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特許7068507電力供給システム、及び電力供給システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】電力供給システム、及び電力供給システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220509BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020567301
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2019002108
(87)【国際公開番号】W WO2020152808
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
(72)【発明者】
【氏名】橘高 大悟
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特許第3543068(JP,B2)
【文献】特開2003-111283(JP,A)
【文献】特開2002-101563(JP,A)
【文献】特開2013-207970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に供給する電力の分配特性に従い電力を供給する複数の第1電力変換部と、
前記複数の第1電力変換部それぞれの出力周波数に対する有効電力の変化率を前記分配特性に対応させ、前記変化率に基づき前記複数の第1電力変換部をそれぞれ制御する複数の制御装置と、
を備える、電力供給システム。
【請求項2】
前記電力の分配特性は、前記複数の第1電力変換部のそれぞれが第1母線に接続されるまでのインピーダンスに応じた電力の分配比率である、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記複数の制御装置それぞれは、制御対象となる前記第1電力変換部の出力電圧の振幅を無効電力と関連付けた特性に基づき出力させる、請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記負荷の接続される第1母線に並列接続される複数の第2母線のそれぞれに、前記複数の第1電力変換部が接続されており、
前記複数の第2母線のそれぞれに接続され、出力電力指令値を所定値とする複数の第2電力変換部を更に備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記複数の第2電力変換部に対する出力電力指令値を固定値、或いは時間経過に従い変化する可変値とする、請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記複数の第2電力変換部に対する出力電力指令値を生成する上位制御装置を更に備える、請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記複数の第2電力変換部に対する出力電力指令値を前記第2母線毎の出力電力に基づき生成する、請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記複数の第2電力変換部に対する出力電力指令値を前記第2母線毎の前記第1電力変換部の出力電力に基づき生成する、請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記複数の第1電力変換部及び前記複数の第2電力変換部は、インバータ電源である、請求項4乃至8のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項10】
負荷に供給する電力の分配特性に従い電力を供給する複数の第1電力変換部を備える電力供給システムの制御方法であって、
前記複数の第1電力変換部それぞれの出力周波数に対する有効電力の変化率を前記分配特性に対応させ、前記変化率に基づき前記複数の第1電力変換部をそれぞれ制御する電力供給システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力供給システム、及び電力供給システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、離島などの小規模な電力系統(オフグリッドシステム)において再生可能エネルギー電源の導入が進展している。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー電源はパワーエレクトロニクス技術を用いた電力変換器(インバータ)により交流系統に接続される。このような電源はインバータ電源と呼ばれる。また、再生可能エネルギーの出力変動を抑制するために設置される蓄電池などのシステムもインバータ電源に含まれる。
【0003】
