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特許7068468大麻草DNAを検出するためのプライマー混合物、キット及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】大麻草DNAを検出するためのプライマー混合物、キット及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220509BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20220509BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALI20220509BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220509BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20220509BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6895 Z
C12M1/34 B
C12N15/29
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020535895
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031541
(87)【国際公開番号】W WO2020032222
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2018150543
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592083915
【氏名又は名称】警察庁科学警察研究所長
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山室 匡史
(72)【発明者】
【氏名】宮本 重彦
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/070618(WO,A1)
【文献】山室匡史ほか,核酸クロマト型チップを用いた大麻DNA検出系の開発と性能評価,日本薬学会年会要旨集,2017年,vol.137,p.217(26PB-pm101)
【文献】BLATTNER, FR.,Direct amplification of the entire ITS region from poorly preserved plant material using recombinant,BioTechniques,1999年,vol.27, no.6,p.1180-1186
【文献】室友紀ほか,葉緑体DNAのtrnL領域の解析による大麻草の識別,日本法科学技術学会誌,2010年,vol.15, no.2,p.143-149
【文献】Database GenBank [online], Accession No. KR779995, <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/KR779995> 15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1A)配列番号1の塩基配列、或いは
配列番号1の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチド、或いは
(1B)配列番号1の塩基配列、或いは
配列番号1の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むITS1領域増幅用フォワードプライマーと、
(2A)配列番号2の塩基配列、或いは
配列番号2の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチド、或いは
(2B)配列番号2の塩基配列、或いは
配列番号2の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むITS1領域増幅用リバースプライマーと
を含むITS1領域増幅用プライマー対;
(5A)配列番号5の塩基配列、或いは
配列番号5の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチド、或いは
(5B)配列番号5の塩基配列、或いは
配列番号5の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むtrnL領域増幅用フォワードプライマーと、
(8A)配列番号8の塩基配列、或いは
配列番号8の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチド、或いは
(8B)配列番号8の塩基配列、或いは
配列番号8の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むtrnL領域増幅用リバースプライマーと
を含むtrnL領域増幅用プライマー対;
並びに、
(9A)配列番号9の塩基配列、或いは
配列番号9の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチド、或いは
(9B)配列番号9の塩基配列、或いは
配列番号9の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むtrnG-psbI領域増幅用フォワードプライマーと、
(10A)配列番号10の塩基配列、或いは
配列番号10の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチド、或いは
(10B)配列番号10の塩基配列、或いは
配列番号10の塩基配列において1個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列
のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むtrnG-psbI領域増幅用リバースプライマーと
を含むtrnG-psbI領域増幅用プライマー対
を含むプライマー混合物。
【請求項2】
前記ITS1領域増幅用フォワードプライマー及び前記ITS1領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第1の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第1の部分と結合可能なタグである第1の結合部を更に含み、
前記trnL領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnL領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第2の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第2の部分と結合可能なタグである第2の結合部を更に含み、
前記trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnG-psbI領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第3の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第3の部分と結合可能なタグである第3の結合部を更に含む、
請求項1に記載のプライマー混合物。
【請求項3】
前記(1A)のポリヌクレオチドが、
配列番号1の塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(1B)のポリヌクレオチドが、
配列番号1の塩基配列のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(2A)のポリヌクレオチドが、
配列番号2の塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(2B)のポリヌクレオチドが、
配列番号2の塩基配列のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(5A)のポリヌクレオチドが、
配列番号5の塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(5B)のポリヌクレオチドが、
配列番号5の塩基配列のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(8A)のポリヌクレオチドが、
配列番号8の塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(8B)のポリヌクレオチドが、
配列番号8の塩基配列のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(9A)のポリヌクレオチドが、
配列番号9の塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(9B)のポリヌクレオチドが、
配列番号9の塩基配列のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(10A)のポリヌクレオチドが、
配列番号10の塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドであり、
前記(10B)のポリヌクレオチドが、
配列番号10の塩基配列のうち3’末端から連続した15塩基以上の部分塩基配列
を3’末端に含むポリヌクレオチドである、
請求項1又は2に記載のプライマー混合物。
【請求項4】
検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であることを判別する方法であって、
検体から分離したDNA、及び、請求項1~3のいずれか1項に記載のプライマー混合物を含む反応系中で核酸増幅反応を行う第1工程、並びに、
前記核酸増幅反応による増幅産物を確認する第2工程、
を含み、
前記第2工程において、前記ITS1領域増幅用プライマー対による増幅産物、前記trnL領域増幅用プライマー対による増幅産物、及び、前記trnG-psbI領域増幅用プライマー対による増幅産物が、全て確認された場合に、前記検体を、大麻草由来のDNAを含む検体であると判別する方法。
【請求項5】
前記プライマー混合物が、請求項2に記載のプライマー混合物であり、
前記第2工程が、前記核酸増幅反応の生成物を、前記第1の部分、前記第2の部分、及び、前記第3の部分を含む固相担体に接触させ、前記固相担体の前記第1の部分において、前記第1の標識部を指標として前記ITS1領域増幅用プライマー対による増幅産物を確認し、前記固相担体の前記第2の部分において、前記第2の標識部を指標として前記trnL領域増幅用プライマー対による増幅産物を確認し、前記固相担体の前記第3の部分において、前記第3の標識部を指標として前記trnG-psbI領域増幅用プライマー対による増幅産物を確認することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の標識部、前記第2の標識部、及び、前記第3の標識部が、それぞれ、標識物質と結合可能なタグであり、
前記第1の標識部、前記第2の標識部、及び、前記第3の標識部の前記タグに、前記標識物質を結合させる標識工程を更に含む
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であることを判別するためのキットであって、
請求項2に記載のプライマー混合物、並びに、
前記第1の部分、前記第2の部分、及び、前記第3の部分を含む固相担体を備える核酸検出デバイス
を含むキット。
【請求項8】
前記第1の標識部、前記第2の標識部、及び、前記第3の標識部が、それぞれ、標識物質と結合可能なタグであり、
前記第1の標識部、前記第2の標識部、及び、前記第3の標識部の前記タグと結合可能な標識物質を更に含む、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記核酸検出デバイスが、前記標識物質を保持する標識物質保持部を更に備える、請求項8に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麻草由来のDNAを判別するために用いることができるプライマー混合物に関する。
【0002】
本発明はまた、前記プライマー混合物を用いて核酸増幅反応を行うことを含む、検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であることを判別する方法に関する。
【0003】
本発明はまた、前記プライマー混合物を含む、検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であることを判別するためのキットに関する。
【背景技術】
【0004】
大麻草(Cannabis sativa)は、60種類以上のカンナビノイドと総称される特有の成分を含む。カンナビノイドの1つであるテトラヒドロカンナビノールは幻覚などの薬理作用を有しており、日本では大麻取締法により大麻の所持や栽培が禁止されている。
【0005】
犯罪捜査における大麻の鑑定は、形態学的検査と含有成分検査の併用によって行われているが、近年、大麻草に特徴的なDNA配列情報を利用した分子生物学的手法による検査が注目されている。
【0006】
非特許文献1では、大麻草とその近縁種であるホップが共通して有する葉緑体DNAのtrnL-trnF領域を増幅するプライマーセットを開示している。このプライマーセットによるPCR増幅産物は、鋳型として大麻草DNAが含まれる場合の断片長と、鋳型としてホップDNAが含まれる場合の断片長とが異なるため、大麻草とホップとを識別することが可能である。
【0007】
非特許文献2では、大麻草の葉緑体DNAのtrnL領域のイントロンに設計した大麻草特異的プライマーが開示されている。
【0008】
非特許文献3では、大麻草の葉緑体DNAのtrnL領域とtrnF領域との間の領域に大麻草に特異的な配列が存在すること、及び、この領域にプライマーを設計したことが開示されている。
【0009】
非特許文献4では、大麻草には、Δ-9-テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)含量の高い薬物種と、THCA含量の低い繊維種があることが開示されている。非特許文献4では更に、薬物種の大麻草が有するTHCA合成酵素を特定し、薬物種を特異的に検出するための、THCA合成酵素のPCRマーカーを特定したことが開示されている。
【0010】
非特許文献5では、大麻クッキー等の大麻加工品からDNAを抽出し、大麻草特異的プライマーを用いてPCRを行うことで、大麻加工品中においても大麻草の識別が可能であることが開示されている。また、非特許文献5では、小麦と大麻草との葉緑体DNAの共通領域を増幅するユニバーサルプライマーが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】関税中央分析所報, 56号, 2016, p41-47
