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特許7068479巻き付けられた中空カーボンナノチューブヤーンによる油圧筋肉
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  • 特許-巻き付けられた中空カーボンナノチューブヤーンによる油圧筋肉 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】巻き付けられた中空カーボンナノチューブヤーンによる油圧筋肉
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20220509BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20220509BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20220509BHJP
   B01J 21/10 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A61F2/08
C01B32/168
B01J23/50 M
B01J21/10 M
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020544518
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019019233
(87)【国際公開番号】W WO2019165265
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】62/634,122
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518380665
【氏名又は名称】リンテック・オブ・アメリカ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ・ディアス・リマ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0152852(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0021528(KR,A)
【文献】国際公開第2017/058339(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/165435(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
C01B 32/168
B01J 23/50
B01J 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空のチューブの形態で巻き付けられている複数のCNTシート;
及び前記複数のCNTシート中に含浸させた、前記複数のCNTシートを一体に結合させる結合剤;を含む中空カーボンナノチューブ(CNT)ヤーンチューブを含み、
前記CNTヤーンチューブは内部に流体を含むように構成され、
前記結合剤は、前記CNTヤーンチューブを前記流体が透過しないように密封する、油圧筋肉。
【請求項2】
前記CNTヤーンチューブが直線形であり、
前記流体が前記CNTヤーンチューブ内部を加圧すると、前記CNTヤーンチューブの内径が増加し、前記CNTヤーンチューブの長さが直線的に減少する、請求項1に記載の油圧筋肉。
【請求項3】
前記複数のCNTシートが90度ではないバイアス角に整列している、請求項2に記載の油圧筋肉。
【請求項4】
前記複数のCNTシートが90度の正味のバイアス角を有する、請求項2に記載の油圧筋肉。
【請求項5】
前記複数のCNTシートが90度ではないバイアス角に整列しており、前記CNTヤーンチューブの両端の回転が防止されており、
前記CNTヤーンチューブ内部が加圧されると、前記CNTヤーンチューブが前記CNTヤーンチューブの長さに沿ってスナールを形成するように前記CNTヤーンチューブが前記CNTヤーンチューブ内部にトルクを発生させる、請求項1に記載の油圧筋肉。
【請求項6】
前記CNTヤーンチューブがコイル形状を有しており、
前記複数のCNTシートが90度ではないバイアス角に整列しており、前記CNTヤーンチューブの両端の回転が防止されており、前記油圧筋肉が前記油圧筋肉上に配置されている、前記油圧筋肉のコイルがほどけるのを防止する支持材料を更に含み、
前記CNTヤーンチューブ内部が加圧されると、前記CNTヤーンチューブが、前記油圧筋肉の前記コイルの中心軸に沿って直線的に前記油圧筋肉の長さを変化させる前記CNTヤーンチューブ内部のトルクを形成する、請求項1に記載の油圧筋肉。
