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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】受信デバイス、伝送システム、自動車
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20220509BHJP
   H04L 7/033 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H04L25/02 302B
H04L25/02 V
H04L7/033
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020512200
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013562
(87)【国際公開番号】W WO2019194066
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018073908
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小宮 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】中村 健哉
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-212771(JP,A)
【文献】特開2009-159256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04L 7/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路と接続される入力ピンと、
前記入力ピンに入力される入力信号を受けるレシーバ回路と、
前記レシーバ回路が出力する内部信号をラッチするラッチ回路と、
前記内部信号をサンプリングし、前記内部信号のアイパターンに関する評価データを生成する評価回路と、
前記アイパターンを時間を第1軸、振幅を第2軸とするマトリクスとして記述する前記評価データを記録するメモリと、
を備え、前記評価データを外部に提供可能に構成され、
前記評価回路は、
サンプリングタイミングを指示するストローブ信号を生成するタイミング発生器と、
前記ストローブ信号に応答して、前記内部信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
前記A/Dコンバータが生成する前記デジタル信号にもとづいて、前記メモリに格納される前記マトリクスの要素をマーキングするマッピング回路と、
を備えることを特徴とする受信デバイス。
【請求項2】
前記ストローブ信号は、前記内部信号の整数倍の周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の受信デバイス。
【請求項3】
前記ストローブ信号は、前記内部信号の整数倍の周波数を有し、
前記タイミング発生器は、前記ストローブ信号の位相を、所定の時間区間毎にシフトさせることを特徴とする請求項1または2に記載の受信デバイス。
【請求項4】
前記A/Dコンバータは複数であり、
前記タイミング発生器は、複数の前記A/Dコンバータそれぞれに、位相が互いにシフトした前記ストローブ信号を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の受信デバイス。
【請求項5】
前記タイミング発生器は、外部からの基準クロックを逓倍して前記ストローブ信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の受信デバイス。
【請求項6】
前記タイミング発生器は、前記入力信号に埋め込まれている基準クロックを逓倍して前記ストローブ信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の受信デバイス。
【請求項7】
前記メモリと接続されるインタフェース回路をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の受信デバイス。
【請求項8】
前記入力ピンを介して前記伝送路とカップリングされ、制御信号を含むシリアルデータに応じて前記伝送路を駆動するドライバをさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の受信デバイス。
【請求項9】
前記入力信号および前記内部信号は、差動信号であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の受信デバイス。
