(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】二重shRNAを用いて強化された免疫細胞及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20220509BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20220509BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220509BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220509BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220509BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220509BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220509BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220509BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220509BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/113 140Z
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/12
A61K35/17 Z
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020559043
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 IB2019050194
(87)【国際公開番号】W WO2019138354
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0004238
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520254945
【氏名又は名称】クロセル インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】520256237
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヒュク キム
(72)【発明者】
【氏名】ヤング‐ホ リー
(72)【発明者】
【氏名】ユジェアン リー
(72)【発明者】
【氏名】ヒエオングジ リー
(72)【発明者】
【氏名】サング ホオン リー
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500869(JP,A)
【文献】特表2017-513818(JP,A)
【文献】国際公開第2017/040945(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106967681(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0293142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム細胞死1(PD-1)の発現を阻害する第1のshRNAをコードするヌクレオチド配列、Ig及びITIMドメインを持つT細胞免疫受容体(TIGIT)の発現を阻害する第2のshRNAをコードするヌクレオチド配列、及び、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含む、ベクター。
【請求項2】
前記第1のshRNAの発現が、第1のプロモーターによって調節され、且つ前記第2のshRNAの発現が、第2のプロモーターによって調節される、請求項1記載のベクター。
【請求項3】
前記第1及び第2のプロモーターが、RNAポリメラーゼIIIプロモーターである、請求項
2記載のベクター。
【請求項4】
前記RNAポリメラーゼIIIプロモーターが、U6プロモーターである、請求項
3記載のベクター。
【請求項5】
前記2つのプロモーターが、前記ベクター上で互いに異なる方向に向けられる、請求項
2~4のいずれか1項記載のベクター。
【請求項6】
前記2つのプロモーターが、
ヘッドトゥーヘッドの方向に向けられる、請求項5記載のベクター。
【請求項7】
前記2つのプロモーターが、末尾-末尾の方向に向けられる、請求項5記載のベクター。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載のベクターを含む、免疫細胞。
【請求項9】
前記CARの標的抗原が、がん細胞、がん組織、及び/または腫瘍微小環境の中で、または、がん細胞、がん組織、及び/または腫瘍微小環境の表面でその発現が増加するがん抗原である、請求項8記載の免疫細胞。
【請求項10】
前記CARの標的抗原が、CD19またはCD22である、請求項8または9記載の免疫細胞。
【請求項11】
前記免疫細胞が、ヒト由来のT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項8~10のいずれか1項記載の免疫細胞。
【請求項12】
前記免疫細胞が、ヒト由来のT細胞である、請求項8~11のいずれか1項記載の免疫細胞。
【請求項13】
前記CARの細胞内シグナル伝達ドメインが、ICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27、及びCD28からなる群から選択される共刺激分子をさらに含む、請求項8~12のいずれか1項記載の免疫細胞。
【請求項14】
請求項
8~13のいずれか1項記載の免疫細胞を含む、医薬組成物。
【請求項15】
ヒト対象のがんを治療するための、請求項14記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年1月12日に出願された韓国特許出願第10-2018-0004238号に対する優先権を主張し、その開示は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表への参照
本出願は、2019年1月5日に作成され、サイズが88,751バイトである14570-001-228_SEQ_LISTING.txtと表題を付けたテキストファイルとして本出願と共に提出された配列表を参照によって組み入れる。
【0003】
技術分野
本開示は、がん免疫療法の分野に広く関係する。例えば、本発明は一般に、標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体と、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の免疫細胞における発現を低下させるまたは低下させることができる遺伝子破壊剤とを含む免疫細胞に関する。
【背景技術】
【0004】
患者またはドナーの体からT細胞またはNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を単離し、これらの細胞を試験管内で培養し、次いで患者の体内に戻すことによる免疫細胞を用いた抗がん療法は、がん治療の新しい方法として現在多く注目を集めている。特に、ウイルス等を用いて新たな遺伝情報を注入し、その後、試験管内培養プロセスで培養するプロセスに供されている免疫細胞はそうでない細胞よりも大きな抗がん効果を有することが報告されている。ここで、T細胞に注入される遺伝情報は普通、標的抗原に対して高い親和性を有するように改変されたキメラ抗原受容体(以後、CAR)またはモノクローナルT細胞受容体(以後、mTCR)である。これらの改変免疫細胞は、固有の抗原特異性に限定されることなく、標的抗原を発現しているがん細胞を認識して攻撃し、細胞死を誘導する。CARを用いてT細胞を遺伝子操作する方法は、最初に1989年、Eshhar et al.によって提案され、「T-body」の名で呼ばれた。
【0005】
本明細書で提供されるのは、上記で指摘した従来の同時免疫細胞療法の問題に対処する免疫細胞組成物及び方法であり、該問題は、費用が高いために患者に多大な経済的負担を課し、CAR-T以外のT細胞に作用し、自己免疫症状及びサイトカイン放出症候群のリスクがある。手短に言えば、例えば、本明細書に開示されているのは、高収率及び低生産コストでの調製方法である。さらに、免疫細胞の機能をより高い確率及び有効性で抑制する分子を阻害することにより、本明細書での開示は効果的な細胞治療を提供する技術の必要性を満たす。本開示が解決しようとする技術的問題は、上記の技術的問題に限定されず、言及されていない他の技術的問題は以下から当業者にとって明らかであるものとする。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で提供されるのは、ベクターと、免疫細胞と、免疫細胞を含む医薬組成物と、免疫細胞を含む組成物とである。本明細書では提供されるのはまた、免疫細胞を作り出す方法と、治療方法及び免疫細胞の使用方法とである。
【0007】
一態様では、本明細書で提供されるのはベクターである。いくつかの実施形態では、提供されるのは、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を阻害する2種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)をコードする塩基配列を含むベクターである。いくつかの実施形態では、CARまたはTCR、例えば、mTCRの標的は、がんにおいて発現の増加を示す増加した抗原の中から、またはがん、例えば、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境において見いだされる抗原の変異した形態から選択されるヒト腫瘍抗原である。
【0008】
いくつかの実施形態では、2種類のshRNAの発現は、それらが2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節されることを特徴とする。
【0009】
いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは、RNAポリメラーゼIIIのプロモーターである。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは、U6プロモーター、例えば、異なる種に由来するU6プロモーターである。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは、ベクター上で互いに同じ方向に向けられる。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは、ベクター上で互いに異なる方向に向けられる。例えば、特定の実施形態では、プロモーターはヘッドトゥーヘッド(head to head)の方向に向けられる。別の実施形態では、プロモーターは末尾-末尾の方向に向けられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、免疫チェックポイントの受容体またはリガンドである。
【0011】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントの受容体またはリガンドは、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、FAS、CD45、PP2A、SHIP1、SHIP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、CD147、LRR1、TGFBR1、IL10Rアルファ、KLGR1、DNMT3A及びA2aRから成る群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める1つまたは複数の遺伝子を標的とする2種類のshRNAが利用される。いくつかの実施形態では、2種類のshRNAは免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的にする、またはそれらは免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とする。いくつかの実施形態では、2種類のshRNAはPD-1を標的とする。2種類のshRNAを含むいくつかの実施形態では、一方のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはTIM-3を標的とする。2種類のshRNAを含むいくつかの実施形態では、一方のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはTIGITを標的とする。
【0014】
shRNAは、センスshRNA配列とアンチセンスshRNA配列を含むヘアピン構造を形成する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているshRNAをコードする塩基配列は、配列番号2~219から成る群から選択される配列を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載されているshRNAをコードする塩基配列は、配列番号2~219から成る群から選択される配列を含み、その際、該配列はセンスshRNA配列をコードする。特定の実施形態では、本明細書に記載されているshRNAをコードする塩基配列は、配列番号2~219から成る群から選択される配列を含み、その際、該配列はアンチセンスshRNA配列をコードする。
【0015】
いくつかの実施形態では、ベクターは、配列番号220または221の塩基配列のいずれか一方を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドベクターまたはウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0016】
別の態様では、本明細書で提供されているのは、CARまたはTCR、例えばmTCRを発現するベクターを含む免疫細胞であり、2種類のshRNAの標的遺伝子の発現は、標的遺伝子についてshRNAを発現させない対照群よりも40%以下に低下する。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ヒト由来のT細胞とNK細胞との間から選択される。
【0017】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、上述の免疫細胞を含むヒト患者の免疫療法のための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、免疫細胞はもともと患者に由来する。いくつかの実施形態では、患者は、細胞内で発現されたCARまたはTCR、例えば、mTCRによって標的とされるがん抗原のレベルの増加または変動が検出される腫瘍またはがんを有する。
【0018】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体と、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の免疫細胞における発現を低下させるまたは低下させることができる遺伝子破壊剤とを含む免疫細胞である。
【0019】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体と、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の免疫細胞における発現を低下させるまたは低下させることができる遺伝子破壊剤とを含む免疫細胞である。
【0020】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体はCARである。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞外抗原認識ドメインは、標的抗原に特異的に結合する。
【0022】
いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、ICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27、及びCD28から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、共刺激分子はCD137(4-1BB)である。いくつかの実施形態では、共刺激分子はCD28である。
【0023】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体はTCRである。いくつかの実施形態では、TCRは、モノクローナルTCR(mTCR)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で発現される。
【0025】
いくつかの実施形態では、標的抗原は5T4(栄養膜糖タンパク質)、707-AP、9D7、AFP(α-フェトプロテイン)、AlbZIP(アンドロゲン誘導のbZIP)、HPG1(ヒト前立腺特異的遺伝子-1)、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(ADPリボシルトランスフェラーゼ-4)、B7H4(v-セットドメイン含有T-細胞活性化阻害剤1)、BAGE-1(Bメラノーマ抗原-1)、BCL-2(B-細胞 CLL/リンパ腫-2)、BING-4(WD反復ドメイン46)、CA15-3/CA27-29(ムチン1)、CA19-9(がん抗原19-9)、CA72-4(がん抗原72-4)、CA125(がん抗原125)、カルレチクリン、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19(分化抗原群19)、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原SG8)、CLCA2(塩化物チャネルアクセサリー2)、CML28(慢性骨髄性白血病腫瘍抗原28)、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、CT-9/BRD6(がん/精巣抗原9)、Cten(c-末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1(チトクロームp450ファミリー1サブファミリーbメンバー1)、DAM-10/MAGE-B1(メラノーマ関連抗原B1)、DAM-6/MAGE-B2、EGFR/Her1(表皮増殖因子受容体)、EMMPRIN(ベイシジン)、EpCam、EphA2(EPH受容体A2)、EphA3、ErbB3(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3)、EZH2(zeste2ポリコーム抑制性複合体2サブユニットのエンハンサー)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原-1)、G250/CAIX(炭酸脱水酵素9)、GAGE-1(G抗原-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7b、GAGE-8、GDEP(前立腺にて差次的に発現される遺伝子)、GnT-V(グルコン酸キナーゼ)、gp100(メラニン細胞系列特異的抗原GP100)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(らせん抗原)、HAST-2(スルホトランスフェラーゼファミリー1Aメンバー1)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2)、HERV-K-MEL、HNE(メデュラシン)、ホメオボックスNKX3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPVE7、HST-2(シルツイン-2)、hTERT、iCE(カスパーゼ1)、IGF-1R(インスリン様増殖因子-1受容体)、IL-13Ra2(インターロイキン-13受容体サブユニットα2)、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-5(インターロイキン-5)、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205(リソホスファチジルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)、KK-LC-1(北九州肺癌抗原-1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原ファミリーメンバー-1)、リビン、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGEA2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-B1、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGEB17、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2(メラノーマ抗原ファミリーL2)、ママグロビンA、MART-1/Melan-A(T-細胞-1によって認識されるメラノーマ抗原)、MART-2、マトリクスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、メソテリン、MG50/PXDN(ペルオキシダシン)、MMP11(マトリクスメタロプロテイナーゼ11)、MN/CA IX-抗原(炭酸脱水酵素9)、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質-3)、MUC1(ムチン1)、MUC2、NA88-A(VENT様ホメオボックス2偽遺伝子1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP(前立腺で発現される新しい遺伝子)、NMP22(核マトリクスタンパク質22)、NPM/ALK(ヌクレオホスミン)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1、NY-ESO-B、OA1(変形性関節症QTL1)、OFA-iLRP(がん胎児性抗原未成熟ラミニン受容体タンパク質)、OGT(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)、OS-9(小胞体レクチン)、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(CDK阻害剤2B)、p53、PAGE-4(P抗原ファミリーメンバー-4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PAI-2、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、PART-1(前立腺アンドロゲン調節転写物1)、PATE(前立腺及び精巣で発現された1)、PDEF(前立腺由来のEts因子)、Pim-1-キナーゼ(プロウイルス組み込み部位1)、Pin1(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼNIMA-相互作用1)、POTE(前立腺、卵巣、精巣、及び胎盤で発現される)、PRAME(メラノーマで優先的に発現される抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSGR(前立腺特異的G-タンパク質共役受容体)、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE-1(腎腫瘍癌腫抗原)、RHAMM/CD168、RU1(腎遍在タンパク質1)、RU2、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(T-細胞-1によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原)、SART-2、SART-3、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(SSXファミリーメンバー1)、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1(STEAP2 メタロレダクターゼ)、STEAP、サバイビン、サバイビン-213、TA-90(腫瘍関連抗原-90)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARP(TCRγ代替リーディングフレームタンパク質)、TGFb(形質転換増殖因子β)、TGFbR11(形質転換増殖因子β受容体11)、TGM-4(トランスグルタミナーゼ4)、TRAG-3(タキソール耐性関連遺伝子3)、TRG(T-細胞受容体γ遺伝子座)、TRP-1(一過性受容体ポテンシャル-1)、TRP-2/6b、TRP-2/INT2、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(U-プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子A)、VEGFR-2/FLK-1、及びWT1(ウィルムス腫瘍1)から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、標的抗原はCD19またはCD22である。いくつかの実施形態では、標的抗原はCD19である。
【0026】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、その発現ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で増加するがん抗原である。
【0027】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl、ベータ-カテニン/m、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN、EFTUD2/m、ELF2/m、ETV6-AML1、FN1/m、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラス1/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARa、PRDX5/m、PTPRX/m、RBAF600/m、SIRT2/m、SYTSSX-1、SYT-SSX-2、TEL-AML1、TGFbRII、及びTPI/mから成る群から選択され、その際、標的抗原は、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたは表面上で発現されるがん抗原の変異した形態である。
【0028】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現は、以下の1つ以上を引き起こす:
(i)免疫細胞の増殖の阻害、
(ii)免疫細胞の細胞死の誘導、
(iii)免疫細胞が標的抗原を認識する及び/または活性化される能力の阻害、
(iv)標的抗原に対する免疫応答を誘導しない細胞への免疫細胞の分化の誘導、
(v)免疫細胞の免疫応答を促進する分子に対する免疫細胞の反応の低下、または
(vi)免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する免疫細胞の反応の上昇。
【0029】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK、2B4、FAS、CD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c、CD148、LRR1、TGFBR1、IL10RA、KLGR1、DNMT3A、及びA2aRから成る群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する免疫細胞の反応を高める。
【0031】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する免疫細胞の反応を高める遺伝子は、免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする。
【0032】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントの受容体またはリガンドは、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG 3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、遺伝子破壊剤の非存在下での免疫細胞と比べて、免疫細胞の機能を弱める免疫細胞における遺伝子の発現を少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または95%低下させる。
【0034】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する免疫細胞の反応を高める遺伝子の発現を低下させる。
【0035】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする遺伝子の発現を低下させる。
【0036】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される遺伝子の発現を低下させる。
【0037】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、RNA干渉(RNAi)によって免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、1を超える遺伝子破壊剤が、RNAiによって免疫細胞における免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を低下させる。
【0038】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的とする、または免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とし、その際、第1の遺伝子破壊剤は第1の遺伝子を標的とし、第2の遺伝子破壊剤は第2の遺伝子を標的とし、またはそれらの任意の組み合わせで標的とする。
【0039】
いくつかの実施形態では、RNAiには短ヘアピンRNA(shRNA)が介在する。いくつかの実施形態では、RNAiには1を超えるshRNAが介在する。いくつかの実施形態では、RNAiには2つのshRNAが介在する。
【0040】
いくつかの実施形態では、2つのshRNAはPD-1を標的とする。いくつかの実施形態では、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはTIM-3を標的とする。いくつかの実施形態では、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはCTLA-4を標的とする。いくつかの実施形態では、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはLAG-3を標的とする。いくつかの実施形態では、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはTIGITを標的とする。
【0041】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は1を超えるshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は2つのshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。特に言及されない限り、本明細書で使用されるとき、「塩基配列」「ヌクレオチド配列」という用語は相互交換可能である。
【0042】
いくつかの実施形態では、shRNAをコードするヌクレオチド配列は、配列番号2~219及び238~267から成る群から選択される配列を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、shRNAをコードするヌクレオチド配列はベクター上にある。
【0044】
いくつかの実施形態では、異なるshRNAの発現は異なるプロモーターによってそれぞれ調節される。いくつかの実施形態では、2つの異なるshRNAの発現は2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節される。いくつかの実施形態では、2つの異なるプロモーターはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターはU6プロモーターである。いくつかの実施形態では、U6プロモーターは異なる種に由来する。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは互いに異なる方向に向けられる。例えば、特定の実施形態では、プロモーターはヘッドトゥーヘッドの方向に向けられる。別の実施形態では、プロモーターは末尾-末尾の方向に向けられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体及び遺伝子破壊剤はそれぞれベクターから発現される。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体及び遺伝子破壊剤は同じベクターから発現される。
【0046】
いくつかの実施形態では、ベクターはプラスミドベクターまたはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。
【0047】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はCD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0048】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は2つのshRNA及び1つのCARをコードするヌクレオチド配列を同一ベクター上で含む。いくつかの実施形態では、2つのshRNAは互いに異なる方向に向けられた2つの異なるRNAポリメラーゼIIIのプロモーターによってそれぞれ調節される。例えば、特定の実施形態では、プロモーターはヘッドトゥーヘッドの方向に向けられる。別の実施形態では、プロモーターは末尾-末尾の方向に向けられる。いくつかの実施形態では、CARはCD19を標的とし、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはTIGITを標的とする。
【0049】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、免疫細胞に
(1)標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体をコードする遺伝子と、
(2)免疫細胞の機能を弱める遺伝子の免疫細胞における発現を低下させる、または低下させることができる遺伝子破壊剤とを同時にまたは任意の順序で連続的に導入し、
それによって、遺伝子操作された抗原受容体が発現され、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現が低減される免疫細胞を作り出すことを含む、免疫細胞を作り出す方法である。
【0050】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である。
【0051】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体はCARである。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞外抗原認識ドメインは、標的抗原に特異的に結合する。
【0052】
いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、ICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27、及びCD28から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、共刺激分子はCD137(4-1BB)である。いくつかの実施形態では、共刺激分子はCD28である。
【0053】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体はTCRである。いくつかの実施形態では、TCRは、モノクローナルTCR(mTCR)である。
【0054】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で発現される。
【0055】
いくつかの実施形態では、標的抗原は5T4(栄養膜糖タンパク質)、707-AP、9D7、AFP(α-フェトプロテイン)、AlbZIP(アンドロゲン誘導のbZIP)、HPG1(ヒト前立腺特異的遺伝子-1)、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(ADPリボシルトランスフェラーゼ-4)、B7H4(v-セットドメイン含有T-細胞活性化阻害剤1)、BAGE-1(Bメラノーマ抗原-1)、BCL-2(B-細胞 CLL/リンパ腫-2)、BING-4(WD反復ドメイン46)、CA15-3/CA27-29(ムチン1)、CA19-9(がん抗原19-9)、CA72-4(がん抗原72-4)、CA125(がん抗原125)、カルレチクリン、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19(分化抗原群19)、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原SG8)、CLCA2(塩化物チャネルアクセサリー2)、CML28(慢性骨髄性白血病腫瘍抗原28)、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、CT-9/BRD6(がん/精巣抗原9)、Cten(c-末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1(チトクロームp450ファミリー1サブファミリーbメンバー1)、DAM-10/MAGE-B1(メラノーマ関連抗原B1)、DAM-6/MAGE-B2、EGFR/Her1(表皮増殖因子受容体)、EMMPRIN(ベイシジン)、EpCam、EphA2(EPH受容体A2)、EphA3、ErbB3(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3)、EZH2(zeste2ポリコーム抑制性複合体2サブユニットのエンハンサー)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原-1)、G250/CAIX(炭酸脱水酵素9)、GAGE-1(G抗原-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7b、GAGE-8、GDEP(前立腺にて差次的に発現される遺伝子)、GnT-V(グルコン酸キナーゼ)、gp100(メラニン細胞系列特異的抗原GP100)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(らせん抗原)、HAST-2(スルホトランスフェラーゼファミリー1Aメンバー1)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2)、HERV-K-MEL、HNE(メデュラシン)、ホメオボックスNKX3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPVE7、HST-2(シルツイン-2)、hTERT、iCE(カスパーゼ1)、IGF-1R(インスリン様増殖因子-1受容体)、IL-13Ra2(インターロイキン-13受容体サブユニットα2)、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-5(インターロイキン-5)、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205(リソホスファチジルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)、KK-LC-1(北九州肺癌抗原-1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原ファミリーメンバー-1)、リビン、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGEA2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-B1、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGEB17、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2(メラノーマ抗原ファミリーL2)、ママグロビンA、MART-1/Melan-A(T-細胞-1によって認識されるメラノーマ抗原)、MART-2、マトリクスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、メソテリン、MG50/PXDN(ペルオキシダシン)、MMP11(マトリクスメタロプロテイナーゼ11)、MN/CA IX-抗原(炭酸脱水酵素9)、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質-3)、MUC1(ムチン1)、MUC2、NA88-A(VENT様ホメオボックス2偽遺伝子1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP(前立腺で発現される新しい遺伝子)、NMP22(核マトリクスタンパク質22)、NPM/ALK(ヌクレオホスミン)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1、NY-ESO-B、OA1(変形性関節症QTL1)、OFA-iLRP(がん胎児性抗原未成熟ラミニン受容体タンパク質)、OGT(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)、OS-9(小胞体レクチン)、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(CDK阻害剤2B)、p53、PAGE-4(P抗原ファミリーメンバー-4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PAI-2、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、PART-1(前立腺アンドロゲン調節転写物1)、PATE(前立腺及び精巣で発現された1)、PDEF(前立腺由来のEts因子)、Pim-1-キナーゼ(プロウイルス組み込み部位1)、Pin1(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼNIMA-相互作用1)、POTE(前立腺、卵巣、精巣、及び胎盤で発現される)、PRAME(メラノーマで優先的に発現される抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSGR(前立腺特異的G-タンパク質共役受容体)、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE-1(腎腫瘍癌腫抗原)、RHAMM/CD168、RU1(腎遍在タンパク質1)、RU2、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(T-細胞-1によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原)、SART-2、SART-3、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(SSXファミリーメンバー1)、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1(STEAP2 メタロレダクターゼ)、STEAP、サバイビン、サバイビン-213、TA-90(腫瘍関連抗原-90)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARP(TCRγ代替リーディングフレームタンパク質)、TGFb(形質転換増殖因子β)、TGFbR11(形質転換増殖因子β受容体11)、TGM-4(トランスグルタミナーゼ4)、TRAG-3(タキソール耐性関連遺伝子3)、TRG(T-細胞受容体γ遺伝子座)、TRP-1(一過性受容体ポテンシャル-1)、TRP-2/6b、TRP-2/INT2、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(U-プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子A)、VEGFR-2/FLK-1、及びWT1(ウィルムス腫瘍1)から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、標的抗原はCD19またはCD22である。いくつかの実施形態では、標的抗原はCD19である。