【文献】法科学技術、15(2), 2010, p143-149
【文献】Forensic Science International, 91, 1997, p71-76
【文献】Forensic Science International, 159, 2006, p132-140
【文献】関税中央分析所報, 54号, 2014, p19-24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の通り、大麻草のDNAに特異的な領域を増幅するための核酸増幅用プライマー対を用いて大麻草を判別する方法が従来から開発されている。しかし、大麻草のDNAに特異的な1つの領域の増幅の有無を確認するだけでは、大麻草と類似したDNA配列を有する近縁種を、大麻草と判定してしまう偽陽性判定の可能性が高い。
【0013】
本発明は、大麻草由来のDNAをより高い精度で判別するために用いることができるプライマー混合物、並びに、それを用いた判別方法及びキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、1つの反応系内で複数のプライマー対を用いてDNAの複数の領域の増幅を行うマルチプレックス法のためのプライマー混合物の開発を試みたところ意図する核酸増幅が行われない場合があることを見出した。そこで更に検討した結果、本発明者らは、本発明の所定のプライマー混合物を用いた場合に、大麻草の近縁種であるホップとの交差がなく、大麻草由来のDNAを高い精度で判別することができることを見出した。具体的には本発明は以下の発明を包含する。
【0015】
(1)(1A)配列番号1の塩基配列と相同な塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド、又は
(1B)配列番号1の塩基配列と相同な塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むITS1領域増幅用フォワードプライマーと、
(2A)配列番号2の塩基配列と相同な塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド、又は
(2B)配列番号2の塩基配列と相同な塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むITS1領域増幅用リバースプライマーと
を含むITS1領域増幅用プライマー対;
(5A)配列番号5の塩基配列と相同な塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド、又は
(5B)配列番号5の塩基配列と相同な塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むtrnL領域増幅用フォワードプライマーと、
(8A)配列番号8の塩基配列と相同な塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド、又は
(8B)配列番号8の塩基配列と相同な塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むtrnL領域増幅用リバースプライマーと
を含むtrnL領域増幅用プライマー対;
並びに、
(9A)配列番号9の塩基配列と相同な塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド、又は
(9B)配列番号9の塩基配列と相同な塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むtrnG-psbI領域増幅用フォワードプライマーと、
(10A)配列番号10の塩基配列と相同な塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド、又は
(10B)配列番号10の塩基配列と相同な塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上の部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチド
を含むtrnG-psbI領域増幅用リバースプライマーと
を含むtrnG-psbI領域増幅用プライマー対
を含むプライマー混合物。
【0016】
(2)前記ITS1領域増幅用フォワードプライマー及び前記ITS1領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第1の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第1の部分と結合可能なタグである第1の結合部を更に含み、
前記trnL領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnL領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第2の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第2の部分と結合可能なタグである第2の結合部を更に含み、
前記trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnG-psbI領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第3の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第3の部分と結合可能なタグである第3の結合部を更に含む、
(1)に記載のプライマー混合物。
【0017】
(3)検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であることを判別する方法であって、
検体から分離したDNA、及び、(1)又は(2)に記載のプライマー混合物を含む反応系中で核酸増幅反応を行う第1工程、並びに、
前記核酸増幅反応による増幅産物を確認する第2工程、
を含み、
前記第2工程において、前記ITS1領域増幅用プライマー対による増幅産物、前記trnL領域増幅用プライマー対による増幅産物、及び、前記trnG-psbI領域増幅用プライマー対による増幅産物が、全て確認された場合に、前記検体を、大麻草由来のDNAを含む検体であると判別する方法。
【0018】
(4)前記プライマー混合物が、(2)に記載のプライマー混合物であり、
前記第2工程が、前記核酸増幅反応の生成物を、前記第1の部分、前記第2の部分、及び、前記第3の部分を含む固相担体に接触させ、前記固相担体の前記第1の部分において、前記第1の標識部を指標として前記ITS1領域増幅用プライマー対による増幅産物を確認し、前記固相担体の前記第2の部分において、前記第2の標識部を指標として前記trnL領域増幅用プライマー対による増幅産物を確認し、前記固相担体の前記第3の部分において、前記第3の標識部を指標として前記trnG-psbI領域増幅用プライマー対による増幅産物を確認することを含む、(3)に記載の方法。
【0019】
(5)前記第1の標識部、前記第2の標識部、及び、前記第3の標識部が、それぞれ、標識物質と結合可能なタグであり、
前記第1の標識部、前記第2の標識部、及び、前記第3の標識部の前記タグに、前記標識物質を結合させる標識工程を更に含む
(4)に記載の方法。
【0020】
(6)検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であることを判別するためのキットであって、
(2)に記載のプライマー混合物、並びに、
前記第1の部分、前記第2の部分、及び、前記第3の部分を含む固相担体を備える核酸検出デバイス
を含むキット。
(7)前記第1の標識部、前記第2の標識部、及び、前記第3の標識部が、それぞれ、標識物質と結合可能なタグであり、
前記第1の標識部、前記第2の標識部、及び、前記第3の標識部の前記タグと結合可能な標識物質を更に含む、(6)に記載のキット。
(8)前記核酸検出デバイスが、前記標識物質を保持する標識物質保持部を更に備える、(7)に記載のキット。
【0021】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-150543号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、近縁種の偽陽性判定リスクが低減された、大麻草由来のDNAを判別するために用いることができるプライマー混合物、並びに、それを用いた判別方法及びキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、大麻草のITS1領域の塩基配列(配列番号13)における、フォワードプライマーITS-A(配列番号1)と、リバースプライマーITS-C(配列番号2)の設計位置を示す。
図2図2は、大麻草のtrnL遺伝子の塩基配列(配列番号14)における、フォワードプライマーcpCan(配列番号5)と、リバースプライマーCanRv(配列番号8)の設計位置を示す。
図3A図3Aは、第1の増幅産物に含まれるDNAタグと相補的な第1のDNA断片が固定された第1の部分6-1と、第2の増幅産物に含まれるDNAタグと相補的な第2のDNA断片が固定された第2の部分6-2とを備えるメンブレン1(固相担体)の平面図である。
図3B図3Bは、第1の増幅産物に含まれるDNAタグと相補的な第1のDNA断片が固定された第1の部分6-1と、第2の増幅産物に含まれるDNAタグと相補的な第2のDNA断片が固定された第2の部分6-2と、第3の増幅産物に含まれるDNAタグと相補的な第3のDNA断片が固定された第3の部分6-3とを備えるメンブレン1(固相担体)の平面図である。
図4図4はクロマト型核酸検出デバイス10の模式図を示す。図4(A)はクロマト型核酸検出デバイス10の平面図であり、図4(B)はクロマト型核酸検出デバイス10の断面図である。1:メンブレン(固相担体)、2:コンジュゲートパッド(標識物質保持部)、3:サンプルパッド(反応系受容部)、4:吸収パッド、5:基材。
図5図5は、大麻草のtrnG-psbI遺伝子の塩基配列(配列番号15)における、フォワードプライマーtrnG-psbI-F(配列番号9)とリバースプライマーtrnG-psbI-Rv(配列番号10)の設計位置を示す。
図6図6は、大麻草のclpP遺伝子の塩基配列(配列番号16)における、フォワードプライマーclpP-2F(配列番号11)とリバースプライマーclpP-2R(配列番号12)の設計位置を示す。
図7図7は、実施例2において、trnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)を用いたシングルPCR後に検出デバイスで検出した結果、並びに、ITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、trnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、trnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)とを含むプライマー混合物を用いたマルチプレックスPCR後に検出デバイスで検出した結果を示す。
図8図8は、比較例4において、clpP領域検出用プライマー対(配列番号11、配列番号12)を用いたシングルPCR後に検出デバイスで検出した結果、並びに、ITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、trnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、clpP領域検出用プライマー対(配列番号11、配列番号12)とを含むプライマー混合物を用いたマルチプレックスPCR後に検出デバイスで検出した結果を示す。
図9図9は、薬物種大麻から抽出したDNAを10ng~1fgまで段階希釈したものを鋳型とし、ITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、trnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、trnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)とを含むプライマー混合物を用いてマルチプレックスPCR及び検出を行った実施例5の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<用語>
本発明において「ポリヌクレオチド」とは、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)を指す。ポリヌクレオチドとしては、任意の位置のTをUに置換して合成したUを含むDNAや、任意の位置のUをTに置換して合成したTを含むRNAも使用することができる。ポリヌクレオチドはイノシン(I)等の修飾ヌクレオチドを一部に含んでいてもよい。RNAにおいては、チミン(T)をウラシル(U)と読み替えることができる。
【0025】
ポリヌクレオチドは一本鎖として存在していてもよいし、二本鎖として存在していてもよい。ポリヌクレオチドが二本鎖として存在する場合は、少なくとも一方の鎖が、以下に規定する所定の特徴を備えるポリヌクレオチドであればよい。
【0026】
ポリヌクレオチドの製造方法は特に限定されず、ポリヌクレオチド合成装置を利用して製造してもよいし、受託合成サービスを利用して製造してもよい。
【0027】
本発明において「塩基配列Xと相同な塩基配列Y」、或いは、「塩基配列Xと塩基配列Yとが相同である」、というとき、塩基配列Xの相補配列からなるポリヌクレオチドと、塩基配列Yからなるポリヌクレオチドとが、核酸増幅反応のアニーリング条件においてハイブリダイズして安定な二本鎖を形成するのに十分な水素結合を形成することができる組み合わせである限り、塩基配列XとYとが同一であってもよいし、塩基配列XとYとが部分的に異なっていてもよい。例えば、塩基配列Xの相補配列からなるポリヌクレオチドと、塩基配列Yからなるポリヌクレオチドとが、10ヌクレオチド中に1ミスマッチ、20ヌクレオチド中に1ミスマッチ、または30ヌクレオチド中に1ミスマッチなど、いくつかのミスマッチが存在していてもよい。典型的には、塩基配列Xと「相同な」塩基配列Yというとき、塩基配列XとYとが以下の関係のいずれかを満たすことを指す。
【0028】
(A)塩基配列Yが、塩基配列Xと同一の塩基配列である、或いは、塩基配列Xにおいて1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列である。
(B)塩基配列Yが、塩基配列Xと70%以上の同一性を有する塩基配列である。
(C)塩基配列Yからなるポリヌクレオチドが、配列番号Xと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズすることができる。
(D)塩基配列Xと塩基配列Yの一方における任意の位置のチミン(T)が、他方におけるウラシル(U)に置換されている。