【請求項10】
送信デバイスと、
前記送信デバイスと伝送路を介してカップリングされる請求項1からのいずれかに記載の受信デバイスと、
を備えることを特徴とする伝送システム。
【請求項11】
少なくともひとつのカメラと、
前記カメラからの画像を伝送する請求項10に記載の伝送システムと、
を備えることを特徴とする自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体デバイス間で、データを高速伝送するために、差動シリアルインタフェースが広く用いられる。特に、CDR(Clock Data Recovery)方式を採用するクロックレス伝送では、シリアルデータにクロックを埋め込んで伝送することにより、単一の差動ラインを利用して、データを高速伝送可能である。
【0003】
このような差動シリアルインタフェースの用途は広がりを見せており、たとえば自動車における車載機器間のデータ伝送にも、差動シリアルインタフェースが用いられる。特許文献1には、1本の伝送路で、双方向伝送可能なAC結合のインタフェースが開示される。
【0004】
図1は、差動伝送システムの基本構成を示す図である。差動伝送システム1Rは、送信デバイス10、受信デバイス20および差動伝送路2を備える。差動伝送路2の長さが長くなると、差動伝送路2の寄生抵抗や寄生容量が形成するローパスフィルタの影響が無視できなくなり、伝送されるシリアル信号の高周波成分が減衰する。そのため、受信側において観測される波形の歪みが顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2008/099523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
設計段階において差動伝送システム1Rの設計者は、十分な回線品質を担保するために、受信デバイス20側における受信波形を測定したい場合がある。たとえば伝送路における波形歪みの問題を解決するために、トランスミッタ側にプリエンファシス回路やデエンファシス回路が導入される。プリエンファシス回路は、伝送路において減衰する高周波成分を、トランスミッタ側で予め強調するものであり、デエンファシス回路は、伝送路において相対的に減衰しにくい低調波成分を、トランスミッタ側で予め減衰させる。プリエンファシス回路やデエンファシス回路のパラメータの最適化に、レシーバ回路における波形測定は有効である。
【0007】
図2は、波形測定に対応した受信デバイス20のブロック図である。受信デバイス20は、差動入力ピンINP,INNに、送信デバイス10からの差動信号を受ける。受信回路22は、完全差動型のアンプ(バッファ)を含み、差動入力ピンINP,INNに入力される差動シリアル信号を受信する。ラッチ回路24は、受信回路が出力信号する内部差動信号INTP,INTNをシングルエンドの受信信号に変換し、クロック信号と同期してラッチする。
【0008】
CDR(Clock Data Recovery)方式では、多相クロックMCLKを用いて受信信号をラッチし、各相でラッチされた受信信号の中から、最適なひとつが選択され、後段のシリアルパラレル変換器26によりパラレルデータに変換される。
【0009】
受信波形の測定に関連して、受信デバイス20には、波形測定用のモニタピンMONP,MONNが設けられる。モニタピンMONP,MONNには、波形測定器4が接続される。完全差動形の出力バッファ28は、内部差動信号INTP,INTNを受け、モニタピンMONP,MONNを介して波形測定器4に出力する。
【0010】
図2の受信デバイス20を用いることにより、設計者は、波形測定器4を利用して、アイパターン(波形)や、その開口率を評価することが可能となる。しかしながら、受信デバイス20のピン数が増加するという問題がある。また波形評価時に、高価な波形測定器4が必要となる。
【0011】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、簡易に波形評価が可能なレシーバ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、受信デバイスに関する。受信デバイスは、伝送路と接続される入力ピンと、入力ピンに入力される入力信号を受けるレシーバ回路と、レシーバ回路が出力する内部信号をラッチするラッチ回路と、内部信号をサンプリングし、内部信号の波形に関する評価データを生成する評価回路と、を備え、評価データを外部に提供可能に構成される。