【0056】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、その発現ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で増加するがん抗原である。
【0057】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl、ベータ-カテニン/m、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN、EFTUD2/m、ELF2/m、ETV6-AML1、FN1/m、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラス1/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARa、PRDX5/m、PTPRX/m、RBAF600/m、SIRT2/m、SYTSSX-1、SYT-SSX-2、TEL-AML1、TGFbRII、及びTPI/mから成る群から選択され、その際、標的抗原は、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたは表面上で発現されるがん抗原の変異した形態である。
【0058】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現は、以下の1つ以上を引き起こす:
(i)免疫細胞の増殖の阻害、
(ii)免疫細胞の細胞死の誘導、
(iii)免疫細胞が標的抗原を認識する及び/または活性化される能力の阻害、
(iv)標的抗原に対する免疫応答を誘導しない細胞への免疫細胞の分化の誘導、
(v)免疫細胞の免疫応答を促進する分子に対する免疫細胞の反応の低下、または
(vi)免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する免疫細胞の反応の上昇。
【0059】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK、2B4、FAS、CD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c、CD148、LRR1、TGFBR1、IL10RA、KLGR1、DNMT3A、及びA2aRから成る群から選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する免疫細胞の反応を高める。
【0061】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する免疫細胞の反応を高める遺伝子は、免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする。
【0062】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントの受容体またはリガンドは、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される。
【0063】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、遺伝子破壊剤の非存在下での免疫細胞と比べて、免疫細胞の機能を弱める免疫細胞における遺伝子の発現を少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または95%低下させる。
【0064】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する免疫細胞の反応を高める遺伝子の発現を低下させる。
【0065】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする遺伝子の発現を低下させる。
【0066】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される遺伝子の発現を低下させる。
【0067】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、RNA干渉(RNAi)によって免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、1を超える遺伝子破壊剤が、RNAiによって免疫細胞における免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を低下させる。
【0068】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的とする、または免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とし、その際、第1の遺伝子破壊剤は第1の遺伝子を標的とし、第2の遺伝子破壊剤は第2の遺伝子を標的とし、またはそれらの任意の組み合わせで標的とする。
【0069】
いくつかの実施形態では、RNAiには短ヘアピンRNA(shRNA)が介在する。いくつかの実施形態では、RNAiには1を超えるshRNAが介在する。いくつかの実施形態では、RNAiには2つのshRNAが介在する。
【0070】
いくつかの実施形態では、2つのshRNAはPD-1を標的とする。いくつかの実施形態では、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはTIM-3を標的とする。いくつかの実施形態では、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはCTLA-4を標的とする。いくつかの実施形態では、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはLAG-3を標的とする。いくつかの実施形態では、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはTIGITを標的とする。
【0071】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は1を超えるshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は2つのshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、shRNAをコードするヌクレオチド配列は、配列番号2~219及び238~267から成る群から選択される配列を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、shRNAをコードするヌクレオチド配列はベクター上にある。
【0074】
いくつかの実施形態では、異なるshRNAの発現は異なるプロモーターによってそれぞれ調節される。いくつかの実施形態では、2つの異なるshRNAの発現は2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節される。いくつかの実施形態では、2つの異なるプロモーターはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターはU6プロモーターである。いくつかの実施形態では、U6プロモーターは異なる種に由来する。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは互いに異なる方向に向けられる。例えば、特定の実施形態では、プロモーターはヘッドトゥーヘッドの方向に向けられる。別の実施形態では、プロモーターは末尾-末尾の方向に向けられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体及び遺伝子破壊剤はそれぞれベクターから発現される。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体及び遺伝子破壊剤は同じベクターから発現される。
【0076】
いくつかの実施形態では、ベクターはプラスミドベクターまたはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。
【0077】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はCD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0078】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は2つのshRNA及び1つのCARをコードするヌクレオチド配列を同一ベクター上で含む。いくつかの実施形態では、2つのshRNAは互いに異なる方向に向けられた2つの異なるRNAポリメラーゼIIIのプロモーターによってそれぞれ調節される。例えば、特定の実施形態では、プロモーターはヘッドトゥーヘッドの方向に向けられる。別の実施形態では、プロモーターは末尾-末尾の方向に向けられる。いくつかの実施形態では、CARはCD19を標的とし、第1のshRNAはPD-1を標的とし、第2のshRNAはTIGITを標的とする。
【0079】
別の態様では、本明細書で提供されるのは操作された免疫細胞を含む組成物である。別の態様では、本明細書で提供されるのは免疫細胞と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0080】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、疾患または状態を有する対象に免疫細胞または組成物を投与することを含む治療方法である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体は疾患または状態に関連する抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、疾患または状態はがんまたは腫瘍である。
【0081】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、疾患または状態の治療に使用するための免疫細胞または組成物である。別の態様では、本明細書で提供されるのは、疾患または状態を治療するための薬物の製造における免疫細胞または組成物の使用である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体は疾患または状態に関連する抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、疾患または状態はがんまたは腫瘍である。
さらなる非限定的な実施形態を以下に提示する。
1.ベクターであって、
免疫細胞の機能を弱める少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害する2種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、
キメラ抗原受容体(CAR)またはモノクローナルT細胞受容体(mTCR)をコードする塩基配列とを含む、前記ベクター。
2.前記2種類のshRNAの発現は、それらが2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節されることを特徴とする実施形態1に記載のベクター。
3.前記2つのプロモーターがRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである実施形態2に記載のベクター。
4.前記2つのプロモーターが異なる種に由来するU6プロモーターである実施形態2に記載のベクター。
5.前記2つのプロモーターが前記ベクター上で互いに異なる方向に向けられる実施形態2に記載のベクター。
6.免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドである実施形態1に記載のベクター。
7.前記免疫チェックポイントの受容体またはリガンドが、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される実施形態6に記載のベクター。
8.免疫細胞の機能を弱める遺伝子が、FAS、CD45、PP2A、SHIP1、SHIP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、CD147、LRR1、TGFBR1、IL10Rアルファ、KLGR1、DNMT3A及びA2aRから成る群から選択される実施形態1に記載のベクター。
9.前記2種類のshRNAが免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的とする、または前記2種類のshRNAが免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とする実施形態1に記載のベクター。
10.前記2種類のshRNAがPD-1を標的とする実施形態1に記載のベクター。
11.前記2種類のshRNAのうち、(i)一方のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIM-3を標的とする、または(ii)一方のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIGITを標的とする、実施形態1に記載のベクター。
12.前記2種類のshRNAのうち、一方のshRNAをコードする前記塩基配列が配列番号2~219から成る群から選択される配列を含み、第2のshRNAをコードする前記塩基配列が配列番号2~219から成る群から選択される異なる配列を含む実施形態1に記載のベクター。
13.前記CARまたはmTCRの前記標的が、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境における発現の上昇を示すヒト腫瘍抗原である、またはがん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境に見られる抗原の変異した形態である実施形態1に記載のベクター。
14.前記ベクターが配列番号220または221の塩基配列を含む実施形態1に記載のベクター。
15.前記ベクターが、プラスミドベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである実施形態1に記載のベクター。
16.実施形態1に記載のベクターを含む免疫細胞であって、1以上の遺伝子の発現がshRNAの非存在下での発現のそれよりも40%以下に低下する、前記免疫細胞。
17.前記免疫細胞がヒト由来のT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である、実施形態16に記載の免疫細胞。
18.実施形態1~17のいずれか1つに記載の免疫細胞を含む医薬組成物。
19.前記免疫細胞がもともと患者から得られる、免疫療法を必要とする前記患者の治療のための実施形態18に記載の医薬組成物。
20.前記患者が、前記免疫細胞で発現される前記CARまたはmTCRの前記標的及び/または前記標的のレベルの上昇または変動が検出される腫瘍またはがんを有する実施形態19に記載の医薬組成物。
21.免疫細胞であって、標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体と、前記免疫細胞の機能を弱める遺伝子の前記免疫細胞における発現を低下させるまたは低下させることができる遺伝子破壊剤とを含む、前記免疫細胞。
22.前記遺伝子操作された抗原受容体がキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である実施形態21に記載の免疫細胞。
23.前記遺伝子操作された抗原受容体がCARである実施形態22に記載の免疫細胞。
24.前記CARが、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む実施形態23に記載の免疫細胞。
25.前記CARの前記細胞外抗原認識ドメインが前記標的抗原に特異的に結合する実施形態24に記載の免疫細胞。
26.前記CARの前記細胞内シグナル伝達ドメインがCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む実施形態24に記載の免疫細胞。
27.前記CARの前記細胞内シグナル伝達ドメインが共刺激分子をさらに含む実施形態26に記載の免疫細胞。
28.前記共刺激分子がICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27、及びCD28から成る群から選択される実施形態27に記載の免疫細胞。
29.前記共刺激分子がCD137(4-1BB)である実施形態28に記載の免疫細胞。
30.前記共刺激分子がCD28である実施形態28に記載の免疫細胞。
31.前記遺伝子操作された抗原受容体がTCRである実施形態22に記載の免疫細胞。
32.前記TCRがモノクローナルTCR(mTCR)である実施形態31に記載の免疫細胞。
33.前記標的抗原ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で発現される実施形態31または32に記載の免疫細胞。
34.前記標的抗原が、5T4(栄養膜糖タンパク質)、707-AP、9D7、AFP(α-フェトプロテイン)、AlbZIP(アンドロゲン誘導のbZIP)、HPG1(ヒト前立腺特異的遺伝子-1)、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(ADPリボシルトランスフェラーゼ-4)、B7H4(v-セットドメイン含有T-細胞活性化阻害剤1)、BAGE-1(Bメラノーマ抗原-1)、BCL-2(B-細胞CLL/リンパ腫-2)、BING-4(WD反復ドメイン46)、CA15-3/CA27-29(ムチン1)、CA19-9(がん抗原19-9)、CA72-4(がん抗原72-4)、CA125(がん抗原125)、カルレチクリン、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19(分化抗原群19)、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原SG8)、CLCA2(塩化物チャネルアクセサリー2)、CML28(慢性骨髄性白血病腫瘍抗原28)、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、CT-9/BRD6(がん/精巣抗原9)、Cten(c-末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1(チトクロームp450ファミリー1サブファミリーbメンバー1)、DAM-10/MAGE-B1(メラノーマ関連抗原B1)、DAM-6/MAGE-B2、EGFR/Her1(表皮増殖因子受容体)、EMMPRIN(ベイシジン)、EpCam、EphA2(EPH受容体A2)、EphA3、ErbB3(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3)、EZH2(zeste2ポリコーム抑制性複合体2サブユニットのエンハンサー)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原-1)、G250/CAIX(炭酸脱水酵素9)、GAGE-1(G抗原-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7b、GAGE-8、GDEP(前立腺にて差次的に発現される遺伝子)、GnT-V(グルコン酸キナーゼ)、gp100(メラニン細胞系列特異的抗原GP100)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(らせん抗原)、HAST-2(スルホトランスフェラーゼファミリー1Aメンバー1)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2)、HERV-K-MEL、HNE(メデュラシン)、ホメオボックスNKX 3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPVE7、HST-2(シルツイン-2)、hTERT、iCE(カスパーゼ1)、IGF-1R(インスリン様増殖因子-1受容体)、IL-13Ra2(インターロイキン-13受容体サブユニットα2)、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-5(インターロイキン-5)、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205(リソホスファチジルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)、KK-LC-1(北九州肺癌抗原-1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原ファミリーメンバー-1)、リビン、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGEA2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-B1、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGEB17、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2(メラノーマ抗原ファミリーL2)、ママグロビンA、MART-1/Melan-A(T-細胞-1によって認識されるメラノーマ抗原)、MART-2、マトリクスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、メソテリン、MG50/PXDN(ペルオキシダシン)、MMP11(マトリクスメタロプロテイナーゼ11)、MN/CA IX-抗原(炭酸脱水酵素9)、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質-3)、MUC1(ムチン1)、MUC2、NA88-A(VENT様ホメオボックス2偽遺伝子1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP(前立腺で発現される新しい遺伝子)、NMP22(核マトリクスタンパク質22)、NPM/ALK(ヌクレオホスミン)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1、NY-ESO-B、OA1(変形性関節症QTL1)、OFA-iLRP(がん胎児性抗原未成熟ラミニン受容体タンパク質)、OGT(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)、OS-9(小胞体レクチン)、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(CDK阻害剤2B)、p53、PAGE-4(P抗原ファミリーメンバー-4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PAI-2、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、PART-1(前立腺アンドロゲン調節転写物1)、PATE(前立腺及び精巣で発現された1)、PDEF(前立腺由来のEts因子)、Pim-1-キナーゼ(プロウイルス組み込み部位1)、Pin1(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼNIMA-相互作用1)、POTE(前立腺、卵巣、精巣、及び胎盤で発現される)、PRAME(メラノーマで優先的に発現される抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSGR(前立腺特異的G-タンパク質共役受容体)、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE-1(腎腫瘍癌腫抗原)、RHAMM/CD168、RU1(腎遍在タンパク質1)、RU2、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(T-細胞-1によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原)、SART-2、SART-3、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(SSXファミリーメンバー1)、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1(STEAP2 メタロレダクターゼ)、STEAP、サバイビン、サバイビン-213、TA-90(腫瘍関連抗原-90)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARP(TCRγ代替リーディングフレームタンパク質)、TGFb(形質転換増殖因子β)、TGFbR11(形質転換増殖因子β受容体11)、TGM-4(トランスグルタミナーゼ4)、TRAG-3(タキソール耐性関連遺伝子3)、TRG(T-細胞受容体γ遺伝子座)、TRP-1(一過性受容体ポテンシャル-1)、TRP-2/6b、TRP-2/INT2、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(U-プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子A)、VEGFR-2/FLK-1、及びWT1(ウィルムス腫瘍1)から成る群から選択される実施形態33に記載の免疫細胞。
35.前記標的抗原がCD19またはCD22である実施形態35に記載の免疫細胞。
36.前記標的抗原がCD19である実施形態36に記載の免疫細胞。
37.前記標的抗原ががん抗原であり、前記がん抗原が、その発現ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で増加するがん抗原である実施形態34~36のいずれかの免疫細胞。
38.前記標的抗原が、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl、ベータ-カテニン/m、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN、EFTUD2/m、ELF2/m、ETV6-AML1、FN1/m、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラス1/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARa、PRDX5/m、PTPRX/m、RBAF600/m、SIRT2/m、SYTSSX-1、SYT-SSX-2、TEL-AML1、TGFbRII、及びTPI/mから成る群から選択され、その際、前記標的抗原はがん抗原であり、前記がん抗原はがん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたは表面上で発現される抗原の変異した形態である実施形態33に記載の免疫細胞。
39.前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現が、以下:
(i)前記免疫細胞の増殖の阻害、
(ii)前記免疫細胞の細胞死の誘導、
(iii)前記免疫細胞が前記標的抗原を認識する及び/または活性化される能力の阻害、
(iv)前記標的抗原に対する免疫応答を誘導しない細胞への前記免疫細胞の分化の誘導、
(v)前記免疫細胞の免疫応答を促進する分子に対する前記免疫細胞の反応の低下、または
(vi)前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応の上昇の1以上を引き起こす実施形態21~38のいずれかに記載の免疫細胞。
40.前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK、2B4、FAS、CD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c、CD148、LRR1、TGFBR1、IL10RA、KLGR1、DNMT3A、及びA2aRから成る群から選択される実施形態39に記載の免疫細胞。
41.前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める実施形態39に記載の免疫細胞。
42.前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める前記遺伝子が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする実施形態41に記載の免疫細胞。
43.前記免疫チェックポイントの受容体またはリガンドが、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される実施形態42に記載の免疫細胞。
44.前記遺伝子破壊剤が、前記遺伝子破壊剤の非存在下での前記免疫細胞と比べて、前記免疫細胞の機能を弱める前記免疫細胞における遺伝子の発現を少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または95%低下させる実施形態21~43に記載のいずれかの免疫細胞。
45.前記遺伝子破壊剤が、前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める遺伝子の発現を低下させる実施形態44に記載の免疫細胞。
46.前記遺伝子破壊剤が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする遺伝子の発現を低下させる実施形態45に記載の免疫細胞。
47.前記遺伝子破壊剤が、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される遺伝子の発現を低下させる実施形態46に記載の免疫細胞。
48.前記遺伝子破壊剤が、RNA干渉(RNAi)によって前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現を低下させる実施形態45~47のいずれかに記載の免疫細胞。
49.1を超える遺伝子破壊剤が、RNAiによって前記免疫細胞における前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現を低下させる実施形態48に記載の免疫細胞。
50.前記遺伝子破壊剤が、前記免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的とする、または異なる遺伝子破壊剤が前記免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とし、例えば、第1の遺伝子破壊剤は第1の遺伝子を標的とし、第2の遺伝子破壊剤は第2の遺伝子を標的とする実施形態49に記載の免疫細胞。
51.前記RNAiには短ヘアピンRNA(shRNA)が介在する実施形態48~50のいずれかに記載の免疫細胞。
52.前記RNAiには1を超えるshRNAが介在する実施形態51に記載の免疫細胞。
53.前記RNAiには2つのshRNAが介在する実施形態52に記載の免疫細胞。
54.2つのshRNAがPD-1を標的とする実施形態52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
55.第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIM-3を標的とする実施形態52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
56.第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがCTLA-4を標的とする実施形態52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
57.第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがLAG-3を標的とする実施形態52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
58.第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIGITを標的とする実施形態52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
59.前記免疫細胞がshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む実施形態51~58のいずれかに記載の免疫細胞。
60.前記免疫細胞が1を超えるshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む実施形態59に記載の免疫細胞。
61.前記免疫細胞が2つのshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む実施形態59に記載の免疫細胞。
62.前記shRNA(複数可)をコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号2~219及び238~267から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む実施形態59~61のいずれかに記載の免疫細胞。
63.前記shRNA(複数可)をコードするヌクレオチド配列がベクター上に存在する実施形態59~62のいずれかに記載の免疫細胞。
64.異なるshRNAの発現が異なるプロモーターによって調節される実施形態63のいずれかに記載の免疫細胞。
65.2つの異なるshRNAの発現が2つの異なるプロモーターによって調節される実施形態64に記載の免疫細胞。
66.前記2つの異なるプロモーターがRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである実施形態65に記載の免疫細胞。
67.前記2つの異なるプロモーターがU6プロモーターである実施形態66に記載の免疫細胞。
68.前記U6プロモーターが異なる種に由来する実施形態67に記載の免疫細胞。
69.前記2つのプロモーターが互いに異なる方向に向けられる実施形態65~68のいずれかに記載の免疫細胞。
70.前記遺伝子操作された抗原受容体及び前記遺伝子破壊剤(複数可)がベクターからそれぞれ発現される実施形態21~69のいずれかに記載の免疫細胞。
71.前記遺伝子操作された抗原受容体及び前記遺伝子破壊剤(複数可)が同一ベクターから発現される実施形態70に記載の免疫細胞。
72.前記ベクターが、プラスミドベクターまたはウイルスベクターである実施形態70~71のいずれかに記載の免疫細胞。
73.前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである実施形態72に記載の免疫細胞。
74.前記レンチウイルスベクターがレトロウイルスベクターである実施形態73に記載の免疫細胞。
75.前記免疫細胞がT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞から成る群から選択される実施形態21~74のいずれかに記載の免疫細胞。
76.前記免疫細胞がT細胞である実施形態75に記載の免疫細胞。
77.前記T細胞がCD4+T細胞またはCD8+T細胞である実施形態76に記載の免疫細胞。
78.前記免疫細胞が2つのshRNA及びCARまたはmTCRをコードするヌクレオチド配列を同一ベクター上で含む実施形態76または77のいずれかに記載の免疫細胞。
79.前記2つのshRNAが互いに異なる方向に向けられた2つの異なるRNAポリメラーゼIIIのプロモーターによってそれぞれ調節される実施形態78に記載の免疫細胞。
80.前記CARがCD19を標的とし、前記第1のshRNAがPD-1を標的とし、前記第2のshRNAがTIGITを標的とする実施形態79に記載の免疫細胞。
81.免疫細胞を作り出す方法であって、
(1)標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体をコードする遺伝子と、
(2)遺伝子破壊剤またはその発現が前記免疫細胞の機能を弱める遺伝子の前記免疫細胞における発現を低下させる、または低下させることができる遺伝子破壊剤とを同時または任意の順序で連続的に前記免疫細胞に導入することを含み、
それによって、遺伝子操作された抗原受容体が発現され、前記免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現が低減される前記免疫細胞を作り出す、前記方法。
82.前記遺伝子操作された抗原受容体がキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である実施形態81に記載の方法。
83.前記遺伝子操作された抗原受容体がCARである実施形態82に記載の方法。
84.前記CARが、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む実施形態83に記載の方法。
85.前記CARの前記細胞外抗原認識ドメインが前記標的抗原に特異的に結合する実施形態84に記載の方法。
86.前記CARの前記細胞内シグナル伝達ドメインがCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む実施形態84に記載の方法。
87.前記CARの前記細胞内シグナル伝達ドメインが共刺激分子をさらに含む実施形態86に記載の方法。
88.前記共刺激分子がICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27、及びCD28から成る群から選択される実施形態87に記載の方法。
89.前記共刺激分子がCD137(4-1BB)である実施形態88に記載の方法。
90.前記共刺激分子がCD28である実施形態88に記載の方法。
91.前記遺伝子操作された抗原受容体がTCRである実施形態82に記載の方法。
92.前記TCRがモノクローナルTCR(mTCR)である実施形態91に記載の方法。
93.前記標的抗原ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で発現される実施形態81~92のいずれかに記載の方法。
