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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】吸収性シート及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220509BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20220509BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A61F13/15 340
A61F13/15 329
A61F13/15 352
A61F13/532 210
A61F13/533 200
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020200857
(22)【出願日】2020-12-03
(62)【分割の表示】P 2016001681の分割
【原出願日】2016-01-07
(65)【公開番号】P2021053412
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓郎
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117472(JP,A)
【文献】特開2007-130818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の不織布間に高吸水性ポリマーを挟持する、吸収性物品用吸収性シートの製造方法であって、
連続する第1の不織布に、複数の柱形状又は錐台形状の凸部を形成する工程と、
連続する第2の不織布に、前記第1の不織布の前記凸部よりも高さが低い複数の柱形状又は錐台形状の凸部を形成する工程と
記第2の不織布の前記凸部の表面に前記高吸水性ポリマーを塗布する工程と、
前記第1の不織布に形成された前記凸部の反対面から構成される凹部に前記第2の不織布の前記凸部が嵌合するように接触部を有して積層する工程と、
前記吸水性ポリマーが前記接触部の凸部寄り端部と、前記第1の不織布に形成された前記凸部の上面と前記第2の不織布に形成された前記凸部の上面との間の閉空間に局在するように、前記接触部において接着部を形成し、かつ、前記接着部の前記凸部の反対側における、柱形状又は錐台形状の前記凸部の側面に、前記第1の不織布と前記第2の不織布とが互いに接着されていない非接着部を形成する工程と、を含む、吸収性物品用吸収性シートの製造方法。
【請求項2】
少なくとも2枚の不織布間に高吸水性ポリマーを挟持する、吸収性物品用吸収性シートの製造装置であって、
連続する第1の不織布および第2の不織布を搬送する機構と、
連続する前記第1の不織布に、複数の柱形状又は錐台形状の凸部を形成する機構と、
連続する前記第2の不織布に、前記第1の不織布の前記凸部よりも高さが低い複数の柱形状又は錐台形状の凸部を形成する機構と
記第2の不織布の前記凸部の表面に前記高吸水性ポリマーを塗布する機構と、
前記第1の不織布に形成された前記凸部の反対面から構成される凹部に前記第2の不織布の前記凸部が嵌合するように接触部を有して積層する機構と、
前記吸水性ポリマーが前記接触部の凸部寄り端部と、前記第1の不織布に形成された前記凸部の上面と前記第2の不織布に形成された前記凸部の上面との間の閉空間に局在するように、前記接触部において接着部を形成し、かつ、前記接着部の前記凸部の反対側における、柱形状又は錐台形状の前記凸部の側面に、前記第1の不織布と前記第2の不織布とが互いに接着されていない非接着部を形成する機構と、を有し、
前記接着部及び前記非接着部を形成する機構は、一方の熱エンボスロールの凸部と、他方の熱エンボスロールの凹部とが、前記凸部の頂面と前記凹部の底面とが接触しないように嵌合することを特徴とする、吸収性物品用吸収性シートの製造装置。
【請求項3】
前記非接着部の接する部位において、前記熱エンボスロールの前記凸部に凹部が形成されたことを特徴とする、請求項2に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性及び体液の透過性が改善された吸収性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートの間に配置された吸収体により構成されており、この吸収性物品は、想定される使用状況における体液の排出量に応じて、様々な吸収量のものが存在する。吸収性物品の吸収量を改善するためには、例えば、吸収体に含まれるフラッフパルプ等の吸水性繊維や、高吸水性ポリマーの含有量を増加させる手法や、吸収体に積層して吸収性シートを配置する方法が一般に知られている。
【0003】