【請求項7】
前記支持材料がシリコーン層である、請求項に記載の油圧筋肉。
【請求項8】
前記油圧筋肉がホモキラルであり、前記CNTヤーンチューブ内部の前記トルクが、前記油圧筋肉の前記コイルの中心軸に沿って前記油圧筋肉を直線的に収縮させる、請求項に記載の油圧筋肉。
【請求項9】
前記油圧筋肉がヘテロキラルであり、前記CNTヤーンチューブ内部の前記トルクが、前記油圧筋肉の前記コイルの中心軸に沿って前記油圧筋肉を直線的に伸長させる、請求項に記載の油圧筋肉。
【請求項10】
前記複数のCNTシートが90度ではないバイアス角に整列されており、前記CNTヤーンチューブの両端の線形作動が防止され、
前記CNTヤーンチューブ内部に内圧がかけられると、前記CNTヤーンチューブが、前記複数のCNTシートを撚る方向に沿って前記CNTヤーンチューブを撚るトルクを前記CNTヤーンチューブ内に発生させる、請求項1に記載の油圧筋肉。
【請求項11】
中空CNTヤーンチューブ内部の流体が、前記複数のCNTシートを通る電流により加熱され、
前記流体の熱膨張が前記中空CNTヤーンチューブを作動させる、請求項1~10のいずれか1項に記載の油圧筋肉。
【請求項12】
複数のカーボンナノチューブ(CNT)シートをコア繊維の周りに巻き付けること;
結合剤が前記複数のCNTシートを一体に結合させるように前記結合剤を前記複数のCNTシート間に含浸させること;及び
前記複数のCNTシートから前記コア繊維を除去すること;
を含み、
前記結合剤は、前記CNTヤーンチューブを前記流体が透過しないように密封する、請求項1~11のいずれか一項に記載の油圧筋肉の製造方法。
【請求項13】
前記CNTヤーンチューブをコイル状に巻き付けること;及び
前記複数のCNTシート上に支持体としてのシリコーン層を設けること;
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリコーン層が前記コア繊維を除去する前に設けられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コア繊維の周りに前記複数のCNTシートを巻き付ける前に、前記コア繊維上に触媒を配置することを更に含み、
前記触媒は前記巻き付けられた複数のCNTシートの内壁に付着しており;
前記コア繊維が除去される際に前記触媒が前記巻き付けられた複数のCNTシートの内壁に留まり;
前記触媒がCNTヤーンチューブ内部の化学物質/燃料の化学反応を開始させる;
請求項1214のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記化学物質/燃料がヒドラジンであり、前記触媒が銀である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化学物質/燃料が過酸化水素(H)であり、前記触媒が二酸化マグネシウムである、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2018年2月22日に出願された米国仮出願第62/634,122号に基づく優先権を主張する。その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
弾性ポリマー繊維に基づく人工筋肉デバイスは、多様な用途を有している。撚られている及び/またはコイル状のポリマーを含む人工筋肉デバイスは、従来のモーターに比べて製造コストが小さく、製造量が多く、作動ノイズが低く、設計が簡単であるという利点を有し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本発明の実施形態は、中空カーボンナノチューブ(CNT)ヤーンチューブを含む油圧筋肉に関する。CNTヤーンチューブは、撚られており中空のチューブの形態で巻き付けられている複数のCNTシートと、複数のCNTシートの中に含浸させた、複数のCNTシートを一体に結合させる結合剤とを含む。
【0004】
一態様では、本発明の実施形態は、油圧筋肉の製造方法に関する。方法は、複数のCNTシートをコア繊維の周りに撚って巻き付けること、結合剤が複数のCNTシートを一体に結合させるように結合剤を複数のCNTシート間に含浸させること、及び複数のCNTシートからコア繊維を除去することを含む。
【0005】
本明細書に開示の1つまたは複数の実施形態の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の1つ以上の実施形態による中空カーボンナノチューブ(CNT)ヤーンチューブを示す。
図2A】本発明の1つ以上の実施形態によるCNTヤーンチューブの作動を示す。
図2B】本発明の1つ以上の実施形態によるCNTヤーンチューブの作動を示す。
