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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20220510BHJP
   B60N 3/06 20060101ALI20220510BHJP
   A47C 7/50 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B60N2/30
B60N3/06
A47C7/50 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020088553
(22)【出願日】2020-05-21
(62)【分割の表示】P 2019023729の分割
【原出願日】2013-12-27
(65)【公開番号】P2020121719
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 茂和
(72)【発明者】
【氏名】會田 真也
(72)【発明者】
【氏名】三井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅彦
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-289133(JP,A)
【文献】特開2010-264946(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135651(WO,A1)
【文献】特開平11-004726(JP,A)
【文献】特開2009-040185(JP,A)
【文献】特開2010-125269(JP,A)
【文献】特開2009-067310(JP,A)
【文献】特開2009-067234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0121531(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005025544(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/30
B60N 3/06
A47C 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、シートクッションと、前記シートクッションに対して回動可能に設けられたオットマンとを備え、乗物のフロアに設けられる乗物用シートであって、
前記フロアは、当該乗物用シートを支持する第1フロア部と、前記第1フロア部よりも低い位置にある第2フロア部と、前記第1フロア部と前記第2フロア部とを接続する接続壁部とを有し、
前記シートバックは、前記第1フロア部に取り付けられたシートベースに横方向に延びる軸周りに回動可能に支持されており、
前記オットマンの回動可能領域の一部において、前記オットマンの先端は、前記シートベースよりも低い位置にあることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
記シートクッションは、左右一対のクッションサイドフレームと、前記クッションサイドフレームに回動可能に設けられたスタンド脚とを有し、
前記スタンド脚の回動軸は前記接続壁部よりも後方に配置され、前記オットマンの回動軸は前記接続壁部よりも前方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
記シートクッションは前後に延びるセンター支持部材を有し、
前記オットマンが収納位置にあるとき、前記オットマンの先端は前後方向において前記センター支持部材の一部と同一の位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
該乗物用シートはダイブダウン動作可能に構成され、
当該乗物用シートが使用状態からダイブダウン姿勢に変化するダイブダウン動作時に、前記オットマンの先端は前記第2フロア部に当接することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記オットマンは、展開位置と、第1収納位置と、第2収納位置の間で回動可能に支持され、前記第2収納位置は前記第1収納位置よりも前記シートクッションの底面側に設定されていることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
当該乗物用シートが前記ダイブダウン姿勢にあるとき、前記オットマンと前記第2フロア部との間に隙間ができることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記隙間が前記第1フロア部よりも下方に位置することを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記オットマンは、展開位置と収納位置との間で回動可能に支持され、
前記オットマンが前記展開位置にあるとき、前記オットマンの先端は前記オットマンの回動軸よりも前方に配置され、
当該乗物用シートは前記シートバックを前記フロアに対して回動可能にするリクライニング機構を更に備え、
前記オットマンが前記展開位置にあるとき、前記オットマンの先端は前記リクライニング機構の一部と上下方向で同じ位置に配置されることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記オットマンは、展開位置と収納位置の間で回動可能に支持され、
前記オットマンが前記展開位置にあるとき、前記オットマンの先端は前記オットマンの回動軸よりも前方に配置され、
当該乗物用シートはロアレール及びアッパレールを更に備え、
前記オットマンの前記展開位置において、前記オットマンの先端は前記ロアレールよりも上方に位置することを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションにオットマンが設けられ、ダイブダウン動作が可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの乗物用シートには、シートの形態をアレンジするための様々な機構または装置を備えたものが多くなっている。例えば、フロア上段部にシートバックを回動可能に取り付け、シートクッションをシートバック側に跳ね上げ可能に取り付け、シートクッションをシートバック側に跳ね上げたチップアップ姿勢と、チップアップ姿勢のままシートバックを前方に転倒させることでシートバックをフロア上段部の前方のフロア下段部に格納するダイブダウン姿勢に変化可能にした乗物用シートが公知になっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4263628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダイブダウン動作が可能な乗物用シートにおいてシートクッションにオットマンが設けられている場合には、オットマンが展開位置にある状態のままダイブダウン動作を行うと、オットマンがフロアに干渉してダイブダウン動作が行えなくなる虞がある。そのため、シートをダイブダウン姿勢に変化させたい場合には、ダイブダウン動作を行う前にオットマンをフロアに干渉しない位置に移動させる必要があり、操作が煩雑であった。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、ダイブダウン動作が可能でかつシートクッションにオットマンが設けられている乗物用シートにおいて、オットマンが展開位置にある状態でダイブダウン姿勢に変化させる操作を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、シートベース(26)に回動可能に取り付けられたシートバック(S2)と、前記シートバックに対して回動可能に取り付けられたシートクッション(S1)とを備え、前記シートバックが前方に回動する動作に応じて前記シートクッションが着座位置からフロア(4)に向けて斜め前方に変位するダイブダウン動作を行うように構成された乗物用シート(S)であって、前記シートクッションが着座位置にある状態において、前記シートクッションの前部から垂下する第1収納位置と、前記シートクッションの前部から前方に延在する展開位置との間で変位可能に前記シートクッションに設けられたオットマン(S4)を更に有し、前記オットマンは、前記第1収納位置にある状態で前記ダイブダウン動作が行われた際に、前記フロアに干渉しない第2収納位置をとり得ることを特徴とする乗物用シートを提供する。ここで、「干渉しない」とは、フロアと接触してもよいが、ダイブダウン動作を阻止しないことを意図するものである。
【0007】
この構成によれば、第1収納位置にあるオットマンが、ダイブダウン動作の際にダイブダウン動作を阻止しない第2収納位置に変位するため、予めオットマンを第2収納位置に変位させる操作を行うことなくダイブダウン動作を行わせることができ、シートをダイブダウン姿勢に変化させる操作が容易になる。
【0008】
また、上記の発明において、前記オットマンは、横方向に延在する軸周りに回動可能に前記シートクッションに設けられており、前記第1収納位置にある状態で前記ダイブダウン動作が行われた際に、前記フロアに当接し、前記フロアから受ける力によって前記第2収納位置に向けて回動するように設けられている構成とすることができる。
【0009】
この構成によれば、ダイブダウン動作と関わりなくオットマンを変位させる機構を設ける必要がないため、シートをより簡単な構成でかつより安価に形成することができる。
【0010】
また、上記の発明において、前記第2収納位置は、前記第1収納位置に対して前記シートクッションの底面側に設定されている構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、第1収納位置にあるオットマンをフロアから受ける力によって第2収納位置側に回動させやすい。そのため、第1収納位置の回動角度を、乗員の邪魔になりにくい鉛直や鉛直よりも後方に設定できる。
【0012】
また、上記の発明において、前記オットマンには、少なくとも所定の回動角度よりも前記第2収納位置側にあるときに、付勢手段(156)による前記第2収納位置側への付勢力が作用する構成とすることができる。
【0013】
この構成によれば、シートをダイブダウン状態から使用状態に戻したときに、オットマンが第2収納位置に保持することができる。
【0014】
また、上記の発明において、前記ダイブダウン動作が行われた後のダイブダウン姿勢において、前記第2収納位置にある前記オットマンと前記フロアとの間に隙間が形成される構成とすることができる。
【0015】
この構成によれば、シートがダイブダウン動作を行う際やダイブダウン姿勢にあるときにオットマンの足支持面がフロアに接触しないため、オットマンの足支持面がフロアとの接触によって汚れることを防止できる。
【0016】
また、上記の発明において、前記オットマンは、前記第1収納位置にある状態で前記ダイブダウン動作が行われた際に、前記フロアに摺接しながら前記第2収納位置まで回動する構成とすることができる。
【0017】
この構成によれば、ダイブダウン動作が行われた際にオットマンがフロアに当接してシートクッションの底面側の第2収納位置まで回動するシートを、簡単な構成で実現することができる。
【0018】