吸収性物品の吸収量を改善するため等に用いられる吸収性シートとして、例えば、特許文献1には、一方の面に接着剤が塗布された第1の不織布と、第1の不織布の一方の面と対向する面に接触式で接着剤が塗布された第2の不織布と、互いに離れた複数の領域に配置され、第1の不織布及び第2の不織布に挟まれて第1の不織布及び第2の不織布に接着されるとともに、幅方向の両側において第1の不織布と第2の不織布が互いに接着される高吸水性ポリマーと、を備える吸収性シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-158676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸収性物品に対して、従来の吸収性シートを配置した場合、吸水した吸収性シートが蒸気の流通を遮断してしまうため、吸収性物品全体の通気性が低下してしまうという問題があった。また、吸収性シートが一度吸水すると、その後に体液が排出されても、吸水した吸収性シートが体液の流通をも遮断し、吸収性シートの衣類側に存在する吸収体によって排出された体液を吸収できないという問題があった。特許文献1の発明についても、吸収性シート上に非連続的に高吸水性ポリマーが配置されているものの、第1の不織布に形成される凸部の全体に高吸水性ポリマーが充填されるとともに、第1の不織布の凸部以外の部位は、接着剤により、第2の不織布と接着されているので、高吸水性ポリマーが体液を吸収した場合には、依然として、蒸気や体液の透過性が低下してしまう問題があった。したがって、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、体液を吸収した状態においても通気性や体液の透過性が良好である吸収性シート、及びこれを使用した吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、所定の柱形状又は錐台形状の凸部を有する第1の不織布及び第2の不織布の間に、高吸水性ポリマーが挟持された吸収性シートであって、第1の不織布と第2の不織布の接合面の一部に、第1の不織布と第2の不織布が互いに接着されていない非接着部を有する吸収性シートによれば、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1)本発明の第1の態様は、少なくとも2枚の不織布間に高吸水性ポリマーを挟持する、吸収性物品用吸収性シートの製造方法であって、連続する第1の不織布に、複数の柱形状又は錐台形状の凸部を形成する工程と、連続する第2の不織布に、前記第1の不織布の前記凸部よりも高さが低い複数の柱形状又は錐台形状の凸部を形成する工程と、前記第1の不織布の前記凸部と前記第2の不織布の前記凸部との間に前記高吸水性ポリマーを添加する工程と、前記第1の不織布に形成された前記凸部の反対面から構成される凹部に前記第2の不織布の前記凸部が嵌合するように接触部を有して積層する工程と、前記吸水性ポリマーが前記第1の不織布の前記凸部と前記第2の不織布の前記凸部との間の閉空間に局在するように、前記接触部において接着部を形成する工程と、を含む、吸収性物品用吸収性シートの製造方法である。
【0008】
(2)本発明の第2の態様は、少なくとも2枚の不織布間に高吸水性ポリマーを挟持する、吸収性物品用吸収性シートの製造装置であって、連続する第1の不織布および第2の不織布を搬送する機構と、連続する前記第1の不織布に、複数の柱形状又は錐台形状の凸部を形成する機構と、連続する前記第2の不織布に、前記第1の不織布の前記凸部よりも高さが低い複数の柱形状又は錐台形状の凸部を形成する機構と、前記第1の不織布の前記凸部と前記第2の不織布の前記凸部との間に前記高吸水性ポリマーを添加する機構と、前記第1の不織布に形成された前記凸部の反対面から構成される凹部に前記第2の不織布の前記凸部が嵌合するように接触部を有して積層する機構と、前記吸水性ポリマーが前記第1の不織布の前記凸部と前記第2の不織布の前記凸部との間の閉空間に局在するように、前記接触部において接着部を形成する機構と、を有し、前記接着部を形成する機構は、一方の熱エンボスロールの凸部と、他方の熱エンボスロールの凹部とが、前記凸部の頂面と前記凹部の底面とが接触しないように嵌合することを特徴とする、吸収性物品用吸収性シートの製造装置である。
【0009】
(3)本発明の第3の態様は、(2)に記載の製造装置であって、前記熱エンボスロールの前記凸部に凹部が形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性シートは、第1の不織布及び第2の不織布が柱形状又は錐台形状の凸部を有し、この2つの凸部に挟まれる形で、第1の不織布と第2の不織布の間に高吸水性ポリマーが挟持される。このため、第1の不織布及び第2の不織布の柱又は錐台の側面には、高吸水性ポリマーが存在しない部位が存在することとなり、高吸水性ポリマーが体液を吸収した後においても吸水した高吸水性ポリマーにより蒸気や体液が遮断されることがない。また、この柱又は錐台の側面には、第1の不織布と第2の不織布とが互いに接着されていない非接着部を有するので、この部位を蒸気や体液が効率的に透過することができる。これらの構成により、吸収性シート全体としての蒸気や体液の透過性が十分に担保される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】吸収性シートの表面斜視図である。
