ある用途では、1以上の光センサはマルチスペクトルカメラを含む。ある用途では、コンピュータプロセッサは、2つの空間規模と1つの波長規模とを含むデータのハイパーキューブを生成することによって受光を解析するように構成される。
【0040】
本発明のある用途によると、
対象者が便器内に人体排泄物を排泄した後に、排泄後にいずれの人物も何らかの行動をとる必要なく、
1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることと、
コンピュータプロセッサを用いて、
受光を解析することと、
当該解析に応じて、前記人体排泄物内に血液が存在すると判定することと、
少なくとも部分的に当該判定に応じて、出力デバイスの出力を生成することと、を含む方法がさらに提供される。
【0041】
ある用途では、人体排泄物は大便であり、人体排泄物内に血液が存在すると判定することは、大便内に血液が存在すると判定することである。ある用途では、人体排泄物は尿であり、人体排泄物内に血液が存在すると判定することは、尿内に血液が存在すると判定することである。
【0042】
ある用途では、当該方法は、対象者の複数の人体排泄物内の血液に関するデータを記録することをさらに含み、出力を生成することは、記録されたデータに応答して出力を生成することである。
【0043】
ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、1以上のカメラを用いて便器から1以上の画像を受け取ることであり、受光を解析することは、1以上の画像内の複数の各画素を個別に解析することによって人体排泄物の各部分内のスペクトル成分を特定することで、1以上のスペクトル成分を受光内で検出することを含む。
【0044】
ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、分光計を用いて便器から光を受け取ることである。ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、1以上のモノクロカメラを用いて便器から光を受け取ることである。ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、1以上のカラーカメラを用いて便器から光を受け取ることである。ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、1以上のモノクロカメラと1以上のカラーカメラとを用いて便器から光を受け取ることである。
【0045】
ある用途では、当該方法は、人体排泄物内に血液が存在すると判定することに応じて、血液のソースを示す対象者からの入力を要求することをさらに含む。
【0046】
ある用途では、当該方法は、便器内の排泄物を照射することをさら含み、光を受け取ることは、照射から生じる反射光を受け取ることである。ある用途では、便器内の排泄物を照射することは、白色光を用いて便器内の排泄物を照射することである。
【0047】
ある用途では、便器内の排泄物を照射することは、1以上のスペクトル帯域の光で便器内の排泄物を照射することである。
【0048】
ある用途では、受光を解析することは、赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出することである。ある用途では、赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出することは、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、ヘムから成る群から選択される赤血球の成分による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出することである。
【0049】
ある用途では、当該方法は、大便及び尿から成る群から選択される人体排泄物による光吸収を示す1以上のスペクトル成分を受光内で検出することをさらに含む。
【0050】
ある用途では、1以上のスペクトル成分を検出することは、530nm~785nmの範囲内の波長を中心とする1以上のスペクトル帯域を検出することである。
【0051】
ある用途では、1以上のスペクトル成分を検出することは、540nm、565nm、575nmから成る群から選択される概算波長を中心とする1以上のスペクトル帯域を検出することである。ある用途では、1以上のスペクトル帯域を検出することは、40nm未満の帯域幅を有する1以上のスペクトル帯域を検出することである。
【0052】
ある用途では、1以上のスペクトル帯域を検出することは、少なくとも2つのスペクトル帯域を検出することである。当該方法は、少なくとも2つのスペクトル帯域の各スペクトル帯域の強度間の関係を判定することをさらに含み、人体排泄物内に血液が存在すると判定することは、少なくとも部分的に判定された関係に基づき人体排泄物内に血液が存在すると判定することである。
【0053】
ある用途では、少なくとも2つのスペクトル帯域の各スペクトル帯域の強度間の関係を判定することは、
約575nmを中心とする帯域の強度と約565nmを中心とする帯域の強度との間の第1比を判定することと、
約565nmを中心とする帯域の強度と約540nmを中心とする帯域の強度との間の第2比を判定することと、を含む。
【0054】
ある用途では、1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることは、マルチスペクトルカメラを用いて便器から光を受け取ることである。ある用途では、受光を解析することは、2つの空間規模と1つの波長規模とを含むデータのハイパーキューブを生成することである。
【0055】
本発明のある用途によると、便器内に置かれる対象者の人体排泄物に使用される装置と出力デバイスとが提供され、当該装置は、
人体排泄物が便器内に置かれている間、便器から1以上の画像を受け取るように構成された1以上のカメラと、
1以上の画像内の複数の各画素を個別に解析することによって人体排泄物の各部分内のスペクトル成分を検出し、
当該検出に応じて、人体排泄物内に血液が存在すると判定し、
少なくとも部分的に当該判定に応じて出力デバイスに出力を生成するように構成されたコンピュータプロセッサと、を含む。
【0056】
ある用途では、人体排泄物は大便であり、コンピュータプロセッサは、大便内に血液が存在すると判定することによって、人体排泄物内に血液が存在すると判定するように構成される。ある用途では、人体排泄物は尿であり、コンピュータプロセッサは、尿内に血液が存在すると判定することによって、人体排泄物内に血液が存在すると判定するように構成される。