また、上記の発明において、前記オットマンを前記第1収納位置に節度感をもって保持するディテント機構(165)をさらに有する構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、オットマンが第1収納位置でディテント機構によって保持されるため、加減速時などにオットマンが揺れ動くことを防止できる。また、オットマンが付勢手段によって第2収納位置側への付勢力を受けているような場合には、オットマンをディテント機構によって第1収納位置に留めることが可能になる。
【0020】
また、上記の発明において、前記ディテント機構が、前記第2収納位置において前記オットマンをその自重で下方に回動しない程度に大きな保持力を持って保持するように構成することができる。
【0021】
この構成によれば、シートがダイブダウン姿勢にあるとき以外にも、オットマンを第2収納位置に保持することが可能になる。また、シートをダイブダウン状態から使用状態に戻したときに、オットマンを第2収納位置に保持することができる。
【0022】
また、上記の発明において、前記オットマンの足支持面(171)の遊端側には、突出部(173)が形成されている構成とすることができる。
【0023】
この構成によれば、シートがダイブダウン姿勢にあるときに突出部以外のオットマンの足支持面がフロアに接触しないため、フロアの汚れが付着して突出部以外の足支持面が汚れることを防止できる。
【0024】
また、上記の発明において、前記突出部(173)は、前記オットマンの足支持面の左右端に遊端側から回動軸側に沿って形成されている構成とすることができる。
【0025】
この構成によれば、シートがダイブダウン姿勢にあるときにオットマンの足支持面の中央部がフロアに接触しないため、足支持面の中央部にフロアの汚れが付着して中央部が汚れることを防止できる。
【0026】
また、上記の発明において、前記オットマンの左右の突出部は、前記足支持面の中央部(174)に比べて硬度が高い材料で構成されるとともに、前記足支持面の中央部に比べて平滑に形成されている構成とすることができる。
【0027】
この構成によれば、オットマンの突出部が足支持面の中央部に比べて平滑に形成されていることにより、突出部が汚れた場合に清掃を行いやすい。また、オットマンの突出部は、足支持面の中央部に比べてフロアに接触しやすいが、中央部に比べて硬度が高い材料で平滑に形成されているため、フロアとの接触によって摩擦抵抗が大きくなることや突出部が磨耗することを防止できる。
【0028】
また、上記の発明において、前記オットマンの遊端側の前端面(172)は、前記足支持面における前記フロアと接触する部分(173、171)に比べ、前記フロアに対するより大きな摩擦係数を有する構成とすることができる。
【0029】
シートクッションの前部から垂下する第1収納位置にあるオットマンは、ダイブダウン動作の際にその前端面がフロアに当接する。そこで、このような構成としたことにより、フロアとの当接時に前端面が第2収納位置側への力を確実に受けてオットマンを確実に第2収納位置側に回動させることができる。
【0030】
また、上記の発明において、前記シートクッションが左右一対のクッションサイドフレーム(85)を有し、前記オットマンは、前記クッションサイドフレームの前部よりも左右方向の外側に配置された左右一対のオットマンサイドフレーム(131)を有する構成とすることができる。
【0031】
この構成によれば、オットマンサイドフレームがクッションサイドフレームと左右方向について重ならないため、オットマンが第2収納位置にある状態でのシートクッションとオットマンとを合わせた厚さ寸法を小さくできる。
【0032】
また、上記の発明において、前記クッションサイドフレームの左右方向内側にはスタンド脚(37)が回動可能に設けられており、前記スタンド脚が前記シートクッションの底面に沿う収納位置にあり、かつ前記オットマンが前記第2収納位置にあるときに、前記クッションサイドフレーム、前記オットマンサイドフレームおよび前記スタンド脚が平面視でそれぞれオーバーラップしない位置に設けられている構成とすることができる。
【0033】
この構成によれば、スタンド脚が収納位置にあり、オットマンが第2収納位置にある状態でのシートクッションとオットマンとスタンド脚とを合わせた厚さ寸法を小さくできる。
【発明の効果】
【0034】
以上の構成によれば、ダイブダウン動作が可能でかつシートクッションにオットマンが設けられている乗物用シートにおいて、オットマンが展開位置にある状態でダイブダウン姿勢に変化させる操作を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態に係る車両用シートの斜視図
図2】車両用シートのシートフレームの斜視図
図3】車両用シートのシートフレームの右側面図
図4】車両用シートのシートベースの平面図
図5】車両用シートのシートフレームの平面図
図6】車両用シートのシートフレームの背面図
図7】車両用シートを前方下側から見た斜視図
図8】スタンドベースの概略断面図
図9】リクライニング機構の概略図
図10】チップアップ機構の概略図
図11】オットマンの分解斜視図
図12】オットマンの角度調整機構の概略図
図13】オットマンのディテント機構の概略図
図14】車両用シートの動作説明図
図15】車両用シートの動作説明図
図16】オットマンの斜視図
図17】スタンド脚およびオットマンが収納位置にあるときのシートフレームの要部平面図
図18】ダイブダウン状態の車両用シートの側面図
図19】変形例に係るオットマンの斜視図
図20】変形例に係る車両用シートのオットマンのディテント機構の概略図
図21】変形例に係る車両用シートの動作説明図
図22】変形例に係る車両用シートのダイブダウン状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。以下の説明では、シートSに着座した人を基準にして左右を定める。また、各部位等について方向を説明する際には、シートSが着席状態にあるときを基準とする。左右一対設けられる構成については、共通の番号を付し、左右を特定するときは構成の名称に左又は右の文字を付す。
【0037】
(全体構成)
図1に示すように、車両用シートSは、自動車の後部座席(2列目及び3列目を含む)として使用され、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3と、オットマン(レッグレスト)S4とを有する。
【0038】
図2に併せて示すように、シートクッションS1、シートバックS2、ヘッドレストS3、オットマンS4には、シートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するバックフレームF2と、ヘッドレストS3のフレームを構成するヘッドレストフレームF3と、オットマンS4のフレームを構成するオットマンフレームF4とを有している。
【0039】
クッションフレームF1の座面側、バックフレームF2の背もたれ面側、ヘッドレストフレームF3、及びオットマンフレームF4の支持面側には、それぞれシートクッションパッドP1、シートバックパッドP2、ヘッドレストパッドP3、及びオットマンパッドP4が取り付けられ、表皮SKによって覆われている。各パッドPは、ポリウレタンフォーム等の弾力性を有するクッション材から形成されている。各表皮SKは、合成皮革や布地等から形成されている。クッションフレームF1の底面側、バックフレームF2の背面側及びオットマンフレームF4の裏面側には、樹脂材で形成されたカバーが取り付けられ、それぞれの底面、背面及び裏面はこれらのカバー部材によって画成されていてもよい。
【0040】
バックフレームF2は、スライド機構2及びリクライニング機構3を介して自動車のフロア4に取り付けられている。これにより、バックフレームF2は、フロア4に対してスライド可能、かつスライド機構2に対して回動(傾倒)可能になっている。クッションフレームF1は、チップアップ機構5を介してバックフレームF2に回動可能に取り付けられている。ヘッドレストフレームF3は、バックフレームF2にスライド移動可能に取り付けられている。オットマンフレームF4は、クッションフレームF1にスライド移動可能に取り付けられている。また、オットマンフレームF4は、角度調節機構6を有し、角度調節可能になっている。
【0041】
図3に示すように、フロア4は、スライド機構2が設置される高位部11と、高位部11の前側かつ下方に形成された低位部12とを有する。低位部12と高位部11との間には低位部12から立ち上がり高位部11に至る壁部13が形成され、高位部11を基準にすると、低位部12はフロア4に凹部を形成するといえる。フロア4は、ニードルパンチ製法で製造された不織布などからなる内装材により表面が覆われている。フロア4の低位部12は、或いは内装材の上に設置されたフロアマットにより表面が覆われている。
【0042】
図4図7に示すように、スライド機構2は、1つのシートSに対して左右一対に設けられている。各スライド機構2は、ロアレール15と、ロアレール15に変位可能に取り付けられたアッパレール16と、ロアレール15に対してアッパレール16を固定するレールロック部材17とを有する。スライド機構2は、公知の様々な機構を適用することができる。各ロアレール15は、フロア4の高位部11(図3)に、左右方向に互いに距離をおいて、それぞれ前後に延びるように配置されている。各ロアレール15は、ボルト締結等によってフロア4に接合されている。アッパレール16は、ロアレール15の長手方向にスライド移動可能に係合している。
【0043】
各ロアレール15には、長手方向に沿って複数のロック孔(不図示)が形成されている。レールロック部材17は、アッパレール16に回動可能に取り付けられ、複数のロック孔の少なくとも1つに係合可能となっている。レールロック部材17は、任意のロック孔と係合することによって、ロアレール15に対するアッパレール16及びスライド部材21の移動を規制する。レールロック部材17は、付勢手段としてのばね(不図示)によって、ロック孔と係合する側に付勢されている。そのため、通常時には、ばねに付勢されたレールロック部材17がロック孔との係合を維持してスライド部材21の移動が規制されている。乗員の操作に起因してレールロック部材17がばねの付勢力に抗して回動すると、レールロック部材17とロック孔との係合が解除され、アッパレール16の移動が可能になる。
【0044】
左右のアッパレール16には、それぞれスライド部材21が接合されている。左右のスライド部材21は、プレス加工された複数の金属板を溶接等によって接合したものである。左右のスライド部材21は、アッパレール16上を前後に延びている。左右のスライド部材21は、前端同士がスライダ前メンバ23によって結合され、後端同士がスライダ後メンバ24によって結合され、前後方向における中間部同士がスライダ中間メンバ25によって結合されている。各メンバ23、24、25は、金属のパイプから形成され、各スライド部材21と溶接やボルト締結等によって接合され、互いに平行に左右に延びている。これにより、左右のスライド部材21及び各メンバは枠形をなすシートベース26を構成している。シートベース26及び左右のアッパレール16は、一体となってロアレール15に対して前後に移動する。
【0045】