図3】本発明の1つ以上の実施形態による、スナールCNTヤーンチューブの作動を示す。
図4】本発明の1つ以上の実施形態による、コイル状CNTヤーンチューブの作動を示す。
図5】本発明の1つ以上の実施形態によるCNTヤーンチューブの製造方法を表すダイアグラムを示す。
図6図6A図6Cは、本発明の1つ以上の実施形態によるコイル状CNTヤーンチューブの製造方法を表すダイアグラムを示す。
図7】本発明の1つ以上の実施形態によるフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の特定の実施形態を、以降で添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。様々な図面の同様の要素は、一貫性を保つために同様の参照番号で示されている。
【0008】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明では、本発明のより完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴は詳細には説明されていない。
【0009】
概して、本発明の実施形態は、中空カーボンナノチューブ(CNT)が巻き付けられているチューブ(以降「CNTヤーンチューブ」または「中空CNTヤーンチューブ」という)から製造される油圧装置及びCNTヤーンチューブから製造される油圧装置の製造方法に関する。より具体的には、1つ以上の実施形態は、中空のチューブを形成するために撚られており巻き付けられているCNTシート/ヤーン(以降「CNTシート」という)から製造された少なくとも1本のCNTヤーンチューブを含む油圧装置に関する。結合剤はCNTシート間に含浸し、接着剤のように機能してCNTシートを一体に結合させる。1つ以上の実施形態では、結合剤は、CNTヤーンチューブを密封し、CNTヤーンチューブ内部の流体がCNTヤーンチューブの壁を通って漏れることを防止する。
【0010】
1つ以上の実施形態では、CNTヤーンチューブ内部の流体がCNTヤーンチューブの内壁に内圧をかけると、CNTヤーンチューブの直径が増加する。CNTシート中のCNTはそれらの長さを維持する傾向があるため、CNTヤーンチューブの直径が増加するとCNTヤーンチューブの長さは減少する。
【0011】
図1の上側に示されているように、CNTシートは、CNTヤーンチューブ(100)の中心軸に対して90度未満のバイアス角(θ)にCNTシートが整列するように巻き付けられている。CNTシートのバイアス角は、CNTヤーンチューブ(100)の中心軸に対するCNTの大部分の配向角度として定義される。以降、90度未満のバイアス角を有するCNTヤーンチューブを「ねじれCNTヤーンチューブ」という。
【0012】
別の実施形態では、CNTシートは、0度の正味のバイアス角を有する(すなわち、バイアス角を有さない)ように編まれていてもよい。例えば、図1の下側に示されているように、CNTシートはCNTヤーンチューブ(100)のゼロのバイアス角状態を維持するように反対方向に編まれていてもよい。
【0013】
図2A及び2Bは、内圧がかけられると作動するCNTヤーンチューブ(200)を示す。例えば、流体がCNTヤーンチューブ(200)の内壁に内圧をかけると、CNTヤーンチューブの直径(200)が増加する。CNTヤーンチューブ(200)が回転しない場合、あるいはCNTヤーンチューブ(200)が回転しないように固定されている場合、直径の拡大が、CNTヤーンチューブ(200)の長さに沿って(すなわち図2A及びBのX軸に沿って)CNTヤーンチューブ(200)を収縮させる。本明細書に開示の実施形態では、このプロセスは、以降線形油圧作動と呼ばれる。1つ以上の実施形態の線形油圧作動は、McKibben型の油圧/空気圧式アクチュエータの動作と類似しているとみなすことができる。
【0014】
1つ以上の実施形態では、(図2Bに示されるように)バイアス角を持たないようにCNTヤーンチューブ(200)内でCNTシートが編まれている場合、線形油圧作動時、CNTシートにかけられる圧力により形成される正味のトルクがゼロであることから、CNTヤーンチューブ(200)は、ねじり力を示さない場合がある。したがって、本明細書に開示の実施形態によれば、編まれたCNTヤーンチューブ(200)の端部が回転しないように固定する必要がない場合がある。
【0015】
本明細書に開示の実施形態では、(図2Aに示されているような)ねじれCNTヤーンチューブ(200)を線形油圧作動に使用することができる。そのような実施形態では、ねじれCNTヤーンチューブ(200)の両端は、ねじれの動きから固定されなければならない。
【0016】
