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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】空気調和装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20220509BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20220509BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20220509BHJP
【FI】
F25B1/00 304S
F24F11/86
F24F110:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021158061
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2021-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】中安 悟
(72)【発明者】
【氏名】浦田 和幹
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 太樹
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特許第6890706(JP,B1)
【文献】特開平04-283362(JP,A)
【文献】特開2017-072298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/86
F24F 110/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の室内機と室外機とを備える空気調和装置であって、
前記各室内機が、
室内熱交換器と、
室内温度を検出する室内温度検出手段と、
前記室内機内を流れる冷媒の流量を調整するための室内膨張弁と
を含み、
前記室外機が、
室外熱交換器と、
圧縮機と
を含み、
前記各室内機につき、前記室内温度検出手段により検出された前記室内温度と設定温度との偏差と、所定時間における前記室内温度の変化量とに基づき、前記室内機の負荷と前記室内機の空調能力との差分を演算し、前記各室内機につき得られた前記差分の平均値を算出し、前記各室内機につき得られた前記差分と前記平均値とに基づき、前記室内膨張弁の開度を制御する制御手段
を含む、空気調和装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記各室内機につき得られた前記差分と前記平均値との差が閾値より小さいか否かに応じて、前記各室内膨張弁の開度を小さくするか否かを判断する、請求項に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記複数の室内機のうちの少なくとも1つが、空調負荷もしくは定格容量が異なる、請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
各々が、室内熱交換器と、室内温度を検出する室内温度検出手段と、前記室内機内を流れる冷媒の流量を調整するための室内膨張弁とを含む、複数の室内機と、
室外熱交換器と、圧縮機とを含む、室外機と、
制御手段と
を含む、空気調和装置の前記制御手段により実行される制御方法であって、
前記各室内機につき、前記室内温度検出手段により検出された前記室内温度と設定温度との偏差と、所定時間における前記室内温度の変化量とに基づき、前記室内機の負荷と前記室内機の空調能力との差分を演算するステップと
前記各室内機につき得られた前記差分の平均値を算出するステップと、
前記各室内機につき得られた前記差分と前記平均値とに基づき、前記各室内機の前記各室内膨張弁の開度を制御するステップと
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置および該空気調和装置の運転を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和装置は、室内の空調負荷に応じて、室外機が備える圧縮機の周波数を制御することにより室内温度(以下、室温と略す。)を調整する手法が用いられている。空気調和装置には、複数の室内機を備えた装置が存在する。このような装置では、各室内機が異なる室内に設置され、異なる空調負荷で利用される場合や、室内の広さ(空調容積)等に応じて異なる定格容量の室内機が設置される場合がある。
【0003】