左右のレールロック部材17は、リンク機構28(図5図6)によって互いに連結されている。リンク機構28は、ロック状態と解除状態の間で変化することができ、通常時にはレールロック部材17を付勢するばねの付勢力を受け、ロック状態となっている。リンク部材は、ロック状態において、ばねに付勢された左右のレールロック部材17とロック孔との係合を許容する。乗員の操作に起因してリンク機構28がロック状態から解除状態になると、リンク機構28はばねの付勢力に抗して左右のレールロック部材17をロック孔から離脱した状態に維持する。後に詳述するが、リンク機構28には、力伝達手段としての第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の一端が係止されている。リンク機構28は、第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の少なくとも一方に引っ張られることによって、解除状態になる。
【0046】
図4図6及び図8に示すように、スライダ前メンバ23及びスライダ中間メンバ25には、スタンドベース34が掛け渡されている。スタンドベース34は、金属板をプレス成形等することによって形成され、前端部においてスライダ前メンバ23の左右方向における中央部に溶接され、後端部においてスライダ中間メンバ25の左右方向における中央部に溶接されている。スタンドベース34の上部には、左右方向に延在し、スタンドベース34の左右両端に到達する支持溝35が形成されている。支持溝35は、上方かつ前側に向けて開口している。支持溝35は、後述するスタンド脚37を支持する。
【0047】
スタンドベース34には、係止爪41が回動可能に取り付けられている。係止爪41は、支持溝35の軸線(左右方向に延びる軸線)と平行な回転軸を中心として、図8に実線で示す、支持溝35の側部から支持溝35内に突入する突入位置と、図8に想像線で示す、支持溝35の外部に退いた後退位置との間で回動する。スタンドベース34と係止爪41との間には、付勢手段としての捩じりばね42が介装され、係止爪41は突入位置に付勢されている。係止爪41は、突入位置において、後述するスタンド脚37の横部材94を係止し、横部材94の支持溝35からの離脱を阻止する。なお、係止爪41の外側部分、すなわち係止爪41が突入位置にあるときに支持溝35の開口端側を向く部分は、傾斜面に形成されている。
【0048】
後に詳述するが、係止爪41には、力伝達手段としての係止爪用ケーブル43の一端が係止されている。係止爪41は、係止爪用ケーブル43が引っ張られることによって、突入位置から後退位置に回動する。
【0049】
図2図5及び図6に示すように、バックフレームF2は、縦長の長方形の枠状に形成されたパイプフレーム45と、パイプフレーム45の上下に延びる左右の側辺部の下部に溶接等によって接合された左右のバックサイドフレーム46とを有している。左右のバックサイドフレーム46は、金属板をプレス加工等することによって形成したものである。左右のバックサイドフレーム46は、パイプフレーム45の左右側辺部の下部における外側面を抱持するように湾曲する凹面を有し、パイプフレーム45の左右の側辺部に溶接等によって接合されている。左右のバックサイドフレーム46の下部は、左右側辺部の下端よりも下方に延出している。また、左右のバックサイドフレーム46は、一部がパイプフレーム45の下辺部に延び、溶接等によって接合されている。また、左右のバックサイドフレーム46とパイプフレーム45の下辺部との間には溶接等によって接合された補強板47が掛け渡され、バックフレームF2の補強がなされている。補強板47は、上部がバックサイドフレーム46及びパイプフレーム45と協働して中空状の立体構造を形成すると共に、下部がバックサイドフレーム46に沿って下方に延びている。
【0050】
左右のバックサイドフレーム46の下部は、左右方向を向く側面を有している。左バックサイドフレーム46の下部の左側面は、左スライド部材21の右側面と対向し、回動可能に連結されている。図5及び図7に示すように、右バックサイドフレーム46の下部の左側面は、右スライド部材21に取り付けられたリクライニング機構3の右側面と対向し、リクライニング機構3を介して右スライド部材21に回動可能に連結されている。左右のバックサイドフレーム46の回動軸は、互いに同軸に配置されている。
【0051】
リクライニング機構3は、右スライド部材21に対する右バックサイドフレーム46の回動(傾倒)角度を任意の位置に維持することができる。また、リクライニング機構3は、解除レバー51を有し、解除レバー51が操作されたときに右スライド部材21に対する右バックサイドフレーム46の回動角度を変更可能にする。このようなリクライニング機構3は、公知の様々な機構を適用することができる。
【0052】
本実施形態に係る一例としてのリクライニング機構3は、図9に示すように、右スライド部材21に接合されたロアプレート52と、右サイドフレームの下部に接合され、ロアプレート52に対向配置され、ロアプレート52に対して回転可能なアッパプレート53と、ロアプレート52及びアッパプレート53の回転中心を貫通する連結軸54と、アッパプレート53とロアプレート52との間に形成される内部空間に配置され、連結軸54と一体に回転するカムプレート55と、内部空間に配置された複数のロック部材56と、カムプレート55を一方の回転方向に付勢する付勢手段としての捩じりばね57とを有している。ロック部材56は、ロアプレート52に形成されたガイド溝58に係合し、ロアプレート52の径方向に移動可能に配置されている。ロック部材56は、径方向内方部分にカム部を有し、径方向外方部分に外歯59を有し、径方向外方に移動したときにアッパプレート53の内部空間を形成する内周面に周方向にわたって形成された内歯61と係合する。カムプレート55は、ロック部材56と係合し、一方の回転方向に回転するときにロック部材56を径方向外方に移動させ、他方の回転方向に回転するときにロック部材56を径方向内方に移動させる。連結軸54の一端は、アッパプレート53及び右バックサイドフレーム46を貫通し、その端部に径方向に延びる解除レバー51(図3図7)が接合されている。
【0053】
リクライニング機構3は、通常時には捩じりばね57によってカムプレート55が一方の回転方向に付勢され、ロック部材56が径方向外方に移動し、ロック部材56の外歯59がアッパプレート53の内歯61に係合する。これにより、ロック部材56を介してロアプレート52及びアッパプレート53の相対回転が禁止される。すなわち、リクライニング機構3は、捩じりばね57の付勢力によってロアプレート52に対するアッパプレート53の回動が禁止されるロック状態となっている。乗員の操作に起因して解除レバー51が解除方向に回動し、連結軸54及びカムプレート55が捩じりばね57の付勢力に抗して他方の回転方向に回転すると、ロック部材56が径方向内方に移動し、ロック部材56の外歯59とアッパプレート53の内歯61との係合が解除される。これにより、ロアプレート52及びアッパプレート53の相対回転が可能になる。解除レバー51には、力伝達手段としてのリクライニング用ケーブル63(図3図7)の一端が係止されている。解除レバー51は、リクライニング用ケーブル63が引っ張られることによって、解除方向に回動する。
【0054】
図2図3及び図5に示すように、パイプフレーム45の右側辺部の上端部には、ハンドルユニット65を支持するブラケット66が溶接等によって接合されている。ハンドルユニット65は、上方かつ後方に開口したケース67と、ケース67内に回動可能に取り付けられたハンドル68とを有する。図1図2に示すように、シートバックパッドP2及びその外面の表皮SKは、ハンドルユニット65に対応した部分が切り欠かれている。これにより、ハンドル68は、シートバックS2の上端右部に露出し、乗員が操作可能になっている。
【0055】
ハンドル68には、一端が係止爪41(図8)に係止された係止爪用ケーブル43の他端と、一端が解除レバー51(図3)に係止されたリクライニング用ケーブル63の他端とが連結されている。係止爪用ケーブル43及びリクライニング用ケーブル63は、筒状のアウタチューブによって摺動可能に抱持されている。係止爪用ケーブル43を抱持する係止爪用アウタチューブ71は、詳細な配置図は省略するが主に図5を参照して説明すると、一端がスタンドベース34に固定され、右スライド部材21側に延び、右バックサイドフレーム46及びパイプフレーム45の右側辺部に沿って上方に延び、他端がブラケット66に固定されている。リクライニング用ケーブル63を抱持するリクライニング用アウタチューブ72は、図3に示すように、一端が右バックサイドフレーム46の右側面に固定され、右バックサイドフレーム46及びパイプフレーム45の右側辺部に沿って上方に延び、他端がブラケット66に固定されている。係止爪用アウタチューブ71及びリクライニング用アウタチューブ72はバンド等によってパイプフレーム45の右側辺部に結束されている。
【0056】
乗員がハンドル68を引き、ハンドル68を一方の回動方向に回動させると、係止爪用ケーブル43がハンドル68側に引かれ、係止爪41(図8)が突入位置から後退位置に回動し、係止爪41によるスタンド脚37のロックが解除される。同時に、リクライニング用ケーブル63がハンドル68側に引かれ、解除レバー51(図3)が解除方向に回動し、リクライニング機構3のロックが解除される。
【0057】
図2及び図3に示すように、パイプフレーム45の左側辺部には、アームレスト75を支持するアームレストブラケット76が溶接等によって接合されている。アームレストブラケット76は、パイプフレーム45の左側辺部から前方に突出している。アームレストブラケット76には、アームレスト75が所定の範囲で回動可能に取り付けられている。
【0058】
図2及び図5に示すように、パイプフレーム45の上辺部には、ヘッドレストS3を支持するための一対のヘッドレスト保持部78が接合されている。ヘッドレスト保持部78は、筒状をなし、内部に樹脂製の筒形部材であるサポート79が挿入されている。ヘッドレストS3は、ヘッドレストフレームF3の一部である一対のヘッドレストピラー80がサポート79を介してヘッドレスト保持部78に挿入されることによって、パイプフレーム45の上辺部に取り付けられる。
【0059】
パイプフレーム45の適所には、金属棒によって形成された複数の補助フレーム82が溶接されている。補助フレーム82は、左右の側辺部間に掛け渡されたもの、左側辺部から左方に張り出すように配設されたもの、右側辺部から右方に張り出すように配設されたもの等を含む。補助フレーム82は、パイプフレーム45の隙間を補い、シートバックパッドP2を支持する。
【0060】
図2及び図5に示すように、クッションフレームF1は、前後に延びる左右一対のクッションサイドフレーム85と、左右のクッションサイドフレーム85の前端間を連結するクッション前メンバ86と、左右のクッションサイドフレーム85の後部間を連結するクッション後メンバ87とを有している。左右のクッションサイドフレーム85は、金属板をプレス加工等することによって形成されたものであり、主面が左右を向き、縁部が左右外方に突出するように曲げ起こされている。左右のクッションサイドフレーム85の後端部は、前後に延びる前部に対して屈曲し、後方かつ上方に傾斜して延びている。クッション後メンバ87は、左右のクッションサイドフレーム85の屈曲部に設けられている。
【0061】
左クッションサイドフレーム85の後端部は、その右側面が左バックサイドフレーム46の左側面の上部に対向するように配置され、左バックサイドフレーム46に回動可能に取り付けられている。
【0062】