1つ以上の実施形態によれば、CNTヤーンチューブ(200)は可撓性であってもよいが、CNTヤーンチューブ(200)は、従来のMcKibben型筋肉よりも剛性を有すると考えることができ、そのため本明細書に開示の実施形態は、従来のMcKibben型筋肉よりも短い作動長さでより大きな力を発揮し得る。更に、CNTヤーンチューブ(200)は、例えばいくつかのフレキシブル管用途などのより剛性が必要とされる用途において、従来のMcKibben型筋肉よりも有利な場合がある。
【0017】
例えば、1つ以上の実施形態では、内径1ミリメートル(mm)のCNTヤーンチューブ(200)は、200ポンド毎平方インチ(PSI)の内圧で、CNTヤーンチューブ(200)の初期長さの最大10%収縮する場合がある。当業者であれば、本明細書に開示の実施形態における長さの収縮量に対するCNTヤーンチューブ(200)の内圧と形状との間の関係を理解するであろう。
【0018】
本明細書に開示の1つ以上の実施形態は、ねじれCNTヤーンチューブから製造されたねじり油圧アクチュエータに関し、ねじれCNTヤーンチューブは、ねじれCNTヤーンチューブの中心軸に沿った任意の直線運動から固定されるが、自由に撚ることが可能である。そのような実施形態では、ねじれCNTヤーンチューブ内部の流体がねじれCNTヤーンチューブの内壁に内圧をかけると、内圧がトルクを発生させる。その結果、ねじれCNTヤーンチューブは自由に撚ってトルクを発生する。本明細書に開示の実施形態では、この機能はねじり油圧作動と呼ばれる。ねじり油圧作動は、熱アクチュエータ内のポリマーを加熱及び膨張させることによって作動する、撚りを施された熱アクチュエータの作動と機能的に類似しているとみなすことができる。
【0019】
1つ以上の実施形態によれば、CNTヤーンチューブは、有利なことには従来のMcKibben型筋肉よりも有利に小さくすることができる。更に、ねじれCNTヤーンチューブは、直線的にのみ作動する従来のMcKibben型筋肉とは異なり、有利なことにはねじれ方向に作動することができる。
【0020】
1つ以上の実施形態では、CNTシートはばねの周りに巻き付けられていてもよい。ばねは、CNTヤーンチューブに十分な剛性を付与し、油圧作動(ねじりまたは線形)中にCNTヤーンチューブがつぶれてキンクが形成されることを防止することができる。CNTヤーンチューブに沿ってキンクが形成される場合、キンクは、キンクを流体が通って流れることを妨げ、結果として圧力が妨げられる場合がある。したがって、キンクを過ぎた地点では得られる内圧で作動しない場合ある。そのため、キンクは、CNTヤーンチューブの作動長さ及び強度を減少させる場合がある。
【0021】
しかしながら、1つ以上の実施形態によるCNTヤーンチューブは、スナール油圧アクチュエータで使用されてもよい。図3は、作動時にスナールを生じさせるねじれCNTヤーンチューブ(300)から製造されるスナール油圧アクチュエータ(301)の例を示している。これらの実施形態では、ねじれCNTヤーンチューブ(300)は正味のバイアス角を有しているため、ねじれCNTヤーンチューブ(300)の両端はねじり運動から固定されなければならない。例えば、ねじれCNTヤーンチューブ(300)の一端を固定するために留め具(320)が使用されてもよく、またねじれCNTヤーンチューブ(300)の他方の端部に接続される負荷(330)が使用されてもよい。ねじれCNTヤーンチューブ(300)の内壁に加えられる内圧は、ねじれCNTヤーンチューブ(300)の内径を増加させ、その結果トルクを発生させる。負荷(330)が十分に小さい場合、発生したトルクは、ねじれCNTヤーンチューブ(300)にスナール(310)を形成する。これらの実施形態では、作動したスナール油圧アクチュエータ(301)(図3の右側に図示)がスナールを形成してねじれCNTヤーンチューブ(300)を収縮させ、負荷(330)を移動させる。
【0022】
一例として、1つ以上の実施形態では、スナール油圧アクチュエータ(301)のねじれCNTヤーンチューブ(300)は、ねじれCNTヤーンチューブ(300)の初期長さの最大28%収縮し得る。別の実施形態では、ねじれCNTヤーンチューブ(300)は、ねじれCNTヤーンチューブ(300)の初期長さの最大90%収縮し得る。
【0023】
1つ以上の実施形態では、ねじれCNTヤーンチューブ(300)は、互いの上に積み重ねられた約10層のCNTシートを含み得る。1つ以上の実施形態では、ねじれCNTヤーンチューブ(300)は、結合剤として機能するEco-Flex 0020(Smooth-On、INCにより製造)で含浸されていてもよい。ねじれCNTヤーンチューブ(300)は、2mmの内径及び20センチメートル(cm)の長さを有し得る。
【0024】