【0057】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、対象者の複数の人体排泄物内の血液に関連するデータを記録し、記録されたデータに応答して出力を生成するように構成される。
【0058】
ある用途では、対象者が便器内に人体排泄物を排泄した後に、1以上の光センサが、排泄後にいずれの人物も何らかの行動をとる必要なく、便器から光を受け取るように構成される。
【0059】
ある用途では、1以上のカメラは1以上のモノクロカメラである。ある用途では、1以上のカメラは1以上のカラーカメラである。ある用途では、1以上のカメラは1以上のカラーカメラと1以上のモノクロカメラとである。
【0060】
ある用途では、人体排泄物内に血液が存在すると判定することに応答して、コンピュータプロセッサが、血液のソースを示す対象者からの入力を要求するように構成される。
【0061】
ある用途では、当該装置は、便器内の排泄物を照射するように構成された光源をさらに備え、1以上のカメラは、照射から生じる反射光を受け取るように構成される。ある用途では、光源は、白色光を用いて便器内の排泄物を照射するように構成される。ある用途では、光源は1以上のスペクトル帯域の光を用いて便器内の排泄物を照射するように構成される。
【0062】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、赤血球の成分による光吸収を示す各画素の1以上のスペクトル成分を検出することによって人体排泄物の各部分内のスペクトル成分を検出するように構成される。
【0063】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、ヘムから成る群から選択される赤血球の成分による光吸収を示す各画素の1以上のスペクトル成分を検出することによって、赤血球の成分による光吸収を示す各画素の1以上のスペクトル成分を検出するように構成される。
【0064】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、大便及び尿から成る群から選択される人体排泄物による光吸収を示す各画素の1以上のスペクトル成分を検出するようにさらに構成される。
【0065】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、530nm~785nmの範囲内の波長を中心とする1以上のスペクトル帯域を検出することによって1以上のスペクトル成分を検出するように構成される。ある用途では、コンピュータプロセッサは、540nm、565nm、575nmから成る群から選択される概算波長を中心とする1以上のスペクトル帯域を検出することによって1以上のスペクトル成分を検出するように構成される。ある用途では、コンピュータプロセッサは、40nm未満の帯域幅を有する1以上のスペクトル帯域を検出することによって1以上のスペクトル成分を検出するように構成される。
【0066】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、
少なくとも2つの前記スペクトル帯域を検出し、
少なくとも2つのスペクトル帯域の各スペクトル帯域の強度間の関係を判定し、
少なくとも部分的に前記判定された関係に基づき人体排泄物内に血液が存在すると判定することによって、人体排泄物内に血液が存在すると判定するように構成される。
【0067】
ある用途では、コンピュータプロセッサは、
約575nmを中心とする帯域の強度と約565nmを中心とする帯域の強度との間の第1比を判定することと、
約565nmを中心とする帯域の強度と約540nmを中心とする帯域の強度との間の第2比を判定することと、によって少なくとも2つのスペクトル帯域の各スペクトル帯域の強度間の関係を判定するように構成される。
【0068】
ある用途では、1以上のカメラはマルチスペクトルカメラである。ある用途では、コンピュータプロセッサは、2つの空間規模と1つの波長規模とを含むデータのハイパーキューブを生成することによって1以上の画像内の前記複数の各画素を個別に解析するように構成される。
【0069】
本発明のある用途によると、便器内に置かれる対象者の人体排泄物に使用される方法がさらに提供され、当該方法は、
人体排泄物が前記便器内に置かれている間、1以上のカメラを用いて便器から1以上の画像を受け取ることと、
コンピュータプロセッサを用いて、
1以上の画像内の複数の各画素を個別に解析することによって人体排泄物の各部分内のスペクトル成分を検出することと、
当該検出に応じて、人体排泄物内に血液が存在すると判定することと、
少なくとも部分的に当該判定に応じて、出力デバイスの出力を生成することと、を含む。
【0070】
本発明のある用途によると、
対象者が便器内に人体排泄物を排泄した後に、排泄後にいずれの人物も何らかの行動をとる必要なく、
1以上の光センサを用いて便器から光を受け取ることと、
受光に関連するデータをメモリに記憶することと、を含む方法がさらに提供される。
【0071】
本発明は、図面と併せて以下の実施形態の詳細な説明から完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】本発明のある用途による人体排泄物を解析する装置の概略図である。
図2】本発明のある用途によるセンサモジュールのコンポーネントの概略ブロック図である。
図3A】本発明の各用途によるセンサモジュールの撮像コンポーネントの構成要素の概略図である。
図3B】本発明の各用途によるセンサモジュールの撮像コンポーネントの構成要素の概略図である。
図4】本発明のある用途により便サンプルから記録されたスペクトログラムを示すグラフである。
図5】本発明のある用途により実行される実験中に各サンプルから記録されたスペクトル成分の側面を示す棒グラフである。
図6】本発明のある用途により実行される実験の結果を示すグラフである。
図7】本発明のある用途により実行されるステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