このような電力系統の安定的な運転のためには、複数のインバータ電源の出力分担を維持しつつ、電力系統の電圧、周波数を確立する制御が必要とされる。このような制御として、電圧源モードで運転させた各インバータ電源の有効電力と電圧周波数の間にドループ特性を持たせる制御が知られている。そして、これらのドループ特性を統一化した有効電力と電圧周波数とのドループ特性に基づき、電力の分配制御が行われる。とこらが、インピーダンス特性が異なるノード間に各インバータ電源が接続されると、ノード間の電力供給量と統一化した有効電力と電圧周波数とのドループ特性のバランスが崩れてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3543068号公報
【文献】特許第4713996号公報
【文献】特許第5596086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、インピーダンス特性が異なるノード間に各インバータ電源が接続される場合に、インバータ電源の出力分担を維持しつつ、系統の電圧及び周波数の確立が可能である電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る水電力供給システムは、負荷に供給する電力の分配特性に従い電力を供給する複数の第1電力変換部と、前記複数の第1電力変換部それぞれの出力周波数に対する有効電力の変化率を前記分配特性に対応させ、前記変化率に基づき前記複数の第1電力変換部をそれぞれ制御する複数の制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インピーダンス特性が異なるノード間に各インバータ電源が接続される場合に、インバータ電源の出力分担を維持しつつ、系統の電圧及び周波数の確立ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電力供給システムの全体構成を示す図。
図2】電圧源として動作する際の制御装置の構成例を示す図。
図3】有効電力と周波数との関係を示す有効電力-周波数ドループ特性の図。
図4】遅れ無効電力と電圧との関係を示す無効電力-電圧ドループ特性の図。
図5】電流源として動作する際の制御装置の構成例を示す図。
図6】電力供給システムの動作例を示す図。
図7】第2実施形態に係る電力供給システムの全体構成を示す図。
図8】第2実施形態に係る制御装置の構成例を示す図。
図9】第3実施形態に係る電力供給システムの全体構成を示す図。
図10】第3実施形態に係る電力供給システムの動作例を示す図。
図11】第4実施形態に係る電力供給システムの全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る電力供給システム、及び電力供給システムの制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電力供給システム1の全体構成を示す図である。図1に示すように、電力供給システム1は、負荷100に電力を供給するインバータ系統であり、複数の分散型電源群10~10nと、複数の変圧器12~12nと、を備えている。図1には更に負荷100と、第1母線L1と、複数の第2母線L2~L2nと、複数のノードJ1~J1nと、複数のノードJ2~J2nとが図示されている。複数の第2母線L2~L2nは、複数のノードJ1~J1nを介して第1母線L1に並列接続される。
【0011】
分散型電源群10は、他の分散型電源群とは独立して電力を負荷100に供給可能な電源群である。この分散型電源群10は、第1インバータ電源14と、複数の第2インバータ電源16とを有する。
【0012】
第1インバータ電源14は、電圧源として動作する電源である。この第1インバータ電源14は、第1電力変換部14aと、電圧電流計測部14bと、制御装置14cとを有する。
【0013】
第1電力変換部14aは、例えばインバータであり、電源110(図2)から出力された電力を、第2母線L2を介して第1母線L1の電力系統に連系できる電力に変換する。例えば、第1電力変換部14aは、電源110(図2)から出力される直流電力を交流電力に変換する。なお、第1電力変換部14a~14anは、複数のノードJ2~J2nを介して第2母線L2~L2nに接続される。
【0014】
電圧電流計測部14bは、第1電力変換部14aが出力する電圧と電流とを計測する。この電圧電流計測部14bは、例えば計器用変流器及び計器用変圧器などで構成される。また、電圧電流計測部14bは、電圧計測値と電流計測値を制御装置14cに出力する。
【0015】
制御装置14cは、電圧電流計測部14bの計測値に基づき、第1電力変換部14aを制御する。制御装置14cの詳細は後述する。
【0016】
第2インバータ電源16は、電流源として動作する電源である。この第2インバータ電源16は、第2電力変換部16aと、電圧電流計測部16bと、制御装置16cとを有する。