本明細書に開示の1つ以上の実施形態のねじれCNTヤーンチューブは、コイル状CNTヤーンチューブであってもよい。図4は、コイル状CNTヤーンチューブ(400)を含むコイル状油圧アクチュエータ(401)の例を示している。留め具(420)及び負荷(430)は、コイル状CNTヤーンチューブ(400)の両端をねじり運動から固定することができる。流体がコイル状CNTヤーンチューブ(400)の内壁に内圧をかけると、内圧によりトルクが発生する。コイル状CNTヤーンチューブ(400)の両端が回転しないように固定されているため、発生したトルクは、コイル状CNTヤーンチューブ(400)の中心軸に沿ってコイル状CNTヤーンチューブ(400)を収縮または伸長させる(図4の「Y」軸に平行な破線で示されている)。
【0025】
そのような実施形態では、コイル状CNTヤーンチューブ(400)のコイル形状を維持するために、柔らかいシリコーン(440)の層(例えばEco-Flex0020)をコイル状CNTヤーンチューブ(400)の上にコーティングすることができる。図4では、柔らかいシリコーンの層(440)は、
拡大されたサブセットの中の破線で示されている。柔らかいシリコーンの層(440)は、コイル形状を維持するためにコイル状CNTヤーンチューブ(400)に十分な剛性を付与しながらも、コイル状CNTヤーンチューブ(400)の中心軸に沿って自由に動くのに十分な可撓性をコイル状CNTヤーンチューブ(400)に与える。
【0026】
コイルの巻き方向に応じて、コイル状CNTヤーンチューブは、ホモキラルまたはヘテロキラルとみなすことができる。ホモキラルコイル状CNTヤーンチューブの実施形態では、コイルの巻き方向は、CNTシートの撚り方向と同じ方向である。油圧作動すると、ホモキラルコイル状CNTヤーンチューブの長さは、図4に示されているように、ホモキラルコイル状CNTヤーンチューブの中心軸に沿って減少する。
【0027】
ヘテロキラルコイル状CNTヤーンチューブの実施形態では、巻き方向は、CNTシートの撚り方向と反対である。油圧作動すると、ヘテロキラルコイル状CNTヤーンチューブの長さは、ヘテロキラルコイル状CNTヤーンチューブの中心軸に沿って増加する。
【0028】
例えば、200PSIの内圧では、約1.6mmの内径を有するCNTヤーンチューブから製造されるホモキラルコイル状CNTヤーンチューブは、最大30%収縮し得る。
【0029】
1つ以上の実施形態では、CNTヤーンチューブ内部の流体を加熱することにより、内圧を熱的に駆動することができる。そのような流体は、液体であっても気体であってもよい。液体は、一般的に気体よりも作動のための昇温及び膨張が遅い場合がある。しかしながら、液体は、より強力な作動を有利に得ることができる。気体で作動すると、作動が速くなり、程度(又は長さ)も大きくなる場合がある。1つ以上の実施形態では、流体は最初は液体であってもよく、物理的相転移(例えば蒸発)または化学的相転移(例えば化学反応)により気体を形成してCNTヤーンチューブを膨張及び作動させる。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、CNTヤーンチューブを作動させるために液体の配管又はパイピングは必要がない場合がある。つまり、流体が両端から漏れることを防止するためにはCNTヤーンチューブの両端を密封するのみでよく、CNTヤーンチューブ内部の流体を加熱すると、望まれる内圧を生じさせることができる。以降、このプロセスを「熱開始油圧作動」という。これらの実施形態によれば、密封されたCNTヤーンチューブは、ポンプなしで作動させることができる。漏れが発生した場合、CNTヤーンチューブは作動しない。ポンプが不要であり、CNTヤーンチューブを遠隔加熱できるため、CNTヤーンチューブ内部の液体が漏れた場合でも、漏れているCNTヤーンチューブ周辺の装置を汚染したりダメージを与えることはない。
【0031】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示のCNTヤーンチューブの内部に内圧を生じさせるためにポンプを使用することができる。熱により開始される油圧作動に対する、油圧作動にポンプを使用することの利点は、作動を逆にするためにCNTヤーンチューブ及びCNTヤーンチューブ内部の流体を冷却する必要がないことである。作動を逆にするためには、単に内圧が開放される。したがって、内圧を供給及び解放するバルブの速度によって制限される、はるかに速い作動サイクルを実現することができる場合がある。
【0032】
1つ以上の実施形態では、CNTは導電性であってもよいため、CNTヤーンチューブ内部の液体または気体は、CNTシートに電流を通すことによる抵抗加熱によって加熱することができる。
【0033】