【0029】
前記(A)において「1若しくは数個」とは好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個を指し、最も好ましくは1個である。前記(A)において、好ましくは、塩基配列Yが、塩基配列Xと同一の塩基配列である。
【0030】
前記(B)において、同一性の値は、複数の塩基配列間の同一性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DNASIS、及びBLAST)を用いてデフォルトの設定で算出した値を示す。塩基配列の同一性の値は、一致度が最大となるように一対の塩基配列をアライメントした際に一致する塩基の数を算出し、当該一致する塩基の数の、比較した塩基配列の全塩基数に対する割合として算出される。ここで、ギャップがある場合、上記の全塩基数は、1つのギャップを1つの塩基として数えた塩基数である。同一性の決定方法の詳細については、例えばAltschul et al,Nuc.Acids.Res.25,3389-3402,1977及びAltschul et al,J.Mol.Biol.215,403-410,1990を参照されたい。
【0031】
前記(B)において、同一性はより好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性である。
【0032】
前記(C)において、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばGreen and Sambrook,Molecular Cloning,4th Ed(2012),Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェントな条件を設定することができる。より詳細には、ストリンジェントな条件としては、例えば、ハイブリダイゼーション工程では、ナトリウム濃度が25~500mM、好ましくは25~300mMであり、温度が40~68℃、好ましくは40~65℃である。より具体的には、ハイブリダイゼーションは、1~7×SSC、0.02~3% SDS、温度40~60℃で行うことができる。また、ハイブリダイゼーションの後に洗浄工程を行っても良く、洗浄工程は、例えば0.1~2×SSC、0.1~0.3% SDS、温度50~65℃で行うことができる。
【0033】
<プライマー混合物>
本発明に係るプライマー混合物は、ITS1領域増幅用プライマー対と、trnL領域増幅用プライマー対と、trnG-psbI領域増幅用プライマー対とを含むことを特徴とする。
【0034】
ITS1領域増幅用プライマー対は、緑色植物DNAに共通するITS1領域を増幅するユニバーサルプライマーである。
【0035】
trnL領域増幅用プライマー対は、大麻草の葉緑体DNAに特異的なtrnL領域を増幅するためのプライマーである。
【0036】
trnG-psbI領域増幅用プライマー対は、大麻草の葉緑体DNAに特異的なtrnG-psbI領域を増幅するためのプライマーである。
【0037】
検体から分離したDNA、及び、本発明に係るプライマー混合物を含む反応系中でマルチプレックス核酸増幅反応を行う。前記核酸増幅反応により、ITS1領域増幅用プライマー対による増幅産物が確認された場合、前記検体が緑色植物に由来するDNAを含んでおり、且つ、核酸増幅反応が正常に行われたと判断することができる。更に、前記核酸増幅反応により、trnL領域増幅用プライマー対による増幅産物と、trnG-psbI領域増幅用プライマー対による増幅産物とが両方とも確認された場合、前記検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であると判別することができる。緑色植物のDNAに共通した領域の増幅と、大麻草のDNAに特異的な2つの領域の増幅を確認することで、偽陽性判定のリスクを低減することができ、大麻草と、大麻草の近縁種であるホップとを交差することなく判別することができる。以下に、各プライマー対の具体的な実施形態について説明する。
【0038】
<ITS1領域増幅用プライマー対>
本発明で用いるITS1領域増幅用プライマー対は、
前記(1A)又は(1B)のポリヌクレオチドを含むITS1領域増幅用フォワードプライマーと、
前記(2A)又は(2B)のポリヌクレオチドを含むITS1領域増幅用リバースプライマーとを含む。
【0039】
前記(1A)のポリヌクレオチドにおける、配列番号1の塩基配列と相同な塩基配列を塩基配列1Aとする。この塩基配列1Aは、配列番号1の塩基配列と、前記(A)、(B)、(C)又は(D)の関係を満たす(配列番号1の塩基配列が塩基配列X、塩基配列1Aが塩基配列Yに相当する)。
【0040】
塩基配列1Aが配列番号1の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列1Aは、配列番号1の塩基配列、或いは、配列番号1の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方から合計で1若しくは数個の塩基が欠失した配列、特に好ましくは配列番号1の塩基配列、或いは、配列番号1の塩基配列において5’末端のみから1若しくは数個の塩基が欠失した配列である。また、塩基配列1Aが配列番号1の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合、より好ましくは、塩基配列1Aは、配列番号1の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方に合計で1若しくは数個の塩基が付加した配列、特に好ましくは配列番号1の塩基配列において5’末端のみに1若しくは数個の塩基が付加した配列であり、特に好ましくは、配列番号13の塩基配列の部分塩基配列であって、配列番号1の塩基配列と、配列番号1の塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方に付加した合計1若しくは数個の塩基とからなる前記部分塩基配列である。
【0041】
前記(1A)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列1Aを含んでいればよく、塩基配列1Aの5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(1A)のポリヌクレオチドは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。前記(1A)のポリヌクレオチドの好ましい実施形態としては、配列番号13に示す大麻草のDNAのITS1領域の塩基配列のうち連続した40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下の部分塩基配列であって、塩基配列1Aを3’末端に含む部分塩基配列が挙げられる。より好ましくは前記(1A)のポリヌクレオチドは塩基配列1Aの塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0042】
前記(1B)のポリヌクレオチドは、配列番号1の塩基配列と相同な塩基配列(すなわち前記の塩基配列1A)のうち3’末端から連続した5塩基以上の塩基からなる部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチドである。前記(1B)のポリヌクレオチドにおいて、より好ましくは、塩基配列1Aのうち3’末端から連続した10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含む。
【0043】
前記(1B)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列1Aの前記の部分配列を含んでいればよく、該部分配列の5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(1B)のポリヌクレオチドは、好ましくは40塩基以下、より好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。より好ましくは前記(1B)のポリヌクレオチドは塩基配列1Aの前記部分塩基配列からなり、より好ましくは配列番号1に示す塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0044】
前記(2A)のポリヌクレオチドにおける、配列番号2の塩基配列と相同な塩基配列を塩基配列2Aとする。この塩基配列2Aは、配列番号2の塩基配列と、前記(A)、(B)、(C)又は(D)の関係を満たす(配列番号2の塩基配列が塩基配列X、塩基配列2Aが塩基配列Yに相当する)。
【0045】
塩基配列2Aが配列番号2の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列2Aは、配列番号2の塩基配列、或いは、配列番号2の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方から合計で1若しくは数個の塩基が欠失した配列、特に好ましくは配列番号2の塩基配列、或いは、配列番号2の塩基配列において5’末端のみから1若しくは数個の塩基が欠失した配列である。また、塩基配列2Aが配列番号2の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列2Aは、配列番号2の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方に合計で1若しくは数個の塩基が付加した配列、特に好ましくは配列番号2の塩基配列において5’末端のみに1若しくは数個の塩基が付加した配列であり、特に好ましくは、配列番号13に示す大麻草のDNAのITS1領域の塩基配列に対する相補塩基配列の部分塩基配列であって、配列番号2の塩基配列と、配列番号2の塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方に付加した合計1若しくは数個の塩基とからなる前記部分塩基配列である。
【0046】
前記(2A)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列2Aを含んでいればよく、塩基配列2Aの5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(2A)のポリヌクレオチドは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。前記(2A)のポリヌクレオチドの好ましい実施形態としては、配列番号13に示す大麻草のDNAのITS1領域の塩基配列に対する相補塩基配列のうち連続した40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下の部分塩基配列であって、塩基配列2Aを3’末端に含む部分塩基配列が挙げられる。より好ましくは前記(2A)のポリヌクレオチドは塩基配列2Aの塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号2に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0047】
前記(2B)のポリヌクレオチドは、配列番号2の塩基配列と相同な塩基配列(すなわち前記の塩基配列2A)のうち3’末端から連続した5塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含むポリヌクレオチドである。前記(2B)のポリヌクレオチドにおいて、より好ましくは、塩基配列2Aのうち3’末端から連続した10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含む。
【0048】
前記(2B)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列2Aの前記の部分配列を含んでいればよく、該部分配列の5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(2B)のポリヌクレオチドは好ましくは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。より好ましくは前記(2B)のポリヌクレオチドは塩基配列2Aの前記部分塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号2に示す塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0049】
ITS1領域増幅用フォワードプライマーは、前記(1A)又は(1B)のポリヌクレオチドのみからなっていてもよいし、後述する第1の標識部又は第1の結合部を更に含んでもよい。前記ポリヌクレオチドと第1の標識部又は第1の結合部とは、後述する適当なスペーサーを介して化学的に連結することができる。ITS1領域増幅用フォワードプライマーにおいて、第1の標識部及び第1の結合部の一方が前記ポリヌクレオチドに連結される位置は、前記ポリヌクレオチドと標的領域を含むポリヌクレオチド又はその相補鎖とのアニーリング及び核酸増幅反応における伸長を阻害しない位置であれば特に限定されないが、好ましくは、前記ポリヌクレオチドの5’末端である。
【0050】
ITS1領域増幅用リバースプライマーは、前記(2A)又は(2B)のポリヌクレオチドのみからなっていてもよいし、後述する第1の標識部又は第1の結合部を更に含んでもよい。前記ポリヌクレオチドと第1の標識部又は第1の結合部とは、後述する適当なスペーサーを介して化学的に連結することができる。ITS1領域増幅用リバースプライマーにおいて、第1の標識部及び第1の結合部の一方が前記ポリヌクレオチドに連結される位置は、前記ポリヌクレオチドと標的領域を含むポリヌクレオチド又はその相補鎖とのアニーリング及び核酸増幅反応における伸長を阻害しない位置であれば特に限定されないが、好ましくは、前記ポリヌクレオチドの5’末端である。
【0051】
ITS1領域増幅用フォワードプライマー及びITS1領域増幅用リバースプライマーの少なくとも一方が、第1の標識部を含む場合、これを用いた核酸増幅反応では、第1の標識部を含む増幅産物が得られるため、増幅産物の検出が容易である。
【0052】
ITS1領域増幅用フォワードプライマー及びITS1領域増幅用リバースプライマーの少なくとも一方が、第1の結合部を含む場合、これを用いた核酸増幅反応では、第1の結合部を含む増幅産物が得られるため、増幅産物を固相担体に固定することが可能であり、増幅産物の検出が容易である。
【0053】
<trnL領域増幅用プライマー対>
本発明で用いるtrnL領域増幅用プライマー対は、
前記(5A)又は(5B)のポリヌクレオチドを含むtrnL領域増幅用フォワードプライマーと、
前記(8A)又は(8B)のポリヌクレオチドを含むtrnL領域増幅用リバースプライマーとを含む。
【0054】
前記(5A)のポリヌクレオチドにおける、配列番号5の塩基配列と相同な塩基配列を塩基配列5Aとする。この塩基配列5Aは、配列番号5の塩基配列と、前記(A)、(B)、(C)又は(D)の関係を満たす(配列番号5の塩基配列が塩基配列X、塩基配列5Aが塩基配列Yに相当する)。