94.前記標的抗原が、5T4(栄養膜糖タンパク質)、707-AP、9D7、AFP(α-フェトプロテイン)、AlbZIP(アンドロゲン誘導のbZIP)、HPG1(ヒト前立腺特異的遺伝子-1)、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(ADPリボシルトランスフェラーゼ-4)、B7H4(v-セットドメイン含有T-細胞活性化阻害剤1)、BAGE-1(Bメラノーマ抗原-1)、BCL-2(B-細胞 CLL/リンパ腫-2)、BING-4(WD反復ドメイン46)、CA15-3/CA27-29(ムチン1)、CA19-9(がん抗原19-9)、CA72-4(がん抗原72-4)、CA125(がん抗原125)、カルレチクリン、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19(分化抗原群19)、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原SG8)、CLCA2(塩化物チャネルアクセサリー2)、CML28(慢性骨髄性白血病腫瘍抗原28)、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、CT-9/BRD6(がん/精巣抗原9)、Cten(c-末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1(チトクロームp450ファミリー1サブファミリーbメンバー1)、DAM-10/MAGE-B1(メラノーマ関連抗原B1)、DAM-6/MAGE-B2、EGFR/Her1(表皮増殖因子受容体)、EMMPRIN(ベイシジン)、EpCam、EphA2(EPH受容体A2)、EphA3、ErbB3(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3)、EZH2(zeste2ポリコーム抑制性複合体2サブユニットのエンハンサー)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原-1)、G250/CAIX(炭酸脱水酵素9)、GAGE-1(G抗原-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7b、GAGE-8、GDEP(前立腺にて差次的に発現される遺伝子)、GnT-V(グルコン酸キナーゼ)、gp100(メラニン細胞系列特異的抗原GP100)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(らせん抗原)、HAST-2(スルホトランスフェラーゼファミリー1Aメンバー1)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2)、HERV-K-MEL、HNE(メデュラシン)、ホメオボックスNKX 3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPVE7、HST-2(シルツイン-2)、hTERT、iCE(カスパーゼ1)、IGF-1R(インスリン様増殖因子-1受容体)、IL-13Ra2(インターロイキン-13受容体サブユニットα2)、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-5(インターロイキン-5)、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205(リソホスファチジルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)、KK-LC-1(北九州肺癌抗原-1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原ファミリーメンバー-1)、リビン、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGEA2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-B1、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGEB17、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2(メラノーマ抗原ファミリーL2)、ママグロビンA、MART-1/Melan-A(T-細胞-1によって認識されるメラノーマ抗原)、MART-2、マトリクスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、メソテリン、MG50/PXDN(ペルオキシダシン)、MMP11(マトリクスメタロプロテイナーゼ11)、MN/CA IX-抗原(炭酸脱水酵素9)、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質-3)、MUC1(ムチン1)、MUC2、NA88-A(VENT様ホメオボックス2偽遺伝子1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP(前立腺で発現される新しい遺伝子)、NMP22(核マトリクスタンパク質22)、NPM/ALK(ヌクレオホスミン)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1、NY-ESO-B、OA1(変形性関節症QTL1)、OFA-iLRP(がん胎児性抗原未成熟ラミニン受容体タンパク質)、OGT(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)、OS-9(小胞体レクチン)、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(CDK阻害剤2B)、p53、PAGE-4(P抗原ファミリーメンバー-4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PAI-2、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、PART-1(前立腺アンドロゲン調節転写物1)、PATE(前立腺及び精巣で発現された1)、PDEF(前立腺由来のEts因子)、Pim-1-キナーゼ(プロウイルス組み込み部位1)、Pin1(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼNIMA-相互作用1)、POTE(前立腺、卵巣、精巣、及び胎盤で発現される)、PRAME(メラノーマで優先的に発現される抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSGR(前立腺特異的G-タンパク質共役受容体)、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE-1(腎腫瘍癌腫抗原)、RHAMM/CD168、RU1(腎遍在タンパク質1)、RU2、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(T-細胞-1によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原)、SART-2、SART-3、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(SSXファミリーメンバー1)、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1(STEAP2 メタロレダクターゼ)、STEAP、サバイビン、サバイビン-213、TA-90(腫瘍関連抗原-90)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARP(TCRγ代替リーディングフレームタンパク質)、TGFb(形質転換増殖因子β)、TGFbR11(形質転換増殖因子β受容体11)、TGM-4(トランスグルタミナーゼ4)、TRAG-3(タキソール耐性関連遺伝子3)、TRG(T-細胞受容体γ遺伝子座)、TRP-1(一過性受容体ポテンシャル-1)、TRP-2/6b、TRP-2/INT2、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(U-プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子A)、VEGFR-2/FLK-1、及びWT1(ウィルムス腫瘍1)から成る群から選択される実施形態93に記載の方法。
95.前記標的抗原がCD19またはCD22である実施形態95に記載の方法。
96.前記標的抗原がCD19である実施形態96に記載の方法。
97.前記標的抗原ががん抗原であり、前記がん抗原はその発現ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で増加する抗原である実施形態94~96のいずれかに記載の方法。
98.前記標的抗原が、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl、ベータ-カテニン/m、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN、EFTUD2/m、ELF2/m、ETV6-AML1、FN1/m、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラス1/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARa、PRDX5/m、PTPRX/m、RBAF600/m、SIRT2/m、SYTSSX-1、SYT-SSX-2、TEL-AML1、TGFbRII、及びTPI/mから成る群から選択され、その際、前記標的抗原はがん抗原であり、前記がん抗原はがん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたは表面上で発現される抗原の変異した形態である実施形態93に記載の方法。
99.前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現が、以下:
(i)前記免疫細胞の増殖の阻害、
(ii)前記免疫細胞の細胞死の誘導、
(iii)前記免疫細胞が前記標的抗原を認識する及び/または活性化される能力の阻害、
(iv)前記標的抗原に対する免疫応答を誘導しない細胞への前記免疫細胞の分化の誘導、
(v)前記免疫細胞の免疫応答を促進する分子に対する前記免疫細胞の反応の低下、または
(vi)前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応の上昇の1以上を引き起こす実施形態81~98のいずれかに記載の方法。
100.前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK、2B4、FAS、CD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c、CD148、LRR1、TGFBR1、IL10RA、KLGR1、DNMT3A、及びA2aRから成る群から選択される実施形態99に記載の方法。
101.前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める実施形態99に記載の方法。
102.前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める前記遺伝子が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする実施形態101に記載の方法。
103.前記免疫チェックポイントの受容体またはリガンドが、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される実施形態102に記載の方法。
104.前記遺伝子破壊剤が前記遺伝子破壊剤(複数可)の非存在下での前記免疫細胞と比べて、前記免疫細胞の機能を弱める前記免疫細胞における遺伝子の発現を少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または95%低下させる実施形態81~103のいずれかに記載の方法。
105.前記遺伝子破壊剤が、前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める遺伝子の発現を低下させる実施形態104に記載の方法。
106.前記遺伝子破壊剤が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする遺伝子の発現を低下させる実施形態105に記載の方法。
107.前記遺伝子破壊剤が、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される遺伝子の発現を低下させる実施形態106に記載の方法。
108.前記遺伝子破壊剤が、RNA干渉(RNAi)によって前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現を低下させる実施形態105~107のいずれかに記載の方法。
109.1を超える遺伝子破壊剤が、RNAiによって前記免疫細胞における前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現を低下させる実施形態108の方法。
110.前記遺伝子破壊剤が前記免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的とする、または前記免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とし、第1の遺伝子破壊剤は第1の遺伝子を標的とし、第2の遺伝子破壊剤は第2の遺伝子を標的とし、またはそれらの任意の組み合わせで標的とする実施形態109に記載の方法。
111.前記RNAiには短ヘアピンRNA(shRNA)が介在する実施形態108~110のいずれかに記載の方法。
112.前記RNAiには1を超えるshRNAが介在する実施形態111に記載の方法。
113.前記RNAiには2つのshRNAが介在する実施形態112に記載の方法。
114.2つのshRNAがPD-1を標的とする実施形態112または113に記載の方法。
115.第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIM-3を標的とする実施形態112または113に記載の方法。
116.第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがCTLA-4を標的とする実施形態112または113に記載の方法。
117.第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがLAG-3を標的とする実施形態112または113に記載の方法。
118.第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIGITを標的とする実施形態112または113に記載の方法。
119.前記免疫細胞がshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む実施形態111~118のいずれかに記載の方法。
120.前記免疫細胞が1を超えるshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む実施形態119に記載の方法。
121.前記免疫細胞が2つのshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む実施形態119に記載の方法。
122.前記shRNA(複数可)をコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号2~219及び238~267から成る群から選択される配列を含む実施形態119~121のいずれかに記載の方法。
123.前記shRNAをコードする前記ヌクレオチド配列がベクター上に存在する実施形態119~122のいずれかに記載の方法。
124.異なるshRNAの発現が異なるプロモーターによってそれぞれ調節される実施形態123のいずれかに記載の方法。
125.2つの異なるshRNAの発現が2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節される実施形態124に記載の方法。
126.前記2つの異なるプロモーターがRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである実施形態125に記載の方法。
127.前記2つのプロモーターがU6プロモーターである実施形態126に記載の方法。
128.前記U6プロモーターが異なる種に由来する実施形態127に記載の方法。
129.前記2つのプロモーターが互いに異なる方向に向けられる実施形態125~128のいずれかに記載の方法。
130.前記遺伝子操作された抗原受容体及び前記遺伝子破壊剤(複数可)がベクターからそれぞれ発現される実施形態81~129のいずれかに記載の方法。
131.前記遺伝子操作された抗原受容体及び前記遺伝子破壊剤(複数可)が同一ベクターから発現される実施形態130に記載の方法。
132.前記ベクターが、プラスミドベクターまたはウイルスベクターである実施形態130~131のいずれかに記載の方法。
133.前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである実施形態132に記載の方法。
134.前記レンチウイルスベクターがレトロウイルスベクターである実施形態133に記載の方法。
135.前記免疫細胞がT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞から成る群から選択される実施形態81~134のいずれかに記載の方法。
136.前記免疫細胞がT細胞である実施形態135に記載の方法。
137.前記T細胞がCD4+T細胞またはCD8+T細胞である実施形態136に記載の方法。
138.前記免疫細胞が2つのshRNA及びCARをコードするヌクレオチド配列を同一ベクター上で含む実施形態136または137のいずれかに記載の方法。
139.前記2つのshRNAが互いに異なる方向に向けられた2つの異なるRNAポリメラーゼIIIのプロモーターによってそれぞれ調節される実施形態138に記載の方法。
140.前記CARがCD19を標的とし、前記第1のshRNAがPD-1を標的とし、前記第2のshRNAがTIGITを標的とする実施形態139に記載の方法。
141.実施形態21~80のいずれかに記載の免疫細胞を含む組成物。
142.実施形態21~80のいずれかに記載の免疫細胞と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
143.免疫療法を必要とする疾患または状態を有する対象に実施形態21~80のいずれかに記載の免疫細胞または実施形態141もしくは142に記載の組成物を投与することを含む治療方法。
144.前記遺伝子操作された抗原受容体が前記疾患または前記状態に関連する抗原に特異的に結合する実施形態143に記載の方法。
145.前記疾患または前記状態ががん、例えば腫瘍である実施形態143または144に記載の方法。
146.疾患または状態の治療に使用するための実施形態21~80のいずれかに記載の免疫細胞または実施形態141~142に記載の組成物。
147.疾患または状態を治療するための薬物の製造における実施形態21~80のいずれかに記載の免疫細胞または実施形態121~122に記載の組成物の使用。
148.前記遺伝子操作された抗原受容体が前記疾患または前記状態に関連する抗原に特異的に結合する実施形態146に記載の免疫細胞もしくは組成物または実施形態147に記載の使用。
149.前記疾患または前記状態ががん、例えば腫瘍である、実施形態147または実施形態148に記載の使用、組成物、または免疫細胞。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1A】細胞固有のPD-1遮断CAR-T細胞の生成。1つで2つの機能があるCARベクターの模式図である。
【
図1B】細胞固有のPD-1遮断CAR-T細胞の生成。形質導入の4日後にLNGFR及びCARの発現を分析した。
【
図1C】細胞固有のPD-1遮断CAR-T細胞の生成。形質導入の4日後にLNGFR及びCARの発現を分析した。
【
図1D】細胞固有のPD-1遮断CAR-T細胞の生成。LNGFR磁気ビーズを用いてCAR-T細胞を選別し、2×10
5個/mlで播種した。累積CAR-T細胞の数はトリパンブルー染色によって評価した。
【
図1E】細胞固有のPD-1遮断CAR-T細胞の生成。LNGFR+CAR-T細胞を、外因性サイトカインなしでγ線照射NALM-6と混合した。
【0083】
【
図2】細胞固有のPD-1遮断に対するPol IIIプロモーター型の影響を示す図である。
【0084】
【
図3A】PD-1遮断を伴ったCD19及びPD-L1の刺激のもとでの試験管内の細胞毒性及び増殖。LNGFR+CAR-T細胞をNALM-6またはNALM-6-PDL1の生細胞と1:1、0.3:1、0.1:1のE:T比で混合する。
【
図3B】PD-1遮断を伴ったCD19及びPD-L1の刺激のもとでの試験管内の細胞毒性及び増殖。LNGFR+CAR-T細胞を外因性サイトカインなしでγ線照射したNALM-6-PDL1、NALM-6-PDL1-CD80、またはK562-CD19-PDL1と1:1のE:T比にて混合した。
【0085】
【
図4】細胞固有のPD-1遮断によるCAR-T細胞の生体内抗腫瘍機能を示す図である。
【0086】
【
図5A】CAR-T細胞の細胞固有のPD-1破壊における生体内サイトカイン産生の低下を示す図である。
【
図5B】細胞固有のPD-1破壊によるCAR-T細胞の生体内増殖の遅延を示す図である。
【0087】
【
図6A】細胞固有のPD-1破壊におけるCD28/CD3
ζまたは4-1BB/CD3
ζ CAR-T細胞の機能。G28z、GBBz、P28z及びPBBzベクターの模式図である。
【
図6B】細胞固有のPD-1破壊におけるCD28/CD3
ζまたは4-1BB/CD3
ζ CAR-T細胞の機能。形質導入の4日後での形質導入T細胞のLNGFR発現を示すフローサイトメトリー解析を示す図である。
【0088】
【
図7A】CD28または4-1BBとの共刺激時のPD-1発現レベル。外因性サイトカインなしでLNGFR+CAR-T細胞をγ線照射したNALM-6またはK562-CD19とインキュベートした。インキュベートの3日後、LNGFR+CAR-T細胞のPD-1発現を解析した。
【
図7B】CD28または4-1BBとの共刺激時のPD-1発現レベル。PD-1プライマーを用いて行われた定量的リアルタイムPCRの結果を示す図である。
【0089】
【
図8A】NFATまたはNF-
κBのレポーター系の確立。NFAT-RE3×-eGFP及びNF-
κB-RE5×-eGFRのレポーターベクターの模式図である。
【
図8B】NFATまたはNF-
κBのレポーター系の確立。LNGFR+CART細胞のeGFP gMFIを用いて算出したレポーター活性の倍率変化を示す図である。
【0090】
【
図9A】CD28共刺激では活性化されたが、4-1BB共刺激では活性化されなかったNFATシグナル伝達。レポーター形質導入T細胞を再刺激し、G28zまたはGBBzを用いて形質導入した。
【
図9B】CD28共刺激では活性化されたが、4-1BB共刺激では活性化されなかったNFATシグナル伝達。CAR T細胞におけるNFAT標的遺伝子のmRNAレベルをqPCRによって評価した。
【0091】
【
図10】CD28及び4-1BB双方の共刺激で活性化されたNF-
κBシグナル伝達を示す図である。
【0092】
【
図11A】G28z CARTのTGF-βシグナル伝達強度はBBz CARTよりわずかに高い。NALM-6との1:1のE:T細胞比での4時間または24時間のインキュベートの後、CAR-T細胞におけるリン酸化SMAD2/3を細胞内フローサイトメトリーによって解析した。
【
図11B】G28z CARTのTGF-βシグナル伝達強度は、BBz CARTよりわずかに高い。10ng/mlの組換えヒトTGF-β
1によるG28z及びGBBz CAR T細胞におけるPD-1発現を示すフローサイトメトリー解析。
【
図11C】G28z CARTのTGF-βシグナル伝達強度は、BBz CARTよりわずかに高い。CAR T細胞におけるTGF
-β1、TGFBR1及びTGFBR2のmRNAレベルをqPCRにより評価した。
【0093】
【
図12A】CD19及びPD-L1による反復刺激のもとでのPBBz CAR T細胞の試験管内で保持された細胞傷害性及び増殖能を示す。細胞傷害性を示す図である。(上)LNGFRの磁気選別の後、12日目の初代LNGFR+ CAR T細胞をNALM-6-PDL1と1:1、0.3:1、0.1:1のE:T比で混合した。(下)LNGFR+CAR T細胞をγ線照射したK562-CD19-PDL1によって1:1のE:T比で刺激した。
【
図12B】CD19及びPD-L1による反復刺激のもとでのPBBz CAR T細胞の試験管内で保持された細胞傷害性及び増殖能を示す。外因性サイトカインなしでLNGFR+CAR T細胞をγ線を照射したNALM-6-PDL1-CD80またはK562-CD19-PDL1と1:1のE:T比で混合して繰り返し刺激した。
【0094】
【
図13A】PBBz CAR T細胞におけるTGF-βが介在する機能障害に対する感受性が低く、試験管内で低生成であるCAR由来の制御性T細胞を示す。CAR-T増殖のTGF-ベータが介在する抑制を示す図である。
【
図13B】PBBz CAR T細胞におけるTGF-βが介在する機能障害に対する感受性が低く、試験管内で低生成であるCAR由来の制御性T細胞を示す。Treg誘導に対するTGF-ベータの感受性を示す図である。
【
図13C】PBBz CAR T細胞におけるTGF-βが介在する機能障害に対する感受性が低く、試験管内で低生成であるCAR由来の制御性T細胞を示す。Treg誘導に対するPDL1/PD-1の効果を示す図である。
【0095】
【
図14】PBBz CAR T細胞による白血病の進行の継続的な阻害を示す図である。
【0096】
【
図15】1つはPD-1の発現を阻害し、2つ目はTIM-3の発現を阻害する2種類のshRNAと、CD19 CAR発現カセットとをコードする2種類のベクターの構成図である。
【0097】
【
図16】CAR-T細胞調製のプロセスを示す図であり、
ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6細胞と
ΔLNGFR-CART19/shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1細胞とを本明細書に記載されているように調製し、単離した。
【0098】
【
図17】
図15に示すベクターを含むCAR-T細胞(
ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6細胞及び
ΔLNGFR-CART19/shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1細胞)からのフローサイトメトリーデータを示す図である。
【0099】
【
図18A】実施例8の方法を用いて生成した
ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6細胞及び
ΔLNGFR-CART19/shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1細胞についてのフローサイトメトリーデータを示す図である。
【
図18B】CAR-T細胞におけるPD-1及びTIM-3の発現を示す図である。
【0100】
【
図19】標的細胞を用いてCAR-T細胞を繰り返し刺激し、その後、CD45RA及びCCR7の抗体を用いて細胞分化の程度を確認したフローサイトメトリーのデータである。
【0101】
【
図20A】実施例8の方法を用いて作製されたCAR-T細胞の評価を示す。形質導入効率を示す図である。
【
図20B】実施例8の方法を用いて作製されたCAR-T細胞の評価を示す。増殖能を示す図である。
【
図20C】実施例8の方法を用いて作製されたCAR-T細胞の評価を示す。生存率を示す図である。
【0102】
【
図21A】CTLA-4、LAG-3、TIGIT、及びTIM-3を標的とするshRNAの選択を示す。2日間CD3/CD28で刺激したT細胞にCTLA-4、LAG-3、TIGIT、及びTIM-3を標的とする21塩基長のsiRNAをエレクトロポレーションで導入する。形質移入の2日後に、siRNAが介在するノックダウン効率を確認した。網掛け:選択したsiRNAの配列に基づいて、CAR及びshRNAを発現する1つで2つの機能があるベクターを構築した。網掛けは、最初に選択したsiRNAを示す。
【
図21B】CTLA-4、LAG-3、TIGIT、及びTIM-3を標的とするshRNAの選択を示す。CTLA-4、LAG-3、TIGITまたはTIM-3のshRNAを含有する1つで2つの機能があるベクターでT細胞に形質導入し、LNGFR磁気ビーズで選別した。2×10
5個/mlで播種した後、3日ごとにLNGFR+CAR T細胞の数を測定した。
【
図21C】CTLA-4、LAG-3、TIGIT、及びTIM-3を標的とするshRNAの選択を示す。Tim3の発現(%)を示す図である。
【0103】
【
図22A】二重免疫チェックポイント破壊CAR T細胞の生成を示す。1つで2つの機能がある二重ベクターの模式図である。
【
図22B】二重免疫チェックポイント破壊CAR T細胞の生成を示す。1つで2つの機能がある二重形質導入の4日後、LNGFR+T細胞%を解析した。
【
図22C】二重免疫チェックポイント破壊CAR T細胞の生成を示す。二重KD(ノックダウン)CAR-T細胞を選別し、2×10
5/mlで播種した。累積CAR T細胞の数はトリパンブルー染色によって評価した。
【
図22D】二重免疫チェックポイント破壊CAR T細胞の生成を示す。γ線を照射したNALM-6またはK562-CD19の共培養後3日目にLNGFR+CAR T細胞のLAG-4、PD-1、TIGITまたはTIM-3の発現を解析した。CTLA-4の発現を細胞内フローサイトメトリーで解析した。
【
図22E】二重免疫チェックポイント破壊CAR T細胞の生成を示す。γ線を照射したNALM-6またはK562-CD19の共培養後3日目にLNGFR+CAR-T細胞のLAG-4、PD-1、TIGITまたはTIM-3の発現を解析した。CTLA-4の発現を細胞内フローサイトメトリーで解析した。
【0104】
【
図23】2つの免疫チェックポイントを標的とする二重KDのCAR-T細胞を用いた生体内でのCD19+血液がんの治療を示す図である。
【0105】
【
図24】PD-1及びTIGITを標的とする二重KDのCAR-T細胞を用いた固形腫瘍モデルでのがんの治療を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
本開示の特徴は添付のクレームに具体的に示されている。本開示の特徴及び利点のよりよい理解は、本開示の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明を参照することによって得られるであろう。本明細書に記載される開示の完全な理解を円滑にするために、多数の用語を以下で定義する。
【0107】
簡単に言えば、一態様では、本明細書で開示されるのは、免疫チェックポイントの受容体及びリガンドを含む免疫細胞の機能を弱める1以上の遺伝子の発現を阻害する2種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)のような抗原受容体をコードする塩基配列とを含むベクター;標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体と、免疫細胞の機能を弱める遺伝子(単数)または遺伝子(複数)の免疫細胞における発現を低下させるまたは低下させることができる1以上の遺伝子破壊剤とを含む免疫細胞;免疫細胞を生産する方法;例えば、ヒト患者の免疫療法のための、免疫細胞を含む組成物または医薬組成物;及び疾患または状態を有する対象に免疫細胞を投与することを含む治療方法である。免疫細胞、組成物、または医薬組成物は、1以上の遺伝的破壊剤を含むので、例えば、がん細胞によって活性化されて免疫細胞の機能を弱めてもよい2つの免疫チェックポイント分子の遺伝子の発現を低下させる2つのshRNAをコードするので、これらの遺伝子に対する別個の阻害剤の使用に起因する可能性のあるサイトカイン放出症候群や自己免疫症状のような重篤で全身性の有害反応を排除することが可能であり、同様に、高価な同時治療から生じる治療コストの増加による負担を軽減しながら、shRNAが1つだけ発現する場合よりも効果的な細胞療法を提供する。
【0108】
1.一般技法
本明細書に記載され、または参照されている技法及び手順には、当業者によって一般的によく理解されている、及び/または従来の方法を用いて一般的に採用されているもの、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(4th ed.2012);Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,2003);Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic(An ed.2009);Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Albitar ed.2010);及びAntibody Engineering,Vols.1 and 2 (Kontermann and Dubel eds.,2nd ed.2010).Molecular Biology of the Cell(6th Ed.,2014)に記載されている広く利用されている方法が含まれる。
【0109】
2.定義
特に明記しない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。この明細書を解釈する目的で、用語の以下の説明が適用され、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆もまた同様である。特許、出願、公開出願及びその他の刊行物はすべて、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。述べられている用語のいずれかの記載が参照によって本明細書に組み込まれるいずれかの文書と矛盾する場合には、以下に述べられる用語の記載が優先されるものとする。
【0110】
本開示で使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するようには意図されない。単数表現は、文脈によって明確に示されていない限り、複数表現を含む。本発明は、本明細書に記述される特定の方法、プロトコール、及び試薬等に制限されず、したがって変化し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的としており、クレームによってのみ定義される本発明の範囲を制限するようには意図されない。
【0111】
本明細書で使用されるとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は本明細書では、冠詞の文法的対象の1つまたは1を超えるもの(すなわち、少なくとも1つ)を指すように使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または1を超える要素を意味する。
【0112】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢のうちの一方、双方、またはその任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0113】
「及び/または」という用語は、選択肢のうちの一方または双方のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0114】
本明細書で使用されるとき、「約」または「およそ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対し、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の分変動する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。一実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さについて、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さの範囲を指す。
【0115】
本明細書全体における「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「特定の実施形態(a particular embodiment)」、「関連した実施形態」、「特定の実施形態(a certain embodiment)」、「追加的な実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせ等に対する言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、または特色が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな箇所で出現する上記フレーズが、必ずしもすべて同じ実施形態を言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特色は、1つ以上の実施形態における任意の好適な方法で組み合わせられてもよい。
【0116】
「構築物」は、試験管内または生体内のいずれかで標的細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む高分子または分子の複合体を指す。「ベクター」は本明細書で使用されるとき、外来遺伝物質の標的細胞への送達または移入を指示することができる任意の核酸構築物を指し、それはそこで複製させることができ、及び/または発現させることができる。「ベクター」という用語は本明細書で使用されるとき、送達される構築物を含む。ベクターは線状分子または環状分子であることができる。ベクターは組み込み型または非組み込み型であることができる。ベクターの主な種類には、プラスミド、エピソームベクター、ウイルスベクター、コスミド、及び人工染色体が挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書に記載されているような「1つで2つの機能があるベクター」は、免疫細胞の機能を弱める遺伝子(単数)または遺伝子(複数)の発現を阻害する1以上の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)をコードする塩基配列とを含むベクターである。本明細書に記載されているような「1つで2つの機能がある二重ベクター」は、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を阻害する2種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)及びT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)のいずれか1つをコードする塩基配列とを含むベクターである。本明細書に記載されている1つで2つの機能がある二重ベクターは1つで2つの機能があるベクターの形態である。
【0118】
「RNAi」(転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クェリング、または共抑制としても知られる)は、RNA分子が通常、特定のmRNA分子の破壊を引き起こすことによって遺伝子発現を配列特異的に阻害する転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。RNAiの活性がある成分は低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる短/小二本鎖RNA(dsRNA)であり、それは通常15~30のヌクレオチド(例えば、19~25、19~24または19~21のヌクレオチド)及び2のヌクレオチド3’オーバーハングを含有し、且つ標的遺伝子の核酸配列と一致する。これらの短いRNA種は、さらに大きなdsRNAのダイサーが介在する切断によって生体内で自然に生成されてもよく、それらは哺乳類細胞で機能的である。DNA発現プラスミドを用いて、本開示のsiRNA二本鎖またはdsRNAを細胞内で安定して発現させ、標的遺伝子発現の長期阻害を達成することができる。一態様では、siRNA二本鎖のセンス鎖及びアンチセンス鎖は通常、短ヘアピンRNA(shRNA)と呼ばれるステムループ構造の発現をもたらす短いスペーサー配列によって連結される。ヘアピンはダイサーによって認識及び切断されるので、成熟したsiRNA分子を生成する。
【0119】
「shRNA」という用語は、いくつかの自己相補性配列がそのステムとの堅固なヘアピン構造を作り出すRNA分子を指す。RNA分子はおよそ80bpの長さを有することができる。shRNAが細胞で発現されると、それは一連の工程を経て処理され、遺伝子サイレンシングのガイドとして作用する低分子干渉RNA(siRNA)になる。簡単に言えば、shRNAが発現されると、細胞内のDrosha複合体によって処理されてプレshRNAになり、次いで核の外に輸送され、そこでダイサーによってさらに処理されてsiRNAになり、次に一本鎖になり、RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)複合体によって負荷される。ここで、siRNAのアンチセンス鎖は、RISC複合体が標的遺伝子のmRNAに付着するためのガイドとして作用し、この方法で付着しているRISC複合体がmRNAを切断すると、遺伝子サイレンシングが発生する。標的遺伝子のshRNAは、特定の遺伝子に持続的且つ特異的な遺伝子サイレンシングを可能にするので、標的遺伝子を阻害する目的でベクターに含められる。
【0120】
「プロモーター」という用語は、遺伝子の転写の開始に関与する遺伝子の上流領域を指す。上述の2種類のshRNAもプロモーターに発現を調節させる。ここで、2種類のshRNAの発現は、それらが2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節されることを特徴とする。反復挿入断片を用いた同一の塩基配列によるクローニングが存在するならば、これらの同一の塩基配列間の結合が原因で適切なクローニングが発生せず、組換えまたは欠失が生じる可能性が高いと判断される。どのRNAポリメラーゼがプロモーターに結合して転写を開始するかに応じて、プロモーターはRNAポリメラーゼIのプロモーター、RNAポリメラーゼIIのプロモーターまたはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターであることができる。上記2つのプロモーターは、それらがRNAポリメラーゼIIIのプロモーター(以後、pol IIIプロモーター)であることを特徴としてもよい。Pol IIIプロモーターは、5’末端にキャップを付けることなく、またはプロモーターによる調節で転写されるRNAの3’末端にポリ(A)テールを付けることなく、5’末端から3’末端に正確に転写するように作製されてもよい。Pol IIIプロモーターの種類には、U6プロモーター、H1プロモーター及び7SKプロモーター等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
本明細書で使用される「G28z」という用語は、shGFP発現カセットと、CD28共刺激ドメインと、CD3ζドメインとを含む構築物を指す(
図6A)。さらに具体的には、「G28z」という用語では、「G」はshGFPを表し;「28」はCD28を表し;「z」はCD3ζを表す。同じパターンに従って、本明細書で使用される「P28z」という用語は、shPD-1発現カセットと、CD28共刺激ドメインと、CD3ζドメインとを含む構築物(
図6A)を指し、「P」はshPD-1を表し;「28」は「CD28」を表し;「z」はCD3ζを表す。本明細書で使用される「GBBz」という用語は、shGFP発現カセットと、4-1BB共刺激ドメインと、CD3ζドメインとを含む構築物(
図6A)を指し、「G」はshGFPを表し;「BB」は「4-1BB」を表し;「z」はCD3ζを表す。本明細書で使用される「PBBz」という用語は、shPD-1発現カセットと、4-1BB共刺激ドメインと、及びCD3ζドメインとを含む構築物(
図6A)を指し、「P」はshPD-1を表し;「BB」は「4-1BB」を表し;「z」はCD3ζを表す。
【0122】
「CAR」は一般に、免疫細胞上に存在する場合、免疫細胞に標的細胞(通常はがん細胞)に対する特異性を持たせる一方で、細胞内にてシグナル伝達を引き起こすポリペプチドのセットである。CARは最低でも、以下に記載されている標的抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下に記載されている促進分子または共刺激分子に由来する。ポリペプチドを含むセットは、連結されてもよく、または刺激によって二量化されるスイッチを介して連結する形態であってもよい。促進分子は上記に記載されているTCRのゼータ鎖であってもよい。「CD19 CAR」はCD19がん抗原を標的とするCARである。
【0123】
本明細書で使用されるとき「T細胞受容体(TCR)」という用語は、アルファ(α)鎖及びベータ(β)鎖のヘテロ二量体で構成されるT細胞上のタンパク質受容体を指すが、一部の細胞では、TCRはガンマ鎖とデルタ鎖(γ/δ)から成る。特定の実施形態では、TCRは、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、抑制性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びガンマデルタT細胞を含む、TCRを含む任意の細胞で改変されてもよい。
【0124】