図6に示すように、右バックサイドフレーム46の上部には、右方に突出し、突出端が平面状をなす締結座88が形成されている。締結座88には、支持プレート89がボルト締結等によって接合されている。右バックサイドフレーム46における締結座88の下方には、支持プレート89との間に隙間を形成する凹部90が形成されている。支持プレート89は、主面が左右を向き、上下に延びる金属のプレートであり、上端部が締結座88に接合されている。支持プレート89の下部は、右バックサイドフレーム46の右側面との間に距離をおいて配置されている。右クッションサイドフレーム85の後端部は、右バックサイドフレーム46と支持プレート89との間に配置され、支持プレート89に回動可能に取り付けられている。左右のクッションフレームの回動軸は、それぞれ左右に延び、互いに同軸に配置されている。
【0063】
図2及び図5に戻り、クッション前メンバ86及びクッション後メンバ87には、前後に延びるセンター支持部材91が掛け渡されている。センターメンバは、クッションフレームF1の中央部において、シートクッションパッドP1及び乗員の臀部を下方から支持する部材であり、弾性を有することが好ましい。本実施形態では、センター支持部材91は、金属板をプレス成形等にすることによって形成されたプレート(センタープレート)であり、主面が上下を向き、前端部においてクッション前メンバ86の左右方向における中央部に溶接され、後端部においてクッション後メンバ87の左右方向における中央部に溶接されている。センター支持部材91の左右方向における幅は、クッション前メンバ86の1/3程度である。センター支持部材91には、補強ビードや軽量化のための肉抜きが適所に設けられている。他の実施形態では、センター支持部材91は、例えばワイヤースプリング等の弾性部材から構成されてもよい。また、センター支持部材91は、幅方向に複数設けられてもよい。
【0064】
図7に併せて示すように、左右のクッションサイドフレーム85には、スタンド脚37が回動可能に取り付けられている。スタンド脚37は、一端部において左右のクッションサイドフレーム85に回動可能に取り付けられ、他端部に延びる左右一対のアーム93と、左右のアーム93の他端部同士を連結する横部材94とを有し、外形が略U字形に形成されている。左右のアーム93の大部分及び横部材94は、金属のパイプを略U字状に折り曲げることによって形成されている。左右のアーム93の一端部は、パイプに溶接されたブラケットによって形成され、ブラケットが左右のクッションサイドフレーム85に回動可能に取り付けられている。スタンド脚37は、左右側から見て(図3)、横部材94がセンター支持部材91の下面に近接し、アーム93がクッションサイドフレーム85に沿う、想像線で示す収納位置と、アーム93がクッションサイドフレーム85から下方に突出した、実線で示す使用位置との間で回動可能になっている。スタンド脚37は、使用位置及び収納位置のいずれの状態においても、シートクッションS1の底面を形成するカバーの外側に配置されている。
【0065】
スタンド脚37が使用位置にあるとき、図8に示すように、スタンド脚37はスタンドベース34の支持溝35に突入可能になる。スタンド脚37が支持溝35に係止されることによって、シートクッションS1はスタンド脚37に下方から支持され、座面(上面)が略水平に延在した着座位置に配置される。また、スタンド脚37は、支持溝35に係止されることによって、使用位置から収納位置への回動が規制される。すなわち、スタンド脚37が支持溝35に係止されることによって、シートクッションS1のシートバックS2に対する回動位置が定まる。
【0066】
スタンド脚37の横部材94を支持溝35に挿入するときには、横部材94で係止爪41の傾斜面を押し、捩じりばね42の付勢力に抗して係止爪41を突入位置から後退位置に回動させる。横部材94が支持溝35に挿入されると、係止爪41は捩じりばね42の付勢力によって突入位置に回動する。係止爪41は、突入位置において横部材94を係止し、横部材94の支持溝35からの離脱を阻止する。パイプ部を支持溝35から離脱させたいときは、乗員はハンドル68(図1)を操作し、係止爪用ケーブル43を介して係止爪41を後退位置に位置させる。
【0067】
図3図5及び図6に示すように、右クッションサイドフレーム85と支持プレート89との間には、チップアップ機構5が介装されている。チップアップ機構5は、シートクッションS1が着座位置よりも上方側に回動した所定の位置で、右クッションサイドフレーム85を支持プレート89に対して固定し、シートクッションS1のシートバックS2に対する回動位置を固定する装置である。このようなチップアップ機構5は、公知の様々な機構を適用することができる。
【0068】
本実施形態に係る一例としてのチップアップ機構5は、図10に示すように、支持プレート89の下端部の縁部に形成された切欠からなる係合凹部101と、右クッションサイドフレーム85の右側面に回動可能に取り付けられ、係合凹部101に係合する想像線で示す係合位置と係合凹部101から離脱した実線で示す解除位置との間で変位可能なロック部材102と、ロック部材102と右クッションサイドフレーム85との間に設けられ、ロック部材102を係合位置に付勢する付勢手段としてのラバー(不図示)と、右クッションサイドフレーム85の右側面に回動可能に取り付けられ、ロック部材102に係合してロック部材102を解除位置に位置させる実線で示す第1位置と、ロック部材102との係合を解除する想像線で示す第2位置との間で回動するカム部材103と、カム部材103と右クッションサイドフレーム85の右側面との間に設けられ、カム部材103を第2位置に付勢する付勢手段としての引張りコイルばね104とを有している。
【0069】
係合凹部101は、少なくとも1つ以上設けられている。係合凹部101の1つは、シートクッションS1が回動可能範囲において上方に回動した限界位置(チップアップ位置という)に位置するとき、すなわちシートクッションS1の座面(上面)がシートバックS2の支持面(前面)と最も接近したときに、ロック部材102が係合可能になる位置に形成されている。シートクッションS1がチップアップ位置に位置するとき、右クッションサイドフレーム85の前部が、パイプフレーム45の右側辺部と略平行になる。他の係合凹部101は、シートクッションS1の着座位置とチップアップ位置との間の任意の角度において、ロック部材102が係合可能になる位置に形成されていてよい。これにより、チップアップ機構5は、右クッションサイドフレーム85を支持プレート89に対して上方に回動させると、所定の回転位置で引張りコイルばね104に付勢されたロック部材102が係合凹部101に係合し、右クッションサイドフレーム85を所定の角度に維持する。
【0070】
なお、係合凹部101は、支持プレート89に対して右クッションサイドフレーム85が下方に回動するときにロック部材102との係合を維持し、支持プレート89に対する右クッションサイドフレーム85の回動を阻止するが、支持プレート89に対して右クッションサイドフレーム85が上方に回動するときにはロック部材102の離脱を許容し、支持プレート89に対する右クッションサイドフレーム85の回動を許容するように構成してもよい。この構成によれば、ロック部材102がある係合凹部101に係合した後も、右クッションサイドフレーム85の上方への回動が可能となり、右クッションサイドフレーム85をさらに上方に回動させると、ロック部材102は次の係合凹部101に係合し、カム部材103が想像線で示す第2位置にあっても右クッションサイドフレーム85を所望の角度まで跳ね上げることができる。
【0071】
乗員の操作に起因してカム部材103が引張りコイルばね104の付勢力に抗して実線で示す第1位置に回動すると、ロック部材102は解除位置に移動し、係合凹部101と係合できなくなる。カム部材103には、力伝達手段としての第1チップアップ用ケーブル106及び第2チップアップ用ケーブル107の一端が接続されている。第1チップアップ用ケーブル106は筒状の第1チップアップ用アウタチューブ108によって摺動可能に抱持され、第2チップアップ用ケーブル107は筒状の第2チップアップ用アウタチューブ109によって摺動可能に抱持されている。
【0072】
第1チップアップ用アウタチューブ108は、その一端が右クッションサイドフレーム85の右側面に、開口がカム部材103側を向くように取り付けられている。第1チップアップ用アウタチューブ108は、図3及び図5に示すように、一端から右クッションサイドフレーム85の右側面に沿って前方に延び、右クッションサイドフレーム85の前端下部をくぐって右クッションサイドフレーム85の左側に延びている。右クッションサイドフレーム85の前端の下部にはブラケット111が接合されており、第1チップアップ用アウタチューブ108の他端は、開口が後方を向くようにブラケット111に固定されている。第1チップアップ用ケーブル106の他端は、スタンド脚37の右アーム93の端部に固定されている。図10に示すように、スタンド脚37が想像線で示す収納位置に位置するときに、第1チップアップ用ケーブル106の他端(右アーム93の端部)が第1チップアップ用アウタチューブ108の他端に接近して第1チップアップ用ケーブル106が弛み、実線で示す使用位置に位置するときに第1チップアップ用ケーブル106の他端(右アーム93の端部)が第1チップアップ用アウタチューブ108の他端から離れて第1チップアップ用ケーブル106が引っ張られる。すなわち、スタンド脚37が使用位置に位置するとき、カム部材103は第1チップアップ用ケーブル106によって引っ張られて図10に実線で示す第1位置に位置し、ロック部材102は同じく実線で示す解除位置に位置する。
【0073】
第2チップアップ用アウタチューブ109は、その一端が右クッションサイドフレーム85の右側面に、開口がカム部材103側を向くように取り付けられている。第2チップアップ用アウタチューブ109は、図3及び図5に示すように、一端から右クッションサイドフレーム85の前後方向における中間部下部をくぐって右クッションサイドフレーム85の左側に延び、その後、右クッションサイドフレーム85の左側面に沿い、右クッションサイドフレーム85の回動軸近傍に延びる。その後、第2チップアップ用アウタチューブ109は、図3及び図6に示すように、右クッションサイドフレーム85の回動軸近傍から右バックサイドフレーム46の後を回りこんで、右バックサイドフレーム46の左側に配置された補強板47に沿って右バックサイドフレーム46の回動軸近傍に延びている。第2チップアップ用アウタチューブ109の他端は、補強板47の左側面から内方に向けて突出するように補強板47と一体形成された突出部112(図6)に下方を向くように固定されている。第2チップアップ用ケーブル107は、右スライド部材21に取り付けられたロアプレート52(図9)の左側面に係止されている。なお、突出部112は、第2チップアップ用アウタチューブ109の他端を固定する固定部として機能するとともに、左右方向について右スライド部材21とオーバーラップする位置まで突出形成されており、右バックサイドフレーム46が後方に回動するときに右スライド部材21に当接することで、右バックサイドフレーム46の後方へのさらなる回動を規制するストッパとして機能する。
【0074】