【0013】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のある態様によれば、簡易に波形評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】差動伝送システムの基本構成を示す図である。
図2】波形測定に対応した受信デバイスのブロック図である。
図3】実施の形態に係るレシーバ回路を備える差動伝送システムのブロック図である。
図4】アイパターンの一例を示す図である。
図5図5(a)、(b)は、評価データDEVALの一例を説明する図である。
図6】評価回路の構成例を示す回路図である。
図7図7(a)~(c)は、評価回路の第1~第3動作例を説明するタイムチャートである。
図8】評価回路の別の構成例を示す回路図である。
図9】双方向伝送システムのブロック図である。
図10図9の双方向伝送システムを備える画像処理システムのブロック図である。
図11図10の画像処理システムを備える自動車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、受信デバイスに関する。受信デバイスは、伝送路と接続される入力ピンと、入力ピンに入力される入力信号を受けるレシーバ回路と、レシーバ回路が出力する内部信号をラッチするラッチ回路と、内部信号をサンプリングし、内部信号の波形に関する評価データを生成する評価回路と、を備え、評価データを外部に提供可能に構成される。波形の評価に必要なハードウェアの一部を受信デバイスに実装することにより、簡易に波形評価が可能となる。
【0017】
評価データは、内部信号のアイパターン(アイダイアグラム)を示してもよい。アイパターンを生成することで、その目の開口率や幅から伝送路における歪、帯域幅、ノイズの影響を評価することができる。
【0018】
アイパターンは、内部信号が通過するプロットを第1値、通過しないプロットを第2値として表示してもよい。これにより評価データのサイズを圧縮できる。
【0019】
受信デバイスは、評価回路によるサンプリングタイミングを指示するストローブ信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路をさらに備えてもよい。
【0020】
受信デバイスは、PLL回路の基準クロックを外部から入力可能に構成されてもよい。
【0021】
PLL回路の基準クロックは、入力信号に埋め込まれていてもよい。
【0022】
評価回路は、A/Dコンバータを含んでもよい。
【0023】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図3は、実施の形態に係るレシーバ回路600を備える差動伝送システム1のブロック図である。差動伝送システム1は、送信デバイス10、受信デバイス600および差動伝送路2を備える。
【0027】
送信デバイス10は、差動伝送路2を介して受信デバイス600に差動シリアルデータを送信する。
【0028】
受信デバイス600は、シリアルデータの受信に関連して、差動入力ピンINP/INN、レシーバ回路602、ラッチ回路604、シリアルパラレル変換器606、内部回路608を備える。差動入力ピンINP/INNは、差動伝送路2と接続される。
【0029】
レシーバ回路602は、差動入力ピンINP/INNに入力される差動入力信号を受け、内部差動信号INTP/INTNを生成する。レシーバ回路602は差動バッファであってもよいし、差動イコライザ回路であってもよい。
【0030】
ラッチ回路604は、差動入力のラッチ型コンパレータであり、内部差動信号INTP/INTNを受け、それらの差分(INTP-INTN)をハイ(1)/ロー(0)の2値化し、シリアルクロックCKsと同期してラッチし、シリアルデータDsに変換する。シリアルクロックCKsは、差動入力信号とともに送信デバイス10から供給されてもよい。あるいはシリアルクロックCKsは、差動入力信号INP/INNに埋め込まれてもよく(CDR方式)、この場合、受信デバイス600にはCDR回路が設けられる。シリアルパラレル変換器606はシリアルデータDsをパラレルデータDpに変換し、受信デバイス600の内部回路608に供給する。
【0031】
受信デバイス600は、波形評価に関連して、評価回路610、メモリ620、インタフェース回路622を備える。評価回路610は、レシーバ回路602から出力される内部差動信号INTP/INTNをサンプリングし、内部差動信号INTP/INTNの波形に関する評価データDEVALを生成する。受信デバイス600は、評価データDEVALを外部に提供可能に構成される。
【0032】