【0055】
塩基配列5Aが配列番号5の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列5Aは、配列番号5の塩基配列、或いは、配列番号5の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方から合計で1若しくは数個の塩基が欠失した配列、特に好ましくは配列番号5の塩基配列、或いは、配列番号5の塩基配列において5’末端のみから1若しくは数個の塩基が欠失した配列である。また、塩基配列5Aが配列番号5の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合、より好ましくは、塩基配列5Aは、配列番号5の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方に合計で1若しくは数個の塩基が付加した配列、特に好ましくは配列番号5の塩基配列において5’末端のみに1若しくは数個の塩基が付加した配列であり、特に好ましくは、配列番号14の塩基配列の部分塩基配列であって、配列番号5の塩基配列と、配列番号5の塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方に付加した合計1若しくは数個の塩基とからなる前記部分塩基配列である。
【0056】
前記(5A)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列5Aを含んでいればよく、塩基配列5Aの5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(5A)のポリヌクレオチドは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。前記(5A)のポリヌクレオチドの好ましい実施形態としては、配列番号14に示す大麻草のDNAのtrnL領域の塩基配列のうち連続した40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下の部分塩基配列であって、塩基配列5Aを3’末端に含む部分塩基配列が挙げられる。より好ましくは前記(5A)のポリヌクレオチドは塩基配列5Aの塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0057】
前記(5B)のポリヌクレオチドは、配列番号5の塩基配列と相同な塩基配列(すなわち前記の塩基配列5A)のうち3’末端から連続した5塩基以上の塩基からなる部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチドである。前記(5B)のポリヌクレオチドにおいて、より好ましくは、塩基配列5Aのうち3’末端から連続した10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含む。
【0058】
前記(5B)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列5Aの前記の部分配列を含んでいればよく、該部分配列の5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(5B)のポリヌクレオチドは、好ましくは40塩基以下、より好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。より好ましくは前記(5B)のポリヌクレオチドは塩基配列5Aの前記部分塩基配列からなり、より好ましくは配列番号5に示す塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0059】
前記(8A)のポリヌクレオチドにおける、配列番号8の塩基配列と相同な塩基配列を塩基配列8Aとする。この塩基配列8Aは、配列番号8の塩基配列と、前記(A)、(B)、(C)又は(D)の関係を満たす(配列番号8の塩基配列が塩基配列X、塩基配列8Aが塩基配列Yに相当する)。
【0060】
塩基配列8Aが配列番号8の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列8Aは、配列番号8の塩基配列、或いは、配列番号8の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方から合計で1若しくは数個の塩基が欠失した配列、特に好ましくは配列番号8の塩基配列、或いは、配列番号8の塩基配列において5’末端のみから1若しくは数個の塩基が欠失した配列である。また、塩基配列8Aが配列番号8の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列8Aは、配列番号8の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方に合計で1若しくは数個の塩基が付加した配列、特に好ましくは配列番号8の塩基配列において5’末端のみに1若しくは数個の塩基が付加した配列であり、特に好ましくは、配列番号14に示す大麻草のDNAのtrnL領域の塩基配列に対する相補塩基配列の部分塩基配列であって、配列番号8の塩基配列と、配列番号8の塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方に付加した合計1若しくは数個の塩基とからなる前記部分塩基配列である。
【0061】
前記(8A)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列8Aを含んでいればよく、塩基配列8Aの5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(8A)のポリヌクレオチドは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。前記(8A)のポリヌクレオチドの好ましい実施形態としては、配列番号14に示す大麻草のDNAのtrnL領域の塩基配列に対する相補塩基配列のうち連続した40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下の部分塩基配列であって、塩基配列8Aを3’末端に含む部分塩基配列が挙げられる。より好ましくは前記(8A)のポリヌクレオチドは塩基配列8Aの塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号8に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0062】
前記(8B)のポリヌクレオチドは、配列番号8の塩基配列と相同な塩基配列(すなわち前記の塩基配列8A)のうち3’末端から連続した5塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含むポリヌクレオチドである。前記(8B)のポリヌクレオチドにおいて、より好ましくは、塩基配列8Aのうち3’末端から連続した10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含む。
【0063】
前記(8B)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列8Aの前記の部分配列を含んでいればよく、該部分配列の5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(8B)のポリヌクレオチドは好ましくは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。より好ましくは前記(8B)のポリヌクレオチドは塩基配列8Aの前記部分塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号8に示す塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0064】
trnL領域増幅用フォワードプライマーは、前記(5A)又は(5B)のポリヌクレオチドのみからなっていてもよいし、後述する第2の標識部又は第2の結合部を更に含んでもよい。前記ポリヌクレオチドと第2の標識部又は第2の結合部とは、後述する適当なスペーサーを介して化学的に連結することができる。trnL領域増幅用フォワードプライマーにおいて、第2の標識部及び第2の結合部の一方が前記ポリヌクレオチドに連結される位置は、前記ポリヌクレオチドと標的領域を含むポリヌクレオチド又はその相補鎖とのアニーリング及び核酸増幅反応における伸長を阻害しない位置であれば特に限定されないが、好ましくは、前記ポリヌクレオチドの5’末端である。
【0065】
trnL領域増幅用リバースプライマーは、前記(8A)又は(8B)のポリヌクレオチドのみからなっていてもよいし、後述する第2の標識部又は第2の結合部を更に含んでもよい。前記ポリヌクレオチドと第2の標識部又は第2の結合部とは、後述する適当なスペーサーを介して化学的に連結することができる。trnL領域増幅用リバースプライマーにおいて、第2の標識部及び第2の結合部の一方が前記ポリヌクレオチドに連結される位置は、前記ポリヌクレオチドと標的領域を含むポリヌクレオチド又はその相補鎖とのアニーリング及び核酸増幅反応における伸長を阻害しない位置であれば特に限定されないが、好ましくは、前記ポリヌクレオチドの5’末端である。
【0066】
trnL領域増幅用フォワードプライマー及びtrnL領域増幅用リバースプライマーの少なくとも一方が、第2の標識部を含む場合、これを用いた核酸増幅反応では、第2の標識部を含む増幅産物が得られるため、増幅産物の検出が容易である。
【0067】
trnL領域増幅用フォワードプライマー及びtrnL領域増幅用リバースプライマーの少なくとも一方が、第2の結合部を含む場合、これを用いた核酸増幅反応では、第2の結合部を含む増幅産物が得られるため、増幅産物を固相担体に固定することが可能であり、増幅産物の検出が容易である。
【0068】
<trnG-psbI領域増幅用プライマー対>
本発明で用いるtrnG-psbI領域増幅用プライマー対は、
前記(9A)又は(9B)のポリヌクレオチドを含むtrnG-psbI領域増幅用フォワードプライマーと、
前記(10A)又は(10B)のポリヌクレオチドを含むtrnG-psbI領域増幅用リバースプライマーとを含む。
【0069】
前記(9A)のポリヌクレオチドにおける、配列番号9の塩基配列と相同な塩基配列を塩基配列9Aとする。この塩基配列9Aは、配列番号9の塩基配列と、前記(A)、(B)、(C)又は(D)の関係を満たす(配列番号9の塩基配列が塩基配列X、塩基配列9Aが塩基配列Yに相当する)。
【0070】
塩基配列9Aが配列番号9の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列9Aは、配列番号9の塩基配列、或いは、配列番号9の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方から合計で1若しくは数個の塩基が欠失した配列、特に好ましくは配列番号9の塩基配列、或いは、配列番号9の塩基配列において5’末端のみから1若しくは数個の塩基が欠失した配列である。また、塩基配列9Aが配列番号9の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合、より好ましくは、塩基配列9Aは、配列番号9の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方に合計で1若しくは数個の塩基が付加した配列、特に好ましくは配列番号9の塩基配列において5’末端のみに1若しくは数個の塩基が付加した配列であり、特に好ましくは、配列番号15の塩基配列の部分塩基配列であって、配列番号9の塩基配列と、配列番号9の塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方に付加した合計1若しくは数個の塩基とからなる前記部分塩基配列である。
【0071】
前記(9A)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列9Aを含んでいればよく、塩基配列9Aの5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(9A)のポリヌクレオチドは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。前記(9A)のポリヌクレオチドの好ましい実施形態としては、配列番号15に示す大麻草のDNAのtrnG-psbI領域の塩基配列のうち連続した40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下の部分塩基配列であって、塩基配列9Aを3’末端に含む部分塩基配列が挙げられる。より好ましくは前記(9A)のポリヌクレオチドは塩基配列9Aの塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号9に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0072】
前記(9B)のポリヌクレオチドは、配列番号9の塩基配列と相同な塩基配列(すなわち前記の塩基配列9A)のうち3’末端から連続した5塩基以上の塩基からなる部分塩基配列を3’末端に含むポリヌクレオチドである。前記(9B)のポリヌクレオチドにおいて、より好ましくは、塩基配列9Aのうち3’末端から連続した10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含む。
【0073】
前記(9B)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列9Aの前記の部分配列を含んでいればよく、該部分配列の5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(9B)のポリヌクレオチドは、好ましくは40塩基以下、より好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下のポリヌクレオチドである。より好ましくは前記(9B)のポリヌクレオチドは塩基配列9Aの前記部分塩基配列からなり、より好ましくは配列番号9に示す塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0074】
前記(10A)のポリヌクレオチドにおける、配列番号10の塩基配列と相同な塩基配列を塩基配列10Aとする。この塩基配列10Aは、配列番号10の塩基配列と、前記(A)、(B)、(C)又は(D)の関係を満たす(配列番号10の塩基配列が塩基配列X、塩基配列10Aが塩基配列Yに相当する)。
【0075】