第2チップアップ用ケーブル107の他端と第2チップアップ用アウタチューブ109の他端との位置は、シートバックS2がフロア4に対して起立した状態から前傾するにつれて、第2チップアップ用ケーブル107の他端が第2チップアップ用アウタチューブ109の他端から離れるように設定されている。これにより、シートバックS2が前傾するほど第2チップアップ用ケーブル107は他端側に引っ張られ、シートバックS2の前傾が所定の角度以上になると、カム部材103(図10)は第2チップアップ用ケーブル107によって引っ張られて図10に実線で示す第1位置に位置し、ロック部材102は同じく実線で示す解除位置に位置する。すなわち、第1チップアップ用ケーブル106及び第1チップアップ用アウタチューブ108、並びに、第2チップアップ用ケーブル107及び第2チップアップ用アウタチューブ109は、それぞれチップアップ機構5のロックを解除するチップアップロックキャンセル機構113を構成する。
【0075】
第1チップアップ用ケーブル106及び第2チップアップ用ケーブル107の2つがカム部材103に接続しているため、カム部材103は第1チップアップ用ケーブル106及び第2チップアップ用ケーブル107の少なくとも一方が他端側に引っ張られた状態で第1位置に位置し、ロック部材102は解除位置に位置する。換言すると、第1チップアップ用ケーブル106及び第2チップアップ用ケーブル107が共に弛んだ状態、すなわちシートバックS2の前傾角度が所定値以下(すなわち、起立した状態)であり、かつスタンド脚37が収納位置に位置するときに、カム部材103は図10に想像線で示す第2位置にあり、ロック部材102は係合凹部101に係合可能になる。
【0076】
次に、第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の配置について説明する。図5に示すように、第1レール用ケーブル31は筒状の第1レール用アウタチューブ114によって摺動可能に抱持され、第2レール用ケーブル32は筒状の第2レール用アウタチューブ115によって摺動可能に抱持されている。第1レール用アウタチューブ114及び第2レール用アウタチューブ115の一端は、リンク機構28の不動部に係止され、第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の一端はリンク機構28の可動部に係止されている。なお、他の例では、第1レール用アウタチューブ114及び第2レール用アウタチューブ115の一端は、スライダ中間メンバ25やスライダ後メンバ24に係止されていてもよい。
【0077】
第1レール用アウタチューブ114は、一端から右バックサイドフレーム46の左側面に延び、その後、図6に示すように、右バックサイドフレーム46の左側面に沿って上方に、右クッションサイドフレーム85の回動軸近傍まで延びている。そして、第1レール用アウタチューブ114は、右バックサイドフレーム46の後を回り込んで右バックサイドフレーム46の右側面に達し、右クッションサイドフレーム85の回動軸近傍から右クッションサイドフレーム85の左側面に延びている。その後、第1レール用アウタチューブ114は、図5に示すように、右クッションサイドフレーム85の左側面に沿って前方にクッション後メンバ87まで延び、センター支持部材91の下方を通過して左斜め前に延び、左クッションサイドフレーム85の前端下部に接合されたブラケット117まで延びている。第1レール用アウタチューブ114の他端は、開口が前方を向くようにブラケット117に係止されている。第1レール用ケーブル31の他端は、第1レール用アウタチューブ114の他端から前方に突出し、第1把持部材118が取り付けられている。第1レール用ケーブル31、第1レール用アウタチューブ114、及び第1把持部材118は、スライド機構2のロック解除を行う操作部材を構成する。
【0078】
第2レール用アウタチューブ115は、一端からループを形成しつつ、後方に延び、スライダ後メンバ24に接合されたブラケット121まで延びている。第2レール用アウタチューブ115の他端は、開口が後方を向くようにブラケット121に係止されている。第2レール用ケーブル32の他端は、第2レール用アウタチューブ115の他端から後方に突出し、第2把持部材122が取り付けられている。第2レール用ケーブル32、第2レール用アウタチューブ115、及び第2把持部材122は、スライド機構2のロック解除を行う操作部材を構成する。
【0079】
第1把持部材118及び第2把持部材122は、織布やひも、ロープ等を含むストラップであり、可撓性を有する。本実施形態では、第1把持部材118及び第2把持部材122は、帯状のバンドを折り返してループ状に形成している。図1及び図7に示すように、シートクッションパッドP1(図2)の前部には、第1把持部材118が前後に貫通する通路(不図示)が形成され、シートクッションパッドP1の前端面125の表皮SKには第1把持部材118が貫通する孔を画定するグロメット127が取り付けられている。これにより、第1把持部材118の先端部は、グロメット127を通過してシートクッションS1の前端面から突出している。
【0080】
乗員は、第1把持部材118を把持し、シートクッションS1から引き出す方法に引っ張ることによって第1レール用ケーブル31を引っ張ることができる。また、乗員は、第2把持部材122を把持し、後方に引っ張ることによって第2レール用ケーブル32を引っ張ることができる。第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の少なくとも一方が引っ張られることによって、リンク機構28はロック状態から解除状態となり、左右のレールロック部材17が各ロック孔から離脱し、ロアレール15に対してアッパレール16が移動可能になる。すなわち、アッパレール16に取り付けられたシートSがフロア4に対して前後に移動可能になる。
【0081】
図2図5及び図11に示すように、オットマンフレームF4は、左右に延びるベースメンバ130と、ベースメンバ130の左端及び右端に基端部がそれぞれ回動可能に取り付けられ、基端部から先端部に延びる左右一対のオットマンサイドフレーム131と、左右に延び、左右のオットマンサイドフレーム131の先端部同士を連結するオットマン前メンバ132とを有し、長方形の枠形に形成されている。ベースメンバ130とオットマン前メンバ132との間には、左右のオットマンサイドフレーム131を連結する複数のオットマン補助メンバ134が掛け渡されている。ベースメンバ130及びオットマン前メンバ132は、金属のパイプから形成されている。左右のオットマンサイドフレーム131は、金属板をプレス成形等することによって形成され、それぞれ主面が左右を向き、その縁部は、左右方向における内側に折り曲げられている。ベースメンバ130には、左右に間隔をおいて左右一対のオットマンピラー135が設けられている。左右のオットマンピラー135は、中実の金属棒から形成され、左右方向に互いに距離をおき、互いに平行に延びている。
【0082】
ベースメンバ130には、筒状のベースメンバパッド138(図1)が被せられる。ベースメンバパッド138の外面は表皮SKによって覆われている。オットマンパッドP4(図2)は、外形が略長方形をなし、左右のオットマンサイドフレーム131の基端部を除く先端側、オットマン前メンバ132、オットマン補助メンバ134を覆うように取り付けられ、外形が長方形に形成されている。オットマンS4の表皮SKは、オットマンパッドP4、左右のオットマンサイドフレーム131の基端部を除く先端側、オットマン前メンバ132、オットマン補助メンバ134を覆うように設けられている。オットマンパッドP4及び表皮SKから突出した左右のオットマンサイドフレーム131の基端部には、樹脂等で形成されたカバー139(図1)によって覆われ、左右のオットマンサイドフレーム131とベースメンバ130との接続部が隠蔽されている。
【0083】
図11に示すように、クッション前メンバ86には、一対のオットマンピラー135を支持する左右一対のピラー支持部141が設けられている。ピラー支持部141は、断面四角形の両端が開口した筒形に形成されている。ピラー支持部141は、クッション前メンバ86において、左クッションサイドフレーム85とセンター支持部材91の左縁との間に対応する部分と、右クッションサイドフレーム85とセンター支持部材91の右縁との間に対応する部分とに設けられている。ピラー支持部141は、クッション前メンバ86の下方を軸線が前後に延びるように配置され、クッション前メンバ86の下部に形成された前後に延びる凹部143にその上部が突入し、凹部143において溶接等によって接合されている。各ピラー支持部141には、樹脂製の筒形部材であるサポート142が挿入されている。左右のオットマンピラー135は、ピラー支持部141に取り付けられたサポート142の内孔に挿入される。これにより、オットマンフレームF4は、クッションフレームF1に取り付けられる。
【0084】
2つのオットマンピラー135の少なくとも一方の側面には、長手方向に間隔をおいて複数の係止溝146が形成されている。本実施形態では、右オットマンピラー135に係止溝146が形成されている。図1に示すように、サポート142の前端部は、シートクッションS1の表皮SKの外面に配置されている。図11に戻り、サポート142の前端部には、係止部材147が変位可能に受容されている。係止部材147は、サポート142の内孔内に突入する突入位置と、内孔から離脱した後退位置との間で変位可能であり、図示しない付勢部材によって突入位置に付勢されている。係止部材147の一端部はサポート142の前端部の側部から外方に突出し、乗員が操作可能な操作部148を構成する。乗員は、操作部148をサポート142に対して押し込むことによって、係止部材147を突入位置から後退位置に変位させることができる。係止部材147は、オットマンピラー135の係止溝146を係止することによって、サポート142に対するオットマンピラー135の位置を維持する。
【0085】
ベースメンバ130に対して左右のオットマンサイドフレーム131は、収納位置(図14(A1)参照)と最展開位置(図15(D3)の想像線参照)との間で回動可能になっている。収納位置と最展開位置との間には、仮収納位置(図15(D1)参照)が設定されている。収納位置ではオットマンS4の大部分がシートクッションS1の下方に配置され、オットマンS4の裏面がシートクッションS1の下面と対向する。仮収納位置ではオットマンS4がベースメンバ130から略鉛直に垂下した状態で保持される。最展開位置ではオットマンS4がシートクッションS1に対して前方に突出し、オットマンS4の支持面がシートクッションS1の上面と概ね同じ方向を向く。
【0086】
ベースメンバ130の右端部と右オットマンサイドフレーム131との間には、角度調節機構6(図5)及びディテント機構165(図5)が介装されている。角度調節機構6は、オットマンS4を左方から見て、右オットマンサイドフレーム131のベースメンバ130に対する時計回りの回転(最展開位置側への回転)を許容すると共に、仮収納位置と最展開位置との間の角度範囲において右オットマンサイドフレーム131のベースメンバ130に対する反時計回りの回転(収納位置側への回転)を禁止する。また、角度調節機構6は、オットマンサイドフレーム131のベースメンバ130に対する回転が最展開位置に到達した後は、収納位置に到達するまで、右オットマンサイドフレーム131のベースメンバ130に対する時計回りの回転を許容する。このような角度調節機構6は、公知の様々な機構を適用することができる。
【0087】