図2図1におけるx-x断面図を示す図面である。
図3】吸収性シートに第3の不織布を具備させる態様を示す図面である。
図4】(a)吸収性シートの製造方法の一態様、(b)熱エンボスロール上の凸部及び凹部を示す図面である。
図5】吸収性シートの使用時の態様を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<吸収性シート>
図1は、本発明の吸収性シート1の表面斜視図であり、図2は、図1におけるx-x断面図を示す図面である。本発明の吸収性シート1は、第1の不織布2及び第2の不織布3に、高吸水性ポリマー6が挟持されたものである。
【0014】
[第1の不織布、第2の不織布]
第1の不織布2及び第2の不織布3は、複数の柱形状又は錐台形状の凸部5を有しており、第1の不織布2及び第2の不織布3のそれぞれにおいて、この凸部5が、縦方向及び横方向に連続して形成されている。第1の不織布2及び第2の不織布3が形成する平面上において、連続する凸部5は、第1の不織布2及び第2の不織布3上の、互いに対応する位置に形成されており、第1の不織布2と第2の不織布3とを互いに積層させたとき、第1の不織布2に形成された凸部5の反対面から構成される凹部に、第2の不織布3の凸部5が、嵌合できるようになっている。ここで、第1の不織布2に形成された凸部5の高さは、第2の不織布3に形成された凸部5の高さよりも高くなっており、例えば、第1の不織布2と第2の不織布3とを積層させた際に、第1の不織布2及び第2の不織布3それぞれの凸部5の上面のみが互いに接触せず、第1の不織布2の凸部5の上面と第2の不織布3の凸部5の上面との間に空隙が形成されるようになっている。第1の不織布2と第2の不織布3との間に高吸水性ポリマー6が挟持される際には、この空隙に高吸水性ポリマー6が局在する。
【0015】
図5に示すように、第1の不織布2と第2の不織布3とが、柱形状又は錐台形状を有する凸部5を有することにより、吸収性シート1が立体形状を有するものとなり、立体上の一部の領域に高吸水性ポリマー6が局在することになるので、高吸水性ポリマー6が体液を吸収した後においても、通気性や体液の透過性が十分に確保される。
【0016】
第1の不織布2及び第2の不織布3に形成される凸部5の形状及び配置は、第1の不織布2と第2の不織布3との凸部5が互いに嵌合可能なものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、円錐台、角錐台、円柱、角柱のほか、長尺の屈曲した又は屈曲していない底面を有する錐台又は柱とすることもできる。また、凸部5が円錐台、角錐台、円柱、角柱である場合、凸部5の配列は、各凸部が並行する縦方向の直線とそれと直行して並行する横方向の直線との交点に設けられていてもよく、並行する縦方向の直線とそれと斜交して並行する横方向の直線との交点に設けられていてもよく、並行する斜線上に交互に設けられていてもよい。
【0017】
第1の不織布2及び第2の不織布3としては、スパンボンド不織布、エアースルー不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、サーマルボンド不織布等の不織布から、適宜選択して用いることができるが、これらの中でも通気性及び体液の透過性の観点から、スパンボンド不織布及びエアースルー不織布を用いることが好ましい。第1の不織布2及び第2の不織布3の坪量は、10g/m以上100g/m以下であることが好ましく、15g/m以上90g/m以下であることがより好ましい。
【0018】
[非接着部]
第1の不織布2及び第2の不織布3は、これらが互いに接する接触部において、例えば、熱エンボス加工や超音波接着等の公知の手法により接着されているものの、柱形状又は錐台形状の凸部5の側面においては、第1の不織布2と第2の不織布3とが互いに接着されていない非接着部7を有する。柱形状又は錐台形状の凸部5の側面に非接着部7を形成することにより、この部分を通じて蒸気や体液を透過させることができ、吸収性シート1における通気性や体液の透過性を十分に確保することができる。非接着部7は、凸部5の側面上、帯状に形成されていることが好ましい。これにより、吸収性シート1の広い領域に対して、非接着部7をより均一に配置することができ、吸収性シート1を全体的に、通気性及び体液の透過性が改善されたものとすることができるとともに、第1の不織布2と第2の不織布3の一部の領域について接着性が低下することもない。
【0019】
非接着部7の面積は、凸部5の側面面積の5%以上95%以下であることが好ましく、10%以上90%以下であることがより好ましい。非接着部7の面積を上記の範囲内のものとすることにより、吸収性シート1の通気性、体液の透過性と、第1の不織布2及び第2の不織布3の間の接着性とのバランスを良好に維持することができる。
【0020】