次に、本発明のある用途により人体排泄物を解析する装置20の概略図である図1を参照する。図示するように、典型的には、装置20は、便器23内に配置されるセンサモジュール22を含む。センサモジュールは撮像コンポーネント24を含み、撮像コンポーネント24は、対象者から排出され便器内に置かれる人体排泄物(典型的には、尿又は大便26)からの光を受け取るように構成された1以上の光センサを含む。例えば、光センサは、さらに詳細に後述するように、分光計又は1以上のカメラを含むことができる。コンピュータプロセッサは、受光を解析し、人体排泄物内に血液が存在するか否かを判定する。典型的には、コンピュータプロセッサは、受光を解析すること(例えば、受光にスペクトル解析を実行すること)によって赤血球の成分による光吸収を示す受光内の1以上のスペクトル成分を検出する(本明細書に記載される特定のコンポーネントの組み合わせが血液の存在を示すため、本明細書では上記スペクトル成分は血液シグネチャと称することができる)。さらに、典型的には、光を受け取るステップ、受光を解析するステップ、人体排泄物内に血液が存在するか否かを判定するステップは、対象者が人体排泄物を便器に排出した後に任意の人物(例えば、ユーザ、介護者、又は医療専門家)からの何らかの行為を必要とせずに実行される。
【0074】
ある用途の場合、装置20は、図1に示すように、ハウジング30内の便器外に配置される電源28(例えば、バッテリパック)を含む。もしくは又はさらに、センサモジュールは電源(図示せず)に接続される。典型的には、電源とセンサモジュール22とは有線(図示)又は無線(図示せず)で接続される。
【0075】
各用途に応じて、上記解析を実行するコンピュータプロセッサは、便器内(例えば、センサモジュールと同じハウジング内)、ハウジング30内、又は遠隔に配置される。例えば、図示されるように、センサモジュールは、コンピュータプロセッサを含むユーザインタフェースデバイス32と無線通信することができる。上記ユーザインタフェースデバイスは、電話34、タブレットコンピュータ36、ラップトップコンピュータ38、又は別の個人用演算デバイスを含むことができるが、それらに限定されない。典型的には、ユーザインタフェースデバイスは入力デバイス及び出力デバイスの両方として機能し、当該インタフェースデバイスを通じて、ユーザはセンサモジュール22と対話する。センサモジュールはデータをユーザインタフェースデバイスに送信することができ、ユーザインタフェースデバイスコンピュータプロセッサは、撮像モジュールによって受け取られる光を解析し、対象者の人体排泄物内に血液が存在するか否かを判定するように構成されたプログラムを実行することができる。
【0076】
ある用途の場合、センサモジュール22及び/又はユーザインタフェースデバイスは遠隔サーバと通信することができる。例えば、装置は、患者からの介入なしに通信ネットワーク上で医師又は保険会社と通信することができる。医師又は保険会社は結果を評価し、追加の試験又は介入が患者にとって適切か否かを判定することができる。ある用途の場合、受光に関連するデータはメモリ(後述するメモリ46など)に記憶される。例えば、メモリは、便器内(例えば、センサ部内)、ハウジング30内、又は遠隔に配置されることができる。定期的に、対象者は、記憶されたデータを医療施設(例えば、医師のオフィス又は薬局)などの施設又は保険会社に送信することができ、その後、施設のコンピュータプロセッサが、ある期間にわたって取得された対象者の複数の人体排泄物に関連するデータのバッチに関して上記解析を実行することができる。
【0077】
なお、本明細書に記載される装置及び方法は、対象者が人体排泄物に物理的に接触する必要がないスクリーニング試験を含む。さらに、典型的には、対象者は例えば、デバイスをインストールする、あるいはデバイスバッテリを変更するために、専用の感知装置のいずれかの部分に接触するだけでよい(なお、対象者はユーザインタフェースデバイスを扱うことができるが、これは通常、感知装置を使用していないときでも対象者が扱うデバイス(電話など)である)。さらに、典型的には、本明細書に記載される装置及び方法は、排泄物のスペクトル解析及び/又は排泄物が血液を含むという判定を簡易化するため、対象者が人体排泄物を便器に排泄した後に便器に何も追加する必要がない。ある用途の場合、対象者は、便器に装置を装着した後に何の行為も行う必要がない。試験は装置によって自動的に実行され、対象者の排泄物の監視は対象者にとってスムーズであり、異常が発見されない限り、対象者によるコンプライアンスを必要としない。
【0078】
典型的には、対象者が便器に人体排泄物を排出した後、任意の人物が排泄後に何らかの行為を必要とすることなく、人体排泄物は、便器から反射光を受け取ることによって撮像される。さらに、典型的には、コンピュータプロセッサは、(a)受光を解析し(例えば、スペクトル的に解析し)、(b)解析に応じて、人体排泄物内に血液が存在するか否かを判定し、(c)少なくとも部分的に当該判定に応じて出力を生成し、それらはすべて排泄後に任意の人物が何らかの行為を実行する必要がない。なお、ある用途では、さらに詳細に後述するように、人体排泄物内の血液の存在の表示が検出される場合、ユーザインタフェースデバイスを介して対象者からの入力が要求される。しかしながら、このような用途では、自動スペクトル解析に基づき、血液の存在が判定される。ユーザの入力は、血液のソースを判定する、及び/又は、血液のソースが該当原因であるか否かを判定するために使用される。
【0079】
ある用途の場合、対象者の排泄毎に、陽性信号の場合、装置は、出力デバイス、例えば、ユーザインタフェースデバイス32を介して患者に発見を報告する。ある用途の場合、出力デバイスは、装置20に内蔵される出力コンポーネント(光(例えば、LED)又は画面など)を含む。
【0080】
ある用途では、人体排泄物の解析が排泄物内に血液が存在することを示す場合、コンピュータプロセッサはユーザに確認の質問を行うことによって対象者から入力を要求するようにユーザインタフェースを駆動する。例えば、赤身の肉の消費は、肉に含まれる血液により擬陽性を招く可能性があるため、ユーザインタフェースデバイスは「最近の便排泄の24時間前までに赤身の肉を食べましたか?」とユーザに尋ねることができる。もしくは又はさらに、下記の薬の接種が過敏な個人の胃又は胃腸管の出血を引き起こすことが立証されているため、ユーザインタフェースデバイスは「アスピリン又はその他の非ステロイド系抗炎症薬を使用しましたか?」とユーザに尋ねることができる。ある用途の場合、データは局地で解析されるが、その結果はネットワーク接続を通じて医療従事者又は保険会社に送信される。
【0081】