【0017】
第2電力変換部16aは、例えばインバータであり、第1電力変換部14aと同等の構成を有する。すなわち、この第2電力変換部16aは、電源120(図5)から出力された電力を、第2母線L2を介して第1母線L1の電力系統に連系できる電力に変換する。
【0018】
電圧電流計測部16bは、電圧電流計測部14bと同等の構成である。すなわち、電圧電流計測部16bは、電圧計測値と電流計測値を制御装置16cに出力する。
【0019】
制御装置16cは、電圧電流計測部16bの計測値に基づき、第2電力変換部16aを制御する。制御装置16cの詳細は後述する。
【0020】
なお、複数の分散型電源群10~10nは、分散型電源群10と同等の構成を有するが、負荷100に供給する電力の分配特性が異なる。すなわち、負荷100に供給する電力は、複数の第1電力変換部14a~14anのそれぞれが第1母線に接続されるまでのインピーダンスに応じて分配される。すなわち、負荷100に供給する電力の分配特性は、第1母線に接続されるまでのインピーダンスに応じた電力の分配比率により規定される。分配比率の詳細も後述する。
【0021】
複数の変圧器12~12nは、複数の第2母線L2~L2nから供給される電力の電圧を第1母線L1の基準電圧に変換する。複数の第1電力変換部14a~14anのそれぞれが第1母線に接続されるまでのインピーダンスには、複数の変圧器12~12nのインピーダンスも含まれる。なお、第1母線L1に回転機型の分散型電源が接続されても良い。
【0022】
図2は、第1インバータ電源14が電圧源として動作する際の制御装置14cの構成例を示す図である。図2に示すように、制御装置14cは、有効・無効電力算出部20と、ドループ特性演算部21と、ゲートパルス生成部22とを有する。図2には、更に電源110が図示されている。電源110は、例えば太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギー電源などである。
【0023】
有効・無効電力算出部20は、電圧電流計測部14bが出力する電圧計測値及び電流計測値に基づき、第1電力変換部14aが出力する有効電力、及び無効電力の値を算出する。そして、有効・無効電力算出部20は、有効電力、及び無効電力の値をドループ特性演算部21へ出力する。
【0024】
ドループ特性演算部21は、有効・無効電力算出部20が演算した有効電力、及び無効電力の値を用いて、有効電力-周波数ドループ特性と、無効電力-電圧ドループ特性とに基づき、第1電力変換部14aの出力電圧波形を示す指令信号をゲートパルス生成部22に出力する。すなわち、ドループ特性演算部21は、出力電圧波形を示す指令信号として、電圧波形の位相、周波数、及び振幅の情報を含む信号を出力する。
【0025】
図3は、有効電力Pと周波数fとの関係を示す有効電力-周波数ドループ特性の例を示す図である。横軸は有効電力Pを示し、縦軸は周波数fを示す。特性線fp14は、第1電力変換部14aの有効電力-周波数ドループ特性を示し、特性線fp14nは、第1電力変換部14anの有効電力-周波数ドループ特性を示す。複数の第1電力変換部14a~14anの特性線fp14からfp14nは、負荷100に供給する電力の分配特性に応じて定められている。
【0026】
図3に示すように、ドループ特性演算部21は、有効・無効電力算出部20が演算した有効電力の値を用いて、出力電圧の周波数を算出する。すなわち、このドループ特性演算部21は、複数の第1電力変換部14a~14anの有効電力を増加させる場合には周波数を下げ、有効電力を減少させる場合には周波数を上げる。
【0027】
例えば周波数faを基準周波数である60ヘルツ又は50ヘルツとする。周波数faの場合の第1電力変換部14aの有効電力は有効電力Pa10であり、第1電力変換部14anの有効電力は有効電力Pa10nである。また、周波数fbの場合の第1電力変換部14aの有効電力は有効電力Pb10であり、第1電力変換部14anの有効電力は有効電力Pb10nである。
【0028】
この場合、第1電力変換部14aにおける有効電力の変化量P1は、(1)式で示される。また、第1電力変換部14anにおける有効電力の変化量P1nは、(2)式で示される。
P1=Pb10-Pa10 (1)
P1n=Pb10n-Pa10n (2)
【0029】
この場合、基準周波数faにおける有効電力からの変化量P1とP1nの比率は、(3)式で示すように、特性線fp14の傾きR1とfp14nの傾きR1nに基づいている。
P1:P1n=R1:R1n (3)
ここで、傾きR1と傾きR1nとは(4)、(5)式で示される。
R1=(Pb10-Pa10)/(fb-fa) (4)
R1n=(Pb10n-Pa10n)/(fb-fa) (5)
【0030】