本実施形態に係る一例としての角度調節機構6は、図12に示すように、ベースメンバ130の外周部に一体に固定されたラチェット歯151と、右オットマンサイドフレーム131の左側面に回動可能に取り付けられ、前記ラチェット歯151に係合可能な爪体152と、爪体152と右オットマンサイドフレーム131の左側面との間に設けられ、爪体152をラチェット歯151側に付勢する捩じりばね153と、ベースメンバ130に同軸に回転可能に取り付けられたカム体154と、ベースメンバ130に設けられた突起155とを有する。また、ベースメンバ130と右オットマンサイドフレーム131との間には、右オットマンサイドフレーム131を常時収納位置側に付勢する捩じりコイルばね156が設けられている。爪体152がラチェット歯151と係合することよって、ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の収納位置側への回転が阻止される。なお、ベースメンバ130に対して右オットマンサイドフレーム131が最展開位置側に回転するときには、爪体152は係合したラチェット歯151から離脱することができ、隣のラチェット歯151に係合することができる。
【0088】
カム体154は、ラチェット歯151の突出端よりもベースメンバ130の径方向外方に突出した大径部157と、ラチェット歯151の歯底円よりもベースメンバ130の径方向内方に窪んだ小径部158とを有する。爪体152は、カム体154の小径部158が対向するときにラチェット歯151との係合が可能になり、カム体154の大径部157が対向するときに大径部157と当接してラチェット歯151と係合できなくなる。爪体152は、カム体154の小径部158と対向するとき、小径部158と大径部157との境界部に当接し、ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の最展開位置側への回転に応じてカム体154を回転させる。ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の最展開位置側への回転が進み、最展開位置近傍の所定角度になると、突起155がカム体154の第1ストッパ面161に係合することによってカム体154のベースメンバ130に対する回転が規制される。これにより、爪体152がカム体154に対して相対回転し、大径部157の外周上に乗り上げる。この状態では、爪体152はラチェット歯151に係合できなくなり、ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の収納位置側の回動が可能になる。
【0089】
爪体152が大径部157の外周上に乗り上げ、ベースメンバ130に対して右オットマンサイドフレーム131が収納位置側に回動する間、カム体154は爪体152から摩擦力を受けて、爪体152及び右オットマンサイドフレーム131と共にベースメンバ130に対して回転する。ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の収納位置側への回転が進み、爪体152がラチェット歯151と対向する範囲を越えると、突起155がカム体154の第2ストッパ面162に係合することによってカム体154のベースメンバ130に対する回転が規制される。これにより、爪体152がカム体154に対して相対回転し、爪体152が大径部157の外周上から小径部158に対向する位置に移動する。この状態では、爪体152は再びラチェット歯151に係合できるようになり、ベースメンバ130に対して右オットマンサイドフレーム131が最展開位置側に回動すると、爪体152がラチェット歯151に係合する。
【0090】
ディテント機構165は、所定の回動位置に節度感をもってオットマンS4を保持する、すなわちその前後の回動位置に比べて大きな保持力を持ってオットマンS4をハーフロックする。ディテント機構165は、仮収納位置及び収納位置の2箇所でオットマンS4を保持するように構成されている。このようなディテント機構165は、公知の様々な機構を適用することができる。本実施形態では、図13に示すように、ベースメンバ130の外周面に凹部166を形成し、オットマンサイドフレーム131に摺動可能かつ凹部166に係合可能にハーフロック部材167を設け、付勢手段168によってハーフロック部材167をベースメンバ130側に付勢する。凹部166およびハーフロック部材167の係合面は曲面または傾斜面に形成される。このディテント機構165は、オットマンS4が仮収納位置及び収納位置にあるときには、ハーフロック部材167及び凹部166が互いに係合し、ベースメンバ130及びオットマンサイドフレーム131に所定の回動荷重が加わったときにハーフロック部材167及び凹部166の係合を解除する。この回動加重は、オットマンS4の自重による回動荷重や捩じりコイルばね156の付勢力による回動荷重よりも大きな値に設定されている。
【0091】
次に、以上のように構成されたシートSが取り得る動作及び姿勢を図14及び図15を参照しながら説明する。
【0092】
図14(A1)は、シートバックS2が使用位置にあり、シートクッションS1が着座位置にあり、オットマンS4が収納位置にあるシートSの使用状態を示している。この状態で、乗員がハンドル68(図1)を操作してスタンド脚37のロックを解除し、矢印で示すようにシートクッションS1を把持してシートバックS2側に跳ね上げると、(A2)に示すようにシートクッションS1の座面がシートバックS2の前面に沿う上限界位置(チップアップ位置)まで回動させることができる。この状態では、スタンド脚37がシートバックS2の底面から突出した使用位置にあり、チップアップ機構5のカム部材103(図10)が第1チップアップ用ケーブル106によって引っ張られているため、ロック部材102が解除位置に位置し、シートクッションS1のシートバックS2に対する回動位置は固定されていない。スタンド脚37を矢印の方向に倒して収納位置に移動させると、(A3)に示すようにチップアップ機構5がロック可能になり、シートクッションS1の回動位置が固定され、シートクッションS1がチップアップ位置にあるチップアップ姿勢にシートSが保持される。
【0093】
次に、(B1)に示す(A1)と同じ状態で、ハンドル68(図1)を操作してスタンド脚37のロック及びリクライニング機構3のロックを解除すると、シートバックS2を前方に倒すことが可能になる。なお、この状態ではチップアップ機構5はロック不能な状態であり、シートバックS2とシートクッションS1との相対角度は変更可能である。シートバックS2が前方に回動すると、(B2)に示すように、スタンド脚37がスタンドベースの支持溝35(図8)から外れて前方に移動する。また、シートバックS2が前方に倒れるように回動することによってスタンド脚37が倒れ、シートSは、(B3)に示すように、シートクッションS1、シートバックS2及びオットマンS4がフロア4の低位部12に格納されたダイブダウン姿勢となる。この状態では、スタンド脚37が収納位置に配置されるため、第1チップアップ用ケーブル106(図10)は緩むが、シートバックS2が所定の角度以上に前傾しているため、チップアップ機構5のカム部材103が第2チップアップ用ケーブル107によって引っ張られ、ロック部材102が解除位置に位置し、シートクッションS1のシートバックS2に対する回動位置は固定されていない。
【0094】
なお、(A3)に示すようにシートSがチップアップ姿勢にあるときに、ハンドル68を操作してリクライニング機構3のロックを解除し、破線の矢印で示すようにシートバックS2をシートクッションS1と共に前方に倒すことによっても、シートSを(B3)のダイブダウン姿勢に変化させることができる。
【0095】
ダイブダウン姿勢にあるシートSを使用状態に戻すときには、(C1)に示すように、乗員はハンドル68を操作してリクライニング機構3のロックを解除し、シートバックS2を矢印で示すように起こす向きに回動させる。このとき、チップアップ機構5によるロックはかかっていないため、(C2)に示すように、シートクッションS1はシートバックS2と共に起き上がらず、シートバックS2によって引き摺られるように後方に移動し、スタンド脚37の先端がフロア4の壁部13又はシートベース26に係合する。(C3)に示すように、乗員がそのままシートバックS2を後方に回動させると、スタンド脚37がフロア4の壁部13又はシートベース26に引っ掛かって引き起こされ、使用位置に移動する。乗員が、さらにシートバックS2を後方に回動させると、スタンド脚37の横部材94(図8)が係止爪41を押し退けながらスタンドベース34の支持溝35に突入し、(C4)に示すように、シートバックS2が使用位置に固定されると共にシートクッションS1が着座位置に固定される。オットマンS4は、スタンド脚37が引き起こされシートクッションS1の底面がフロア4から離れるため、フロア4の壁部13には係合せず、シートSが(C4)に示す着座状態になったときには、捩じりコイルばね156の付勢力及びディテント機構165の保持力によって収納位置に保持されている。
【0096】
乗員は、(C4)に示す状態からオットマンS4を矢印方向に回動させ、(C5)に示すようにオットマンS4が垂下する仮収納位置に移動させることができる。オットマンS4は、ディテント機構165によって仮収納位置に保持される。オットマンS4の角度調節機構6は、収納位置と仮収納位置との間では、オットマンS4の角度を保持しないため、オットマンS4をいずれの方向にも自在に回動させることができる。そのため、(C5)の状態から再度オットマンS4を矢印方向に回動させることにより、捩じりコイルばね156の付勢力を伴ってオットマンS4を(C6)に示すシートクッションS1の底面に対向する収納位置に移動させることができる。
【0097】
図15の(D1)に示すように、オットマンS4が仮収納位置にある状態から矢印で示す方向にさらに回動させると、(D2)に示すようにオットマンS4は角度調節機構6によって乗員の回動操作に応じた所望の回動角度(展開位置)で固定(仮収納位置側への回転が禁止)される。また、乗員は、係止部材147(図11)を操作してオットマンピラー135のシートクッションS1に対するロックを解除し、オットマンS4を前後方向の所望の位置に移動し、その位置に固定することができる。オットマンS4の使用を終了する際には、(D2)に矢印で示す向きにオットマンS4を回動させ、(D3)に破線で示す最展開位置まで移動させることにより、角度調節機構6による固定を解除することができる。角度調節機構6による固定が解除されると、オットマンS4は自重及び捩じりコイルばね156の付勢力によって下方に回動し、仮収納位置に保持される。
【0098】
オットマンS4が仮収納位置にあるときに、シートSを使用状態からダイブダウン状態に変化させる場合には、(E1)に示すように、乗員は、ハンドル68(図1)を操作してスタンド脚37のロック及びリクライニング機構3のロックを解除し、シートバックS2を把持して矢印で示すように前方に回動させる。このとき、(E2)に示すように、オットマンS4の先端がフロア4の低位部12に当接し、シートクッションS1が前方斜め下に移動することによってフロア4から後方斜め上向きの力がオットマンS4の先端に加わり、オットマンS4が収納位置側に回動する。(E3)に示すようにシートバックS2が完全に倒れたシートSのダイブダウン状態においては、オットマンS4は捩じりコイルばね156の付勢力を受けて収納位置に位置しており、かつディテント機構165によって保持される。したがって、図14の(C)に一連の動作を示した、乗員がシートSをダイブダウン状態から使用状態に戻す操作を行ったときには、シートSが使用状態に戻ってもオットマンS4は収納位置に保持されたままとなる。