ある用途の場合、装置は、長期間にわたって、例えば1週間超又は1ヶ月超にわたって対象者の人体排泄物を監視する。典型的には、このようにして、装置は、特徴として間欠的にのみ出血する悪性腫瘍及び/又はポリープの存在をスクリーニングするように構成される。ある用途の場合、装置は、ある期間にわたって、人体排泄物(例えば、大便)内に検出される血液の量と閾値量とを比較する。正常な生理学的非病原性胃腸内出血のレベルは、平均2ml/日未満と推定されることが既知である。2ml/日を超える腸内出血は異常であるとみなされる。(なお、異常であるとみなされる正確な量は、例えば年齢及び性別に応じて人により異なる。従って、例えば、成人女性の場合、便の正常血液濃度は64マイクログラム/グラムとみなされるが、成人男性の場合、20マイクログラム/グラムを超えると異常とみなすことができる)。従って、ある用途の場合、閾値は、感知の特異性を高めるように較正されるため、出血度が正常な生理学的非病原性胃腸内出血に一致する場合には警告が生成されないが、例えば、出血度が癌及び/又はポリープの存在を示す場合には警告が生成される。
【0082】
ある用途の場合、受光を解析するコンピュータプロセッサは、異常値の検出及び/又は外れ値の検出などの機械学習技術を利用する。例えば、コンピュータプロセッサは、個別に異常値の検出又は外れ値の検出を実行して、各対象者から出力信号のパターンを学習し、対象者の特徴的な血液シグネチャの異常な変化を検出するように構成されることができる。上述するように、ある用途の場合、解析を実行するコンピュータプロセッサは、センサモジュールから遠隔である及び/又は離れている。ある用途の場合、センサモジュールは使い捨て可能であるが、センサモジュールの廃棄後も、コンピュータプロセッサは、対象者に関連する過去のデータにアクセスすることができるため、機械学習技術において過去のデータを利用することができる。
【0083】
次に、本発明のある用途によるセンサモジュール22のコンポーネントの概略ブロック図である図2を参照する。上述するように、典型的には、センサモジュールは便器内に配置される。さらに、典型的には、センサモジュールは撮像コンポーネントを含み、撮像コンポーネントは、対象者によって排泄され、便器に排出される人体排泄物から光を受け取るように構成された1以上の光センサを含む。撮像コンポーネントは、図3A及び3Bを参照して後でさらに詳述する。典型的には、センサモジュールは耐水性ハウジングに収容される。さらに、典型的には、下方に撮像コンポーネントを搭載するセンサモジュールの面は透明の耐水性カバーで覆われる。なお、図1は便器内の水位の上方に配置されたセンサモジュールを示す。しかしながら、ある用途の場合、センサモジュールの少なくとも一部(例えば、センサモジュール全体)は便器に水没している。
【0084】
ある用途の場合、センサモジュールは対象者センサ40を含む。対象者センサは、対象者がトイレ又はその近傍にいるとき、及び/又は、対象者が便器に排便した及び/又は排尿したか否かを検出するように構成される。例えば、対象者センサは、大便、尿、対象者、又は便器内の水の運動を感知するように構成された運動センサを含むことができる。もしくは又はさらに、対象者センサは、浴室内の光がオンになったとき、あるいは対象者がトイレに座ったときを検出するように構成された光センサを含むことができる。ある用途の場合、人体排泄物から光を検出するために使用される光センサは、上記機能のためにも使用される。ある用途では、センサモジュールは、大半の時間、待機モード(センサモジュールが使用する電力量が低減される)になるように構成される。センサモジュールは、対象者がトイレ又はその近傍にいる、及び/又は、対象者が便器に排便した及び/又は排尿したと検出することに応じてオンとなる。典型的には、センサモジュールの撮像コンポーネントは、対象者がトイレ又はその近傍にいる、及び/又は、対象者が便器に排便した及び/又は排尿したと検出することに応じて画像を取得する。ある用途の場合、対象者はセンサモジュールを手動でオンにする。
【0085】
ある用途の場合、センサモジュールは、典型的には便器内の大便を振動させるように構成された振動コンポーネント42を含む。振動素子は、超音波振動器、モータによって移動させられる機械的素子、及び/又は、水を噴射するように構成されたポンプを含むことができる。典型的には、振動素子は、大便を小片に分解して、大便片内の血液が撮像コンポーネントに可視となるように構成される。なお、ある用途の場合、振動コンポーネントは、センサモジュールとは離れて便器内に配置される。ある用途の場合、振動コンポーネントは使用されず、大便が便器に落ちて便器に衝突するために、装置20は、十分な特異性レベルまで大便内に血液が存在するか否かを判定することができる。
【0086】
典型的には、センサモジュールは、コンピュータプロセッサ44、メモリ46、通信モジュール48を含む。コンピュータプロセッサ44は、本明細書に記載される機能を実行するように撮像コンポーネントを駆動するように構成される。ある用途の場合、コンピュータプロセッサは、本明細書に記載される解析機能を実行するようにさらに構成される。このような用途では、コンピュータプロセッサ44は典型的には、通信モジュール48を介して、解析結果(例えば、大便中の血液の陽性検出)をユーザインタフェースデバイス32(図1)などの遠隔デバイスに送る。もしくは、上述するように、受光の解析は、遠隔コンピュータプロセッサ、例えば、ユーザインタフェースデバイスの一部を成すコンピュータプロセッサによって実行することができる。このような用途では、典型的には、コンピュータプロセッサ44は、通信モジュール48を介して、生の撮像データ及び/又は光信号を遠隔コンピュータプロセッサに送る。ある用途の場合、コンピュータプロセッサはデータをメモリ46に記憶する。データは、後で検索及び解析することができる生データ、及び/又は、撮像コンポーネントが受け取った光のスペクトル解析結果を含むことができる。メモリ46は、物理的に取り外し可能なSDカードなどのメモリカードを含むことができる。典型的には、通信モジュールは、Wifi、BluetoothR、ZigBeeR、又は任意の近接通信(NFC)プロトコルなどの既知のプロトコルを用いて外部デバイス(例えば、ユーザインタフェースデバイス32)と通信するように構成される。
【0087】
ある用途の場合、センサモジュール22は、インジケータ50、例えば、視覚インジケータ(LED光など)又は聴覚インジケータ(例えば、ブザー音を発するように構成されたスピーカ)を含み、インジケータは、サンプルが良好に撮像された、及び/又は、データがユーザインタフェースデバイス32などの遠隔デバイスに良好に送信された旨を対象者に知らせるように構成される。なお、図示しないが、インジケータは典型的には、コンピュータプロセッサ及び/又は通信モジュールなどのセンサモジュールのその他のコンポーネントと相互作用する。
【0088】
次に、本発明の各用途による撮像コンポーネント24の構成要素の概略図である図3A及び図3Bを参照する。典型的には、撮像素子24は、便器内の水に相対するセンサモジュール22の面に配置される。図3A及び図3Bは、センサモジュールの上記面の概略図である。