本明細書で使用される「モノクローナルT細胞受容体(mTCR)」という用語は、特定の抗原を特異的に標的とするように遺伝子操作されるT細胞受容体(TCR)を指す。それは抗原特異的TCRとも呼ばれ得る。mTCRを有するT細胞は、養子T細胞療法のようなウイルス感染やがんの免疫療法に使用されると報告されている。いくつかの態様では、キメラ単鎖抗体構築物(scFv)のレトロウイルス移入は、定義された抗原特異性を持つT細胞を作り出すための戦略として使用されてきた。ほとんどの場合、キメラscFv構築物は、FcR-ガンマまたはCD3ゼータの細胞内シグナル伝達ドメインに連結され、T細胞エフェクター機能を誘発した。CD3ゼータドメインは、例えば、CD28、4-1BBまたはOX40のような共刺激分子のシグナル伝達ドメインと組み合わせられている。モノクローナルT細胞受容体(mTCR)及びがん治療におけるそれらの応用は、Stauss et al.,2007、Molecular Therapy,15(10):1744-50,Zhang and Morgan,2012,Advanced Drug Delivery Reviews,64(8):756-762、及びLiddy et al.,2012,Nature Medicine,18(6):980-7に記載されており、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
本明細書で使用される「ΔLNGFR」という用語は、上記の挿入が行われている細胞の精製に使用される細胞質ドメインのないLNGFR(低親和性神経成長因子受容体)を指す。
【0126】
「免疫細胞」は、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、ガンマデルタT細胞及びB細胞、ナチュラルキラー細胞のようなリンパ球、肥満細胞、好酸球、好塩基球から選択されるが、これらに限定されないものとして本明細書で特徴付けられてもよく;食細胞にはマクロファージ、好中球、及び樹状細胞が含まれる。T細胞にはCD4+T細胞及びCD8+T細胞が含まれる。
【0127】
本明細書で使用されるとき、「Tリンパ球」及び「T細胞」という用語は相互交換可能に使用され、胸腺での成熟を完了し、体内における特定の外来抗原の同定及び他の免疫細胞の活性化や不活化を含む、免疫系におけるさまざまな役割を有する白血球の主要なタイプを指す。T細胞は、任意のT細胞、例えば、培養T細胞、例えば、初代T細胞、または培養T細胞株、例えば、Jurkat、SupT1等に由来するT細胞、または哺乳動物から得られるT細胞であることができる。T細胞はCD3+細胞であることができる。T細胞は、任意のタイプのT細胞であることができ、且つCD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1及びTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、抑制性T細胞、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)、等を含むが、これらに限定されない任意の発達段階にあることができる。ヘルパーT細胞の追加の種類には、Th3(Treg)、Th17、Th9、またはTfh細胞のような細胞が含まれる。メモリーT細胞の追加の種類には、中央メモリーT細胞(Tcm細胞)、エフェクターメモリーT細胞(Tem細胞及びTEMRA細胞)のような細胞が含まれる。T細胞は、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されたT細胞のような遺伝子操作されたT細胞を指すこともできる。T細胞は幹細胞または前駆細胞から分化させることもできる。
【0128】
「CD4+T細胞」はそれらの表面でCD4を発現し、細胞介在性の免疫応答に関連するT細胞のサブセットを指す。それらは刺激後の分泌プロファイルを特徴とし、IFN-γ、TNF-α、IL2、IL4及びIL10のようなサイトカインの分泌が含まれてもよい。「CD4」は、もともとTリンパ球上の分化抗原として定義された55-kDの糖タンパク質であるが、単球/マクロファージを含む他の細胞にも見いだされる。CD4抗原は、免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、MHC(主要組織適合性複合体)クラスII拘束の免疫応答の関連認識要素として関与する。Tリンパ球では、それらはヘルパー/インデューサーのサブセットを定義する。
【0129】
「CD8+T細胞」は、それらの表面上でCD8を発現し、MHCクラスIに拘束され、細胞傷害性T細胞として機能するT細胞のサブセットを指す。「CD8」分子は、胸腺細胞と細胞傷害性Tリンパ球及びサプレッサーTリンパ球に見られる分化抗原である。CD8抗原は、免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、主要組織適合性複合体クラスI拘束の相互作用における関連認識要素である。
【0130】
本明細書で使用されるとき、「NK細胞」または「ナチュラルキラー細胞」という用語は、CD56またはCD16の発現及びT細胞受容体(CD3)の非存在によって定義される末梢血リンパ球のサブセットを指す。本明細書で使用されるとき、「適応NK細胞」及び「記憶NK細胞」という用語は相互交換可能であり、表現型がCD3-及びCD56+であり、NKG2CとCD57の少なくとも1つ、及び任意でCD16を発現するが、以下:PLZF、SYK、FceRγ、及びEAT-2の1以上の発現が欠如するNK細胞のサブセットを指す。いくつかの実施形態では、CD56+NK細胞の単離された亜集団は、CD16、NKG2C、CD57、NKG2D、NCRリガンド、NKp30、NKp40、NKp46、活性化及び阻害性KIR、NKG2A及び/またはDNAM-1の発現を含む。CD56+は弱い発現またははっきりした発現であってもよい。
【0131】
本明細書で使用されるとき、「免疫チェックポイント」という用語は、免疫系に存在し、免疫応答をオンまたはオフにすることができる分子を指す。本来、それらは、細胞死や自己免疫反応を引き起こす、免疫細胞の過剰な活性化を調節する安全装置である。これらの免疫チェックポイント分子は、免疫応答を高める刺激性免疫チェックポイント分子と、免疫応答を阻害する抑制性免疫チェックポイント分子とに大きく分類することができる。例えば、免疫チェックポイントの受容体及びリガンドは、PD1(プログラム細胞死タンパク質1)、PD-L1(プログラム死リガンド1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、TIM-3(T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3)、CEACAM(3つのサブタイプCEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5を含む癌胎児性抗原関連細胞接着分子)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)、VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー)、BTLA(B及びTリンパ球減衰因子)、TIGIT(Ig及びITIMのドメインを持つT細胞免疫受容体)、LAIR1(白血球関連免疫グロブリン様受容体1)、CD160(分化抗原群160)、CD96(分化抗原群96)、MerTK(癌原遺伝子チロシンタンパク質キナーゼMER)、及び2B4(NK細胞活性化誘導リガンド)から成る群から選択されてもよく、例えば、PD1とTIM3の間で選択されてもよい。
【0132】
「培養」または「細胞培養」という用語は、試験管内環境における細胞の維持、増殖及び/または分化を指す。「細胞培養培地」、「培養培地」(いずれの場合も単数の「培地」)、「栄養補助剤」及び「培地栄養補助剤」は、細胞培養物を培養する栄養組成物を指す。「培養する」または「維持する」という用語は、組織または身体の外側で、例えば滅菌プラスチック(またはコーティングされたプラスチック)の細胞培養用の皿またはフラスコにて細胞を持続させること、増殖させること(成長させること)及び/または分化させることを指す。「栽培」または「維持」は、培養培地を、細胞を増殖させ、及び/または持続させるのに役立つ栄養、ホルモン及び/または他の因子の供給源として利用してもよい。
【0133】
本明細書に記載されているヒト患者における免疫療法用の「医薬組成物」は免疫細胞を含む。細胞に加えて、免疫応答をさらに改善し得る他の薬学的に許容される塩、担体、賦形剤、ビヒクル及び他の添加剤等が医薬組成物に添加されてもよいことは自明であるので、その詳細な説明は省略されるべきである。
【0134】
「対象」という用語は、特定の治療のレシピエントとなる、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類等を含むがこれらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。通常、「対象」及び「患者」という用語は、ヒト対象を参照して本明細書では相互交換可能に使用される。
【0135】
「治療すること」または「治療する」という用語は、治療されている疾患の症状、症状の重症度、及び/または症状の頻度を抑制すること、排除すること、軽減すること、及び/または改善することを指す。本明細書で使用されるとき、「治療する」、「治療」及び「治療すること」という用語は、1以上の治療法の施行に起因する疾患または状態の進行、重症度及び/または持続期間の軽減または改善を指す。
【0136】
「有効量」または「治療上有効な量」は、本明細書では相互交換可能に使用され、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、本明細書に記載されているようなT細胞のような化合物、製剤、材料、または組成物の量を指す。そのような結果には、当該技術分野で好適な任意の手段によって判定されるようながんの抑制が含まれてもよいが、これに限定されない。
【0137】
「投与する」または「投与」は、それが体外で存在しているとき、例えば、粘膜送達、皮内送達、静脈内送達、筋肉内送達及び/または本明細書に記載されているかもしくは当該技術分野において知られているいずれかの他の物理的送達方法によって物質を患者に注射する、またはさもなければ物理的に送達する行為を指す。
【0138】
3.1以上の免疫チェックポイントを標的とする1つで2つの機能があるベクター
腫瘍細胞は種々の免疫チェックポイント、例えば、チェックポイントリガンドを発現する。したがって、1つの免疫チェックポイントが阻害されたとしても、他の免疫チェックポイントの活性化によってCAR-Tの持続的な効果を期待することは困難であり得る。モノクローナル抗体の組み合わせを主として用いて複数の免疫チェックポイントを阻害しており、その抗腫瘍効果が継続的に報告されている(J Clin.Invest.,2015.,Chauvin,JM;PNAS,2010,Curran MA;Blood,2018,Wierz,M;Cancer cell.2014,Johnston RJ)。しかしながら、治療用抗体は全身性に過剰な免疫応答を誘導し得ることが知られていた。さらに、CAR-T細胞療法は生命にかかわるサイトカイン放出症候群(CRS)及び神経毒性にも関連している(Nat Rev Clin Oncol,2017,Neelapu SS)ということは、CAR-Tと抗体療法の併用が副作用の可能性を最大化し得ることを示唆している。さらに、従来の同時免疫細胞療法は、それらの高いコストと、それらがCAR-T以外のT細胞に作用し、自己免疫症状及びサイトカイン放出症候群のリスクがあるということとに起因して患者に多大な経済的負担を課している。本発明は上記の課題に対処するために考案された。
【0139】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは1つで2つの機能があるベクターであり、該ベクターは免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を阻害する1以上の種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)をコードする塩基配列とを含む。
【0140】
ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びレトロウイルスベクターの中から選択されてもよい。例えば、レンチウイルスベクター及びレトロウイルスベクターは細胞のゲノムDNAに遺伝子を挿入して、遺伝子の安定した発現を可能にする。いくつかの実施形態では、例えば、1つで2つの機能があるレンチウイルスベクター、例えば、1つで2つの機能がある二重ベクターを用いて、ベクター上の遺伝子を細胞のゲノムに挿入することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、提供されるのは、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を阻害する2種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)及びT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)のいずれか1つをコードする塩基配列とを含むベクターである。
【0142】
いくつかの実施形態では、2種類のshRNAの発現は、それらが2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節されることを特徴とする。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは、RNAポリメラーゼIIIのプロモーターである。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは異なる種に由来するU6プロモーターである。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは、ベクター上で互いに異なる方向に向けられる。例えば、特定の実施形態では、プロモーターはヘッドトゥーヘッドの方向に向けられる。別の実施形態では、プロモーターは末尾-末尾の方向に向けられる。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は免疫チェックポイントの受容体またはリガンドである。
【0143】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントの受容体またはリガンドは、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG 3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、FAS、CD45、PP2A、SHIP1、SHIP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、CD147、LRR1、TGFBR1、IL10Rアルファ、KLGR1、DNMT3A及びA2aRから成る群から選択される。
【0144】
いくつかの実施形態では、2種類のshRNAは免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子の異なる部分を標的とする、またはそれらは免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とする。いくつかの実施形態では、2種類のshRNAはPD-1の異なる部分を標的とする。いくつかの実施形態では、2種類のshRNAはそれぞれPD-1及びTIM-3を標的とする。いくつかの実施形態では、2種類のshRNAをコードする塩基配列は、配列番号2~219から成る群から選択される異なる配列を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、CARまたはTCR、例えば、mTCRの標的は、がんにおいて増加したがん抗原の中から、またはがんにおいて見いだされるがん抗原の変異した形態から選択されるヒト腫瘍抗原である。
【0146】
いくつかの実施形態では、ベクターは、配列番号220または221の塩基配列のいずれか一方を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びレトロウイルスベクターの中から選択される。
【0147】
3.1 RNA干渉及び短ヘアピンRNA
RNAi(転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クェリング、または共抑制としても知られる)は、RNA分子が通常、特定のmRNA分子の破壊を引き起こすことによって遺伝子発現を配列特異的に阻害する転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。RNAiの活性がある成分は低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる短/小二本鎖RNA(dsRNA)であり、それは通常15~30のヌクレオチド(例えば、19~25、19~24または19~21のヌクレオチド)及びジヌクレオチド3’オーバーハングを含有し、且つ標的遺伝子の核酸配列と一致する。これらの短いRNA種は、さらに大きなdsRNAのダイサーが介在する切断によって生体内で自然に生成されてもよく、それらは哺乳類細胞で機能的である。DNA発現プラスミドを用いて、本明細書に記載されているsiRNA二本鎖またはdsRNAを細胞内で安定して発現させ、標的遺伝子発現の長期阻害を達成することができる。一態様では、siRNA二本鎖のセンス鎖及びアンチセンス鎖は通常、短ヘアピンRNA(shRNA)と呼ばれるステムループ構造の発現をもたらす短いスペーサー配列によって連結される。ヘアピンはダイサーによって認識及び切断されるので、成熟したsiRNA分子を生成する。
【0148】
短ヘアピンRNA(shRNA)は本明細書で使用されるとき、いくつかの自己相補性配列がそのステムとの堅固なヘアピン構造を作り出すRNA分子である。本明細書に記載されているshRNA分子は、約40~120のヌクレオチド長、例えば、約70~90のヌクレオチド長であってもよい。例示的な実施形態では、shRNAは80ヌクレオチド長であることができる。shRNAは、RNAi経路の内在性の誘因であるマイクロ干渉RNA(miRNA)をモデルにしている(Lu et al.,2005,Advances in Genetics,54:117-142,Fewell et al.,2006,Drug Discovery Today,11:975-982)。shRNAが細胞で発現されると、それは一連の工程を経て処理され、遺伝子サイレンシングのガイドとして作用する低分子干渉RNA(siRNA)になる。簡単に言えば、shRNAが発現されると、細胞内のDrosha複合体によって処理されてプレshRNAになり、次いで核の外に輸送され、そこでダイサーによってさらに処理されてsiRNAになり、次に一本鎖になり、RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)によって負荷される。ここで、siRNAのアンチセンス鎖は、RISC複合体が標的遺伝子のmRNAに付着するためのガイドとして作用し、この方法で付着しているRISC複合体がmRNAを切断すると、遺伝子サイレンシングが発生する。標的遺伝子のshRNAは、特定の遺伝子に持続的且つ特異的な遺伝子サイレンシングを可能にするので、標的遺伝子を阻害する目的でベクターに含められる。
【0149】
マイクロRNA(miRNA)と呼ばれる自然に発現する小分子RNAは、mRNAの発現を調節することによって遺伝子サイレンシングを引き起こす。RISCを含有するmiRNAは、シード領域と呼ばれるmiRNAの5’領域のヌクレオチド2~7と完全な配列相補性を提示するmRNAと、その3’領域での他の塩基対を標的とする。miRNAが介在する遺伝子発現の下方調節は、標的mRNAの切断、標的mRNAの翻訳阻害、またはmRNA崩壊によって引き起こされてもよい。miRNAが標的とする配列は普通、標的mRNAの3’-UTRに位置する。単一のmiRNAは種々の遺伝子に由来する100を超える転写物を標的にしてもよく、1つのmRNAはさまざまなmiRNAの標的になってもよい。
【0150】
特定のmRNAを標的とするsiRNA二本鎖またはdsRNAは、試験管内で設計され、合成されて、RNAiプロセスを活性化するために細胞に導入されてもよい。Elbashirらは、21ヌクレオチドのsiRNA二本鎖(低分子干渉RNAと呼ばれる)が、哺乳動物細胞で免疫応答を誘導することなく、強力で特異的な遺伝子ノックダウンを達成することができることを実証した(Elbashir,SM et al.,Nature,2001,411,494-498)。この最初の報告以来、siRNAによる転写後の遺伝子サイレンシングは、哺乳動物細胞における遺伝子分析のための強力なツールとしてすぐに浮上し、新しい治療法を生み出す可能性を有する。
【0151】
例えば、ハンチントン病のようなポリグルタミン拡張疾患を引き起こすポリグルタミン反復タンパク質をコードする核酸配列を標的とするように設計されたRNAi分子は、米国特許第9,169,483号及び9,181,544号、ならびに国際特許公開WO2015179525に記載されており、これらのそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第9,169,483号及び第9,181,544号ならびに国際特許公開番号WO2015179525はそれぞれ、RNAの第1の鎖(例えば、15の隣接ヌクレオチド)及びRNAの第2の鎖(例えば、第1の少なくとも12の隣接ヌクレオチドに相補性)を含む単離されたRNA二本鎖を提供し、RNA二本鎖は長さ約15~30塩基対である。RNAの第1の鎖とRNAの第2の鎖は、RNAループ(約4から50ヌクレオチド)によって操作可能に連結されて、発現カセットに挿入されてもよいヘアピン構造を形成してもよい。ループ部分の非限定例には、その内容が参照により全体として本明細書に組み入れられる米国特許第9,168,483号の配列番号9~14が挙げられる。RNA二本鎖を形成するのに使用されてもよいRNAの鎖、完全な配列または配列の一部のいずれかの非限定例には、米国特許第9,169,483号の配列番号1~8及び米国特許第9,181,544号の配列番号1~11、33~59、208~210、213~215及び218~221が挙げられ、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。RNAi分子の非限定例には、米国特許第9,169,483号の配列番号1~8、米国特許第9,181,544号の配列番号1~11、33~59、208~210、213~215及び218~221、及び国際特許公開番号WO2015179525の配列番号1、6、7と35~38が挙げられ、これらのそれぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0152】
試験管内で合成されたsiRNA分子は、RNAiを活性化するために細胞に導入されてもよい。外来性siRNA二本鎖は、内在性dsRNAと同様に、それが細胞に導入されると、組み立てられて、siRNA二本鎖の2つの鎖の一方に対して相補性である(すなわち、アンチセンス鎖)RNA配列と相互作用する集合複合体である、RNA誘導のサイレンシング複合体(RISC)を形成することができる。プロセス中に、siRNAのセンス鎖(またはパッセンジャー鎖)は複合体から失われる一方で、siRNAのアンチセンス鎖(またはガイド鎖)はその相補性RNAと一致する。特に、siRNAを含むRISC複合体の標的は完全な配列相補性を提示するmRNAである。次いで、siRNAが介在する遺伝子サイレンシングは、標的を切断、遊離、及び分解することによって発生する。
【0153】
標的mRNAに相同なセンス鎖と標的mRNAに相補的なアンチセンス鎖で構成されるsiRNA二本鎖は、一本鎖(ss)-siRNA(例えばアンチセンス鎖RNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド)の使用と比べて、標的RNAの破壊の効率という点ではるかに大きな利点を提供する。多くの場合、対応する二本鎖の効果的な遺伝子サイレンシング効力を達成するには、さらに高濃度のss-siRNAを必要とする。
【0154】
当該技術分野では、siRNAを設計するためのガイドラインが存在する。これらのガイドラインは一般に、サイレンシングされる遺伝子の領域を標的とする19ヌクレオチドの二本鎖領域、対称の2~3ヌクレオチドの3’オーバーハング、5’-リン酸基及び3’-ヒドロキシル基を生成することを推奨した。siRNA配列の優先性を管理してもよい他のルールには、(i)アンチセンス鎖の5’末端でのA/U;(ii)センス鎖の5’末端でのG/C;(iii)アンチセンス鎖の5’末端の1/3での少なくとも5つA/U残基;(iv)長さが9ヌクレオチドを超えるGC区間の非存在が挙げられるが、これらに限定されない。そのような考察に従って、標的遺伝子の特定の配列と一緒に、哺乳動物の標的遺伝子の発現を抑制するのに不可欠な非常に効果的なsiRNA分子が容易に設計されてもよい。
【0155】
本明細書で提供されているように、1つで2つの機能があるベクターは免疫細胞の機能を弱める1以上の遺伝子の発現を阻害する1以上の種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)のいずれか1つをコードする塩基配列とを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、塩基配列は、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を阻害する1種類のshRNAをコードする。いくつかの実施形態では、塩基配列は、免疫細胞の機能を弱める2つの遺伝子の発現を阻害する2種類のshRNAをコードし、その際、ベクターは「1つで2つの機能がある二重ベクター」と呼ばれる。他の実施形態では、塩基配列は、免疫細胞の機能を弱める2を超える遺伝子の発現を阻害する2を超える種類のshRNAをコードする。
【0157】
いくつかの実施形態では、2つ以上の種類のshRNAは、それらが免疫細胞の機能を弱める単一遺伝子、例えば、単一遺伝子のさまざまな部分を標的とすることを特徴としてもよい。例えば、2つ以上の種類のshRNAは、PD-1、例えば、PD-1のさまざまな部分を標的とすることができる。他の実施形態では、2つ以上の種類のshRNAは、それらが免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とする、例えば、PD-1及びTIM-3を標的とすることを特徴としてもよい。
【0158】
例示的な実施形態では、2つ以上の種類のshRNAをコードする塩基配列は、それらが配列番号2から219及び238から267から成る群から選択されるさまざまな配列を含むこと、例えば、それらが配列番号2から117及び238から267から成る群から選択される異なる配列を含んでもよいこと、例えば、それらが配列番号2から12、70から75、及び266から267から成る群から選択されるさまざまな配列を含んでもよいことを特徴としてもよい。
【0159】
いくつかの実施形態では、2種類のshRNAの発現は、それらが2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節されてクローニングの間での組換えまたは欠失の作為を最小限に抑えることを特徴としてもよい。
【0160】
いくつかの実施形態では、どのRNAポリメラーゼがプロモーターに結合して転写を開始するかに応じて、プロモーターはRNAポリメラーゼIのプロモーター、RNAポリメラーゼIIのプロモーターまたはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターであってもよい。上記2つのプロモーターは、それらがRNAポリメラーゼIIIのプロモーター(以後、pol IIIプロモーター)であることを特徴としてもよい。Pol IIIプロモーターは、5’末端にキャップを付けることなく、またはプロモーターによる調節で転写されるRNAの3’末端にポリ(A)テールを付けることなく、5’末端から3’末端に正確に転写するように作製されてもよい。Pol IIIプロモーターの種類には、U6プロモーター、H1プロモーター、7SKプロモーター等が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターに含まれる2つのプロモーターは異なっていてもよく、上記の3種を含むPol IIIプロモーターの中から選択されてもよく、同じ種類のプロモーターが選択されるならば、それらは異なる種に由来してもよい。例えば、2つのプロモーターは、U6プロモーター、例えば、ヒト及びマウスに由来するU6プロモーターのような、異なる種に由来するU6プロモーターであってもよい。U6プロモーターによって作り出された転写物は核内に留まるので、これは核に存在するDrosha複合体にshRNAがプレshRNAにプロセシングされるプロセスを促進させることができると判断される。
【0161】
いくつかの実施形態では、2以上のプロモーターはベクター上で互いに異なる方向に向けられることを特徴としてもよい。例えば、特定の実施形態では、プロモーターは
ヘッドトゥーヘッドの(→←)方向に向けられる。別の実施形態では、プロモーターは、末尾-末尾(←→)の方向に向けられる。1つで2つの機能がある二重ベクターでは、ベクター上で異なる方向に向けられるということは、その発現が2つのプロモーターによって調節されているそれぞれのshRNAが転写されると、RNAポリメラーゼが動く方向が単一の核酸分子にて異なる方向を向くことを意味する。例示的な実施形態では、2つのプロモーターは→←方向であることができる(
図15A)。別の例示的な実施形態では、2つのプロモーターは←→方向であることができる(
図15B)。例えば、2つのプロモーターはベクターでの→←方向を想定してもよい。
【0162】
いくつかの実施形態では、1以上の種類のshRNAの標的遺伝子の発現は、対照群のそれの約90%以下に低減され、例えば、標的遺伝子の発現は、対照群のそれの約80%以下、70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、及び約10%以下に低減される。
【0163】
普通、shRNAは、標的遺伝子のmRNA配列の一部と相同性の高い配列(以後、センスshRNAの塩基配列)、鋭いヘアピンを生成できる配列、及び相同性の高い配列に相補性の配列(以後、アンチセンスshRNA塩基配列)を有するように設計される。自己相補性部分間の非共有結合はステム構造を形成し、shRNAが細胞内で発現され、及び処理されると、アンチセンスshRNA塩基配列が、遺伝子サイレンシングプロセスにおける標的遺伝子のmRNAのガイドとして作用する。例えば、本明細書においてshRNAの発現に使用されるカセットの塩基配列は、NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN(21塩基)-ループ配列-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNN(19塩基)の構造を含むことができる。一実施形態では、21塩基の区間はセンスshRNA塩基配列をコードし、19塩基の区間は21塩基の区間に相補性または実質的に相補性であり、アンチセンスshRNA塩基配列をコードする。別の実施形態では、19塩基の区間はセンスshRNA塩基配列をコードし、21塩基の区間は19塩基の区間に相補性または実質的に相補性であり、アンチセンスshRNA塩基配列をコードする。したがって、発現させると、得られるRNAはステムとループの構造を形成する。特定の実施形態では、カセットに含まれてもよい標的遺伝子(ヒト由来)のそのようなセンスまたはアンチセンスshRNA塩基配列は、配列番号1~219から成る群から選択される。具体的な実施形態では、本明細書でshRNAの発現に使用されるカセットの塩基配列は配列番号220~224から成る群から選択することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、完全なshRNA塩基配列をマウスまたはヒトのU6プロモーターの3’末端に配置することができ、U6プロモーターによって転写を停止するのに必要なTTTTTはすべてのshRNA塩基配列の3’末端に配置することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、各shRNAの核酸配列は、本明細書に記載される配列に加えて、これらの配列と少なくとも50%、具体的には少なくとも70%、さらに具体的には少なくとも80%、一層さらに具体的には少なくとも90%、そして最も具体的には少なくとも95%の配列相同性を示す核酸配列を含んでもよい。これは、siRNA(低分子干渉RNA)や細胞内で処理されて特にsiRNAとなるshRNAの場合、ある程度の変異、特に5’末端の変異は認容され、標的遺伝子の正常なノックダウンを引き起こすこと、且つ遺伝子サイレンシングで役割を担うmiRNAと同様の構造を有するように行われるsiRNAとshRNAの変異が標的遺伝子のノックダウンをさらに効果的に誘導することが報告されているためである。さらに、ベクターの使用において、当業者に自明であるのは、ベクター内の変動、すなわち、特定の配列をベクターに導入するためのクローニングプロセスにおいて生じてもよい塩基配列の付加、修飾または欠失であり、または意図された遺伝子が発現される程度のベクターの使いやすさを改善するための構成要素の変更または導入である。
【0166】
免疫細胞の機能を弱める遺伝子にはさまざまな作用機序が存在する。例には、免疫細胞の増殖を阻害することまたは細胞死を引き起こすこと、活性化するために免疫細胞が反応する必要がある分子との反応を低下させること、免疫細胞が反応標的を認識するために必要な遺伝子の発現を阻害すること、及び特定の標的に対して免疫応答を引き起こす代わりに異なる機能を担う異なる種類の免疫細胞への分化を引き起こすことが挙げられる。代表的な例には、以下に説明される免疫チェックポイントに関連する分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、それが免疫チェックポイントの受容体またはリガンドであることを特徴としてもよい。免疫チェックポイントは、免疫系に存在し、免疫応答をオンまたはオフにすることができる分子である。それらは、細胞死や自己免疫反応を引き起こす免疫細胞の過剰な活性化を調節する安全装置と見なすことができる。これらの免疫チェックポイント分子は、免疫応答を高める刺激性免疫チェックポイント分子と、免疫応答を阻害する抑制性免疫チェックポイント分子とに大きく分類することができる。多くのがん細胞は、抑制性免疫チェックポイントシグナル、特に免疫細胞上の抑制性免疫チェックポイントの受容体及びリガンドを活性化することにより、免疫系を免れることが報告されている。したがって、特定のがんを標的とする免疫細胞療法は、がんのこの回避作用を無効にすることによって効果的にされてもよく、これは、抑制性免疫チェックポイント受容体及びそれらのリガンドの活性化を阻害することによって、またはそれらの発現を低下させることによって達成されてもよい。例えば、免疫チェックポイントの受容体及びリガンドは、PD1(プログラム細胞死タンパク質1)、PD-L1(プログラム死リガンド1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、TIM-3(T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3)、CEACAM(3つのサブタイプCEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5を含む癌胎児性抗原関連細胞接着分子)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)、VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー)、BTLA(B及びTリンパ球減衰因子)、TIGIT(Ig及びITIMのドメインを持つT細胞免疫受容体)、LAIR1(白血球関連免疫グロブリン様受容体1)、CD160(分化抗原群160)、CD96(分化抗原群96)、MerTK(癌原遺伝子チロシンタンパク質キナーゼMER)、及び2B4(NK細胞活性化誘導リガンド)から成る群から選択されてもよく、例えば、PD1、TIM3及びTIGITの間で選択されてもよい。
【0168】
他の実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、それがTCRによる反復刺激によって活性化されているTリンパ球に対して負の調節因子、例えば、FAS(CD95、APO-1またはアポトーシス抗原-1とも呼ばれる)として作用するAICD(活性化誘導細胞死)を促進することができる受容体をコードすることを特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、それがTCRのシグナル活性化を抑制する因子をコードすることを特徴としてもよく、例えば、因子はCD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c及びCD148から選択することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、それが4-1BBのシグナル抑制を介してCAR及び/またはTCR、例えば、mTCRの効力を抑制するタンパク質をコードすることを特徴としてもよく、4-1BBは、TCRの本明細書に記載される共刺激分子、例えば、LRR1(ロイシンリッチ反復タンパク質1)である。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、そのリガンドがサイトカインであり、T細胞を抑制する受容体、例えばTGFBR1(形質転換増殖因子ベータ受容体1)及びIL10Rアルファ(IL-10Rサブユニットアルファ)をコードすることを特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、それがT細胞及びNK細胞の増殖能力及び細胞傷害性を阻害する受容体、例えばKLGR1(キラー細胞レクチン様受容体G1)をコードすることを特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、ノックアウト(KO)されるとT細胞疲弊の疲弊を抑制すると報告されている新しいDNAのメチル化に関連する調節因子、例えばTNMT3a(DNAメチルトランスフェラーゼ 3アルファ)をコードすることを特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、活性化されるとT細胞の細胞毒性及びサイトカイン産生能を阻害することができる、腫瘍微小環境に過剰に存在するアデノシンの受容体、例えばA2aR(アデノシン受容体サブタイプA2a)をコードすることを特徴としてもよい。
【0169】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、それが、FAS、CD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c、CD148、LRR1、TGFBR1、IL10RA、KLGR1、DNMT3A及びA2aRから成る群から選択されることを特徴としてもよい。
【0170】
3.2 キメラ抗原受容体(CAR)及びT細胞受容体、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)
本明細書で提供されているように、1つで2つの機能があるベクターは免疫細胞の機能を弱める1以上の遺伝子の発現を阻害する1以上の種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)のいずれか1つをコードする塩基配列とを含む。
【0171】
CARは一般に、免疫細胞上に存在する場合、免疫細胞に標的細胞(通常はがん細胞)に対する特異性を持たせる一方で、細胞内にてシグナル伝達を引き起こすポリペプチドのセットである。CARは最低でも、以下に記載されている標的抗原を認識する細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは促進分子または共刺激分子に由来する。
【0172】
臨床応用で今日一般的に使用されているCARの構造は、抗原に特異性を付与する単鎖可変断片ドメイン(以後、scFv)と、scFvと細胞膜の間の距離を調節するスペーサードメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメイン(以後、ISD)とを含む。ISDは次に、1以上のT細胞の生体内増殖及び長寿命に寄与する共刺激ドメイン(CD28、CD137またはOX40)と、T細胞の活性化に寄与するTCRシグナル伝達ドメイン(CD3ゼータ、CD3ζ)とを含む。このようにして調製されているCARを発現するように改変されたT細胞は、標的抗原を発現しているがん細胞を高い特異性で認識することによって活性化され、そのようながん細胞の死を効果的に誘導し、同時に体内で指数関数的に増殖し、且つ長い間生き続けることができる。例えば、B細胞特異的抗原であるCD19を標的とするように調製されたCAR-T細胞(CART-19)をB細胞白血病患者に投与したところ、細胞は1,000~10,000倍に増殖し、体内で数年間生き続けることが報告された。その結果、CART-19は、従来の化学療法などが有効でなかった末期急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)患者に対して実施された臨床試験で90%の完全奏効を示し、治験責任医師が開始した早期の臨床試験段階でグローバルな製薬会社へのライセンス供与のまれな症例につながった。それは、2017年に米国FDAの認可を受けた最初のCAR-T細胞療法剤となったが、その後、2番目のCAR-Tも認可された。
【0173】
免疫細胞、例えば、T細胞の表面には、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)またはPD-1(プログラム細胞死タンパク質1)のような免疫チェックポイント受容体が存在する。これらの受容体は本来、T細胞の過剰な活性化及び細胞死、または自己免疫反応の誘発を調節するための安全装置である。しかしながら、がん細胞、特に固形がんは、これを用いてT細胞による免疫監視を回避すると報告されている。例えば、がん細胞がPD-L1(プログラム死リガンド1)を表面で発現すると、その受容体であるPD-1を発現するT細胞ががん細胞を認識して活性化されるが、PD-1からの活性化抑制シグナルによって程なく疲弊してしまう。これらの免疫チェックポイント受容体からのシグナルによるT細胞活性の阻害を防ぐために、標的免疫チェックポイント受容体によるシグナル伝達を阻害する、CTLA4またはPD-1、等に対するモノクローナル抗体などが開発された。これらの免疫チェックポイント受容体阻害剤を使用することによって免疫チェックポイントの遮断を介してT細胞の全体的な免疫機能を改善する治療法は、さまざまな固形がんに対しても同様に有効性を示している。
【0174】
CAR-T細胞は、最終的には活性化T細胞の細胞傷害性に依存する治療法でもあるので、CAR-T細胞の周囲での免疫抑制環境の存在は治療効果に対する主要な障害として作用する。実際、B細胞白血病に示される治療効果とは異なって、固形腫瘍を標的とするように調製されたCAR-Tは、期待できる治療効果をまれにしか示してこなかった。これは、血液がんとは異なり、固形腫瘍が免疫抑制性の腫瘍微小環境を作り出し、CAR-T細胞の活性及び増殖を抑制するためであると考えられている。さらに、B細胞血液がんの間でさえ、ほぼ90%がCART―19を用いた治療法に反応した急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者とは異なり、治療効果はリンパ腫患者(20~50%の奏効)または慢性リンパ芽球性白血病患者(CLL、20%前後の奏効)では相対的に低かったことが報告されている。
【0175】