1つ以上の実施形態では、内圧は化学的に駆動されてもよい。例えば、CNTヤーンチューブ内部の流体として過酸化水素(H)が使用されてもよい。Hは化学的に活性化されると燃料のように機能することができ、HはCNTヤーンチューブ内部にエネルギー及び内圧を迅速に生じさせることができる。Hの代わりにヒドラジンを使用することもできる。CNTヤーンチューブの容積が小さい場合、作動させるために必要とされる化学物質の量はそれに応じて少量である。例えば、マイクロリットルのHは、ミリリットルの水と酸素に分解することができ、結果としてCNTヤーンチューブの内圧が大幅に増加する。
【0034】
1つ以上の実施形態では、CNTヤーンチューブの作動速度を制御するために、バルブを使用してCNTヤーンチューブ内のHの量を調節することができる。1つ以上の実施形態では、様々な濃度の水及びHを含む溶液を燃料として使用することができる。濃度を制御するために、水及びHは、水用の第1のライン(例えばチューブまたはパイプ)とH用の第2のラインを介してCNTヤーンチューブの中に供給することができる。第1及び第2のラインのそれぞれは、水及びHの流量を調節するためのバルブを有していてもよい。したがって、CNTヤーンチューブ内のHの濃度及び作動速度は、第1のラインの調節バルブ及び/または第2のラインの調節バルブを使用して制御することができる。
【0035】
1つ以上の実施形態によれば、燃料(例えばHまたはヒドラジン)の化学反応を更に活性化するために触媒が使用されてもよい。そのような触媒は、CNTヤーンチューブの内壁に付着する場合がある。そのような触媒の例としては、ヒドラジンについては銀を、Hについては二酸化マグネシウムを挙げることができる。
【0036】
1つ以上の実施形態では、触媒は、CNTヤーンチューブを触媒の適切な溶液中に入れることよって、CNTヤーンチューブの内壁上に配置することができる。例えば、0.25モル濃度(M)の過マンガン酸カリウム(KMnO)と0.5Mの硫酸(HSO)の溶液を使用することができる。
【0037】
本明細書に開示の実施形態によれば、油圧流体の温度(例えば発熱化学反応の場合)は、CNTシートのダメージを防止するために摂氏400度未満にすべきである。
【0038】
図5、6A~6C、及び7は、本明細書に開示の1つ以上の実施形態によるCNTヤーンチューブの作製方法を示している。
【0039】
図5は、図5の特徴の側面図(図5の右側)及び断面図(図5の左側)を示している。図5に示されているように、CNTヤーンチューブ(500)は、コア繊維(510)の周りにCNTシートを巻き付けて撚ることによって製造されてもよい。その後、コア繊維(510)がCNTシートから除去されて、CNTヤーンチューブ(500)が形成される。1つ以上の実施形態では、コア繊維(510)は、その形状を維持するのに十分な可鍛性と剛性を有するように金属である。
【0040】
1つ以上の実施形態では、コア繊維(510)は、巻き付けられたCNTシートから加熱により取り除くことができる糸はんだまたは別の金属ワイヤであってもよい。本明細書に開示の実施形態では、CNTシート上に柔らかいシリコーンの層を設けた後、コア繊維(510)を除去することができる。柔らかいシリコーン層は、CNTヤーンチューブ(510)の剛性を増加させることができる。
【0041】
図6A~6Cは、本明細書に開示の実施形態によるコイル状CNTヤーンチューブ(600)の作製方法を示している。図6Aに示されているように、CNTシートをコア繊維(610)の周りに巻き付け、結合剤をCNTシートの中に含浸させた後、コア繊維(610)は、CNTシート及び結合剤と共にコイル状に巻くことができる。コア繊維(610)の剛性のため、コア繊維(610)はそのコイル形状を失うことはない。その後、図6Bに示されているように、CNTシートはコア繊維(610)の周りに巻き付けられたままであるが、柔らかいシリコーン(620)の層が、巻き付けられたCNTシートに支持体として貼り付けられていてもよい。図6Cに示されているように、コア繊維(610)はその後除去されてもよい。例えば、コア繊維(610)は、CNTシートからコア繊維(610)を機械的に引き出し、コア繊維(610)を化学エッチングし、溶融し、排出することによって除去されてもよい。1つ以上の実施形態では、コア繊維(610)は低い表面エネルギーを有しておりCNTシートに付着しないため、コア繊維(610)は容易に除去することができる。コイル状CNTヤーンチューブの具体的な設計及び機能に基づいて、コア繊維を除去するために他の方法が使用されてもよい。柔らかいシリコーンの層(620)はコイル状CNTヤーンチューブ(600)を十分に支持することから、コイル状CNTヤーンチューブ(600)は、そのコイル形状を維持する。
【0042】