【0089】
さらに詳細に後述するように、典型的には、人体排泄物内の血液シグネチャを検出するため、人体排泄物から反射される光内の特定のスペクトル帯域が検出される。典型的には、スペクトル帯域は、530nm~785nmの範囲の波長を中心とする。さらに、典型的には、約540nm、565nm、575nmを中心とする2以上のスペクトル帯域が検出される。スペクトル帯域の幅は典型的には、3nm超(例えば、5nm超又は8nm超)及び/又は40nm未満(例えば、20nm未満又は12nm未満)、例えば、3~40nm、5~20nm、又は8~12nmである。おおよその所与のスペクトル値を中心とするとして本明細書に記載されるスペクトル帯域は、所与の値を中心とするスペクトル帯域±5nmを含むと解釈すべきである。
【0090】
図3Aを参照すると、ある用途の場合、センサモジュール22の撮像コンポーネント24は、白色光を放出する光源68(例えば、LED光エミッタ又は別の種類の光)を含む。また、撮像モジュールは、光センサとして機能する2以上のカメラを含む。2以上のカメラは、上記スペクトル帯域の第1帯域(カメラ62)、上記スペクトル帯域の第2帯域(カメラ64)、及び/又は、上記スペクトル帯域の第3帯域(カメラ66)を検出するようにフィルタを含むカラーカメラ60及び/又はモノクロカメラを含むことができる。カメラは、装置20の光センサとして機能し、光源は、便器及び人体排泄物を照射する機能を果たす。ある用途の場合、4つのカメラはすべて撮像コンポーネントで使用される。
【0091】
ある用途の場合、装置20のコンピュータプロセッサは、カメラによって取得される画像の各画素を個別に解析することによって、人体排泄物の各部分内のスペクトル成分を特定するように構成される。人体排泄物の所与の部分のスペクトル成分を特定するため、コンピュータプロセッサは、各カメラによって取得された画像の画素間の相関関係を判定する。典型的には、使用されるカメラの台数に関係なく、すべてのカメラが相互に近接して配置され、例えば、全カメラが10平方センチメートル未満の領域(例えば、5平方センチメートル未満又は1平方センチメートル未満の領域)内に配置される。
【0092】
ある用途の場合、相互に近接して配置されるカメラを用いることで、各カメラによって取得された画像の画素間の相関関係を判定しやすくなる。
【0093】
図3Bを参照すると、ある用途の場合、センサモジュール22の撮像コンポーネント24は、カラーカメラ60と、各スペクトル帯域の光を発する2以上の光源(例えば、LED光又はその他の種類の光)と、を含む。典型的には、2以上の光源は、光源68(白色光を発するように構成された図3Aを参照して説明した光源)及び/又は上記スペクトル帯域の第1帯域(光源72)、上記スペクトル帯域の第2帯域(光源74)、及び/又は、上記スペクトル帯域の第3帯域(光源76)の光を発するように構成された光源を含む。ある用途の場合、狭帯域フィルタが1以上の光源に搭載される。カメラは装置20の光センサとして機能し、光源は便器及び人体排泄物を照射するように機能する。ある用途の場合、4つの光源はすべて撮像コンポーネントで使用される。
【0094】
なお、ある用途の場合、撮像コンポーネントは光源を含まず、撮像コンポーネント(例えば、カメラ)の光センサは周辺光に頼る。もしくは、撮像コンポーネントの光源及び光センサは、便器の異なる側に配置することができる。ある用途の場合、画素毎に光を検出するように構成された1以上のカメラを使用する代わりに、分光計を使用して、人体排泄物から反射される光の全スペクトルを検出し、反射光を解析する。
【0095】
ある用途の場合、カラーカメラ60はマルチスペクトルカメラ又はハイパースペクトルカメラである。例えば、ハイパースペクトルカメラは、人体排泄物の画像を取得するために使用されることができ、コンピュータプロセッサは、2つの空間規模と1つの波長規模とを含むデータのハイパーキューブを生成することによってデータを解析することができる。コンピュータプロセッサは、ハイパーキューブを解析することによって人体排泄物内に血液が存在するか否かを判定することができる。
【0096】
なお、図3A及び図3Bに示す光源及び光センサの具体的な構造は例であり、本発明の範囲は、光源及び/又は光検出器の代替又は追加構造を用いることを含む。例えば、4つより多い又は少ない光源及び/又は光センサを使用することができる。同様に、光源及び/又は光センサは、図3A及び図3Bに示す構成と異なる構成にすることができる。本発明の範囲は、本明細書に記載される測定を実行しやすくするように配置された光センサと光源との任意の組み合わせの使用を含む。
【0097】
典型的には、センサモジュール22の撮像コンポーネント24の光センサは、上述するように、対象者がトイレ又はその近傍に存在すること、及び/又は、対象者が便器に排便及び/又は排尿したことの検出に応答して、画像を取得する。ある用途の場合、カメラ60、62、64及び/又は66による画像の取得中、画像のバーストが所与の時間間隔で取得される。例えば、バーストは、3秒毎、5秒毎、又は10秒毎に1回取得することができる。典型的には、画像の各バーストは、1~8の画像、例えば、3~5の画像を含む。通常、所与の排泄物に関して取得される全画像は計20秒以内に得られるため、人体排泄物は各バーストの各画像の取得間でほぼ移動しない。ある用途の場合、画像フレーム当たりの最大露光時間は通常10msである。もしくは、画像フレーム当たりの露光時間は10ms超、例えば、35ms超とすることができる。
本明細書に記載される装置及び方法は、赤血球から反射され、光センサによって回収される光を利用する。ある実施形態では、この光は周囲光源から反射させることができ、別の実施形態では、光源はシステムの一体的部分である。ある実施形態では、上記光源は、1又は複数の波長のLED、あるいは、帯域通過フィルタを有する広帯域光源とすることができる。上述するように、赤血球は、試験媒体から反射され、光センサによって検出可能である独特のスペクトル特徴を有し、その特徴は本明細書では血液シグネチャと称する。
【0098】
ある用途の場合、センサモジュールは、2以上の波長の吸収に関する数学関数又は波長の加重関数によって復帰した値が特定値に復帰したことを検出すると、人体排泄物中に血液が存在すると検出する。上述するように、ある用途の場合、センサモジュールは、光センサの出力をユーザインタフェースデバイス32(図1)に送信し、デバイス上でコンピュータプロセッサによって走るソフトウェアが解析を実行する。
【0099】