さらに、PD-L1及び他の免疫抑制リガンドは、リンパ腫によって形成される腫瘍微小環境にて発現され、それに従ってがん性組織内のT細胞の機能が疲弊することが報告された。さらに、CLL患者から得られたT細胞は、PD-1、CD160及びCD244のような免疫チェックポイント受容体の高度な発現によってすでに実質的に疲弊していることが報告されている。
【0176】
CAR-T細胞のこの低下した活性を回復するためにCAR-T細胞と抗CTLAまたは抗PD-1阻害抗体の同時使用が抗がん効果を改善することを示す前臨床試験の結果が報告されたが、これらの組み合わせを用いた臨床試験は現在進行中である。しかしながら、抗体とCAR-T細胞のそのような同時治療による課題は、身体全体に広がった抗体が、CAR-T細胞だけでなく、体内に存在する他のすべてのT細胞にも影響を及ぼし、例えば、サイトカイン放出症候群、ならびに自己免疫症状のような重篤且つ全身性の有害反応を生じる可能性があることである。指摘されている別の課題は、細胞療法と高価な抗体療法の併用から生じる治療コストの上昇である。
【0177】
したがって、CAR-T細胞の免疫チェックポイントの抑制を可能にするために、細胞内の遺伝子発現を調節する試みが最近行われている。国際特許出願公開WO2016/069282は、TCRα鎖、TCRβ鎖、β-2ミクログロブリン及びFASから成る群から選択される内在性遺伝子発現を下方調節することができる核酸で修飾され、さらに標的細胞上の表面抗原に対する親和性を含む修飾されたT細胞受容体(TCR)をコードする核酸、またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするエレクトロポレーションで導入された核酸を含むT細胞を生成するための組成物及び方法を開示する。出版物は、CRISPR/Cas9のような遺伝子ハサミを用いて内在性遺伝子の発現をノックアウトすることができるが、特許公報にて開示されているCAR-T細胞の調製方法はかなり複雑であり、生産収率が低く、生産コストが高いという課題を有すると述べている。
【0178】
一方、国際特許公開WO2015/090230は、T細胞の機能をさらに抑制する分子を阻害する単一種類の短ヘアピンRNA(shRNA)がCARを発現する細胞に使用されてもよいことを開示している。細胞療法の費用負担が高いので、失敗した場合の患者は種々の負担に直面する。しかしながら、単一種類のshRNAは、そのような標的分子の活性を効果的に阻害することができない可能性がある。いくつかの実施形態では、ポリペプチドを含むセットが連結されてもよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドを含むセットは、それらが刺激によって二量化されるスイッチを介して連結する形態であってもよい。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む融合タンパク質であってもよい。さらなる実施形態では、CAR融合タンパク質は、N末端にリーダー配列をさらに含んでもよく、リーダー配列はCARが発現され、そして細胞膜に固定されるようになる過程において切断されてもよい。
【0179】
本明細書に記載されているTCR、例えば、mTCRは、α、β、γ及びδの鎖から選択される鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、鎖は、以下に記載される標的抗原、CD3、及びゼータ鎖、さらには共刺激分子を認識することができ、共刺激分子は、ICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27またはCD28の中から選択されてもよい。
【0180】
いくつかの態様では、キメラ単鎖抗体構築物(scFv)のレトロウイルス移入を用いて、定義された抗原特異性を持つTCR、例えば、mTCRを作り出すことができる。さらなる実施形態では、キメラscFv構築物は、FcR-ガンマまたはCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインに連結されて、T細胞エフェクター機能を誘発することができる。CD3ζでは、ドメインを共刺激分子のシグナル伝達ドメインと組み合わせることができ、その際、抗体の結合は、エフェクターT細胞の機能を始動させることができ、共刺激シグナルを送達することもできる。さらなる実施形態では、共刺激分子はCD28、4-1BB、及びOX40から選択することができる。
【0181】
いくつかの実施形態では、1つで2つの機能があるベクターは、CD3ζドメインを含むことができ、TCR、例えば、mTCRの鎖はCD3及びゼータ(ζ)鎖との非共有結合を介して複合体を形成することができる。抗原が鎖の抗原認識部位を介して認識されると、CD3及びゼータ鎖は、そのようなTCR複合体が発現されている免疫細胞の細胞質にシグナルを送り、機能的活性化を誘導する。
【0182】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインはさらに、共刺激分子に由来する1以上の機能的シグナル伝達ドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、促進分子は上記に記載されているTCRのゼータ鎖であってもよい。
【0183】
CAR及びTCR、例えばmTCRは細胞表面受容体である。いくつかの実施形態では、CARまたはTCR、例えば、mTCRの標的は、その発現ががんにおいて特異的に増加するがん抗原であることを特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、CARまたはTCR、例えば、mTCRの標的は、がんにて変異した形態で存在するがん抗原であることを特徴としてもよい。
【0184】
いくつかの実施形態では、CARまたはTCR、例えば、mTCRの標的は、その発現が治療されるべきであるがんにおいて増加するヒト腫瘍抗原であってもよい。例えば、標的抗原は、5T4(栄養膜糖タンパク質)、707-AP、9D7、AFP(α-フェトプロテイン)、AlbZIP(アンドロゲン誘導のbZIP)、HPG1(ヒト前立腺特異的遺伝子-1)、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(ADPリボシルトランスフェラーゼ-4)、B7H4(v-セットドメイン含有T-細胞活性化阻害剤1)、BAGE-1(Bメラノーマ抗原-1)、BCL-2(B-細胞 CLL/リンパ腫-2)、BING-4(WD反復ドメイン46)、CA15-3/CA27-29(ムチン1)、CA19-9(がん抗原19-9)、CA72-4(がん抗原72-4)、CA125(がん抗原125)、カルレチクリン、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19(分化抗原群19)、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原SG8)、CLCA2(塩化物チャネルアクセサリー2)、CML28(慢性骨髄性白血病腫瘍抗原28)、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、CT-9/BRD6(がん/精巣抗原9)、Cten(c-末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1(チトクロームp450ファミリー1サブファミリーbメンバー1)、DAM-10/MAGE-B1(メラノーマ関連抗原B1)、DAM-6/MAGE-B2、EGFR/Her1(表皮増殖因子受容体)、EMMPRIN(ベイシジン)、EpCam、EphA2(EPH受容体A2)、EphA3、ErbB3(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3)、EZH2(zeste2ポリコーム抑制性複合体2サブユニットのエンハンサー)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原-1)、G250/CAIX(炭酸脱水酵素9)、GAGE-1(G抗原-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7b、GAGE-8、GDEP(前立腺にて差次的に発現される遺伝子)、GnT-V(グルコン酸キナーゼ)、gp100(メラニン細胞系列特異的抗原GP100)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(らせん抗原)、HAST-2(スルホトランスフェラーゼファミリー1Aメンバー1)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2)、HERV-K-MEL、HNE(メデュラシン)、ホメオボックスNKX3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPVE7、HST-2(シルツイン-2)、hTERT、iCE(カスパーゼ1)、IGF-1R(インスリン様増殖因子-1受容体)、IL-13Ra2(インターロイキン-13受容体サブユニットα2)、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-5(インターロイキン-5)、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205(リソホスファチジルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)、KK-LC-1(北九州肺癌抗原-1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原ファミリーメンバー-1)、リビン、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGEA2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-B1、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGEB17、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2(メラノーマ抗原ファミリーL2)、ママグロビンA、MART-1/Melan-A(T-細胞-1によって認識されるメラノーマ抗原)、MART-2、マトリクスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、メソテリン、MG50/PXDN(ペルオキシダシン)、MMP11(マトリクスメタロプロテイナーゼ11)、MN/CA IX-抗原(炭酸脱水酵素9)、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質-3)、MUC1(ムチン1)、MUC2、NA88-A(VENT様ホメオボックス2偽遺伝子1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP(前立腺で発現される新しい遺伝子)、NMP22(核マトリクスタンパク質22)、NPM/ALK(ヌクレオホスミン)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1、NY-ESO-B、OA1(変形性関節症QTL1)、OFA-iLRP(がん胎児性抗原未成熟ラミニン受容体タンパク質)、OGT(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)、OS-9(小胞体レクチン)、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(CDK阻害剤2B)、p53、PAGE-4(P抗原ファミリーメンバー-4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PAI-2、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、PART-1(前立腺アンドロゲン調節転写物1)、PATE(前立腺及び精巣で発現された1)、PDEF(前立腺由来のEts因子)、Pim-1-キナーゼ(プロウイルス組み込み部位1)、Pin1(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼNIMA-相互作用1)、POTE(前立腺、卵巣、精巣、及び胎盤で発現される)、PRAME(メラノーマで優先的に発現される抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSGR(前立腺特異的G-タンパク質共役受容体)、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE-1(腎腫瘍癌腫抗原)、RHAMM/CD168、RU1(腎遍在タンパク質1)、RU2、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(T-細胞-1によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原)、SART-2、SART-3、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(SSXファミリーメンバー1)、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1(STEAP2 メタロレダクターゼ)、STEAP、サバイビン、サバイビン-213、TA-90(腫瘍関連抗原-90)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARP(TCRγ代替リーディングフレームタンパク質)、TGFb(形質転換増殖因子β)、TGFbR11(形質転換増殖因子β受容体11)、TGM-4(トランスグルタミナーゼ4)、TRAG-3(タキソール耐性関連遺伝子3)、TRG(T-細胞受容体γ遺伝子座)、TRP-1(一過性受容体ポテンシャル-1)、TRP-2/6b、TRP-2/INT2、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(U-プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子A)、VEGFR-2/FLK-1、及びWT1(ウィルムス腫瘍1)から選択することができ、または治療されるべきがんにて発見され、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl、ベータ-Catenin/m、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN、EFTUD2/m、ELF2/m、ETV6-AML1、FN1/m、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラス1/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARa、PRDX5/m、PTPRX/m、RBAF600/m、SIRT2/m、SYTSSX-1、SYT-SSX-2、TEL-AML1、TGFbRII及びTPI/mの中から選択されるヒト腫瘍抗原の変異した形態であってもよい。例えば、標的抗原はCD19またはCD22の間から選択されてもよい。
【0185】
3.3 1つで2つの機能があるベクターの成分
本明細書で提供されているように、1つで2つの機能があるベクターは免疫細胞の機能を弱める1以上の遺伝子の発現を阻害する1以上の種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)をコードする塩基配列とを含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、1つで2つの機能があるベクターは、宿主細胞ゲノムへの配列の挿入を促進する因子をコードする配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、配列はベクター遺伝子の一方または双方の末端に位置する。いくつかの実施形態では、配列はLTR(長い末端配列)である。
【0187】
いくつかの実施形態では、1つで2つの機能があるベクターは、上記に記載されている挿入が行われている細胞の精製に使用されるタンパク質をコードするドメインを含むことができる。いくつかの実施形態では、ドメインはΔLNGFRドメインであり、その際、ΔLNGFRは上記に記載されている挿入が行われている細胞の精製に使用される細胞質ドメインのないLNGFR(低親和性神経成長因子受容体)である。
【0188】
いくつかの実施形態では、1つで2つの機能があるベクターは、持続的発現を特徴とする
ΔLNGFR及びCARの双方の発現を誘導するプロモーター、例えば、
図22Aに示されるような
ΔLNGFR及びCD19 CARの双方の発現を誘導するEF1αプロモーターを含むことができる。さらなる実施形態では、
ΔLNGFR及びCD19 CARは先ず、それらが単一のmRNA上に存在する形態で転写される。同じmRNA上に2以上のシストロンが存在するそのような実施形態では、IRES(内部リボソーム侵入部位)がその間に挿入されて、双方のシストロンの発現を引き起こしてもよい。しかしながら、IRESは過剰に長く、下流のシストロンの発現効率が低下することが報告されている。いくつかの実施形態では、IRES以外の成分、例えば、P2A(2aペプチド)を用いてそのような欠点を克服することができ、その際、翻訳中に、リボソームはP2AのC末端でペプチド結合を形成せずに通過し、下流の遺伝子が後で発現されるようにする。
【0189】
いくつかの例示的な1つで2つの機能があるベクターは、
図1、6、14及び22Aに示す1つで2つの機能があるベクターであり、ベクターは配列番号220または221の塩基配列のいずれか1つを含む。配列番号220及び221の塩基配列を含む例示的なベクターは、
図1A及び1Bに示される構造を有することができる。いくつかの例示的なプラスミドを表1に列挙する。
表1.例示的なプラスミド。
【表1】
【0190】
いくつかの実施形態では、上記に記載されているベクターに含まれる塩基配列、及び各shRNAの核酸配列は、本明細書に記載されている配列に加えて、これらの配列と少なくとも50%、具体的には少なくとも70%、さらに具体的には少なくとも80%、一層さらに具体的には少なくとも90%、そして最も具体的には少なくとも95%の配列相同性を示す核酸配列を含んでもよい。これは、siRNA(低分子干渉RNA)や細胞内で処理されて特にsiRNAとなるshRNAの場合、ある程度の変異、特に5’末端の変異は認容され、標的遺伝子の正常なノックダウンを引き起こすこと、且つ遺伝子サイレンシングで役割を担うmiRNAと同様の構造を有するように行われるsiRNAとshRNAの変異が標的遺伝子のノックダウンをさらに効果的に誘導することが報告されているためである。さらに、ベクターの使用において、当業者に自明であるのは、ベクター内の変動、すなわち、特定の配列をベクターに導入するためのクローニングプロセスにおいて生じてもよい塩基配列の付加、修飾または欠失であり、または意図された遺伝子が発現される程度のベクターの使いやすさを改善するための構成要素の変更または導入である。
【0191】
4.1以上の免疫チェックポイントを標的とするCAR-T細胞の生産と評価
本明細書で提供されているように、1つで2つの機能があるベクターは免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を阻害する1以上の種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)及びT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)のいずれか1つをコードする塩基配列とを含む。ベクターは、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を阻害した免疫細胞の作製に使用することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びレトロウイルスベクターから成る群から選択される。
【0192】
一態様では、本明細書に記載されている免疫細胞は、上記ベクターを含み、CARまたはTCR、例えばmTCRを発現すること、且つ1以上の種類のshRNAの標的遺伝子の発現が低下することを特徴とする。いくつかの実施形態では、1以上の種類のshRNAの標的遺伝子の発現は、対照群のそれの約90%以下に低減され、例えば、標的遺伝子の発現は、対照群のそれの約80%以下、70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、及び約10%以下に低減される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ヒト由来のT細胞とNK細胞との間から選択される。
【0193】
別の態様では、本明細書で提供されるのは方法である。いくつかの実施形態では、提供されるのは、(1)標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体をコードする遺伝子と;(2)免疫細胞の機能を弱める遺伝子の免疫細胞における発現を低下させるまたは低下させることができる遺伝子破壊剤とを同時にまたは任意の順序で連続して免疫細胞に導入し、それによって、遺伝子操作された抗原受容体が発現され、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現が低下する免疫細胞を作り出すことを含む、免疫細胞を作り出す方法である。
【0194】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体はCARである。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、CARの細胞外抗原認識ドメインは、標的抗原に特異的に結合する。
【0196】
いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激分子をさらに含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、共刺激分子はICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27、及びCD28から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、共刺激分子はCD137(4-1BB)である。いくつかの実施形態では、共刺激分子はCD28である。
【0198】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍の微小環境の細胞表面上で発現される。いくつかの実施形態では、標的抗原は、その発現ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境にて増加するがん抗原、またはがん抗原の変異した形態である。
【0199】
いくつかの実施形態では、その発現ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境にて増加するがん抗原は、5T4(栄養膜糖タンパク質)、707-AP、9D7、AFP(α-フェトプロテイン)、AlbZIP(アンドロゲン誘導のbZIP)、HPG1(ヒト前立腺特異的遺伝子-1)、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(ADPリボシルトランスフェラーゼ-4)、B7H4(v-セットドメイン含有T-細胞活性化阻害剤1)、BAGE-1(Bメラノーマ抗原-1)、BCL-2(B-細胞 CLL/リンパ腫-2)、BING-4(WD反復ドメイン46)、CA15-3/CA27-29(ムチン1)、CA19-9(がん抗原19-9)、CA72-4(がん抗原72-4)、CA125(がん抗原125)、カルレチクリン、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19(分化抗原群19)、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原SG8)、CLCA2(塩化物チャネルアクセサリー2)、CML28(慢性骨髄性白血病腫瘍抗原28)、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、CT-9/BRD6(がん/精巣抗原9)、Cten(c-末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1(チトクロームp450ファミリー1サブファミリーbメンバー1)、DAM-10/MAGE-B1(メラノーマ関連抗原B1)、DAM-6/MAGE-B2、EGFR/Her1(表皮増殖因子受容体)、EMMPRIN(ベイシジン)、EpCam、EphA2(EPH受容体A2)、EphA3、ErbB3(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3)、EZH2(zeste2ポリコーム抑制性複合体2サブユニットのエンハンサー)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原-1)、G250/CAIX(炭酸脱水酵素9)、GAGE-1(G抗原-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7b、GAGE-8、GDEP(前立腺にて差次的に発現される遺伝子)、GnT-V(グルコン酸キナーゼ)、gp100(メラニン細胞系列特異的抗原GP100)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(らせん抗原)、HAST-2(スルホトランスフェラーゼファミリー1Aメンバー1)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2)、HERV-K-MEL、HNE(メデュラシン)、ホメオボックスNKX3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPVE7、HST-2(シルツイン-2)、hTERT、iCE(カスパーゼ1)、IGF-1R(インスリン様増殖因子-1受容体)、IL-13Ra2(インターロイキン-13受容体サブユニットα2)、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-5(インターロイキン-5)、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205(リソホスファチジルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)、KK-LC-1(北九州肺癌抗原-1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原ファミリーメンバー-1)、リビン、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGEA2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-B1、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGEB17、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2(メラノーマ抗原ファミリーL2)、ママグロビンA、MART-1/Melan-A(T-細胞-1によって認識されるメラノーマ抗原)、MART-2、マトリクスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、メソテリン、MG50/PXDN(ペルオキシダシン)、MMP11(マトリクスメタロプロテイナーゼ11)、MN/CA IX-抗原(炭酸脱水酵素9)、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質-3)、MUC1(ムチン1)、MUC2、NA88-A(VENT様ホメオボックス2偽遺伝子1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP(前立腺で発現される新しい遺伝子)、NMP22(核マトリクスタンパク質22)、NPM/ALK(ヌクレオホスミン)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1、NY-ESO-B、OA1(変形性関節症QTL1)、OFA-iLRP(がん胎児性抗原未成熟ラミニン受容体タンパク質)、OGT(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)、OS-9(小胞体レクチン)、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(CDK阻害剤2B)、p53、PAGE-4(P抗原ファミリーメンバー-4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PAI-2、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、PART-1(前立腺アンドロゲン調節転写物1)、PATE(前立腺及び精巣で発現された1)、PDEF(前立腺由来のEts因子)、Pim-1-キナーゼ(プロウイルス組み込み部位1)、Pin1(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼNIMA-相互作用1)、POTE(前立腺、卵巣、精巣、及び胎盤で発現される)、PRAME(メラノーマで優先的に発現される抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSGR(前立腺特異的G-タンパク質共役受容体)、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE-1(腎腫瘍癌腫抗原)、RHAMM/CD168、RU1(腎遍在タンパク質1)、RU2、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(T-細胞-1によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原)、SART-2、SART-3、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(SSXファミリーメンバー1)、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1(STEAP2 メタロレダクターゼ)、STEAP、サバイビン、サバイビン-213、TA-90(腫瘍関連抗原-90)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARP(TCRγ代替リーディングフレームタンパク質)、TGFb(形質転換増殖因子β)、TGFbR11(形質転換増殖因子β受容体11)、TGM-4(トランスグルタミナーゼ4)、TRAG-3(タキソール耐性関連遺伝子3)、TRG(T-細胞受容体γ遺伝子座)、TRP-1(一過性受容体ポテンシャル-1)、TRP-2/6b、TRP-2/INT2、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(U-プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子A)、VEGFR-2/FLK-1、及びWT1(ウィルムス腫瘍1)から成る群から選択される。
【0200】
いくつかの実施形態では、標的抗原はCD19またはCD22である。いくつかの実施形態では、標的抗原はCD19である。
【0201】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原の変異した形態は、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl、ベータ-カテニン/m、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN、EFTUD2/m、ELF2/m、ETV6-AML1、FN1/m、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラス1/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARa、PRDX5/m、PTPRX/m、RBAF600/m、SIRT2/m、SYTSSX-1、SYT-SSX-2、TEL-AML1、TGFbRII、及びTPI/mから成る群から選択される。
【0202】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現は、以下のうちの1つ以上を引き起こす:(i)免疫細胞の増殖を阻害する;(ii)免疫細胞の細胞死を誘導する;(iii)免疫細胞が標的抗原を認識する及び/または活性化されるために必要な分子の機能を阻害する;(iv)標的抗原に対する免疫応答を引き起こす代わりに、異なる機能を担う異なる種類への免疫細胞の分化を誘導する;(v)免疫細胞の免疫応答を促進する分子との免疫細胞の反応を低下させる;または(vi)免疫細胞の免疫応答を抑制する分子との免疫細胞の反応を高める。
【0203】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK、2B4、FAS、CD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c、CD148、LRR1、TGFBR1、IL10RA、KLGR1、DNMT3A、及びA2aRから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞の機能を弱める遺伝子は、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子との免疫細胞の反応を高める。いくつかの実施形態では、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子との免疫細胞の反応を高める遺伝子は免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする。
【0204】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントの受容体またはリガンドは、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG 3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される。
【0205】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、遺伝子破壊剤の非存在下での免疫細胞と比べて、免疫細胞の機能を弱める免疫細胞における遺伝子の発現を少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または95%低下させる。いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、免疫細胞の免疫応答を抑制する分子との免疫細胞の反応を高める遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される遺伝子の発現を低下させる。
【0206】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は、RNA干渉(RNAi)によって免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、1を超える遺伝子破壊剤が、RNAiによって免疫細胞における免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、遺伝子破壊剤は免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子の異なる部分を標的とする、免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とする、またはそれらの任意の組み合わせで遺伝子を標的とする。いくつかの実施形態では、RNAiには短ヘアピンRNA(shRNA)が介在する。いくつかの実施形態では、RNAiには1を超えるshRNAが介在する。
【0207】
いくつかの実施形態では、RNAiには2つのshRNAが介在する。いくつかの実施形態では、2つのshRNAはPD-1の異なる部分を標的とする。いくつかの実施形態では、2つのshRNAはそれぞれPD-1及びTIM-3を標的とする。いくつかの実施形態では、2つのshRNAはそれぞれPD-1及びCTLA-4を標的とする。いくつかの実施形態では、2つのshRNAはそれぞれPD-1及びLAG-3を標的とする。いくつかの実施形態では、2つのshRNAはそれぞれPD-1及びTIGITを標的とする。
【0208】
いくつかの実施形態では、shRNAをコードする塩基配列は、配列番号1~219及び238~267から成る群から選択される配列を含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、異なるshRNAの発現は異なるプロモーターによってそれぞれ調節される。いくつかの実施形態では、2つの異なるshRNAの発現は2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節される。いくつかの実施形態では、2つの異なるプロモーターはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは異なる種に由来するU6プロモーターである。いくつかの実施形態では、2つのプロモーターは互いに異なる方向に向けられる。
【0210】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体及び遺伝子破壊剤はそれぞれベクターから発現される。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体及び遺伝子破壊剤は同じベクターから発現される。いくつかの実施形態では、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びレトロウイルスベクターから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0211】
「免疫細胞」は、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、ガンマデルタT細胞及びB細胞、ナチュラルキラー細胞のようなリンパ球、肥満細胞、好酸球、好塩基球から選択されることを特徴としてもよく;食細胞にはマクロファージ、好中球、及び樹状細胞が含まれる。T細胞にはCD4+T細胞及びCD8+T細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、B細胞リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫、縦隔グレーゾーンリンパ腫、または結節性硬化症HLである。いくつかの実施形態では、T細胞リンパ腫は、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、他に特定されていない末梢T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、または血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)である。好ましい実施形態では、免疫細胞は、ヒト由来のT細胞またはTリンパ球及びナチュラルキラー(NK)細胞から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はCD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0212】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はもともと患者に由来する細胞から作り出される。いくつかの実施形態では、対象はヒトであることができる。いくつかの実施形態では、ヒトは健常なドナーであることができる。他の実施形態では、対象は腫瘍またはがんを有することを特徴としてもよく、その際、細胞内で発現されたCARまたはTCR、例えば、mTCRによって標的とされるがん抗原のレベルの上昇または変動が検出される。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号、及び米国特許出願公開第20060121005号に記載されている方法を一般に用いて作り出されてもよく、増殖させてもよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞が作り出される。さらなる実施形態では、CAR-T細胞の作製は末梢血モノクローナル細胞を提供する工程を含む。さらなる実施形態では、末梢血モノクローナル細胞は全血試料から分離することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているCAR-T細胞の作製は、抗体を用いて末梢血モノクローナル細胞を刺激する工程を含む。例として、一次刺激シグナルを提供する作用剤は抗CD3抗体またはその抗原結合断片であり、共刺激シグナルを提供する作用剤は抗CD28抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているCAR-T細胞の作製はCARの形質導入の工程を含み、その際、CARは本明細書に記載されている任意の標的及びCARの他の既知の標的を標的とすることができ、例えば、CARはCD19を標的とするCD19 CARであることができる。いくつかの実施形態では、作り出されたCAR-T細胞は単離される。
【0214】
T細胞培養に適切な条件には、血清(例えば、ウシ胎児またはヒトの血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、及びTNF-α、または当業者に既知の細胞増殖のための任意の他の添加物を含む、増殖及び生存に必要な因子を含有してもよい適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX-vivo15(Lonza))が含まれる。細胞の増殖のための他の添加物には、界面活性剤、プラスマネート、ならびに例えば、N-アセチルーシステイン及び2-メルカプトエタノールのような還元剤が挙げられるが、これらに限定されない。培地には、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びビタミンが添加され、無血清である、または適切な量の血清(もしくは血漿)または定義されたセットのホルモン、及び/またはT細胞の増殖及び増加に十分な量のサイトカイン(複数可)を補充しているのいずれかのRPMI1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo15、及びX-Vivo20、Optimizerを挙げることができる。抗生物質、例えば、ペニシリン及びストレプトマイシンは、実験培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、成長を支援するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)及び大気(例えば、空気+5%CO2)で維持される。T細胞の培養時間が60日間以上であることができるように、いくつかの刺激サイクルも所望されてもよい。