なお、非接着部7は、凸部5の上面及び下面を含まないことが好ましく、これにより、非接着部7が上下の接触部に挟まれた構成となるが、本発明における非接着部7の態様は、このような態様に限定されず、例えば、非接着部7が凸部5の上面及び下面のいずれか一方に及んでいてもよい。この場合、非接着部7の上面側のみ又は下面側のみに接触部が形成されることとなるが、これにより高吸水性ポリマー6の固定が緩くなる一方で、吸収性シート1の風合いがより柔らかなものとなる。
【0021】
[高吸水性ポリマー]
本発明の吸収性シート1は、第1の不織布2及び第2の不織布3の間に、高吸水性ポリマー6(Super Absorbent Polymer;以下、SAPとも称する)を挟持している。SAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、といった材料から形成されたものを挙げることができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系を使用することが好ましい。吸収性シート1におけるSAPの坪量は、吸収性能及び肌触りを良好なものとする観点から、50g/m以上500g/m以下とすることが好ましい。
【0022】
[第3の不織布]
本発明の吸収性シート1においては、第1の不織布2に対して、更に第3の不織布4が積層されて、第1の不織布2及び第3の不織布4の間に、高吸水性ポリマー6が挟持されていることが好ましい。ここで、第3の不織布4は、柱形状又は錐台形状の凸部5を有するとともに、第3の不織布4上の凸部5の位置は、第1の不織布2上の凸部5の位置と対応しており、第1の不織布2と第3の不織布4とを積層した際に、第3の不織布4の凸部5が、第1の不織布2の凸部5の反対面で構成される凹部に嵌合できるようになっている。ここで、第3の不織布4に形成される凸部5の高さは、第1の不織布2に形成された凸部5の高さよりも低くなっており、高吸水性ポリマー6が、第1の不織布2上の凸部5の形成されていない面と、第3の不織布4上の凸部5の形成されていない面の間の空間に局在している。吸収性シート1が第3の不織布4を有し、第1の不織布及び第3の不織布4の間に高吸水性ポリマー6を挟持させることにより、吸収性シート1の通気性、体液の透過性を十分に確保しつつも、吸収性シート1の吸水量を向上させることができる。なお、この際、第1の不織布2と第2の不織布3の間に挟持される高吸水性ポリマー6の吸収速度を、第1の不織布2と第3の不織布4の間に挟持される高吸水性ポリマー6の吸収速度と異なるものとしてもよい。この場合、衣類側に配置される高吸水性ポリマー6の吸収速度を、身体側に配置される高吸水性ポリマー6の吸収速度よりも速いものとしてもよいし、衣類側に配置される高吸水性ポリマー6の吸収速度を、身体側に配置される高吸水性ポリマー6の吸収速度よりも遅いものとしてもよいが、例えば、衣類側に配置される高吸水性ポリマー6の吸収速度を、身体側に配置される高吸水性ポリマー6の吸収速度よりも速いものとすることにより、体液をより迅速に吸収することができる。
【0023】
第1の不織布2及び第3の不織布4は、第1の不織布2及び第2の不織布3が互いに接着されていない非接着部において、互いに接着されていない非接着部7を形成している。これにより、吸収性シート1の通気性及び体液の透過性を十分に確保することができる。
【0024】
[吸収性シートの製造方法]
図4は、本発明の吸収性シート1の製造方法の一態様を示す図面である。本発明の吸収性シート1を製造するにあたっては、図4(a)に示すように、第2の不織布3を、凸部11を有する熱エンボスロール8で巻き取りながら、SAP散布装置10で凸部11の表面に高吸水性ポリマー6を塗布し、次いで、第1の不織布2とともに、熱エンボス加工を施すことにより、製造することができる。この際、図4(b)に示すように一方の熱エンボスロール8の凸部11と、他方の熱エンボスロール9の凹部12とが、凸部11の頂面と凹部12の底面とが接触しないように嵌合することにより、第1の不織布2の凸部5の高さが、第2の不織布3の凸部5の高さよりも高くなるようにエンボスパターンを形成することができる。そして、第1の不織布2と第2の不織布3とを熱エンボス加工する際に、非接着部7の接する部位においては、熱エンボスロール8の凸部11に凹部13を形成し、第1の不織布2及び第2の不織布3が熱エンボスロール8に接触しないようにすればよい。
【0025】
<吸収性物品>
本発明は、上記の吸収性シート1を使用した吸収性物品にも関する。吸収性物品は、身体側表面側に配された液透過性のトップシート、及びトップシートに対向して配置された液不透過性のバックシートを有し、トップシートとバックシートとの間に、トップシート側からバックシート側に向かって、上記の吸収性シート1及び吸収体が配置されている。吸収性シート1の下層に吸収体を設けることにより、吸収性シート1で吸収しきれなかった体液を、吸収体で吸収させることができる。
【0026】
[トップシート]