空調負荷や定格容量の異なる複数の室内機が運転している場合、圧縮機の周波数制御を行ったとしても、系内を循環する冷媒流量を制御することができるだけで、個々の室内機の冷媒流量を制御することができない。このため、室温を維持できない室内機が発生することがある。従来においては、室内機の停止(サーモオフ)と運転(サーモオン)を繰り返す断続運転を実施することで室温を安定させている。
【0004】
しかしながら、サーモオフとサーモオンを繰り返す断続運転は、連続運転と比べて機器の効率や信頼性が低下し、室温が比較的大きく変動するため、快適性を損なうという問題がある。
【0005】
断続運転を回避することを目的として、圧縮機が最低運転周波数の近傍で運転されている場合、室外機が備える膨張弁の開度を通常制御時の開度よりも強制的に小さくして冷媒流量を減少させることで、能力を低下させる空気調和装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-141740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来の技術では、空調負荷や定格容量の異なる複数の室内機が運転している場合、室外機の膨張弁の開度を制御しても、個々の室内機の発生能力を調整できないため、室内機の断続運転を抑制することができず、快適性が得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、複数の室内機と室外機とを備える空気調和装置であって、
各室内機が、
室内熱交換器と、
室内温度を検出する室内温度検出手段と、
室内機内を流れる冷媒の流量を調整するための室内膨張弁と
を含み、
室外機が、
室外熱交換器と、
圧縮機と
を含み、
各室内機につき、室内温度検出手段により検出された室内温度と設定温度との偏差と、所定時間における室内温度の変化量とに基づき、室内機の負荷と室内機の空調能力との差分を演算し、得られた差分に基づき、室内膨張弁の開度を制御する制御手段
を含む、空気調和装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空調負荷や定格容量の異なる複数の室内機が運転している場合に、室内機の断続運転を抑制することができ、快適性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】空気調和装置の構成例を示した図。
図2】空気調和装置が備える制御装置のハードウェア構成の一例を示した図。
図3】各室内において室内機を断続運転する従来の制御と本制御における室温変化を比較して示した図。
図4】室内機の空調能力を調整する第1の制御の流れを示したフローチャート。
図5】室内機の空調能力を調整する第2の制御の流れを示したフローチャート。
図6】室内機の空調能力を調整する第3の制御の流れを示したフローチャート。
図7】室内機の空調能力を調整する第4の制御の流れを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る空気調和装置の構成例を示した図である。空気調和装置10は、住宅やビル等の複数の室内に設置される複数の室内機11a~11cと、室外に設置される室外機12と、制御装置と、各室内に配置され、各室内機11a~11cをそれぞれ操作するための複数の操作装置(リモートコントローラ)とを含んで構成される。制御装置は、室内機11a~11c内もしくは室外機12内に実装されていてもよいし、複数の室内機11a~11cおよび室外機12とは別個に設置されてもよい。室内機11a~11cの数は、複数台であれば、何台であってもよい。ここでは、制御装置が室外機12内に実装され、室内機11a~11cを3台として説明する。
【0012】
複数の室内機11a~11cと室外機12とは、配管13により接続され、配管13を介して複数の室内機11a~11cと室外機12との間を冷媒が循環する1つの系を形成する。冷媒としては、例えばR410aやR32等のハイドロフルオロカーボンが用いられる。また、各室内機11a~11cと室外機12とは、互いに通信を行うために通信ケーブル等に接続される。各室内機11a~11cと室外機12とは、通信ケーブル等により接続されることに限定されるものではなく、通信ケーブル等により接続することなく、WiFi(登録商標)等を使用して無線通信を行うように構成されていてもよい。
【0013】