メモリ620は、評価データDEVALを格納するレジスタである。メモリ620は、インタフェース回路622と接続されており、外部回路6からアクセス可能となっている。インタフェース回路622には、IC(Inter IC)インタフェースやSPI(Serial Peripheral Interface)などを用いることができる。なお外部回路6は、差動伝送システム1の設計段階においてのみ接続してもよい。
【0033】
以上が受信デバイス600の構成である。続いてその動作を説明する。
【0034】
<通常の動作時>
評価回路610は無効化され(ディセーブル)、レシーバ回路602の出力である内部差動信号INTP/INTNは、ラッチ回路604に入力され、パラレルデータDpが内部回路608に供給される。
【0035】
<差動伝送システム1の評価>
差動伝送システム1の設計評価時において、評価回路610が有効化される(イネーブル)。送信デバイス10から受信デバイス600には、差動シリアルデータのテストパターンが伝送される。テストパターンはさまざまな遷移のパターンを含むよう生成され、たとえば擬似ランダム信号(PRBS:Pseudo Random Binary Sequence)を用いることができる。
【0036】
評価回路610は、テストパターンの波形に関する評価データDEVALを生成し、メモリ620に格納する。テストが終了後、外部回路6はメモリ620にアクセスし、評価データDEVALを読み出す。
【0037】
以上が受信デバイス600の動作である。この受信デバイス600によれば、波形の評価に必要なハードウェアの一部を受信デバイスに実装することにより、簡易に波形評価が可能となる。すなわち図2のように高価な測定器4が不要となる。
【0038】
また図3の受信デバイス600によれば、図2の受信デバイス20と比べて波形出力用のモニタピンMONP/MONNは不要となり、チップ面積あるいはパッケージ面積を削減できる。一方、多くの受信デバイス600はICインタフェースを備えており、それらを流用することで、図3のインタフェース回路622およびそれに付随するピン(SDA、SCL)は、回路面積を増加させない。
【0039】
続いて、評価データについて説明する。
好ましくは評価データDEVALは、内部差動信号INTのアイパターンを示す。図4は、アイパターンの一例を示す図である。アイパターンは、内部差動信号INTP/INTNの波形の遷移を多数サンプリングし、重ね合わせたものである。図4の例では、連続する2個のデータシンボルの波形を重ねている。
【0040】
図5(a)、(b)は、評価データDEVALの一例を説明する図である。図5(a)のアイパターンには、複数の遷移に対応する複数の波形が含まれる。評価回路610は、複数の波形それぞれを時間軸方向のM個(ここではM=8)の異なるタイミングt~tでサンプリングし、デジタイズしてもよい。各波形は、振幅方向にはNビット(2階調)で量子化される。このとき、図5(b)に示すように、時間軸方向を列、振幅方向を行とするM×2(この例では8×8)のマトリクスを考えることができる。評価回路610は、マトリクスのうち、波形が通過した要素に第1値(たとえば値1)をマークし、いずれの波形も通過しない要素に第2値(たとえば値0)をマークする。すべての波形についてマークすることにより、評価データDEVALを得ることができる。
【0041】
時間軸方向の分解能M(サンプリング周波数)は、シリアルデータの周波数fsの4倍~32倍程度であってもよいまた振幅方向の分解能Nは3~8ビット程度であってもよい。
【0042】
この評価データDEVALのデータ量は、M×2ビットでよいため、メモリ620のサイズを小さくできるという利点がある。
【0043】
図6は、評価回路610の構成例を示す回路図である。評価回路610は、A/Dコンバータ612、タイミング発生器614、マッピング回路616を含む。A/Dコンバータ612は、差動入力を有し、ストローブ信号STRBに応じたタイミングで内部差動信号INTP/INTNをデジタル値に変換する。タイミング発生器614は、A/Dコンバータ612によるサンプリングタイミングを指示するストローブ信号STRBを生成する。タイミング発生器614は、受信デバイス600の外部から与えられる基準クロックCKREFを逓倍し、ストローブ信号STRBを生成するPLL回路を含んでもよい。あるいはタイミング発生器614は、差動入力ピンINP/INNに入力される差動入力信号(シリアルデータ)に埋め込まれるクロックを抽出し、当該クロックを逓倍してストローブ信号STRBを生成してもよい。
【0044】
マッピング回路616は、A/Dコンバータ612が生成するデジタル値にもとづいて、メモリ620に格納される図5(b)の評価データDEVALのマトリクスMTRXの要素をマーキングする。たとえばマトリクスの要素の初期値をゼロとする。サンプリングタイミングt(i=1,2,…M)において、デジタル値がX(X=1,…,2)であるとき、要素(i,X)に1をマークする。これを繰り返すことにより、評価データDEVALが生成される。