【0099】
図15に戻り、シートSが取り得る姿勢をさらに説明する。(F1)に示すように、シートクッションS1がチップアップ位置にあるときには、ハンドル68を操作してリクライニング機構3のロックを解除することにより、シートバックS2をシートクッションS1と共に前方に回動させることができる。シートバックS2及びシートクッションS1は、ハンドル68を戻した位置で固定される。例えば、(F2)に示すように、シートバックS2及びシートクッションS1が直立した位置でリクライニング機構3をロックさせることができる。また(F3)に示すように、シートバックS2が直立位置よりも前方に回動した前傾位置でリクライニング機構3をロックさせることもできる。当然ながら、(F1)~(F3)に示したいずれの状態においても、第1把持部材118を操作してスライド機構2のロックを解除し、シートバックS2及びシートクッションS1を前後動させることができる。
【0100】
あるいは、(G1)に示すように、シートSがチップアップ姿勢にあるときに、乗員はスタンド脚37を使用位置に回動させてチップアップ機構5のロックを解除し、(G2)に示すようにシートクッションS1をシートバックS2に対して相対回動させることができる。乗員は、スタンド脚37を収納位置に戻すことによって、シートバックS2に対してシートクッションS1を任意の位置でロックすることができる。更に、この状態で乗員がハンドル68を操作してリクライニング機構3のロックを解除し、シートバックS2をシートクッションS1と共に前方に回動させて(G3)に示す前傾姿勢でシートSを固定することも可能である。なお、(G3)の状態にシートSの姿勢を変化させる場合には、(F3)の状態からスタンド脚37を操作してチップアップ機構5のロックを解除し、シートクッションS1を前方に回動させてもよい。
【0101】
次に、オットマンS4についてさらに詳細に説明する。図16に示すように、オットマンS4は、展開状態で上方を向く面が乗員の足を支持する支持面171である。この支持面171は、前述したように合成皮革や布地等で形成された表皮SKによって覆われている。一方、オットマンS4の前端面172は、支持面171と異なり、樹脂などの、合成皮革や布地よりも硬度が高い材料により形成されている。また、オットマンS4の前端面172の表面には、小さな突起が多数形成されており、支持面171に比べてフロア4に対してより大きな摩擦係数を有するように構成されている。なお、ここで云う摩擦係数とは動摩擦係数である。
【0102】
オットマンフレームF4についても、図5を参照してさらに詳細に説明する。オットマンフレームF4は、前述したように長方形の枠形に形成されており、左右一対のオットマンサイドフレーム131などを有している。そして、オットマンフレームF4は、クッションフレームF1の前部の幅寸法よりも幅広に形成されている。そして、左右のオットマンサイドフレーム131は、左右のクッションサイドフレーム85の前部よりも左右方向の外側にオフセットした位置に配置されている。
【0103】
左右のクッションサイドフレーム85に回動可能に取り付けられたスタンド脚37は、回動軸側の端部に溶接されたブラケットを左右のクッションサイドフレーム85の前部の内側面に対向させるように配置されている。すなわち、スタンド脚37は、クッションサイドフレーム85の前部の幅寸法よりも幅狭に形成されている。したがって、図17に示すように、スタンド脚37がシートクッションS1の底面に沿う収納位置にあり、かつオットマンS4が収納位置にあるときにも、スタンド脚37、クッションサイドフレーム85及びオットマンサイドフレーム131がそれぞれオーバーラップしないように配置されている。
【0104】
シートSがこのように構成されることにより、図15の(E)で説明した、オットマンS4が仮収納位置にある状態でシートSをダイブダウン動作させたときには、(E2)に示したように、オットマンS4の先端がフロア4の低位部12に当接して仮収納位置におけるディテント機構165(図13)による保持が解除されて仮収納位置よりも後方(収納位置側)に回動する。すると、オットマンS4は捩じりコイルばね156(図12)の付勢力によって収納位置に回動駆動され、シートクッションS1の底面に沿う収納位置に移動して、再びディテント機構165によって保持される。
【0105】
そして、図18に示すように、シートSがダイブダウン姿勢になったときには、シートクッションS1がシートベース26に当接することで、シートクッションS1およびオットマンS4は、フロア4の低位部12から上方に所定寸法Cだけ離間した上方位置に保持される。
【0106】
なお、前述したようにオットマンS4には、シートクッションS1が着座位置にあるときにシートクッションS1の前部から垂下する仮収納位置と、シートクッションS1の底面により近い収納位置との2つの収納位置が設定されており、オットマンS4が両収納位置で保持されるようになっている。これにより、シートSがダイブダウン姿勢になったときにはオットマンS4を露出しない収納位置に配置できるとともに、ダイブダウン動作を行わない通常使用時には、オットマンS4を仮収納位置に配置しておくことで、使用状態にあるシートSに着席した乗員がオットマンS4を展開させる際に、シートクッションS1の底面に沿う収納位置にあるオットマンS4の遊端まで手を伸ばさなくとも、シートクッションS1の前部の下方に手を伸ばしてオットマンS4の遊端を引き上げることで容易に操作できるようになっている。
【0107】
以上、説明したように、シートSのダイブダウン動作の際に、オットマンS4がフロア4に干渉しない収納位置に向けて変位し、仮収納位置にあったオットマンS4がダイブダウン動作を阻止しない位置に回動変位するため、ダイブダウン動作を行う前に仮収納位置にあるオットマンS4を別操作によって変位させる必要がなく、シートSをダイブダウン姿勢に変化させる操作が容易である。
【0108】
また、オットマンS4は、ダイブダウン動作の際に、前端面172がフロア4の低位部12に当接し、シートクッションS1の前方斜め下への変位に伴ってフロア4から受ける力によって回動する。そのため、ダイブダウン動作と関わりなくオットマンS4を変位させる機構を設ける必要がなく、シートSが簡単な構成となり、シートSの製造コストも低減できる。
【0109】
そして、オットマンS4が仮収納位置よりもシートクッションS1の底面に近い収納位置まで回動可能に設けられ、オットマンS4の収納位置が仮収納位置に対してシートクッションS1の底面側に設定されているため、シートクッションS1がフロア4に向けて斜め前方に変位するダイブダウン動作の際に、仮収納位置にあるオットマンS4がフロア4に当接して収納位置側へ回動しやすくなっている。そのため、仮収納位置の回動角度を、乗員の邪魔になりにくい鉛直や鉛直よりも後方に設定可能である。
【0110】
このようにダイブダウン動作の際には、オットマンS4の前端面172がフロア4の低位部12に当接する。本実施形態では、オットマンS4の前端面172が支持面171に比べてフロア4に対してより大きな摩擦係数を有している。そのため、シートクッションS1の前方斜め下への変位に伴ってオットマンS4の前端面172とフロア4とが相対移動するときの動摩擦力が大きくなり、オットマンS4を回動させる力が確実にオットマンS4に加わってオットマンS4が確実に収納位置に回動する。
【0111】
本実施形態では、オットマンS4は、仮収納位置においてその前後の回動位置に比べて大きな保持力をもってディテント機構165(図13)によって保持される。これにより、車両の加減速時やオットマンS4を再展開位置から手を離して仮収納位置側に戻す際などに、オットマンS4が鉛直に垂下した回動位置近傍で揺れ動くことを防止できる。また、オットマンS4は、仮収納位置においても捻じりコイルばね156によって収納位置側へ付勢されているが、オットマンS4をディテント機構165の保持力によって仮収納位置に留めることが可能になっている。
【0112】
また、ディテント機構165が収納位置においてオットマンS4をその自重で下方に回動しない程度に大きな保持力を持って保持することにより、乗員がオットマンS4を収納位置へ回動させたときにオットマンS4を収納位置に保持し、シートSがダイブダウン姿勢にあるときに収納位置にあるオットマンS4とフロア4との間に隙間を形成することを可能にする。また、乗員がシートSをダイブダウン状態から使用状態に戻したときにもオットマンS4を収納位置に保持することができるため、乗員が気づかずにオットマンS4に足を引っ掛けるような事態が防止される。
【0113】
本実施形態では、図12に示したように、オットマンS4は、オットマンサイドフレーム131を収納位置側に付勢する付勢手段としての捩じりコイルばね156を有しており、如何なる回動角度にあっても捩じりコイルばね156によって収納位置側への付勢力を受けている。そのため、ダイブダウン動作が行われた際にオットマンS4が収納位置まで確実に回動する。また、シートSがダイブダウン姿勢に変化する際に、オットマンS4がシートクッションS1に引き摺られてフロア4に摺接することがないため、姿勢変化の最中のオットマンS4の支持面171が汚れることを防止できる。さらに、乗員がシートSをダイブダウン状態から使用状態に戻したときにもオットマンS4を収納位置に保持することができるため、乗員が気づかずにオットマンS4に足を引っ掛けるような事態が防止される。
【0114】
本実施形態では、ディテント機構165や捩じりコイルばね156の機能により、オットマンS4を収納位置に保持可能となっており、図18に示したように、ダイブダウン状態で収納位置にあるオットマンS4とフロア4との間に所定寸法Cの隙間が形成される。これにより、シートSがダイブダウン姿勢に変化にあるときにオットマンS4がフロア4との接触によって汚れることもない。
【0115】
さらに本実施形態では、図17に示すように、スタンド脚37がシートクッションS1の底面に沿う収納位置にあり、かつオットマンS4が収納位置にあるときに、クッションサイドフレーム85、オットマンサイドフレーム131およびスタンド脚37がそれぞれオーバーラップしない位置に設けられている。そのため、スタンド脚37およびオットマンS4を収納したときのシートクッションS1とオットマンS4とスタンド脚37とを合わせた厚さ寸法を小さくできる。これにより、図14の(B3)などに示したシートSがダイブダウン状態にあるときや、図15の(F2)などに示したシートクッションS1がチップアップ位置にあるときのシートSの厚さ寸法を小さくし、図14(B3)におけるシートSの上方空間や、図15(F2)におけるシートSの前方空間および後方空間を大きくすることができる。
【0116】
次に、オットマンS4の変形例について説明する。図19に示すように、オットマンS4の支持面171の左右方向の両端部には、回動軸側から遊端側に向けて延びる突出部173が形成されている。両突出部173に挟まれる支持面171の中央部174は、前述したように合成皮革や布地等で形成された表皮SKによって覆われている。一方、両突出部173は、樹脂などの、合成皮革や布地よりも硬度が高い材料により形成され、その表面が支持面171の中央部174よりも平滑に形成されている。
【0117】