これらから分かるように、基準周波数faにおける有効電力からの変化量P1とP1nの比率を(3)式で示す比率で維持すると、周波数の変化量は共にfb-faとなり、第1電力変換部14a、14anともに等しくなる。換言すると、変化量P1とP1nの比率を(3)式で示す比率で維持すると、第1電力変換部14a、14anへの指示周波数は等しくなる。すなわち、負荷100に供給する有効電力の分配特性を(3)式で示す比率で維持すると、第1電力変換部14a、14anを独立に制御しても出力電圧の周波数を等しくするこができる。
【0031】
負荷100に供給する有効電力の分配特性は、例えば複数のノードJ2~J2nから対応する複数のノードJ1~J1n間のインピーダンスの比に基づき定めることが可能である。これにより、複数の分散型電源群10~10nが独立した制御を行っても、複数の分散型電源群10~10nの出力電力の周波数は一致する。
【0032】
図4は、遅れ無効電力Qと電圧Vとの関係を示す無効電力-電圧ドループ特性の例を示す図である。横軸は遅れ無効電力Qを示し、縦軸は電圧Vを示す。特性線Vq14は、第1電力変換部14aの無効電力-電圧ドループ特性を示し、特性線Vq14nは、第1電力変換部14anの無効電力-電圧ドループ特性を示す。電圧Vaの場合の第1電力変換部14aの無効電力は無効電力Qa10であり、第1電力変換部14anの無効電力は無効電力Qa10nである。また、電圧Vbの場合の第1電力変換部14aの無効電力は無効電力Qb10であり、第1電力変換部14anの無効電力は無効電力Qb10nである。
【0033】
図4に示すように、ドループ特性演算部21は、有効・無効電力算出部20が演算した無効電力の値を用いて、出力電圧の電圧V、すなわち振幅を演算する。このドループ特性演算部21は、第1電力変換部14aの遅れ無効電力Qを増加させる場合には電圧Vを下げ、遅れ無効電力Qを減少させる場合には電圧Vを上げる。すなわち、ドループ特性演算部21は、遅れ無効電力Qが増加した場合には振幅を下げ、遅れ無効電力Qが減少した場合には振幅を上げる信号を出力する。なお、電圧波形の位相は有効電力P及び無効電力Qの値により演算される。
【0034】
図2に示すように、ゲートパルス生成部22は、ドループ特性演算部21から入力された電圧波形の位相、周波数、及び振幅の情報を含む指令信号に基づき、第1電力変換部14aに対するゲート信号を生成する。このゲート信号は、
第1電力変換部14aの出力電圧波形を変調する信号であり、例えば第1電力変換部14aにおける半導体スイッチのOn/Off信号である。また、この時の変調方法としては、例えばパルス幅変調(PWM変調)が用いられる。
【0035】
図5は、第2インバータ電源16が電流源として動作する際の制御装置16cの構成例を示す図である。図5に示すように、制御装置16cは、有効・無効電力算出部20と、ゲートパルス生成部22と、有効・無効電力制御部23と、電流制御装置24と、電圧制御装置25と、を備える。図2と同等の構成には同一の番号を付して、説明を省略する。
【0036】
有効・無効電力算出部20は、電圧電流計測部16bが出力する第2電力変換部16aの出力電圧計測値及び出力電流計測値に基づき、第2電力変換部16aが出力する有効電力、及び無効電力の値を算出する。有効・無効電力算出部20は、有効電力、及び無効電力の値を有効・無効電力制御装置23に出力する。
【0037】
有効・無効電力制御装置23は、予め固定値として設定された出力電力指令値と、第2電力変換部16aが出力する有効電力、及び無効電力の値を入力とし、出力電力の値が出力電力指令値に追従するよう第2電力変換部16aの出力電流指令値を決定する。有効・無効電力制御装置23で用いる出力電流指令値は、スケジュールで変更するようにしても良い。すなわち、有効・無効電力制御装置23は、出力電力指令値を固定値、或いは時間経過に従い変化する可変値とする。有効・無効電力制御装置23は、算出した出力電流指令値を電流制御装置24に出力する。
【0038】
電流制御部24は、第2電力変換部16aの出力電流計測値と、有効・無効電力制御装置23が算出した出力電流指令値とを用いて、第2電力変換部16aの出力電流が指令値に追従するよう電流指令値を決定する。
【0039】
電圧制御部25は、第2電力変換部16aの出力電圧計測値と、有効・無効電力制御装置23が算出した電圧指令値とを用いて、第2電力変換部16aの出力電圧波形を決定する。電圧制御装置25により算出された第2電力変換部16aの出力電圧波形の情報、すなわち位相、周波数、及び振幅の情報を含む指令信号は、ゲートパルス生成部22に入力される。
【0040】
ゲートパルス生成部22は、電圧制御装置25から入力された電圧波形の位相、周波数、及び振幅の情報を含む指令信号に基づき、第2電力変換部16aに対するゲート信号を生成する。このゲート信号は、第2電力変換部16aの出力電圧波形を変調する信号であり、例えば第2電力変換部16aにおける半導体スイッチのOn/Off信号である。また、この時の変調方法としては、例えばパルス幅変調(PWM変調)が用いられる。これにより、第2電力変換部16aは、固定の電力指令値に相当する電力を出力する。