【0045】
図7(a)は、評価回路610の第1動作例を説明するタイムチャートである。A/Dコンバータ612の最大動作周波数が、内部差動信号INTP/INTNの周波数より十分に高い場合、ストローブ信号STRBの周波数をfs×M(図7(a)ではM=4)としてもよい。
【0046】
図7(b)は、評価回路610の第2動作例を説明するタイムチャートである。A/Dコンバータ612の最大動作周波数が、内部差動信号INTP/INTNの周波数と同程度の場合、ストローブ信号STRBの周波数をfs(図7(b)ではM=8)としてもよい。このストローブ信号STRBの位相をt,t,・・・tとシフトさせることにより、評価データDEVALを生成できる。
【0047】
図7(c)は、評価回路610の第3動作例を説明するタイムチャートである。評価回路610は、並列に動作する複数(ここでは2個)のA/Dコンバータを備えてもよい。この場合、第1のA/Dコンバータによって、時刻t(i=1,2,…)の波形を、第2のA/Dコンバータによって、時刻t(j=1,2,…、ただしj≠i)の波形をサンプリングする動作を繰り返してもよい。この動作を、i,jをシフトさせながら繰り返すことにより、評価データDEVALを生成できる。
【0048】
図8は、評価回路610の別の構成例を示す回路図である。タイミング発生器632は、位相が制御可能なストローブ信号STRBを生成する。タイミング発生器632は、PLL回路で構成してもよいし、CDR回路であってもよい。たとえばタイミング発生器632は、多相クロックを生成し、マルチプレクサによって選択した相を、ストローブ信号STRBとして出力してもよい。
【0049】
ラッチ回路630は、差動入力のラッチ型コンパレータであり、ストローブ信号STRBのタイミングで、内部差動信号INTP/INTNの状態をラッチし、シリアルデータDを生成する。ラッチ回路630は、ラッチ回路604と兼用されてもよいし、ラッチ回路604とは別個に設けられてもよい。
【0050】
パターン発生器636は、受信デバイス600が受信するシリアル信号の期待値DEXPを含む期待値パターンを生成する。デジタルコンパレータ634は、ラッチ回路630によりラッチされたシリアルデータDと期待値データDEXPをビット毎に比較し、パス、フェイルを示す判定データDを生成する。タイミング発生器632が生成するストローブ信号STRBのタイミングを、図5(a)に示すように時間軸方向にt,t,…,tとシフトさせていくと、アイ開口のセンターから外れるに従い、フェイルの割合が増大していく。データ処理部638は、ストローブ信号STRBのタイミングと、フェイルの割合(あるいはパスの割合)の関係を評価データDEVALとして出力してもよい。この評価データDEVALは、時間軸方向の開口率すなわちタイミングマージンを示す。
【0051】
D/Aコンバータ646は、制御コードCODEに応じたしきい値電圧VTHを生成する。コンパレータ640、642はそれぞれ、内部差動信号INTP,INTNを、ストローブ信号STRBが示すタイミングで、しきい値電圧VTHと比較する。たとえばストローブ信号STRBのタイミングを、シンボルのセンター(tあるいはt)に固定して、制御コードCODEすなわちしきい値電圧VTHを変化させることにより、振幅方向の開口率を検出することができる。この開口率を、評価データDEVALとしてもよい。
【0052】
あるいは、しきい値電圧VTHとストローブ信号STRBのタイミングをマトリクス的に変化させれば、図5(b)に示す評価データDEVALを生成することができる。
【0053】
続いて受信デバイス600の用途を説明する。
【0054】
<双方向伝送システム100の構成>
図9は、双方向伝送システム100のブロック図である。双方向伝送システム100は、差動伝送路102を介して接続される第1回路200および第2回路300を備える。第1回路200は、差動伝送路102の対応する一端と、キャパシタC1P/C1Nを介して結合され、第2回路300は、差動伝送路102の対応する一端と、キャパシタC2P/C2Nを介して結合される。
【0055】
第1回路200と第2回路300は、双方向にシリアル伝送可能であるが、第1回路200から第2回路300への伝送レートと、第2回路300から第1回路200への伝送レートと、は異なっていてよい。たとえば第1回路200から第2回路300へは、画像データなどの大容量データを数Gbpsで伝送し、第2回路300から第1回路200へは、第1回路200あるいは第1回路200に接続される他の回路を制御するためのデータが、数十Mbpsで伝送される。