概して、装置20は典型的には、患者から排泄されて便器の水を通る生物学的流体を照射するための照明源(すなわち、光源)を含む。ある用途の場合、放射線(例えば、可視光範囲の放射線)は様々な波長で発せられて、被験物の光学特徴を評価する。光検出器は、光源に対して反対側、同じ側、又は便器内の別の場所に置かれる。例えば、光検出器は、人体排泄物又は排泄物と接触する水を通過する光源からの光を検出するように、光源に対面させることができる。なお、本発明のある用途は、可視光範囲の放射線の検出を利用して本明細書に記載される技法を実行するが、本発明の範囲は、必要な変更を加えて、任意のスペクトル帯域の放射線を利用して本明細書に記載される技法を実行することを含む。
【0100】
ある用途の場合、白色光広帯域照明源(例えば、白色光源68)が使用され、光検出器は少なくとも2つの光検出器(例えば、カメラ60、62、64、66のうち2つ以上)を備えることができる。各光検出器は、生物学的流体を通過した後、別の波長の光を収集する別のフィルタを備えることができる。フィルタは、狭帯域フィルタ、干渉フィルタ、吸収フィルタ、又は回析光学部品(DOE)フィルタとすることができる。
【0101】
次に、本発明のある用途による便サンプルから記録されたスペクトログラムを示すグラフである図4を参照する。生のヒトの便サンプルと、0.2mlの血液を注入したヒトの便サンプルとを、約70mmの高さまで水道水(水~500cc)を入れたガラス容器(寸法86×86×90mm)内に配置した。400~700nmの範囲で約220ルーメンの強度の白色LED光を容器に照射して、容器から反射される光のスペクトログラムを標準的分光計を用いて取得した。
【0102】
太曲線は、生の便サンプルから得られたスペクトログラムであり、細曲線、血液の混じった便から得られたスペクトログラムである。グラフの拡大部分で観察されるように、血液を含むサンプルから得られるスペクトログラムは、約540nm(谷)、565nm(山)、575nm(谷)で特徴的な谷-山-谷を含む。この特徴的な形状は血液シグネチャの1例であり、この形状が血液の存在を示す。具体的には、この形状は、血液中の赤血球内に存在するオキシヘモグロビンによる光吸収を示す。
【0103】
上記の結果が示すように、血液シグネチャは、特定条件下での便サンプル内に検出することができる。さらに、上記の結果は、サンプルの全スペクトルプロファイルを解析するスペクトログラムを使用して得られた。本発明の特定の用途に当てはまるように、サンプルを画素毎に解析すれば、血液シグネチャはさらに高い感度及び特異度で検出されると予測できる。
【0104】
次に、本発明のある用途により実行された実験中、各サンプルから記録されたスペクトル成分の比を示す棒グラフである図5を参照する。図4を参照して上述した技法を用いて、複数サンプルのスペクトログラムを解析した。サンプルは以下の通りである。
1.新鮮なビート
2.新鮮な生肉
3.血液を含まない大便サンプル
4.血液を含まない第2の大便サンプル
5.ラム酒と赤い食品着色料との混合物
6.大便と0.2mlの血液とを含むサンプル。サンプルはかき混ぜていない。
7.大便と0.2mlの血液とを含むサンプル。サンプルはロッドで1回攪拌してかき混ぜた。
8.大便と0.2mlの血液とを含むサンプル。サンプルはロッドで2回攪拌してかき混ぜた。
9.大便と5滴の血液とを含むサンプル。サンプルはかき混ぜていない。
10.大便と5滴の血液とを含むサンプルサンプル。サンプルはロッドで2回攪拌してかき混ぜた。
【0105】
血液は血液バンクから入手し、クエン酸塩内で保存した。
【0106】
サンプル毎に、2つの比を算出することによって受信したスペクトログラムを解析した。比1は、575nmを中心とする10nm帯域の強度に対する565nmを中心とする10nm帯域の強度の比とした(I(565)/I(575))。比2は、540nmを中心とする10nm帯域の強度に対する565nmを中心とする10nm帯域の強度の比とした(I(565)/I(540))。実験のため、比1が1.05を超過し、比2が0.8を超過すれば、サンプルが血液を含むという表示となるように、閾値は比1で1.05、比2で0.8に設定した。これは、血液を含むサンプルが約540nm(谷)、565nm(山)、575nm(谷)で特徴的な谷-山-谷形状の血液シグネチャを有すると予測される一方、血液を含まないサンプルは、図4の曲線に示すように、スペクトログラムの傾斜が540nmと575nmとの間で上昇すると予測することができるからである。図5の棒グラフに示される結果を以下の表に要約する。
【表1】
【0107】
図5及び上記表に基づき観察されるように、概して上記比及び閾値を用いて、5つのケースのうち4つで大便中に血液が検出された。概して上記比及び閾値を用いて、血液がサンプル中に存在していなかったケースでは、後述する肉サンプル(サンプル2)を除いて血液が検出されなかった。これらの結果が示すように、本明細書に記載される技法を用いることで排泄物をスペクトル的に解析することによって、人体排泄物内の血液を検出することができる。従って、本発明のある用途の場合、530nm~785nmの範囲の波長を中心とするスペクトル帯域が検出される。典型的には、約540nm、565nm、575nmを中心とする2以上のスペクトル帯域が検出される。典型的には、スペクトル帯域は3nm超(例えば、5nm超又は8nm超)、及び/又は40nm未満(例えば、20nm未満又は12nm未満)、例えば、3~40nm、5~20nm、又は8~12nmである。ある用途の場合、上記スペクトル帯域の強度の1以上の比が判定される。例えば、約575nmを中心とする帯域の強度に対する約565nmを中心とするスペクトル帯域の強度の比(あるいはその逆)を判定することができる、及び/又は、約540nmを中心とするスペクトル帯域の強度に対する約565nmを中心とするスペクトル帯域の強度の比(あるいはその逆)を判定することができる。ある用途の場合、上記スペクトル帯域の強度間の別の関係が判定される。ある用途の場合、各スペクトル帯域の強度以外のパラメータ間の関係が判定される。
【0108】
なお、図5に示され、上の表に要約される結果は、解析されたサンプルの一部を反映している。概して、肉サンプルが解析されたときを除き、偽陽性は発生しなかった。新鮮な生肉は動物の血液が残留しており、それが水に溶け出していると予測できる。本発明のある用途によると、このような偽陽性は、上述するように、対象者が排泄する所与の時間間隔内に赤身の肉を食べたか否かなどの質問を対象者に行うことによって低減される。
【0109】