各室内機11a~11cと各室内に配置されたリモートコントローラは、赤外線等を使用して無線通信を行い、ユーザは、リモートコントローラを使用して、例えば室内機11aを操作する。ユーザは、リモートコントローラを使用し、室内機11aの起動や停止、設定温度の変更、運転モードの切り替え等を行う。これらの指令は、無線通信により室内機11aへ送信される。室内機11aは、起動指令を受けて起動し、室外機12が起動していない場合は、室外機12に対して起動を指令する。室内機11aは、受け付けた設定温度の変更や運転モード等を室外機12に通知する。室内機11aは、停止指令を受けて停止し、停止した旨を通知する。
【0014】
室内機11aは、運転中、室内の空気を取り込み、取り込んだ空気と、室外機12から供給される冷媒との間で熱交換し、冷却された空気または暖められた空気を吹き出し、室内を設定温度になるように室内を冷却し、または暖める。このため、室内機11aは、室内の空気と冷媒との間で熱交換を行う室内熱交換器20aと、室内の空気を取り込み、熱交換された空気を吹き出す室内送風機(室内ファン)とを備える。
【0015】
室内機11aは、室外機12へ室温を通知するため、室温を検出する室内温度検出手段としての室温センサ21aを備える。また、室内機11aは、冷媒を膨張させ、室内熱交換器20aを流れる冷媒の流量を調整するための室内膨張弁22aを備える。
【0016】
室内機11aを暖房として使用する場合、室内熱交換器20aは、凝縮器として機能し、冷媒は、ガス状態で室内熱交換器20aへ流入する。室内熱交換器20aへ流入したガス状態の冷媒は、室内ファンにより取り込まれた空気と熱交換し、凝縮して液の状態で室内熱交換器20aから排出され、室内膨張弁22aを介して室外機12へ送られる。ここでは、室内機11aについてのみ説明したが、室内機11b、11cも、室内機11aと同様、室内熱交換器20b、20c、室温センサ21b、21c、室内膨張弁22b、22cを備えており、同様の動作を行う。
【0017】
室外機12は、室内機11a~11cのうちの1つからの起動指令を受けて起動し、設定された、もしくは起動指令を送信した室内機から通知された運転モードで運転を開始する。運転モードは、冷房モード、暖房モード、送風モード等である。室外機12は、設定された、もしくは室内機から通知された設定温度や室温等に応じて、冷媒の温度、圧力、流量等を制御する。また、室外機12は、室内機11a~11cからの停止した旨の通知を受け、室内機11a~11cの全部が停止しているかを判断し、全部が停止していると判断した場合、運転を停止する。
【0018】
室外機12は、系内に冷媒を循環させるため、圧縮機30を備える。室外機12は、系内を流れる冷媒を膨張させ、その流量を調整するための室外膨張弁31を備える。圧縮機30は、冷媒をガス状態で吸い込み、ガス状態のまま吐出するため、暖房運転時に各室内機11a~11cから排出され、室外膨張弁31を介してガスと液が混合した二相流の状態で供給される冷媒を蒸発させるための室外熱交換器32を備える。
【0019】
室外機12は、外気を取り込み、取り込んだ外気と冷媒との間で熱交換を行い、熱交換後の外気を吹き出す室外ファンを備える。また、室外機12は、空気調和装置を冷房、暖房のいずれの運転をも可能にするため、冷媒を流す方向を切り替えるための四方弁33を備える。
【0020】
室外機12は、制御装置として制御器34を備える。制御器34は、室温センサ21a~21cにより検出された室温、各室内の設定温度、運転モード等に基づき、圧縮機30の運転周波数と、室外膨張弁31の開度、各室内膨張弁22a~22cの開度を制御する。制御器34は、設定された運転モードに応じて、四方弁33を切り替える。
【0021】
ところで、圧縮機30は、各室内機11a~11cの負荷を合算した空調負荷に応じて、運転周波数を制御し、系内を循環する冷媒流量を調整することにより各室内機11a~11cで発生する冷房もしくは暖房の能力を合算した空調能力を調整する。空調負荷が室内機によって異なる場合には、空調能力が空調負荷よりも大きくなる室内機が存在するようになり、当該室内機では室温を設定温度に維持することができなくなる。
【0022】
そこで、従来では、室内機でサーモオフとサーモオンとを繰り返す断続運転を実施し、各室温を各設定温度に維持するように制御している。
【0023】
室内機が起動と停止を繰り返す断続運転は、圧縮機の運転周波数の大きな変動を招くため、より多くのエネルギーを消費し、エネルギー効率が低い。また、機器が故障しやすくなり、機器の信頼性が低下する。断続運転では、例えば室温が設定温度より低い下限値(冷房)もしくは高い上限値(暖房)にサーモオフとなり、室温が設定温度より高い上限値を上回った場合(冷房)もしくは低い下限値を下回った場合(暖房)にサーモオンとなる。したがって、室温が上限値と下限値の温度幅で変動し、この温度幅によっては暑さや寒さを感じ、快適性が得られないこととなる。
【0024】