【0041】
図6は、第1実施形態に係る電力供給システム1の動作例を示す図である。左図は分散型電源群10の出力例を示し、右図は分散型電源群10nの出力例を示している。縦軸は電力を示し、横軸は第1インバータ電源(電源I)、複数の第2インバータ電源(電源II)をそれぞれ示している。
【0042】
上述のように、複数のノードJ2~J2nから対応する複数のノードJ1~J1n間のインピーダンスの比に基づき、複数の第1インバータ電源14~14nの出力分担は割り振られる。すなわち、複数の第1電力変換部14a~14an間での出力分担は系統全体で必要とされる電力の大きさに応じて図3及び図4で示す特性に応じて自動的に割り振られる。例えば分散型電源群10では、制御装置14cが分散型電源群10nとは独立に、有効電力の変化量P1((1)式)を補うように第1電力変換部14aを制御することにより、出力分担に応じた有効電力を供給できる。このときの第1電力変換部14aの出力電力の周波数はfbである。同様に、分散型電源群10nでは、制御装置14cnが分散型電源群10とは独立に、有効電力の変化量P1n((2)式)を補うように第1電力変換部14anを制御することにより、出力分担に応じた有効電力を供給できる。このときの第1電力変換部14anの周波数はfbである。このように、複数の分散型電源群10~10nの制御装置14c~14cnは、独立に制御を行っても、系統全体で必要とされる電力の大きさを同一の周波数で補うことができ、且つ系統内の電力需給バランスを維持できる。あるインバータ電源群の中の母線に回転機型の電源が接続されている場合、この回転機型の電源を電圧源として動作する電源として扱うことで、回転機型電源とインバータ電源の出力分担を適切に維持することも可能となる。これは以降の実施例全てについて同様である。
【0043】
一方、各分散型電源群10~10n内の複数の第2電力変換部16~16nは電流源として運転される。このため、複数の第1電力変換部14a~14anの電圧制御と干渉することは無い。これにより、同一ノードJ1に接続されるインバータ電源14、16と異なるノードJ1nに接続されるインバータ電源14n、16nが混在するインバータ系統において、各インバータ電源14~14n、16~16nが相互に通信を行うことなく、適切な出力分担を維持し、系統の電圧及び周波数を確立することが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の第1電力変換部14a~14anそれぞれの出力周波数に対する有効電力の変化率を負荷に供給する電力の分配特性に対応させることとした。これにより、複数の制御装置14c~14cnは、複数の第1電力変換部14a~14an換部それぞれを独立に制御を行っても、系統全体で必要とされる電力の大きさを同一の周波数で補うことができ、且つ系統内の電力需給バランスが維持できる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る電力供給システム1は、電流源モードの出力指示を上位制御装置から与える点で、第1形態に係る電力供給システム1と相違する。以下では、第1形態に係る電力供給システム1と相違する点に関して説明する。
【0046】
図7は、第2実施形態に係る電力供給システム1の全体構成を示す図である。図7に示すように、第2実施形態に係る電力供給システム1は、上位制御装置30を更に備える点で、第1形態に係る電力供給システム1と相違する。
【0047】
上位制御装置30は、各分散型電源群10~10n内の複数の第2インバータ電源16~16nを統括して制御する。なお、上位制御装置30は、複数の第2インバータ電源16~16nの全てを制御してもよいし、或いは、複数の第2インバータ電源16~16nの一部を制御してもよい。
【0048】
図8は、第2実施形態に係る制御装置16cの構成例を示す図である。図8に示すように、有効・無効電力制御装置23に入力される電力指令値は上位制御装置30から入力される。
【0049】
上位制御装置30は系統内の各分散型電源群10~10n内のインバータ電源14~14n、16~16nから情報を収集して第2インバータ電源16~16nの電力出力指令値を決定する。この時、上位制御装置30は、例えば系統内の電圧計測値や負荷の状況などの情報を参照して電力出力指令値を決定してもよい。
【0050】
このように、第2インバータ電源16~16nの電力出力指令値が上位制御装置8によって決定されるため、第2インバータ電源16~16nの出力分担を系統の状況によって変化させることが可能となる。また、第2インバータ電源16~16nも系統の電力変動抑制に用いることができるため、電力変動に対応するために必要となる第1インバータ電源14~14nの出力容量を削減することができる。また、系統側の情報を用いて第2インバータ電源16~16nの出力を制御できるため、系統電圧の分布の改善や、潮流の最適化、系統安定度の向上などより高度な系統制御を行うことが可能となる。