塩基配列10Aが配列番号10の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列10Aは、配列番号10の塩基配列、或いは、配列番号10の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方から合計で1若しくは数個の塩基が欠失した配列、特に好ましくは配列番号10の塩基配列、或いは、配列番号10の塩基配列において5’末端のみから1若しくは数個の塩基が欠失した配列である。また、塩基配列10Aが配列番号10の塩基配列と前記(A)の関係を満たす場合は、より好ましくは、塩基配列10Aは、配列番号10の塩基配列において5’末端及び3’末端の一方又は両方に合計で1若しくは数個の塩基が付加した配列、特に好ましくは配列番号10の塩基配列において5’末端のみに1若しくは数個の塩基が付加した配列であり、特に好ましくは、配列番号15に示す大麻草のDNAのtrnG-psbI領域の塩基配列に対する相補塩基配列の部分塩基配列であって、配列番号10の塩基配列と、配列番号10の塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方に付加した合計1若しくは数個の塩基とからなる前記部分塩基配列である。
【0076】
前記(10A)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列10Aを含んでいればよく、塩基配列10Aの5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(10A)のポリヌクレオチドは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下のポリヌクレオチドである。前記(10A)のポリヌクレオチドの好ましい実施形態としては、配列番号15に示す大麻草のDNAのtrnG-psbI領の塩基配列に対する相補塩基配列のうち連続した40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下の部分塩基配列であって、塩基配列10Aを3’末端に含む部分塩基配列が挙げられる。より好ましくは前記(10A)のポリヌクレオチドは塩基配列10Aの塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号10に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0077】
前記(10B)のポリヌクレオチドは、配列番号10の塩基配列と相同な塩基配列(すなわち前記の塩基配列10A)のうち3’末端から連続した5塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含むポリヌクレオチドである。前記(10B)のポリヌクレオチドにおいて、より好ましくは、塩基配列10Aのうち3’末端から連続した10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分の配列を3’末端に含む。
【0078】
前記(10B)のポリヌクレオチドは3’末端に塩基配列10Aの前記の部分配列を含んでいればよく、該部分配列の5’末端側には更に他の塩基配列が付加されていてもよい。前記(10B)のポリヌクレオチドは好ましくは40塩基以下、好ましくは35塩基以下、より好ましくは30塩基以下のポリヌクレオチドである。より好ましくは前記(10B)のポリヌクレオチドは塩基配列10Aの前記部分塩基配列からなり、最も好ましくは配列番号10に示す塩基配列のうち3’末端から連続した5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは12塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の塩基からなる部分塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0079】
trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマーは、前記(9A)又は(9B)のポリヌクレオチドのみからなっていてもよいし、後述する第3の標識部又は第3の結合部を更に含んでもよい。前記ポリヌクレオチドと第3の標識部又は第3の結合部とは、後述する適当なスペーサーを介して化学的に連結することができる。trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマーにおいて、第3の標識部及び第3の結合部の一方が前記ポリヌクレオチドに連結される位置は、前記ポリヌクレオチドと標的領域を含むポリヌクレオチド又はその相補鎖とのアニーリング及び核酸増幅反応における伸長を阻害しない位置であれば特に限定されないが、好ましくは、前記ポリヌクレオチドの5’末端である。
【0080】
trnG-psbI領域増幅用リバースプライマーは、前記(10A)又は(10B)のポリヌクレオチドのみからなっていてもよいし、後述する第3の標識部又は第3の結合部を更に含んでもよい。前記ポリヌクレオチドと第3の標識部又は第3の結合部とは、後述する適当なスペーサーを介して化学的に連結することができる。trnG-psbI領域増幅用リバースプライマーにおいて、第3の標識部及び第3の結合部の一方が前記ポリヌクレオチドに連結される位置は、前記ポリヌクレオチドと標的領域を含むポリヌクレオチド又はその相補鎖とのアニーリング及び核酸増幅反応における伸長を阻害しない位置であれば特に限定されないが、好ましくは、前記ポリヌクレオチドの5’末端である。
【0081】
trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマー及びtrnG-psbI領域増幅用リバースプライマーの少なくとも一方が、第3の標識部を含む場合、これを用いた核酸増幅反応では、第3の標識部を含む増幅産物が得られるため、増幅産物の検出が容易である。
【0082】
trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマー及びtrnG-psbI領域増幅用リバースプライマーの少なくとも一方が、第3の結合部を含む場合、これを用いた核酸増幅反応では、第3の結合部を含む増幅産物が得られるため、増幅産物を固相担体に固定することが可能であり、増幅産物の検出が容易である。
【0083】
<プライマー混合物の特に好ましい実施形態>
本発明のプライマー混合物の特に好ましい実施形態では、
前記ITS1領域増幅用フォワードプライマー及び前記ITS1領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第1の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第1の部分と結合可能なタグである第1の結合部を更に含み、
前記trnL領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnL領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第2の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第2の部分と結合可能なタグである第2の結合部を更に含み、
前記trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnG-psbI領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第3の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第3の部分と結合可能なタグである第3の結合部を更に含む。
【0084】
この実施形態のプライマー混合物に含まれる各プライマー対による増幅産物は、標識部と結合部とを含む二本鎖の増幅産物であるため、核酸クロマトグラフィーによる検出が容易である。以下に、この実施形態について説明する。
【0085】
本実施形態において、第1の標識部、第2の標識部及び第3の標識部は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。以下の説明では、第1の標識部、第2の標識部及び第3の標識部を総称して「標識部」と表示する場合がある。
【0086】
本実施形態において、第1の結合部、第2の結合部及び第3の結合部は、互いに異なるものであることが好ましい。以下の説明では、第1の結合部、第2の結合部及び第3の結合部を総称して「結合部」と表示する場合がある。
【0087】
(標識部)
標識部は、標識物質と結合可能なタグ又は標識物質のいずれかであり、好ましくは標識物質と結合可能なタグである。本明細書では、標識物質と結合可能なタグを標識用タグと呼ぶ場合がある。標識部が標識用タグである場合、核酸増幅反応の増幅産物と標識物質とを接触させることにより増幅産物の一端に含まれるタグを標識することができる。標識部が標識物質である場合、核酸増幅反応の増幅産物として標識物質を一端に含む増幅産物を得ることができる。
【0088】
標識物質は増幅産物の検出を可能とするものであればよく特に限定はされないが、好ましくは増幅産物の目視検出を可能とするものである。このような標識物質としては、着色粒子、色素、酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ等)等が挙げられるが、好ましくは着色粒子である。「着色粒子」とは、金属(例えば、金、銀、銅、白金等)粒子、金属ロッド、着色されたラテックス粒子、色素を包含するシリカナノ粒子等が挙げられるが、これらに限定はされない。標識物質の大きさは増幅産物を後述する固相担体に捕捉するのを妨げるものでなければよい。標識物質は検出の際に発色の良いものであることが好ましく、後述する固相担体や、固相担体を備える核酸検出デバイスの各種多孔質部材の孔径よりも小さなサイズとなるように、適宜選択することができる。例えば、標識物質の大きさはおよそ500nm以下、好ましくはおよそ0.1nm~250nm、より好ましくはおよそ1nm~100nmの粒径とすることができる。色素として、蛍光色素(フルオロセイン、シアニン等)等も使用可能であるが、その場合は各蛍光色素の励起波長光を照射し、検出することが好ましい。
【0089】
標識部として利用可能な標識用タグは、標識物質と結合可能なものであればよく、標識物質の構造に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば核酸(DNA、RNAなど)、タンパク質、ペプチド、もしくは他の化合物(例えば、ビオチン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ジゴキシゲニン(DIG)等の低分子化合物)、またはそれらの組合せからなるものを利用することができる。標識用タグの一つの好ましい形態としては、ポリヌクレオチドを含むか、ポリヌクレオチドからなるものである。標識用タグに含まれ得る該ポリヌクレオチドは、本発明のプライマー混合物による核酸増幅反応の実質的な支障とならないものであれば特に限定されないが、塩基数が例えば5~50、好ましくは10~35であるポリヌクレオチドであり、より好ましくは、配列番号25又は26に示す塩基配列又はその部分塩基配列或いはそれらの相補塩基配列を含む(又はからなる)ポリヌクレオチドを用いることができる。標識用タグのもう一つの好ましい形態としては、ビオチン、FITC、DIG等の低分子化合物からなるものである。
【0090】
標識部が上記の標識用タグである場合、標識物質と標識用タグとの結合は、直接的結合であっても、間接的結合であってもよく、結合手段は利用する標識物質と標識用タグとの組合せに応じて適宜好適なものを選択することができる。例えば、標識用タグがポリヌクレオチドを含む場合、標識物質を当該ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド(例えば、当該ポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な配列を含むポリヌクレオチド)に結合させ、両者のポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションさせることによって、標識物質と標識用タグとを間接的に結合することができる。標識物質とポリヌクレオチドとの結合はペプチド、タンパク質、核酸などを介して行ってもよいし、適当な官能基を介して行ってもよい。ハイブリダイゼーションの条件は、ハイブリダイゼーションが生じる条件であればよく特に限定はされないが、例えば20~40℃にて、10mM~50mMのリン酸を含む緩衝液(pH6~7)中で反応させることにより行うことができる。ハイブリダイゼーション効率を高めるべく、緩衝液にはさらに塩化ナトリウム等の塩を含めることができる。
【0091】
また、標識用タグが低分子化合物の場合、それと特異的に結合するタンパク質(例えばビオチンに結合するアビジン、FITCに結合するタンパク質)、抗体(例えば抗DIG抗体)、アプタマー等の結合性物質と連結した標識物質により標識することができる。この場合、標識用タグと結合性物質とは、各種中性付近の緩衝液を用いて結合させることができる。
【0092】
標識部(標識用タグ又は標識物質)と、ITS1領域増幅用フォワードプライマー、trnL領域増幅用フォワードプライマー及びtrnG-psbI領域増幅用フォワードプライマーから選択されるフォワードプライマーに含まれるポリヌクレオチド、又は、ITS1領域増幅用リバースプライマー、trnL領域増幅用リバースプライマー及びtrnG-psbI領域増幅用リバースプライマーから選択されるリバースプライマーに含まれるポリヌクレオチドとは任意の手段により結合することができ、直接的に、又は間接的に結合することができる。ただし、標識部のうち少なくとも前記ポリヌクレオチドと接続する部分がポリヌクレオチドよりなる場合、核酸増幅反応により当該部分が前記ポリヌクレオチドと共に二本鎖化されないように、DNAポリメラーゼ反応の進行を抑制または停止することが可能なスペーサーを介して、前記ポリヌクレオチドと標識部とが結合される。このような「スペーサー」としては、DNAポリメラーゼ反応の進行を抑制または停止することができ、標識部の二本鎖化を防ぐものであればよく、例えば、強固なヘアピン構造やシュードノット構造を有する核酸配列、L型核酸、ペプチド核酸(PNA)、架橋化核酸(Bridged Nucleic Acid(BNA)もしくはLocked Nucleic Acid(LNA))、フルオレセイン、Cy3、Cy5、下記式Iで表されるアゾベンゼン構造を含む二価基、脂肪鎖(アルキレン鎖又はポリオキシアルキレン鎖)、5’-5’結合、3’-3’結合のような逆位配列構造を含む二価基等が挙げられるがこれらに限定はされない。
【0093】
【化1】
【0094】
式Iで表される二価基を介して2つのポリヌクレオチド分子を接続する場合、該二価基の一方の3’末端のリン酸基は、一方のポリヌクレオチド分子の5’末端のヌクレオチドのリン酸基を指し、他方の5’末端の酸素原子は、他方のポリヌクレオチド分子の3’末端のヌクレオチドのリン酸基とリン酸エステル結合を形成する。
【0095】
脂肪鎖のスペーサーとしては、例えば、以下の式(II)で表されるスペーサーが挙げられる。
5’-O-C2m-O-3’ 式(II)