1つ以上の実施形態では、CNTシートをコア繊維の周りに巻き付ける前に、コア繊維がコイル状にされてもよい。そのような実施形態では、コア繊維のコイルの直径が大きいと、CNTシートを配置し易くすることができる。しかしながら、そのような実施形態ではバイアス角を厳密に制御することは困難であると考えられる場合がある。
【0043】
1つ以上の実施形態では、コア繊維はばねであってもよく、ばねはCNTシートを巻き付けた後にコイル状CNTヤーンチューブ内に残されてもよく、その結果、コイル状CNTヤーンチューブは、コイル状CNTヤーンチューブの内側のばねと共に作動する。
【0044】
1つ以上の実施形態では、CNTシートを巻き付ける前に、コア繊維上に触媒を付着させることができる。触媒はCNTヤーンチューブの内壁に付着することができ、コア繊維が除去されると、触媒はCNTヤーンチューブの内壁に残ることができる。
【0045】
図7は、本明細書の実施形態によるCNTヤーンチューブの製造方法を表すフローチャートを示す。1つ以上の実施形態では、図7に示されている1つ
以上の工程は、省略されてもよく、繰り返されてもよく、及び/または図7に示されている順序とは異なる順序で行われてもよい。したがって、本発明の範囲は、配列が指定されていない限り、図7に示されている具体的な工程の配列に限定されない。
【0046】
工程700では、コア繊維が準備される。例えば、コア繊維は、上述した実施形態のいずれかによるコア繊維であってもよい。
【0047】
任意選択の工程705では、コア繊維上にCNTシートを巻き付ける前に、触媒がコア繊維上に配置される。触媒は、CNTヤーンチューブ内部の化学物質/燃料の化学反応を開始するために使用することができる。例えば、触媒は、上述した実施形態において開示されている触媒と同様であってもよい。
【0048】
工程710では、CNTシートが撚られ、コア繊維の周りに巻き付けられる。CNTシートは、特定のバイアス角で巻き付けられていてもよく、あるいはバイアス角を持たないように編まれていてもよい。例えば、CNTシートは、上に開示した実施形態に従って巻き付けられていてもよい。1つ以上の実施形態では、触媒は、巻き付けられたCNTシートの内壁に付着する。
【0049】
工程715では、CNTシート間に結合剤を含浸させて、CNTシートを一体に結合させることができる。そのような実施形態では、結合剤は、CNTヤーンチューブの内部の油圧流体がCNTヤーンチューブの壁から逃げることができないようにCNTヤーンチューブを密封する。例えば、結合剤は、上で開示した1つ以上の実施形態によるものであってもよい。
【0050】
任意選択の工程720では、コイル状CNTヤーンチューブを形成するために、コア繊維は、巻き付けられたCNTシート及び含浸している結合剤と共にコイル状に巻かれる。例えば、コイル状に巻くことは、コイル状に巻かれたCNTヤーンチューブに関して上で開示した実施形態に従ってもよい。
【0051】
任意選択の工程725では、巻き付けられたCNTシート上に柔らかいシリコーンの層が設けられてもよい。そのような実施形態では、工程720でコア繊維をコイル状に巻いた後に柔らかいシリコーンの層が設けられてもよい。例えば、柔らかいシリコーン層は、上で開示した実施形態に従って設けられてもよい。
【0052】
工程730では、コア繊維をCNTシートから除去することができる。1つ以上の実施形態では、柔らかいシリコーン層を設けた後にコア繊維を除去することができ、その結果、柔らかいシリコーン層はコイル状CNTシートに機械的強度を付与してコア繊維なしでそれらのコイル形状を維持する。いくつかの実施形態では、コア繊維が除去される際に、触媒は巻き付けられたCNTシートの内壁に残る。
【0053】
1つ以上の実施形態では、コア繊維はばねであってもよく、ばねはCNTシートの内側に残り(すなわち工程730は省略される)、その結果、コイル状CNTヤーンチューブはばねと共に作動する。
【0054】
本開示を限定された数の実施形態に関してのみ説明したが、本開示の利益を有する当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく他の様々な実施形態が考案され得ることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【符号の説明】
【0055】
100、200、300、500 CNTヤーンチューブ
301 油圧アクチュエータ
310 スナール
320、420 留め具
330、430 負荷
400 コイル状CNTヤーンチューブ
401 コイル状油圧アクチュエータ
440 シリコーンの層
510、610 コア繊維
620 シリコーンの層
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7