【0056】
<第1回路200の構成>
第1回路200は、第1ドライバ202、第1レシーバ204、コントローラ206、パラレルシリアル変換器210、シリアルパラレル変換器212を備える。
【0057】
第1回路200の内部(あるいは外部)において、第2回路300に送信すべき第1パラレルデータD1PTXが生成される。第1パラレルデータD1PTXの内容は特に限定されず、画像データやオーディオデータ、あるいはその他のデータを含みうる。パラレルシリアル変換器210は、第1パラレルデータD1PTXを第1シリアルデータD1STXに変換する。第1ドライバ202は、差動伝送路102の一端とキャパシタを介してACカップリングされ、第1シリアルデータD1STXに応じて差動伝送路102を駆動する。かくして第1シリアルデータD1Sが、第1回路200から第2回路300に送信される。
【0058】
また、第2回路300から第1回路200へは、第2シリアルデータD2Sが送信される。第1レシーバ204は、差動伝送路102の一端とカップリングされ、第2回路300から送信された第2シリアルデータD2Sを受信する。
【0059】
コントローラ206は、第2シリアルデータD2Sに含まれる制御信号CTRLにもとづいて、第1回路200の状態、あるいは第1回路200に接続される外部の回路を制御する。具体的には、受信した第2シリアルデータD2SRXは、シリアルパラレル変換器212によって第2パラレルデータD2PRXに変換され、第2パラレルデータD2PRXから制御信号CTRL1が抽出してもよい。以上が第1回路200の構成である。
【0060】
<第2回路300の構成>
続いて第2回路300の構成を説明する。第2回路300は、上述の受信デバイス600に加えて、第2ドライバ306およびパラレルシリアル変換器312を含む。
【0061】
受信デバイス600は差動伝送路102の他端とカップリングされ、第1回路200から送信された第1シリアルデータD1Sを受信する。シリアルパラレル変換器606は、ラッチ回路604がラッチした第1シリアルデータD1SRXを第1パラレルデータD1PRXに変換する。第1パラレルデータD1PRXは、内部回路608へと供給される。
【0062】
パラレルシリアル変換器312は、第1回路200に送信すべき制御信号CTRLを受け、それを含む第2シリアルデータD2STXに変換する。第2ドライバ306は、差動伝送路102の他端とカップリングされ、制御信号CTRLを含む第2シリアルデータD2STXに応じて差動伝送路102を駆動する。以上が第2回路300の構成である。
【0063】
図10は、図9の双方向伝送システム100を備える画像処理システム400のブロック図である。
【0064】
画像処理システム400は、複数のカメラ402と、SOC(System on Chip)404とを備える。SOC404は、複数のカメラ402から得られた画像データIMGに対して、所定の画像処理を施す。またSOC404は、複数のカメラ402に対して、それらを制御するための信号(カメラ制御信号)を供給する。たとえば複数のカメラ402の撮像タイミングは、カメラ制御信号のひとつである同期信号SYNCにもとづいて同期がとられる。図6には2個のカメラを示すが、より多くのカメラ402が設けられてもよいし、カメラは1個でもよい。
【0065】
カメラ402とSOC404の距離が遠い場合、カメラ402が内蔵するインタフェース回路では、SOC404に対して画像データIMGを正確に送信することが難しい。反対に、SOC404が内蔵するインタフェース回路では、カメラ402に対してカメラ制御信号を正確に伝送することが難しい。このような用途において、上述の双方向伝送システム100が好適に利用できる。
【0066】
双方向伝送システム406は、カメラ402とSOC404の間に設けられ、図9の双方向伝送システム100のアーキテクチャを用いて構成されている。双方向伝送システム406は、カメラ402の画像データIMGを、第1シリアルデータD1SとしてSOC404に伝送する。また双方向伝送システム100は、同期信号SYNCを含む第2シリアルデータD2Sをカメラ402に送信する。
【0067】
双方向伝送システム406は、シリアライザ回路410、デシリアライザ回路420、差動伝送路430を備える。シリアライザ回路410は、第1回路200に相当し、デシリアライザ回路420は第2回路300に相当し、差動伝送路430は差動伝送路102に相当する。
【0068】
通常の動作モードにおいてシリアライザ回路410は、カメラ402からの画像データIMGを受け、第1シリアルデータD1Sに変換して、デシリアライザ回路420に送信する。デシリアライザ回路420は、第1シリアルデータD1Sを受信し、画像データIMGをSOC404に供給する。