【0215】
種々の刺激時間に曝露されているT細胞はさまざまな特徴を示してもよい。例えば、典型的な血液製剤またはアフェレーシス末梢血単核細胞製剤は、細胞傷害性T細胞またはサプレッサーT細胞の集団(TC、CD8)より大きいヘルパーT細胞の集団(TH、CD4+)を有する。CD3及びCD28の受容体を刺激することによるT細胞の生体外増殖は、約8~9日目より前では主にTH細胞から成るT細胞の集団を生じる一方で、約8~9日目以降は、T細胞の集団は、次第にさらに多くのTC細胞の集団を含む。したがって、治療の目的に応じて、TH細胞が優勢に構成するT細胞集団を対象に注入することが有利であってもよい。同様に、TC細胞の抗原特異的サブセットが単離されているならば、このサブセットをさらに大きな程度に増殖させることが有益であってもよい。さらに、CD4及びCD8のマーカーに加えて、他の表現型マーカーは細胞増殖プロセスの過程の間に著しく変化するが、大部分は再現可能に変化する。したがって、そのような再現性によって、特定の目的のために活性化されたT細胞製剤を誂える能力が可能になる。
【0216】
種々のアッセイを用いて、CAR-T細胞を評価する、例えば、抗原刺激に続いて増殖する能力、再刺激の非存在下でT細胞の増殖を持続させる能力、及び適切な試験管内及び動物のモデルにおける抗がん活性を評価することができる。アッセイは以下にさらに詳細に記載されている。
【0217】
いくつかの実施形態では、初代T細胞におけるCAR発現のウエスタンブロット解析を用いて、単量体及び二量体の存在を検出することができる。例えば、Milone,et al.,Molecular Therapy,17(8):1453-1464(2009)を参照のこと。
【0218】
いくつかの実施形態では、抗原刺激に続くCAR+T細胞の試験管内増殖はフローサイトメトリーによって測定することができる。例えば、CD4+T細胞とCD8+T細胞の混合物はαCD3/αCD28によって刺激され、その後、分析されるプロモーターの制御下でGFPを発現するレンチウイルスベクターによる形質導入が続く。例示的なプロモーターには、CMV IE遺伝子、EF-1a、ユビキチンC、またはホスホグリセロキナーゼ(PGK)のプロモーターが挙げられる。GFP蛍光は、CD4+及び/またはCD8+T細胞のサブセットにて培養の6日目にフローサイトメトリーによって評価する。例えば、Milone,et al.,Molecular Therapy,17(8):1453-1464(2009)を参照のこと。あるいは、CD4+及びCD8+T細胞の混合物は、αCD3/αCD28をコーティングした磁気ビーズによって0日目に刺激され、2Aリボゾームスキッピング配列を用いてeGFPと共にCARを発現している2シストロン性のレンチウイルスベクターを用いて1日目にCARで形質導入する。培養物は、例えば、抗CD3抗体及び抗CD28抗体の存在下でhCD32及び4-IBBLを発現しているK562細胞で再刺激され(K562-BBL-3/28)、その後、洗浄が続く外来性IL-2が100IU/mlで1日おきに培養に添加される。GFP+T細胞は、ビーズに基づくカウントを用いてフローサイトメトリーによって数えられる。例えば、Milone,et al.,Molecular Therapy,17(8):1453-1464(2009)を参照のこと。再刺激の非存在下でのCAR+T細胞の持続した増殖も測定することができる。
【0219】
細胞の増殖及びサイトカイン産生の評価は、例えば、Milone,et al.,Molecular Therapy,17(8):1453-1464(2009)にて以前記載されている。手短に言えば、CARが介在する増殖の評価は、マイクロタイタープレートにて、洗浄したT細胞を標的細胞、例えば、K562-Meso、Ovcar3、Ovcar8、SW1990、Panc02.03細胞またはCD32及びCD137(KT32-BBL)と1:1のT細胞:標的細胞の最終比で混合することによって実施される。これらのシグナルが長期の生体外でのCD8+T細胞増殖を支えるので、抗CD3(クローンOKT3)及び抗CD28(クローン9.3)モノクローナル抗体をKT32-BBL細胞との培養物に添加して、T細胞増殖を刺激するための陽性対照として役立てる。製造元によって記載されているように、CountBright(商標)蛍光ビーズ(Invitrogen、Carlsbad、CA)及びフローサイトメトリーを用いて培養物にてT細胞を数える。CAR+T細胞は、eGFP-2Aを連結したCARを発現しているレンチウイルスベクターで操作されているT細胞を用いて、GFP発現によって同定される。T細胞でのCD4+及びCD8+の発現は特異的なモノクローナル抗体(BD Biosciences)によっても同時に検出される。サイトカイン測定は製造者の指示書に従って、ヒトTH1/TH2サイトカイン細胞測定ビーズアレイキット(BD Biosciences,San Diego,CA)を用いて、再刺激の24時間後に回収した上清で実施する。蛍光はFACScaliburフローサイトメーターを用いて評価し、データは製造者の指示書に従って分析する。
【0220】
細胞傷害性は、例えば、実施例にて本明細書に記載されている方法によってまたは標準的な51Cr放出アッセイによって評価することができる(Milone,et al.,Molecular Therapy,17(8):1453-1464(2009))。手短に言えば、標的細胞(例えば、BHKまたはCHO細胞)に51Cr(NaCrO4,New England Nuclear,Boston,MA)を37℃で2時間頻繁に攪拌しながら負荷し、完全RPMIで2回洗浄し、マイクロタイタープレートに入れる。エフェクターT細胞はエフェクター細胞:標的細胞の種々の比率(E:T)で完全RPMIにてウェル内の標的細胞と混合する。培地のみを含有する追加のウェル(自然放出、SR)または1%のtriton-X 100界面活性剤(総放出、TR)の溶液も調製する。37℃で4時間インキュベートした後、各ウェルの上清を回収する。次いで、放出された51Crはガンマ粒子カウンター(Packard Instrument Co.,Waltham,MA)を用いて測定する。各条件は少なくとも3つ組で実施し、溶解の比率は式:%溶解=(ER-SR)/(TR-SR)を用いて算出し、ここでERは各実験条件で放出された平均51Crを表す。フローベースの細胞傷害性アッセイのような代替の細胞傷害性アッセイも使用されてもよい。
【0221】
本明細書の実施例のセクションに記載されているもの、と同様に当該技術分野で知られているものを含む他のアッセイも、本明細書で作製されるCAR-T細胞を評価するために使用することができる。
【0222】
いくつかの実施形態では、本明細書で生成される免疫細胞は、2種類のshRNA及びCARまたはTCR、例えばmTCRによって標的とされる抗原が発現される疾患に対する免疫応答に関与することができる。さらなる実施形態では、免疫細胞を用いて、ヒト患者の免疫療法のための医薬組成物を提供することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、重篤な有害反応を引き起こし、さらに患者に高コストを負担させる可能性がある免疫チェックポイント阻害剤を必要とすることなく、標的疾患に対して治療効果を示すことができる。
【0223】
いくつかの実施形態では、免疫細胞を免疫細胞治療剤として使用することができ;そのような免疫細胞は普通、がんの治療に使用されるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、これらの免疫細胞にがんを認識させるために、それらはがん抗原を標的とする細胞表面受容体を発現するように改変される。
【0224】
別の態様では、本明細書で提供されるのは上記に記載されている操作された免疫細胞を含む組成物である。
【0225】
5.1以上の免疫チェックポイントを標的とするCAR-T細胞を用いた治療
本明細書で提供されているように、1つで2つの機能があるベクターは免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現を阻害する1以上の種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、キメラ抗原受容体(CAR)及びT細胞受容体(TCR)、例えば、モノクローナルT細胞受容体(mTCR)のいずれか1つをコードする塩基配列とを含む。一実施形態に従ってベクターを用いて、免疫細胞を作製することができ、その際、免疫細胞は免疫チェックポイント受容体の低下した発現を有し、標的分子に特異的なCARまたはTCR、例えばmTCRを発現する。前記免疫細胞を用いて免疫療法のための医薬組成物を提供することができる。
【0226】
養子免疫療法に好適な対象に本明細書に記載されているような免疫細胞を導入することによって、種々の疾患が改善されてもよい。いくつかの実施形態では、提供されるような作製されたCAR-T細胞は同種養子細胞療法のためのものである。本明細書でさらに提供されるのは、養子細胞療法に好適な対象に組成物を導入することを含む、本明細書に記載されている組成物の治療的使用であり、その際、対象は自己免疫疾患;血液悪性腫瘍;固形腫瘍;または、HIV、RSV、EBV、CMV、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスに関連する感染症を有する。
【0227】
血液悪性腫瘍の例には、急性及び慢性の白血病(急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML))、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病、多発性骨髄腫、及び骨髄異形成症候群が挙げられるが、これらに限定されない。固形がんの例には、脳、前立腺、乳腺、肺、結腸、子宮、皮膚、肝臓、骨、膵臓、卵巣、精巣、膀胱、腎臓、頭部、頚部、胃、子宮頚部、直腸、喉頭及び食道のがんが挙げられるが、これらに限定されない。種々の自己免疫障害の例には、円形脱毛症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、皮膚筋炎、糖尿病(1型)、若年性特発性関節炎のいくつかの形態、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、いくつかの形態の心筋炎、多発性硬化症、天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群、全身性ループス、エリテマトーデス、甲状腺炎のいくつかの形態、ブドウ膜炎のいくつかの形態、白斑、多発血管炎を伴う肉芽腫症(ウェゲナー病)が挙げられるが、これらに限定されない。ウイルス性感染症の例には、HIV-(ヒト免疫不全ウイルス)、HSV-(単純ヘルペスウイルス)、KSHV-(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)、RSV-(呼吸器合胞体ウイルス)、EBV-(エプスタイン-バーウイルス)、CMV-(サイトメガロウイルス)、VZV(水痘帯状疱疹ウイルス)、アデノウイルス-、レンチウイルス-、BKポリオーマウイルスに関連する疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0228】
急性白血病は、未熟な血液細胞の急速な増殖を特徴とする。この過密状態により、骨髄は健康な血液細胞を産生できなくなる。急性型の白血病は小児及び若年成人に発生し得る。実際、それは他のどの種類の悪性疾患よりも米国の小児たちにとって一層一般的な死因である。急性白血病では、悪性細胞の急速な進行と蓄積が原因で即時の治療が必要であり、次いで悪性細胞は血流に溢れ出して身体の他の臓器に広がる。中枢神経系(CNS)の関与はまれであるが、この疾患は時々脳神経麻痺を引き起こし得る。慢性白血病は、比較的成熟しているが依然として異常な血液細胞の過剰な蓄積によって区別される。通常、進行に数ヵ月から数年かかり、細胞は正常な細胞よりもはるかに速い速度で産生され、その結果、血液中に多くの異常な白血球が生じる。慢性白血病は主に年長者で発生するが、理論的にはどの年齢層でも発生し得る。急性白血病は直ちに治療しなければならないのに対し、慢性形態は治療の最大の効果を確実にするために治療前にしばらくモニターされることがある。さらに、疾患は、通常はリンパ球を形成するように進む骨髄細胞のある種でがん性の変化が起こったことを示すリンパ球性またはリンパ芽球性、及び通常は赤血球、一部の種類の白血球、血小板を形成するように進む骨髄細胞のある種でがん性の変化が起こったことを示す骨髄で生じたまたは骨髄性(リンパ系細胞と骨髄系細胞を参照)に分類される。
【0229】
急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、またはALLとしても知られる)は小児における最も一般的なタイプの白血病である。この疾患は成人、特に65歳以上にも発症する。慢性リンパ性白血病(CLL)は55歳を超える成人に最もよく発症する。それは若年成人に時々発生するが、小児にはほとんど発症しない。急性骨髄性白血病(急性骨髄性白血病、またはAMLとしても知られる)は小児よりも成人に多く発生する。この種の白血病は以前は「急性非リンパ性白血病」と呼ばれていた。慢性骨髄性白血病(CML)は主として成人に発生する。ごく少数の小児もこの病気を発症する。
【0230】
リンパ腫は、リンパ球(脊椎動物の免疫システムにおける白血球の一種)で発生するがんの一種である。リンパ腫には多くの種類がある。米国国立衛生研究所によれば、リンパ腫は米国におけるがんの症例すべての約5%を占め、特にホジキンリンパ腫は米国におけるがんの症例すべての1%未満を占める。リンパ系は生体の免疫系の一部であるので、HIV感染または特定の薬剤や薬物などによって免疫系が弱っている患者もリンパ腫の高い発生率を有する。
【0231】
19世紀及び20世紀には、1832年にトーマスホジキンによって発見されたので、この病気はホジキン病と呼ばれていた。口語的に、リンパ腫はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫(他のすべての種類のリンパ腫)に大別される。リンパ腫の種類の科学的分類はさらに詳細である。古い分類は組織球性リンパ腫を指していたが、これらはB、T、またはNKの細胞系列のものとしてさらに新しい分類で認識されている。
【0232】
CARまたはTCR、例えば、mTCRの標的分子が発現されているがんを有する患者に医薬組成物を投与すると、医薬組成物は、がん細胞に関する免疫細胞の機能を弱める遺伝子を活性化しないで、且つそれによって引き起こされる活性化阻害シグナル伝達に起因する疲弊のような問題を起こさずに、がんを認識し、免疫活性を有することができる。
【0233】
いくつかの実施形態では、免疫細胞を含む上記の医薬組成物は、免疫チェックポイント受容体の発現をさらに効果的に抑制することができる一方で同時に、キメラ抗原受容体が機能することができる抗がん免疫細胞療法の有効性を最大化することができる。さらなる実施形態では、上記に記載されているように免疫チェックポイント受容体の発現が抑制されている細胞が医薬組成物に使用されるので、免疫チェックポイント受容体の別の阻害剤の使用に起因してもよいサイトカイン放出症候群または自己免疫症状のような重篤且つ全身性の有害反応を、ならびに細胞療法との高価な抗体療法の併用から生じる治療コストの増加による負担を排除することが可能である。
【0234】
細胞に加えて、免疫応答をさらに改善し得る他の薬学的に許容される塩、担体、賦形剤、ビヒクル及び他の添加剤等が医薬組成物に添加されてもよいことは自明であるので、その詳細な説明は省略されるべきである。
【0235】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されているような2つの免疫チェックポイントを標的とする二重CAR-T細胞を含む。例えば、二重免疫チェックポイントは、PD1(プログラム細胞死タンパク質1)、PD-L1(プログラム死リガンド1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、TIM-3(T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3)、CEACAM(3つのサブタイプCEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5を含む癌胎児性抗原関連細胞接着分子)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)、VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー)、BTLA(B及びTリンパ球減衰因子)、TIGIT(Ig及びITIMのドメインを持つT細胞免疫受容体)、LAIR1(白血球関連免疫グロブリン様受容体1)、CD160(分化抗原群160)、CD96(分化抗原群96)、MerTK(癌原遺伝子チロシンタンパク質キナーゼMER)、及び2B4(NK細胞活性化誘導リガンド)から成る群から選択することができ、例えば、PD1とTIM3の間で選択されてもよい。
【0236】
いくつかの実施形態では、標的とされる免疫チェックの種類は、医薬組成物の抗腫瘍効果に影響を与える。例えば、PD-1及びTIM3を標的とする医薬組成物は、PD-1及びTIGITを標的とする医薬組成物とは異なるレベルの抗腫瘍効果を示すことができる。さらなる実施形態では、抗腫瘍効果における前記差異は、同じ免疫チェックポイントを標的とする他の薬剤の抗腫瘍効果に関する既知の知識から予測不可能であり、例えば、他の薬剤は免疫チェックポイントを標的とする抗体を含むことができる。いくつかの実施形態では、特定の2つの免疫チェックポイントを標的とすることは、驚くほど高い抗腫瘍効果を生み出すことができる。例示的な実施形態(実施例10)では、PD-1とTIGITを標的とするCAR-T細胞は、PD-1とCTLA-4、PD-1とLAG-3及びPD-1とTIM-3の組み合わせを標的とする他の二重KD CAR-T細胞と比較して驚くほど優れた抗腫瘍効果を示す。
【0237】
一態様では、本明細書に記載されている組成物は、単位剤形で提供することができ、各用量単位、例えば注射は、単独でまたは他の活性剤との適切な組み合わせで所定量の組成物を含有する。「単位剤形」という用語は本明細書で使用されるとき、ヒト及び動物の対象についての単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の効果を生じるのに十分な量で計算された所定量の本明細書に記載されている組成物を単独で、または他の活性剤との併用で、適宜薬学上に許容できる希釈剤、担体または媒体と関連して含有する。本明細書に記載されている細胞または組成物の新規の単位剤形の明細は、特定の対象における医薬組成物に関連する特定の薬力学に左右される。
【0238】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている細胞または組成物に好ましい医薬剤形は、本開示の内容及び製剤技術の一般知識に基づいて、ならびに意図される投与経路、送達方法及び標的用量に従って決定されてもよい。投与方法にかかわらず、患者の体重、表面積、または臓器の大きさに従って有効用量が算出されてもよい。本明細書に記載されたそれぞれの剤形を使用する治療に適切な投与量を決定するための計算、ならびに追加の精製は、当該技術分野で毎日実施され、当該技術分野で毎日実施される作業の範囲内に含まれる。適切な投与用量は、適切な用量反応データの使用を介して同定されてもよい。
【0239】
本明細書に記載されている医薬組成物は、単独で、またはがんの治療に有用な他の既知の作用剤と組み合わせて使用することができる。単独でまたは他の作用剤と組み合わせて送達されるかどうかにかかわらず、本明細書に記載されている医薬組成物は、種々の経路を介して哺乳動物、特にヒトの身体の種々の部位に送達されて、特定の効果を達成することができる。当業者は、1を超える経路を投与に使用することができるが、特定の経路が別の経路よりもさらに迅速且つあらに効果的な反応を提供できることを認識するであろう。例えば、皮内送達は、黒色腫の治療のために吸入よりも有利に使用されてもよい。局所または全身性の送達は、体腔への製剤の適用もしくは点滴、エアロゾルの吸入もしくは吹送を含む投与によって、または筋肉内、静脈内、門脈内、肝内、腹腔内、皮下、もしくは皮内の投与を含む非経口導入によって達成することができる。対象への投与の例示的な経路には、静脈内(IV)注射、及び局所(腫瘍内、腹腔内)投与が挙げられる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は固形腫瘍への注入を介して投与することができる。
【0240】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるようなゲノム操作された免疫細胞に加えて、状態、疾患、または適応症に関連する抗原を標的とする抗体または抗体断片を含む追加の治療剤が、これらのエフェクター細胞と共に併用療法で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト化抗体、ヒト抗体モノクローナル抗体またはキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体または抗体断片はウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態では、抗体または抗体断片は腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、投与されるゲノム操作された免疫細胞に対する追加の治療剤としての併用治療に好適な抗体は、抗CD20(リツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ)、抗HER2(トラスツズマブ、パーツズマブ)、抗CD52(アレムツズマブ)、抗EGFR(セルツキシマブ)、抗GD2(ジヌツキシマブ)、抗PDL1(アベルマブ)、抗CD38(ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202)、抗CD123(7G3、CSL362)、抗SLAMF7(エロツズマブ);及びそれらのヒト化されたまたはFc修飾された変異体または断片、またはそれらの機能的な同等物及びバイオ後続品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0241】
望ましくは、有効量または十分な数の単離された形質導入されたT細胞が組成物中に存在し、長期の特異的な抗腫瘍応答が確立されてそうでなければそのような治療の非存在下で生じるよりも腫瘍のサイズを小さくする、腫瘍の増殖または再増殖を排除するように、対象に導入される。望ましくは、対象に再導入された形質導入されたT細胞の量は、形質導入されたT細胞が存在しないこと以外では同じ条件と比較した場合の腫瘍サイズで10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または100%の減少を引き起こす。
【0242】
したがって、投与される形質導入されたT細胞の量は、投与経路を考慮に入れるべきであり、十分な数の形質導入されたT細胞が導入されて所望の治療反応が達成されるような量でなければならない。さらに、本明細書に記載されている組成物に含まれる各活性剤の量(例えば、接触される各細胞当たりの量または特定の体重当たりの量)はさまざまな応用において変化することができる。一般に、形質導入されたT細胞の濃度は望ましくは、少なくとも約1×106個~約1×109個の形質導入されたT細胞、一層さらに望ましくは約1×107個~約5×108個の形質導入されたT細胞を治療される対象にて提供するのに十分であるべきであるが、好適な量は、例えば5×108個の細胞を上回って、または1×107個の細胞を下回って利用することができる。投薬スケジュールは、確立された細胞ベースの治療法に基づくことができ(例えば、Topalian及びRosenberg、1987;米国特許第4,690,915号を参照のこと)、または代替の連続注入戦略を採用することができる。
【0243】
これらの値は、本明細書に記載されている方法を最適化する際に開業医によって利用される形質導入されたT細胞の範囲の一般的なガイダンスを提供する。そのような範囲の本明細書での列挙は、特定の応用で正当化され得るように、さらに多いまたはさらに少ない量の成分の使用を決して排除するものではない。例えば、実際の用量及びスケジュールは、組成物が他の医薬組成物と併用して投与されるかどうかに応じて、または薬物動態、薬物の体内動態、及び代謝における個人間の差異に応じて変化することができる。当業者は、特定の状況の緊急性に従って必要な調整を容易に行うことができる。
【0244】
本明細書に記載されている組成物のいずれかがキットに含まれてもよい。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、細胞を増殖させるのに好適な試薬、例えば、培地、aAPC、増殖因子、抗体(例えば、CAR-T細胞を選別するまたは特徴付けるための)、及び/またはCARもしくはトランスポザーゼをコードするプラスミドも含んでもよいキットにて提供される。
【0245】
非限定的例では、キメラ受容体発現構築物、キメラ受容体発現構築物を生成するための1以上の試薬、発現構築物の形質移入のための細胞、及び/または発現構築物の形質移入のための同種細胞を得るための1以上の器具(そのような器具は、シリンジ、ピペット、鉗子及び/またはそのような医学的に承認された装置であってもよい)。
【0246】
いくつかの実施形態では、内在性TCRα/βの発現を排除するための発現構築物、構築物を生成するための1以上の試薬、及び/またはCAR + T細胞はキットにて提供されている。いくつかの実施形態では、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(複数の)をコードする発現構築物が含まれる。いくつかの態様では、キットは細胞のエレクトロポレーションのための試薬または装置を含む。
【0247】
キットは、本明細書に記載されている1以上の好適に等分された組成物、または本明細書に記載されているような組成物を生成するための試薬を含んでもよい。キットの成分は、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかで包装されてもよい。キットの容器手段は、成分が入れられてもよく、特定の実施形態では好適に等分されてもよい少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段を含んでもよい。キットに1以上の成分がある場合、キットは一般に、追加の成分が別々に入れられてもよい2番目、3番目、または他の追加の容器も含有するであろう。しかしながら、成分のさまざまな組み合わせがバイアルに含まれてもよい。本明細書に記載されているキットはまた通常、商業的販売のために厳重に閉じ込められたキメラ受容体構築物及び任意の他の試薬の容器を含有するための手段も含むであろう。そのような容器は、例えば、所望のバイアルが保持される射出成形されたまたはブロー成形されたプラスチック容器を含んでもよい。
【0248】
一態様では、本明細書で提供されるのは、上記に記載されている免疫細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。別の態様では、本明細書で提供されるのは、上述の免疫細胞を含むヒト患者の免疫療法のための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、免疫細胞はもともと患者に由来する。いくつかの実施形態では、患者は、細胞にて発現されたCARまたはTCR、例えば、mTCRによって標的とされるがん抗原のレベルの増加または変動が検出される腫瘍またはがんを有する。
【0249】
別の態様では、本明細書で提供されるのは方法である。いくつかの実施形態では、提供されるのは、疾患または状態を有する対象に上記に記載されている免疫細胞または上記に記載されている組成物を投与することを含む治療方法である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体は疾患または状態に関連する抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、疾患または状態はがんまたは腫瘍である。
【0250】
別の態様では、本明細書で提供されるのは免疫細胞及び組成物である。いくつかの実施形態では、提供されるのは疾患または状態の治療に使用するための上記に記載されている免疫細胞及び組成物である。
【0251】
別の態様では、本明細書で提供されるのは免疫細胞または組成物の使用である。いくつかの実施形態では、提供されるのは疾患または状態を治療する方法にて使用するための薬物の製造における上記に記載されている免疫細胞または組成物の使用である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された抗原受容体は疾患または状態に関連する抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、疾患または状態はがんまたは腫瘍である。
【0252】
本発明の上記の記載は例示であることを意図したものであり、当業者は本発明の技術的思想または本質的な特徴を変更することなく、本発明が特定の他の形態に容易に改変されてもよいことを理解すべきである。したがって、上記に記載されている実施形態は例示的であり、すべての態様で限定するものではないことが理解されるべきである。例えば、統合されていると記載されている各構成要素が個別に実施されてもよいし、同様に個別に実施されていると記載されている構成要素が統合して実施されてもよい。
【0253】
本発明の範囲は添付のクレームによって表され、クレーム及びそれと同等の概念の意味及び範囲に由来する改変されたまたは変更された形態すべては本発明の範囲内に含まれると解釈されるべきである。
配列表
【表2】
【実施例】
【0254】
本発明に関連する実施例を以下で説明する。ほとんどの場合、代替技法を使用することができる。実施例は、説明であることが意図され、本発明の範囲に対して限定するまたは制約するようには意図されない。
【0255】
一般的な方法
細胞株及び培養。Nalm-6、Nalm-6GL(GFP及びホタルルシフェラーゼを発現している)、K562、K562-CD19、IM-9、Raji、Daudiの細胞株を37℃での5%CO
2
の加湿インキュベーターにて10%熱非働化ウシ胎児血清及び2mMのL-グルタミンと1%ペニシリン/ストレプトマイシンで補完したRPMI-1640で培養した。Lenti-X(商標)293T細胞株はTakaraから購入し、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタミン、0.1mMの非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンで補完したDMEMにて維持した。CD19+PD-L1+細胞株を生成するために、K562-CD19細胞またはNALM-6-GL細胞にヒトPD-L1をコードするレンチウイルス(NM_014143.3)で形質導入した。Nalm-6-PDL1-CD80細胞株は、ヒトCD80をコードするレンチウイルス(NM_005191.3)によるNalm-6-PDL1細胞の形質導入によって生成された。
【0256】
プラスミドの構築。抗CD19 scFv(FMC63)と、CD8αヒンジ及び膜貫通領域と、4-1BB(CD137)及びCD3ζの細胞質ドメインとを含有するpLV-CD19-BBzベクターの構築は、以前に記載されている(PNAS,2016,Ma JSY)。pLV-CD19-28zを生成するために、4-1BBの細胞質ドメインをヒトCD28共刺激ドメインの配列で置き換えた。形質導入されたCAR-T細胞の検出と精製のために、ΔLNGFR(細胞質ドメインを切り詰めたCD271)配列をpMACS-ΔLNGFR(Milteny Biotec)ベクターから増幅し、P2A配列を介してCAR-導入遺伝子の前に挿入して、pLV-ΔLNGFR-CD19-28zまたはpLV-ΔLNGFR-CD19-BBzを得た。
【0257】
CARとshRNAの双方の発現カセットをコードする1つで2つの機能があるLVベクターを生成するために、shRNA(連結配列;TTCAAGAGA、終了配列;TTTTT)とPol IIIプロモーター(mU6、hU6またはhH1)を含有するshRNA発現カセットを合成し、セントラルポリプリン配列(cPPT)の上流のCARをコードするLVベクターにサブクローニングした。異なるプロモーター(mU6とhU6)によって2つのshRNAを発現する1つで2つの機能がある二重ベクターを生成するために、BstZ171-Xba1-Nde1-Bmt1-Spe1 MCS配列をhU6プロモーターの下流のpLV-hU6-shPD-1_ΔLNGFR-CD19-BBzベクターに挿入した。2番目のmU6-shRNAカセット断片をMCSにサブクローニングした。
【0258】
レポーターベクターの確立のために、pGL2_NFAT-Lucレポーター(addgene #10959)に由来するNFATRE×3配列をPCRによって増幅する。NF-kB-RE5×(5’-GGGAATTTCC-3’)及びminiPの配列を合成した(IDT Technologies)。pLV-eGFPベクターのEF-1aプロモーターをこれらのレポーター断片で置き換え、pLV-NFAT-RE 3×-eGFPまたはpLV-NF-kB-RE 5×-eGFPレポーターベクターを得た。
【0259】
siRNAまたはshRNAの配列の選択。阻害性免疫チェックポイント(CTLA-4、LAG-3、TIGIT、及びTIM-3)に特異的である21塩基長のsiRNAの候補配列は、合成前にBLOCK-iT(商標)RNAi DesignerまたはSfoldのプログラムを用いて設計された。RNAオリゴマー。CTLA-4を標的とするsiRNAは配列番号255~260から成る群から選択された。LAG-3を標的とするsiRNAは配列番号244~254から成る群から選択された。TIGITを標的とするsiRNAは配列番号238~243から成る群から選択された。TIM-3を標的とするsiRNAは配列番号261~264から成る群から選択された(IDT Technologies)。免疫チェックポイントの発現動態を分析するために、PBMCをヒト組換えIL-2の存在下でDynabeads Human T-Activator CD3/CD28(Thermofisher)または4μg/mlの抗CD3抗体及び2μg/mlの抗CD28抗体によって刺激した。免疫チェックポイントの発現レベルを12日間(3日目、6日目、12日目)分析した。最適なsiRNA配列の選択のために、刺激の2日後、PBMCにNeon(登録商標)Transfection System(Thermofisher)を用いてsiRNAオリゴマーをエレクトロポレーションで導入した。siRNAのノックダウン効率は形質移入の2日後、フローサイトメトリーによって測定した。その効率に基づいて各免疫チェックポイントについて2~3のsiRNA配列を選択し、shRNA形式に変換して、1つで2つの機能がある二重レンチウイルスベクターを生成した。shRNAが介在するノックダウン有効性を検証するために、レンチウイルスで形質導入したT細胞を1:1の比にてγ線照射したK562-CD19細胞で3日間刺激し、フローサイトメトリーによって免疫チェックポイントのそれの発現レベルについて分析した。
【0260】
フローサイトメトリー。抗CD19 CARの発現レベルは、AF647を結合した抗マウスF(ab’)2抗体(115-606-072、Jackson ImmunoResearch)またはAF647を結合したストレプトアビジン(405237、Biolegend)と併せたビオチンを結合したrhCD19-Fc(CD9-H5259、ACRO Biosystems)によって分析した。ΔLNGFR発現は、APCまたはFITCを結合した抗CD271抗体(ME20.4-1.H4;Mitenyi Biotec)によって分析した。CAR-T細胞における免疫チェックポイントの発現は、以下の抗体:PD-1(PE、クローンJ105;Thermofisher)、TIM-3(PE、クローン344823;R&D Systems)、LAG-3(PE、クローン7H2C65;Biolgend)、TIGIT(PE、クローンMBSA43;Thermofisher)を用いて従来のフローサイトメトリーによって測定した。
【0261】
CAR-T細胞におけるCTLA-4発現は、照射したNALM-6細胞またはK562-CD19細胞との1:1のE:T比での3日間のインキュベートの後、細胞内フローサイトメトリーによって分析した。細胞はCytofix/Cytoperm(商標)溶液(BD Bioscience)で固定し/透過処理し、続いて抗ヒトCD152(CTLA-4)抗体(PE、クローンBNI3;Biolegend)によって染色した。
【0262】
腫瘍細胞上の刺激性または抑制性の免疫チェックポイントリガンドの発現を以下の抗体:CD80(PE、クローン2D10;Biolgend)、CD86(BV421、クローン2331(FUN-1);BD Bioscience)、PD-L1(APC、クローン29E.2A3;Biolgend)、HLA-DR(PE、クローンL243;Biolgend)、CD112(PE、クローンTX31;Biolgend)、CD155(PE、クローンSKII.4;Biolgend)を用いて分析した。
【0263】
PD-1の発現に対するTGF-βの効果を分析するために、CAR-T細胞を、10ng/mlの組換えヒトTGF-β1(R&Dシステム)の存在下で照射されたNALM-6細胞によって3日間刺激し、その後、フローサイトメトリーによってPD-1発現を測定した。
【0264】
細胞内フローサイトメトリーによるSMAD2/3のリン酸化状態の分析。SMAD2/3のリン酸化状態を判定するために,CAR-T細胞を1:1のE:T細胞比でNALM-6細胞と共に4時間または24時間インキュベートした。細胞はLyse/Fix緩衝液(BD Bioscience)によって固定し、続いてPerm緩衝液III(BD Bioscience)によって透過処理した。LNGFR+CAR-T細胞のリン酸化状態は、抗ヒトSmad2(pS465/pS467)/Smad3(pS423/pS425)抗体(PE、クローン072-670;BD Bioscience)によって判定した。
【0265】
誘導された抑制性T細胞の検出。CAR-T細胞から生成される抑制性T細胞の誘導(CD4+CD25+FOXP3+)は、NALM-6細胞との3日間の共培養の後、細胞内染色によって分析した。Foxp3/転写因子染色緩衝液(Thermofisher)で固定し、透過処理した細胞を以下の抗体:抗CD4(BV605、クローンOKT4;Biolgend)、抗CD25(FITC、クローンVT-072;Biolgend)、及び抗FOXP3(APC、クローン236A/E7;Thermofisher)で染色した。
【0266】
CAR-T増殖アッセイ。ΔLNGFR表面マーカーを発現しているCAR-T細胞を磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)によって選別した。LNGFR+CAR-T細胞(1×106個、純度>95%)をサイトカインの非存在下で6日ごとに、γ線照射したK562-CD19-PDL1細胞(1×106個)で刺激した。CAR-T細胞の倍数増殖はトリパンブルー排除を用いて6、12、及び18日目に細胞を数えることによって算出した。
【0267】
CAR-T細胞の試験管内細胞傷害性。CAR-T細胞の細胞傷害性は、IncucyteS3生細胞分析システムを用いて判定した。GFPを構成的に発現しているNALM―6またはNALM-6-PDL1の標的細胞を3つ組にてウェルあたり1×105個の細胞の密度で96ウェルプレートに入れた。LNGFR+CAR-T細胞を1:1、0.3:1、0.1:1のE:T比で各ウェルに加えた。各ウェルのGFP強度のリアルタイム変化は緑色物積分強度として2時間ごとに記録した(平均、平均GFP強度×μm2/ウェル)。相対的な緑色物積分強度の比率は、以下の式:(各時点での合計GFP積分強度/開始時点での合計GFP積分強度)*100によって算出した。
【0268】
NFAT及びNF-κBレポーターアッセイ。CAR-T細胞におけるNFAT転写因子の比活性を決定するために、ヒト組換えIL-2(300IU/mL)の存在下にて4μg/mlの抗CD3及び2μg/mlの抗CD28抗体で2日間刺激したPBMCに先ず、NFAT-RE×3-eGFPレポーター遺伝子をコードするレンチウイルスで形質導入した。形質導入の8日後、全細胞をヒト組換えIL-2(300IU/mL)の存在下にて2日間、抗CD3及び抗CD28抗体によって再刺激した。活性化された細胞を2つの別々のウェルに分割し、異なるCARをコードするレンチウイルス(CD19-28zまたはCD19-BBz)で形質導入した。6日後、各ウェルの全細胞をNALM-6細胞と1:1の比で共培養した。CAR-T細胞におけるNFATのレポーター活性は24時間及び48時間の時点で、LNGFR+CAR-T集団(合計CD3+細胞の20~25%)内でのeGFPシグナルのgMFI値によって決定した。CAR-T細胞におけるNF-κB転写因子の比活性は、同様の手順に従って、しかし、NF-κB-RE x5-eGFPレポーター遺伝子をコードするレンチウイルスを用いて測定した。
【0269】
定量的リアルタイムPCR。3×106個のLNGFR+G28zまたはGBBz CAR-T細胞をCD19+NALM-6標的細胞と共に1:1の比で共培養した。4時間及び48時間の共培養の後、LNGFR+CAR-T細胞はMoFlo Astriosソーター(Beckman Coulter)を用いて選別した。LNGFR+CAR-T細胞からmRNAをRNeasyミニキット(Qiagen)によって抽出し、QuantiTect Reverse Transcriptionキット(Qiagen)を用いてcDNAに逆転写した。定量的リアルタイムPCRは、CFX96リアルタイムPCR検出システム(Biorad)及びSYBR GreenリアルタイムPCRマスターミックス(TOYOBO)を用いて、SYBRプロトコールで実施した。18s rRNAの検出のためのプライマー配列は配列番号268及び269を含む。PDCD1の検出のためのプライマー配列は配列番号270及び271を含む。IL2の検出のためのプライマー配列は配列番号272及び273を含む。IL4の検出のためのプライマー配列は配列番号274及び275を含む。IL17Aの検出のためのプライマー配列は配列番号276及び277を含む。CD25の検出のためのプライマー配列は配列番号278及び279を含む。CTLA4の検出のためのプライマー配列は配列番号280及び281を含む。FOXP3の検出のためのプライマー配列は配列番号282及び283を含む。TGF-ベータ1の検出のためのプライマー配列は配列番号284及び285を含む。TGFBR1の検出のためのプライマー配列は配列番号286及び287を含む。TGFBR2の検出のためのプライマー配列は配列番号288及び289を含む。
【0270】
標的mRNAの量は、内在性参照18s rRNAに対して基準化された:ΔCt(試料)=Ct(標的の遺伝子)-Ct(18s rRNA)。比較Ct法を適用して、以下の方程式:2-ΔΔCt=2∧-(ΔCt[刺激した]-ΔCt[非刺激])に基づいて、刺激されていない状態と比較した標的mRNAの相対的な倍率変化を分析した。
【0271】