そこで、制御器34が、各室内膨張弁22a~22cを個々に制御するように構成する。その詳細について説明する前に、図2を参照して、制御器34のハードウェア構成について説明する。
【0025】
制御器34は、CPU40と、フラッシュメモリ41と、RAM(Random Access Memory)42と、通信I/F43と、制御I/F44とを備える。CPU40等の構成要素は、バス45に接続され、バス45を介して情報等のやりとりを行う。
【0026】
CPU40は、空気調和装置10の全体の制御を行う。フラッシュメモリ41は、CPU40による制御に使用されるプログラムや各種のデータ等を記憶する。RAM42は、CPU40に対して作業領域を提供する。通信I/F43は、各室内機11a~11c、周波数センサ等の各センサから情報を受信する。制御I/F44は、圧縮機30、各室内ファン、各室内膨張弁22a~22c、室外ファン、室外膨張弁31、四方弁33と接続し、それぞれのユニットの制御を行う。
【0027】
ここでは、制御器34は、CPU40がフラッシュメモリ41からプログラムを読み出し、そのプログラムを実行することにより上記の制御を実現するが、これに限られるものではなく、回路等の専用のハードウェアを使用し、上記の制御を実現してもよい。
【0028】
以下に具体的な制御について、暖房運転時の制御として詳細に説明する。はじめに、図1を参照して、暖房運転時の冷媒の流れについて簡単に説明する。圧縮機30は、低圧のガス状態の冷媒を吸込み、所定の圧力に昇圧し、吐出する。吐出された冷媒は、配管13を通り、高温のガス状態で各室内機11a~11cへ供給される。各室内機11a~11cでは、各室内ファンにより各室内の空気が取り込まれ、取り込まれた空気と供給された高温のガス状態の冷媒とが各室内熱交換器20a~20cで熱交換される。
【0029】
高圧で高温のガス状態の冷媒は、熱交換により熱を奪われて凝縮し、液状態で各室内熱交換器20a~20cから排出される。各室内熱交換器20a~20cから液状態で排出された冷媒は、各室内膨張弁22a~22cおよび室外膨張弁31により膨張され、一部が気化し、低圧で二相流の状態で室外熱交換器32へ送られる。室外熱交換器32では、冷媒は、室外ファンにより取り込まれた外気との間で熱交換を行い、外気から熱を与えられ、全てが気化し、ガス状態となる。低圧でガス状態の冷媒は、四方弁33を通り、圧縮機30へ戻される。これを繰り返すことにより、冷媒が系内を循環する。
【0030】
運転周波数および室外膨張弁31の開度を制御することで、系内を循環する冷媒流量を増減させ、室内機11a~11cの空調能力を調整することができる。
【0031】
室内機11a~11cの空調負荷および定格容量が同じであれば連続運転が可能である。
【0032】
しかしながら、空調容積、部屋の用途や位置、設定温度の違い等により、一般的には室内機11a~11cの空調負荷は異なる。また、設置される室内機11a~11cも空調容積に応じて定格容量が異なる。このような場合では運転周波数および室外膨張弁31の開度制御による能力調整では不十分であり、室内機が断続運転することになる。
【0033】
その場合、室内機11a~11cの空調負荷と空調能力との差分RLに基づいて、室内膨張弁22a~22cの開度を制御し、室内機11a~11cを流れる冷媒流量を増減させることで、空調能力を調整して室内機を連続運連させることができる。
【0034】
そこで、制御器34は、各室内機11a~11cにつき、差分RLを検出し、検出した差分RLに基づき、各室内膨張弁22a~22cの開度を制御する。各室内膨張弁22a~22cの開度の制御は、いずれの室内機11a~11cも同様であるため、以下、室内機11aについてのみ説明する。
【0035】
室内の空調負荷と空調能力との差分RLは、所定時間の室温の変化量に依存し、また、空気調和装置は室温を設定温度に調整する必要があるため、設定温度と室温センサ21aにより検出された室温との差分と、所定時間内の室温の変化量とを用いて検出することができる。変化量は、任意の時刻に室温センサ21aにより検出された室温と、当該任意の時刻から所定時間経過後に室温センサ21aにより検出された室温との差として検出される。
【0036】
所定時間は、室内膨張弁22aの制御にかかる時間が数秒程度のように短い時間では、変化量が小さすぎて変化量を検出することができず、数十分程度のように長い時間では、その間に断続運転に入ってしまう可能性があることから、数十秒から数分程度とされる。所定時間は、タイマー等を使用して計測することができる。
【0037】