【0069】
また通常の動作モードにおいてデシリアライザ回路420は、SOC404からのカメラ制御信号(同期信号SYNC)を受け、それを第2シリアルデータD2Sに変換して、シリアライザ回路410に送信する。
【0070】
画像処理システム400の設計段階において、デシリアライザ回路420の内部差動信号INTP/INTNの波形測定が行われる。図3の外部回路6は、図10のSOC404であってもよいし、SOC404の代わりに接続される別の回路であってもよい。
【0071】
図11は、図10の画像処理システム400を備える自動車を示す図である。自動車500は、複数のカメラ402を備える。各カメラ402は、双方向伝送システム406を介してSOC404と接続される。たとえばSOC404は、自動車500の走行状態に応じて、複数のカメラ402を処理する。たとえばSOC404は、バック走行時には、後方のカメラ402Bの画像を、車載ディスプレイ502に表示する。駐車する際にアラウンドビューモードが選択されると、またSOC404は、複数のカメラ402の画像を合成し、合成後の画像を車載ディスプレイ502に表示する。
【0072】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0073】
<変形例>
実施の形態では、アイパターンを2値のマトリクスの形式で表現したがその限りでない。たとえば、評価データDEVALは、アイパターンに含まれる複数の遷移波形データそのものを含んでもよい。アイパターンにK個の遷移波形が含まれ、各波形を振幅方向に2ビット、時間軸方向にM点で量子化するとき、評価データDEVALのデータ量は、K×2×Mビットとなる。あるいは、評価データDEVALは、時刻t~tそれぞれについて、振幅を階級とするヒストグラムとして内部波形信号INTP/INTNを表現してもよい。
【0074】
また評価データDEVALは、アイパターン以外の形式で、内部差動信号INTP/INTNを表現してもよい。
【0075】
図8の評価回路610において、振幅方向の評価が不要の場合には、コンパレータ640、コンパレータ642、D/Aコンバータ646を省略してもよい。反対に、図8の評価回路610において、時間軸方向の評価が不要な場合には、ラッチ回路630、デジタルコンパレータ634、パターン発生器636を省略してもよい。
【0076】
実施の形態では、入力信号INP/INNおよび内部信号INTP/INTNがいずれも差動信号であったがその限りでなく、本発明はシングルエンドの入力信号を伝送するシステムにも適用可能である。
【0077】
図6では、A/Dコンバータを用いて評価回路610を構成したがその限りでなく、たとえばA/Dコンバータに代えて、可変のしきい値電圧を生成する可変電圧源あるいはD/Aコンバータと、しきい値電圧VTHを内部信号と比較するコンパレータの組み合わせを用いてもよい。たとえば、あるストローブタイミングtiにおいて、しきい値電圧VTHを段階的に変化させることにより、アイ開口の最小値、最大値を検出できる。この測定をストローブタイミングtをシフトしながら繰り返すことにより、アイ開口の形状を取得できる。
【0078】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、データ伝送技術に関する。
【符号の説明】
【0080】
1 差動伝送システム
2 差動伝送路
4 波形測定器
6 外部回路
10 送信デバイス
20 受信デバイス
24 ラッチ回路
26 シリアルパラレル変換器
28 出力バッファ
600 受信デバイス
602 レシーバ回路
604 ラッチ回路
606 シリアルパラレル変換器
608 内部回路
610 評価回路
612 A/Dコンバータ
614 PLL回路
616 マッピング回路
620 メモリ
622 インタフェース回路
100 双方向伝送システム
102 差動伝送路
200 第1回路
202 第1ドライバ
204 第1レシーバ
210 パラレルシリアル変換器
212 シリアルパラレル変換器
300 第2回路
306 第2ドライバ
312 パラレルシリアル変換器
D1P 第1パラレルデータ
D1S 第1シリアルデータ
CTRL 制御信号
D2S 第2シリアルデータ
400 画像処理システム
402 カメラ
404 SOC
406 双方向伝送システム
410 シリアライザ回路
420 デシリアライザ回路
430 差動伝送路
500 自動車
502 車載ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11