動物実験。本明細書に記載されているすべての手順はKAISTの施設内動物管理使用委員会によって承認された。CD19+血液がんモデルを確立するために、NSGマウス(4~6週齢)に、EGFP融合ホタルルシフェラーゼならびにヒトPDL1を発現するように操作されている1x106個のCD19+NALM-6白血病細胞(NALM6-GL-PDL1細胞)を静脈内注射した。CAR-T細胞は、上記に記載されている手順に従って健常なドナーの全血試料から調製した。形質導入後4日目、CAR-T細胞を選別し、マウスへの注射に先立ってさらに6日間増殖させた。NALM6-GL-PDL1細胞注射の5日後、2.5または1×106個のCAR-T細胞をマウスに静脈内注入した。マウス内のNALM6-GL-PDL1の生物発光画像処理はXenogen IVIS Spectrumでモニターし、シグナルはLiving Imageソフトウェア(Perkin Elmer)を用いて対象とする領域における放射輝度(光子/秒)として定量した。固形腫瘍モデルについては、NSGマウスに5×106個のIM-9細胞(CD19+PD-L1+CD155+)を皮下注射した。LNGFR+CAR-T細胞は、腫瘍細胞の注射の14日後(約150~300mm
3の腫瘍体積)にマウスに静脈内注入した。腫瘍はキャリパー測定によって毎週モニターし、体積は(長さ×幅2)/2によって推定した。
【0272】
実施例1:CART19とPD-1を標的とするshRNAとを発現する1つで2つの機能があるベクターの作製と評価の方法
この実施例は、CART19と、PD-1を阻害するshRNAとを発現する1つで2つの機能があるベクターの作製と評価の方法を記載している。
【0273】
CARとshRNAの双方の発現カセットをコードする1つで2つの機能があるレンチウイルスベクターを生成するために、shRNA(連結配列;TTCAAGAGA、終了配列;TTTTT)とPol IIIプロモーター(mU6、hU6またはhH1)を含有するshRNA発現カセットを合成し、セントラルポリプリン配列(cPPT)の上流でCARをコードするLVベクターにサブクローニングした。EF-1αプロモーターによって4-1BBベースのCART19を、mU6プロモーターによってPD-1を標的とするshRNAを自発的に発現するレンチウイルスベクターを構築した(
図1A及び1B)。
【0274】
PD-1を標的とするshRNAを選択するために、3つのshRNA候補を使用した。shPD-1#1はCARの発現(
図1C)、恒常性増殖(
図1D)、分化状態及びCD4/CD8組成(
図1F)に影響を与えることなく、PD-1の発現(
図1F)に対して驚くほど効果的な阻害効果を示した。shRNAの発現レベルは、Pol IIIプロモーターの種類に応じて異なる可能性があることが報告されている(Mol.Ther.,2006,Irvin S.Y.Chen)。したがって、PD-1発現に対するmU6、
hU6、またはhH1プロモーターの効果を評価した。mU6とhu6は類似のKD有効性を示したが、hH1はさらに低かった(
図2)。
【0275】
本明細書で作製した1つで2つの機能があるレンチウイルスベクターは、PD-1の発現に対して驚くほど効果的な阻害を示したので、以下の実施例にてPD-1 KD改変CAR-T細胞の作製に使用することができる。
【0276】
実施例2:PD-1 KD CAR-T細胞の製造方法と試験管内での評価
この実施例は、PD-1 KD改変CAR-T細胞の製造方法と試験管内での評価を記載している。
【0277】
末梢血単核細胞は、Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare)密度勾配遠心分離法によって健常なドナーの全血試料から分離した。これらの細胞は300IU/mlのヒト組換えIL-2(BMIKOREA)の存在下で4μg/mlのプレートに結合した抗CD3抗体(クローンOKT3;Bio X cell)及び2μg/mlの可溶性抗CD28抗体(クローンCD28.2;Bio X cell)で刺激した。組換えレンチウイルス作製のために、形質移入の24時間前に2.5mLの増殖培地(10%FBS、2mMのL-グルタミン、0.1mMの非必須アミノ酸、及び1mMピルビン酸ナトリウムで補完したDMEM)における6x105個の293T細胞を6ウェルプレートに播種した。細胞に、10μlのリポフェクトアミン2000(Thermofisher)を用いて、パッケージングベクター(pMDL、pRev、pMDG.1)とトランスファーベクターの混合物で形質移入した。形質移入の2日後、レンチウイルスを含有する培養上清を回収し、1800rpmで5分間遠心分離した。活性化T細胞を硫酸プロタミン(1μg/ml)の存在下でウイルス上清と混合し、1000×gで90分間遠心し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、培養上清を吸引し、10%FBS、2mMのL-グルタミン、0.1mMの非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、55μMのβ-メルカプトエタノールで補完した新鮮なPRMI-1640と交換した。形質導入されたT細胞を1×106個の細胞/mLを下回る密度にて10%熱非働化FBS及び2mMのL-グルタミン及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンで補完したRPMI-1640、ヒト組換えIL-2(300IU/mL)を含有するT細胞培地で培養し、それを2~3日ごとに補充した。
【0278】
shPD-1 CAR-T細胞の試験管内での溶解活性及び増殖活性を調べた。Nalm-6-PDL1またはK562-CD19-PDL1をCD19
+PDL1
+標的細胞として使用した。先ず、IncuCyteリアルタイムイメージングシステムを使用した長期の溶解活性を調べた。CAR-T細胞をNALM-6細胞と混合した場合、WT(shGFP)CART及びPD-1 KD(shPD-1)CAR-T細胞は類似の溶解活性を示した。しかしながら、CAR-T細胞をNALM-6-PDL1細胞と共に培養した場合、shPD-1 CAR-T細胞は、shGFP CARの溶解活性よりも驚くほど効果的な溶解活性を示した(
図3A)。予想外にshRNAカセットを含まないBBz CAR-T細胞とshGFP CAR-T細胞は同様の細胞傷害性を保持することも見いだされたということは、shRNA発現自体がCAR-T細胞の活性にほとんど効果を有さないことを示唆している。
【0279】
次に、CD19抗原及びPD-L1に繰り返し曝露されたCAR-T細胞の増殖活性を評価した。shPD-1 CAR-T細胞は外来性IL-2の非存在下でshGFP CAR-T細胞よりはむしろK562-CD19-PDL1標的に対して4~5倍高いT細胞増殖活性を達成した(
図3B)。共刺激性リガンドは最適なT細胞の増殖を促進し、腫瘍細胞で発現されるのはまれではないことが知られている。標的細胞における共刺激リガンドの発現が反復刺激の際に細胞増殖に影響を与えるかどうかを調べるために、代表的な共刺激リガンドであるCD80が標的細胞で発現されるかどうかを調べた。K562-CD19はCD80を発現したが、Nalm-6は発現しなかった(
図3C)。CD80を過剰発現するNALM-6-PDL1(NALM-6-PDL1-CD80)は、反復刺激のもとでCAR-T細胞が増殖することを可能にすることが見いだされた。CD80は反復試験管内刺激のもとでCART増殖を促進する可能性がある(
図3B)。まとめると、細胞固有のPD-1破壊は、CAR &PDL1の反復刺激の際にCD19特異的CAR-T細胞の試験管内での機能改善に驚くほど効果的に寄与することが裏付けられた。
【0280】
この実施例では、実施例1に記載されている1つで2つの機能があるベクターを用いて生成されたPD-1 KD改変CAR-T細胞はWT CAR-T細胞と比較して試験管内での溶解活性及び増殖活性の驚くほどのレベルの増強を示したので、その治療の可能性が、以下の実施例におけるCD19+PDL1+の血液腫瘍を担うマウスモデルにおける生体内モデルにてさらに評価された。
【0281】
実施例3:PD-1 KD CAR-T細胞を使用したCD19+血液がんの生体内での治療方法
この実施例はPD-1 KD CAR-T細胞を使用したCD19+血液がんの生体内での治療方法を記載している。
【0282】
CD19
+血液がんモデルを確立するために、NSGマウス(4~6週齢)に、EGFP融合ホタルルシフェラーゼ及びヒトPDL1を発現するように設計された1x10
6個のCD19
+NALM-6白血病細胞(NALM6-GL-PDL1細胞)を静脈内注射した。CAR-T細胞は、上記に記載されている手順に従って健常なドナーの全血試料から調製した。形質導入後4日目、CAR
-T細胞を選別し、マウスへの注射に先立ってさらに6日間増殖させた。NALM6-GL-PDL1細胞注射の5日後、1×10
6個のCAR-T細胞をマウスに静脈内注入した。マウス内のNALM6-GL-PDL1の生物発光画像処理はXenogen IVIS Spectrumでモニターし、シグナルはLiving Imageソフトウェア(Perkin Elmer)を用いて対象とする領域における放射輝度(光子/秒)として定量した。shPD-1 CAR-T細胞で処理したマウスは、shGFP CAR-T細胞と比較して、腫瘍量の驚くほど均一な低下を有した(
図4)。加えて、2種類のshRNAを発現するプロモーターが同様の抗腫瘍効果を有し、shRNA発現自体は驚くほど抗腫瘍効果には影響を与えないことが見いだされた。
【0283】
生体内サイトカイン産生に対するCAR-T細胞の細胞固有のPD-1破壊の効果を調べること。個々のマウスの末梢血は、CAR-T注射の24時間後と72時間後に得た。室温にて300×gで5分間遠心分離することによって末梢血から血漿を回収した。生体内でのサイトカインレベルは製造元の指示に従ってヒトTh1/Th2サイトカインキット(BD Bioscience)で分析した。CAR-T細胞の細胞固有のPD-1破壊は生体内サイトカイン産生を予想外に低下させた(
図5A)。
【0284】
CAR-T細胞の生体内での増殖に対するCAR-T細胞の細胞固有のPD-1破壊の効果を調べるために、CAR-T注射の3または20日後に個々のマウスの脾臓を得た。CAR-T細胞(生細胞/死細胞
―CD3
+)またはNALM-6-PDL1(生細胞/死細胞
―GFP
+)の比率をフローサイトメトリーで評価した。細胞固有のPD-1破壊はCAR-T細胞の生体内増殖を予想外に遅延させた(
図5B)。
【0285】
本明細書に記載されている1つで2つの機能があるベクターシステムによって取得されたCAR-T細胞固有のPD-1破壊は、CD19+PDL1+腫瘍に対するCD19特異的CAR-T細胞の生体内抗腫瘍効果で予想外に高いレベルの増加を示した。したがって、PD-1 KD CAR-T細胞は、以下の実施例の方法でさらに使用された。
【0286】
実施例4:PD-1シグナル伝達における共刺激分子の環境評価
この実施例は、PD-1シグナル伝達におけるCD28及び4-1BBを含む共刺激分子の環境評価を記載している。
【0287】
細胞固有のPD-1破壊がCD28/CD3ζまたは4-1BB/CD3ζ CAR-T細胞の機能にどのように影響を及ぼすのかを調べた(
図6A)。G28z GBBz、P28z、及びPBBz CAR-T細胞を先ず生成した。これらのCAR-T細胞を同様に形質導入した(
図6B)。PD-1発現レベルはG28z CAR-T細胞においてGBBz CAR-T細胞よりも高く、P28zのPD-1レベルはPBBzのそれよりも高かった(
図7A)。この異なるPD-1タンパク質レベルが転写レベルに起因することも見いだされた(
図7B)。各共刺激ドメインは、PD-1転写に関与する因子の活性化に対する異なる強度を表すという仮説を立てた。PD-1転写に関与する転写因子の中で、NFAT及びNF-
κBはPD-1転写に大きく関与し、SMAD2/3は腫瘍微小環境の主要な免疫抑制因子である外因性TGF-βの存在下でPD-1転写に関与していた(Cancer Discov.,2016,Benjamine,V.Park)。NFATまたはNF-
κBの活性をCAR刺激の間に調べた。NFAT応答要素(NFAT-RE ×3)-eGFPまたは古典的NF-
κB応答要素(NF-
κB RE ×5)-eGFPのレポーターレンチウイルスベクターを構築した。NFATまたはNF-kB REはeGFP誘導に介在することが示された(
図8A及び8B)。レポーターを形質導入したT細胞を再刺激し、さらにG28zまたはGBBzで形質導入した。G28z形質導入NFATレポーターCAR-T細胞(G28z-NFAT)は、GBBz-NFATと比較してわずかに高いレベルのNFAT活性を有し(
図9A)、NFAT標的遺伝子のmRNAレベルもまたG28zにおいてさらに高かった(
図9B)。しかしながら、G28z形質導入NF-
κBレポーターCAR-T細胞(G28z-NF-
κB)は、GBB-NF-
κBと比較してNFAT活性において類似している(
図10)。各CAR-T細胞のSMAD2/3の活性を調べるために、TGF-βがCAR刺激の間にG28zまたはGBBz CAR-T細胞に処理された。G28z CARTのSMAD2/3リン酸化はBBz CARTがわずかに高く(
図11A)、TGF-β処理によるPD-1発現の増加の程度はG28zの方がGBBzよりも大きい(G28z 2.39±0.031、GBBz 1.61+0.034の倍数変化)ことが見いだされた(
図11B)。この差異がTGF-βシグナル伝達要素の発現レベルの差異によるものかどうかを調べた。TGF-β及びTGF-β受容体1(TGFBR1)は、2つのCART間で有意差はなかったが、TGF-β受容体2(TGFBR2)は、CD28zにおいてさらに高いレベルで発現されることが見いだされた(
図11C)。
【0288】
この実施例では、PD-1シグナル伝達におけるCD28及び4-1BBを含む共刺激分子の環境を評価した。CD28共刺激はPD-1転写に関連するシグナル伝達を強く誘導し、その誘導はNFAT及びTGF-βのシグナル伝達の活性化に関連し得る。CD28共刺激の誘導は4-1BB共刺激の誘導よりも強かった。
【0289】
実施例5:PD-1 KD CAR-T細胞の操作方法と評価
この実施例はPD-1 KD CAR-T細胞の操作方法と評価を記載している。
【0290】
複数の連続した抗原及び免疫チェックポイントリガンドの遭遇を伴うCAR-T細胞の生体内状態を模倣するために、CAR-T細胞を外因性サイトカインのない状態でCD19
+PDL1
+標的細胞と共に共培養した。初代CAR-T細胞では、PD-1 KD CAR-T群は、WT CAR-T群よりも驚くほど高い溶解活性を示したが、CD28系と4-1BB系のCAR-T群の間では溶解活性に差異はなかった(
図12A)。2回目のCAR-T細胞の再刺激後、G28z CAR-T細胞は2回目の刺激後に増殖する能力を失ったので、3種のCAR-T細胞の溶解活性を分析した。PBBz及びP28z CAR-T細胞は、GBBz CAR-T細胞よりも抗原及びPD-L1の反復曝露の際、驚くほど高い溶解活性を有した。PBBz CAR-T細胞は、P28z CAR-T細胞よりも溶解機能を保持することで予想外に高い能力を示した(
図12A)。この傾向は、細胞増殖アッセイでも観察された(
図12B)。まとめると、PD-1 KD CARTへの4-1BB共刺激ドメインの適用は、CD28共刺激ドメインと比較して、試験管内での保持された細胞傷害性及び増殖能力に寄与する。PBBz CAR-T細胞はCD19及びPD-L1の反復曝露で疲弊の遅延を示す。
【0291】
BBz CAR-T細胞に対する免疫抑制機構の影響の可能性を調べた。CD28 CAR-T細胞はBBz CARTよりもTGF-βに対して感受性が高かったので(
図11)、TGF-βによって抗原特異的増殖がどれくらい抑制されるについてGBBz CAR-T細胞をG28z CAR-T細胞と比較した。TGF-βがない状態でのCAR刺激の間、2つのCAR-T細胞間では増殖の有意差は観察されなかった一方で、GBBz CAR-T細胞ではなくG28z CAR-T細胞の増殖は意味があるように低下した(
図13A)。
【0292】
TGF-βは増殖を阻害するだけでなく、制御性T細胞の誘導にも深く関与していることが報告されている(JEM,2003,WanJun Chen;Science,2003,Shohei Hori;Blood,2007,Dat Q.Tran)。外因性TGF-βの非存在下でG28z CAR-T細胞とBBz CAR-T細胞の間でTreg誘導が異なるかどうかを調べるために、G28z CAR-T細胞及びBBz CAR-T細胞をNALM-6標的細胞と3日間培養した。G28z CAR-T細胞はGBBz CAR-T細胞と比べて、2倍から3倍の試験管内でのCD4
+CD25
+FOXP3
+Treg%を有した(
図13B)。この結果は、CD25及びFOXP3のようなTreg関連遺伝子の発現の増加と一致している(
図9B)。次に、TGF-β処理後Treg%の変化を観察し、比較した。TGF-βは28z CAR-T細胞におけるTreg%を有意に改善するが、BBz CAR-T細胞ではTreg%に影響を及ぼさないことが示された(
図13B)。CD28共刺激は4-1BB共刺激よりもTregを誘導する高い可能性を有し、TGF-βが存在すれば、その可能性はさらに突出すると結論付けられた。細胞固有のPD-1破壊がTregの誘導に影響を与えるかどうかも調べた。P28z CAR-T細胞及びPBBz CAR-T細胞はG28z及びGBBzと比べてそれぞれ、2~3倍低いTregの%を有した。特に、PBBzは最低のTreg%を有した(
図13C)。最後に、PD-1/PD-L1シグナル伝達が活性化されている状態でのTregの比率を調べた。NALM-6またはNALM-6-PDL1との共培養後のTreg%の変化を調べた。PD-1/PDL1シグナル伝達はCAR-T由来Tregの誘導に有意な影響を与えないことが見いだされた(
図13C)ということは、細胞内PD-1の発現レベルがTregの形成に関連していることを示唆している。PBBz CAR-T細胞は免疫抑制メカニズムに驚くほど鈍感であり得ると結論付けられた。
【0293】
この実施例では、PBBz CAR-T細胞が生成され、それはCD19及びPD-L1の反復曝露で疲弊の遅延を示した。PBBz CAR-T細胞はまた免疫抑制メカニズムを予想外に回避する。したがって、これらの細胞は生体内の抗腫瘍効果についてさらに評価された。
【0294】
実施例6:PBBz CAR-T細胞を用いたCD19+血液がんの生体内での治療方法
この実施例はPBBz CAR-T細胞を用いたCD19+血液がんの生体内での治療方法を記載している。
【0295】
CD19
+血液腫瘍モデルを実施例3に記載されるように確立した。CD19
+B-ALL細胞に対するG28z、GBBz、P28z及びPBBz CAR-T細胞の生体内での抗腫瘍効果を比較した。CAR-T細胞は、標的細胞注入の4日後、2.5×10
6個の単回用量で投与された。NALM6-GL-PDL1を担ったマウスの生体内画像処理はXenogen IVIS Spectrumで取得し、対象とする領域の放射輝度(光子/秒)として定量化した。
図14に示すように、PD-1 KD CART細胞(PBBzまたはP28z)は、WT CAR-T細胞(GBBzまたはG28z)よりも優れた抗腫瘍効果を示す。特に、PBBz CAR-T細胞は、他の3つのCAR-T細胞よりも長期間、白血病の進行を抑制した。WT CAR-T細胞は強力な抗腫瘍反応を有したが、持続的な抗腫瘍反応を有さなかった。一方、PD-1 KD CAR-Tは初期に対して弱い反応を示したが、持続的な抗腫瘍反応を示すということは、CAR-T細胞におけるPD-1の破壊がCRSのリスクを低下させる可能性があってもよいことを示唆している。PBBz CAR-T細胞はP28zのそれよりも予想外に優れた生体内の抗腫瘍効果を付与した。
【0296】
実施例7:→←または←→の方向で入る2種類のshRNAカセットを有する1つで2つの機能がある二重ベクターの作製方法
この実施例は1つで2つの機能がある二重ベクターの作製方法を記載しており、その際、2種類のshRNAカセットが←→方向(shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1)または→←方向(mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6)で入り、shPD-1、shTIM-3、及びCD19-CARを同時に発現させる。
【0297】
PD-1のためのshRNA(以後shPD-1)、TIM-3のためのshRNA(以後shTIM-3)及びCD19-CARの発現がそれぞれヒトU6プロモーター(以下hU6)、マウスU6プロモーター(以下mU6)、及びEF1-αプロモーターによって調節されるレンチウイルスを構築すること。双方の種類のshRNAが同時に発現するプラスミドは、各shRNAカセットが→←方向(mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6)及び←→方向(shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1)に配置されるように調製した(
図15)。この目的で、(1)マルチクローニングサイト(MCS)の挿入、(2)shPD-1のマウスU6プロモーターのヒトU6プロモーターへの変換、(3)shTIM-3の挿入、及び(4)shTIM-3とshPD-1の切り替え位置のようなクローニングを実施した。
【0298】
MCSをmU6-shPD-1に挿入するために、pLV-ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR_mU6-shPD-1(プラスミドID#2)の3’部分及び配列番号228及び229を含むプライマーを用いて、mU6-shPD-1の3’のHpa1制限酵素認識部位がBsgZ171-Xba1-Nde-1-Bmt1-Spe1マルチクローニング部位に改変されるPCR産物(416bp)を作製した。その後、PCR産物をBstZ17y及びHpa1制限酵素で処理し、プラスミドID#2をHpa1制限酵素とCIPで処理した後、平滑末端ライゲーションを用いてshPD-1-mU6-MCS塩基配列(shRNAカセット配列番号223)を含むpLV-ΔLNGFR-P2A-CD19-CAR-mU6-shPD-1_MCS(プラスミドID#4)を調製した。
【0299】
その後、shPD-1がマウスU6プロモーターの代わりにヒトU6プロモーターによって発現されるようにプラスミドを構築した。LentiCRISPR V2プラスミドは、配列番号230及び231を含むプライマーと共に用いてヒトU6プロモーターを含むPCR産物を得た。PCR産物をHpa1及びSpe1制限酵素で処理し、次いでHpa1及びSpe1制限酵素で処理したプラスミドID#4とライゲーションして、hU6-shPD-1塩基配列(配列番号224)を含むpLV-ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR_hU6-shPD-1_MSC(プラスミドID#5)を調製した。mU6-shTIM-3カセットをプラスミドID#5に挿入してshTIM-3とshPD-1とを同時に発現するプラスミドを構築することを目的とした。
【0300】
mU6-shTIM-3カセットを含むPCR産物は、プラスミドID#3と配列番号232及び233を含むプライマーとを用いて得た。PCR産物をBmt1及びSpe1制限酵素で処理した後、Bmt1及びSpe1制限酵素で処理したプラスミドID#5とそれをライゲーションして、→←方向(mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6)の塩基配列(配列番号220)を含むpLV-ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6(プラスミドID#6)を調製した。
【0301】
2種類のshRNAカセットが←→方向(shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1)に配置されているプラスミドを構築するために、プラスミドID#6と配列番号234及び235を含むプライマーとを用いてPCR産物を得た。Spe1及びHpa1制限酵素で処理した後、同じ制限酵素で処理したプラスミドID#4にそれを挿入してpLV-ΔLNGFR-P2A-CD19-CAR-shPD-1-hU6-MCS(プラスミドID#7)を作製した。その後、プラスミドID#6と配列番号236及び237を含むプライマーとを用いてPCR産物を得た。PCR産物をBmt1及びSpe1制限酵素で処理した後、Bmt1及びSpe1制限酵素で処理したプラスミドID#7とそれをライゲーションして最終的に、←→方向(shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1)の塩基配列(配列番号221)を含むpLV-ΔLNGFR-P2A-CD19-CAR_shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1(プラスミドID#8)を調製した。
【0302】
本明細書で作製した2種類のshRNAカセットが←→または→←方向で入る1つで2つの機能があるレンチウイルスベクターは、以下の実施例におけるPD-1 KD改変CAR-T細胞の作製に使用することができる。
【0303】
実施例8:PD-1 KD CAR-T細胞の製造方法及び試験管内での評価
この実施例は、shPD-1、shTIM-3、及びCD19-CARを同時に発現させる、二重KD CAR-T細胞を作製し、試験管内で評価する方法を記載している。
【0304】
リポフェクタミンを用いて表1におけるプラスミドID#1(pLV-
ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR_mU6-shGFP)、#6(pLV-
ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR_mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6)、及び#8(pLV-
ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR_shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1)、ならびにパッケージングプラスミドpMDL g/p、pRSVrev及びpMDG.1でHEK293T細胞に形質移入し、48時間経過後、レンチウイルスを含む細胞培養液を得た。Ficoll-paque溶液を用いて、末梢血単核細胞(PBMC)をヒトの血液から単離し、ヒトCD3及びCD28標的抗体を用いてT細胞を特異的に活性化した。T細胞の最初の活性化から1~2日後、以前に得られたウイルスを用いてそれらに形質導入した。調製したCAR-T細胞はその後、5%ヒト血漿及びヒトIL-2を含むAIM-V培養液を用いて培養した。形質導入後6日目に、MACSelect LNGFRシステム(miltenyibiotec,Germany)を用いて純粋なCAR-T細胞を取得し、LNGFR標的抗体を用いてフローサイトメーターでLNGFR+CAR-T細胞を単離した。以下では、プラスミドID#1、#6及び#8を用いて調製した細胞はそれぞれ、
ΔLNGFRCART19/shGFP(またはshGFP/CART19)、
ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6(またはshPD-1_shTIM-3/CART19)及び
ΔLNGFR-CART19/shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1として示される(
図16)。
【0305】
mU6-shPD-1、mU6-TIM-3、及びshPD-1-hU6カセットをそれぞれ含む対照CAR-T細胞を調製するために、リポフェクタミンを用いて表1におけるプラスミドID#2(pLV-ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR_mU6-shPD-1)、#3(pLV-ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR_mU6-shTIM-3)、及び#7(pLV-ΔLNGFR_P2A_CD19-CAR_shPD-1-hU6_MCS)、及びパッケージングプラスミドpMDL g/p、pRSVrev及びpMDG.1でHEK293T細胞に形質移入した。48時間経過後、レンチウイルスを含む細胞培養液を得た。Ficoll-paque溶液を用いて、末梢血単核細胞(PBMC)をヒトの血液から単離し、ヒトCD3及びCD28標的抗体を用いてT細胞を特異的に活性化した。T細胞の最初の活性化から1~2日後、以前に得られたウイルスを用いてそれらに形質導入した。調製したCAR-T細胞はその後、5%ヒト血漿及びヒトIL-2を含むAIM-V培養液を用いて培養した。形質導入後6日目に、MACSelect LNGFRシステム(miltenyibiotec,Germany)を用いて純粋なCAR-T細胞を取得し、LNGFR標的抗体を用いてフローサイトメーターでLNGFR+CAR-T細胞を単離した。以下では、プラスミドID#2、#3及び#7を用いて調製した細胞はそれぞれ、ΔLNGFR-CART19/shPD-1(またはshPD-1/CART19)、ΔLNGFR-CART19/shTIM-3(またはshTIM-3/CART19)及びΔLNGFRCART19/shPD-1-hU6として示される。
【0306】
本明細書で作製した二重KD CAR-T細胞の純度を測定するために、上記で調製した細胞についてLNGFR標的抗体を用いてフローサイトメトリーを行った。
図17に示すように、約80%のLNGFR+CAR-T細胞が得られた。
【0307】
本明細書で作製された二重KD CAR-T細胞におけるPD-1及びTIM-3の発現の低下が測定され、その発現の持続的な低下が見られた。二重KD CAR-T細胞をヒトCD3及びCD28標的抗体で3日間刺激して、PD-1及びTIM-3の発現を誘導した。その後、CAR、PD-1、及びTIM-3標的抗体を使用したフローサイトメトリーを介して二重KD CAR-T細胞のPD-1及びTIM-3発現を分析した。
図18A及び18Bに示すように、PD-1及びTIM-3の発現の低下に対する2つの同時に発現されたshRNAの種類の効果の分析は、shPD-1とshTIM-3を同時に発現しているCD19-CAR-T細胞で観察されたPD-1及びTIM-3発現の低下の程度は、shPD-1またはshTIM-3のみが発現しているCD19-CAR-T細胞における低下の程度に類似することを示した。
【0308】
本明細書で作製された二重KD CAR-T細胞の分化に対する影響を測定した。二重KD CAR-T細胞のPD-1及びTIM-3の分化の程度を観察するために、CD45RA及びCCR7標的抗体を用いてフローサイトメトリーを実施した。
図19に示すように、反復抗原刺激に供された
ΔLNGFR-CART19/shPD-1細胞では、
ΔLNGFR-CART19/shGFPと比べて最終分化したTEMRA(CCR7-CD45RA+)T細胞の増加がある。一方、shTIM-3が加えられている
ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6は、
ΔLNGFR-CART19/shPD-1よりも多くのTN(CCR7+CD45RA+)T細胞、TCM(CCR7+CD45RA-)T細胞及びTEM(CCR7-CD45RA-)T細胞のサブタイプを含む。同様の結果が
ΔLNGFR-CART19/shTIM-3細胞でも同様に観察されるので、TIM-3の発現の抑制に起因して
ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6細胞の低下した分化能が生じると言え、したがってshTIM-3の効果はshPD-1の効果よりも細胞分化に対する影響を有するという点で優先されていると言うことができる。あまり分化していないT細胞サブタイプがT細胞のがん治療能力の向上を促進できることが知られているので、
ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6細胞は
ΔLNGFR-CART19/shPD-1細胞よりも良好な生体内の抗がん効率を示すであろうことが期待される。
【0309】
異なる方向のshRNAカセットを含むCD19-CARベクターが導入されている二重KD CAR-T細胞の形質導入効率、増殖能力、及び生存率を比較した。本明細書で作製されたCAR-T細胞のうち、→←方向(mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6)及び←→方向(shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1)のカセットを含むプラスミドを用いた細胞についてLNTFR抗体を用いてフローサイトメトリーを実施した。細胞生存率解析については、トリパンブルー染色を行い、染色されなかった細胞の割合を求めた。
図20A~20Cに示すように、→←方向カセット(
ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6)を用いた細胞と比べて、←→方向カセット(
ΔLNGFR-CART19/shTIM-3-mU6←→hU6-shPD-1)を用いた細胞は、形質導入細胞を形成するのに予想外に苦労し、形質導入されたT細胞は低い増殖能力と生存能力を有した。
【0310】
この実施例は、二重KD CAR-T細胞を作製する方法を記載しており、その際、shPD-1、shTIM-3、及びCD19-CARは同時に発現させる。←→または→←方向で入る2種類のshRNAカセットを有する、本明細書で作製した1つで2つの機能があるレンチウイルスベクターを用いて、二重KD CAR-T細胞を作製した。←→方向カセットを用いた細胞と比較すると、→←方向カセットを用いた細胞(ΔLNGFR-CART19/mU6-shTIM-3→←shPD-1-hU6)は驚くほど高い増殖能力と生存能力を示したので、以下の実施例で使用された。
【0311】
実施例9:1つで2つの機能がある二重ベクター及び二重KD CAR-T細胞の作製方法
この実施例は、1つで2つの機能があるベクター及び二重KD CAR-T細胞の作製方法を記載している。
【0312】
異なるプロモーター(mU6とhU6)によって2つのshRNAを発現する1つで2つの機能がある二重ベクターを生成するために、BstZ171-Xba1-Nde1-Bmt1-Spe1のマルチクローニング部位(MCS)をhU6プロモーターの下流でpLV-hU6-shPD-1_
ΔLNGFR-CD19-BBzベクターに挿入した。2番目のmU6-shRNAカセット断片をMCSにサブクローニングした。複数の免疫チェックポイントの遮断をCAR-T細胞のみに限定するために、1つで2つの機能があるベクターを考案してmU6及びhU6のPol IIIプロモーターによって2つのshRNAを発現させ、CAR-T細胞の2つの免疫チェックポイントの発現を抑制した。CTLA-4、LAG-3、TIGIT、またはTIM-3を標的とする効果的なsiRNAを見つけるために、CD3/CD28で刺激したT細胞にsiRNAをエレクトロポレーションで導入した。2以上の有効なsiRNAを選択した(
図21A)。CTLA-4、LAG-3、TIGIT、またはTIM-3 KD CAR-T細胞のための1つで2つの機能があるベクターは、21塩基長のsiRNAをshRNA形式に変換することによって構築され、最終的に各免疫チェックポイントを標的とするshRNA(shCTLA-4:#1;shLAG-3:#1278;shTIGIT:#739;shTIM-3:#3)を選択したが、それらは発現を有意に抑制し、CAR-Tの増殖にあまり影響を与えない(
図21B~C)。最終的に、1つで2つの機能がある二重ベクターによってPD-1_CTLA-4、PD-1_LAG-3、PD-1_TIGIT、またはPD-1_TIM-3のCAR-T細胞が構築された(
図22A~22E)。二重KD CAR-T細胞はすべて、単一のPD-1 KD CAR-T細胞と比較してあまり増殖しなかった(
図22C)。これらの結果は、単一のKD CAR-T細胞でも観察された(
図21B)。
【0313】
この実施例では、1つで2つの機能がある二重ベクターが作製された。1つで2つの機能がある二重ベクターを用いて二重KD CAR-T細胞を作製し、その治療可能性を、以下の実施例におけるCD19+PDL1+血液腫瘍を担う生体内マウスモデル及び固形腫瘍モデルにてさらに評価した。
【0314】
実施例10:PD-1及びTIGITを標的とする二重KD CAR-T細胞を用いたCD19+血液がんの生体内での治療方法
この実施例は、以下の組み合わせ、PD-1とCTLA-4、PD-1とLAG-3、PD-1とTIGIT、及びPD-1とTIM-3を含む2つの免疫チェックポイントを標的とする二重KD CAR-T細胞を用いて生体内でCD19+血液がんを治療する方法を記載している。
【0315】
CD19+血液腫瘍モデルは実施例3に記載されているように確立された。血液CD19
+B-ALLモデルに対するPD-1_CTLA-4、PD-1_LAG-3、PD-1_TIGIT、またはPD-1_TIM-3 KD CAR-T細胞の抗腫瘍効果を評価した。各CAR-T細胞は、標的細胞注入の5日後、1×10
6個の単回用量で注射した。PD-1_TIGIT KD CAR-T細胞は、他の二重KD CAR-T細胞と比べて驚くほど優れた抗腫瘍効果を示すことが見いだされた(
図23)。したがって、固形腫瘍モデルにおけるPD-1_TIGIT KD CAR-T細胞を以下の実施例でさらに評価した。
【0316】
実施例11:PD-1及びTIGITを標的とする二重KDのCAR-T細胞を用いた固形腫瘍モデルにおける治療方法。
この実施例は、PD-1及びTIGITを標的とする二重KDのCAR-T細胞を用いた固形腫瘍モデルにおけるがんの治療方法を記載している。
【0317】
固形腫瘍モデルを確立するために、4~6週齢のNSGマウスに5×10
6個のIM-9細胞(CD19
+PD-L1
+CD155
+)を皮下注射した。いったん腫瘍が150~250mm
3の体積に達すると、CAR-T細胞を3×10
6個の単回用量で静脈内注射した。腫瘍はキャリパー測定によって毎週モニターし、体積は(長さ×幅
2)/2によって推定した。血液腫瘍モデル(Nalm-6-PDL1)に示されているように、PD-1_TIGIT KD CAR-T細胞も固形腫瘍モデル(IM-9)に対して最も驚くほど効果的であった(
図24)。細胞固有のPD-1_TIGITの遮断はPD-1の遮断よりも予想外に高いレベルの抗腫瘍効果を有する。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
ベクターであって、
免疫細胞の機能を弱める少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害する2種類の短ヘアピンRNA(shRNA)をコードする塩基配列と、
キメラ抗原受容体(CAR)またはモノクローナルT細胞受容体(mTCR)をコードする塩基配列とを含む、前記ベクター。
(態様2)
前記2種類のshRNAの発現は、それらが2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節されることを特徴とする態様1に記載のベクター。
(態様3)
前記2つのプロモーターがRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである態様2に記載のベクター。
(態様4)
前記2つのプロモーターが異なる種に由来するU6プロモーターである態様2に記載のベクター。
(態様5)
前記2つのプロモーターが前記ベクター上で互いに異なる方向に向けられる態様2に記載のベクター。
(態様6)
免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドである態様1に記載のベクター。
(態様7)
前記免疫チェックポイントの受容体またはリガンドが、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される態様6に記載のベクター。
(態様8)
免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、FAS、CD45、PP2A、SHIP1、SHIP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、CD147、LRR1、TGFBR1、IL10Rアルファ、KLGR1、DNMT3A及びA2aRから成る群から選択される態様1に記載のベクター。
(態様9)
前記2種類のshRNAが免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的とする、または前記2種類のshRNAが免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とする態様1に記載のベクター。
(態様10)
前記2種類のshRNAがPD-1を標的とする態様1に記載のベクター。
(態様11)
前記2種類のshRNAのうち、(i)一方のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIM-3を標的とする、または(ii)一方のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIGITを標的とする、態様1に記載のベクター。
(態様12)
前記2種類のshRNAのうち、一方のshRNAをコードする前記塩基配列が配列番号2~219から成る群から選択される配列を含み、第2のshRNAをコードする前記塩基配列が配列番号2~219から成る群から選択される異なる配列を含む態様1に記載のベクター。
(態様13)
前記CARまたはmTCRの前記標的が、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境における発現の上昇を示すヒト腫瘍抗原である、またはがん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境に見られる抗原の変異した形態である態様1に記載のベクター。
(態様14)
前記ベクターが配列番号220または221の塩基配列を含む態様1に記載のベクター。
(態様15)
前記ベクターが、プラスミドベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである態様1に記載のベクター。
(態様16)
態様1に記載のベクターを含む免疫細胞であって、1以上の遺伝子の発現がshRNAの非存在下での発現のそれよりも40%以下に低下する、前記免疫細胞。
(態様17)
前記免疫細胞がヒト由来のT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である態様16に記載の免疫細胞。
(態様18)
態様1~17のいずれか1項に記載の免疫細胞を含む医薬組成物。
(態様19)
前記免疫細胞がもともと患者から得られる、免疫療法を必要とする前記患者の治療のための態様18に記載の医薬組成物。
(態様20)
前記患者が、前記免疫細胞で発現される前記CARまたはmTCRの前記標的及び/または前記標的のレベルの上昇または変動が検出される腫瘍またはがんを有する態様19に記載の医薬組成物。
(態様21)
免疫細胞であって、標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体と、前記免疫細胞の機能を弱める遺伝子の前記免疫細胞における発現を低下させるまたは低下させることができる遺伝子破壊剤とを含む、前記免疫細胞。
(態様22)
前記遺伝子操作された抗原受容体がキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である態様21に記載の免疫細胞。