(式中、5’は、5’末端側のリン酸ジエステル結合の酸素原子を表し、3’は、3’末端側のリン酸ジエステル結合の酸素原子を表し、mは1以上40以下の整数を表す。Hは、置換基により置換されていてもよい。)
式(II)においてmは、好ましくは2以上36以下であり、より好ましくは3以上16以下である。式(II)中のHは、置換基により置換されていてもよく、置換基としては、典型的には、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。置換基としてのアルキル基及びアルコキシ基の炭素数は1~8であることが好ましく、より好ましくは1~4である。また、2以上の置換基を有する場合には、置換基は同一であっても異なっていてもよい。さらに、置換基を有していないことも好ましい。
【0096】
また、他のスペーサーとしては、以下の式(III)で表されるスペーサーが挙げられる。
5’-(OC2n-O-3’ 式(III)
(式中、5’は、5’末端側のリン酸ジエステル結合の酸素原子を表し、3’は、3’末端側のリン酸ジエステル結合の酸素原子を表し、nは2以上4以下の整数を表し、Lは、1以上の整数であって、(n+1)×Lが40以下となる整数を表す。Hは、置換基により置換されていてもよい。)
式(III)において(n+1)×Lは、好ましくは2以上36以下であり、より好ましくは3以上16以下である。式(III)中のHの置換基は、式(II)中の置換基と同様の態様が適用される。
他の脂肪鎖のスペーサーとしては、例えば、以下の二価基が挙げられる。
【0097】
【化2】
【0098】
これらの二価基を介して2つのポリヌクレオチド分子を接続する場合、各二価基の一方の端のリン酸基は、一方のポリヌクレオチド分子の3’末端又は5’末端のヌクレオチドにリン酸基を指し、他方の端の酸素原子は、他方のポリヌクレオチド分子の5’末端又は3’末端のヌクレオチドのリン酸基とリン酸エステル結合を形成する。
【0099】
(結合部及び固相担体)
第1の結合部、第2の結合部及び第3の結合部は、それぞれ、後述する固相担体の第1の部分、第2の部分及び第3の部分と結合可能なタグである。固相担体の第1の部分、第2の部分及び第3の部分は、固相担体上の異なる位置に位置する。本明細書では、固相担体と結合可能なタグを固定化用タグと呼ぶ場合がある。
【0100】
結合部として利用可能な固定化用タグは、固相担体と結合可能なものであればよく、固相担体の構造に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えばポリヌクレオチド(DNA、RNAなど)、タンパク質、ペプチド、もしくは他の化合物(例えば低分子化合物)、またはそれらの組合せからなるものを利用することができる。固定化用タグは、好ましくは、ポリヌクレオチドを含むか、ポリヌクレオチドからなるものである。固定化用タグに含まれ得る該ポリヌクレオチドは、本発明のプライマー混合物による核酸増幅反応の実質的な支障とならないものであれば特に限定されないが、塩基数が例えば5~50、好ましくは10~35であるポリヌクレオチドであり、より好ましくは、配列番号17~24のいずれかの塩基配列又はその部分塩基配列或いはそれらの相補塩基配列を含む(又はからなる)ポリヌクレオチドを用いることができる。
【0101】
固相担体は特に限定はされないが、樹脂、金属、多糖類、鉱物等からなるものを利用することができ、メンブレン、フィルム、不織布、プレート、ゲル等の形状とすることができる。好ましくは、固相担体は、溶液中の増幅産物や標識物質が展開できるように多孔質構造を有するものである。本発明において利用可能な固相担体としては、例えば、ろ紙、ニトロセルロースメンブレン、ポリエーテルスルフォンメンブレン、ナイロンメンブレン、乾燥させた各種ゲル(シリカゲル、アガロースゲル、デキストランゲル、ゼラチンゲル)、シリコン、ガラス、プラスチック等が挙げられる。固相担体の大きさ及び形態は、各種操作や検出に適切なものを適宜選択することができる。
【0102】
固相担体は、第1の部分、第2の部分及び第3の部分がそれぞれ固定化用タグと結合可能なように構成されていればよく、より好ましくはこれらの部分のみが固定化用タグと結合可能なように構成されている。固相担体の特定の部分のみを固定化用タグと結合可能なように構成することによって、固相担体に捕捉された増幅産物は前記部分のみに限局して検出されるため、陽性又は陰性の判別を容易にすることができる。
【0103】
固相担体と固定化用タグとの結合は、直接的結合であっても、間接的結合であってもよく、結合手段は利用する固相担体と固定化用タグとの組合せに応じて適宜好適なものを選択することができる。例えば、第1の結合部(固定化用タグ)、第2の結合部(固定化用タグ)、第3の結合部(固定化用タグ)が、それぞれ、互いに異なる第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、第3のポリヌクレオチドを含む場合、固相担体の第1の部分、第2の部分、第3の部分に、それぞれ、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、第3のポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド(例えば、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、第3のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な配列を含むポリヌクレオチド)を固定化してタグ捕捉手段とし、両者のポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションさせることによって、固相担体と固定化用タグとを間接的に結合することができる。固相担体へのポリヌクレオチドの固定化はペプチド、タンパク質、核酸などを介して行ってもよいし、適当な官能基を介して行ってもよい。ハイブリダイゼーションの条件は、標識用タグと標識物質との結合に関して上記した条件により行うことができる。第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、第3のポリヌクレオチドを固相担体の第1の部分、第2の部分、第3の部分に固定化する場合、特定の部分に限局して固定化することによって、捕捉された増幅産物は所定の部分のみに限局して検出されるため、陽性又は陰性の判別を容易にすることができる。
【0104】
結合部(固定化用タグ)と、ITS1領域増幅用フォワードプライマー、trnL領域増幅用フォワードプライマー及びtrnG-psbI領域増幅用フォワードプライマーから選択されるフォワードプライマーに含まれるポリヌクレオチド、又は、ITS1領域増幅用リバースプライマー、trnL領域増幅用リバースプライマー及びtrnG-psbI領域増幅用リバースプライマーから選択されるリバースプライマーに含まれるポリヌクレオチドとは任意の手段により結合することができ、直接的に、又は間接的に結合することができる。ただし、固定化用タグのうち少なくとも前記ポリヌクレオチドと接続する部分が核酸よりなる場合、核酸増幅反応により当該部分が前記ポリヌクレオチドと共に二本鎖化されないように、DNAポリメラーゼ反応の進行を抑制または停止することが可能なスペーサーを介して、前記ポリヌクレオチドと固定化用タグとが結合される。結合部とポリヌクレオチドとの間に設けるスペーサーの具体例は、標識部とポリヌクレオチドとの間に設けるスペーサーに関して上述したものと同様である。
【0105】
<大麻草由来のDNAを含む検体の判別方法>
本発明はまた、
検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であることを判別する方法であって、
検体から分離したDNA、及び、本発明の前記プライマー混合物を含む反応系中で核酸増幅反応を行う第1工程、並びに、
前記核酸増幅反応による増幅産物を確認する第2工程、
を含み、
前記第2工程において、前記ITS1領域増幅用プライマー対による増幅産物、前記trnL領域増幅用プライマー対による増幅産物、及び、前記trnG-psbI領域増幅用プライマー対による増幅産物が、全て確認された場合に、前記検体を、大麻草由来のDNAを含む検体であると判別する方法に関する。
【0106】
本発明の判別方法では、緑色植物のDNAに共通した領域の増幅と、大麻草のDNAに特異的な2つの領域の増幅を確認するため、偽陽性判定のリスクを低減することができる。
【0107】
本発明において対象となる検体は、大麻草由来のDNAを含む可能性のある検体であればよく、例えば、大麻草を含む可能性のある植物体又はその処理物が例示できる。大麻草が他の植物体(例えばタバコ葉)と混合された検体に対しても、本発明の判別方法は有効である。
【0108】
前記第1工程で鋳型として用いるDNAは、検体から抽出され精製された形態であってもよいし、検体から抽出され粗精製された形態であってもよい。あるいは、細胞や組織の一部等の比較的高濃度でDNAを含む検体であれば、検体自体をそのまま核酸増幅反応に含めることもできる。
【0109】
前記第1工程における核酸増幅反応は、一般的なPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法に従って行うことができる。すなわちDNA中に存在する所定の標的領域の断片が増幅されるPCR条件にて行うことができる。
【0110】
PCRに用いるDNAポリメラーゼは、耐熱性のDNAポリメラーゼであればよく、特に限定はされない。本発明においては、市販のDNAポリメラーゼを利用することが可能であり、例えばTaKaRa Ex Taq(登録商標)等を好適に利用することができる。また、温度、時間、緩衝液の組成等は、用いるDNAポリメラーゼや、各プライマーの濃度等に応じて、適宜選択することができる。
【0111】
ホットスタートPCR法は、プライマーダイマーの形成を抑制する効果が期待できることから有用である。ホットスタートPCR法は、TaKaRa Ex Taq(登録商標)Hot Start Version(タカラバイオ)等の市販のホットスタートPCR用試薬を用いて行うことができる。また、TaKaRa Taq HS PCR Kit,UNG plus(登録商標)を使用することもでき、このキットを用いることで核酸増幅産物のキャリーオーバーコンタミネーションを抑制する効果も期待できる。
【0112】
PCR法でのサイクル数は25サイクル以上が好ましく、30サイクル以上がより好ましい。サイクル数の上限は特に限定されないが通常は60サイクル以下、好ましくは50サイクル以下である。
【0113】
PCR法での反応系中の開始時のプライマー濃度は特に限定されず、鋳型となるDNA等に応じて適宜調整することができる。反応系中の反応開始時の好ましい各プライマーの濃度としては、各々0.05μM以上、1.0μM以下という濃度が挙げられる。0.05μM未満の場合、検出感度が低下して基準となる検出感度の低下が生じる可能性がある。また、プライマー濃度の上限は特に限定されないが、好ましくは1.0μMである。
【0114】
前記第1工程では、検体から分離したDNA中に標的領域が含まれている場合、増幅産物として所定の標的領域を含むDNA断片が生じる。
【0115】
前記第2工程では、前記ITS1領域増幅用プライマー対による増幅産物、前記trnL領域増幅用プライマー対による増幅産物、及び、前記trnG-psbI領域増幅用プライマー対による増幅産物の有無を確認する。前記第2工程における増幅産物の確認方法は特に限定されず、例えば、前記第1工程終了後に、核酸増幅反応の反応液をゲル電気泳動により分画し、各プライマー対による所定の標的領域を含むDNA断片に相当するサイズのバンドの有無を確認する方法や、核酸増幅反応の反応液又はその精製物に、各プライマー対による所定の標的領域を含むDNA断片に特異的な、標識化されたポリヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、複合体を検出する方法が例示できる。
【0116】
また、前記第1工程の核酸増幅反応を、5’末端にレポーター蛍光物質が連結され、3’末端にクエンチャー色素を連結されたポリヌクレオチドプローブの存在下で行い、各プライマー対による所定の標的領域を含むDNA断片が増幅した場合に生じる蛍光を指標として、DNA断片を検出することも前記第2工程の一態様である。
【0117】
また、本発明のプライマー混合物において、
前記ITS1領域増幅用フォワードプライマー及び前記ITS1領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第1の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第1の部分と結合可能なタグである第1の結合部を更に含み、
前記trnL領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnL領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第2の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第2の部分と結合可能なタグである第2の結合部を更に含み、
前記trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnG-psbI領域増幅用リバースプライマーの一方が、標識物質と結合可能なタグである又は標識物質である第3の標識部を更に含み、他方が、固相担体の第3の部分と結合可能なタグである第3の結合部を更に含む
場合には、前記第2工程は、固相担体を用いた以下の工程であることが好ましい。
【0118】
(固相担体を用いた第2工程)
この実施形態に係る前記第2工程は、前記第1工程における核酸増幅反応の生成物を、前記第1の部分、前記第2の部分、及び、前記第3の部分を含む固相担体に接触させ、前記固相担体の前記第1の部分において、前記第1の標識部を指標として前記ITS1領域増幅用プライマー対による増幅産物(第1の増幅産物)を確認し、前記固相担体の前記第2の部分において、前記第2の標識部を指標として前記trnL領域増幅用プライマー対による増幅産物(第2の増幅産物)を確認し、前記固相担体の前記第3の部分において、前記第3の標識部を指標として前記trnG-psbI領域増幅用プライマー対による増幅産物(第3の増幅産物)を確認することを含む。
【0119】
第1~第3の標識部が上述の標識用タグである場合には、標識物質を標識用タグに結合させる標識工程を更に行えばよい。標識工程の詳細は後述する。標識部が上述の標識物質である場合には標識工程は不要である。前記第2工程において「前記第1の標識部を指標として」、「前記第2の標識部を指標として」又は「前記第3の標識部を指標として」とは、第1~第3の標識部が標識用タグである場合には標識工程を経て結合した標識物質を指標として第1~第3の増幅産物を検出し確認することを指し、第1~第3の標識部が標識物質である場合には該標識物質を指標として第1~第3の増幅産物を検出し確認することを指す。
【0120】
核酸増幅反応の生成物とは、第1~第3の増幅産物を含んでいる可能性のある核酸増幅反応の反応液や、該反応液から第1~第3の増幅産物を更に高濃度化した試料等を指す。