トップシートは、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた基材を用いればよく、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシートは、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施すことが好ましく、エンボス加工や穿孔加工は、従来公知の方法により実施することができる。さらに、トップシートの肌への刺激を低減させるために、トップシートにローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させることも好ましい。トップシートの坪量は、強度及び加工性の観点から、14g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシートの形状は、特に制限されるものではないが、体液を漏れがないように吸収体へと誘導するため、吸収体を覆う形状であればよい。
【0027】
[吸収体]
吸収体は、体液を吸収、保持するものであり、例えば、フラッフパルプや高吸水性ポリマーを含有している。吸収体の基材となる吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。また、吸収体の基材の坪量は、吸収性能及び肌触りを良好なものとするため、100g/m以上800g/m以下とすることが好ましい。
【0028】
吸収体のSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、といった材料から形成されたものを挙げることができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系を使用することが好ましい。吸収体のSAPの坪量は、吸収性能及び肌触りを良好なものとする観点から、50g/m以上500g/m以下とすることが好ましい。
【0029】
吸収体は、基材とSAPとを含有するものが好ましく、その構成は、基材中にSAP粒子を混合して形成したものが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体の形状安定化の観点から、吸収体をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。吸収体がキャリアシートを複数備える場合には、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0030】
吸収体の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、砂時計状、I字状等を挙げることができる。吸収体は、2層以上を重ねて用いてもよい。
【0031】
[バックシート]
バックシートは、吸収体が保持している体液が衣類を濡らすことを防止できるような液不透過性を備えた基材を用いればよく、例えば、ポリエチレンシートを用いることができる。バックシートの坪量は、強度及び加工性の観点から、10g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシートは、通気性を持たせることが好ましい。バックシートに通気性を備えさせるためには、例えば、ポリエチレンフィルムにフィラーを配合したり、バックシートにエンボス加工を施したりすればよい。ここで、フィラーとしては、炭酸カルシウムを挙げることができ、その加工方法としては、公知の方法を制限なく利用することができる。
【0032】
さらに、吸収性物品は、着用者のフィット性を向上させるために、立体ギャザー用弾性部材を有する立体ギャザー、レッグギャザー用弾性部材を有するレッグギャザー、ウエストギャザー用弾性部材を有するウエストギャザーを備えていてもよい。レッグギャザー、ウエストギャザーを有することにより、吸収性物品の脚部開口部、胴部に伸縮性を持たせて、着用時のフィット感を高めて体液が外部に漏れ出ることを防止し、立体ギャザーを有することにより横漏れを防止する。
【0033】
[吸収性物品の製造方法]
吸収性物品の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、トップシートとバックシートとの間に吸収体及び吸収性シートを挟持し、さらに、必要に応じて、サイドフラップ、サイドパネル、ファスニングテープ、立体ギャザー等を、トップシートとバックシートとを一部あるいは全周にわたってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。
【0034】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 吸収性シート
2 第1の不織布
3 第2の不織布
4 第3の不織布
5 凸部
6 高吸水性ポリマー
7 非接着部
8 熱エンボスロール
9 熱エンボスロール
10 SAP散布装置
11 (熱エンボスロール上の)凸部
12 (熱エンボスロール上の)凹部
13 (凸部上の)凹部
図1
図2
図3
図4
図5