血液が固体状の大便に注入されて、水に達しなかったときに偽陰性が発見された(サンプル6のケース)。本発明のある用途によると、このような偽陰性は、本明細書に記載される技法により、便器内の大便をかき混ぜる、振動させる、及び/又は、攪拌することによって低減される。なお、実験では、便をガラス容器内に配置するときに血液を混合した。通常、人が便器に排便するとき、大便は落下して便器に衝突することで攪拌される。従って、本発明のある用途の場合、便器に配置される大便は活発に攪拌されない。また、血液とビートをサンプルとして使用したケースで偽陰性が発生した(図5には示さず)。本発明のある用途の場合、このような偽陰性は、実験中に使用するよりも強い光強度を使用することによって低減される。さらに、ある用途によると、隠れた血液が一部の排泄物内で見過ごされる場合、人体排泄物の解析をある期間にわたって実行することで、他の排泄物で検出される可能性が高い。
【0110】
次に、本発明のある用途により実行されたシミュレーションの結果を示すグラフである図6を参照する。上述するように実験で得られた(a)大便と(b)5滴の血液とのスペクトログラムを使用した。1滴のスペクトログラムをシミュレートし、使用される1滴の血液のスペクトログラムに関する信号対雑音比を向上させるため、5滴の血液のスペクトログラムを5つに分割した。シミュレーションは、人為的にスペクトルを混合させるため、例えば各量の血液と混ぜる大便の効果を生成するために実行された。次に、上記第1比と第2比とを、スペクトルフィルタの帯域幅を増やすために算出した。図6は、各帯域幅で検出可能な最小数の滴を示す図である。20nmの帯域幅までは2滴の血液が検出可能であるが、30nm以上の帯域幅では、血液を検出可能とするには最低3滴の血液が必要であることが観察された。従って、本発明のある用途の場合では、約540nm、565nm、575nmを中心とする2以上のスペクトル帯域が検出された。スペクトル帯域の幅は通常、3nm超(例えば、5nm超又は8nm)、及び/又は、40nm未満(例えば、20nm未満又は12nm)、例えば、3~40nm、5~20nm、又は8~12nmである。
【0111】
次に、本発明のある用途により実行される手順のステップを示すフローチャートである図7を示す。
【0112】
第1ステップ(ステップ80)では、図2を参照して上述したように、センサモジュール22(例えば、センサモジュールの対象者センサ40)が、対象者がトイレ又はその近傍に存在することを検出する、及び/又は、人体排泄物がトイレに排出されたことを検出する。当該検出に応じて、センサモジュールの撮像コンポーネント24は典型的には、1以上のカメラ(例えば、1以上のマルチスペクトルカメラ又は1以上のハイパースペクトルカメラ)を用いて画像を取得する(ステップ82)ことによって便器からの光を受け取る。上述するように、本発明の範囲は、任意のスペクトル帯域の放射線を受け取ることを含み、可視光範囲の放射線を受け取ることに限定されない。
【0113】
受光は、上述するように、センサモジュールのコンピュータプロセッサ44又は別のコンピュータプロセッサとすることができるコンピュータプロセッサによって解析される(例えばスペクトル的に解析される)。典型的には、530nm~785nmの範囲の波長を中心とするスペクトル帯域が検出される。さらに、典型的には、血液シグニチャスペクトル成分が検出される(ステップ84)。例えば、赤血球の成分による光吸収を示す受光内の1以上のスペクトル成分(例えば、オキシヘモグロビン)を検出することができる。上述するように、本発明のある用途の場合、約540nm、565nm、575nmを中心とする2以上のスペクトル帯域が検出される(上述したように、所与のスペクトル値を中心とするとして本明細書に記載されるスペクトル帯域は、所与の値を中心とするスペクトル帯域±5nmを含むと解釈すべきである)。ある用途の場合、検出されるスペクトル成分は、例えば、フローチャートに上述するように、各成分の強度間の比を算出することによって解析される(ステップ86)。もしくは又はさらに、スペクトル成分は別の方法で解析することもできる(ステップ86は、比の算出ステップが任意であることを示すために点線のボックス中に入れてある)。スペクトル解析に応じて、コンピュータプロセッサは血液を検出し(ステップ88)、例えば、ユーザインタフェースデバイス32に出力を生成する(ステップ90)。
【0114】
本発明の範囲は、赤血球の成分による光吸収を示すスペクトル成分、例えば、ヘモグロビン、メトヘモグロビン、及び/又はヘムを示すスペクトル成分を検出することを含む。ある用途の場合、尿及び/又は大便の光吸収を示すスペクトル成分が検出される。ある用途の場合、コンピュータプロセッサは、検出された血液が大便及び/又は尿と関連付けられる血液であり、異なるソースに由来しないことを確認するため、血液を伴う大便及び/又は尿が存在するか否かを判定する。また、本発明の範囲は、受光内の各スペクトル帯域のパラメータ(例えば、強度)間の任意の種類の関係を判定することを含み、各スペクトル帯域のパラメータ(例えば、強度)間の比を判定することに限定されない。さらに、比1及び比2が上述するように算出される用途でも、使用されていると記載される閾値は例示であり、本発明の範囲は、上述の閾値と異なる閾値を使用することを含む。例えば、較正される光センサが使用される用途では、1超及び/又は1.5未満(例えば、1~1.5)の閾値を比1(すなわち、I(565)/I(575))で使用することができ、0.7超及び/又は1未満(例えば、0.7~1)の閾値を比2(すなわち、I(565)/I(540))で使用することができる。光センサが較正されない用途では、比は異なっていてもよい。
【0115】
なお、この段階で、出力は、対象者の血液が人体排泄物内に存在する疑念を示すことができる。ある用途の場合、疑念を確認するため、上述するように、ユーザは確認の質問に対して入力するように要求される(典型的には、その答えは検出された血液のソースを示す)。コンピュータプロセッサは、確認の質問に関する対象者からの入力を受信する(ステップ92)。ユーザからの入力が、血液の検出が偽陽性ではないこと(例えば、対象者が赤身の肉を食べたことによって生じたものではないこと)を示す場合、コンピュータプロセッサは、血液事象が発生したことを記録する(ステップ94)。例えば、コンピュータプロセッサはセンサモジュールのメモリ46に事象を記録することができる。ある用途の場合、血液事象はユーザからの入力を受信せずに記録される(ステップ92)。例えば、コンピュータプロセッサは、偽陽性の尤度を長期間にわたって血液事象を監視するのに使用される閾値に組み込むことによって、異なる方法で擬陽性を説明することができる。(ステップ92は、任意であることを示すために点線のボックスに入れている)。