【0121】
固相担体の詳細は既述の通りである。
固相担体の第1~第3の部分への、前記生成物の接触は、固相担体の第1~第3の部分と第1~第3の結合部との組合せに応じて、前記生成物中に第1~第3の増幅産物が含まれていた場合に前記部分に第1~第3の増幅産物の結合部が結合するように適宜調節された条件(例えば、ハイブリダイゼーションの条件、もしくはpH5~9程度の緩衝液条件)で行えばよい。
【0122】
例えば、前記核酸増幅反応の生成物である液体、或いは、前記核酸増幅反応の生成物に展開液又は希釈液を混合した液体を、前記第1~第3の部分を備えた多孔質の固相担体の一部に接触させることで、毛管現象により前記液体を前記固相担体内で移動させて展開し、前記液体中の第1~第3の増幅産物を、前記第1~第3の部分に到達させる方法が例示できる。前記核酸増幅反応の生成物である液体と、展開液は、前記固相担体の一部に同時に接触させる必要はなく、順に接触させてもよい。前記液体には必要に応じて標識物質を添加してもよい。このようなクロマトグラフィーを利用した核酸検出方法のための固相担体を備えた核酸検出デバイスをクロマト型核酸検出デバイスという。
【0123】
第1~第3の増幅産物の確認は、固相担体の第1~第3の部分に捕捉された第1~第3の増幅産物に結合した前記標識物質を検出、好ましくは目視検出することにより行うことができる。第1~第3の増幅産物が存在する場合には、固相担体の第1~第3の部分に捕捉・結合された第1~第3の増幅産物の標識物質が検出される。
【0124】
(標識工程)
標識工程は、本発明のプライマー混合物に含まれる前記第1~第3の標識部が上述の標識用タグである場合に行う工程であり、核酸増幅反応の生成物と標識物質とを接触させ、標識用タグに標識物質に結合させることにより行う。標識工程は、核酸増幅反応の生成物を固相担体に接触させる前に行ってもよいし、接触させた後に行ってもよいし、接触させると同時に行ってもよい。
【0125】
標識物質と前記生成物との接触は、標識物質と標識用タグとの組合せに応じて、前記生成物中に第1~第3の増幅産物が含まれていた場合に標識物質と第1~第3の増幅産物の標識用タグとが結合するように適宜調節された条件(例えば既述のハイブリダイゼーションの条件、もしくはpH5~9程度の緩衝液条件)で行えばよい。
【0126】
(検出デバイス)
上述の第2工程及び標識工程は、核酸クロマトグラフィーを利用する核酸検出デバイスを用いて行うことができる。当該核酸検出デバイスを利用することにより、核酸増幅反応の反応系中の第1~第3の増幅産物(標的領域を含むポリヌクレオチド断片)の有無を、特殊な装置を必要とすることなく検出・判別することができ、簡便かつ迅速に結果を得ることができる。
【0127】
核酸検出デバイスは、核酸クロマトグラフィー法により標識された核酸増幅産物を検出するために利用される公知の核酸検出デバイス(WO2012/070618)を利用することができる。
【0128】
本発明にて利用可能な核酸検出デバイスの一実施形態の模式図を図4に示すが、核酸検出デバイスは本実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明において、各部材に付された符号は、図4中に示される符号に対応する。
【0129】
図4のクロマト型核酸検出デバイス10は、基材5の上に、核酸増幅反応の反応系を受容するための反応系受容部であるサンプルパッド3、標識物質を保持するコンジュゲートパッド(標識物質保持部)2、固相担体1及び吸収パッド4を互いがこの順に接触するように配置して形成される。固相担体1は、図3Bに示すように、互いに異なる位置に、第1の部分6-1、第2の部分6-2及び第3の部分6-3を含む。固相担体1の第1の部分6-1は、第1の増幅産物に含まれる第1の結合部と結合可能な部分であり、第1の増幅産物を捕捉するための手段(捕捉手段)(例えば、第1の結合部がポリヌクレオチドである場合に、該ポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド等)が限局して配置・固定化された部分である。固相担体1の第2の部分6-2は、第2の増幅産物に含まれる第2の結合部と結合可能な部分であり、第2の増幅産物を捕捉するための手段(捕捉手段)(例えば、第2の結合部がポリヌクレオチドである場合に、該ポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド等)が限局して配置・固定化された部分である。固相担体1の第3の部分6-3は、第3の増幅産物に含まれる第3の結合部と結合可能な部分であり、第3の増幅産物を捕捉するための手段(捕捉手段)(例えば、第3の結合部がポリヌクレオチドである場合に、該ポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド等)が限局して配置・固定化された部分である。図示しないが、固相担体1の表面はフィルムにより覆われていてもよい。サンプルパッド3、コンジュゲートパッド2、固相担体1及び吸収パッド4は上記固相担体として利用可能な多孔質構造を有する部材により構成することができる。これらは同一の部材より構成されていてもよいし、異なる部材より構成されていてもよい。基材5はその上に配置された各種部材を支持することができ、核酸検出デバイスの操作を容易にするものであればよく、例えば樹脂、金属、鉱物等からなるものを利用することができる。標識物質を展開溶液中に混合する場合や、標識部が標識物質である場合には、コンジュゲートパッド2は省略することができる。
【0130】
前記第1工程により得られた核酸増幅反応の生成物をサンプルパッド3に添加する。前記核酸増幅反応の反応液をそのまま添加してもよいし、適当な展開溶液(例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、グッド緩衝液、SSC緩衝液)と共に添加してもよい。展開溶液には必要に応じて、界面活性剤、塩、タンパク質、核酸等をさらに含めることができる。サンプルパッド3に添加された前記反応液は、図4中の矢印で示す方向に上流から下流に向かってキャピラリー現象により展開する。
【0131】
また別の態様としては、核酸増幅反応の生成物及び/又は展開溶液を保持した容器(例えば、PCRチューブ、エッペンチューブ、96穴プレート等)に前記クロマト型核酸検出デバイスを入れ、サンプルパッド3を核酸増幅反応の生成物及び/又は展開溶液に浸漬させる方法で展開することもできる。その場合、核酸増幅反応の生成物及び/又は展開溶液を保持した容器にサンプルパッド3が入るように、サンプルパッド3の幅は2.0~10.0mmにすることが好ましく、2.0~5.0mmにすることがより好ましい。
【0132】
前記第1~第3の標識部が標識用タグである実施形態では、反応系中の第1~第3の増幅産物は標識物質が保持されたコンジュゲートパッド2を通過する際に、標識物質と接触し、標識用タグを介して標識物質により標識される。
【0133】
次いで、反応系中の第1の増幅産物は、固相担体1を通過する際に、第1の部分6-1に固定された捕捉手段と接触し、固定化用タグを介して固相担体1の第1の部分6-1に捕捉・結合される。反応系中の第2の増幅産物は、固相担体1を通過する際に、第2の部分6-2に固定された捕捉手段と接触し、固定化用タグを介して固相担体1の第2の部分6-2に捕捉・結合される。反応系中の第3の増幅産物は、固相担体1を通過する際に、第3の部分6-3に固定された捕捉手段と接触し、固定化用タグを介して固相担体1の第3の部分6-3に捕捉・結合される。
【0134】
検体から分離したDNA中に標的領域が存在する場合には、捕捉手段を含む固相担体1の第1の部分6-1、第2の部分6-2、第3の部分6-3に捕捉・結合された第1~第3の増幅産物に結合した標識物質が検出される。標識物質が目視確認できるものであれば、標識物質に起因して第1の部分6-1、第2の部分6-2、第3の部分6-3が呈色する。当該標識物質の検出(呈色)の有無を指標にして、第1~第3の増幅産物の有無を検出することができる。
【0135】
<キット>
本発明はまた、検体が、大麻草由来のDNAを含む検体であることを判別するためのキットであって、
前記ITS1領域増幅用フォワードプライマー及び前記ITS1領域増幅用リバースプライマーの一方が、前記第1の標識部を更に含み、他方が、前記第1の結合部を更に含み、
前記trnL領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnL領域増幅用リバースプライマーの一方が、前記第2の標識部を更に含み、他方が、前記第2の結合部を更に含み、
前記trnG-psbI領域増幅用フォワードプライマー及び前記trnG-psbI領域増幅用リバースプライマーの一方が、前記第3の標識部を更に含み、他方が、前記第3の結合部を更に含む
実施形態に係るプライマー混合物、並びに、
前記第1の部分、前記第2の部分、及び、前記第3の部分を含む固相担体を備える核酸検出デバイス
を含むキットに関する。
【0136】
本発明のキットには、更に、核酸増幅反応のための各種試薬(例えばDNAポリメラーゼ、核酸増幅反応用緩衝液、dNTPs等)、インキュベーションのための各種試薬(インキュベーション用緩衝液)等を含めることができる。
【0137】
本発明のキットは、前記プライマー混合物における前記第1~第3の標識部が、標識物質と結合可能な標識用タグである場合には、標識用タグと結合可能な標識物質を更に含むことが好ましい。この実施形態では、前記核酸検出デバイスが、前記標識物質を保持する標識物質保持部を更に備えることが好ましい。
【実施例
【0138】
<実施例1>大麻草DNA検出用プライマーの設計
(1)プライマーの設計
大麻草を検出するためのプライマー対として、非特許文献1に記載されている大麻草特異的なフォワードプライマーcpCan(配列番号5)と、trnL遺伝子のイントロン領域に設計したリバースプライマーCanRv(配列番号8)とからなる、trnL遺伝子の大麻草(Cannabis sativa)に特異的な領域を増幅するプライマー対を用いた。大麻草のtrnL遺伝子の塩基配列(配列番号14)における、前記プライマー対(配列番号5、配列番号8)の設計位置を図2に示す。
【0139】
フォワードプライマーcpCan(配列番号5)の5’末端側に、ポリメラーゼ阻害物質としてアゾベンゼン構造を含む上記式Iで表される二価基を介して、金コロイド標識用のDNAタグ配列Au(配列番号25)を連結した。リバースプライマーCanRv(配列番号8)の5’末端側に、ポリメラーゼ阻害物質としてアゾベンゼン構造を含む上記式Iで表される二価基を介して、核酸クロマトグラフィーのメンブレン捕捉用のDNAタグ配列T1(配列番号17)を連結した。
【0140】
緑色植物を検出するためのプライマー対として、ITS1領域内に設計された非特許文献5に記載のフォワードプライマーITS-A(配列番号1)と、リバースプライマーITS-C(配列番号2)とからなる、緑色植物に共通するITS1領域を増幅するプライマー対を用いた。大麻草のITS1領域の塩基配列(配列番号13)における、前記プライマー対(配列番号1、配列番号2)の設計位置を図1に示す。
【0141】
フォワードプライマーITS-A(配列番号1)の5’末端側に、上記二価基を介してメンブレン捕捉用のDNAタグ配列T2(配列番号18)を連結した。リバースプライマーITS-C(配列番号2)の5’末端側に、金コロイド標識用のDNAタグ配列Au(配列番号25)を連結した。
【0142】
(2)ポリヌクレオチド結合金コロイドの作製
Gold Colloid(40nm、9.0×1010(粒子数/ml)、British Biocell International社製)と、3’末端にSH基を付加した上記金コロイド標識用のDNAタグ配列Auの相補鎖Au-comp(配列番号26)とを混合し、50℃で16時間インキュベートした。6000rpmで15分間遠心分離し、上清を除去し、0.05M塩化ナトリウム、5mMリン酸バッファー(pH7)を添加し混和後、再度50℃で40時間インキュベートした。
インキュベート後、遠心(6000rpm、15分間)を行い、上清を除去し、5mMリン酸バッファー(pH7)を添加した。このバッファー置換を再度行った。
調製した金コロイド溶液をグラスファイバー製パッドに均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、コンジュゲートパッドとした。
【0143】
(3)タグ捕捉手段を固定化したメンブレンの作製
タグ捕捉手段として、上記のDNAタグ配列T1の相補塩基配列からなるDNA(配列番号21)を含む溶液及び上記のDNAタグ配列T2の相補塩基配列からなる(配列番号22)DNAを含む溶液を、それぞれ、1つのメルクミリポア社製ニトロセルロースメンブレン(Hi-Flow180)上の位置の異なる2つの部分(図3Aの第2の部分6-2及び第1の部分6-1)に、ディスペンサーを用いて、展開方向と直交する幅1mmのライン状に塗布した。その後40℃で30分間乾燥させることで、タグ捕捉手段を備えたメンブレンとした。
【0144】
(4)クロマト型核酸検出デバイスの作製
作製したクロマト型核酸検出デバイスは、図4の模式図に示される検出デバイスに準拠して作製した。
すなわち、基材5としてポリプロピレン製バッキングシート(Lohmann社)、コンジュゲートパッド2として上記(2)で作製したコンジュゲートパッド、メンブレン(固相担体)1として、上記(3)で作製した、第2の部分6-2及び第1の部分6-1に、それぞれ、タグ配列T1の相補塩基配列からなるDNA(配列番号21)及びタグ配列T2の相補塩基配列からなるDNA(配列番号22)を備えた図3Aに示すメンブレン、サンプルパッド3としてグラスファイバー製のサンプルパッド、吸収パッド4としてセルロース製の吸収パッドを、それぞれ図4に示すように互いに重なり合わせて貼り合わせ、クロマト型核酸検出デバイス10を作製した。図3Aに示すメンブレン1の第1の部分6-1が、緑色植物に共通するITS1領域の増幅産物の検出ラインである。図3Aに示すメンブレン1の第2の部分6-2が、大麻草に特異的なtrnL領域の増幅産物の検出ラインである。
【0145】
(5)PCR
上記(1)に記載の、ITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、trnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)とを含む、下記のマルチプレックスPCR反応液を調製した。
大麻草DNAの鋳型として、鳥の餌用に販売されているあさの実から抽出したDNAを使用した。大麻草の近縁種のDNAの鋳型として、ホップから抽出したDNAを使用した。
【0146】
【表1】
【0147】
PCR反応液を、サーマルサイクラー(Bior社、LifeEco)にセットし、95℃で3分間反応後、94℃-10秒/59℃-10秒/72℃-40秒のサイクルを40回行なった。
【0148】
(6)核酸クロマトグラフィー検出系を用いた検出