オットマンS4の遊端面である前端面172は、上記実施形態と同様に、樹脂などの、合成皮革や布地よりも硬度が高い材料により形成されている。一方、オットマンS4の前端面172は、上記実施形態と同様の小さな突起を多数有し、突出部173の突出端面(支持面171と概ね平行な面)に比べてフロア4に対してより大きな摩擦係数を有するように構成されている。この突起は、両突出部173の前端面にも形成されており、両突出部173の前端面も、突出部173の突出端面に比べてフロア4に対してより大きな摩擦係数を有するように構成されている。
【0118】
本変形例においては、オットマンS4の支持面171がフロア4に接触する際には、突出部173がフロア4に接触することになり、表皮SKで覆われた中央部174がフロア4に接触することが防止される。例えば、図15(E)のダイブダウン動作の(E2)の状態から(E3)の状態に変化する間のうち、(E2)に示したオットマンS4の前端面172がフロア4の低位部12に接触した直後に、オットマンS4の支持面171がフロア4の低位部12に接触する場合には、中央部174ではなく突出部173がフロア4に接触する。また、図14(C)のダイブダウン状態から使用状態にシートSを変化させる動作のうち、(C2)に示す状態、すなわちシートバックS2を起こし始め、シートクッションS1の回動がシートベース26によって規制されなくなったときに、オットマンS4の支持面171がフロア4の低位部12に接触する場合があるが、この場合にも、中央部174ではなく突出部173がフロア4に接触する。
【0119】
このように突出部173がフロア4に接触する際にも、両突出部173の表面が支持面171の中央部174よりも平滑に形成されているため、摩擦抵抗が大きくなることや突出部173が磨耗することが抑制される。また、突出部173が汚れた場合にも清掃を行いやすい。
【0120】
次に、上記実施形態または変形例に示した形態のオットマンS4を有するシートSの変形例について説明する。本変形例のシートSでは、上記実施形態で図12を参照して説明した角度調節機構6が、想像線で示す捩じりコイルばね156を有しておらず、右オットマンサイドフレーム131が収納位置側に付勢されていない。また、本変形例のシートSでは、図20に示すように、オットマンS4を仮収納位置及び収納位置に保持するディテント機構165の2つの凹部166のうち、収納位置に対応する図中右側の凹部166が、想像線で示す上記実施形態の凹部166の位置よりも、図中下側に形成されている。すなわち、本変形例では、オットマンS4の収納位置が、上記実施形態の収納位置に比べてシートクッションS1の底面から離れた位置(回動角度)に設定されている。
【0121】
このように構成されシートSの動作のうち、図15(E)のオットマンS4が仮収納位置にあるときに、シートSを使用状態からダイブダウン状態に変化させる動作、および図14(C)のダイブダウン姿勢にあるシートSを使用状態に戻すときの動作について、図21を参照して説明する。
【0122】
オットマンS4が仮収納位置にあるときに、シートSを使用状態からダイブダウン状態に変化させる場合には、図21(E1)に示すように、乗員が、ハンドル68(図1)を操作し、シートバックS2を把持して矢印で示すように前方に回動させる。すると、(E2)に示すように、シートクッションS1が前方斜め下に移動し、オットマンS4の先端がフロア4の低位部12に当接する。続けて、シートバックS2が前方に回動して、シートクッションS1が前方斜め下に移動することにより、フロア4から後方斜め上向きの力がオットマンS4の先端に加わり、ディテント機構165による保持が解除されてオットマンS4が収納位置側に回動する。この際、オットマンS4は、捩じりコイルばね156による収納位置側への付勢力を受けていないため、遊端をフロア4に摺接させながら回動する。(E3)に示すようにシートバックS2が完全に倒れたシートSのダイブダウン状態においても、図22に示すように、オットマンS4は遊端をフロア4に接触させており、この回動位置が収納位置となる。この状態では、オットマンS4はディテント機構165によって保持される。
【0123】
一方、オットマンS4が収納位置にあるダイブダウン姿勢にあるシートSを使用状態に戻す場合には、図21(C1)に示すように、乗員がハンドル68を操作し、シートバックS2を矢印で示すように起こす向きに回動させる。このとき、チップアップ機構5によるロックはかかっていないため、(C2)に示すように、シートクッションS1はシートバックS2と共に起き上がらず、シートバックS2によって引き摺られるように後方に移動する。また、オットマンS4は、ディテント機構165によって保持されているため、収納位置に位置したままフロア4に摺接する。その後、スタンド脚37の先端がフロア4の壁部13又はシートベース26に係合し、(C3)に示すように、乗員がそのままシートバックS2を後方に回動させると、スタンド脚37がフロア4の壁部13又はシートベース26に引っ掛かって引き起こされることで、オットマンS4がフロア4から離間し、スタンド脚37が使用位置に移動する。
【0124】
乗員がさらにシートバックS2を後方に回動させると、スタンド脚37がスタンドベース34の支持溝35に突入し、(C4)に示すように、シートバックS2が使用位置に固定されると共にシートクッションS1が着座位置に固定される。この状態においても、オットマンS4は、ディテント機構165の保持力によって収納位置に保持されている。乗員が(C4)に示す状態のオットマンS4を矢印方向に引くと、ディテント機構165による保持が解除されてオットマンS4は回動し、(C5)に示すようにシートクッションS1の前端から垂下する仮収納位置でディテント機構165によって保持される。オットマンS4を使用しない場合には、(C5)の状態から乗員が再度オットマンS4に矢印方向に力を加え、(C6)に示すシートクッションS1の底面から若干離間した収納位置までオットマンS4を回動させることにより、オットマンS4はディテント機構165によって収納位置に保持される。
【0125】
このように、本変形例では、図21の(E)で説明した、オットマンS4が、仮収納位置にある状態でシートSのダイブダウン動作が行われた際に、フロア4に摺接しながら第2収納位置まで回動する。そのため、(E2)~(E3)に示した、オットマンS4がフロア4に当接してシートクッションS1の底面側の収納位置まで回動するシートSが、捩じりコイルばね156を有しない簡単な構成で実現される。なお、本変形例のシートSにおいては、オットマンS4の支持面171がフロア4に摺接するため、先の変形例で説明した、突出部173を有するオットマンS4を用いることが好ましい。
【0126】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として車両用としてシートSの説明を行ったが、航空機用や船舶用としてシートSを用いることもできる。
【0127】
また、上記実施形態では、シートSが、図9に示した、シートバックS2が回動可能なすべての角度範囲において所望の角度にシートバックS2を保持可能なシートバック角度調整機構としてのリクライニング機構3を備えているが、シートSがこのようなリクライニング機構3を備えずに、例えばシートSが使用状態にあるときにシートバックS2が車体などによって使用位置に保持される形態としてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、シートSが、図10に示した、シートクッションS1のシートバックS2に対する角度を維持可能なシートクッション角度調整機構としての係合凹部101およびロック部材102を備えているが、このようなシートクッション角度調整機構を備えていなくてもよい。
【0129】
上記実施形態では、オットマンS4が回動可能にシートクッションS1に設けられているが、オットマンS4が公知のリンク機構によって展開可能にシートクッションS1に設けられる形態としてもよい。また、オットマンS4は、シートクッションS1の前部から垂下する仮収納位置と展開位置との間で変位可能であればよく、必ずしも仮収納位置よりも後方に変位可能である必要はない。
【0130】
例えば、前列シートなどの干渉がない場合には、シートSがダイブダウン動作を行った際に、フロア4から離れる方向すなわち展開位置側となる上方斜め前方に変位してもよい。このような動作は、例えばシートバックS2の回動と連動させてオットマンS4を展開位置側に変位させる連動機構や、シートクッションS1のシートバックS2に対する角度変化と連動させてオットマンS4を展開位置側に変位させる連動機構などによって実現できる。あるいは、シートSに、オットマンS4を変位させる電動変位手段を設けるとともに、オットマンS4がフロア4に近接または接触したことを検知する検知手段を設け、検知手段により近接または接触が検知された場合に電動変位手段がオットマンS4をフロア4から離れる方向に駆動するように構成してもよい。
【0131】
あるいは、オットマンS4がフロア4に当接したときに、フロア4から受ける力によって前方に回動するような動作を行う形態としてもよい。このような形態は、例えば、シートクッションS1の前部から垂下するオットマンS4の収納位置(仮収納位置)を鉛直方向に対して下部が前方に位置する角度に設定するとともに、オットマンS4がこの収納位置にある状態でシートSがダイブダウン動作を行ったときに、オットマンS4の下端(遊端)が最初にフロア4に当接する部分を前向き下り勾配かつ低摩擦の傾斜面とし、オットマンS4の下端が浅い角度でフロア4に当接するように設けることにより実施できる。
【0132】
上記実施形態では、捩じりコイルばね156は、オットマンS4が如何なる回動角度にあっても収納位置側への付勢力を加えるように構成しているが、例えば、仮収納位置やその近傍の所定の回動角度よりも収納位置側にあるときに付勢力を受けるように構成してしてもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、オットマンS4の突出部173を、オットマンS4の回動軸側から遊端側に向けて延びる構成としているが、少なくとも遊端側に形成されるものであれば、遊端近傍に単一または一対の突出部173が形成される形態や、左右それぞれに複数の突出部173が、回動軸側から遊端側に沿って分離して形成される形態、回動軸側と遊端側とに形成される形態などとしてもよい。さらに、オットマンS4の前端面172は、ニードルパンチ製法などによって製造されたフェルトで形成することで、支持面171の突出部173をよりもフロア4に対してより大きな摩擦係数を有する構成としてもよい。
【0134】
この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度、素材など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。また、上記実施形態に示したシートSの各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0135】
4 フロア
5 チップアップ機構
26 シートベース
37 スタンド脚
85 クッションサイドフレーム
131 オットマンサイドフレーム
156 捩じりコイルばね(付勢手段)
165 ディテント機構
171 支持面(足支持面)
172 前端面
173 突出部
174 中央部
S シート
S1 シートクッション
S2 シートバック
S4 オットマン
図1
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