制御器34は、検出した差分RLに基づき、室内膨張弁22aの開度を制御するための制御信号を生成し、室内膨張弁22aへ制御信号を送信する。室内膨張弁22aは、制御信号に基づき、開度を調整する。この制御により、空調能力を空調負荷と釣り合うように冷媒流量を調整することができるため、室内機11aを断続運転させることなく、空気調和装置10を運転することができる。
【0038】
図3は、従来の制御である断続運転を行う制御と、本制御とにおける室温変化を示した図である。図3(a)は、従来の制御における室温変化を示した図で、図3(b)は、本制御における室温変化を示した図である。図3(a)、(b)の縦軸は、室温を示し、横軸は、経過時間を示す。
【0039】
図3(a)に示す従来の制御では、部屋1の室内機がサーモオフとサーモオンとを繰り返す断続運転を行っている。部屋1の室内機がサーモオフすると、部屋1の室温が低下する。室内機の運転台数の減少に伴い、圧縮機の運転周波数が低下するため、部屋2の室温も低下する。部屋1の室温がある程度まで低下すると、部屋1の室内機がサーモオンし、部屋1の室温が上昇する。室内機の運転台数の増加に伴い、圧縮機の運転周波数が増加し、部屋2の室温も上昇する。
【0040】
図3(b)に示す本制御では、室内膨張弁により冷媒流量を増減させることにより空調能力を空調負荷と釣り合うように調整できるので、連続運転を維持することができる。このため、部屋1、2の室温は、図3(a)に示す従来の制御の場合と異なり、上下動することなく、設定温度に近いほぼ一定の温度に制御される。このように設定温度に近いほぼ一定の温度に維持できるため、室内の快適性を維持することが可能となる。
【0041】
図4は、本制御の第1の例を示したフローチャートである。ユーザが運転を開始することによりステップ100から制御を開始する。制御器34は、ステップ101において、対象の室内の空調負荷と空調能力との差分RLを演算する。差分RLは、室内機11aが備える室温センサ21aにより検出される室温、室内機11aに対して設定された設定温度、タイマーを使用して所定時間を計測し、その時間に変化した室温の変化量を用いて計算される。
【0042】
ステップ102では、制御器34が、演算した差分RLに基づき、室内膨張弁22aの開度の変化量を演算する。例えば、制御器34は、差分RLから、どれだけ冷媒流量を増減させればよいかを演算し、冷媒流量の増減量から、室内膨張弁22aの開度の変化量を演算することができる。なお、これは一例であり、差分RLと開度の変化量とを対応付けたテーブル等を使用して算出してもよい。
【0043】
ステップ103では、制御器34が、演算した開度の変化量を制御信号として、室内膨張弁22aへ送信し、室内膨張弁22aの開度を制御する。ステップ104では、運転停止の指令を受け付けたかを判断し、受け付けていないと判断した場合、ステップ101へ戻り、制御を継続する。一方、受け付けたと判断した場合、ステップ105へ進み、制御を終了する。ここでは、室内機11aについてのみ説明したが、室内機11b、11cについても同様の制御が行われる。以下の例も、同様である。
【0044】
図5は、本制御の第2の例を示したフローチャートである。ユーザが運転を開始することによりステップ200から制御を開始する。制御器34は、ステップ201において、対象の室内の空調負荷と空調能力との差分RLを演算する。ステップ202では、制御器34は、設定された閾値RLthを用い、演算した差分RL<閾値RLthか否かを判断する。
【0045】
閾値RLthを設けることで、開度を小さくする方向に変化させるか、大きくする方向に変化させるかを容易に判断することが可能となる。
【0046】
ステップ202で差分RL<閾値RLthと判断した場合、ステップ203へ進み、室内膨張弁22aを絞る方向への開度の変化量を演算する。一方、ステップ202で差分RLが閾値RLth以上と判断した場合、ステップ204へ進み、室内膨張弁22aを開く方向への開度の変化量を演算する。
【0047】
ステップ205では、制御器34が、演算した開度の変化量を制御信号として、室内膨張弁22aへ送信し、室内膨張弁22aの開度を制御する。ステップ206では、運転停止の指令を受け付けたかを判断し、受け付けていないと判断した場合、ステップ201へ戻り、制御を継続する。一方、受け付けたと判断した場合、ステップ207へ進み、制御を終了する。
【0048】
図6は、本制御の第3の例を示したフローチャートである。ユーザが運転を開始することによりステップ300から制御を開始する。制御器34は、ステップ301において、対象の室内の空調負荷と空調能力との差分RLを演算する。ステップ302では、制御器34は、他の全ての室内の差分RLも演算し、それら差分RLの平均値RLaveを演算する。そして、ステップ303において、制御器34は、対象の室内の差分RLと平均値RLaveの差分(RL-RLave)を演算する。