上記条件でのPCR後の反応液を、ラテラルフロー型核酸検出デバイス10に適用して、増幅産物の検出を試みた。具体的には、前記デバイス10上のサンプルパッド3にPCR後の反応液5μLを添加し、さらに80μLの展開溶液(界面活性剤を配合したクエン酸緩衝液)を添加することで、反応液を展開した。室温で10分後、メンブレン1上の第1の部分6-1(緑色植物検出ライン)と第2の部分6-2(大麻草検出ライン)の着色の有無を目視で確認した。着色が確認できた場合に「+」、確認できなかった場合に「-」とした。
結果を下記表に示す。表中の比較例1~3で用いたプライマー対は後述する。
【0149】
【表2】
【0150】
緑色植物検出用に配列番号1のフォワードプライマー及び配列番号2のリバースプライマーからなるITS1検出用プライマー対、大麻草検出用に配列番号5のフォワードプライマー及び配列番号8のリバースプライマーからなるtrnL領域検出用プライマー対を組み合わせて用いると、大麻草及びホップを適切なライン着色パターンで検出することができた。
【0151】
<比較例1>
緑色植物を検出するためのプライマー対として、実施例1のITS1検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)に代えて、trnL遺伝子のエクソン領域に設計したフォワードプライマーC-uni(配列番号6)とリバースプライマーD-uni(配列番号7)とからなる、trnL遺伝子の緑色植物に共通する領域を増幅するプライマー対を使用し、大麻草を検出するためのプライマー対として、実施例1のtrnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)に代えて、trnL遺伝子のイントロン領域に設計したフォワードプライマーcpCan(配列番号5)とtrnL遺伝子のエクソン領域に設計したリバースプライマーD-uni(配列番号7)とからなる、trnL遺伝子の大麻草に特異的な領域を増幅するプライマー対を使用した以外は、実施例1と同様に評価を実施した。
【0152】
<比較例2>
緑色植物を検出するためのプライマー対として、実施例1のITS1検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)に代えて、rbcLa領域に設計したフォワードプライマーrbcLa-F(配列番号3)とリバースプライマーrbcLa-R(配列番号4)とからなる、rbcLa遺伝子の緑色植物に共通する領域を増幅するプライマー対を使用した以外は、実施例1と同様に評価を実施した。
【0153】
<比較例3>
大麻草を検出するためのプライマー対として、実施例1のtrnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)に代えて、フォワードプライマーcpCan(配列番号5)とリバースプライマーD-uni(配列番号7)とからなる、trnL遺伝子の大麻草に特異的な領域を増幅するプライマー対を使用した以外は、実施例1と同様に評価を実施した。
【0154】
<比較例1~3の結果>
緑色植物検出用プライマー対及び大麻草検出用プライマー対をいずれもtrnL遺伝子に設計した比較例1では、大麻草を検体に用いた場合に大麻草検出ラインのみが着色し、緑色植物検出ラインが着色しなかった。
【0155】
大麻草検出用プライマー対としてtrnL遺伝子に設計した配列番号5、8を使用し、緑色植物検出用プライマー対としてrbcLa領域に設計した配列番号3、4を使用した比較例2ではホップを検体とした場合に大麻草検出ラインの非特異的な着色を認めた。
【0156】
同様に、大麻草検出用プライマー対としてtrnL遺伝子に設計した配列番号5、7を使用し、緑色植物検出用プライマー対としてITS1領域に設計した配列番号1、2を使用した比較例3でも、ホップを検体とした場合に大麻草検出ラインの非特異的な着色を認めた。
【0157】
<実施例2>
(1)プライマーの設計
大麻草を検出するための追加のプライマー対として、trnG-psbI遺伝子の大麻草特異的領域に設計したフォワードプライマーtrnG-psbI-F(配列番号9)とリバースプライマーtrnG-psbI-Rv(配列番号10)とからなる、trnG-psbI領域検出用プライマー対を用いた。大麻草のtrnG-psbI遺伝子の塩基配列(配列番号15)における、前記プライマー対(配列番号9、配列番号10)の設計位置を図5に示す。
【0158】
フォワードプライマーtrnG-psbI-F(配列番号9)の5’末端側に、ポリメラーゼ阻害物質としてアゾベンゼン構造を含む上記式Iで表される二価基を介して、金コロイド標識用のDNAタグ配列Au(配列番号25)を連結した。
【0159】
リバースプライマーtrnG-psbI-Rv(配列番号10)の5’末端側に、ポリメラーゼ阻害物質としてアゾベンゼン構造を含む上記式Iで表される二価基を介して、核酸クロマトグラフィーのメンブレン捕捉用のDNAタグ配列T3(配列番号19)を連結した。
【0160】
(2)クロマト型核酸検出デバイスの作製
実施例1の(3)で作製したメンブレンにおいて、更に、第1の部分6-1及び第2の部分6-2とは異なる第3の部分6-3に、タグ配列T3の相補塩基配列からなるDNA(配列番号23)を固定化した、図3Bに示すメンブレンを作製した。第3の部分6-3にタグ配列T3の相補塩基配列からなるDNA(配列番号23)を固定化する手順は、実施例1の(3)に記載の手順と同様である。こうして作製した図3Bに示すメンブレン1を備える、図4に示すクロマト型核酸検出デバイス10を、実施例1の(4)と同様の手順で作製した。図3Bに示すメンブレン1の第1の部分6-1が、緑色植物に共通するITS1領域の増幅産物の検出ラインである。図3Bに示すメンブレン1の第2の部分6-2が、大麻草に特異的なtrnL領域の増幅産物の検出ラインである。図3Bに示すメンブレン1の第3の部分6-3が、大麻草に特異的なtrnG-psbI領域の増幅産物の検出ラインである。
【0161】
(3)PCR及び検出
上記のtrnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)を用いて、実施例1と同様の方法でシングルPCRを実施した。また、trnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)と、実施例1に記載のITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、実施例1に記載のtrnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)とを含むプライマー混合物を用いたマルチプレックスPCRを実施した。PCRによる核酸増幅は実施例1と同様に行った。核酸増幅反応後の容器に160μLの展開液を添加して混合し、この容器中に、実施例1の(6)に記載のクロマト型核酸検出デバイス10のサンプルパッド3側の端部を挿入して反応液に浸すことで、反応液を展開した。室温で10分後のライン着色を確認した。
【0162】
<比較例4>
大麻草を検出するための別の追加のプライマー対として、実施例2に記載のtrnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)に代えて、clpP領域に設計したフォワードプライマーclpP-2F(配列番号11)とリバースプライマーclpP-2R(配列番号12)とからなるclpP領域検出用プライマー対を使用した以外は、実施例2と同様の検討を行った。大麻草のclpP遺伝子の塩基配列(配列番号16)における、前記プライマー対(配列番号11、配列番号12)の設計位置を図6に示す。この場合、図3Bに示すメンブレン1の第3の部分6-3が、大麻草に特異的なclpP領域の増幅産物の検出ラインである。
【0163】
<実施例2、比較例4の結果>
実施例2において、追加の大麻草DNA検出用プライマー対としてtrnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)を用いたシングルPCR後に検出デバイスで検出した結果、並びに、ITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、trnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、trnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)とを含むプライマー混合物を用いたマルチプレックスPCR後に検出デバイスで検出した結果を図7に示す。
【0164】
図7及び後述する図8において、「NC」とは、鋳型を含まない条件でPCR増幅を行って得たサンプルの検出結果を示し、「Hop」とは、ホップから抽出したDNAを鋳型としてPCR増幅を行って得たサンプルの検出結果を示し、「大麻」とは、鳥の餌用に販売されているあさの実から抽出したDNA(大麻草DNA)を鋳型としてPCR増幅を行って得たサンプルの検出結果を示す。PCRの条件は実施例1の(5)に記載の通りである。
【0165】
実施例2では、大麻草DNAを鋳型とした場合に、シングルPCRでtrnG-psbI領域の増幅産物の検出ラインの着色が確認され、マルチプレックスPCRで、緑色植物DNAに共通するITS1領域の増幅産物の検出ラインに加えて、大麻草DNAに特異的な、trnG-psbI領域の増幅産物の検出ラインと、trnL領域の増幅産物の検出ラインの着色が確認された。一方、ホップから抽出したDNAを鋳型とした場合には、シングルPCRではtrnG-psbI領域の増幅産物の検出ラインの着色は確認されず、マルチプレックスPCRでは、緑色植物DNAに共通するITS1領域の増幅産物の検出ラインのみの着色が確認され、大麻草DNAに特異的な増幅産物の検出ラインの着色は確認されなかった。
【0166】
比較例4において、追加の大麻草検出用プライマー対としてclpP領域検出用プライマー対(配列番号11、配列番号12)を用いたシングルPCR後に検出デバイスで検出した結果、並びに、ITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、trnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、clpP領域検出用プライマー対(配列番号11、配列番号12)とを含むプライマー混合物を用いたマルチプレックスPCR後に検出デバイスで検出した結果を図8に示す。
【0167】
比較例4においてclpP領域検出用プライマー対(配列番号11、配列番号12)を用いたシングルPCRでは、大麻草DNAを鋳型とした場合(大麻)にclpP領域の増幅産物の検出ラインの着色が確認され、鋳型を用いない場合(NC)及びホップから抽出したDNAを鋳型とした場合(Hop)にはclpP領域の増幅産物の検出ラインの着色は確認されなかった。しかし、マルチプレックスPCRでは、鋳型を用いない場合(NC)及びホップから抽出したDNAを鋳型とした場合(Hop)だけでなく大麻草DNAを鋳型とした場合(大麻)においても、clpP領域の増幅産物の検出ラインの着色は確認されず、鋳型を用いない場合(NC)、ホップから抽出したDNAを鋳型とした場合(Hop)及び大麻草DNAを鋳型とした場合(大麻)のいずれにおいても、trnL領域の増幅産物の検出ラインが着色されてしまい、適切な着色パターンとはならなかった。
【0168】
<実施例3>
薬物種大麻及び繊維種大麻の各部位(葉、花穂、根、茎、種子)から抽出したDNAを鋳型として用い、緑色植物検出のためのITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、大麻草検出のためのtrnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、大麻草検出のためのtrnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)とを含むプライマー混合物を用いて、実施例2と同様の条件でマルチプレックスPCRを行った。PCR後の反応液を核酸検出デバイスでの検出を行った。結果を下記表に示す。
【0169】
【表3】
【0170】
前記プライマー混合物を用いたマルチプレックスPCRでは、大麻草のいずれの部位を用いても適切なライン着色パターンでの検出が可能であった。また、薬物種大麻と繊維種大麻で同様の結果が得られた。このことから、本方法は大麻草DNAの特異的な検出に有効であることが示された。
【0171】
<実施例4>
大麻草とタバコを重量比で1:1~1:99の割合で混合した試料(10mg)から抽出したDNAを鋳型として用い、実施例3と同様に、緑色植物検出のためのITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、大麻草検出のためのtrnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、大麻草検出のためのtrnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)とを含むプライマー混合物を用いてマルチプレックスPCRを行った。増幅産物の評価は実施例2及び3と同様に実施した。結果を下記表に示す。
【0172】
【表4】
【0173】
大麻草とタバコの混合比率が重量比で1:99の検体から抽出されたDNAを鋳型とした場合でも、緑色植物に共通するITS1領域の増幅産物の検出ラインに加えて、大麻草に特異的な、trnL領域の増幅産物の検出ライン及びtrnG-psbI領域増幅産物の検出ラインが着色することが確認できた。このことから、本方法は大麻草と他の植物との混合試料中での大麻草DNAの検出にも有効であることが示された。
【0174】
<実施例5>
薬物種大麻から抽出したDNAを10ng~1fgまで段階希釈したものを鋳型とし、ITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、trnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、trnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)とを含むプライマー混合物を用いて、実施例2~4と同様の手順によりマルチプレックスPCR及び検出を行った。結果を図9に示す。
本方法による大麻草DNAの検出下限は10fgであり、非常に優れた検出性能を有することが示された。
【0175】
<実施例6>
大麻草以外の植物、危険ドラッグ、指定薬物の植物から抽出したDNAを鋳型とし、ITS1領域検出用プライマー対(配列番号1、配列番号2)と、trnL領域検出用プライマー対(配列番号5、配列番号8)と、trnG-psbI領域検出用プライマー対(配列番号9、配列番号10)とを含むプライマー混合物を用いて、実施例2~5と同様の手順によりマルチプレックスPCR及び検出を行った。結果を下記表に示す。
【0176】
【表5】
【0177】
大麻以外の植物、危険ドラッグ及び指定薬物の植物を大麻と誤認することはなかった。
【0178】
【表6】
【0179】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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