【0116】
典型的には、図7のステップ80~90(大きな点線ボックス内のステップ)は、対象者が人体排泄物を便器に排泄した後に、対象者又は任意の他の人物が何らかの動作を行う必要なく実行される。
【0117】
本明細書に記載される本発明の適用は、コンピュータ又は任意の命令実行システムによって、あるいは関連して使用されるプログラムコードを提供するコンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体(例えば、非一時的コンピュータ可読媒体)、例えば、コンピュータプロセッサ44、又は、ユーザインタフェースデバイス32のコンピュータプロセッサからアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形状をとることができる。本明細書の目的上、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置又はデバイスによって、あるいは関連して使用されるプログラムを備える、記憶する、通信する、伝播する、あるいは移送することのできる任意の装置とすることができる。上記媒体は、電子、磁気、光、電磁、赤外線、又は半導体システム(あるいは装置又はデバイス)、あるいは伝播媒体とすることができる。典型的には、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は非一時的コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体である。
【0118】
コンピュータ可読媒体の例は、半導体又はソリッドステートメモリ、磁気テープ、脱着可能コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、剛体磁気ディスク、光ディスクである。光ディスクの最新の例は、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD-ROM)、コンパクトディスク読取り/書込み(CD-R/W)、DVDである。ある用途の場合、クラウド記憶手段も使用される。
【0119】
プログラムコードを記憶及び/又は実行するのに適したデータ処理システムは、システムバスを通じてメモリ要素(例えば、メモリ46、又はユーザインタフェースデバイス32のメモリ)に直接的又は間接的に連結される少なくとも1つのプロセッサ(例えば、コンピュータプロセッサ44、又はユーザインタフェースデバイス32のコンピュータプロセッサ)を含む。メモリ要素は、プログラムコードの実際の実行中に採用されるローカルメモリ、大容量記憶装置、実行中に大容量記憶装置からコード検索しなければならない回数を低減するために少なくともいくつかのプログラムコードを一時的に記憶するキャッシュメモリを含むことができる。システムは、プログラム記憶デバイス上の本発明の命令を読み取り、これらの命令に従って本発明の実施形態の方法を実行することができる。
【0120】
ネットワークアダプタがプロセッサに接続されて、介在する民間又は公的ネットワークを通じてプロセッサを他のプロセッサ、遠隔プリンタ、又は記憶デバイスに接続することができる。モデム、ケーブルモデム、イーサネットカードは現在入手可能な種類のネットワークアダプタのほんの一例である。
【0121】
本発明の動作を実行するコンピュータプログラムコードは、Java、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語と、Cプログラミング言語や類似のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語とを含む1以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述することができる。
【0122】
図7に示すフローチャートのブロックとフローチャート内のブロックとの組み合わせはコンピュータプログラム命令によって実行することができると理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又はその他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供されて、コンピュータのプロセッサ(例えば、コンピュータプロセッサ44、又はユーザインタフェースデバイス32のコンピュータプロセッサ)又はその他のプログラム可能データ処理装置を介して実行される命令が、フローチャートに規定される機能/動作及び/又は本願に記載されるアルゴリズムを実行する手段を形成するようにマシンを構成する。また、これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又はその他のプログラム可能データ処理装置に特定の機能を果たすように命令することができるコンピュータ可読媒体(例えば、非一時的コンピュータ可読媒体)に記憶して、コンピュータ可読媒体に記憶される命令がフローチャートブロック及びアルゴリズムに規定される機能/動作を実行する命令手段を含む製品を構成することもできる。コンピュータプログラム命令はコンピュータ又はその他のプログラム可能データ処理装置にロードして、一連の動作ステップをコンピュータ又はその他のプログラム可能装置で実行させて、コンピュータ又はその他のプログラム可能装置で実行されるコンピュータ実行命令がフローチャートに定められる機能/動作及び/又は本願に記載されるアルゴリズムを実行するプロセスを提供することもできる。
【0123】
典型的には、コンピュータプロセッサ44及び本明細書に記載されるその他のコンピュータプロセッサは、コンピュータプログラム命令でプログラムされて、特殊用途コンピュータを形成するハードウェアデバイスである。例えば、図7を参照して説明したアルゴリズムを実行するようにプログラムされるとき、コンピュータプロセッサは典型的には、特殊用途人体排泄物解析コンピュータプロセッサである。通常、コンピュータプロセッサによって実行される本明細書に記載の動作は、使用されるメモリの技術に応じて、実際の物理的製品であるメモリの物理的状態を、異なる磁気極性や電荷等を有するように変換する。
【0124】
当業者であれば、本発明は具体的に図示し上述した実施形態に限定されないと理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及び副組み合わせのみならず、上記の説明を読んだ当業者が思いつくであろう従来技術には属さない変形及び変更を含む。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7