【0051】
以上説明したように本実施形態によれば、第1インバータ電源14~14nは、上位制御装置30の制御を受けずに独立に運転可能とし、複数の第2インバータ電源16~16nを上位制御装置30により制御することとした。これにより、急峻な電力変動については第1インバータ電源14~14nが電圧源として動作することで抑制できるので、上位制御装置30と第2インバータ電源16~16n間の通信速度をより低速化可能となる。
【0052】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る電力供給システム1は、インバータ電源群の出力電圧・電流を計測する電圧・電流計測装置が設けられている点で、第1形態に係る電力供給システム1と相違する。以下では、第1形態に係る電力供給システム1と相違する点に関して説明する。
【0053】
図9は、第3実施形態に係る電力供給システム1の全体構成を示す図である。図9に示すように、第3実施形態に係る電力供給システム1は、電圧・電流計測装置40~40nを更に備える点で、第1形態に係る電力供給システム1と相違する。電圧・電流計測装置40~40nの計測値は、対応する分散型電源群10~10n内の第2インバータ電源16~16nで共有される。
【0054】
第2インバータ電源16において、制御装置16c内部の有効・無効電力制御部23に入力される電力指令値はその第2インバータ電源16が属する分散型電源群全体の出力電力を用いて決定される。例えば、電力指令値は、分散型電源群全体の出力電力を複数の第2インバータ電源16の定格出力値で分配按分した値とする。
【0055】
図10は、第3実施形態に係る電力供給システム1の動作例を示す図である。左図は分散型電源群10の出力例を示し、右図は分散型電源群10nの出力例を示している。縦軸は電力を示し、横軸は第1インバータ電源(電源I)、複数の第2インバータ電源(電源II)をそれぞれ示している。図10に示すように複数の第2インバータ電源16も電力変動の抑制に用いることが可能となる。
【0056】
以上説明したように本実施形態によれば、複数の第2インバータ電源16の出力電力指令を分散型電源群全体の出力電力に応じて変化させることとした。これにより、複数の第2インバータ電源16も電力変動の抑制に用いることができる。このため、第1インバータ電源14~14nが分担する電力変動が低減され、電力変動に対応するために必要となる第1インバータ電源14~14nの出力容量を低減可能となる。また、上位制御装置及び、上位制御装置と各インバータ電源間の通信網を設置する必要が無いので装置間の通信速度の影響を抑制できる。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る電力供給システム1は、複数の第2インバータ電源16~16nの出力を対応する第1インバータ電源14~14nに比例させる点で、第1形態に係る電力供給システム1と相違する。以下では、第1形態に係る電力供給システム1と相違する点に関して説明する。
【0058】
図11は、第4実施形態に係る電力供給システム1の全体構成を示す図である。図11に示すように、第4実施形態に係る電力供給システム1は、複数の分散型電源群10~10nの内の同一の分散型電源群に含まれる第1インバータ電源14、及び複数の第2インバータ電源16を信号線で接続する点で、第1実施形態に係る電力供給システム1と相違する。
【0059】
複数の第2インバータ電源16において、制御装置16c内部の有効・無効電力制御部23に入力される電力指令値は、同じ分散型電源群に属する第1インバータ電源14の出力を用いて決定される。例えば電力指令値は、例えば第1インバータ電源14の出力電力に、複数の第2インバータ電源16の定格出力値に応じた係数を乗じた値とする。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る電力供給システム1は、複数の第2インバータ電源16~16nの出力を対応する第1インバータ電源14~14nに比例させることとした。このため、電圧・電流計測装置40~40n(図9)を用いること無く、複数の第2インバータ電源16も電力変動の抑制に用いることができる。この場合にも、上位制御装置及び、上位制御装置と各インバータ電源間の通信網を設置する必要が無いので装置間の通信速度の影響を抑制できる。
【0061】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。また、これらの実施形態は、例として単一の負荷に電力を供給する例を基に説明したが、本発明はより複雑な系統にも適用することができる。さらに、これらの実施形態を2つ以上組み合わせて電力供給システムを構築しても良い。
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