【0049】
ステップ304では、制御器34が、演算した差分(RL-RLave)に基づき、室内膨張弁22aの開度の変化量を演算する。
【0050】
単に差分RLを用いる上記の第1の例では、系内の全ての室内機において上記差分RLが大きいと、全ての室内機の室内膨張弁を一斉に大きく閉じる動作が発生する。すると、圧縮機30の吐出圧および吐出温度が過度に上昇する危険性がある。
【0051】
しかしながら、平均値RLaveを用いて差分(RL-RLave)を演算し、差分(RL-RLave)に基づき、室内膨張弁の開度の変化量を演算することで、系内の全ての室内機において上記差分RLが大きくなったとしても、平均値RLaveも大きい値となり、差分(RL-RLave)を演算すると、小さい値になるため、一斉に閉じるにしても、小さく閉じる動作になるため、上記の圧縮機30の吐出圧および吐出温度が過度の上昇を抑制することができる。
【0052】
ステップ305では、制御器34が、演算した開度の変化量を制御信号として、室内膨張弁22aへ送信し、室内膨張弁22aの開度を制御する。ステップ306では、運転停止の指令を受け付けたかを判断し、受け付けていないと判断した場合、ステップ301へ戻り、制御を継続する。一方、受け付けたと判断した場合、ステップ307へ進み、制御を終了する。
【0053】
図7は、本制御の第4の例を示したフローチャートである。ユーザが運転を開始することによりステップ400から制御を開始する。制御器34は、ステップ401において、対象の室内の空調負荷と空調能力との差分RLを演算する。ステップ402では、制御器34は、他の全ての室内の差分RLも演算し、それら差分RLの平均値RLaveを演算する。そして、ステップ403において、制御器34は、対象の室内の差分RLと平均値RLaveの差分(RL-RLave)を演算する。
【0054】
ステップ404では、制御器34は、設定された閾値RLthを用い、演算した差分(RL-RLave)<RLthか否かを判断する。ステップ404で差分(RL-RLave)<RLthと判断した場合、ステップ405へ進み、室内膨張弁22aを絞る方向への開度の変化量を演算する。一方、ステップ404で差分(RL-RLave)がRLth以上と判断した場合、ステップ406へ進み、室内膨張弁22aを開く方向への開度の変化量を演算する。
【0055】
ステップ407では、制御器34が、演算した開度の変化量を制御信号として、室内膨張弁22aへ送信し、室内膨張弁22aの開度を制御する。ステップ408では、運転停止の指令を受け付けたかを判断し、受け付けていないと判断した場合、ステップ401へ戻り、制御を継続する。一方、受け付けたと判断した場合、ステップ409へ進み、制御を終了する。
【0056】
以上に説明してきたように、本制御によれば、空調負荷や定格容量の異なる複数の室内機が運転している場合に、室内機の断続運転を抑制することができ、快適性を維持することが可能となる。
【0057】
これまで本発明の空気調和装置および制御方法について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
10…空気調和装置
11、11a~11c…室内機
12…室外機
13…配管
20a~20c…室内熱交換器
21a~21c…室温センサ
22a~22c…室内膨張弁
30…圧縮機
31…室外膨張弁
32…室外熱交換器
33…四方弁
34…制御器
40…CPU
41…フラッシュメモリ
42…RAM
43…通信I/F
44…制御I/F
45…バス
【要約】
【課題】 空調負荷や定格容量の異なる複数の室内機が運転している場合に、室内機の断続運転を抑制することができ、快適性を維持することが可能な装置および方法を提供すること。
【解決手段】 空気調和装置は、複数の室内機11a~11cと室外機12とを備え、各室内機11a~11cが、室内熱交換器20a~20cと、室内温度を検出する室温センサ21a~21cと、室内機内を流れる冷媒の流量を調整するための室内膨張弁22a~22cとを含み、室外機12が、室外熱交換器32と、圧縮機30とを含み、各室内機11a~11cにつき、室温センサ21a~21cにより検出された室温と設定温度との偏差と、所定時間における室温の変化量とに基づき、室内機11a~11cの負荷と空調能力との差分を演算し、得られた差分に基づき、室内膨張弁22a~22cの開度を制御する制御器34を含む。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7