(態様23)
前記遺伝子操作された抗原受容体がCARである態様22に記載の免疫細胞。
(態様24)
前記CARが、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む態様23に記載の免疫細胞。
(態様25)
前記CARの前記細胞外抗原認識ドメインが前記標的抗原に特異的に結合する態様24に記載の免疫細胞。
(態様26)
前記CARの前記細胞内シグナル伝達ドメインがCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む態様24に記載の免疫細胞。
(態様27)
前記CARの前記細胞内シグナル伝達ドメインが共刺激分子をさらに含む態様26に記載の免疫細胞。
(態様28)
前記共刺激分子がICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27、及びCD28から成る群から選択される態様27に記載の免疫細胞。
(態様29)
前記共刺激分子がCD137(4-1BB)である態様28に記載の免疫細胞。
(態様30)
前記共刺激分子がCD28である態様28に記載の免疫細胞。
(態様31)
前記遺伝子操作された抗原受容体がTCRである態様22に記載の免疫細胞。
(態様32)
前記TCRがモノクローナルTCR(mTCR)である態様31に記載の免疫細胞。
(態様33)
前記標的抗原ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で発現される態様31または32に記載の免疫細胞。
(態様34)
前記標的抗原が、5T4(栄養膜糖タンパク質)、707-AP、9D7、AFP(α-フェトプロテイン)、AlbZIP(アンドロゲン誘導のbZIP)、HPG1(ヒト前立腺特異的遺伝子-1)、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(ADPリボシルトランスフェラーゼ-4)、B7H4(v-セットドメイン含有T-細胞活性化阻害剤1)、BAGE-1(Bメラノーマ抗原-1)、BCL-2(B-細胞 CLL/リンパ腫-2)、BING-4(WD反復ドメイン46)、CA15-3/CA27-29(ムチン1)、CA19-9(がん抗原19-9)、CA72-4(がん抗原72-4)、CA125(がん抗原125)、カルレチクリン、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19(分化抗原群19)、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原SG8)、CLCA2(塩化物チャネルアクセサリー2)、CML28(慢性骨髄性白血病腫瘍抗原28)、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、CT-9/BRD6(がん/精巣抗原9)、Cten(c-末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1(チトクロームp450ファミリー1サブファミリーbメンバー1)、DAM-10/MAGE-B1(メラノーマ関連抗原B1)、DAM-6/MAGE-B2、EGFR/Her1(表皮増殖因子受容体)、EMMPRIN(ベイシジン)、EpCam、EphA2(EPH受容体A2)、EphA3、ErbB3(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3)、EZH2(zeste2ポリコーム抑制性複合体2サブユニットのエンハンサー)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原-1)、G250/CAIX(炭酸脱水酵素9)、GAGE-1(G抗原-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7b、GAGE-8、GDEP(前立腺にて差次的に発現される遺伝子)、GnT-V(グルコン酸キナーゼ)、gp100(メラニン細胞系列特異的抗原GP100)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(らせん抗原)、HAST-2(スルホトランスフェラーゼファミリー1Aメンバー1)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2)、HERV-K-MEL、HNE(メデュラシン)、ホメオボックスNKX3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPVE7、HST-2(シルツイン-2)、hTERT、iCE(カスパーゼ1)、IGF-1R(インスリン様増殖因子-1受容体)、IL-13Ra2(インターロイキン-13受容体サブユニットα2)、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-5(インターロイキン-5)、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205(リソホスファチジルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)、KK-LC-1(北九州肺癌抗原-1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原ファミリーメンバー-1)、リビン、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGEA2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-B1、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGEB17、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2(メラノーマ抗原ファミリーL2)、ママグロビンA、MART-1/Melan-A(T-細胞-1によって認識されるメラノーマ抗原)、MART-2、マトリクスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、メソテリン、MG50/PXDN(ペルオキシダシン)、MMP11(マトリクスメタロプロテイナーゼ11)、MN/CA IX-抗原(炭酸脱水酵素9)、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質-3)、MUC1(ムチン1)、MUC2、NA88-A(VENT様ホメオボックス2偽遺伝子1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP(前立腺で発現される新しい遺伝子)、NMP22(核マトリクスタンパク質22)、NPM/ALK(ヌクレオホスミン)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1、NY-ESO-B、OA1(変形性関節症QTL1)、OFA-iLRP(がん胎児性抗原未成熟ラミニン受容体タンパク質)、OGT(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)、OS-9(小胞体レクチン)、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(CDK阻害剤2B)、p53、PAGE-4(P抗原ファミリーメンバー-4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PAI-2、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、PART-1(前立腺アンドロゲン調節転写物1)、PATE(前立腺及び精巣で発現された1)、PDEF(前立腺由来のEts因子)、Pim-1-キナーゼ(プロウイルス組み込み部位1)、Pin1(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼNIMA-相互作用1)、POTE(前立腺、卵巣、精巣、及び胎盤で発現される)、PRAME(メラノーマで優先的に発現される抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSGR(前立腺特異的G-タンパク質共役受容体)、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE-1(腎腫瘍癌腫抗原)、RHAMM/CD168、RU1(腎遍在タンパク質1)、RU2、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(T-細胞-1によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原)、SART-2、SART-3、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(SSXファミリーメンバー1)、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1(STEAP2 メタロレダクターゼ)、STEAP、サバイビン、サバイビン-213、TA-90(腫瘍関連抗原-90)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARP(TCRγ代替リーディングフレームタンパク質)、TGFb(形質転換増殖因子β)、TGFbR11(形質転換増殖因子β受容体11)、TGM-4(トランスグルタミナーゼ4)、TRAG-3(タキソール耐性関連遺伝子3)、TRG(T-細胞受容体γ遺伝子座)、TRP-1(一過性受容体ポテンシャル-1)、TRP-2/6b、TRP-2/INT2、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(U-プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子A)、VEGFR-2/FLK-1、及びWT1(ウィルムス腫瘍1)から成る群から選択される態様33に記載の免疫細胞。
(態様35)
前記標的抗原がCD19またはCD22である、態様35に記載の免疫細胞。
(態様36)
前記標的抗原がCD19である態様36に記載の免疫細胞。
(態様37)
前記標的抗原ががん抗原であり、前記がん抗原が、その発現ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で増加するがん抗原である態様34~36のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様38)
前記標的抗原が、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl、ベータ-カテニン/m、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN、EFTUD2/m、ELF2/m、ETV6-AML1、FN1/m、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラス1/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARa、PRDX5/m、PTPRX/m、RBAF600/m、SIRT2/m、SYTSSX-1、SYT-SSX-2、TEL-AML1、TGFbRII、及びTPI/mから成る群から選択され、その際、前記標的抗原はがん抗原であり、前記がん抗原は、がん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面上で発現される抗原の変異した形態である態様33に記載の免疫細胞。
(態様39)
前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現が、以下:
(i)前記免疫細胞の増殖の阻害、
(ii)前記免疫細胞の細胞死の誘導、
(iii)前記免疫細胞が前記標的抗原を認識する及び/または活性化される能力の阻害、
(iv)前記標的抗原に対する免疫応答を誘導しない細胞への前記免疫細胞の分化の誘導、
(v)前記免疫細胞の免疫応答を促進する分子に対する前記免疫細胞の反応の低下、または
(vi)前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応の上昇の1以上を引き起こす態様21~38のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様40)
前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK、2B4、FAS、CD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c、CD148、LRR1、TGFBR1、IL10RA、KLGR1、DNMT3A、及びA2aRから成る群から選択される態様39に記載の免疫細胞。
(態様41)
前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める態様39に記載の免疫細胞。
(態様42)
前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める前記遺伝子が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする態様41に記載の免疫細胞。
(態様43)
前記免疫チェックポイントの受容体またはリガンドが、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される態様42に記載の免疫細胞。
(態様44)
前記遺伝子破壊剤が、前記遺伝子破壊剤の非存在下での前記免疫細胞と比べて、前記免疫細胞の機能を弱める前記免疫細胞における遺伝子の発現を少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または95%低下させる態様21~43のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様45)
前記遺伝子破壊剤が、前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める遺伝子の発現を低下させる態様44に記載の免疫細胞。
(態様46)
前記遺伝子破壊剤が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする遺伝子の発現を低下させる態様45に記載の免疫細胞。
(態様47)
前記遺伝子破壊剤が、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される遺伝子の発現を低下させる態様46に記載の免疫細胞。
(態様48)
前記遺伝子破壊剤が、RNA干渉(RNAi)によって前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現を低下させる態様45~47のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様49)
1を超える遺伝子破壊剤が、RNAiによって前記免疫細胞における前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現を低下させる態様48に記載の免疫細胞。
(態様50)
前記遺伝子破壊剤が、前記免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的とする、または異なる遺伝子破壊剤が前記免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とし、例えば、第1の遺伝子破壊剤は第1の遺伝子を標的とし、第2の遺伝子破壊剤は第2の遺伝子を標的とする態様49に記載の免疫細胞。
(態様51)
前記RNAiには短ヘアピンRNA(shRNA)が介在する態様48~50のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様52)
前記RNAiには1を超えるshRNAが介在する態様51に記載の免疫細胞。
(態様53)
前記RNAiには2つのshRNAが介在する態様52に記載の免疫細胞。
(態様54)
2つのshRNAがPD-1を標的とする態様52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様55)
第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIM-3を標的とする態様52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様56)
第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがCTLA-4を標的とする態様52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様57)
第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがLAG-3を標的とする態様52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様58)
第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIGITを標的とする態様52~53のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様59)
前記免疫細胞がshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む態様51~58のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様60)
前記免疫細胞が1を超えるshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む態様59に記載の免疫細胞。
(態様61)
前記免疫細胞が2つのshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む態様59に記載の免疫細胞。
(態様62)
前記shRNA(複数可)をコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号2~219及び238~267から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む態様59~61のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様63)
前記shRNA(複数可)をコードする前記ヌクレオチド配列がベクター上に存在する態様59~62のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様64)
異なるshRNAの発現が異なるプロモーターによって調節される態様63のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様65)
2つの異なるshRNAの発現が2つの異なるプロモーターによって調節される態様64に記載の免疫細胞。
(態様66)
前記2つの異なるプロモーターがRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである態様65に記載の免疫細胞。
(態様67)
前記2つのプロモーターがU6プロモーターである態様66に記載の免疫細胞。
(態様68)
前記U6プロモーターが異なる種に由来する態様67に記載の免疫細胞。
(態様69)
前記2つのプロモーターが互いに異なる方向に向けられる態様65~68のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様70)
前記遺伝子操作された抗原受容体及び前記遺伝子破壊剤(複数可)がベクターからそれぞれ発現される態様21~69のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様71)
前記遺伝子操作された抗原受容体及び前記遺伝子破壊剤(複数可)が同一ベクターから発現される態様70に記載の免疫細胞。
(態様72)
前記ベクターがプラスミドベクターまたはウイルスベクターである態様70~71のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様73)
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである態様72に記載の免疫細胞。
(態様74)
前記レンチウイルスベクターがレトロウイルスベクターである態様73に記載の免疫細胞。
(態様75)
前記免疫細胞がT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞から成る群から選択される態様21~74のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様76)
前記免疫細胞がT細胞である態様75に記載の免疫細胞。
(態様77)
前記T細胞がCD4+T細胞またはCD8+T細胞である態様76に記載の免疫細胞。
(態様78)
前記免疫細胞が2つのshRNA及びCARまたはmTCRをコードするヌクレオチド配列を同一ベクター上で含む態様76または77のいずれかに記載の免疫細胞。
(態様79)
前記2つのshRNAが互いに異なる方向に向けられた2つの異なるRNAポリメラーゼIIIのプロモーターによってそれぞれ調節される態様78に記載の免疫細胞。
(態様80)
前記CARがCD19を標的とし、前記第1のshRNAがPD-1を標的とし、前記第2のshRNAがTIGITを標的とする態様79に記載の免疫細胞。
(態様81)
免疫細胞を作り出す方法であって、
(1)標的抗原に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体をコードする遺伝子と、
(2)遺伝子破壊剤またはその発現が前記免疫細胞の機能を弱める遺伝子の前記免疫細胞における発現を低下させる、または低下させることができる遺伝子破壊剤とを同時または任意の順序で連続的に前記免疫細胞に導入することを含み、
それによって、遺伝子操作された抗原受容体が発現され、前記免疫細胞の機能を弱める遺伝子の発現が低減される前記免疫細胞を作り出す、前記方法。
(態様82)
前記遺伝子操作された抗原受容体がキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)である態様81に記載の方法。
(態様83)
前記遺伝子操作された抗原受容体がCARである態様82に記載の方法。
(態様84)
前記CARが、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む態様83に記載の方法。
(態様85)
前記CARの前記細胞外抗原認識ドメインが前記標的抗原に特異的に結合する態様84に記載の方法。
(態様86)
前記CARの前記細胞内シグナル伝達ドメインがCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む態様84に記載の方法。
(態様87)
前記CARの前記細胞内シグナル伝達ドメインが共刺激分子をさらに含む態様86に記載の方法。
(態様88)
前記共刺激分子がICOS、OX40、CD137(4-1BB)、CD27、及びCD28から成る群から選択される態様87に記載の方法。
(態様89)
前記共刺激分子がCD137(4-1BB)である態様88に記載の方法。
(態様90)
前記共刺激分子がCD28である態様88に記載の方法。
(態様91)
前記遺伝子操作された抗原受容体がTCRである態様82に記載の方法。
(態様92)
前記TCRがモノクローナルTCR(mTCR)である態様91に記載の方法。
(態様93)
前記標的抗原ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で発現される態様81~92のいずれかに記載の方法。
(態様94)
前記標的抗原が、5T4(栄養膜糖タンパク質)、707-AP、9D7、AFP(α-フェトプロテイン)、AlbZIP(アンドロゲン誘導のbZIP)、HPG1(ヒト前立腺特異的遺伝子-1)、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(ADPリボシルトランスフェラーゼ-4)、B7H4(v-セットドメイン含有T-細胞活性化阻害剤1)、BAGE-1(Bメラノーマ抗原-1)、BCL-2(B-細胞 CLL/リンパ腫-2)、BING-4(WD反復ドメイン46)、CA15-3/CA27-29(ムチン1)、CA19-9(がん抗原19-9)、CA72-4(がん抗原72-4)、CA125(がん抗原125)、カルレチクリン、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19(分化抗原群19)、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原SG8)、CLCA2(塩化物チャネルアクセサリー2)、CML28(慢性骨髄性白血病腫瘍抗原28)、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、CT-9/BRD6(がん/精巣抗原9)、Cten(c-末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1(チトクロームp450ファミリー1サブファミリーbメンバー1)、DAM-10/MAGE-B1(メラノーマ関連抗原B1)、DAM-6/MAGE-B2、EGFR/Her1(表皮増殖因子受容体)、EMMPRIN(ベイシジン)、EpCam、EphA2(EPH受容体A2)、EphA3、ErbB3(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3)、EZH2(zeste2ポリコーム抑制性複合体2サブユニットのエンハンサー)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原-1)、G250/CAIX(炭酸脱水酵素9)、GAGE-1(G抗原-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7b、GAGE-8、GDEP(前立腺にて差次的に発現される遺伝子)、GnT-V(グルコン酸キナーゼ)、gp100(メラニン細胞系列特異的抗原GP100)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(らせん抗原)、HAST-2(スルホトランスフェラーゼファミリー1Aメンバー1)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(Erb-B2受容体チロシンキナーゼ2)、HERV-K-MEL、HNE(メデュラシン)、ホメオボックスNKX3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPVE7、HST-2(シルツイン-2)、hTERT、iCE(カスパーゼ1)、IGF-1R(インスリン様増殖因子-1受容体)、IL-13Ra2(インターロイキン-13受容体サブユニットα2)、IL-2R(インターロイキン-2受容体)、IL-5(インターロイキン-5)、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205(リソホスファチジルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)、KK-LC-1(北九州肺癌抗原-1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原ファミリーメンバー-1)、リビン、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGEA2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-B1、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGEB17、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2(メラノーマ抗原ファミリーL2)、ママグロビンA、MART-1/Melan-A(T-細胞-1によって認識されるメラノーマ抗原)、MART-2、マトリクスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、メソテリン、MG50/PXDN(ペルオキシダシン)、MMP11(マトリクスメタロプロテイナーゼ11)、MN/CA IX-抗原(炭酸脱水酵素9)、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質-3)、MUC1(ムチン1)、MUC2、NA88-A(VENT様ホメオボックス2偽遺伝子1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP(前立腺で発現される新しい遺伝子)、NMP22(核マトリクスタンパク質22)、NPM/ALK(ヌクレオホスミン)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1、NY-ESO-B、OA1(変形性関節症QTL1)、OFA-iLRP(がん胎児性抗原未成熟ラミニン受容体タンパク質)、OGT(O-GlcNAcトランスフェラーゼ)、OS-9(小胞体レクチン)、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(CDK阻害剤2B)、p53、PAGE-4(P抗原ファミリーメンバー-4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1)、PAI-2、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、PART-1(前立腺アンドロゲン調節転写物1)、PATE(前立腺及び精巣で発現された1)、PDEF(前立腺由来のEts因子)、Pim-1-キナーゼ(プロウイルス組み込み部位1)、Pin1(ペプチジル-プロリルcis-transイソメラーゼNIMA-相互作用1)、POTE(前立腺、卵巣、精巣、及び胎盤で発現される)、PRAME(メラノーマで優先的に発現される抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSGR(前立腺特異的G-タンパク質共役受容体)、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE-1(腎腫瘍癌腫抗原)、RHAMM/CD168、RU1(腎遍在タンパク質1)、RU2、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(T-細胞-1によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原)、SART-2、SART-3、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(SSXファミリーメンバー1)、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1(STEAP2メタロレダクターゼ)、STEAP、サバイビン、サバイビン-213、TA-90(腫瘍関連抗原-90)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARP(TCRγ代替リーディングフレームタンパク質)、TGFb(形質転換増殖因子β)、TGFbR11(形質転換増殖因子β受容体11)、TGM-4(トランスグルタミナーゼ4)、TRAG-3(タキソール耐性関連遺伝子3)、TRG(T-細胞受容体γ遺伝子座)、TRP-1(一過性受容体ポテンシャル-1)、TRP-2/6b、TRP-2/INT2、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(U-プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子A)、VEGFR-2/FLK-1、及びWT1(ウィルムス腫瘍1)から成る群から選択される態様93に記載の方法。
(態様95)
前記標的抗原がCD19またはCD22である態様95に記載の方法。
(態様96)
前記標的抗原がCD19である態様96に記載の方法。
(態様97)
前記標的抗原ががん抗原であり、前記がん抗原はその発現ががん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたはその表面で増加する抗原である態様94~96のいずれかに記載の方法。
(態様98)
前記標的抗原が、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl、ベータ-カテニン/m、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN、EFTUD2/m、ELF2/m、ETV6-AML1、FN1/m、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラス1/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARa、PRDX5/m、PTPRX/m、RBAF600/m、SIRT2/m、SYTSSX-1、SYT-SSX-2、TEL-AML1、TGFbRII、及びTPI/mから成る群から選択され、その際、前記標的抗原はがん抗原であり、前記がん抗原はがん細胞、がん組織及び/または腫瘍微小環境の中でまたは表面上で発現される抗原の変異した形態である態様93に記載の方法。
(態様99)
前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現が、以下:
(i)前記免疫細胞の増殖の阻害、
(ii)前記免疫細胞の細胞死の誘導、
(iii)前記免疫細胞が前記標的抗原を認識する及び/または活性化される能力の阻害、
(iv)前記標的抗原に対する免疫応答を誘導しない細胞への前記免疫細胞の分化の誘導、
(v)前記免疫細胞の免疫応答を促進する分子に対する前記免疫細胞の反応の低下、または
(vi)前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応の上昇の1以上を引き起こす態様81~98のいずれかに記載の方法。
(態様100)
前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK、2B4、FAS、CD45、PP2A、SHP1、SHP2、DGKアルファ、DGKゼータ、Cbl-b、Cbl-c、CD148、LRR1、TGFBR1、IL10RA、KLGR1、DNMT3A、及びA2aRから成る群から選択される態様99に記載の方法。
(態様101)
前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子が、前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める態様99に記載の方法。
(態様102)
前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める前記遺伝子が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする態様101に記載の方法。
(態様103)
前記免疫チェックポイントの受容体またはリガンドが、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される態様102に記載の方法。
(態様104)
前記遺伝子破壊剤が前記遺伝子破壊剤(複数可)の非存在下での前記免疫細胞と比べて、前記免疫細胞の機能を弱める前記免疫細胞における遺伝子の前記発現を少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または95%低下させる態様81~103のいずれかに記載の方法。
(態様105)
前記遺伝子破壊剤が、前記免疫細胞の免疫応答を抑制する分子に対する前記免疫細胞の反応を高める遺伝子の発現を低下させる態様104に記載の方法。
(態様106)
前記遺伝子破壊剤が免疫チェックポイントの受容体またはリガンドをコードする遺伝子の発現を低下させる態様105に記載の方法。
(態様107)
前記遺伝子破壊剤が、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(CEACAM-1、CEACAM-3またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、CD96、MerTK及び2B4から成る群から選択される遺伝子の発現を低下させる態様106に記載の方法。
(態様108)
前記遺伝子破壊剤が、RNA干渉(RNAi)によって前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現を低下させる態様105~107のいずれかに記載の方法。
(態様109)
1を超える遺伝子破壊剤が、RNAiによって前記免疫細胞における前記免疫細胞の機能を弱める前記遺伝子の発現を低下させる態様108に記載の方法。
(態様110)
前記遺伝子破壊剤が前記免疫細胞の機能を弱める単一の遺伝子を標的とする、または前記免疫細胞の機能を弱める異なる遺伝子を標的とし、第1の遺伝子破壊剤は第1の遺伝子を標的とし、第2の遺伝子破壊剤は第2の遺伝子を標的とし、またはそれらの任意の組み合わせで標的とする態様109に記載の方法。
(態様111)
前記RNAiには短ヘアピンRNA(shRNA)が介在する態様108~110のいずれかに記載の方法。
(態様112)
前記RNAiには1を超えるshRNAが介在する態様111に記載の方法。
(態様113)
前記RNAiには2つのshRNAが介在する態様112に記載の方法。
(態様114)
2つのshRNAがPD-1を標的とする態様112または113に記載の方法。
(態様115)
第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIM-3を標的とする態様112または113に記載の方法。
(態様116)
第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがCTLA-4を標的とする態様112または113に記載の方法。
(態様117)
第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがLAG-3を標的とする態様112または113に記載の方法。
(態様118)
第1のshRNAがPD-1を標的とし、第2のshRNAがTIGITを標的とする態様112または113に記載の方法。
(態様119)
前記免疫細胞がshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む態様111~118のいずれかに記載の方法。
(態様120)
前記免疫細胞が1を超えるshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む態様119に記載の方法。
(態様121)
前記免疫細胞が2つのshRNAをコードするヌクレオチド配列を含む態様119に記載の方法。
(態様122)
前記shRNA(複数可)をコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号2~219及び238~267から成る群から選択される配列を含む態様119~121のいずれかに記載の方法。
(態様123)
前記shRNAをコードする前記ヌクレオチド配列がベクター上に存在する態様119~122のいずれかに記載の方法。
(態様124)
異なるshRNAの発現が異なるプロモーターによってそれぞれ調節される態様123のいずれかに記載の方法。
(態様125)
2つの異なるshRNAの発現が2つの異なるプロモーターによってそれぞれ調節される態様124に記載の方法。
(態様126)
前記2つの異なるプロモーターがRNAポリメラーゼIIIのプロモーターである態様125に記載の方法。
(態様127)
前記2つのプロモーターがU6プロモーターである態様126に記載の方法。
(態様128)
前記U6プロモーターが異なる種に由来する態様127に記載の方法。
(態様129)
前記2つのプロモーターが互いに異なる方向に向けられる態様125~128のいずれかに記載の方法。
(態様130)
前記遺伝子操作された抗原受容体及び前記遺伝子破壊剤(複数可)がベクターからそれぞれ発現される態様81~129のいずれかに記載の方法。
(態様131)
前記遺伝子操作された抗原受容体及び前記遺伝子破壊剤(複数可)が同一ベクターから発現される態様130に記載の方法。
(態様132)
前記ベクターが、プラスミドベクターまたはウイルスベクターである態様130~131のいずれかに記載の方法。
(態様133)
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである態様132に記載の方法。
(態様134)
前記レンチウイルスベクターがレトロウイルスベクターである態様133に記載の方法。
(態様135)
前記免疫細胞がT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞から成る群から選択される態様81~134のいずれかに記載の方法。
(態様136)
前記免疫細胞がT細胞である態様135に記載の方法。
(態様137)
前記T細胞がCD4+T細胞またはCD8+T細胞である態様136に記載の方法。
(態様138)
前記免疫細胞が2つのshRNA及びCARをコードするヌクレオチド配列を同一ベクター上で含む態様136または137に記載の方法。
(態様139)
前記2つのshRNAが互いに異なる方向に向けられた2つの異なるRNAポリメラーゼIIIのプロモーターによってそれぞれ調節される態様138に記載の方法。
(態様140)
前記CARがCD19を標的とし、前記第1のshRNAがPD-1を標的とし、前記第2のshRNAがTIGITを標的とする態様139に記載の方法。
(態様141)
態様21~80のいずれかに記載の免疫細胞を含む組成物。
(態様142)
態様21~80のいずれかに記載の免疫細胞と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
(態様143)
免疫療法を必要とする疾患または状態を有する対象に態様21~80のいずれかに記載の免疫細胞または態様141もしくは142に記載の組成物を投与することを含む治療方法。
(態様144)
前記遺伝子操作された抗原受容体が前記疾患または前記状態に関連する抗原に特異的に結合する態様143に記載の方法。
(態様145)
前記疾患または前記状態ががん、例えば腫瘍である態様143または144に記載の方法。
(態様146)
疾患または状態の治療に使用するための態様21~80のいずれかに記載の免疫細胞または態様141~142に記載の組成物。
(態様147)
疾患または状態を治療するための薬物の製造における態様21~80のいずれかに記載の免疫細胞または態様121~122に記載の組成物の使用。
(態様148)
前記遺伝子操作された抗原受容体が前記疾患または前記状態に関連する抗原に特異的に結合する態様146に記載の免疫細胞もしくは組成物または態様147に記載の使用。
(態様149)
前記疾患または前記状態ががん、例えば腫瘍である、態様147または148に記載の使用、組成物、または免疫細胞。
【配列表】